【文献】
地震に関する地域危険度測定調査報告書(第7回),2013年11月14日,URL,https://web.archive.org/web/20140428135055/http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/chousa_6/home.htmhttp://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/chousa_6/download/houkoku_2.pdf?1309http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/chousa_6/download/houkoku
【文献】
加藤孝明,建物単体データを用いた全スケール対応・出火確率統合型の地震火災リスクの評価手法の構築,地域安全学会論文集,地域安全学会,2006年11月,No.8,URL,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisss/8/0/8_279/_pdf/-char/ja
【文献】
小川 芳樹,地震時における広域火災被害評価のための推定建物構造データの開発,一般社団法人地理情報システム学会,一般社団法人地理情報システム学会,2012年10月14日,VoL.21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0018】
図1には、実施形態にかかる災害発生時の危険度評価装置の例の機能ブロック図が示される。
図1において、災害発生時の危険度評価装置は、倒壊率演算部10、倒壊数演算部12、倒壊危険度順位演算部14、延焼可能領域設定部16、出火件数演算部18、焼失評価値演算部20、火災危険度順位演算部22、総合危険度演算部24、表示制御部26、通信部28、記憶部30及びCPU32を含んで構成されている。上記災害発生時の危険度評価装置は、CPU32、ROM、RAM、不揮発性メモリ、I/O、通信インターフェース等を備え、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されており、上記各機能は、例えばCPU32とCPU32の処理動作を制御するプログラムとにより実現される。
【0019】
倒壊率演算部10は、指定された評価対象地域を複数の評価エリアに区分し、評価エリア毎に、建物の属性に基づいて災害発生時の建物倒壊の確率を演算する。ここで、災害発生時の建物倒壊の確率とは、災害の発生を仮定したときの建物の倒壊する確率である。また、評価対象地域とは、災害発生時の危険度の分布を推定する地域であり、例えば市町村及び東京都の特別区等の行政区画とすることができる。評価対象地域の指定は、使用者が適宜な入力手段(マウス等のポインティングデバイス、キーボード、タッチパネル等)により地図上等に存在し、あるいは記載された行政区画を指定する情報を入力することにより行うことができる。この場合、表示制御部26が上記地図の画像を適宜な画面に表示し、この画面上の地図に対して上記行政区画を指定する情報を入力する構成等が好適である。あるいは、通信部28を介して、他のコンピュータ等から行政区画を指定する情報や指定する行政区画の情報自体を受信する構成としてもよい。行政区画の情報には、当該行政区画内の町丁目等の情報が含まれる。行政区画が記載された地図のデータ、行政区画の情報等は、予め記憶部30に記憶させておいてもよいし、他の適宜なサーバー等から通信部28を介して取得し、記憶部30に記憶させておいてもよい。倒壊率演算部10は、これらのデータ、情報を必要に応じて記憶部30から読み出して使用する。
【0020】
なお、災害とは、地震及び地震によって発生する火災をいい、危険度とは、後述する一定の評価基準に基づく危険の程度をいう。また、評価エリアとは、上記危険度を評価するための最小範囲(領域)であり、倒壊率演算部10が上記評価対象地域を複数に区分して町丁目毎に評価エリアを設定することができる。評価エリアを町丁目程度の広さとすることにより、実施形態にかかる災害発生時の危険度評価装置により評価した危険度に基づいて避難路等を決定する際に、必要以上の迂回を回避することができる。設定した評価エリアも記憶部30に記憶させておく。なお、行政区画が記載された地図上で、使用者が評価エリアとしての町丁目を指定し、これを記憶部30に記憶させてもよい。
【0021】
一般に、地震の際の建物の倒壊し易さ、すなわち建物倒壊の確率は、建物の属性である建物の構造に依存する。この場合の構造とは、木造であるか無いか(木造又は非木造)をいう。ある評価エリアに存在する各建物の木造、非木造を決定することは極めて煩雑であり、現実的ではない。そこで、本実施形態にかかる倒壊率演算部10は、建物の属性としての高さから建物の構造を推定する。すなわち、予め定めた基準高さ以下の建物であれば木造と推定し、基準高さを超えた建物であれば非木造と推定する。基準高さは、各評価対象地域の実情に合わせて設定することができるが、例えば11〜14mとすることができる。本願発明者らが横浜市、川崎市等で調査した結果、上記基準値を13mと推定しているが、これには限定されない。なお、上記基準高さに加え、建物の面積(地表面上への投影面積(水平投影面積))を基準面積として併用するのが好適である。すなわち、基準高さ以下且つ基準面積以下の場合を木造とし、それ以外を非木造と推定することにより、建物の構造の推定精度を向上することができる。基準面積としては、80〜100m
2とすることができる。上記調査結果からは、上記基準面積を90m
2と推定しているが、これには限定されない。上記建物の高さ、面積は、例えば航空写真等から算出することができる。このような建物の高さ、面積等の情報、上記基準高さ、基準面積の値も記憶部30に記憶させておく。また、倒壊率演算部10が推定した建物の構造の情報を記憶部30に記憶させておいてもよい。また、各建物の位置情報、すなわち上記行政区画が記載された地図上における位置(座標)も記憶部30に記憶させておくのが好適である。
【0022】
倒壊率演算部10は、各建物の高さ、又は高さと面積を記憶部30から読み出し、これらの値に基づいて各建物の構造を推定し、建物倒壊の確率を算出する。建物倒壊の確率は、評価エリア毎に、且つ地震の最大震度毎に建物の全壊率を事前に調査した結果から算出することができる。このような全壊率の調査結果は、予め記憶部30に記憶させておく。
【0023】
図2には、最大震度と建物の全壊率との関係を表すグラフが示される。
図2のグラフが、記憶部30に記憶されている、評価エリア毎に行われた全壊率の調査結果の例であり、倒壊率演算部10が読み出して使用する。
図2において、横軸が最大震度、縦軸が全壊率である。全壊率の数値が建物倒壊の確率として使用される。また、最大震度は、地震ハザードステーション(J−SHIS)の表層地盤データを使用し、30cm/s(カイン)の地震動を工学的基盤に与えたときの地盤による増幅率を考慮した地表面の最大震度として求めた数値である。倒壊率演算部10は、推定した各建物の構造により、
図2に基づいて建物倒壊の確率を算出する。
【0024】
倒壊数演算部12は、倒壊率演算部10が演算した建物倒壊の確率と上記評価エリアの建物数とから建物倒壊数を算出し、評価エリアの面積に基づき単位面積あたりの建物倒壊数を演算する。この演算は、以下の式(1)に基づいて行う。
【0026】
式(1)に示されるように、評価エリアの建物数は、建物の構造、すなわち木造及び非木造毎の建物数である。この評価エリアの建物数の数値は、予め調査した数値を記憶部30に記憶させておいてもよいし、他の適宜なサーバー等から通信部28を介して取得し、記憶部30に記憶させておいてもよい。また、評価エリアの面積は、各町丁目の面積が予めわかっているので、記憶部30に記憶させておく。なお、本実施形態では、公園、緑地、河川を除いた各町丁目の面積を評価エリアの面積としている。倒壊数演算部12は、建物倒壊の確率、建物数の数値及び評価エリアの面積を記憶部30から読み出して使用する。演算した建物倒壊数及び単位面積あたりの建物倒壊数は、記憶部30に記憶させる。
【0027】
倒壊危険度順位演算部14は、倒壊数演算部12が演算した単位面積あたりの建物倒壊数を記憶部30から読み出し、この数値に基づき、上記評価対象地域における評価エリアの建物倒壊に関する危険度順位を演算する。ここで、危険度順位とは、評価エリアの単位面積あたりの建物倒壊数の、評価対象地域における順位をいう。単位面積あたりの建物倒壊数の値が大きいほど上位となるようにつけた順位である。倒壊危険度順位演算部14が演算した危険度順位は、記憶部30に記憶させる。
【0028】
延焼可能領域設定部16は、上記評価エリア毎に、建物の属性及び建物相互の位置関係から、任意に選択した建物の出火により延焼の可能性のある領域を延焼可能領域として設定する。なお、本実施形態においては、建物の出火(火災)は、地震による建物の倒壊により発生するものとする。ここで、上記建物の属性とは、建物の耐火区分であって、防火、準耐火、耐火の種類がある。また、建物相互の位置関係とは、建物の外壁面の間の距離である。建物は、防火、準耐火、耐火の区分毎に延焼限界距離が設定されている。延焼限界距離は、ある建物が出火したときに、隣接する建物に延焼する限界を判断するための距離であり、延焼限界距離よりも遠くにある建物、すなわち隣接する建物にそれぞれ設定された延焼限界距離の範囲内の領域に重なりが無い場合には延焼しないと判断される。この延焼限界距離は、耐火区分が防火の場合が最も長く、例えば水平投影面積が50m
2の建物の場合で建物の外壁から4〜6m程度である。また、準耐火の場合は防火の場合より延焼限界距離が短く、例えば水平投影面積が50m
2の建物の場合で建物の外壁から2〜3m程度である。なお、耐火の場合には、火災も起こらず、延焼の危険性も無いので、延焼限界距離は0mに設定される。延焼限界距離の情報は、予め記憶部30に記憶させておく。
【0029】
各建物の耐火区分は、建物の属性である建物の構造(木造又は非木造)及び建物の高さ(階数)から延焼可能領域設定部16が決定する。建物の構造は、上記倒壊率演算部10が推定した構造の情報を記憶部30から読み出して使用する。また、建物の高さも記憶部30から読み出して使用する。延焼可能領域設定部16が、建物の構造(木造又は非木造)及び建物の高さから各建物の耐火区分を決定する方法は、例えば以下の表1が挙げられる。表1の例では、木造の建物の耐火区分は防火とし、非木造で3階以下の建物は準耐火とし、非木造で4階以上の建物は耐火としている。ただし、各建物の耐火区分の決定方法は、表1に示された方法に限定されるものではない。
【0031】
なお、建物の階数(地上の階数)は、予め定めた基準に基づき建物の高さから決定する。例えば、高さが4.5m増える毎に階数を1増やす等の方法が挙げられる。この場合、9m未満の高さの建物は1階建てとし、13.5m未満の高さの建物は2階建てとする。階数の決定は、延焼可能領域設定部16が行ってもよいし、倒壊率演算部10が行ってもよい。決定された建物の階数は記憶部30に記憶させる。なお、各建物の階数を予め調査し、記憶部30に記憶させておいてもよい。延焼可能領域設定部16は、記憶部30から建物の階数を読み出して使用する。
【0032】
次に、延焼可能領域設定部16は、上記評価エリア内の各建物の延焼限界距離から、延焼限界距離の範囲内の領域を設定し、互いに隣接する建物の上記延焼限界距離の範囲内の領域に重なりがある場合に、当該隣接する建物間で延焼が起こると判定する。延焼が起こると判定された隣接する建物の関係を、以後延焼関係という。このような延焼関係の判定を、評価エリア内の全ての建物について行い、延焼関係にある建物のグループを作成して、このグループ内の建物が存在する領域を延焼可能領域として設定する。延焼可能領域では、この領域内のいずれかの建物が出火すると、領域内全ての建物に延焼する。ただし、上記耐火区分が耐火である建物には延焼しないので、延焼可能領域から除外される。また、孤立した建物(隣接した建物との間で上記延焼限界距離の範囲内の領域に重なりが無い建物)等は、出火しても他の建物への延焼の可能性がないので、当該建物のみで延焼可能領域を形成するものとして扱う。延焼可能領域設定部16が設定した延焼可能領域も、記憶部30に記憶させる。
【0033】
さらに、延焼可能領域設定部16は、後述する焼失評価値演算部20が焼失評価値の算出に使用する評価面積も算出する。この評価面積は、評価エリア内に火災が発生したときに、火災の危険にさらされる面積であって、例えば評価エリアに存在する延焼可能領域内にある建物の床面積の合計等を使用することができる。また、延焼可能領域の面積としてもよい。建物の床面積は、例えば記憶部30に記憶された各建物の水平投影面積と建物の階数との積として求めることができる。また、延焼可能領域の面積は、延焼可能領域に含まれる建物の周囲の延焼限界距離の範囲内(上記延焼限界距離の範囲内の領域)の面積であって、延焼限界距離内の領域の重なりを除外した面積である。上記評価面積及び延焼可能領域の面積も記憶部30に記憶させる。
【0034】
図3(a)、(b)には、延焼可能領域設定部16が設定する延焼可能領域の説明図が示される。
図3(a)の例では、耐火区分が準耐火の建物A1、B1、防火の建物B2、耐火の建物C1が描かれている。また、各建物の周囲の破線で延焼限界距離D
Lが示されている。この破線の範囲内の領域が上記延焼限界距離の範囲内の領域に相当する。なお、耐火の建物C1には延焼限界距離D
Lは0mなので、破線は記載されていない。
【0035】
延焼可能領域設定部16は、延焼限界距離D
Lの重なり合いを決定し、延焼限界距離D
Lの範囲内の領域が重なっている建物同士をグループ化して行く。このグループ化処理は、任意に選択した建物(例えば、建物B1)と延焼限界距離D
Lの範囲内の領域が重なっている建物を選択し、次に選択された建物と延焼限界距離D
Lの範囲内の領域が重なっている建物を選択する処理を、延焼限界距離D
Lの範囲内の領域が重なっている建物が無くなるまで実行することにより行う。このようにして作成されたグループは、グループ内の任意の建物に火災が発生すると、全ての建物に延焼する可能性がある建物のグループである。
図3(a)の例では、建物B1とB2の延焼限界距離D
Lの範囲内の領域が重なっているので、これらをグループ化し、重なった延焼限界距離D
Lの範囲内の領域(破線の範囲内)を1つの延焼可能領域として設定する。また、建物A1は、隣接する建物との間で延焼限界距離D
Lの範囲内の領域が重なっていないので、孤立した建物として建物A1の延焼限界距離D
Lの範囲内の領域のみで延焼可能領域を設定する。なお、耐火の建物C1には延焼しないという判断をして、延焼可能領域から除外する。この結果、
図3(b)に示されるように、建物A1に関する延焼可能領域Aと、建物B1とB2に関する延焼可能領域Bとが設定される。なお、延焼可能領域Bには、上述したように建物C1が含まれていない。また、
図3(b)に示される延焼可能領域A、Bの面積が、各延焼可能領域の面積、すなわち延焼可能領域に含まれる建物の周囲の延焼限界距離D
Lの範囲内の面積であって、重なりを除外した面積である。
【0036】
図4には、延焼可能領域が異なる評価エリア(町丁目等)に跨がった場合の処理の例が示される。
図4の例では、評価エリアである町丁目Aと町丁目Bとにまたがる延焼可能領域A*Bが存在している。延焼可能領域設定部16は、延焼可能領域A*Bに存在する建物の内、町丁目Aに含まれる建物を特定し、それらの床面積合計を町丁目A側の評価面積とし、町丁目Bに含まれる建物を特定し、それらの床面積合計を町丁目B側の評価面積とする。なお、延焼可能領域A*Bが町丁目Aに含まれる面積と町丁目Bに含まれる面積とを算出し、算出した面積の割合に基づき評価面積(延焼可能領域の面積)を按分する構成としてもよい。延焼可能領域A*Bの面積及び評価面積は、記憶部30から読み出して使用する。また、延焼可能領域A*Bのどの位置に町丁目Aと町丁目Bとの境界線があるかは、以下のようにして決定する。すなわち、延焼可能領域A*Bに含まれる建物の位置(行政区画が記載された地図上での座標)に基づき、延焼可能領域A*Bの上記地図上での範囲を決定し、同じ地図上での町丁目Aと町丁目Bとの境界線から延焼可能領域A*Bにおける境界線の位置を決定する。なお、各建物の位置及び行政区画が記載された地図のデータは、記憶部30から読み出して使用する。
【0037】
図4では、延焼可能領域A*Bに町丁目Aと町丁目Bとの境界線Lbが存在しており、町丁目Aに属する建物の床面積の合計が200m
2であり、町丁目Bに属する建物の床面積の合計が300m
2のである例が示されている。なお、
図4の例では、延焼可能領域A*Bが二つの評価エリアに跨がっている場合であるが、3つ以上の評価エリアに跨がっている場合にも、同様に処理される。
【0038】
出火件数演算部18は、延焼可能領域設定部16が設定した延焼可能領域毎に、建物の属性に基づいて災害発生時の出火件数を演算する。ここで、建物の属性は、建物の用途であり、以下の表2に例示されているが、これらに限定されない。表2の例では、建物の用途毎に、地震の震度に応じた出火率(建物用途別出火率)が設定されている。この建物用途別出火率は、従来の火災の調査等から予め決定されている。また表2の震度は、上記
図2に示された地表面の最大震度である。表2の情報も、記憶部30に記憶されている。
【0040】
出火件数演算部18は、記憶部30から表2の情報を読み出し、以下の式(2)に基づいて延焼可能領域毎に地震発生時の出火件数(の推定値)を演算する。
【0042】
ここで、全壊棟数は、上記倒壊数演算部12が算出した建物倒壊数であり、この数値を記憶部30から読み出して使用する。また、非全壊棟数は、延焼可能領域内の全ての建物の棟数から全壊棟数を差し引いた数である。延焼可能領域内の全ての建物の棟数は、延焼可能領域設定部16が延焼可能領域を設定する際にカウントした値である。また、全壊棟数に乗ぜられる係数αは、予め調査して決定された全壊建物の出火率であり、例えば0.2〜0.3の値である。また、初期消火成功率は、予め調査して得た数値を使用するが、地表面の最大震度が7以上の場合で0.1〜0.2程度、地表面の最大震度が6強の場合で0.2〜0.4程度、地表面の最大震度が6弱以下の場合で0.6〜0.7程度である。延焼可能領域内の全ての建物の棟数、係数α及び初期消火成功率も予め記憶部30に記憶させておき、出火件数演算部18が読み出して使用する。出火件数演算部18が演算した出火件数は、記憶部30に記憶させる。
【0043】
焼失評価値演算部20は、出火件数演算部18が演算した出火件数と上記延焼可能領域における評価面積とに基づき、評価エリア毎に焼失評価値を算出し、評価エリアの面積に基づき単位面積あたりの焼失評価値を演算する。上記出火件数及び評価面積は、焼失評価値演算部20が記憶部30から読み出して使用する。また、焼失評価値は、評価エリアに存在する延焼可能領域毎の出火件数と評価面積の積として算出する。これにより、評価エリア内の出火件数が多いほど焼失評価値も大きくなり、火災時の危険性が大きく評価されることになる。なお、延焼可能領域が複数の評価エリアに跨がっている場合には、評価エリア毎に計算した評価面積を当該評価エリアの他の評価エリアに跨がっていない延焼可能領域の評価面積とともに使用して焼失評価値を算出する。評価エリアの面積は、倒壊数演算部12と同様に記憶部30から読み出して使用する。焼失評価値演算部20は、以下の式(3)に基づいて単位面積あたりの焼失評価値を演算する。
【0045】
上記式(3)において、Σは、評価エリア内の延焼可能領域毎に(出火件数)×(評価面積)の演算を行い、評価エリア毎に上記演算結果を合計することを意味する。この合計値を評価エリアの面積で除することより求めた単位面積あたりの焼失評価値は、記憶部30に記憶させる。
【0046】
火災危険度順位演算部22は、焼失評価値演算部20が演算した単位面積あたりの焼失評価値を記憶部30から読み出し、この数値に基づき、上記評価対象地域における評価エリアの火災に関する危険度順位を演算する。危険度順位は、倒壊危険度順位の場合と同様であり、評価エリアの単位面積あたりの焼失評価値の、評価対象地域における順位をいう。単位面積あたりの焼失評価値が大きいほど上位となるようにつけた順位である。火災危険度順位演算部22が演算した危険度順位は、記憶部30に記憶させる。
【0047】
総合危険度演算部24は、倒壊危険度順位演算部14が演算した建物倒壊に関する危険度順位と、火災危険度順位演算部22が演算した火災に関する危険度順位とを記憶部30から読み出し、これらの順位に基づき、評価エリアの総合危険度を演算する。総合危険度は、建物倒壊に関する危険度順位と火災に関する危険度順位との和を求め、和の数値の、評価対象地域における順位(総合順位)により、予め定めた基準により決定される。上記和の数値が小さいほど上記総合順位が上位となる。例えば、両方の順位が1位である評価エリアの場合には、上記和が2となり、この場合に評価対象地域における当該評価エリアの総合順位が1位となる。以降、和の数値が大きくなるに従って総合順位が下がって行く。
【0048】
上記予め定めた基準としては、例えば、上記総合順位により5段階評価で総合危険度を表すことが挙げられる。この5段階評価による総合危険度の例が表3に示される。
【0050】
表3の例では、総合順位が上位2%まで(0<、≦2)を総合危険度5、2%を超え8%まで(2<、≦8)を総合危険度4、8%を超え23%まで(8<、≦23)を総合危険度3、23%を超え55%まで(23<、≦55)を総合危険度2、55%を超え100%まで(55<、≦100)を総合危険度1としている。なお、評価は5段階に限られるものではなく、例えば10段階評価としてもよい。また、評価の刻みも上記例に限られず、事前の調査結果等に基づき適宜決定することができる。
【0051】
各評価エリアの総合危険度の演算結果は、記憶部30に記憶させるとともに、表示制御部26により適宜な画面に表示させる。総合危険度の表示は、評価エリアが含まれる評価対象地域を表示する地図画像上に表示するのが好適である。この表示方法としては、例えば評価エリアの画像(町丁目等の画像)を、演算された総合危険度に応じた色で表現する方法等が挙げられる。
【0052】
表示制御部26は、液晶表示装置その他の適宜な表示装置を制御して、例えば行政区画が記載された地図の画像、総合危険度の表示その他の画像を表示する。
【0053】
通信部28は、適宜なインターフェースにより構成され、無線または有線の通信回線を介してCPU32が外部のサーバー等とデータをやり取りするために使用する。
【0054】
記憶部30は、ハードディスク装置、ソリッドステートドライブ(SSD)等の不揮発性メモリで構成され、上記各種情報等、及びCPU32の動作プログラム等の、対象物記録装置が行う各処理に必要な情報を記憶させる。なお、記憶部30としては、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書き換え可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。また、記憶部30には、主としてCPU32の作業領域として機能するランダムアクセスメモリ(RAM)、及びBIOS等の制御プログラムその他のCPU32が使用するデータが格納される読み出し専用メモリ(ROM)を含めるのが好適である。
【0055】
図5には、実施形態にかかる災害発生時の危険度評価装置の動作例のフローが示される。
図5において、倒壊率演算部10が、使用者により指定された評価対象地域(市町村及び東京都の特別区等の行政区画)を複数の評価エリア(町丁目等)に区分し、評価エリア毎に、建物の属性に基づいて災害発生時の建物倒壊の確率(倒壊率)を演算する(S1)。
【0056】
倒壊数演算部12は、S1において倒壊率演算部10が演算した建物倒壊の確率と評価エリアの建物数とから建物倒壊数を算出し、算出した建物倒壊数と評価エリアの面積とに基づき、上記式(1)により単位面積あたりの建物倒壊数を演算する(S2)。
【0057】
倒壊危険度順位演算部14は、S2において倒壊数演算部12が演算した単位面積あたりの建物倒壊数に基づき、上記評価対象地域における評価エリアの建物倒壊に関する危険度順位、すなわち各評価エリアの単位面積あたりの建物倒壊数の、評価対象地域における順位を演算する(S3)。
【0058】
次に、延焼可能領域設定部16は、上記評価エリア毎に、建物の属性及び建物相互の位置関係から、任意に選択した建物の出火により延焼の可能性のある領域を延焼可能領域として設定する(S4)。
【0059】
出火件数演算部18は、S4において延焼可能領域設定部16が設定した延焼可能領域毎に、建物の属性に基づいて上記式(2)により災害発生時の出火件数を演算する(S5)。
【0060】
焼失評価値演算部20は、S5において出火件数演算部18が演算した出火件数と上記延焼可能領域における評価面積とに基づき、評価エリア毎に焼失評価値を算出し、評価エリアの面積に基づき、上記式(3)により単位面積あたりの焼失評価値を演算する(S6)。
【0061】
火災危険度順位演算部22は、S6において焼失評価値演算部20が演算した単位面積あたりの焼失評価値に基づき、上記評価対象地域における評価エリアの火災に関する危険度順位、すなわち各評価エリアの単位面積あたりの焼失評価値の、評価対象地域における順位を演算する(S7)。
【0062】
次に、総合危険度演算部24は、S3において倒壊危険度順位演算部14が演算した建物倒壊に関する危険度順位と、S7において火災危険度順位演算部22が演算した火災に関する危険度順位とに基づき、評価エリアの総合危険度を演算する(S8)。
【0063】
表示制御部26は、S8において総合危険度演算部24が演算した総合危険度を、評価エリアが含まれる評価対象地域を表示する地図画像上に、各危険度を表す色等により表示する(S9)。
【0064】
上述した、
図5の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供しても良い。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明として捉えても良い。