特許第6795916号(P6795916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795916
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 37/28 20060101AFI20201119BHJP
   D06F 39/14 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   D06F37/28
   D06F39/14 Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-117953(P2016-117953)
(22)【出願日】2016年6月14日
(65)【公開番号】特開2017-221326(P2017-221326A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年4月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山村 翔悟
(72)【発明者】
【氏名】臼井 良典
(72)【発明者】
【氏名】長井 智
【審査官】 柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−204928(JP,A)
【文献】 特開2009−207651(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0008808(US,A1)
【文献】 特開2015−204910(JP,A)
【文献】 特開平03−041919(JP,A)
【文献】 実開平04−064387(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 37/00−37/40
D06F 39/00−39/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯機本体と、
前記洗濯機本体の上部に設けられた洗濯物出入用の開口部と、
前記開口部を開閉する蓋と、
前記蓋を支持する支持部材と、
前記支持部材に設けられ、前記蓋の開又は閉動作に抵抗を付与するダンパと、
前記ダンパを保持するダンパホルダと、
前記蓋の開動作方向に付勢するバネと、を備え、
前記ダンパは前記蓋に固定され、前記ダンパホルダに設けられたダンパ保持部の少なくとも一部は前記ダンパの外周を覆うようにして前記ダンパを保持しており、
前記ダンパホルダは、下部にベース部を有し、
前記洗濯機本体は
前記ダンパホルダに対応する位置に設けられて前記ベース部が貫通可能な開口部を有するトップカバーと、
前記トップカバーとは別の構成であって、前記トップカバーの内部に設けられて、前記トップカバーの前記開口部の下方に設けられて前記ベース部が挿入可能なダンパホルダ保持部を有するトップカバー補強板と、を有し
前記ダンパホルダ前記ベース部は、前記トップカバーの前記開口部及び前記ダンパホルダ保持部を貫通するように挿入された状態で前記トップカバー補強板の前記ダンパホルダ保持部に保持される洗濯機。
【請求項2】
前記支持部材は、前記蓋の回動軸となるシャフトを備えており、
前記ダンパホルダ保持部は、前記シャフトを保持するシャフト保持部を備えている請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記バネは、当該バネを構成する巻線の端部に二つの直線部を有しており、前記トップカバー補強板は、前記直線部の一方を貫通させるための開口部を備え、前記直線部の下端は、前記トップカバーに設けられた係止部により保持される請求項1又は2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記ダンパは複数設けられており、
前記ダンパホルダは、前記複数のダンパを保持する請求項1から3のいずれか一項に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記ダンパホルダのベース部下端は、前記バネの直線部の下端よりも上方に位置する請求項1から4のいずれか一項に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
全自動洗濯機において、近年、洗濯蓋にガラス面材を採用したフラットなデザインの1枚蓋が好まれる傾向にある。ガラス面材を採用することで、洗濯蓋の重量は従来の樹脂部品で構成された蓋よりも重くなるため、蓋が自重で倒れたり、急激に閉まったりすることに対する安全対策と、蓋を開ける時の操作性への配慮が必要となる。そのために洗濯蓋の回動軸部すなわちヒンジ部の構成として、蓋が開閉する速度を減衰するダンパと、操作力を軽減するための巻きバネを搭載することが考えられる。
【0003】
しかし、洗濯蓋が重くなることによって回動軸部に発生する応力が大きくなるため、回動軸部周りの部品、例えば、ダンパの保持部品等の破損が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−204910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、蓋の回動軸部に発生する応力が大きくなっても、ダンパの保持部品等の破損を回避できる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態による洗濯機は、洗濯機本体と、前記洗濯機本体の上部に設けられた洗濯物出入用の開口部と、前記開口部を開閉する蓋と、前記蓋を支持する支持部材と、前記支持部材に設けられ、前記蓋の開又は閉動作に抵抗を付与するダンパと、前記ダンパを保持するダンパホルダと、前記蓋の開動作方向に付勢するバネと、を備え、前記ダンパは前記蓋に固定され、前記ダンパホルダに設けられたダンパ保持部の少なくとも一部は前記ダンパの外周を覆うようにして前記ダンパを保持しており、前記ダンパホルダは、下部にベース部を有し、前記洗濯機本体は、前記ダンパホルダに対応する位置に設けられて前記ベース部が貫通可能な開口部を有するトップカバーと、前記トップカバーとは別の構成であって、前記トップカバーの内部に設けられて、前記トップカバーの前記開口部の下方に設けられて前記ベース部が挿入可能なダンパホルダ保持部を有するトップカバー補強板と、を有し、前記ダンパホルダ前記ベース部は、前記トップカバーの前記開口部及び前記ダンパホルダ保持部を貫通するように挿入された状態で前記トップカバー補強板の前記ダンパホルダ保持部に保持される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る洗濯機の構成例を示すものであり、蓋が閉じられた閉状態を示す洗濯機の斜視図
図2】本実施形態に係る洗濯機の構成例を示すものであり、蓋が開いた開状態を示す洗濯機の斜視図
図3】開状態における洗濯機の側面図
図4】閉状態における洗濯機の上部を示す縦断側面図
図5】蓋及び回動軸部の外観構成を示す斜視図
図6】蓋、回動軸部内部、及びトップカバー補強板の概略構成を示す分解斜視図
図7】回動軸部内部の概略構成を示す斜視図
図8】トップカバーにダンパホルダ及びバネが装着された状態の概略構成を示す斜視図
図9図8からダンパホルダを取り去った状態を示す斜視図
図10図8のA−A線における断面の概略構成を示す縦断面図であり、バネのトップカバーへの係止状態の概略構成を示す側面縦断面図
図11】(a)ダンパホルダとダンパの分解状態の概略構成を示す斜視図、(b)ダンパの軸部における分解縦断面図
図12】(a)ダンパホルダとダンパの装着状態の概略構成を示す斜視図、(b)ダンパの軸部における縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態による洗濯機を、図面を参照しながら説明する。なお、実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
図1から図4に例示する洗濯機1は、洗濯槽の回転軸が縦方向であるいわゆる縦軸型の洗濯機である。洗濯機1は、洗濯機本体2、及び、洗濯機本体2の上部に矩形板状の蓋3を備える。蓋3の左右方向の幅は、洗濯機本体2の左右方向の幅とほぼ同じ寸法となっている。なお、以下、「ほぼ同じ寸法」とは、両者が完全に一致する寸法である場合を含み、また、両者の寸法が同一と見做せるほど僅かに異なる場合も含む。
【0009】
洗濯機本体2は、例えば鋼板により構成される矩形箱状の外箱4と、例えば合成樹脂により構成されるトップカバー5と、を備える。トップカバー5は、外箱4の上部に設けられている。即ち、トップカバー5は、洗濯機本体2の上部を構成する。トップカバー5は例えばPP(ポリプロピレン)樹脂により構成されている。
【0010】
図4に例示するように、外箱4の内部には、洗濯水を溜める水槽6が、図示しない弾性吊持機構により弾性的に支持されている。そして、この水槽6の内部には、洗濯物が収容される洗濯槽7が回転可能に設けられている。洗濯槽7の回転軸は、洗濯機本体2の上下方向に延びる縦軸である。水槽6の上部には、内蓋8を有する水槽カバー9が設けられている。
【0011】
トップカバー5は、下面が開口し、上面が前方に向けて下降傾斜する薄形の中空箱状をなす。トップカバー5の中央部には、洗濯槽7の上方に位置して、洗濯物出入用の開口部10が設けられている。開口部10は、前側が円弧状に開口し、後側が矩形状に開口する。開口部10は、トップカバー5の上面から下面にかけて同じ形状、つまり、前側が円弧状、後側が矩形状となる、上下方向に深さを有した開口となっている。この場合、トップカバー5の上面は前方に向けて下降傾斜しているので、開口部10の深さは、前側よりも後側の方が深い。
【0012】
開口部10を開閉する蓋3は、トップカバー5の上面において前後方向に回動可能に設けられている。即ち、蓋3の基端部には、左右方向に延びる回動軸部11が設けられている。回動軸部11は、洗濯機本体2に対し、蓋3を回動可能に支持する支持部材である。回動軸部11は、蓋3の基端部において当該蓋3の左右方向に延びる円筒状をなしている。
【0013】
一方、トップカバー5の上部において開口部10よりも後側となる部分には、トップカバー5の左右方向に延びる凹部12が設けられている。凹部12は、円筒状の回動軸部11の形状に対応するように断面円弧状に窪んだ形状となっている。凹部12の左右方向の幅は、トップカバー5の左右方向の幅、換言すれば洗濯機本体2の左右方向の幅とほぼ同じ寸法となっている。従って、凹部12は、その左右方向の両端部が塞がれておらず、洗濯機本体2の側方に向けて露出した構成となっている。そして、蓋3の回動軸部11は、洗濯機本体2側の凹部12に収容される。これにより、蓋3は、洗濯機本体2の上部に回動可能に支持される。
【0014】
トップカバー5の上部、換言すれば洗濯機本体2の上部には、開口部10を閉じた状態の蓋3を支持する蓋支持部13が設けられている。蓋支持部13は、開口部10の周囲において平面状に設けられている。この場合、蓋支持部13は、開口部10の前端部を除いて当該開口部10の周囲を囲むように形成されている。
【0015】
また、トップカバー5の前部の上部、換言すれば洗濯機本体2の前部の上部には、洗濯機1に各種の操作を入力するための操作パネル14が設けられている。操作パネル14は、蓋支持部13の前部において当該蓋支持部13に連続するように設けられている。蓋支持部13の上面と操作パネル14の上面は、面一となっている。これにより、開口部10の周囲は、蓋支持部13の上面と操作パネル14の上面とからなる、段差の無い連続した平面部によって囲まれた状態となっている。操作パネル14の後部の中央部には、開口部10の前側の開口形状に沿って円弧状に窪む窪み部15が設けられている。
【0016】
蓋3の本体部は、裏面カバー16とガラス面材17との間にガラス貼付部材18を備える。裏面カバー16は、例えば結晶性の合成樹脂材料により構成され、薄型の矩形箱状をなしている。裏面カバー16は、蓋3の裏面を構成する。蓋3の裏面は、図1に例示するように当該蓋3が開口部10を閉じた閉状態においては下面となり、図2に例示するように当該蓋3が開口部10を開いた開状態においては前面となる面である。
【0017】
ガラス貼付部材18は、例えば合成樹脂材料により構成され、裏面カバー16の内部に収容される。ガラス面材17は、例えば硬質ガラス板により構成され、矩形の薄板状をなしている。ガラス面材17は、着色されていてもよいし、透明であってもよい。ガラス面材17は、ガラス貼付部材18の上面に図示しない両面粘着テープを介して貼り付けられる。ガラス面材17は、蓋3の表面を構成する。蓋3の表面は、図1に例示するように当該蓋3が開口部10を閉じた閉状態においては上面となり、図2に例示するように当該蓋3が開口部10を開いた開状態においては後面となる面である。
【0018】
そして、蓋3の先端部には、当該蓋3の左右方向、換言すれば洗濯機本体2の左右方向に延びる手掛部20が設けられている。手掛部20は、ユーザが蓋3を開閉する際に手指を掛けるためのものである。この場合、手掛部20は、蓋3の左右方向の幅、換言すれば洗濯機本体2の左右方向の幅とほぼ同じ寸法となっている。なお、手掛部20は、蓋3の左右方向の幅、換言すれば洗濯機本体2の左右方向の幅よりも短いものであってもよい。即ち、本実施形態に係る洗濯機は、蓋3の先端部の一部のみに手掛部を設ける構成も許容される。
【0019】
また、図4に例示するように、回動軸部11の内部には、蓋3の回動中心となる回動軸11aが設けられている。回動軸11aは、蓋3の表面と裏面の間に収まる範囲内に設けられている。回動軸11aは、蓋3が開口部10を閉じた状態であるのか開いた状態であるのかに関わらず、常に、開口部10の後端部よりも高い位置において、その高さが変動することなく維持される。回動軸部11には後述するダンパ50を保持するダンパホルダ32が設けられており、ダンパホルダ32の下部のベース部32aは、トップカバー5に設けられたダンパホルダ保持部60bに挿入されて保持されている。ダンパホルダ保持部60bは後述するトップカバー補強板60により構成されており、トップカバー補強板60は例えば金属製である。
【0020】
一方、図2に例示するように、操作パネル14は、内部の基板23上にリードスイッチ24を備えている。リードスイッチ24は、蓋3が開口部10を閉じた閉状態において、磁石22を有する操作パネル対応部21により覆われる部分の下方に位置している。リードスイッチ24は、磁石22が所定距離以内に接近するとオンし、磁石22が所定距離以上離れるとオフする。洗濯機1の動作全般を制御する図示しない制御装置は、このリードスイッチ24のオン/オフに基づいて、蓋3の開閉を検知する。
【0021】
図2図4図5及び図6に示すように、蓋3の裏面には、裏面カバー16が設けられており、裏面カバー16には複数の弾性部材26が取り付けられている。これらの弾性部材26は、蓋3が閉じられる際に、洗濯機本体2の上面に接触する。これにより、弾性部材26は、蓋3が閉じられる際に発生する衝撃を吸収する。この場合、弾性部材26は、蓋3の裏面のうち蓋支持部13の上面に接触する部位のみに設けられており、蓋3の裏面のうち操作パネル14の上面に接触する部分には設けられていない。なお、弾性部材26は、蓋3の裏面のうち操作パネル14の上面に接触する部分にも設けてもよい。
【0022】
また、洗濯機1は、水準器27および蓋ロック機構部28を備える。水準器27は、洗濯機1の設置状態を水平に維持するための基準となるものである。蓋ロック機構部28は、蓋3の裏面に設けられた突起孔部29が挿入される挿入孔部30と、この挿入孔部30に挿入された蓋3の突起孔部29に係止する図示しない係止部と、を備える。蓋ロック機構部28は、蓋3が開口部10を閉じることに伴い挿入孔部30に挿入された突起孔部29に、図示しない係止部を係止させる。これにより、蓋ロック機構部28は、蓋3を、開口部10を閉じた状態で回動不能にロックする。
【0023】
水準器27および蓋ロック機構部28は、洗濯機本体2の上部において開口部10の前部を挟んで左右に分かれて配置されている。この場合、水準器27および蓋ロック機構部28は、何れも、洗濯機本体2の上部のうち蓋支持部13の前部に設けられている。
【0024】
開口部10を開閉する蓋3の基端部には、左右方向に延びる回動軸部11が設けられており、図5に示すように、通常の状態ではヒンジカバー31によって覆われている。ヒンジカバー31にはスリット31aが設けられており、回動軸部11内部に設けられたバネ36の下側に延びる直線部である第2直線部36bがスリット31aから突出している。バネ36は、蓋3を、その開放動作方向に付勢している。この時、ダンパホルダ32の下部端よりも、第2直線部36bの下端の方が下方に位置している。例えば、ヒンジカバー31の下部端を基準とすると、ヒンジカバー31下部端からダンパホルダ32下部端までの距離D1よりも、ヒンジカバー31下部端から第2直線部36b下端までの距離D2の方が大きい。バネ36及び第2直線部36bについては後述する。
【0025】
回動軸部11には、内部に設けられたシャフト38が露出する間隙部31bが設けられている。間隙部31bにおいて、トップカバー5に設けられたシャフト保持部60d(図6参照)によりシャフト38が保持されることにより、蓋3が回動可能に保持されている。シャフト保持部60dについては後述する。
【0026】
回動軸部11は、図6に示すように、洗濯機本体2のトップカバー5内部に設けられたトップカバー補強板60のダンパホルダ保持部60bに、ダンパホルダ32のベース部32aを挿入して嵌合することにより保持され、これにより蓋3が洗濯機本体2に固定されている。トップカバー補強板60及びダンパホルダ保持部60bはダンパホルダ32の保持部として機能する。また、ダンパホルダ保持部60bは、ダンパホルダ32のベース部32aの挿入部である。トップカバー5の上面には、図9に示すように、その中央部のダンパホルダ32に対応する位置に開口部5bが設けられており、更に開口部5bには上面から下方に所定の深さを有する側壁部5cが設けられている。
【0027】
図6に示すように、開口部5bの下方にはダンパホルダ保持部60bが配置されており、ダンパホルダ32のベース部32aは開口部5b及びダンパホルダ保持部60bを貫通して装着される。装着状態で、ダンパホルダ32はベース部32aにおいて、開口部5bの側壁部5c、及びトップカバー補強板60のダンパホルダ保持部60bにより保持されている。
【0028】
トップカバー補強板60は、例えば金属により構成されている。トップカバー補強板60は左右方向に長手方向を有し、図6に示されるように、前後に折り返し部60eを備えた金属板により構成されている。折り返し部60eによりトップカバー補強板60の機械的強度が向上する。また、バネ36の下側に延びる第2直線部36b及びこれを係止するためトップカバー5に設けられる係止部5aを通すための穴部であるバネ端通し穴60aが、トップカバー補強板60の左右端部付近に設けられている。係止部5aについては後述する。
【0029】
トップカバー補強板60の中央部には、ダンパホルダ32のベース部32aを保持するダンパホルダ保持部60bが設けられている。バネ端通し穴60a、及びダンパホルダ保持部60bは、トップカバー補強板60の金属板部に穴部を設けることにより構成されている。
【0030】
トップカバー補強板60は、左右端部に固定部60cを有している。トップカバー補強板60は固定部60cにおいて、図示しないネジを用いて、トップカバー5に螺設固定されている。ここで、トップカバー5は例えばPP樹脂により形成されているため、強度が向上している。これにより、蓋3の質量が大きくなり、ダンパホルダ32に大きな応力が生じる場合であっても、ダンパホルダ32を保持する強度が向上し、また、トップカバー5の破損などを回避することができる。
【0031】
図7にも示すように、回動軸部11は、補強部材42を備えており、この補強部材42に、後述するダンパ50を保持するダンパホルダ32、ダンパカバー40、バネ36、及びシャフト38が備えられている。ダンパホルダ32は複数のダンパ50を保持しており、図に示すように例えばダンパホルダ32の左右に二つのダンパ50を保持する。
【0032】
補強部材42は左右方向を長手方向とした金属製板材であり、この金属製板材を折り返すことにより、前面部42a、底面部42b及び背面部42gを構成している。補強部材42はネジ穴40bを備えており、図示しないネジにより蓋3に螺設固定されている。
【0033】
補強部材42は、背面部42gの左右に、前方に突出し、通し穴38cを備えた一対のシャフト固定部38a、38bを備えている。シャフト38は、このシャフト固定部38a、38bの通し穴38cに貫通されることにより装着されている。また、シャフト38は、図6に示されるように、トップカバー補強板60に設けられたシャフト保持部60dによって保持され、トップカバー補強板60を介してトップカバー5に固定されている。従って、補強部材42は、シャフト保持部60d及びダンパホルダ32によって、トップカバー補強板60及びトップカバー5に保持されている。これにより、蓋3の回動軸部11が強固に保持されるため、ひいては蓋3の保持強度が向上する。
【0034】
バネ36は、図7に示すように、ねじりコイルバネであり、金属線が巻回してなるコイル部36cと、コイル部36cの両端に位置し、上方に延びる直線部たる第1直線部36a、及び、下方に延びる直線部たる第2直線部36bを備えて構成されている。第1直線部36aと第2直線部36bは、バネにねじり力を付加していない状態で、略180度の角度を有している。コイル部36cはコイル軸を中心にして直巻した金属線により構成されており、コイル部36c内部には空洞が形成されている。
【0035】
補強部材42は、バネ36の第1直線部36aを係止するための第1係止部43、及び、第2直線部36bを係止するための第2係止部44を備えている。図6図7に示すように、バネ36は、コイル部36c内の空洞にシャフト38を貫通させ、第1直線部36aを第1係止部43に係止し、第2直線部36bを第2係止部44に係止して保持されている。シャフト38は、蓋3の支持部たる回動軸部11のバネ36の中心部の空洞を貫通し、蓋3の回動軸となる。
【0036】
図7に示すように、第2直線部36bの下端は、ダンパホルダ32のベース部32aの下端よりも下方に位置している。例えば、補強部材42下端の位置を基準にすると、補強部材42下端からベース部32a下端までの距離E1よりも、補強部材42下端から第2直線部36b下端までの距離E2の方が大きい。
【0037】
図10に示すように、トップカバー5の上部には、トップカバー5上面から下方向に向かって細長い四角柱状又は円柱状に構成され、上方が開放された有底凹部である係止部5aが設けられている。バネ36の下側に延びる第2直線部36bは、装着時には係止部5aに挿入されている。係止部5aは、トップカバー補強板60のバネ端通し穴60aに貫通するようにして設けられている。
【0038】
トップカバー5上面からトップカバー5内部に配置された係止部5aの大きさは、第2直線部36bの大きさに対して余裕があるため、係止部5aに第2直線部36bが挿入しやすくなっている。第2直線部36bは、装着状態において、バネ36による後ろ方向への付勢力により、係止部5aの背面側に付勢されて係止され、第2直線部36bの後ろ方向に動きは係止部5aにより制限されている。なお、トップカバー5及び係止部5aはPP樹脂により構成されているため、機械的強度が高くなっている。
【0039】
図11図12に示すように、ダンパ50は、ダンパカバー40により保持されるカバー被保持部50aと、ダンパホルダ32により保持されるホルダ被保持部50bにより構成されている。ダンパホルダ32は、図6図7に示されるように、ダンパ50を蓋3に固定するダンパカバー40によって一体的に蓋3に取り付けられている。すなわち、ダンパホルダ32はダンパ50を介して、蓋3に対して回動可能に固定されている。
【0040】
図7に示すように、ダンパカバー40はネジ40aにより補強部材42に螺設されている。ダンパホルダ32、及び、ダンパホルダ32内部に保持されるダンパ50はダンパ機構を構成する。ダンパホルダ32は、内部に保持するダンパ50を回転軸として、ダンパによる抵抗力を付与された状態で回動可能に構成されている。すなわち、ダンパ機構は、蓋3の開又は閉動作に抵抗力を付与することにより蓋3の動く速度を減衰させ、これにより蓋3がゆっくり動作するようにしている。
【0041】
ダンパ50は、例えばオイルダンパ等の流体ダンパであり、ダンパ50に回転力を付与した場合に、ダンパ50内部に封入したオイルを図示しない狭い通路を通すことでオイルの流れを制限し、これによってダンパ50の回転動作に抵抗を付与する。ダンパ50の反対方向の回転では、ダンパ50内のオイルが、図示しない別の流路であって抵抗を付与しない経路を通過するように構成され、これによってダンパ50の回転に抵抗を付与されないようになっている。従ってダンパ50は、一方方向への回転にのみに抵抗を与える片利き構造となっている。
【0042】
図11図12に示すように、ダンパ50は左右で向きを反転させてダンパホルダ32に装着されている。このため、蓋3の開動作では例えば右側のダンパ50が抵抗を付与し、蓋3の閉動作では左側のダンパ50が抵抗を付与するように構成され、一方を開側のダンパ50として、他方を閉側のダンパ50としている。これにより、蓋3の開閉いずれの動作においてもダンパ50による抵抗が付与され、蓋3の開閉速度が減衰されるため、蓋3の質量が大きくなっても蓋3の開閉を静かに行うことができる。
【0043】
なお、蓋3の開動作、又は閉動作のいずれかの回動に対してのみ抵抗を付与したい場合には、ダンパホルダ32に開又は閉動作の一方の抵抗を付与するように、一つのダンパ50を装着してもよい。蓋3の開閉に対して必要な方向のみに抵抗を付与すれば十分な場合は、部品点数を削減することができるため、コスト削減に貢献する。
【0044】
ホルダ被保持部50bは、例えば、円柱の側面を平行な平面により切り取った形状の平面部50cを有している。ダンパホルダ32は、ダンパ50を保持するダンパ保持部32bを備えている。ダンパ保持部32bは、ダンパホルダ32内に形成され、ホルダ被保持部50bの外周の形状に対応した形状であって、左右方向に開口を備える中空構造となっている。ダンパ50は、左右方向から、この中空構造のダンパ保持部32bに、挿入されて装着され保持される。
【0045】
ダンパ保持部32bは、平面部50cに対応した平面部32cを備えている。ダンパ50の装着時には、ダンパ50のホルダ被保持部50bと、ダンパホルダ32のダンパ保持部32bとが、お互いの形状に合致するような位置関係で挿入されて嵌合される。ダンパ保持部32bは、装着時にホルダ被保持部50bの外周を覆うように構成されている。またこの時、平面部50cと平面部32cは対向した位置で接しており、これにより、ダンパホルダ32とダンパ50との相対的な回転が制限される。ダンパ保持部32bには、一部にスリットが設けられたり、切り欠けが存在したりしてもよく、少なくとも、ホルダ被保持部50bの外周を覆う部分が存在していればよい。なお、ダンパ保持部32b及びホルダ被保持部50bの上記形状は例示であって、ダンパ保持部32b及びホルダ被保持部50bの形状は相互に相対的な回転が制限可能な形状であればどのような形状であってもよい。
【0046】
また、ダンパ50は、カバー被保持部50aのダンパホルダ32装着側とは反対側に突起部50dを備えている。突起部50dは円柱の側面を平行な平面により切り取った形状の平面部50eを備えている。ダンパカバー40の内側は、突起部50dの形状に対応する形状となっている。これにより、ダンパ50がダンパカバー40により蓋3に固定された際には、ダンパカバー40とカバー被保持部50aとの相対的な回転が制限される。
【0047】
実施形態に係る洗濯機1によれば以下の効果を奏する。
実施形態に係る洗濯機1によれば、洗濯機1は、洗濯機本体2と、洗濯機本体2の上部に設けられた洗濯物出入用の開口部10と、開口部10を開閉する蓋3と、蓋3を支持する支持部材たる回動軸部11と、を備えている。回動軸部11には、蓋3の開又は閉動作に抵抗を付与するダンパ50と、蓋3の開動作方向に付勢するバネ36と、ダンパ50を保持するダンパホルダ32と、を備えている。ダンパ50は、蓋3に固定され、ダンパホルダ32のダンパ保持部32bは、ダンパ50の外周の少なくとも一部を覆うようにしてダンパ50を保持している。
【0048】
これによれば、ダンパホルダ32のダンパ保持部32bはダンパ50の周囲を覆うようにして構成されているため、強度が向上されている。従って、質量が増した蓋3によってダンパホルダ32に大きな応力が付与されても、ダンパホルダ32のダンパ保持部32bが開いてダンパホルダ32を保持できなくなることを回避できる。すなわち、ダンパホルダ32の強度が向上されるため、蓋3の開閉の繰返しによる経年劣化を低減することができる。なお、ダンパ保持部32bのすべてがダンパ50を覆うように構成されている必要はなく、一部にスリットや切り欠け部が存在していても、少なくともダンパ50の外周を覆う部分が存在すれば良い。このようにダンパ50の外周を覆う部分が存在すれば、ダンパ保持部32bの強度は向上しており、ダンパ保持部32bが開いてしまうことがないようにすることができる。
【0049】
実施形態に係る洗濯機1によれば、ダンパホルダ32を保持するトップカバー補強板60(保持部)と、ダンパホルダ32に設けられたベース部32aと、トップカバー補強板60に設けられ、ベース部32aを挿入可能なダンパホルダ保持部60b(挿入部、保持部)と、を備え、ベース部32aがダンパホルダ保持部60bに挿入されることによりダンパホルダ32が保持される構成を備える。
【0050】
この構成によれば、ダンパホルダ32のベース部32aはトップカバー5内のトップカバー補強板60のダンパホルダ保持部60bに挿入されて保持されている。金属製のトップカバー補強板60によってダンパホルダ32が保持されているため、ダンパホルダ32の保持強度が向上される。また、トップカバー5はPP樹脂により構成されているため、これによっても強度が増しており、ダンパホルダ32に大きな応力が付与されても、ダンパホルダ32の保持が緩んだり、トップカバー5が破損したりすることを回避できる。
【0051】
また、組み立て時に、ダンパホルダ32をトップカバー補強板60のダンパホルダ保持部60bに挿入して保持するため、蓋3の位置が安定し、トップカバー補強板60のシャフト保持部60dと、蓋3側のシャフト38の軸がセンターで位置決めされる。このため、シャフト38をスライドさせてシャフト38をシャフト保持部60dに通す作業が容易になるため、組み立て性が向上する。
【0052】
実施形態に係る洗濯機1によれば、蓋3の支持部たる回動軸部11は、バネ36の中心部を貫通し、蓋3の回動軸となるシャフト38を備えている。ダンパホルダ保持部60bを備えるトップカバー補強板60は、シャフト38を保持するシャフト保持部60dを備えている。この構成によれば、ダンパホルダ32とシャフト38はトップカバー補強板60によって保持されるため、回動軸部11の強度が向上する。このため、蓋3の質量が増しても、回動軸部11が破損するなどの不具合を抑制できる。
【0053】
実施形態に係る洗濯機1によれば、バネ36は、当該バネ36を構成する直巻きのコイル部36cの端部に位置する二つの直線部たる第1直線部36a及び第2直線部36bを有している。トップカバー補強板60は、第2直線部36bを貫通させるための開口部であるバネ端通し穴60aを備え、第2直線部36bの下端は、洗濯機本体2のトップカバー5に設けられた係止部5aにより係止される。
【0054】
これによれば、トップカバー補強板60を貫通するようにして第2直線部36bの挿入場所を設けることが可能となるため、第2直線部36bの係止場所を別途設ける必要がなく、洗濯機1の省スペース化に寄与する。
【0055】
実施形態に係る洗濯機1によれば、ダンパ50は複数設けられており、ダンパホルダ32は、複数のダンパ50を保持する。実施形態では二つのダンパ50を用いた例を示している。ダンパ50は互いに向きを反転させて保持されている。ダンパ50は一方方向への回転にのみに抵抗を与える片利き構造であるため、左右のダンパ50の向きを反転させてダンパホルダ32に保持されれば、ダンパホルダ32及び複数のダンパ50により構成されるダンパ機構は、蓋3の開側、及び閉側の両方向の動きを減衰させるダンパとして機能する。
【0056】
実施形態に係る洗濯機1によれば、ダンパホルダ32のベース部32a下端は、バネ36の第2直線部36bの下端よりも上方に位置する。これにより、回動軸部11を含めた蓋3をトップカバー5に装着する際に、第2直線部36bを先に係止部5aの途中まで挿入し、この状態を保持しつつダンパホルダ32のベース部32aをダンパホルダ保持部60bに位置決めして挿入することができるため、第2直線部36bを作業者が手で押さえる必要がなく、組み立て作業が容易となる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
図面中、1は洗濯機、2は洗濯機本体、3は蓋、5はトップカバー、5aは係止部、10は開口部、11は回動軸部(支持部材)、32はダンパホルダ、32aはベース部、32bはダンパ保持部、36はバネ、36aは第1直線部、36bは第2直線部(直線部)、38はシャフト、50はダンパ、60はトップカバー補強板(保持部)、60aバネ端通し穴、60bはダンパホルダ保持部(保持部、挿入部)、60dはシャフト保持部を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12