(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の詳細を説明する。
1.クロス共重合体の製造方法
本発明は、配位重合工程とクロス化工程からなる重合工程により得られるクロス共重合体であって、配位重合工程として、複数の遷移金属化合物を含む配位重合触媒を用いてエチレンモノマー、炭素数3〜12のオレフィンモノマーおよび芳香族ポリエンの共重合を行ってエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体を合成し、次にクロス化工程として、このエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体と芳香族ビニル化合物モノマーの共存下、アニオン重合開始剤またはラジカル重合開始剤を用いて重合することを特徴とするクロス共重合体の製造方法である。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0012】
1−1.配位重合工程
1−1−1.モノマー
配位重合工程では、エチレンモノマー、炭素数3〜12のオレフィンモノマーおよび芳香族ポリエンの共重合を行う。
ここで炭素数3〜12のオレフィンモノマーは、例えばαオレフィン、ノルボルネンやビニルシクロヘキサン等の環状オレフィンである。用いられるオレフィンモノマーは一種類でも複数でも良い。好ましくは炭素数4〜12のαオレフィンであり、1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンから選ばれる1種以上である。本発明で最も好ましくは、1−ヘキセンまたは1−オクテンであり、または1−ヘキセンまたは1−オクテンが過半を占める複数のオレフィンモノマーである。
【0013】
ここで、芳香族ポリエンは、特に限定されずに、任意の従来公知の芳香族ポリエンを使用可能であるが、重合反応促進の面および得られる重合体の種々の物性面からは、10以上30以下の炭素数を持ち、複数の二重結合(ビニル基)と単数または複数の芳香族基を有し配位重合可能な芳香族ポリエンであり、二重結合(ビニル基)の1つが配位重合に用いられて重合した状態において残された二重結合がアニオン重合またはラジカル重合可能な芳香族ポリエンであることが好ましい。とりわけ好ましくは、ジビニルベンゼンであり、オルトジビニルベンゼン、パラジビニルベンゼン及びメタジビニルベンゼンのいずれか1種または2種以上の混合物が好適に用いられる。
【0014】
本発明において芳香族ビニル化合物モノマーとしては、スチレンおよび各種の置換スチレン、例えばp−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、o−t−ブチルスチレン、m−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン等が挙げられる。工業的には好ましくはスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、特に好ましくはスチレンが用いられる。
【0015】
1−1−2.配位重合触媒
一般的なクロス共重合体の製造方法は、再表WO00/037517号公報および国際公開WO07/139116号パンフレットに記載の通りである。しかし、これらの公知文献では、配位重合工程で用いられる遷移金属化合物は単独である例のみが具体的に記載されており、複数の遷移金属化合物の使用に関する記載も、示唆もない。本発明は、配位重合工程で用いられる配位重合触媒が複数の遷移金属化合物を含む配位重合触媒であることである。複数の遷移金属化合物を用いることにより、得られるクロス共重合体の物性を幅広く調整することができる。またトレードオフにある構造的特徴や物性を独立に制御することが可能となる。具体的には、クロス共重合体のゲル分率と溶媒分別可能な芳香族ビニル化合物ポリマーの含量、流動性、成形加工性(MFR)と力学物性があげられる。また透明性も向上させることが可能となる。
【0016】
配位重合触媒は、好ましくは、以下のA群から選ばれる遷移金属化合物およびB群から選ばれる遷移金属化合物をともに含む。
【0017】
<A群>
遷移金属化合物が一般式(1)、(2)、(3)で示される遷移金属化合物から選ばれる単数または複数の遷移金属化合物である。
【化1】
一般式(1)中、A
1は、フルオレニル基、または置換フルオレニル基を示し、B
1はシクロペンタジエニル基または置換シクロペンタジエニル基を示す。本置換フルオレニル基は、置換可能な水素の少なくとも1つ以上が炭素数1〜4の炭化水素基で置き換えられているもので、隣り合う置換基は一体となって4〜8員環の環状構造を有しても良い。また、上記の置換シクロペンタジエニル基は、置換可能な水素の少なくとも1つ以上が炭素数1〜2の炭化水素基で置き換えられているものであり、隣り合う置換基は一体となった環状構造を有さない。Y
1は、A
1およびB
1に対して結合を有する置換メチレン基であり、メチレン基の置換基は、水素、炭素数1〜10の炭化水素基である。また、M
1はジルコニウム、ハフニウム、またはチタンから選ばれる金属である。また、X
1は、ハロゲン、炭素数1〜15の炭化水素基、炭素数1〜15のアルコキシド基、炭素数1〜15のアミド基、炭素数3〜15のアルキルシラン基である。nは1または2の整数である。なお、X
1が複数の場合、複数のX
1は互いに結合を有していても良い。一般式(1)で示されるような遷移金属化合物は特開2010−43246号公報に記載されている。
【0018】
一般式(1)で表される遷移金属化合物としては、具体的には、化学式(7)で表されるものが挙げられる。
【化7】
【0019】
【化2】
一般式(2)中、A
2、B
2はそれぞれ独立にベンゾインデニル基または置換ベンゾインデニル基であるか、またはインデニル基、置換インデニル基から選ばれる基である。Y
2は、A
2、B
2と結合を有し、置換基として水素あるいは炭素数1〜20の炭化水素基を有する置換硼素基である。Y
2の置換基は、1〜3個の窒素、硼素、珪素、燐、セレン、酸素または硫黄原子を含んでも良い。また環状構造を有していてもよい。X
2は、それぞれ独立に水素、ハロゲン、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数3〜15のアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数8〜12のアルキルアリール基、炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシリル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、または水素もしくは炭素数1〜22の炭化水素置換基を有するアミド基またはアミノ基である。nは1または2の整数である。また、X
2が複数である場合、複数のX
2は結合を有していてもよい。M
2はジルコニウム、ハフニウムまたはチタンである。一般式(2)で示されるような遷移金属化合物はWO01/068719パンフレットにも記載されている。
【0020】
一般式(2)で表される遷移金属化合物としては、具体的には、化学式(8)で表されるものがあげられる。
【化8】
【0021】
【化3】
一般式(3)中、A
3は非置換もしくは置換シクロペンタフェナンスリル基、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基、非置換もしくは置換インデニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。ここで置換シクロペンタフェナンスリル基、置換ベンゾインデニル基、置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、または置換フルオレニル基とは、置換可能な水素の1個以上が炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR
3基、SiR
3基またはPR
2基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)で置換されたシクロペンタフェナンスリル基、ベンゾインデニル基、シクロペンタジエニル基、インデニル基、またはフルオレニル基である。Y
3は、A
3、B
3と結合を有し、他に水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基、シリレン基、エチレン基、ゲルミレン基、または硼素基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Y
3は環状構造を有していてもよい。B
3は窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含み、窒素原子、酸素原子または硫黄原子でM
3に配位する配位子でY
3と結合を有し、他に水素もしくは炭素数1〜15の置換基を有する基である。M
3はジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。X
3は、水素、ハロゲン、炭素数1−15のアルキル基、炭素数6−10のアリール基、炭素数8−12のアルキルアリール基、炭素数1−4の炭化水素置換基を有するシリル基、炭素数1−10のアルコキシ基、または炭素数1−6のアルキル置換基を有するジアルキルアミド基である。nは、1または2の整数である。一般式(3)で示されるような遷移金属化合物は、WO99/14221号公報EP416815号公報、US6254956号公報に記載されている。高分子量かつ自己架橋の少ない共重合体を活性よく与える点で、一般式(1)または(2)の遷移金属化合物がより好ましく用いられる。
【0022】
一般式(3)で表される遷移金属化合物としては、具体的には、化学式(9)で表されるものがあげられる。
【化9】
【0023】
<B群>
遷移金属化合物が一般式(4)で示される遷移金属化合物
及び化学式(11)で表される遷移金属化合物から選ばれる単数または複数の遷移金属化合物である。
【化4】
式中、A
4、B
4は同一でも異なっていてもよく、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基、または非置換もしくは置換インデニル基から選ばれる基である。ここで置換ベンゾインデニル基、置換シクロペンタジエニル基、または置換インデニル基とは、置換可能な水素の1個以上が炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR
3基、SiR
3基またはPR
2基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)で置換されたベンゾインデニル基、シクロペンタジエニル基、またはインデニル基である。さらに好ましくは非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、または非置換もしくは置換インデニル基である。
Y
4はA
4、B
4と結合を有し、他に置換基として水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基(本置換基には他に1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子、燐原子、または珪素原子を含んでもよい)を有するメチレン基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Y
4は環状構造を有していてもよい。
X
4は、水素、水酸基、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシリル基、または炭素数1〜20の炭化水素置換基を有するアミド基である。nは、1または2の整数である。X
4が複数の場合は結合を有してもよい。M
4はジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。一般式(4)の遷移金属化合物は、例えば再表WO00/037517号パンフレット、国際公開WO2007139116号パンフレットに記載されている。
【化11】
【0024】
一般式(4)で表される遷移金属化合物としては、具体的には、化学式(10)で表されるものがあげられる。
【化10】
【0025】
配位重合行程において、A群一般式(1)または(2)の遷移金属化合物と公知の助触媒からなる配位重合触媒は、比較的高分子量のエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体を高い活性で与えることができる。しかしながら、芳香族ポリエンに対する共重合性が十分ではないため、配位重合行程での芳香族ポリエン転換率が比較的低く、残留芳香族ポリエン量が多くなってしまう。配位重合行程における残留芳香族ポリエン量が多くなると、引き続くクロス化行程において分岐構造やゲルを発生させ、得られるクロス共重合体の力学物性や相溶性、成形加工性を低下させてしまう場合がある。エチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体中の芳香族ポリエン含量を増やそうとして、芳香族ポリエンの使用量を増やすほど分岐構造やゲルを発生させやすくなる。
【0026】
配位重合行程において、A群一般式(3)の遷移金属化合物と公知の助触媒からなる配位重合触媒も、比較的高分子量のエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体を高い活性で与えることができる。しかしながら、配位重合中、エチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体の芳香族ポリエンユニットの芳香族ビニル基を重合しやすく、エチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体の自己架橋による分岐構造やゲルの発生を引き起こしたり、芳香族ポリエンユニットの芳香族ビニル基の含量の低下を引き起こしたりしてしまう。さらに芳香族ポリエンに対する共重合性が十分ではないため、上記同様に配位重合行程での芳香族ポリエン転換率が比較的低く、残留芳香族ポリエン量が多くなってしまう。
【0027】
一方、配位重合行程において、B群一般式(4)の遷移金属化合物と公知の助触媒からなる配位重合触媒は、活性も高く、芳香族ポリエンに対する共重合性が比較的高く、配位重合行程での芳香族ポリエン転換率を高めることが可能で、残留芳香族ポリエン量を低減できるという特徴を有する。しかし、室温以上の実用的な重合条件下では得られるエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体の分子量は低く、従って得られるクロス共重合体の力学物性は大きく低下してしまう。
【0028】
本発明においては、配位重合工程で用いられる配位重合触媒が、A群から選ばれる遷移金属化合物およびB群から選ばれる遷移金属化合物をともに含む配位重合触媒を用いることで、配位重合行程で得られるエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体の分子量および芳香族ポリエンユニット含量を一定以上に維持し、芳香族ポリエン転換率を一定以上に維持し、重合液中の残留芳香族ポリエン量を低減させることができる。さらに好ましくは、A群の一般式(1)から選ばれる遷移金属化合物、およびB群の一般式(4)から選ばれる遷移金属化合物をともに含む配位重合触媒を用いる。より具体的に、好ましくは、配位重合工程で得られるエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体の重量平均分子量Mwが96000以上、好ましくは10万以上、好ましくは12万以上、60万以下、分子量分布(Mw/Mn)は1.5以上20以下、好ましくは2以上10以下、かつ配位重合工程終了時点でのジビニルベンゼン転換率50%以上、好ましくは55%以上の条件を満たすことができる。配位重合工程において、A群から選ばれる触媒、およびB群から選ばれる触媒は同時に用いるのがよい。しかし、配位重合において、A群から選ばれる遷移金属化合物を含む触媒で重合を行い、次いでB群から選ばれる遷移金属化合物、またはこれを含む配位重合触媒を添加してもよい。この場合、最初に添加したA群から選ばれる触媒を一度、適当な方法で失活させてからB群から選ばれる触媒を添加し配位重合を行うのが工業的生産の立場からは好ましい。重合条件や最終的に得られるクロス共重合体に求められる性能、機能により、A群から選ばれる遷移金属化合物およびB群から選ばれる遷移金属化合物の種類や使用量比は任意に変更できる。配位重合工程において、A群から選ばれる触媒、およびB群から選ばれる触媒は同時に用いてもよい。
【0029】
1−1−3.助触媒
上記遷移金属化合物と共に用いる助触媒としては、特に限定されず、従来公知の遷移金属化合物と組み合わせて用いられている公知の助触媒を使用することができるが、そのような助触媒として、重合反応に対する高活性の面からは、メチルアルミノキサン(またはメチルアルモキサンまたはMAOと記す)等のアルモキサンまたは硼素化合物が好適に用いられる。用いられる助触媒の例としては、EP−0872492A2号公報、特開平11−130808号公報、特開平9−309925号公報、WO00/20426号公報、EP0985689A2号公報、特開平6−184179号公報に記載されている助触媒やアルキルアルミニウム化合物が挙げられる。アルモキサン等の助触媒は、遷移金属化合物の金属に対し、アルミニウム原子/遷移金属原子のモル比で0.1〜100000で用いられることが好ましく、特に好ましくは10〜10000の比で用いられる。このモル比が0.1以上とすると有効に遷移金属化合物を活性化でき、このモル比が100000以下とすると助触媒の添加量を抑制することができるので経済的に有利となる。
【0030】
一方、助触媒として硼素化合物を用いる場合には、硼素原子/遷移金属原子のモル比で0.01〜100の比で用いられることが好ましく、特に好ましくは0.1〜10で用いられ、最も好ましくは1.0で用いられる。このモル比が0.01以上とすると有効に遷移金属化合物を活性化することができ、100以下とすると助触媒の添加量を抑制することができるので経済的に有利となる。なお、助触媒としてどのような材料を使う場合であっても、遷移金属化合物と助触媒は、重合設備外で混合、調製しても、重合時に設備内で混合してもよい。
【0031】
1−1−4.重合方法
クロス共重合体製造の配位重合工程でエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体を製造するにあたっては、上記に例示した各モノマー、遷移金属化合物および助触媒を接触させるが、接触の順番、接触方法は任意の公知の方法を用いることができる。
これらの共重合の方法としては溶媒を用いずに液状モノマー中で重合させる方法、あるいはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロ置換ベンゼン、クロロ置換トルエン、塩化メチレン、クロロホルム等の飽和脂肪族または芳香族炭化水素またはハロゲン化炭化水素の単独または混合溶媒を用いる方法がある。好ましくは混合アルカン系溶媒、シクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン等を用いる。重合形態は溶液重合、スラリ−重合いずれでもよい。また、必要に応じ、バッチ重合、連続重合、予備重合、多段式重合等の公知の方法を用いることが出来る。
【0032】
単数や連結された複数のタンク式重合缶やリニアやル−プの単数、連結された複数のパイプ重合設備を用いることも可能である。パイプ状の重合缶には、動的、あるいは静的な混合機や除熱を兼ねた静的混合機等の公知の各種混合機、除熱用の細管を備えた冷却器等の公知の各種冷却器を有してもよい。また、バッチタイプの予備重合缶を有していてもよい。重合温度は、−78℃〜200℃が適当である。−78℃より低い重合温度は工業的に不利であり、200℃を超えると遷移金属化合物の分解が起こるので適当ではない。さらに工業的に好ましくは、0℃〜160℃、特に好ましくは30℃〜160℃である。
重合時の圧力は、0.1気圧〜100気圧が適当であり、好ましくは1〜30気圧、特に工業的に特に好ましくは、1〜10気圧である。
【0033】
1−2.クロス化工程
1−2−1.重合方法
本発明の製造方法のクロス化工程では、配位重合工程で得られたエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体と芳香族ビニル化合物モノマーの共存下、アニオン重合開始剤またはラジカル重合開始剤を用いて重合を行う。本発明のクロス化工程では上記芳香族ビニル化合物モノマー以外に、配位重合工程で重合されずに重合液中に少量残存する芳香族ポリエンも重合されてもよい。
【0034】
本発明のクロス化工程は、上記の配位重合工程の後に実施される。この際、配位重合工程で得られた共重合体は、クラムフォーミング法、スチームストリッピング法、脱揮槽、脱揮押出し機等を用いた直接脱溶媒法等、任意のポリマー回収法を用いて、重合液から分離、精製してクロス化工程に用いてもよい。しかし、配位重合後の重合液から、残留オレフィンを放圧後、あるいは放圧せずに、次のクロス化工程に用いるのが、経済的に好ましい。重合体を重合液から分離せずに、重合体を含んだ重合溶液をクロス化工程に用いることができることが本発明の特徴の1つである。
【0035】
1−2−2.アニオン重合
クロス化工程においてアニオン重合開始剤を用いる場合、すなわちアニオン重合を行う場合の溶媒は、アニオン重合の際に連鎖移動等の不都合を生じない混合アルカン系溶媒、シクロヘキサン、ベンゼン等の溶媒が特に好ましいが、重合温度が150℃以下であれば、トルエン、エチルベンゼン等の他の溶媒も用いることが可能である。重合形態は、アニオン重合に用いられる任意の公知の方法を用いることができる。
【0036】
本発明において、芳香族ビニル化合物モノマーとアニオン重合開始剤を加える順序は任意である。すなわち重合溶液に芳香族ビニル化合物モノマーを添加し攪拌した後にアニオン重合開始剤を添加しても、アニオン重合開始剤を添加した後に芳香族ビニル化合物モノマーを添加してもよい。前者では、主鎖である配位重合工程で得られるエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体とクロス鎖である芳香族ビニル化合物重合体鎖がグラフトスルー形式で結合した構造(交差結合)が多く含まれると考えられ、後者の場合はグラフトフロム構造構造(枝分かれ結合)構造が多く含まれると考えられる。再現性がより良好で工業的に好ましい重合は前者である。本発明のクロス共重合体は、本発明が規定する特定の製造法により得られる共重合体であるので、その構造は任意である。重合温度は、−78℃〜200℃が適当である。−78℃より低い重合温度は工業的に不利であり、150℃を超えると連鎖移動等が起こるので適当ではない。さらに工業的に好ましくは、0℃〜200℃、特に好ましくは30℃〜150℃である。
重合時の圧力は、0.1気圧〜100気圧が適当であり、好ましくは1〜30気圧、特に工業的に特に好ましくは、1〜10気圧である。
【0037】
本発明のクロス化工程には、公知のアニオン重合開始剤を用いることができる。好ましくは、アルキルリチウム化合物やビフェニル、ナフタレン、ピレン等のリチウム塩あるいはナトリウム塩、特に好ましくは、sec−ブチルリチウム、n(ノルマル)−ブチルリチウムが用いられる。また、多官能性開始剤、ジリチウム化合物、トリリチウム化合物を用いてもよい。さらに必要に応じて公知のアニオン重合末端カップリング剤を用いてもよい。開始剤量は、配位重合工程で、重合触媒の助触媒として、メチルアルモキサンを用いる場合には、その中に含まれる酸素原子の当量以上の、特に好ましくは2当量以上の量を用いるのが好ましい。配位重合工程で、重合触媒の助触媒として、硼素化合物を用いた場合、その量はメチルアルモキサン中の酸素原子当量に比して、十分少ないため、開始剤量を低減することが可能である。
【0038】
1−2−3.ラジカル重合
クロス化工程においてラジカル重合開始剤を用いる場合、すなわちラジカル重合を行う場合の条件については、再表WO00/037517号公報に詳細に記載してある方法が採用される。本発明のクロス化工程の実施にあたっては、重合速度、すなわち短時間に高いモノマー転換率が得られ、実質的に100%の転換率が容易に得られる点でアニオン重合が好ましく採用される。
【0039】
2.クロス共重合体
2−1.物性
上記の、本発明の製造方法により得られるクロス共重合体は、クロス共重合体のゲル分が全体の0.5質量%未満、好ましくは0.3質量%未満であり、かつクロス共重合されていない芳香族ビニル化合物重合体(すなわち溶媒分別可能な芳香族ビニル化合物重合体)の含量が全体の15質量%未満、好ましくは10質量%未満であることを特徴とする。さらに、200℃、加重22Nで測定したMFRが1g/10分以上であることを特徴とする。このようなゲル分が少なく、クロス共重合されていない芳香族ビニル化合物重合体含量が低く、かつ良好な成形加工性を有するクロス共重合体は、良好な力学物性と他の樹脂と良好な相溶性を有することができる。
さらに本発明の製造方法により得られるクロス共重合体は透明性を有する。具体的にはクロス共重合体の0.3mm厚さのシートで測定したヘイズが50%以下、好ましくは40%以下である。
【0040】
2−2.組成
さらに本発明は、前記の製造方法において以下の条件をすべて満たすことを特徴とするクロス共重合体の製造方法であり、得られるクロス共重合体である。
(a)配位重合工程で得られるエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体の組成が、オレフィン含量5モル%以上50モル%以下、芳香族ポリエン含量0.01モル%以上0.3モル%以下、残部がエチレン含量であり、
(b)クロス化工程で得られるクロス共重合体100質量%に対する配位重合工程で得られるエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体の質量割合が50〜95質量%である。
本条件をすべて満たすことで、比較的軟質で良好な力学物性を有するクロス共重合体を得ることができる。具体的には、A硬度が95以下または引張弾性率が500MPa以下であり、さらに引張試験において5MPa以上の破断点応力及び300%以上の破断点伸びを示すことを特徴とするクロス共重合体を得ることができる。
【0041】
さらに、
(c)配位重合工程で得られるエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体の組成が、オレフィン含量10モル%以上20モル%以下、芳香族ポリエン含量0.01モル%以上0.3モル%以下、残部がエチレン含量であり、
(d)クロス化工程で得られるクロス共重合体100質量%に対する配位重合工程で得られるエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体の質量割合が60〜95質量%である。
という条件をすべて満たすことで、A硬度85以下、または引張弾性率50MPa以下であり、引張試験において10MPa以上の破断点強度及び500%以上の破断点伸びを示すことを特徴とするクロス共重合体を得ることができる。
さらにクロス共重合体のDSC測定より40〜140℃の範囲に観察される結晶融解熱の総和が50J/g以下であることが好ましい。クロス鎖の芳香族ビニル化合物重合体鎖の分子量は、目的に合わせて適宜変更可能であり特に限定されないが、重量平均分子量(Mw)は好ましくは1万以上15万以下、特に好ましくは2万以上10万以下、分子量分布(Mw/Mn)は、一般的には1.0以上6.0以下である。クロス鎖の分子量は直接求めることが困難であるために、本明細書では、クロス共重合化されなかった芳香族ビニル化合物ホモポリマーの分子量と同一であるとして、溶媒分別等公知の適切な方法で分離して得た芳香族ビニル化合物ホモポリマーの分子量を用いて規定している。
【0042】
2−3.用途
以下に、本発明のクロス共重合体の用途に関して記述する。
本発明のクロス共重合体は、芳香族ビニル化合物系樹脂と、オレフィン系樹脂との組成物、相溶化剤として好適に用いることができる。組成物として用いる場合、クロス共重合体は全体の質量の1〜98質量%、オレフィン系樹脂及び芳香族ビニル化合物系樹脂の合計が99〜2質量%(ただしオレフィン系樹脂、芳香族ビニル化合物系樹脂はそれぞれ1質量%以上)の組成で用いられる。好ましくはクロス共重合体は全体の質量の30〜70質量%、オレフィン系樹脂及び芳香族ビニル化合物系樹脂の合計が70〜30質量%(ただしオレフィン系樹脂、芳香族ビニル化合物系樹脂はそれぞれ1質量%以上)である。相溶化剤として用いる場合、上記組成物の組成範囲の中でも特に、クロス共重合体は全体の質量の1〜30質量%、オレフィン系樹脂及び芳香族ビニル化合物系樹脂の合計が99〜70質量%(ただしオレフィン系樹脂、芳香族ビニル化合物系樹脂はそれぞれ1質量%以上)の組成で用いられる。本組成物には、必要に応じて上記、その他の樹脂、エラストマ−、ゴム、可塑剤、フィラ−や安定剤、老化防止剤、耐光性向上剤、紫外線吸収剤、軟化剤、滑剤、加工助剤、着色剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、結晶核剤、発泡剤等を用いることが出来る。
本組成物には、必要に応じて上記、その他の樹脂、エラストマ−、ゴム、可塑剤、フィラ−や安定剤、老化防止剤、耐光性向上剤、紫外線吸収剤、軟化剤、滑剤、加工助剤、着色剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、結晶核剤、発泡剤等を用いることが出来る。
【0043】
本発明の重合体組成物を製造するには、公知の適当なブレンド法を用いることができる。例えば、単軸、二軸のスクリュー押出機、バンバリー型ミキサー、プラストミル、コニーダー、加熱ロールなどで溶融混合を行うことができる。溶融混合を行う前に、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー、タンブラーなどで各原料を均一に混合しておくこともよい。溶融混合温度はとくに制限はないが、100〜300℃、好ましくは150〜250℃が一般的である。
本発明の各種組成物の成型法としては、真空成形、射出成形、ブロー成形、押出し成形等公知の成型法を用いることができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
1.分析、評価方法
後述する実施例・比較例で得られた共重合体の分析及び評価は以下の手段によって実施した。
【0046】
(共重合体中のオレフィンやジエン、芳香族ビニル化合物の各ユニット含量の決定)
共重合体中のオレフィンやジエン、芳香族ビニル化合物の各ユニット含量の決定は、1H−NMRで行い、機器は日本電子社製α−500及びBRUCKER社製AC−250を用いた。重1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解し、室温で溶解する場合は測定は室温で、室温で溶解しない場合は測定は80〜100℃で行った。公知の手法により、得られた各ユニット由来のピークの面積を比較して各ユニット含量や組成を求めた。クロス化工程を経て最終的に得られるクロス共重合体に含まれる配位重合工程で得られるエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体の質量割合(表1に「クロス共重合体中の配位重合体の割合」と表記)及び収量も、エチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体の組成とクロス共重合体の組成を比較することで求めた。クロス化工程で得られるポリスチレン鎖の質量%も同様にして求めた。
【0047】
(ジビニルベンゼン含量およびジビニルベンゼンの転換率の決定)
樹脂中のジビニルベンゼンユニット含量およびジビニルベンゼンの転換率は、ガスクロマトグラフィ分析により求めた重合液中の未反応ジビニルベンゼン量と重合に用いたジビニルベンゼン量の差から求めた。
【0048】
(重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の決定)
分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求めた。測定は以下の条件で行った。
カラム:TSK−GEL MultiporeHXL-M φ7.8×300mm(東ソ−社製)を2本直列に繋いで用いた。
カラム温度:40℃
検出器:RI
溶媒:THF
送液流量:1.0ml/min.
サンプル濃度:0.1wt/vol%
サンプル注入量:100μL
室温でTHF溶媒に不溶であるポリマーの分子量は、高温GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。東ソー社製HLC−8121GPC/HTを用い、カラムはTSKgelGMHHR−H(20)HT、φ7.8×300mm3本、オルトジクロロベンゼンを溶媒とし140℃で測定した。
検出器:RI
サンプル濃度:0.1質量/体積%
サンプル注入量:100μL
送液流量:1.0ml/min.
【0049】
(ゲル分測定)
ASTM D−2765−84に従い、クロス共重合体のゲル分を測定した。
具体的には、精秤した1.0gポリマー(直径約1mm、長さ約3mmの成型物)を、100メッシュのステンレス製網袋に包み、精秤した。これを沸騰キシレン中で約5時間
抽出した後に網袋を回収し、真空中90℃で10時間以上乾燥した。十分に冷却後、網袋を精秤し、以下の式により、クロス共重合体のゲル分を算出した。
ゲル分(%)=網袋に残留したゲルの質量/正秤したクロス重合体質量×100
【0050】
(溶媒分別可能なポリスチレンの含量)
大型容器にアセトン400mlと攪拌子を入れ、マグネチックスターラー上で氷浴しつつ攪拌した。別容器にトルエンを40ml、ポリマー(クロス共重合体)を4g加えて加熱攪拌し完全に溶解させた。溶解後、シリンジで熱溶液を吸い上げ、攪拌されている冷アセトン中にゆっくり滴下した。滴下終了後、析出したポリマー入りのアセトン懸濁液を減圧濾過し、フィルターに残った冷アセトン不溶ポリマーは自然乾燥後60℃で一晩真空乾燥した。濾液はエバポレーター用ナス型フラスコに移し、ロータリーエバポレーターで溶媒を減圧除去し、10ml程度の濃縮液を取り出した。ナスフラスコは少量のアセトンで数回洗浄し、戦況液は濃縮液に加えた。これを約1Lの激しく攪拌したメタノール中に投入し、冷アセトン可溶ポリマーを析出させ、減圧濾過し、フィルター上のポリマーは自然乾燥後60℃で一晩真空乾燥した。冷アセトン不溶ポリマーの1H−NMRを測定し、その組成(スチレンユニット含量、質量%)を求めた。以下の式により溶媒分別可能なポリスチレンホモポリマー量を求めた。
St0:溶媒分別前のポリマー(クロス共重合体)のSt含量(質量%)
St1:溶媒分別後の冷アセトン不溶ポリマー(クロス共重合体)のSt含量(質量%)
HOMOPS:溶媒分別可能なポリスチレンホモポリマーの質量%
HOMOPS={1−(100-St0)/(100-St1)}×100
(完全に溶媒分別されていることの検証)
上記冷アセトン不溶ポリマーを用い、再度上記手順で溶媒分別を行い、冷アセトン不溶ポリマーを回収し、その1H−NMR測定を行った。得られたその組成(スチレンユニット含量、質量%)に実質的に変化がないことを確認した。変化がある場合は、変化が実質的に見られなくなるまで上記溶媒分別を繰り返し、変化が見られなくなった時点での組成を上記計算に用いた。実際には1回の溶媒分別で実質的に溶媒分別は完了している。また上記冷アセトン可溶ポリマーの1H−NMRを測定し、実質的にポリスチレンに由来するピークしか観測されないことを確認した。
【0051】
(DSC測定)
DSC測定は、セイコー電子社製DSC6200を用い、窒素気流下で行った。すなわち樹脂10mgを用い、アルミナ10mgをレファレンスとして、アルミニウムパンを用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で室温から240℃まで昇温した後に20℃/分で−120℃まで冷却した。その後240℃まで昇温速度10℃/分で昇温しながらDSC測定を行い、融点、結晶融解熱及びガラス転移点を求めた。
【0052】
(MFR測定)
JIS K7210に準じ、200℃でのMFRを測定した。尚、荷重は22N及び98Nの2条件にて測定した。
【0053】
(サンプルシ−ト作製)
物性評価用の試料は加熱プレス法(温度250℃、時間5分間、圧力50kg/cm2)により成形した各種厚さ(0.3、1.0、2.0mm)のシ−トを用いた。
【0054】
(引張試験:引張弾性率、破断点伸び)
JIS K−6251に準拠し、1.0mm厚さシートを2号1/2号型テストピース形状にカットし、島津製作所AGS−100D型引張試験機を用い、23±1℃の条件にて引張速度500mm/minにて測定した。
(透明性:全光線透過率、ヘイズ)
上記プレス成形で得られた0.3mmの厚さのシートを用い、JISK―7375プラスチックの光学的特性試験方法に準じて日本電色工業社製濁度計NDH2000を用いて全光線透過率およびヘイズを測定した。
【0055】
(A硬度)
2mm厚シ−トを重ねて、JIS K−7215プラスチックのデュロメーター硬さ試験法に準じ、23±1℃の条件にてタイプAのデュロメーター硬度を求めた。なお、この硬度は瞬間値である。
【0056】
2.実施例・比較例
[実施例1]
表1に示した重合条件において、攪拌機、加熱冷却用ジャケット付き10L重合缶を使用し以下のように重合を行った。シクロヘキサン溶媒4.1kg、1−ヘキセンモノマー0.17kg及びジビニルベンゼン(DVB) 10.6mmolを仕込み、内温40℃にて加熱攪拌した。乾燥窒素ガスを約30Lバブリングして系内及び重合液の水分をパージした。次いで、内温を約65℃に昇温し、トリイソブチルアルミニウム3.3mmolを加え、さらにMAO(東ソーファインケム社製モデファイドMAO:MMAO)6.7mmolを加え、ただちにエチレンを導入した。重合缶圧力が0.40MPa(0.30MPaG)で安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、トリイソブチルアルミニウム1mmol、化学式(5)で表されるジフェニルメチレン(フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド(A群一般式(1)の触媒)13.3μmol、および化学式(6)で表されるrac―ジメチルメチレンビス(4,5ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド(B群一般式(4)の触媒)を13.3μmol含むトルエン溶液30mlからなる触媒液をオ−トクレーブ中に加え配位重合工程を開始した。内温を70℃、圧力は0.40MPaに維持しながら重合を実施した。所定のエチレン積算流量(160L)でエチレン供給を停止した。重合液の少量(数十ml)をサンプリングし、メタノールに混合してポリマーを析出させることにより配位重合工程のポリマーサンプルを得た。本サンプリング液より、配位重合工程でのポリマー収量、組成、分子量、ジビニルベンゼン転換率を求めた。重合缶にスチレンモノマー0.12kgを加え十分攪拌混合した後に、n−ブチルリチウム25mmolを添加し、70℃を維持しながらクロス化工程(アニオン重合工程)を2時間行うことでクロス共重合体を合成した。得られた重合液を激しく攪拌した大量のメタノール液中に少量ずつ投入して、クロス共重合体を回収した。このクロス共重合体を、室温で1昼夜風乾した後に80℃、真空中、質量変化が認められなくなるまで乾燥した。
【0057】
【表1】
【0058】
【化5】
【0059】
【化6】
【0060】
[実施例2〜4]
実施例1と同様の手順で、表1に示す重合条件で重合を実施した。
【0061】
[比較例1]
実施例1と同様に、ただし用いる触媒を、トリイソブチルアルミニウム1mmol、ジフェニルメチレン(フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド13.3μmol、およびrac―ジメチルメチレンビス(4,5ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライドを13.3μmolからジフェニルメチレン(フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド25μmolに変更し、表1に示す重合条件で重合を実施した。
【0062】
[比較例2]
実施例1と同様に、ただし用いる触媒を、トリイソブチルアルミニウム1mmol、ジフェニルメチレン(フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド13.3μmol、およびrac―ジメチルメチレンビス(4,5ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライドを13.3μmolからrac―ジメチルメチレンビス(4,5ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド25μmolに変更し、表1に示す重合条件で重合を実施した。
【0063】
3.考察
各実施例、比較例の配位重合工程で得られたエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体、およびクロス化工程を経て得られたクロス共重合体の分析結果、クロス共重合体のゲル分、溶媒分別可能なポリスチレンホモポリマーの含量、DSC測定の結果評価、透明性、A硬度、力学物性、MFRを表1に示す。各実施例で得られたクロス共重合体は、配位重合工程で得られるエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体の重量平均分子量Mw96000以上、かつ配位重合工程終了時点でのジビニルベンゼン転換率50%以上であった。またゲル分が全体の0.5質量%未満であり、かつ溶媒分別可能な芳香族ビニル化合物重合体(ポリスチレン)の含量が全体の15質量%未満であった。MFRも、200℃、加重22Nで測定したMFRが1g/10分以上であった。力学物性も良好で、本発明の好ましいクロス共重合体の条件である引張試験において5MPa以上の破断点応力及び500%以上の破断点伸びを示し、透明性も比較的良好であった。これに対し、比較例1では、配位重合終了時点でのジビニルベンゼン転換率が低く、MFRが0であった。また透明性も著しく低かった。比較例2では配位重合工程で得られるエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体の重量平均分子量が小さく、また力学物性が不足していた。