特許第6795953号(P6795953)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795953
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】静電塗装用スプレーガン
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/08 20060101AFI20201119BHJP
   B05B 5/025 20060101ALI20201119BHJP
   B05B 5/03 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   B05B5/08 G
   B05B5/025 A
   B05B5/03
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-221489(P2016-221489)
(22)【出願日】2016年11月14日
(65)【公開番号】特開2018-79401(P2018-79401A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 富之
【審査官】 河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−305241(JP,A)
【文献】 特開平10−314624(JP,A)
【文献】 特開2003−117440(JP,A)
【文献】 特開平01−317562(JP,A)
【文献】 特開2007−237089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B5/00−5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を噴霧するためのノズルと、
前記ノズルから噴霧された塗料を帯電させるための放電電極と、
前記放電電極に高電圧を供給する高電圧発生器と、
先端部に前記ノズルが取り付けられて内部に前記高電圧発生器を収容する本体ケースと、
前記本体ケース内に清掃用のエアを供給する清掃用エア経路と、
を備え、
前記本体ケースは、前記清掃用エア経路から前記本体ケース内に供給されたエアを外部へ吐出する外面用エア吐出部を有し、
前記清掃用エア経路は、前記本体ケース内において前記本体ケースの外部に露出することなく前記清掃用エア経路の先端側に設けられ前記放電電極にエアを吹き付け可能な電極用エア吐出部を有している、
静電塗装用スプレーガン。
【請求項2】
前記清掃用エア経路は当該清掃用エア経路上に形成された複数の小孔を更に有している、
請求項1に記載の静電塗装用スプレーガン。
【請求項3】
前記外面用エア吐出部は、前記本体ケースの長手方向の中心部よりも後端部側に設けられ、前記清掃用エア経路から前記本体ケース内に供給されたエアを前記本体ケースの先端部側へ向かって吐出するように構成されている、
請求項1又は2に記載の静電塗装用スプレーガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、静電塗装用スプレーガンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の車体等の塗装方法の一つとして静電塗装がある。静電塗装は、静電塗装用スプレーガン(以下、単にスプレーガンと称する)から噴霧した塗料を、静電引力によって車体等の被塗装物に吸着させることで、被塗装物を塗装する塗装方法である。通常、静電塗装では、被塗装物は陽極に設定され、スプレーガンは陰極に設定されると共に、これら被塗装物とスプレーガンとの間に高電圧が印加されて静電界が形成される。そして、塗料つまり塗料粒子は、負の高電圧に帯電された状態でスプレーガンから噴霧される。
【0003】
この場合、スプレーガンの外殻を構成する本体ケース等は、接地されてアース体となっている。そのため、このような静電塗装において、スプレーガンから噴霧された塗料は、被塗装物だけではなく、アース体となっている本体ケースの外面にも引き寄せられて付着してしまう。この場合、本体ケースの外面に塗料が堆積すると、その塗料を伝って電流がリークする危険性が高まる。更に、本体ケースの外面に堆積した塗料が剥がれ落ちて被塗装物に付着すると、塗装不良となってしまう。
【0004】
そのため、従来構成では、本体ケースの外面に付着した塗料を除去し、塗料の堆積を防ぐために、本体ケースの外面を頻繁に清掃する必要があった。したがって、従来構成では、本体ケースの外面を清掃するための工数を要するとともに、清掃中は、塗装作業を中断しなければならないため、塗装作業の効率も低下してしまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−79663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本体ケースの外面に塗料が付着することを抑制するとともに本体ケースの外面に付着した塗料の清掃を容易にし、本体ケース外面の清掃の手間を低減することができる静電塗装用スプレーガンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の静電塗装用スプレーガンは、塗料を噴霧するためのノズルと、前記ノズルから噴霧された塗料を帯電させるための放電電極と、前記放電電極に高電圧を供給する高電圧発生器と、先端部に前記ノズルが取り付けられて内部に前記高電圧発生器を収容する本体ケースと、前記本体ケース内に清掃用のエアを供給する清掃用エア経路と、を備える。前記本体ケースは、前記清掃用エア経路から前記本体ケース内に供給されたエアを外部へ吐出する外面用エア吐出部を有している。前記清掃用エア経路は、前記本体ケース内において前記本体ケースの外部に露出することなく前記清掃用エア経路の先端側に設けられ前記放電電極にエアを吹き付け可能な電極用エア吐出部を有している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態による静電塗装用スプレーガンの電気的構成の一例を示す模式図
図2】一実施形態による静電塗装用スプレーガンを示す斜視図
図3】一実施形態による静電塗装用スプレーガンを示す正面図
図4】一実施形態による静電塗装用スプレーガンについて、図3のX4−X4線に沿って示す断面図
図5】一実施形態による静電塗装用スプレーガンについて、図3のX5−X5線に沿って示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態に係る静電塗装用スプレーガンについて図面を参照しながら説明する。
図1及び図2に示す静電塗装用スプレーガン10(以下、スプレーガン10と称する)は、例えば図示しないレシプロケータやロボットアームの先端部に設けられて、被塗装物を自動で塗装するいわゆる自動ガンである。実施形態のスプレーガン10は、図1に示すように、塗料及び塗装用エア経路11、ノズル12、放電電極13、高電圧発生器20、及び清掃用エア経路30を備えている。また、スプレーガン10は、外殻を構成する要素として、図2等に示すように、本体ケース40、ノズルキャップ51、キャップナット52、及び後ろカバー60を備えている。
【0010】
なお、本実施形態の説明では、図2の前後の矢印で示すように、本体ケース40の長手方向をスプレーガン10の前後方向とする。この場合、本体ケース40の長手方向に対し、ノズルキャップ51側をスプレーガン10の前側とし、後ろカバー60側をスプレーガン10の後側とする。また、図2の上下の矢印で示すように、スプレーガン10の前後方向に対して直角方向を、スプレーガン10の上下方向とする。そして、スプレーガン10の前後方向に対して直角方向でかつ上下方向に対して直角方向を、スプレーガン10の幅方向とする。
【0011】
図1に示すように、塗料及び塗装用エア経路11は、スプレーガン10の外部から供給される塗料及び塗装用エアを、スプレーガン10のノズル12へ供給するための経路である。すなわち、塗料及び塗装用エア経路11は、ノズル12に塗料を供給するための塗料経路と、ノズル12に塗装用エアを供給するための塗装用エア経路とを、共通化させたものである。なお、塗料経路と塗装用エア経路とは、それぞれ別に構成しても良い。
【0012】
塗料及び塗装用エア経路11は、図4に示すように、本体ケース40内に設けられており、電気的絶縁性を有する例えば合成樹脂製のホースなどで構成されている。この場合、塗料及び塗装用エア経路11を構成するホースは、剛性を有しているが、柔軟性を有するものであっても良い。塗料及び塗装用エア経路11は、図1及び図4に示すように、ジョイント111を有している。塗料及び塗装用エア経路11は、図1に示すように、ジョイント111を介して塗料バルブ81及び塗装用エアバルブ82に接続される。
【0013】
図1に示す塗料バルブ81及び塗装用エアバルブ82は、例えばスプレーガン10とは別体に構成された電磁弁であって、図示しない上位の制御装置に電気的に接続されている。塗料バルブ81及び塗装用エアバルブ82は、この上位の制御装置からの動作指令に基づいて開閉制御される。なお、塗料バルブ81及び塗装用エアバルブ82は、上位の制御装置による開閉制御に換えて、スプレーガン10に設けられたトリガーをユーザが操作することによって開閉制御される構成でも良い。
【0014】
塗料バルブ81は、塗料ポンプ91及び塗料タンク92に接続される。塗料タンク92内には、液体又は粉体の塗料が貯蔵されている。塗料タンク92内の塗料は、塗料ポンプ91によって塗料バルブ81へ供給される。塗装用エアバルブ82は、コンプレッサ93に接続されている。コンプレッサ93で生じた圧縮空気の一部は、塗装用エアバルブ82へ供給される。そして、塗料バルブ81の吐出側及び塗装用エアバルブ82の吐出側は、塗料及び塗装用エア経路11のジョイント111に至るまでの間に合流している。
【0015】
ノズル12は、塗料を所定のパターンに噴霧するためのものであり、図4に示すように、本体ケース40の先端部に設けられている。図示しない制御装置からの動作指令によって塗料バルブ81及び塗装用エアバルブ82が開放されると、塗料ポンプ91から供給される塗料とコンプレッサ93から供給される圧縮エアとが混合した状態で塗料及び塗装用エア経路11に供給された後、ノズル12に供給される。そして、ノズル12に供給された塗料は、圧縮エアによって微粒子化されるとともに塗装に適した形状つまり塗装パターンに形成されてノズル12から噴霧される。
【0016】
図1に示す高電圧発生器20は、入力される交流電圧に比例した直流の高電圧を出力する。本実施形態において、高電圧発生器20は、外部から入力された入力電圧を5000〜6000倍程度に昇圧して出力する。スプレーガン10は、図示しない静電コントローラに対してケーブル接続されている。図示しない静電コントローラは、スプレーガン10に対して交流電圧を供給する。
【0017】
高電圧発生器20は、入力トランス21、昇圧回路22、及び出力抵抗23を有している。入力トランス21の入力側つまり1次側は、外部の静電コントローラに接続されている。入力トランス21の出力側つまり2次側は、例えば金属線によって昇圧回路22の入力側つまり低電圧部221に接続されている。入力トランス21は、外部の静電コントローラと昇圧回路22との間を電気的に絶縁し、外部の静電コントローラから供給される交流電圧を昇圧回路22の低電圧部221へ出力する。
【0018】
昇圧回路22は、例えばコッククロフト・ウォルトン型の昇圧整流回路で構成されている。昇圧回路22は、入力トランス21から入力された交流電圧を昇圧及び整流して直流の高電圧に変換する。昇圧回路22の出力側つまり高電圧部222は、例えば金属線によって出力抵抗23に接続されている。
【0019】
出力抵抗23は、例えば板状に構成された抵抗体であり、昇圧回路22の高電圧部222と放電電極13との間に設けられている。昇圧回路22から出力された直流の高電圧は、出力抵抗23を介して放電電極13に供給され、放電電極13から直流の出力電圧として出力される。放電電極13は、例えばピン形状の金属電極で構成され、ノズル12の近傍又はノズル12の内部に設けられている。これにより、ノズル12から噴霧された塗料の微粒子には、放電電極13から出力される直流の出力電圧が印加される。
【0020】
本実施形態の場合、図示しない静電コントローラは、例えば12V〜20Vの交流電圧を、スプレーガン10の入力トランス21の1次側に供給する。入力トランス21は、静電コントローラから供給された交流電圧を、2次側において2kV〜4kV程度の交流電圧に変換して、昇圧回路22に入力する。昇圧回路22は、入力トランス21から供給された交流電圧を、60kV〜100kVの直流電圧に昇圧して放電電極13に供給する。そして、放電電極13は、ノズル12から噴霧された塗料を高電圧に帯電させる。これにより、被塗装物100に対して静電塗装が行われる。なお、本明細書中において、出力電圧の値は、便宜上、正負の区別無く絶対値で表している。
【0021】
なお、昇圧回路22は、回路内の図示しないダイオードの向きを変えることにより、出力電圧の極性を接地電位に対して正または負のいずれかに設定することができる。例えば昇圧回路22の出力電圧の極性は、接地電位に対して負になるように構成されている。この場合、微粒子化された塗料は負の極性に荷電される。
【0022】
高電圧発生器20は、図4に示すように、本体ケース40の内部に設けられている。高電圧発生器20の外殻は、絶縁ケース24によって構成されている。絶縁ケース24は、例えば電気絶縁性を有するポリアセタール樹脂やフッ素樹脂などの合成樹脂によって構成されている。この場合、絶縁ケース24は、図4及び図5に示すように、全体として前後方向に長細く、下側の全面が開口した容器状に形成されている。入力トランス21、昇圧回路22、及び出力抵抗23は、絶縁ケース24内に収容されている。この場合、入力トランス21、昇圧回路22、及び出力抵抗23の周囲は、絶縁ケース24内に充填されて固化されたモールド樹脂によって覆われている。入力トランス21、昇圧回路22、及び出力抵抗23の周囲は、このモールド樹脂によって電気的に絶縁されている。
【0023】
清掃用エア経路30は、本体ケース40内に対して、放電電極13及び本体ケース40の外側表面を清掃するための清掃用エアを供給する。清掃用エア経路30は、図4及び図5に示すように、本体ケース40の内部に設けられている。本実施形態の場合、清掃用エア経路30は、エアチューブ31、電極用エア吐出部32、第1ジョイント33、及び第2ジョイント34を有している。エアチューブ31、電極用エア吐出部32、第1ジョイント33、及び第2ジョイント34は、例えば電気的絶縁性を有するポリアセタール樹脂やフッ素樹脂などの合成樹脂等で構成されている。
【0024】
本実施形態の場合、エアチューブ31は、折り曲げ可能な程度に柔軟性を有している。そして、エアチューブ31は、本体ケース40内に設けられた例えば塗料及び塗装用エア経路11や高電圧発生器20などの変形不可の構成を避けるようにして配置されている。なお、清掃用エア経路30は、柔軟性を有するエアチューブ31に換えて、折り曲げ不可で剛性を有するエアホースを有していても良い。
【0025】
電極用エア吐出部32は、図4に示すように、清掃用エア経路30の先端部を構成している。電極用エア吐出部32は、本体ケース40の先端部内にあって、エアチューブ31の先端部に設けられている。エアチューブ31と電極エア吐出部32とは、ジョイント34を介して接続されている。電極用エア吐出部32は、本体ケース40内にあって、放電電極13の近傍でかつ放電電極13側に向けて設けられている。この場合、電極用エア吐出部32は、本体ケース40の外部には露出していない。また、本実施形態の場合、電極用エア吐出部32から吐出したエアは、例えばノズル12に形成された清掃経路121を通って、放電電極13に吹き付けられる。
【0026】
第2ジョイント34は、本体ケース40の後端部に設けられており、清掃用エア経路30の後端部を構成している。図1に示すように、清掃用エア経路30は、第2ジョイント34を介して、清掃用エアバルブ83、及び外部のエア供給源この場合コンプレッサ93に接続されている。本実施形態において、清掃用エアバルブ83は、例えばエア用の電磁弁である。
【0027】
この場合、コンプレッサ93の吐出側は、2方向に分岐し、一方が塗装用エアバルブ82に接続され、他方が清掃用エアバルブ83に接続されている。したがって、本実施形態の場合、塗装用エアバルブ82と清掃用エアバルブ83とは、いずれもコンプレッサ93をエア供給源としている。なお、塗装用エアバルブ82及び清掃用エアバルブ83は、エアの供給源を共用する構成ではなく、それぞれ専用のエア供給源を備える構成であっても良い。
【0028】
清掃用エア経路30は、この清掃用エア経路30上に形成された図示しない複数の小孔を有している。この場合、図示しない複数の小孔は、エアチューブ31に形成されている。すなわち、エアチューブ31を流れるエアの一部は、図4の矢印Aで示すように、このエアチューブ31の先端部まで至って電極用エア吐出部32から吐出される。また、エアチューブ31を流れるエアの他の一部は、図5の矢印Bで示すように、エアチューブ31の先端部まで至らずに図示しない複数の小孔から本体ケース40内に吐出される。これにより、本体ケース40内が加圧されて、本体ケース40内の圧力が、本体ケース40外部の圧力つまり大気圧よりも高くなる。
【0029】
図2に示すように、スプレーガン10の外殻を構成する本体ケース40、ノズルキャップ51、キャップナット52、及び後ろカバー60は、例えば電気絶縁性を有するポリアセタール樹脂やフッ素樹脂などの合成樹脂によって構成されている。ノズル12は、図4に示すように、本体ケース40の先端部にあって、本体ケース40から露出する形態で設けられている。ノズルキャップ51は、キャップナット52を介して本体ケース40の先端部に設けられており、ノズル12の周囲を覆っている。また、後ろカバー60は、図4及び図5に示すように、本体ケース40の後端部に設けられており、ジョイント111、34の周囲を囲っている。
【0030】
図2等に示すように、本体ケース40は、バレル前部41、バレル後部42、及びリアハッチ部43を有している。バレル後部42は、バレル前部41よりも、上下方向の寸法が大きく設定されている。本実施形態の場合、バレル前部41及びバレル後部42は、一体成形されている。本体ケース40は、バレル後部42とリアハッチ部43との接続部分等に微小な隙間を有しているものの、全体として略密閉容器状に構成されている。
【0031】
本体ケース40の上側面であって、バレル前部41とバレル後部42との接続部分には、バレル後部42からバレル前部41へ向かって下降傾斜する傾斜面44が形成されている。また、高電圧発生器20は、図4及び図5に示すように、バレル前部41及びバレル後部42の内側に収容されている。リアハッチ部43は、バレル後部42よりも、上下方向及び幅方向の寸法が大きく設定されている。
【0032】
また、本体ケース40は、複数の外面用エア吐出部を有している。本実施形態の場合、本体ケース40は、図2図5に示すように、第1外面用エア吐出部401及び第2外面用エア吐出部402を有している。外面用エア吐出部401、402は、本体ケース40に形成された貫通穴であり、本体ケース40の内部と外部とを連通させている。外面用エア吐出部401、402は、清掃用エア経路30の図示しない小孔から本体ケース40内に供給された清掃用エアを、本体ケース40の外部へ吐出するためのものである。
【0033】
外面用エア吐出部401、402は、図4及び図5に示すように、本体ケース40の長手方向の中心部よりも後端部側に設けられている。そして、外面用エア吐出部401、402は、清掃用エア経路30の図示しない小孔から本体ケース40内に供給されたエアを、本体ケース40の先端部側へ向かって吐出するように構成されている。
【0034】
本実施形態の場合、第1外面用エア吐出部401は、傾斜面44に設けられている。第1外面用エア吐出部401は、傾斜面44から前方斜め上方へ突出するとともに、その突出部分を、傾斜面44に沿って前方斜め下方へ向けて例えば円形に開口するように形成されている。第2外面用エア吐出部402は、リアハッチ部43の周囲にあって、リアハッチ部43を例えば円形に貫くようにして形成されている。第2外面用エア吐出部402は、前方へ向けて開口している。
【0035】
なお、外面用エア吐出部401、402の具体的形状や個数、位置は、上記したものに限られない。外面用エア吐出部401、402は、円形の穴に限られず、例えばスリット状であっても良い。また、外面用エア吐出部401、402は、バレル前部41又はバレル後部42に設けても良いし、バレル前部41又はバレル後部42の側面又は下面に設けても良い。
【0036】
この構成において、図1に示す清掃用エアバルブ83が開放されると、コンプレッサ93で生成された圧縮エアが、清掃用エアバルブ83を介して清掃用エア経路30に供給される。すると、清掃用エア経路30に供給されたエアの一部は、図4の矢印Aで示すように、清掃用エア経路30の先端部まで至り、電極用エア吐出部32から吐出されて放電電極13に吹き付けられる。これにより、放電電極13に付着しようとする塗料又は放電電極13に付着した塗料が吹き飛ばされて、放電電極13に塗料が付着することが抑制されるとともに放電電極13が清掃される。
【0037】
また、清掃用エア経路30に供給されたエアの他の一部は、図5の矢印Bで示すように、清掃用エア経路30の先端部まで至らずに図示しない複数の小孔から本体ケース40内に吐出される。これにより、本体ケース40内は、本体ケース40外部の圧力つまり大気圧よりも高い圧力に加圧される。そして、清掃用エア経路30の小孔から本体ケース40内に供給されたエアの一部は、図4及び図5の矢印Cで示すように、各外面用エア吐出部401、402から本体ケース40の外部へ吐出される。
【0038】
この場合、各外面用エア吐出部401、402は、本体ケース40の前方へ向いていることから、各外面用エア吐出部401、402から本体ケース40の外部へ吐出されたエアは、本体ケース40の外面に沿って前方へ向かって流れる。これにより、本体ケース40の外面に付着しようとする塗料又は本体ケース40の外面に付着した塗料が吹き飛ばされて、本体ケース40の外面に塗料が付着することが抑制されるとともに本体ケース40の外面が清掃される。
【0039】
なお、清掃用エアバルブ83を開放して放電電極13及び本体ケース40の外面を清掃する時期及び時間は、スプレーガン10が使用される環境や使用する塗料等に応じて適宜設定することができる。また、清掃用エアバルブ83を開放は、定期的に自動で行っても良いし、ユーザの操作によって行っても良い。この場合、清掃用エアバルブ83の開放を、例えば被塗装物100を塗装している塗装工程の最中や、被塗装物100を切り替える塗装工程の間等の時期に自動で行うようにすることで、ユーザの清掃の手間を低減できるため、便利である。
【0040】
以上説明した実施形態によれば、スプレーガン10は、塗料を噴霧するためのノズル12と、ノズル12から噴霧された塗料を帯電させるための放電電極13と、放電電極13に高電圧を供給する高電圧発生器20と、先端部にノズル12が取り付けられて内部に高電圧発生器20を収容する本体ケース40と、本体ケース40内に清掃用のエアを供給する清掃用エア経路30と、を備えている。そして、本体ケース40は、清掃用エア経路30から本体ケース40内に供給された清掃用エアを外部へ吐出する外面用エア吐出部401、402を有している。
【0041】
これによれば、スプレーガン10は、外面用エア吐出部401、402から本体ケース40の外部へ吐出されたエアによって、本体ケース40の外面周辺に浮遊する塗料を吹き飛ばして本体ケース40の外面に塗料が付着することを防ぐことができる。また、スプレーガン10は、外面用エア吐出部401、402から本体ケース40の外部へ吐出されたエアによって、本体ケース40の外面に付着した塗料を吹き飛ばして本体ケース40の外面を清掃することができる。
【0042】
このように、本実施形態によれば、本体ケース40の外面に塗料が付着することを抑制することができるとともに、仮に本体ケース40の外面に塗料が付着した場合であっても、その付着した塗料を清掃することができる。これにより、本実施形態のスプレーガン10は、外面用エア吐出部401、402を備えていない構成に比べて、本体ケース40の外面に付着する塗料を効果的に低減し、更には付着した塗料を効果的に清掃することができる。その結果、ユーザが直接本体ケース40外面の清掃する回数を削減することができ、清掃のためのユーザの手間を低減することができる。
【0043】
この場合、外部のエア供給源であるコンプレッサ93から清掃用エア経路30に供給されたエアは、図示しない複数の小孔から本体ケース40に供給されて、本体ケース40の内部を、本体ケース40の外部圧力つまり大気圧よりも高い圧力に加圧する。すなわち、本体ケース40の内部と外部とに圧力差が生じている。このため、ノズル12から噴霧されて本体ケース40の周囲を漂う塗料が、外面用エア吐出部401、402から本体ケース40の内部に侵入することを防ぐことができる。
【0044】
ここで、本体ケース40は、全体として略密閉容器状に構成されているため、スプレーガン10を連続して長期間使用すると、高電圧発生器20で発生した熱が本体ケース40内に蓄熱し易くなる。すると、その熱の影響を受けて、高電圧発生器20からの電圧の出力効率が低下するとともに、高電圧発生器20や周囲の他の部品の劣化が促進されてしまう。そのため、従来構成では、スプレーガン10を長期間連続して使用することが難しかった。
【0045】
これに対し、本実施形態によれば、本体ケース40内には、清掃用エア経路30から本体ケース40内に供給されたエアが外面用エア吐出部401、402から外部へ流出する際に、本体ケース40内にエアの流れが生じる。そして、本体ケース40内を流れるエアが高電圧発生器20に接触することで、高電圧発生器20を効率的に冷却することができる。したがって、本実施形態によれば、高電圧発生器20等を冷却するための専用の機構を設けることなく、高電圧発生器20等を効率的に冷却することができる。その結果、スプレーガン10のより長期間の連続使用を可能にするとともに、高電圧発生器20や周辺の他の部品の劣化を抑制することができる。
【0046】
清掃用エア経路30は、清掃用エア経路30の先端側に設けられて放電電極13にエアを吹き付け可能な電極用エア吐出部32と、この清掃用エア経路30上に形成された図示しない複数の小孔と、を有している。
【0047】
これによれば、1つの清掃用エア経路30によって、放電電極13及び本体ケース40の外面を清掃することができる。したがって、放電電極13を清掃するための清掃用エア経路と、本体ケース40の外面を清掃するための清掃用エア経路と、を別々に設ける場合に比べて、部品点数を低減することができる。その結果、スプレーガン10の組立工数を低減でき、ひいては製造コストを低減することができる。
【0048】
外面用エア吐出部401、402は、本体ケース40の長手方向の中心部よりも後端部側に設けられているとともに、清掃用エア経路30から本体ケース40内に供給された清掃用のエアを、本体ケース40の先端部側へ向かって吐出するように構成されている。これによれば、外面用エア吐出部401、402とノズル12との距離を極力長く確保することができる。したがって、ノズル12から噴霧されて本体ケース40の周囲を漂う塗料が、外面用エア吐出部401、402から本体ケース40の内部に侵入することをより効果的に防ぐことができる。
【0049】
なお、上述したスプレーガン10は、自動ガンに限られず、ユーザ自身が手に持って作業するいわゆるハンドガンであっても良い。
その他、本発明の実施形態は、上記したかつ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0050】
図面中、10は静電塗装用スプレーガン、12はノズル、13は放電電極、20は高電圧発生器、30は清掃用エア経路、32は電極用エア吐出部、40は本体ケース、401、402は外面用エア吐出部、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5