(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電動シリンダが、前記台車に基端部が連結されたシリンダ、前記シリンダに挿入され、前記傾斜フレームに先端部が連結されたロッド、及び、前記シリンダに対し前記ロッドを進退駆動する駆動機構を有し、
前記駆動機構が、
電動モータと、
前記電動モータの出力トルクを増幅する減速装置と、
前記減速装置の回転出力を前記ロッドの進退移動に変換する変換装置と、
前記ロッドを制動するときに、前記電動モータで発電するように、前記電動モータの動作を制御する制御ユニットとを含む、
請求項1に記載のトリッパ。
前記駆動機構が、前記電動モータと前記減速装置との間の動力伝達経路に設けられ、前記電動モータの定格トルクより大きく且つ前記電動モータの最大トルクよりも小さい所定の設定トルク以上のトルクが掛かるとスリップする、機械式の摩擦クラッチを更に含む、
請求項2に記載のトリッパ。
【背景技術】
【0002】
従来、埠頭の荷役設備や製鉄所などにおいて、搬入される鉱石や石炭などのバラ物をヤードに山積みにして貯留することが行われている。ヤードにはレールが敷設され、レール上を走行するバラ物の運搬設備が備えられている。レールの間にはバラ物を搬送するための地上コンベヤが敷設されている。
【0003】
バラ物の運搬設備として、バラ物の積付を行うスタッカ、及び、山積みのバラ物の払出を行うリクレーマ、又は、スタッカとリクレーマの機能を併せ備えたスタッカ・リクレーマが知られている。これらの運搬設備はいずれも、レール上を走行する走行機体と、走行機体上に設けられた旋回台と、この旋回台に俯仰可能に支持されたブームとを備え、ブーム上にはブームに沿ってバラ物を搬送するブームコンベヤが設けられている。
【0004】
バラ物の積付の際には、地上コンベヤからスタッカのブームコンベヤへバラ物を移すために、走行機体に連結されたトリッパが用いられる。トリッパは、コンベヤベルトの中間で荷を降ろす装置であって、一般に、コンベヤベルトをS字形に曲げるプーリと、プーリを支える傾斜フレームとを備えている。トリッパによって、バラ物は、斜め上方に搬送され、コンベヤベルトの反転箇所で放出され、ブームコンベヤに落下する。ブームコンベヤに移し替えられたバラ物は、ブームの基端側から先端側まで搬送されてヤードに投下され、台形状若しくは三角形状に山積みされる。
【0005】
一方、バラ物の払出の際には、リクレーマのブームの先端に設けられたバケットホイルでバラ物の積山が取り崩され、そのバラ物がブームコンベヤによりブームの先端側から基端側まで搬送され、ホッパを通じて地上コンベヤに落下し、地上コンベヤによって外部へ積付搬出される。
【0006】
ところで、特許文献1では、トリッパの放出端部(即ち、コンベヤベルトの反転箇所)が、スタッカのブームコンベヤの上方に設けられたシュートと、シュートからスタッカの走行方向に後退した位置にあるホッパの上方との間で変位するように、スタッカの走行機体に対しトリッパの傾斜フレームを起伏可能とすることが記載されている。この傾斜フレームは、走行機体に支柱を介して起伏可能に支持されており、走行機体と支柱との間に介在させた起伏シリンダを縮めることにより、トリッパの放出端部をシュート上方からホッパ上方へ後退させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
スタッカ又はスタッカ・リクレーマにトリッパが連結されていると、トリッパによってブームの旋回範囲が制限される。そこで、トリッパの不使用時には、トリッパをスタッカ又はスタッカ・リクレーマから退避させるとよい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
トリッパをスタッカ又はスタッカ・リクレーマから退避させるために、特許文献1のようにトリッパを起伏させることが想定され得る。トリッパを起伏させれば、トリッパをスタッカ又はスタッカ・リクレーマの旋回中心から後退させることができ、且つ、トリッパの放出端部の高さを低くすることができる。
【0010】
特許文献1では起伏シリンダの具体的構造は特定されていないが、従来、バラ物の運搬設備では駆動装置として油圧シリンダが利用されてきた。油圧シリンダを用いる理由としては、比較的小さな装置で大きな駆動力が得られること、起動・制動をショックレスで行えること、及び、複数のシリンダを備える場合に複数のシリンダの圧力同調が容易であること、などが挙げられる。しかしながら、近年では、油圧シリンダと電動シリンダなどの他の駆動装置とを比較して、油圧シリンダのエネルギー効率が低いこと、駆動時の騒音が大きいこと、作動油の漏れによる汚染のおそれがあること、メンテナンスが複雑であること、などの理由から、油圧シリンダに代えて扱いの容易な駆動装置を用いる要望がある。
【0011】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、スタッカ又はスタッカ・リクレーマと連結されたまま、電動シリンダを用いてスタッカ又はスタッカ・リクレーマと干渉を避けるように退避する動作を行うことのできる、トリッパを提供することにある。
【0012】
本発明の一態様に係るトリッパは、
地上コンベヤに沿って走行可能な台車と、
前記地上コンベヤのコンベヤベルトを持ち上げる傾斜フレームであって、上端部にシュートを有するとともに、下端部に自由輪を有する傾斜フレームと、
基端部が前記台車の走行方向と直交する回動軸を中心として回動可能に前記台車と連結され、且つ、先端部が前記回動軸と平行な支軸を中心として回動可能に前記傾斜フレームの前記上端部から前記下端部の間と連結されたアームと、前記アームを前記回動軸を中心として回動させる電動シリンダとを有し、前記アームの回動により前記台車に対し前記傾斜フレームの前記上端部を昇降させる昇降機構と
、
前記アームの回動範囲を、直立回転位置を回動方向の一方側へ超えた使用回転位置から前記直立回転位置を前記回動方向の他方側へ超えた退避回転位置までとし、前記使用回転位置にある前記アームと当接して、それ以上前記一方側へ回転しないように前記アームの回転を規制する第1の規制部材、及び、前記退避回転位置にある前記アームと当接して、それ以上前記他方側へ回転しないように前記アームの回転を規制する第2の規制部材のうち少なくとも一方と、を備えることを特徴としている。
【0013】
上記トリッパでは、アームと傾斜フレームとによりスライダクランク機構が形成されている。したがって、電動シリンダの動作によりアームが回動軸を中心として回転すると、傾斜フレームの下端部に設けられた自由輪がレールに沿って直線移動し、支軸が回動軸を中心として回転運動することにより傾斜フレームの上端部が降下又は上昇する。このようトリッパの変容により、台車とスタッカ又はスタッカ・リクレーマの走行機体との連結を維持しつつ、傾斜フレームをスタッカ又はスタッカ・リクレーマから退避させることができる。
【0014】
そして、アームは電動シリンダにより駆動されるので、油圧シリンダを用いる場合と比較して、エネルギー効率が高く、駆動時の騒音が小さく、作動油の漏れによる汚染のおそれが回避され、メンテナンスが容易である。
【0016】
上記構成のトリッパでは、アームが直立回転位置を超えて使用回転位置に至るまで、及び、アームが直立回転位置を超えて退避回転位置に至るまでの間に、アームや傾斜フレームの自重による負荷が電動シリンダに掛かるが、アームの回転が規制部材によって規制されることにより、アームを使用回転位置又は退避回転位置で正確に停止させることができる。また、アームの回動範囲が直立回転位置を挟んだ使用回転位置から退避回転位置までの間であることで、傾斜シリンダの上端部をスタッカ又はスタッカ・リクレーマからより大きく後退させることができる。
【0017】
また、上記のトリッパにおいて、前記電動シリンダが、前記台車に基端部が連結されたシリンダ、前記シリンダに挿入され、前記傾斜フレームに先端部が連結されたロッド、及び、前記シリンダに対し前記ロッドを進退駆動する駆動機構を有し、
前記駆動機構が、電動モータと、前記電動モータの出力トルクを増幅する減速装置と、前記減速装置の回転出力を前記ロッドの進退移動に変換する変換装置と、前記ロッドを制動するときに、前記電動モータで発電するように、前記電動モータの動作を制御する制御ユニットとを含んでいてもよい。
【0018】
上記構成のトリッパによれば、アームや傾斜フレームの自重による負荷が電動シリンダに掛かったときに、電動シリンダに発電ブレーキによる制動力を発生させて、アームの急激な回転を回避することができる。
【0019】
また、上記のトリッパにおいて、前記駆動機構が、前記電動モータと前記減速装置との間の動力伝達経路に設けられ、前記電動モータの定格トルクより大きく且つ前記電動モータの最大トルクよりも小さい所定の設定トルク以上のトルクが掛かるとスリップする、機械式の摩擦クラッチを更に含んでいてもよい。
【0020】
上記構成のトリッパによれば、傾斜アームに先端部を降下させようとする衝撃が加わったときに、ロッドが縮もうとして摩擦クラッチに設定トルク以上の大きなトルクが掛かると、摩擦クラッチがスリップする。これにより、ロッドの短縮が許容され、ロッドやシリンダが保護される。また、摩擦クラッチがスリップすることにより、減速装置から電動モータへ伝達されるトルクのトルク伝達率が低下し、過大な負荷が電動モータに入力されることを防止し、電動モータが保護される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、スタッカ又はスタッカ・リクレーマと連結されたまま、電動シリンダを用いてスタッカ又はスタッカ・リクレーマと干渉を避けるように退避する動作を行うことの可能な、トリッパを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。ここでは、トリッパがスタッカ・リクレーマと連結された態様を説明するが、トリッパはスタッカに連結されるものであってもよい。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るトリッパ3及びそれに連結されたスタッカ・リクレーマ1の側面図である。スタッカ・リクレーマ1は、一例として、製鉄所の石炭原料ヤードにおいて、コンベヤ搬送されてくる石炭(バラ物)を積付するスタッカと、山積みされている石炭を取り崩して払出するリクレーマとの機能を併せ備えたものである。
【0025】
〔スタッカ・リクレーマ1の構造〕
本実施形態に係るスタッカ・リクレーマ1の基本的な構造は、公知のものである。スタッカ・リクレーマ1は、ヤードに付設されたレール2を走行する自走式の走行機体11と、走行機体11に旋回可能に支持された旋回台12と、旋回台12に立設された旋回塔13と、旋回塔13に支持された操縦キャビン14と、旋回塔13に俯仰可能に支持されたブーム15と、ブーム15の反対側において旋回塔13に俯仰可能に支持されたカウンタウエイトビーム16及びそれに取り付けられたカウンタウエイト17とを備えている。操縦キャビン14の内部は、スタッカ・リクレーマ1の操縦装置や制御装置等が設けられた操縦室となっている。
【0026】
ブーム15の上には、ブーム15の長手方向に沿って延びるブームコンベヤ19が設けられている。ブームコンベヤ19は、ブーム15の先端部から基端部へ、又はその逆へ、バラ物を搬送することができる。また、ブーム15の先端部にはバケットホイル18が設けられている。回転するバケットホイル18によって、積み山からバラ物を連続的に取り崩し、ブームコンベヤ19へ移動させることができる。
【0027】
ブーム15の基端部は、旋回塔13に回動可能に連結されており、ブーム15の基端部と旋回台12又は旋回塔13との間には、ブーム15を俯仰させる俯仰装置21が設けられている。本実施形態に係る俯仰装置21は電動シリンダであり、シリンダの基端部は旋回台12又は操縦キャビン14に回動可能に連結されており、シリンダに進出・退行可能に挿入されたロッドの先端部はブーム15の下部に連結されている。そして、電動シリンダのロッドが伸縮することにより、ブーム15が俯仰する。
【0028】
旋回台12の旋回中心Sの近傍には、ホッパ22が設けられている。このホッパ22の下方にはブームコンベヤ19の基端部が位置する。ホッパ22を通じて落下したバラ物は、ブームコンベヤ19上に落下し、ブームコンベヤ19によってブーム15の先端部へ運ばれる。
【0029】
スタッカ・リクレーマ1が走行する一対のレール2の間には、バラ物の積付及び払出に用いられる地上コンベヤのコンベヤベルト20が敷設されている。詳細は図示しないが、本実施形態では一例として2本のコンベヤベルト20が敷設されており、そのうちの一方は積付及び払出の双方に用いられ、他方は払出のみに用いられる。但し、コンベヤベルト20は一本であってもよい。そして、バラ物を積付及び払出用のコンベヤベルト20からブームコンベヤ19に移すために、コンベヤベルト20を斜め上方に持ち上げるトリッパ3が設けられている。
【0030】
〔トリッパ3の構造〕
トリッパ3は、コンベヤベルト20をS字形に曲げる2つのプーリ33,34と、これらのプーリ33,34を支持する傾斜フレーム35と、レール2を走行可能な台車30と、台車30に対し傾斜フレーム35を昇降させる昇降機構50とを備えている。以下では、説明の便宜を図って、トリッパ3から見てスタッカ・リクレーマ1の走行機体11のある側を「前」側、その反対側を「後」側という。
【0031】
傾斜フレーム35は、台車30の走行方向、即ち、レール2の延伸方向に沿って延び、台車30の走行方向のうち一方(前側)へ向かって上る傾きを有している。2つのプーリ33,34のうち、一方のプーリ33は、傾斜フレーム35の上端部(前端部)に支持されている。2つのプーリ33,34のうち、他方のプーリ34は、傾斜フレーム35の上端部から下端部までの間で支持されている。傾斜フレーム35のプーリ33よりも更に前側には、シュート37が設けられている。このシュート37は、トリッパ3が走行機体11に連結された状態で、ブーム15の基端部の上方に設けられたホッパ22の更に上方に位置づけられている。
【0032】
コンベヤベルト20は、2つのプーリ33,34にS字状に巻きかけられており、地上コンベヤの軌道を移動していたコンベヤベルト20は傾斜フレーム35の傾斜に沿って、前側よりも後側が低くなるように、前斜め上方に持ち上げられる。傾斜フレーム35の上端部では、プーリ33によってコンベヤベルト20の軌道が反転し、このコンベヤベルト20の軌道が反転する箇所で搬送されてきたバラ物が放出される。コンベヤベルト20から放出されたバラ物は、シュート37及びホッパ22を通じてブームコンベヤ19の基端部に落下する。
【0033】
プーリ33で後側へ折り返されたコンベヤベルト20は、傾斜フレーム35に沿って後ろ斜め下方へ案内され、プーリ34によって軌道が反転され、地上コンベヤの軌道へ戻される。なお、傾斜フレーム35には、コンベヤベルト20を支持し且つ案内するガイドローラ(図示せず)が適宜位置に設けられている。
【0034】
台車30は、スタッカ・リクレーマ1の走行機体11の後方に位置し、連結ユニット40によって台車30の前部と走行機体11の後部とが連結されている。台車30は、スタッカ・リクレーマ1の走行機体11に牽引されてレール2上を走行する。但し、台車30は、自走できるように、走行装置を備えていてもよい。台車30は、レール2上で位置を保持できるように、例えばストームアンカなどの係留装置(図示せず)を備えている。
【0035】
昇降機構50は、クランクアーム36と、クランクアーム36を回動させる電動シリンダ5とを備えており、これらは台車30に支持されている。クランクアーム36の基端部は、台車30に設けられ且つ台車30の走行方向と直交する回動軸41を中心として回動可能に、台車30に連結されている。クランクアーム36の先端部は、傾斜フレーム35の上端部から下端部までの中央よりも上側に設けられ且つ回動軸41と平行な支軸42を中心として回動可能に、傾斜フレーム35に連結されている。傾斜フレーム35の下端部(後端部)には、レール2を転動可能な自由輪32が設けられている。この自由輪32の転動によって、傾斜フレーム35の下端部はレール2と平行に直線移動する。
【0036】
上記のクランクアーム36と、傾斜フレーム35とによって、スライダクランク機構が形成されている。このスライダクランク機構では、クランクアーム36が回動軸41を中心として回動すると、支軸42は回動軸41を中心として円運動をし、傾斜フレーム35の下端部に設けられた自由輪32はレール2に沿って直線運動をする。
【0037】
電動シリンダ5は、台車30とクランクアーム36との間に架け渡されている。電動シリンダ5は、シリンダ51と、シリンダ51に挿入されたロッド52と、ロッド52をシリンダ51から進退駆動する駆動機構53とにより構成されている。
【0038】
シリンダ51の基端部は、回動軸41よりも後ろ側において台車30に設けられ且つ回動軸41と平行な支軸43を中心として回動可能に、台車30に連結されている。ロッド52の先端部は、クランクアーム36の下部に設けられ且つ回動軸41と平行な支軸44を中心として回動可能に、クランクアーム36に連結されている。ロッド52がシリンダ51から進出することにより、即ち、ロッド52が伸びることにより、クランクアーム36の先端部が回動軸41を中心として前側へ回転する。また、ロッド52がシリンダ51へ退行することにより、即ち、ロッド52が縮むことにより、クランクアーム36の先端部が回動軸41を中心として後ろ側へ回転する。
【0039】
図3は、電動シリンダ5の概略構成図である。
図3に示すように、電動シリンダ5の駆動機構53は、2つの電動モータ61を備え、各電動モータ61からロッド52への2つの駆動系統が形成されている。つまり、駆動機構53は、冗長性を備えている。通常は、2つの駆動系統のうち一方が動作し、一方の駆動系統に不具合が生じたときに、一方の駆動系統に代えて他方の駆動系統が動作する。2つの駆動系統は実質的に同じ構成を有するため、以下では、2つの駆動系統のうち一方について説明し、他方についての説明を省略する。
【0040】
図4は、電動シリンダ5の駆動機構53の概略構成図である。この図では、駆動機構53に形成された2つの駆動系統のうち一方が示されている。
図4に示すように、駆動機構53は、電動モータ61と、減速装置62と、運動変換装置63と、摩擦クラッチ64とを備えている。
【0041】
電動モータ61は、ブレーキ装置65付の電動モータ61である。但し、電動モータ61と、電動モータ61を制動するブレーキ装置65とが独立していてもよい。電動モータ61の回転数や回動方向は、インバータを具備する制御ユニット66によって制御されている。
【0042】
電動モータ61の出力は、減速装置62に入力される。電動モータ61から出力する伝動軸71は、ロッド52の進退方向と平行である。伝動軸71と、電動モータ61からの出力を減速装置62へ入力する伝動軸72とは、機械式の摩擦クラッチ64を介して接続されている。摩擦クラッチ64の設定トルクは、電動モータ61の定格トルクよりも大きく、且つ、電動モータ61の最大トルクよりも小さい範囲の値であって、予め摩擦クラッチ64に設定される。なお、定格トルクは、電動モータ61が定格電圧且つ定格周波数で、定格出力を連続的に出す時のトルクであり、最大トルクは、そのトルク以上の負荷を掛けると電動モータ61が不安定領域に入り停止するトルクである。定格トルク及び最大トルクは、電動モータ61に固有の値である。摩擦クラッチ64の設定トルクは、電動モータ61の定格トルクで摩擦クラッチ64がスリップしてしまうことを回避するために、定格トルクの120〜130%程度の値が望ましい。
【0043】
機械式の摩擦クラッチ64として、例えば、トルクリミッタカップリングが採用されてよい。トルクリミッタカップリングは、トルクリミッタを備えた軸継手であり、伝動軸72が設定トルク未満では伝動軸71と伝動軸72との間で回転が伝達され、伝動軸72が設定トルク以上(つまり、過負荷時)ではトルクリミッタがスリップすることにより伝動軸72から伝動軸71へのトルク伝達率が低下する。そして、過負荷が解消すると、即ち、伝動軸72のトルクが設定トルク未満となると、伝動軸71と伝動軸72との間のトルク伝達率が自動復帰する。
【0044】
図5には、公知のトルクリミッタカップリングの概略構成が示されている。摩擦クラッチ64の一例としてのトルクリミッタカップリングは、例えば、
図5に示すように、伝動軸71と一体的に回転するスプロケット81と、伝動軸72に設けられたトルクリミッタ82と、スプロケット81とトルクリミッタ82とを連結するローラチェーン83とで構成されてよい。トルクリミッタ82は、例えば、伝動軸72に嵌装されたボス84と、ボス84の外周に遊嵌されたスプロケット85と、スプロケット85を伝動軸72の軸方向の両側から挟み込む一対の摩擦板86と、スプロケット85と一対の摩擦板86に摩擦が生じるようにスプロケット85に一対の摩擦板86を押し付ける皿バネ87とを備えていてよい。スプロケット85とスプロケット81はローラチェーン83により連結されている。上記構成のトルクリミッタ82では、伝動軸72のトルクが設定トルク未満では、一対の摩擦板86とスプロケット85との間に生じる摩擦力により、ボス84とスプロケット85が一体的に回転し、伝動軸72と伝動軸71との間で回転が伝達される。一方、設定トルク以上のトルクが伝動軸72に掛かると、一対の摩擦板86に対しスプロケット85がスリップし、伝動軸71と伝動軸72との間のトルク伝達率が低下する。なお、摩擦クラッチ64は上記構成のトルクリミッタカップリングに限定されない。
【0045】
減速装置62は、伝動軸72から入力された回転動力のトルクを増幅して出力する。減速装置62の出力は、運動変換装置63に入力される。減速装置62、減速装置62から運動変換装置63への動力伝達経路、又は、運動変換装置63に、電磁クラッチ75が設けられてよい。この電磁クラッチ75の切り替えによって、2つの駆動系統のうちいずれか一方の駆動系統がロッド52と接続される。
【0046】
運動変換装置63は、減速装置62の回転出力を、ロッド52の直線往復運動に変換するものである。運動変換装置63は、例えば、ボール循環型のスクリューねじと、ロッド52に固定されたナットを有するボールねじとから成る、ボールねじ機構が含まれていてよい。このボールねじ機構では、スクリューねじが減速装置62からの回転動力を受けて回転すると、ナットがスクリューねじ上を移動し、ロッド52がシリンダ51から進退移動する。更に、本実施形態のように減速装置62の軸方向とスクリューねじの軸方向とが平行である場合には、運動変換装置63には平行な軸間で動力を伝達するギア列が含まれていてよい。
【0047】
また、運動変換装置63は、上記のボールねじ機構に代えて、例えば、ロッド52の基端部に設けられたラックと、ラックと噛合するピニオンとを備えるラックアンドピニオン機構を含んでいてよい。このラックアンドピニオン機構では、ピニオンが減速装置62からの回転動力を受けて回転すると、ピニオンがラック上を移動し、ロッド52がシリンダ51から進退移動する。なお、運動変換装置63の構成は、上記例に限定されず、減速装置62からの回転出力をロッド52の直線往復運動に変換する機構を含むものであればよい。
【0048】
〔トリッパ3の退避動作〕
図1に示すように、使用姿勢のトリッパ3は、トリッパ3の台車30がスタッカ・リクレーマ1の走行機体11に連結され、傾斜フレーム35は前斜め上方へ傾き、その上端部に設けられたシュート37がホッパ22の上方に位置している。使用姿勢のトリッパ3では、クランクアーム36は直立回転位置(真上平衡点)よりも前側に回転した所定の使用回転位置にあり、クランクアーム36の前面が台車30に設けられた規制ブロック39に当接して、クランクアーム36のそれ以上前方への回動が規制されている。
【0049】
上記構成のトリッパ3は、不使用時には、トリッパ3の台車30とスタッカ・リクレーマ1の走行機体11との連結を維持しつつ、昇降機構50を動作させて、傾斜フレーム35をスタッカ・リクレーマ1の旋回中心Sから退避させることができる。以下では、トリッパ3を使用姿勢から退避姿勢へ変容させる際のトリッパ3の動作を説明する。なお、トリッパ3が変容している間は、台車30はレール2に係留されており、台車30と走行機体11の相対的位置は変化しない。
【0050】
トリッパ3を使用姿勢から退避姿勢へ変容させる際に、昇降機構50では、ロッド52を縮めるように電動シリンダ5が動作し、これにより、クランクアーム36が回動軸41を中心として後側へ所定の退避回転位置まで回転する。クランクアーム36が退避回転位置に到達したことは、クランクアーム36と台車30のそれぞれに設けられた接触式又は非接触式の位置センサ25,26によって検出され、制御ユニット66へ伝達される。
【0051】
図6には、退避姿勢のトリッパ3が示されている。
図6に示すように、退避姿勢のトリッパ3では、クランクアーム36が退避回転位置にある。本実施形態では、退避回転位置にあるクランクアーム36はレール2と略平行となっており、クランクアーム36の後面が台車30に設けられた規制ブロック38に当接して、クランクアーム36のそれ以上後方(下方)への回動が規制されている。
【0052】
トリッパ3が使用姿勢から退避姿勢へ変容する過程で、傾斜フレーム35の下端部に設けられた自由輪32はレール2に沿ってスタッカ・リクレーマ1から後退する。また、トリッパ3が使用姿勢から退避姿勢へ変容する過程で、傾斜フレーム35の上端部及びそこに設けられたシュート37は、スタッカ・リクレーマ1から後退し、且つ、下方へ移動する。退避姿勢のトリッパ3では、傾斜フレーム35が伏した状態にあり、使用姿勢と比較して、傾斜フレーム35の上端部はスタッカ・リクレーマ1から後退し且つレール2からの高さが抑えられている。本実施形態では、退避姿勢のトリッパ3の高さは、スタッカ・リクレーマ1のブーム15の基端部の高さよりも低い。
【0053】
一方、トリッパ3を退避姿勢から使用姿勢に変容させる際には、昇降機構50では、ロッド52を伸ばすように電動シリンダ5が動作し、これにより、クランクアーム36が回動軸41を中心として前側へ使用回転位置まで回転する。クランクアーム36が使用回転位置に到達したことは、クランクアーム36と台車30のそれぞれに設けられた接触式又は非接触式の位置センサ27,28によって検出され、制御ユニット66へ伝達される。トリッパ3が退避姿勢から使用姿勢へ変容する過程は、前述の使用姿勢から退避姿勢へ変容する過程の逆の過程となる。
【0054】
上記のように、トリッパ3を使用姿勢から退避姿勢へ又はその逆へ変容させる際に、クランクアーム36が直立回転位置を通過した後で、電動シリンダ5の負荷が変化する。トリッパ3を使用姿勢から退避姿勢へ変容させる過程では、ロッド52を縮めるように電動シリンダ5を動作させるが、クランクアーム36が直立回転位置を通過した後は、クランクアーム36及び傾斜フレーム35の自重によってロッド52が急激に縮まないように駆動機構53で制動力を発生させる。また、トリッパ3を退避姿勢から使用姿勢へ変容させる過程では、ロッド52を伸ばすように電動シリンダ5を動作させるが、クランクアーム36が直立回転位置を通過した後はクランクアーム36及び傾斜フレーム35の自重によってロッド52が急激に伸びないように駆動機構53で制動力を発生させる。
【0055】
上記のように、駆動機構53で制動力を発生させるために、電動シリンダ5の電動モータ61が発電機能付の電動モータであってよい。そして、駆動機構53で制動力を発生させるときには、電動モータ61の回転動力で発電を行わせるように、つまり、発電ブレーキが作用するように、制御ユニット66に含まれるインバータによって電動モータ61の動作が制御される。電動モータ61で行われた発電により得られた電気エネルギーは、回収又は放散される。
【0056】
以上に説明したように、本実施形態のトリッパ3は、地上コンベヤに沿って走行可能な台車30と、地上コンベヤのコンベヤベルト20を持ち上げる傾斜フレーム35であって、上端部にシュート37を有するとともに、下端部に自由輪32を有する傾斜フレーム35と、台車30に対し傾斜フレーム35の上端部を昇降させる昇降機構50とを備えている。昇降機構50は、基端部が台車30の走行方向と直交する回動軸41を中心として回動可能に台車30と連結され、且つ、先端部が回動軸41と平行な支軸42を中心として回動可能に傾斜フレーム35の上端部から下端部の間と連結されたアーム36(クランクアーム)と、アーム36を回動軸41を中心として回動させる電動シリンダ5とを有し、アーム36の回動により台車30に対し傾斜フレーム35の上端部を昇降させることができる。
【0057】
上記のトリッパ3では、アーム36と傾斜フレーム35とによりスライダクランク機構が形成されている。したがって、電動シリンダ5の動作によりアーム36が回動軸41を中心として回転すると、傾斜フレーム35の下端部に設けられた自由輪32がレール2に沿って直線移動し、支軸42が回動軸41を中心として回転運動することにより、傾斜フレーム35の上端部が降下又は上昇する。このようなトリッパ3の変容により、台車30とスタッカ・リクレーマ1(又はスタッカ)の走行機体11との連結を維持しつつ、傾斜フレーム35をスタッカ・リクレーマ1との干渉を避けるように退避させることができる。
【0058】
そして、アーム36は油圧シリンダではなく電動シリンダ5により駆動されるので、油圧シリンダを用いる場合と比較して、エネルギー効率が高く、駆動時の騒音が小さく、作動油の漏れによる汚染のおそれが回避され、メンテナンスが容易である。
【0059】
また、本実施形態に係るトリッパ3において、アーム36は、直立回転位置を回動方向の一方側へ超えた使用回転位置から、直立回転位置を回動方向の他方側へ超えた退避回転位置までを回動範囲としている。そして、トリッパ3は、使用回転位置にあるアーム36と当接して、それ以上一方側へ回転しないようにアーム36の回転を規制する規制ブロック38(第1の規制部材)、及び、退避回転位置にあるアーム36と当接して、それ以上他方側へ回転しないようにアーム36の回転を規制する規制ブロック39(第2の規制部材)を備えている。但し、トリッパ3は、規制ブロック38及び規制ブロック39のうち、少なくとも一方を備えていてもよい。
【0060】
上記構成のトリッパ3では、アーム36が直立回転位置を超えて使用回転位置に至るまで、及び、アーム36が直立回転位置を超えて退避回転位置に至るまでの間に、アーム36や傾斜フレーム35の自重による負荷が電動シリンダ5に掛かるが、アーム36の回転が規制部材によって規制されることにより、アーム36を使用回転位置又は退避回転位置で正確に停止させることができる。また、アーム36の回動範囲が上記のように設定されることで、傾斜フレーム35の上端部をより大きくスタッカ・リクレーマ1から後退させることができる。
【0061】
また、本実施形態に係るトリッパ3において、電動シリンダ5は、台車30に基端部が連結されたシリンダ51、シリンダ51に挿入され、傾斜フレーム35に先端部が連結されたロッド52、及び、シリンダ51に対しロッド52を進退駆動する駆動機構53を有している。そして、駆動機構53が、電動モータ61と、電動モータ61の出力トルクを増幅する減速装置62と、減速装置62の回転出力をロッド52の進退移動に変換する運動変換装置63と、ロッド52を制動するときに、電動モータ61で発電するように、電動モータ61の動作を制御する制御ユニット66とを含んでいる。
【0062】
上記構成のトリッパ3によれば、アーム36や傾斜フレーム35の自重による負荷が電動シリンダ5に掛かったときに、電動シリンダ5に発電ブレーキによる制動力を発生させて、アーム36の急激な回転を回避することができる。
【0063】
また、本実施形態に係るトリッパ3では、駆動機構53が、電動モータ61と減速装置62との間の動力伝達経路に設けられ、電動モータ61の定格トルクより大きく且つ電動モータ61の最大トルクよりも小さい所定の設定トルク以上のトルクが掛かるとスリップする、機械式の摩擦クラッチ64を含んでいる。
【0064】
上記構成のトリッパ3によれば、傾斜フレーム35に先端部を降下させようとする衝撃が加わったときに、ロッド52が縮もうとして摩擦クラッチ64に設定トルク以上の大きなトルクが掛かると、摩擦クラッチ64がスリップする。これにより、ロッド52の短縮が許容され、ロッド52やシリンダ51が保護される。また、摩擦クラッチ64がスリップすることにより、減速装置62から電動モータ61へ伝達されるトルクのトルク伝達率が低下し、過大な負荷が電動モータ61に入力されることを防止し、電動モータが保護される。
【0065】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の精神を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。