特許第6795907号(P6795907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6795907-流体状態検出システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795907
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】流体状態検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/51 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   G01N21/51
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-89098(P2016-89098)
(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公開番号】特開2017-198529(P2017-198529A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】亀田 幸則
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−287100(JP,A)
【文献】 特開2006−052782(JP,A)
【文献】 特開2003−065936(JP,A)
【文献】 特開平05−215666(JP,A)
【文献】 特開昭61−108949(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0236306(US,A1)
【文献】 特開平01−295136(JP,A)
【文献】 特表2005−536713(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0212789(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/177319(WO,A1)
【文献】 特開平09−229847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
F16C 1/00−43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の流体の状態を検出する流体状態検出システムであって、
前記容器の壁面に形成された測定窓と、
前記流体の状態を検出する流体状態検出装置と、
前記流体状態検出装置の検出結果を記憶する管理装置と、
を備え、
前記流体状態検出装置は、
前記測定窓を介して前記流体に電磁波を出射する発信部と、
前記発信部から前記測定窓を介して前記流体に出射された電磁波の反射波、透過波、または再放射された散乱波を受信する受信部と、
前記発信部から出射された電磁波と、前記受信部により受信された電磁波と、に基づいて、前記流体の状態を検出する検出部と、
前記容器を識別する識別部と、
を一体として構成された携帯可能な装置であり、
前記検出部は、前記発信部により前記容器内の流体に向かって電磁波を出射する際に前記識別部により得られた識別結果と、前記流体の状態の検出結果と、を紐付けて前記管理装置に送信することを特徴とする流体状態検出システム。
【請求項2】
前記容器は、前記流体が貯留される貯留部であることを特徴とする請求項に記載の流体状態検出システム。
【請求項3】
前記測定窓は、前記容器の側壁面に形成されることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の流体状態検出システム。
【請求項4】
前記検出部による検出結果を報知する報知部を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の流体状態検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体状態検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の状態を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、回転部や摺動部に循環供給され、これら各部品の摩耗を防いで円滑に動作させるためのオイルについて、劣化を判断するオイル劣化検出装置が示されている。このオイル劣化検出装置は、オイル流路に互いに並行して設置された2枚の極板を備えており、これら2枚の極板間に交流電圧を印加することによりオイルの導電率および誘電率を求め、導電率および誘電率に基づいてオイルの劣化を判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−2693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されているオイル劣化検出装置では、2枚の極板をオイル流路に設置したり、これら2枚の極板間に交流電圧を印加するための構成を設けたりする必要がある。このため、上述の回転部や摺動部が設けられている機器に対して、大幅な構成の追加や変更が必要である。そこで、流体の状態の検出を簡易化することが要請されていた。
【0006】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、流体の状態の検出を簡易に行うことのできる流体状態検出システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1またはそれ以上の実施形態は、容器内の流体の状態を検出する流体状態検出システムであって、前記容器の壁面に形成された測定窓と、前記流体の状態を検出する流体状態検出装置と、を備え、前記流体状態検出装置は、前記測定窓を介して前記流体に電磁波を出射する発信部と、前記発信部から前記測定窓を介して前記流体に出射された電磁波の反射波、透過波、または再放射された散乱波を受信する受信部と、前記発信部から出射された電磁波と、前記受信部により受信された電磁波と、に基づいて、前記流体の状態を検出する検出部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、流体の状態の検出を簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る流体状態検出システムの概略構成図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る流体状態検出システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素などとの置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。このため、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る流体状態検出システム1の概略構成図である。流体状態検出システム1は、潤滑油が内部に介在している容器10と、容器10内の潤滑油の状態を検出する流体状態検出装置20と、を備える。
【0012】
容器10は、潤滑油が流通する配管や、回転部や摺動部といった駆動部の近傍や、潤滑油を貯留する貯留部などである。この容器10の側壁面には、測定窓11が設けられている。測定窓11は、ガラスや樹脂といった、電磁波を透過する材料で形成されている。
【0013】
流体状態検出装置20は、発信部21、受信部22、検出部23、および報知部24を備える。発信部21は、容器10内の潤滑油に測定窓11を介して電磁波を出射する。
【0014】
受信部22は、発信部21から容器10内の潤滑油に測定窓11を介して出射された電磁波の反射波、透過波、または再放射された散乱波を受信する。
反射波や散乱波を受信する場合には、受信部22は、容器10の内部から測定窓11を介して出てくる電磁波を受信する。
透過波を受信する場合には、容器10の側壁面のうち、測定窓11が設けられている位置と対向する位置に、測定窓11と同様の測定窓(以降、対向測定窓とする)を形成する。このようにすることで、受信部22は、測定窓11から入射された電磁波のうち、容器10内の潤滑油の中を透過して対向測定窓から出てくる電磁波を受信して、透過波を受信することができる。
【0015】
発信部21から出射された電磁波の強度や偏波と、受信部22で受信された電磁波の強度や偏波と、の関係は、容器10内の潤滑油に含まれている金属、ワニス、スラッジ、水分などの異物の量や、潤滑油の酸化の度合いなどによって変化する。そこで、検出部23は、発信部21から出射された電磁波の強度や偏波と、受信部22で受信された電磁波の強度や偏波と、に基づいて、容器10内の潤滑油の状態を検出する。
【0016】
報知部24は、検出部23による検出結果を報知する。報知部24が文字や画像を表示する表示部で構成されている場合には、報知部24は、検出部23による検出結果を表示する。また、報知部24が音を出力する出音部で構成されている場合には、報知部24は、検出部23による検出結果を知らせる音声を出力したり、この検出結果が予め定められた検出結果である場合に音を出力したりする。
【0017】
以上の発信部21、受信部22、検出部23、および報知部24は、CPU、メモリ(RAM)、ハードディスクなどを用いて実現される。
【0018】
ハードディスクは、オペレーティングシステムや、潤滑油の状態を検出するための一連の処理を実行するためのプログラムなどを記憶する。なお、ハードディスクは、非一時的な記録媒体であればよく、例えば、EPROMやフラッシュメモリといった不揮発性のメモリ、CD−ROMなどであってもよい。
【0019】
CPUは、メモリを適宜利用して、ハードディスクに記憶されているデータやプログラムを適宜読み出して、演算や実行を適宜行う。
【0020】
以上のように、流体状態検出システム1は、測定窓11が設けられている容器10と、流体状態検出装置20と、を備えており、流体状態検出装置20により、容器10内の潤滑油に測定窓11を介して電磁波を出射するとともに、この電磁波の反射波、透過波、または再放射された散乱波を受信し、出射した電磁波と受信した電磁波とに基づいて、容器10内の潤滑油の状態を検出する。このため、機器に対して大きな構成の追加や変更を加えることなく、潤滑油の状態を検出することができる。したがって、潤滑油の状態の検出を簡易に行うことができる。
【0021】
また、容器10内の潤滑油の液面は、波打っているなど、平面であるとは限らない。このため、容器10の鉛直上方から潤滑油に対して電磁波を出射すると、受信部22で受信される電磁波に、潤滑油の液面が平面ではないことによる影響が及んでしまい、潤滑油の状態を適正に検出できなくなってしまうおそれがある。
また、潤滑油に含まれている異物は、沈殿することがある。このため、容器の鉛直下方から潤滑油に対して電磁波を出射すると、受信部22で受信される電磁波に、沈殿している異物の影響が及んでしまい、潤滑油の状態を適正に検出できなくなってしまうおそれがある。
そこで、流体状態検出システム1は、測定窓11を、容器10の側壁面に設けている。このため、潤滑油の液面が平面でなかったり、潤滑油に含まれている異物が沈殿していたりしても、これらの影響を受けることなく潤滑油の状態を適正に検出することができる。
【0022】
また、流体状態検出システム1は、検出部23による検出結果を報知する報知部24を備えている。このため、容器10内の潤滑油の状態の検出結果を、報知することができる。
【0023】
なお、本実施形態では、流体状態検出システム1は、潤滑油の状態を検出したが、これに限らず、流体であれば状態を検出することができる。例えば、流体状態検出システム1により、水の汚染度を検出したり、薬品や飲料の品質を検出したりすることもできる。
【0024】
また、潤滑油が流通する配管や、回転部や摺動部といった駆動部の近傍では、潤滑油が流動するため、潤滑油内に気泡が生じたり、潤滑油の量に変化が生じたりする可能性がある。潤滑油内に気泡が生じている場合、受信部22で受信される電磁波に気泡の影響が及んでしまい、潤滑油の状態を適正に検出できなくなってしまうおそれがある。また、潤滑油の量に変化が生じてしまうと、潤滑油の液面が下がるので、発信部21から出射された電磁波が適切に潤滑油に当たらず、潤滑油の状態を適正に検出できなくなってしまうおそれがある。
そこで、本実施形態において、容器10を、上述の配管や上述の駆動部の近傍ではなく、潤滑油を貯留する貯留部としてもよい。貯留部では、上述の配管や上述の駆動部の近傍と比べて、潤滑油の流動が比較的穏やかであるため、潤滑油内に気泡が生じたり、潤滑油の量に変化が生じたりする可能性が低くなる。このため、潤滑油の状態を適正に検出することができる。
【0025】
また、本実施形態において、流体状態検出装置20は、据え置き型の装置であってもよいし、携帯可能な装置であってもよい。
流体状態検出装置20が据え置き型の装置である場合には、測定窓11に対する流体状態検出装置20の位置および角度を固定しておくことができる。このため、発信部21から電磁波を出射するたびに、同じ位置から同じ角度で、電磁波を容器10内の潤滑油に当てることができる。したがって、潤滑油の状態を適正に検出することができる。
一方、流体状態検出装置20が携帯可能な装置である場合には、流体状態検出装置20を持ち運ぶことができるため、利便性を向上させることができる。ただし、この場合には、発信部21から出射された電磁波を測定窓11を介して容器10内の潤滑油に適切に当てることができるように、流体状態検出装置20にレーザーポインタを設けてもよい。また、測定窓11に対する流体状態検出装置20の位置および角度を、発信部21から電磁波を出射するたびに一定にするために、流体状態検出装置20を固定する固定部を、測定窓11を基準として予め定められた位置に設けてもよい。
【0026】
<第2実施形態>
図2は、本発明の第2実施形態に係る流体状態検出システム1Aの概略構成図である。流体状態検出システム1Aは、図1に示した本発明の第1実施形態に係る流体状態検出システム1とは、容器10の代わりに容器10A、10Bを備える点と、流体状態検出装置20の代わりに流体状態検出装置20Aを備える点と、管理装置30を備える点と、で異なっており、他の部分については同様の形態をしている。このため、第1実施形態と同様の形態をしている部分については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0027】
容器10A、10Bは、容器10と同様に、潤滑油が流通する配管や、回転部や摺動部といった駆動部の近傍や、潤滑油を貯留する貯留部などである。容器10Aの側壁面には、測定窓11Aが設けられ、容器10Bの側壁面には、測定窓11Bが設けられている。測定窓11A、11Bは、測定窓11と同様に、電磁波を透過する材料で形成されている。また、容器10Aには、容器10Aを一意に識別できる情報が書き込まれたRFIDタグ12Aが取り付けられており、容器10Bには、容器10Bを一意に識別できる情報が書き込まれたRFIDタグ12Bが取り付けられている。
【0028】
流体状態検出装置20Aは、発信部21、受信部22、検出部23、および報知部24に加えて、RFIDリーダ25および通信部26を備える。RFIDタグ12A、12BおよびRFIDリーダ25は、容器10A、10Bを識別する識別部として機能する。
【0029】
流体状態検出装置20Aは、携帯可能な装置である。このため、流体状態検出装置20Aは、発信部21から出射された電磁波を容器10A内の潤滑油に測定窓11Aを介して当てることで、容器10A内の潤滑油の状態を検出することができ、発信部21から出射された電磁波を容器10B内の潤滑油に測定窓11Bを介して当てることで、容器10B内の潤滑油の状態を検出することができる。
【0030】
RFIDリーダ25は、RFIDタグ12Aに書き込まれている情報と、RFIDタグ12Bに書き込まれている情報と、を適宜読み取る。容器10A内の潤滑油に向かって電磁波を出射した際には、RFIDリーダ25は、RFIDタグ12Aから、容器10Aを一意に識別できる情報を読み取る。容器10B内の潤滑油に向かって電磁波を出射した際には、RFIDリーダ25は、RFIDタグ12Bから、容器10Bを一意に識別できる情報を読み取る。
【0031】
通信部26は、検出部23により検出された潤滑油の状態と、RFIDリーダ25により読み取られた情報と、を紐付けて管理装置30に送信する。このため、管理装置30には、検出部23により検出された潤滑油の状態が、容器10A、10Bのどちらの内部の潤滑油の状態であるのかを認識することができる。管理装置30は、通信部26から送信された情報を記憶する。
【0032】
以上のように、流体状態検出システム1Aは、本発明の第1実施形態に係る流体状態検出システム1と同様に、容器10A、10Bのそれぞれの側壁面に測定窓11A、11Bのそれぞれを設けており、流体状態検出装置20Aに発信部21、受信部22、検出部23、および報知部24のそれぞれを設けている。このため、流体状態検出システム1Aは、本発明の第1実施形態に係る流体状態検出システム1と同様の効果を奏することができる。
【0033】
また、流体状態検出システム1Aは、容器10Aに、容器10Aを一意に識別できる情報が書き込まれたRFIDタグ12Aを取り付けるとともに、容器10Bに、容器10Bを一意に識別できる情報が書き込まれたRFIDタグ12Bを取り付けている。また、流体状態検出装置20AにRFIDリーダ25を設け、このRFIDリーダ25により、容器10A内の潤滑油に向かって電磁波を出射した際に、RFIDタグ12Aから情報を読み取り、容器10B内の潤滑油に向かって電磁波を出射した際に、RFIDタグ12Bから情報を読み取る。さらに、検出部23により検出された潤滑油の状態と、発信部21により電磁波を出射した際にRFIDリーダ25により読み取られた情報と、を紐付ける。このため、検出部23により検出された潤滑油の状態が、容器10A、10Bのどちらの内部の潤滑油の状態であるのかを、識別することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、流体状態検出システム1Aは、潤滑油の状態を検出したが、これに限らず、流体であれば状態を検出することができる。例えば、流体状態検出システム1Aにより、水の汚染度を検出したり、薬品や飲料の品質を検出したりすることもできる。
【0035】
また、本実施形態において、容器10A、10Bを、上述の配管や上述の駆動部の近傍ではなく、潤滑油を貯留する貯留部としてもよい。貯留部では、上述の配管や上述の駆動部の近傍と比べて、潤滑油の流動が比較的穏やかであるため、潤滑油内に気泡が生じたり、潤滑油の量に変化が生じたりする可能性が低くなる。このため、潤滑油の状態を適正に検出することができる。
【0036】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計なども含まれる。
【0037】
なお、本発明は、例えば水圧機器に適用することもできる。
【符号の説明】
【0038】
1、1A 流体状態検出システム
10、10A、10B 容器
11、11A、11B 測定窓
12A、12B RFIDタグ
20、20A 流体状態検出装置
21 発信部
22 受信部
23 検出部
24 報知部
25 RFIDリーダ
26 通信部
30 管理装置
図1
図2