(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の加熱冷却装置1は、熱交換装置を構成する反応釜10に蒸気および水の一方を供給し、反応釜10に収容された非加熱物である対象物(図示省略)を加熱したり冷却したりするものである。加熱冷却装置1は、蒸気供給部20と、真空発生部30と、水供給部40と、制御部60とを備えている。
【0012】
蒸気供給部20は、蒸気を反応釜10に供給して対象物を温度調節するものである。蒸気供給部20は、蒸気供給管21と蒸気供給弁22とを有している。反応釜10は、ほぼ全周に亘って形成されたジャケット部11を有している。蒸気供給管21は、ジャケット部11に接続され、図示しない蒸気生成部から所定温度の蒸気がジャケット部11に供給される。反応釜10では、ジャケット部11に供給された蒸気が対象物と間接的に熱交換し、対象物が温度調節される。蒸気供給弁22は、蒸気供給管21に設けられ、開度調節により蒸気の圧力を調節するものである。こうして蒸気の圧力が調節されることにより、蒸気の温度が調節される。
【0013】
真空発生部30は、吸引作用によりジャケット部11内を所定の真空圧状態(例えば、大気圧以下)にするものである。真空発生部30は、ドレンタンク31と、循環配管32と、エゼクタ33と、ポンプ34と、ドレン排出管35と、蒸気排出管37とを有している。ドレンタンク31は、ジャケット部11で発生したドレンが貯留されるものである。循環配管32は、ドレンタンク31に接続されている。つまり、循環配管32は、一端(流入端)がドレンタンク31の下部に接続され、他端(流出端)がドレンタンク31の上部に接続されている。循環配管32には、上流側(流入端側)から順に、ポンプ34およびエゼクタ33が設けられている。
【0014】
ドレン排出管35は、一端(流入端)がジャケット部11の下部に接続され、他端(流出端)がエゼクタ33の吸引部に接続されている。ドレン排出管35は、ジャケット部11で発生したドレン(復水)が排出される。蒸気排出管37は、一端(流入端)がジャケット部11に接続され、他端(流出端)がドレン排出管35に接続されている。蒸気排出管37は、ジャケット部11で発生した気化蒸気が排出される。ドレン排出管35には、蒸気排出管37の接続位置よりも下流側にスチームトラップ36が設けられている。蒸気排出管37には、排出弁38が設けられている。
【0015】
真空発生部30では、ポンプ34によってドレンタンク31の水がエゼクタ33に供給されることにより、エゼクタ33の吸引部に吸引作用が生じる。このエゼクタ33の吸引作用により、ジャケット部11のドレンおよび蒸気がドレン排出管35および蒸気排出管37を通じてエゼクタ33に吸引される。
【0016】
水供給部40は、水を反応釜10のジャケット部11に供給して対象物を温度調節するものである。水供給部40は、水供給管41と、水供給弁42と、熱交換器43とを有している。水供給管41は、一端(流入端)が循環配管32におけるポンプ34とエゼクタ33との間に接続され、他端(流出端)がジャケット部11に接続され、循環配管32を流れる水の一部がジャケット部11に供給される。なお、図示しないが、水供給管41の他端にはジャケット部11に水を噴霧するためのスプレーノズルが設けられている。反応釜10では、ジャケット部11に供給された水が対象物と間接的に熱交換し、対象物が温度調節される。水供給弁42は、水供給管41に設けられ、開度調節により水の流量を調節するものである。なお、水供給弁42は、開度調節可能な弁ではなく、ON/OFFのみの切り換えが行われる弁を用いるようにしてもよい。
【0017】
熱交換器43は、水供給管41における水供給弁42よりも下流側に設けられ、水の温度を調節するものである。熱交換器43には、蒸気を熱交換器43に供給する蒸気供給管44が接続され、蒸気供給管44には、蒸気供給弁45が設けられている。熱交換器43では、水供給管41を流れる水が、蒸気供給管44から供給された蒸気と熱交換して加熱(温度調節)される。蒸気供給弁45は、開度調節により蒸気の流量を調節するものである。
【0018】
本実施形態の加熱冷却装置1は、運転モードとして、蒸気を反応釜10のジャケット部11に供給して対象物を温度調節する蒸気モードと、水(ドレンタンク31の水)を反応釜10のジャケット部11に供給して対象物を温度調節する水モードとを有している。蒸気モードは第1および第2蒸気モードの2種類あり、水モードは第1および第2水モードの2種類ある。制御部60は、第1蒸気モード、第2蒸気モード、第1水モードおよび第2水モードの4つの運転モードを切り換えて、反応釜10の対象物の温度を制御するように構成されている。制御部60の構成および動作の詳細については後述する。
【0019】
反応釜10には、対象物の温度を検出する温度センサ51が設けられている。蒸気供給管21には、蒸気供給弁22よりも下流側に蒸気の圧力を検出する圧力センサ52が設けられている。水供給管41には、熱交換器43よりも下流側に水の温度を検出する温度センサ53が設けられている。
【0020】
〈各運転モードの動作〉
第1蒸気モードおよび第2蒸気モードは、ポンプ34が駆動されると共に、排出弁38および水供給弁42が閉状態に設定される。この状態では、蒸気が蒸気供給管21からジャケット部11に供給され、その蒸気が対象物と熱交換し、対象物が温度調節される。つまり、第1蒸気モードおよび第2蒸気モードではジャケット部11に水は供給されない。第2蒸気モードは、対象物を急速に加熱する運転モードである。第2蒸気モードでは、蒸気供給弁22が設定された圧力に連続制御され、最大設定温度(一定圧力)の蒸気がジャケット部11に供給される。第1蒸気モードでは、蒸気供給弁22の開度が対象物の温度に応じて制御される。つまり、第1蒸気モードでは、対象物の温度に応じて制御された温度の蒸気がジャケット部11に供給される。第1蒸気モードおよび第2蒸気モードにおける真空発生部30では、ポンプ34によってドレンタンク31の水がエゼクタ33に供給され、再びドレンタンク31に戻る。その際、ジャケット部11で蒸気が凝縮して発生したドレンが、ドレン排出管35を通じてエゼクタ33に吸引され、ドレンタンク31に流入する。こうして、ジャケット部11で発生したドレンはドレンタンク31に貯留される。
【0021】
第1水モードおよび第2水モードは、ポンプ34が駆動されると共に、水供給弁42および排出弁38が開状態に設定され、蒸気供給弁22が閉状態に設定される。この状態では、ポンプ34によってドレンタンク31の水がエゼクタ33に供給されると共に水供給管41を通じてジャケット部11に供給される。ジャケット部11では、供給された水が気化冷却により対象物と熱交換し、対象物が温度調節される。つまり、第1水モードおよび第2水モードではジャケット部11に蒸気は供給されない。ジャケット部11で水が気化して発生した蒸気は、蒸気排出管37を通じてエゼクタ33に吸引され、ドレンタンク31に流入する。なお、ジャケット部11で気化しきれなかった水等は、ドレン排出管35を通じてエゼクタ33に吸引され、ドレンタンク31に流入する。第2水モードは、対象物を急速に冷却する運転モードである。第2水モードでは、蒸気供給弁45が閉状態に設定され、一定温度の水がジャケット部11に供給される。つまり、第2水モードでは、熱交換器43による加熱動作が停止される。第1水モードでは、蒸気供給弁45の開度が対象物の温度に応じて制御される。つまり、第1水モードでは、熱交換器43において対象物の温度に応じて制御された温度の水がジャケット部11に供給される。
【0022】
〈制御部の構成および動作〉
制御部60は、反応釜10の対象物の温度(以下、実測値(PV)という。)が設定値(SV)になるように、上述した4つの運転モードの切り換えを行う。制御部60には、温度センサ51の検出値が実測値(PV)として入力される。
【0023】
制御部60には、第1低温側閾値(KL1)、第1高温側閾値(KH1)、第2低温側閾値(KL2)および第2高温側閾値(KH2)の4つの閾値が設定されている。第1低温側閾値(KL1)は設定値(SV)よりも所定量(例えば、0.1℃)低い値に設定され、第1高温側閾値(KH1)は設定値(SV)よりも所定量(例えば、0.1℃)高い値に設定されている。第2低温側閾値(KL2)は、第1低温側閾値(KL1)よりも低い値であり、設定値(SV)よりも所定量(例えば、10℃)低い値に設定されている。第2高温側閾値(KH2)は、第1高温側閾値(KH1)よりも高い値であり、設定値(SV)よりも所定量(例えば、2℃)高い値に設定されている。
【0024】
制御部60は、実測値(PV)に応じて上述した4つの運転モードの何れかを選択する。具体的に、制御部60は、実測値(PV)が第2低温側閾値(KL2)よりも低い場合、第2蒸気モードを選択し、実測値(PV)が第2高温側閾値(KH2)よりも高い場合、第2水モードを選択する。また、制御部60は、実測値(PV)の変化率が正値の場合において、実測値(PV)が第2低温側閾値(KL2)以上で第1高温側閾値(KH1)以下のとき、第1蒸気モードを選択し、実測値(PV)が第1高温側閾値(KH1)以上で第2高温側閾値(KH2)以下のとき、第1水モードを選択する。また、制御部60は、実測値(PV)の変化率が負値の場合において、実測値(PV)が第2高温側閾値(KH2)以下で第1低温側閾値(KL1)以上のとき、第1水モードを選択し、実測値(PV)が第1低温側閾値(KL1)以下で第2低温側閾値(KL2)以上のとき、第1蒸気モードを選択する。なお、実測値(PV)の変化率の正負判定においては、絶対値が所定値以上の値についてのみ判定対象とすることができる。
【0025】
そして、制御部60は、実測値(PV)が第1低温側閾値(KL1)から上昇して第1高温側閾値(KH1)に達すると、第1蒸気モードから第1水モードに切り換える。また、制御部60は、実測値(PV)が第1高温側閾値(KH1)から低下して第1低温側閾値(KL1)に達すると、第1水モードから第1蒸気モードに切り換える。つまり、第1高温側閾値(KH1)は、実測値(PV)の変化率が正値の場合において、運転モードを第1水モードに切り換える基準値であり、第1低温側閾値(KL1)は、実測値(PV)の変化率が負値の場合において、運転モードを第1蒸気モードに切り換える基準値である。
【0026】
制御部60の動作について
図2〜
図5を参照しながら詳細に説明する。ここでは一例として、実測値(PV)が第2低温側閾値(KL2)よりも低い状態から制御部60による動作が開始されるとして説明する。なお、以下に記載する「ステップST」は
図2のフローチャートにおけるステップSTを示す。
【0027】
先ず、実測値(PV)が第2低温側閾値(KL2)よりも低いので、第2蒸気モードが選択される(ステップST1、
図3に示すa区間)。第2蒸気モードでは、上述したように、蒸気が蒸気供給管21からジャケット部11に供給され、その供給される蒸気の温度(以下、供給蒸気温度という。)は設定値(SV)よりも高い一定値である。ジャケット部11では、蒸気が対象物と熱交換して凝縮し、対象物が加熱され温度(実測値(PV))が上昇する。
【0028】
次いで、ステップST2では、制御部60において、実測値(PV)が第2低温側閾値(KL2)以上になったか否かが判定される。そして、実測値(PV)が第2低温側閾値(KL2)よりも低いと判定されると、第2蒸気モードの運転が継続される。また、実測値(PV)が第2低温側閾値(KL2)以上であると判定されると、ステップST3へ移行し、運転モードが第2蒸気モードから第1蒸気モードに切り換えられる(
図3に示すb区間、h区間)。第1蒸気モードでは、上述したように、蒸気が蒸気供給管21からジャケット部11に供給されると共に、制御部60によって蒸気供給弁22の開度が実測値(PV)に応じて制御される。
【0029】
第1蒸気モードでは、蒸気供給弁22の開度が制御されることにより、蒸気供給管21からジャケット部11への供給蒸気温度が制御される。つまり、蒸気供給弁22の開度が減少すると、供給される蒸気の圧力(以下、供給蒸気圧力という。)が低下し、供給蒸気温度が低下する。蒸気供給弁22の開度が増加すると、供給蒸気圧力が高くなり、供給蒸気温度が高くなる。制御部60は、設定値(SV)と実測値(PV)との偏差、即ち設定値(SV)から実測値(PV)を引いた値(以下、単に偏差という。)に応じて供給蒸気温度を制御する。ここに、偏差は負の値にもなり得る。制御部60は、偏差に応じた供給蒸気圧力が設定されており、圧力センサ52の検出値が、偏差に応じて設定された供給蒸気圧力となるように、蒸気供給弁22の開度を制御する。これにより、供給蒸気温度が制御される。
【0030】
具体的には、
図4に示すように、第1蒸気モードにおける供給蒸気温度は最低値(SV−α)から最高値(SV+α)の範囲で変更される。なお、最高値(SV+α)は第2蒸気モードにおける供給蒸気温度よりも低い値である。実測値(PV)が第2低温側閾値(KL2)以上で第1低温側閾値(KL1)以下の場合、供給蒸気温度は設定値(SV)よりも高い最高値(SV+α)に設定されている。つまり、実測値(PV)が第2低温側閾値(KL2)以上で第1低温側閾値(KL1)以下の場合、供給蒸気温度は一定である。
【0031】
また、実測値(PV)が第1低温側閾値(KL1)以上で第1高温側閾値(KH1)以下の場合、偏差が小さくなるにつれて、即ち実測値(PV)が高くなるにつれて、供給蒸気温度は低下する。具体的に、実測値(PV)が設定値(SV)よりも低い場合、即ち偏差が正の値である場合、供給蒸気温度は設定値(SV)よりも高い値に設定される。一方、実測値(PV)が設定値(SV)よりも高い場合、即ち偏差が負の値である場合、供給蒸気温度は設定値(SV)よりも低い値に設定される。こうして第1蒸気モードでは、偏差に応じて供給蒸気温度が制御される。これにより、実測値(PV)が設定値(SV)よりも低いときは、蒸気によって対象物が加熱され、実測値(PV)が設定値(SV)よりも高いときは、蒸気によって対象物が冷却される。
【0032】
続いて、ステップST4では、制御部60において、実測値(PV)が第1高温側閾値(KH1)以上になったか否かが判定される。実測値(PV)が第1高温側閾値(KH1)よりも低いと判定されると、ステップST5へ移行し、実測値(PV)が第2低温側閾値(KL2)よりも低いか否かが判定される。実測値(PV)が第2低温側閾値(KL2)よりも低いと判定されると、ステップST1へ移行し、運転モードが第1蒸気モードから第2蒸気モードに切り換えられる(
図3に示すg区間)。また、実測値(PV)が第2低温側閾値(KL2)以上であると判定されると、第1蒸気モードの運転が継続される。
【0033】
一方、ステップST4において実測値(PV)が第1高温側閾値(KH1)以上であると判定されると、ステップST6へ移行し、運転モードが第1蒸気モードから第1水モードに切り換えられる(
図3に示すc区間、i区間)。第1水モードでは、上述したように、水が水供給管41からジャケット部11に供給されると共に、制御部60によって蒸気供給弁45の開度が実測値(PV)に応じて制御される。
【0034】
第1水モードでは、蒸気供給弁45の開度が制御されることにより、水供給管41からジャケット部11に供給される水の温度(以下、供給水温度という。)が制御される。つまり、蒸気供給弁45の開度が減少すると、蒸気供給管44から熱交換器43に供給される蒸気の流量が減少し、熱交換器43の加熱能力が減少する。これにより、供給水温度は低下する。また、蒸気供給弁45の開度が増加すると、蒸気供給管44から熱交換器43に供給される蒸気の流量が増加し、熱交換器43の加熱能力が増加する。これにより、供給水温度は高くなる。制御部60は、偏差に応じて供給水温度を制御する。制御部60は、温度センサ53の検出値が、偏差に応じて設定された供給水温度となるように、蒸気供給弁45の開度を制御する。
【0035】
具体的には、
図5に示すように、第1水モードにおける供給水温度は最低値(SV−α)から最高値(SV+α)の範囲で変更される。なお、最低値(SV−α)は後述する第2水モードにおける供給水温度よりも低い値である。実測値(PV)が第1高温側閾値(KH1)以上で第2高温側閾値(KH2)以下の場合、供給水温度は設定値(SV)よりも低い最低値(SV−α)に設定されている。つまり、実測値(PV)が第1高温側閾値(KH1)以上で第2高温側閾値(KH2)以下の場合、供給水温度は一定である。
【0036】
また、実測値(PV)が第1低温側閾値(KL1)以上で第1高温側閾値(KH1)以下の場合、偏差が大きくなるにつれて、即ち実測値(PV)が低くなるにつれて、供給水温度は高くなる。具体的に、実測値(PV)が設定値(SV)よりも高い場合、即ち偏差が負の値である場合、供給水温度は設定値(SV)よりも低い値に設定される。一方、実測値(PV)が設定値(SV)よりも低い場合、即ち偏差が正の値である場合、供給水温度は設定値(SV)よりも高い値に設定される。こうして第1水モードでは、供給水温度が偏差に応じて制御される。これにより、実測値(PV)が設定値(SV)よりも高いときは、水によって対象物が冷却され、実測値(PV)が設定値(SV)よりも低いときは、水によって対象物が加熱される。
【0037】
続いて、ステップST7では、制御部60において、実測値(PV)が第2高温側閾値(KH2)よりも高くなったか否かが判定される。実測値(PV)が第2高温側閾値(KH2)以下であると判定されると、ステップST8へ移行し、実測値(PV)が第1低温側閾値(KL1)以下になったか否かが判定される。実測値(PV)が第1低温側閾値(KL1)以下であると判定されると、ステップST3へ移行し、運転モードが第1水モードから第1蒸気モードに切り換えられる(
図3に示すf区間、j区間)。また、実測値(PV)が第1低温側閾値(KL1)よりも高いと判定されると、第1水モードの運転が継続される。
【0038】
一方、ステップST7において実測値(PV)が第2高温側閾値(KH2)よりも高いと判定されると、ステップST9へ移行し、運転モードが第1水モードから第2水モードに切り換えられる(
図3に示すd区間)。第2水モードでは、上述したように、水が水供給管41からジャケット部11に供給され、その供給水温度は設定値(SV)よりも低い一定値である。
【0039】
続いて、ステップST10では、制御部60において、実測値(PV)が第2高温側閾値(KH2)以下になったか否かが判定される。実測値(PV)が第2高温側閾値(KH2)以下であると判定されると、ステップST6へ移行し、運転モードが第2水モードから第1水モードに切り換えられる(
図3に示すe区間)。一方、実測値(PV)が第2高温側閾値(KH2)よりも高いと判定されると、第2水モードの運転が継続される。
【0040】
以上の制御が行われることにより、
図3に示すように、実測値(PV)はハンチング現象を起こすことなく設定値(SV)に収束していく。
【0041】
以上のように、上記実施形態の加熱冷却装置1によれば、実測値(PV)が上昇して設定値(SV)よりも高い第1高温側閾値(KH1)まで達すると、第1蒸気モードから第1水モードに切り換え、実測値(PV)が低下して設定値(SV)よりも低い第1低温側閾値(KL1)まで達すると、第1水モードから第1蒸気モード切り換えるようにした。つまり、上記実施形態の加熱冷却装置1では、実測値(PV)が設定値(SV)よりも上昇しても直ぐには第1水モードに切り換えず、また実測値(PV)が設定値(SV)よりも低下しても直ぐには第1蒸気モードに切り換えないようにした。
【0042】
第1蒸気モードおよび第1水モードに切り換えた直後は温度制御されていない蒸気および水がジャケット部11に供給されるため、仮に実測値(PV)が設定値(SV)を超えると直ぐに第1蒸気モードおよび第1水モードに切り換えるようにすると、過度に対象物を加熱および冷却する虞があり、それによってハンチング現象を引き起こしてしまう。上記実施形態では、このようなハンチング現象を引き起こすことなく、対象物の温度を設定値(SV)に収束させることができる。よって、高精度な温度制御を行うことができる。
【0043】
また、反応釜10において反応熱等の外乱が生じた場合は対象物の温度が急激に変化するが、上記実施形態ではそのような急激な温度変化にも対応することができる。
【0044】
また、上記実施形態の加熱冷却装置1によれば、実測値(PV)が第2低温側閾値(KL2)よりも低い場合は、急速に加熱する第2蒸気モードを選択し、実測値(PV)が第2高温側閾値(KH2)よりも高い場合は、急速に冷却する第2水モードを選択するようにした。したがって、対象物の温度を速やかに設定値(SV)に近付けることができる。
【0045】
また、上記実施形態の加熱冷却装置1によれば、第1蒸気モードおよび第1水モードでは、設定値(SV)から実測値(PV)を引いた値(偏差)に応じて供給蒸気温度および供給水温度を制御するようにしたため、適切に対象物を加熱および冷却することができる。
【0046】
本願に開示の発明は、「熱交換装置に蒸気を供給して対象物と熱交換させる蒸気供給部と、上記熱交換装置に水を供給して上記対象物と熱交換させる水供給部と、上記対象物の温度がその設定値になるように、上記蒸気供給部による供給動作を実行させ供給蒸気温度を上昇させるための蒸気モードと、上記水供給部による供給動作を実行させ供給水温度を低下させるための水モードとを切り換える制御部とを備え、上記制御部は、上記対象物の温度が含まれる閾値範囲に基づいて上記蒸気モードおよび上記水モードの何れかを選択し、上記対象物の温度変化率に基づいて上記閾値範囲を変更することを特徴とする加熱冷却装置。」として捉えることもできる。
【0047】
ここで、「閾値範囲」とは、例えば、第1低温側閾値(KL1)、第2低温側閾値(KL2)、第1高温側閾値(KH1)または第2高温側閾値(KH2)によって決定される範囲が該当する。また、「温度変化率」とは、例えば、
図3において、実測値(PV)が各区間にて示す曲線の傾きが該当する。「対象物の温度変化率に基づいて上記閾値範囲を変更する」とは、例えば、
図3において、温度変化率(傾き)が所定値以上の正値となる温度上昇時には第2低温側閾値(KL2)と第1高温側閾値(KH1)との間(閾値範囲)において第1蒸気モードを維持し、温度変化率(傾き)が所定値以上の負値となる温度低下時には第1低温側閾値(KL1)と第2低温側閾値(KL2)との間(閾値範囲)において第1蒸気モードを維持することが該当する。