特許第6795963号(P6795963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795963
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】硫黄基を含有する官能化エラストマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 236/06 20060101AFI20201119BHJP
   C08F 236/08 20060101ALI20201119BHJP
   C08F 4/70 20060101ALI20201119BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20201119BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   C08F236/06
   C08F236/08
   C08F4/70
   C08L9/00
   B60C1/00 Z
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-245078(P2016-245078)
(22)【出願日】2016年12月19日
(65)【公開番号】特開2017-160413(P2017-160413A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2019年11月15日
(31)【優先権主張番号】14/973,772
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】マーガレット・マクギガン・フローク
(72)【発明者】
【氏名】イニゴ・ゴットケル・ゲナント・シュネトマン
(72)【発明者】
【氏名】ハンネス・ライヒト
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・メヒンク
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第08598286(US,B1)
【文献】 米国特許第03316227(US,A)
【文献】 特開平03−042662(JP,A)
【文献】 特表2004−528440(JP,A)
【文献】 特開2009−173890(JP,A)
【文献】 特開平02−113005(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0060588(KR,A)
【文献】 Hannes Leicht et al.,Stereoselective Copolymerization of Butadiene and Functionalized 1,3-Dienes,American Chemical Society, ACS Macro Letters,2016年,5(6),777-780
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 236/00−236/22
C08F 4/00− 4/82
C08L 9/00− 9/10
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3−ブタジエン及びイソプレンからなる群から選ばれるモノマーと、式I:
【化1】

[式中、Rは、共有結合、フェニレン、1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルカンジイル基、又は一つもしくは複数のフェニレン基と一つもしくは複数の1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルカンジイル基との組合せであり;Rは、水素又は1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルキル基であり;Xは、硫黄原子又は式IIもしくはIIIの構造:
【化2】

であり、Xが式IIIの場合、式IIIのS原子は式Iのフェニル環に隣接し、式IIIのN原子はR1に隣接している]のモノマーとのコポリマー。
【請求項2】
式Iのモノマーが、下記構造:
【化3】

からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
請求項1に記載のコポリマーを特徴とするゴム組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のコゴム組成物を特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項5】
1,3−ブタジエン及びイソプレンからなる群から選ばれるモノマーと、式I:
【化4】

[式中、Rは、共有結合、フェニレン、1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルカンジイル基、又は一つもしくは複数のフェニレン基と一つもしくは複数の1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルカンジイル基との組合せであり;Rは、水素又は1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルキル基であり;Xは、硫黄原子又は式IIもしくはIIIの構造:
【化5】

であり、Xが式IIIの場合、式IIIのS原子は式Iのフェニル環に隣接し、式IIIのN原子はR1に隣接している]のモノマーとを(アリル)(アレーン)Ni(II)重合触媒の存在下で重合させる工程を特徴とするコポリマーの製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[背景技術]
立体規則ジエンポリマーは、タイヤコンパウンドの重要な成分として工業的に大規模に製造及び使用されている。高レベルの立体規則性を有するジエンポリマーは、ほぼ例外なく配位重合触媒を用いて製造されるが、配位重合触媒は一般に極性官能基によって害されやすい。この有害作用のために、配位触媒と適合可能なモノマーの種類は通常、単純な炭化水素に限定される。タイヤ業界では周知のことであるが、たとえ低レベルの官能性でも、ある種のタイヤポリマー(アニオン重合又は乳化重合により製造)に組み込まれると、そのようなポリマーを含有するタイヤの性能が著しく改良される。残念なことに、この官能化技術を立体規則ジエンポリマーに適用するための確かな方法は現在のところない。しかしながら、そのようなポリマーがあれば、おそらく公知の非官能化ポリマーに優る優れたタイヤ特性を示すであろう。
【0002】
国際公開第2004/007602号には、1,4−ジエン、スチレンの重合用及び二つのモノマーの共重合用の触媒が開示されている。この発明の触媒の特徴は、高度の立体選択性、触媒活性、及び極性不純物の存在に対する耐性を含む。前記触媒は、Niベースのジエン重合触媒に特有の特徴(高立体選択性及び触媒活性)と、極性物質の存在に対する明確に定義された特性及び耐性とを兼ね備えている。
【0003】
O’Connorら(Journal of Applied Polymer Science,Part A:Polymer Chemistry,Vol.48,1901−1912(2010))は、カチオン性アリルNi(II)錯体によって触媒された2,3−ビス(4−トリフルオロエトキシ−4−オキソブチル)−1,3−ブタジエンの重合を開示している。エステル基をより塩基性のアミノ及びヒドロキシ官能基で置換したモノマーを重合しようとしたが、うまくいかなかった。
【0004】
米国特許第6,100,373号;6,344,538号;及び6,583,260号には、官能化ジエンモノマー及び官能化ジエンを含有するポリマー及びそれらの製造法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2004/007602号
【特許文献2】米国特許第6,100,373号
【特許文献3】米国特許第6,344,538号
【特許文献4】米国特許第6,583,260号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】O’Connorら(Journal of Applied Polymer Science,Part A:Polymer Chemistry,Vol.48,1901−1912(2010))
【発明の概要】
【0007】
本発明は、1,3−ブタジエン又はイソプレンと、式I:
【0008】
【化1】
【0009】
[式中、Rは、共有結合、フェニレン、1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルカンジイル基、又は一つもしくは複数のフェニレン基と一つもしくは複数の1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルカンジイル基との組合せであり;Rは、水素又は1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルキル基であり;Xは、硫黄原子又は式IIもしくはIIIの構造:
【0010】
【化2】
【0011】
であり、Xが式IIIの場合、式IIIのS原子は式Iのフェニル環に隣接し、式IIIのN原子はR1に隣接している]のモノマーとのコポリマーに向けられる。
本発明はさらに、該コポリマーを含むゴム組成物、及び該ゴム組成物を含有する空気入りタイヤにも向けられる。
【0012】
本発明はさらに、そのようなコポリマーの製造法にも向けられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1,3−ブタジエン又はイソプレンと、式I:
【0014】
【化3】
【0015】
[式中、Rは、共有結合、フェニレン、1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルカンジイル基、又は一つもしくは複数のフェニレン基と一つもしくは複数の1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルカンジイル基との組合せであり;Rは、水素又は1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルキル基であり;Xは、硫黄原子又は式IIもしくはIIIの構造:
【0016】
【化4】
【0017】
であり、Xが式IIIの場合、式IIIのS原子は式Iのフェニル環に隣接し、式IIIのN原子はR1に隣接している]のモノマーとのコポリマーを開示する。
さらに、該コポリマーを含むゴム組成物、及び該ゴム組成物を含有する空気入りタイヤも開示する。
【0018】
さらに、そのようなコポリマーの製造法も開示する。
コポリマーは、非官能化ジエンモノマーと官能化ジエンモノマーの重合によって製造される。
【0019】
一態様において、非官能化ジエンモノマーは、1,3−ブタジエン又はイソプレンである。
一態様において、官能化ジエンモノマーは、式I:
【0020】
【化5】
【0021】
[式中、Rは、フェニレン、又は1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルカンジイル基、又は一つもしくは複数のフェニレン基と一つもしくは複数の1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルカンジイル基との組合せであり;Rは、水素又は1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルキル基であり;Xは、硫黄原子又は式IIもしくはIIIの構造:
【0022】
【化6】
【0023】
であり、Xが式IIIの場合、式IIIのS原子は式Iのフェニル環に隣接し、式IIIのN原子はR1に隣接している]のモノマーである。
一態様において、非官能化モノマーは、1,3-ブタジエン及びイソプレンから選ばれる。
【0024】
コポリマーは高度の立体規則性を有している。一態様において、コポリマーは、コポリマーのポリブタジエン含量を基にして80重量パーセントを超えるシス1,4ミクロ構造含量を有している。一態様において、コポリマーは、コポリマーのポリブタジエン含量を基にして95重量パーセントを超えるシス1,4ミクロ構造含量を有している。
【0025】
コポリマーは、非官能化モノマーから誘導された単位に由来する過半重量の部分と、官能化モノマーから誘導された単位に由来する半量に満たない重量の部分とを有する。一態様において、コポリマーは、0.1〜40重量パーセントの、官能化ジエンモノマーから誘導された単位を含む。一態様において、コポリマーは、0.5〜20重量パーセントの、官能化ジエンモノマーから誘導された単位を含む。一態様において、コポリマーは、1〜5重量パーセントの、官能化ジエンモノマーから誘導された単位を含む。
【0026】
コポリマーは、ニッケル配位触媒の存在下、非官能化モノマーと官能化モノマーの重合によって製造される。一態様において、触媒は、(アリル)(アレーン)Ni(II)化合物である。適切な(アリル)(アレーン)Ni(II)化合物は、O’Connorら(Organometallics 2009,28 2372−2384)に記載のようにして製造できる。触媒は、一般的に、適切な対アニオンを伴うカチオンの形態である。一態様において、対アニオンは、テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート(すなわちBAr)である。一態様において、触媒は、式IV:
【0027】
【化7】
【0028】
に示されているような(アリル)(メシチレン)Ni(II)BAr錯体である。
(アリル)(アレーン)Ni(II)触媒を用いる重合は、O’Connorら(Journal of Applied Polymer Science,Part A:Polymer Chemistry,Vol.48,1901−1912(2010))に記載の方法に従って実施することができる。共重合は、0〜60℃の範囲の温度で溶液重合によって実施することができる。溶液重合のための適切な溶媒は、トルエン、塩化メチレン、及びヘプタンなどである。
【0029】
コポリマーはゴム組成物に配合することができる。
ゴム組成物は、官能化コポリマーに加えて、オレフィン性不飽和を含有する一つ又は複数のゴム又はエラストマーを含んでいてもよい。“オレフィン性不飽和を含有するゴム又はエラストマー”又は“ジエン系エラストマー”という語句は、天然ゴム及びその各種未加工形及び再生形、ならびに各種合成ゴムのどちらも含むものとする。本発明の記載において、“ゴム”及び“エラストマー”という用語は、別段の規定のない限り互換的に使用されうる。“ゴム組成物”、“配合ゴム”及び“ゴムコンパウンド”という用語は、各種成分及び材料とブレンド又は混合されているゴムのことを言うのに互換的に使用され、そのような用語はゴム混合又はゴム配合分野の当業者には周知である。代表的な合成ポリマーは、ブタジエン及びその同族体及び誘導体、例えばメチルブタジエン、ジメチルブタジエン及びペンタジエンのホモ重合生成物、ならびにブタジエン又はその同族体もしくは誘導体とその他の不飽和モノマーとから形成されるようなコポリマーである。後者に含まれるものとしては、アセチレン、例えばビニルアセチレン;オレフィン、例えばイソブチレン(イソプレンと共重合してブチルゴムを形成する);ビニル化合物、例えばアクリル酸、アクリロニトリル(ブタジエンと重合してNBRを形成する)、メタクリル酸及びスチレン(後者の化合物はブタジエンと重合してSBRを形成する)のほか、ビニルエステル及び各種不飽和アルデヒド、ケトン及びエーテル、例えばアクロレイン、メチルイソプロペニルケトン及びビニルエチルエーテルなどが挙げられる。合成ゴムの具体例は、ネオプレン(ポリクロロプレン)、ポリブタジエン(シス−1,4−ポリブタジエンを含む)、ポリイソプレン(シス−1,4−ポリイソプレンを含む)、ブチルゴム、ハロブチルゴム、例えばクロロブチルゴム又はブロモブチルゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、1,3−ブタジエン又はイソプレンとスチレン、アクリロニトリル及びメチルメタクリレートなどのモノマーとのコポリマー、ならびにエチレン/プロピレンターポリマー(エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)としても知られる)、特にエチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエンターポリマーなどである。使用できるゴムの追加例は、アルコキシ−シリル末端官能化溶液重合ポリマー(SBR、PBR、IBR及びSIBR)、ケイ素結合及びスズ結合星状枝分れポリマーなどである。好適なゴム又はエラストマーはポリイソプレン(天然又は合成)、ポリブタジエン及びSBRである。
【0030】
一側面において、少なくとも一つの追加ゴムは、好ましくはジエン系ゴムの少なくとも二つである。例えば、シス1,4−ポリイソプレンゴム(天然又は合成、ただし天然が好適)、3,4−ポリイソプレンゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、乳化重合及び溶液重合由来スチレン/ブタジエンゴム、シス1,4−ポリブタジエンゴム及び乳化重合調製ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーなどの二つ以上のゴムの組合せが好適である。
【0031】
本発明の一側面において、約20〜約28パーセントの結合スチレンという比較的従来的なスチレン含量を有する乳化重合由来スチレン/ブタジエン(E−SBR)が使用されうる。又は用途によっては、中程度〜比較的高い結合スチレン含量、すなわち約30〜約45パーセントの結合スチレン含量を有するE−SBRが使用されうる。
【0032】
乳化重合調製E−SBRとは、スチレンと1,3−ブタジエンが水性エマルジョンとして共重合されることを意味する。そのようなことは当業者には周知である。結合スチレン含量は、例えば、約5〜約50パーセントの間で変動しうる。一側面において、E−SBRは、アクリロニトリルも含有してE−SBARとしてターポリマーゴムを形成することもできる。その場合、ターポリマー中に例えば約2〜約30重量パーセントの量の結合アクリロニトリルが含有される。
【0033】
約2〜約40重量パーセントの結合アクリロニトリルをコポリマー中に含有する乳化重合調製スチレン/ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーゴムも、本発明で使用するためのジエン系ゴムとして想定されている。
【0034】
溶液重合調製SBR(S−SBR)は、典型的には、約5〜約50、好ましくは約9〜約36パーセントの範囲の結合スチレン含量を有する。S−SBRは、例えば、有機炭化水素溶媒の存在下、有機リチウム触媒作用によって都合よく製造できる。
【0035】
一態様において、シス1,4−ポリブタジエンゴム(BR)が使用されうる。そのようなBRは、例えば、1,3−ブタジエンの有機溶液重合によって製造できる。BRは、例えば、少なくとも90パーセントのシス1,4−含量を有することによって都合よく特徴付けできる。
【0036】
シス1,4−ポリイソプレン及びシス1,4−ポリイソプレン天然ゴムは、ゴム分野の当業者には周知である。
本明細書中で使用され、従来の慣例に従う用語“phr”は、“100重量部のゴム、又はエラストマーあたりの各材料の重量部”を意味する。
【0037】
ゴム組成物は70phrまでのプロセスオイルも含みうる。プロセスオイルは、エラストマーを伸展するために典型的に使用される伸展油としてゴム組成物に包含されうる。プロセスオイルは、オイルをゴム配合中に直接添加することによってゴム組成物に含めることもできる。使用されるプロセスオイルは、エラストマー中に存在する伸展油と配合中に添加されるプロセスオイルの両方を含みうる。適切なプロセスオイルは、当該技術分野で知られている各種油、例えば芳香族系油、パラフィン系油、ナフテン系油、植物油、及び低PCA油、例えばMES油、TDAE油、SRAE油及び重ナフテン系油などである。適切な低PCA油は、IP346法による測定で3重量パーセント未満の多環芳香族含量を有するものなどである。IP346法の手順は、英国石油学会(Institute of Petroleum)出版のStandard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products 及び British Standard 2000 Parts、2003年、第62版に見出すことができる。
【0038】
ゴム組成物は、シリカ、カーボンブラック、又はシリカとカーボンブラックの組合せを含みうる。
ゴム組成物は、約1〜約150phrのシリカを含みうる。別の態様においては、10〜100phrのシリカが使用されうる。
【0039】
ゴムコンパウンドに使用できる一般的に用いられるケイ質顔料(siliceous pigment)は、従来型の焼成(pyrogenic)及び沈降ケイ質顔料(シリカ)を含む。一態様において、沈降シリカが使用される。本発明で使用される従来型ケイ質顔料は、例えば、ケイ酸ナトリウムなどの可溶性ケイ酸塩の酸性化によって得られるような沈降シリカである。
【0040】
そのような従来型シリカは、例えば、窒素ガスを用いて測定されたBET表面積を有することによって特徴付けできる。一態様において、BET表面積は、1グラムあたり約40〜約600平方メートルの範囲でありうる。別の態様において、BET表面積は、1グラムあたり約80〜約300平方メートルの範囲でありうる。表面積を測定するBET法は、Journal of the American Chemical Society、第60巻、304ページ(1930)に記載されている。
【0041】
従来型シリカは、約100〜約400、あるいは約150〜約300の範囲のジブチルフタレート(DBP)吸収値を有することによって特徴付けることもできる。
従来型シリカは、電子顕微鏡による測定で例えば0.01〜0.05ミクロンの範囲の平均極限粒径を有すると予測されうるが、シリカ粒子は、それよりさらに小さい、又はおそらくは大きいサイズであってもよい。
【0042】
様々な市販シリカが使用できる。例えば、本明細書における単なる例として挙げると、PPG Industries社から商標Hi−Sil、規格210、243などとして市販されているシリカ;Rhodia社から例えば規格Z1165MP及びZ165GRとして入手できるシリカ;及びDegussa AG社から例えば規格VN2及びVN3として入手できるシリカなどがあるが、これらに限定されない。
【0043】
一般的に使用されるカーボンブラックが従来型フィラーとしてシリカと組み合わせて1〜150phrの範囲の量で使用できる。別の態様では10〜100phrのカーボンブラックが使用できる。カーボンブラックはシリカと共に使用することができるが、一態様において、カーボンブラックは、タイヤに黒色を付与するのに必要な量である1〜10phr以外は本質的に使用されない。そのようなカーボンブラックの代表例は、N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、N315、N326、N330、N332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990及びN991などである。これらのカーボンブラックは、9〜145g/kgの範囲のヨウ素吸収及び34〜150cm/100gの範囲のDBP数を有している。
【0044】
シリカとカーボンブラックの組合せが組成物に使用されてもよい。一態様において、シリカのカーボンブラックに対する重量比は1以上である。
他のフィラーもゴム組成物に使用できる。例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などの粒子状フィラー、米国特許第6,242,534号;6,207,757号;6,133,364号;6,372,857号;5,395,891号;又は6,127,488号に開示されているような架橋粒子状ポリマーゲル、及び米国特許第5,672,639号に開示されているような可塑化デンプン複合フィラーなどであるが、これらに限定されない。そのようなその他のフィラーは1〜30phrの範囲の量で使用されうる。
【0045】
一態様において、ゴム組成物は従来型の硫黄含有有機ケイ素化合物を含有しうる。一態様において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’−ビス(トリメトキシ又はトリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドである。一態様において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド及び/又は3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。
【0046】
別の態様において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許出願公開第6,608,125号に開示されている化合物を含む。一態様において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、Momentive Performance Materials社からNXTTMとして市販されている3−(オクタノイルチオ)−1−プロピルトリエトキシシラン、CH(CHC(=O)−S−CHCHCHSi(OCHCHを含む。
【0047】
別の態様において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許公開第2003/0130535号に開示されている化合物を含む。一態様において、硫黄含有有機ケイ素化合物はDegussa社製Si−363である。
【0048】
ゴム組成物中の硫黄含有有機ケイ素化合物の量は、使用されるその他の添加剤の量によって変動する。一般的に言えば、該化合物の量は0.5〜20phrの範囲であろう。一態様において、その量は1〜10phrの範囲であろう。
【0049】
当業者であれば、ゴム組成物は、ゴム配合分野で一般的に知られている方法によって配合されるであろうことは容易に分かるはずである。例えば、様々な硫黄加硫可能成分ゴムを、一般的に使用されている様々な添加剤材料、例えば、硫黄供与体、硬化補助剤、例えば活性化剤及び遅延剤及び加工添加剤、例えばオイル、粘着付与樹脂を含む樹脂及び可塑剤、フィラー、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、抗酸化剤及びオゾン劣化防止剤及びしゃく解剤などと混合する。当業者には分かる通り、硫黄加硫可能材料及び硫黄加硫された材料(ゴム)の意図する使用に応じて、上記添加剤は選択され、従来量で一般的に使用される。硫黄供与体の代表例は、元素硫黄(遊離硫黄)、アミンジスルフィド、ポリマー性ポリスルフィド及び硫黄オレフィン付加物などである。一態様において、硫黄加硫剤は元素硫黄である。硫黄加硫剤は、0.5〜8phrの範囲、あるいは1.5〜6phrの範囲の量で使用されうる。粘着付与樹脂の典型的な量は、使用される場合、約0.5〜約10phr、通常約1〜約5phrを含む。加工助剤の典型的な量は約1〜約50phrを含む。抗酸化剤の典型的な量は約1〜約5phrを含む。代表的抗酸化剤は、例えばジフェニル−p−フェニレンジアミン及びその他、例えばThe Vanderbilt Rubber Handbook(1978),344〜346ページに開示されているものであろう。オゾン劣化防止剤の典型的な量は約1〜5phrを含む。脂肪酸の典型的な量は、使用される場合、ステアリン酸などでありうるが、約0.5〜約3phrを含む。酸化亜鉛の典型的な量は約2〜約5phrを含む。ワックスの典型的な量は約1〜約5phrを含む。微晶質ワックスが使用されることが多い。しゃく解剤の典型的な量は約0.1〜約1phrを含む。典型的なしゃく解剤は、例えば、ペンタクロロチオフェノール及びジベンズアミドジフェニルジスルフィドであろう。
【0050】
促進剤は、加硫に要する時間及び/又は温度を制御するため、及び加硫物の性質を改良するために使用される。一態様において、単一促進剤系、すなわち一次促進剤が使用されうる。一次促進剤(一つ又は複数)は、約0.5〜約4、あるいは約0.8〜約1.5phrの範囲の総量で使用されうる。別の態様では、活性化及び加硫物の性質を改良するために、一次及び二次促進剤の組合せが使用されうる。その場合、二次促進剤は少量、例えば約0.05〜約3phrの量で使用される。これらの促進剤の組合せは、最終性質に対して相乗効果をもたらすことが期待され、いずれかの促進剤を単独で使用して製造されたものよりも多少良好である。さらに、標準的な加工温度には影響されないが、通常の加硫温度で満足のいく硬化をもたらす遅延作用促進剤を使用することもできる。加硫遅延剤も使用できる。本発明に使用されうる適切なタイプの促進剤は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオウレア、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメート及びキサンテートである。一態様において、一次促進剤はスルフェンアミドである。二次促進剤を使用する場合、二次促進剤は、グアニジン、ジチオカルバメート又はチウラム化合物であろう。
【0051】
ゴム組成物の混合は、ゴム混合分野の当業者に公知の方法によって達成できる。例えば、成分は典型的には少なくとも二つの段階、すなわち、少なくとも一つのノンプロダクティブ段階とそれに続くプロダクティブ混合段階で混合される。硫黄加硫剤を含む最終硬化剤は典型的には最終段階で混合される。この段階は従来、“プロダクティブ”混合段階と呼ばれ、そこでは混合が典型的にはその前のノンプロダクティブ混合段階(一つ又は複数)の混合温度より低い温度、つまり最終温度で行われる。“ノンプロダクティブ”及び“プロダクティブ”混合段階という用語は、ゴム混合分野の当業者には周知である。ゴム組成物は、熱機械的混合工程に付されてもよい。熱機械的混合工程は、一般的に、140℃〜190℃のゴム温度を生ずるために適切な時間の間、ミキサー又は押出機内での機械的加工を含む。熱機械的加工の適切な時間は、運転条件、ならびに成分の体積及び性質に応じて変動する。例えば、熱機械的作業は1〜20分であろう。
【0052】
当該ゴム組成物は、タイヤの様々なゴム部品に組み込むことができる。例えば、ゴム部品は、トレッド(トレッドキャップ及びトレッドベースを含む)、サイドウォール、アペックス、チェーファー、サイドウォールインサート、ワイヤコート又はインナーライナーでありうる。一態様において、該部品はトレッドである。
【0053】
本発明の空気入りタイヤは、レース用タイヤ、乗用車用タイヤ、航空機用タイヤ、農業用、土工機械用、オフロード用、トラック用タイヤなどでありうる。一態様において、タイヤは乗用車又はトラック用タイヤである。タイヤはラジアルでもバイアスでもよい。
【0054】
本発明の空気入りタイヤの加硫は、一般的に約100℃〜200℃の範囲の従来温度で実施される。一態様において、加硫は約110℃〜180℃の範囲の温度で実施される。成形機又は金型内での加熱、過熱蒸気又は熱風による加熱といった通常の加硫プロセスのいずれも使用できる。そのようなタイヤは、当業者に公知の、そして容易に明らかな様々な方法によって構築、付形、成型及び硬化できる。
【0055】
本発明を以下の実施例によって説明するが、下記実施例は単に例示を目的としたものであって、本発明の範囲又はそれを実施できる様式の制限と見なされてはならない。特に明記しない限り、部及びパーセンテージは重量によって示されている。
【実施例】
【0056】
実施例1
Ni触媒IVの合成は文献に記載されている(O’Connorら,Organometallics 2009,28 2372−2384)。あるいは、この錯体のMg塩と過剰のNaBArの混合物を実施例2で概要を示した手順に従って製造することもできる。
【0057】
実施例2
本実施例では、Ni(II)配位触媒の合成について説明する。式IIIの化合物は以下のようにして式IIの化合物に変換された。化合物III(8mmol)をNaBAr(8mmol)及びメシチレン(20mmol)と、100mlシュレンクチューブ内の40mlジエチルエーテル中で混合し、−78℃に冷却した。5分後、ジエチルエーテル中1Mのアリルマグネシウムブロミド8mlを撹拌下で滴加し、アリルマグネシウムブロミドの添加完了後、冷却浴の交換により、温度を−20℃に上げた。−20℃で60分後、冷却浴を取り除き、混合物を25℃に温めた。この温度でエーテルは蒸留除去され、粗固体が残った。次に、塩化メチレン(30ml)を加え、混合物を撹拌した後、固体をろ過した。ヘプタン(10mL)を塩化メチレン溶液に加え、得られた混合物を高真空下で濃縮乾固し、約50%の収率のNiベースの触媒IVを含有する6.85gの固体を得た。
【0058】
【化8】
【0059】
実施例3
以下の実施例において、1,3-ブタジエンと(3−メチルブタ−1,3−ジエン−2−イル)(フェニル)スルファン(式VI)との共重合を示す。
【0060】
【化9】
【0061】
官能性モノマーの(3−メチルブタ−1,3−ジエン−2−イル)(フェニル)スルファンは、Baeckvall,J.−E.;Ericsson,A.J.Org.Chem.1994,59,5850−5851に記載の方法に従って合成した。
【0062】
実施例4
本実施例では、1,3-ブタジエンと式VIのモノマーとの共重合を示す。重合を実施して表1に示されているような3個のコポリマーサンプルを製造した。
【0063】
式VIの官能性モノマーは実施例3に記載のようにして合成した。
サンプル1及び2は次のように合成した。
式VIのモノマーを、火炎乾燥シュレンクフラスコにトルエン溶液として加え(トルエンの全体積は15mL)、次いでフラスコをゴムセプタムで密封した。ブタジエンを、反応温度及び1.05barのBD圧でのトルエンの飽和により添加した。トルエン(5mL)中触媒を示された反応温度で添加することにより重合を開始した。重合は、示された時間、その温度で行わせた。0.5mLのNEtを加えて重合を終了させた。残留ブタジエンを減圧下で注意深く除去し、ポリマーを、BHTの存在下(約100mg/100mL)、MeOH中に沈殿させた。形成されたポリマーを減圧下50℃で一晩乾燥させ、示された収量gのポリ(ブタジエン−コ−(3−メチルブタ−1,3−ジエン−2−イル)(フェニル)スルファン)を得た。サンプルを分析し、結果を表1に示した。分子量Mn及び多分散性(PDI)は、THF中でのGPCを用い、ポリスチレン標準に対して測定した。ガラス転移温度TgはDSCを用いて測定した。ポリマーのミクロ構造は、NMR分析(H及び13C)により決定した。
【0064】
サンプル3は次のように合成した。
式VIのモノマーの30mLトルエン中溶液を、機械的撹拌器、圧力ビュレット(pressure burette)及びサーモスタットを備えた200mL入りBuchiエコクレーブ圧力反応容器(ガラス器具、6barまで)に加えた。撹拌下、反応容器をトルエンが沸騰し始めるまで排気した後、ブタジエン(約50mL)を1.2barの定圧に達するまで反応容器内に凝縮させた。反応容器を、内容物を750rpmで撹拌しながら38℃(すなわち、所望の反応温度より2℃下)に加熱した。次に、10μmolの触媒IIの5mLトルエン中溶液を反応容器に圧力ビュレットを通して注入した。重合の開始は、2回目の分量の触媒(5mLトルエン中10μmol)の注入後、2〜5℃の発熱から明白であった。4時間の重合時間後、0.5mLのトリエチルアミンの5mLトルエン中溶液を反応容器に圧力ビュレットを通して注入し、反応容器を25℃に冷却し、過剰のブタジエンを真空下で注意深く除去した。BHT(約100mg/100mL)の存在下でポリマーをMeOH中に沈殿させた。形成されたポリマーを減圧下50℃で一晩乾燥させ、示された収量gのポリ(ブタジエン−コ−(3−メチルブタ−1,3−ジエン−2−イル)(フェニル)スルファン)を得た。サンプルを分析し、結果を表1に示した。分子量Mn及び多分散性(PDI)は、THF中でのGPCを用い、ポリスチレン標準に対して測定した。ガラス転移温度TgはDSCを用いて測定した。ポリマーのミクロ構造は、NMR分析(H及び13C)により決定した。
【0065】
【表1】
【0066】
触媒は、サンプル3では、示されているように2回に分けて加えた。
実施例5
以下の実施例において、1,3-ブタジエンと(5−メチル−4−メチレンヘキサ−5−エン−1−イル)(フェニル)スルファン(式VII)との共重合を示す。
【0067】
【化10】
【0068】
官能性モノマーの(5−メチル−4−メチレンヘキサ−5−エン−1−イル)(フェニル)スルファンは以下のようにして合成した。
(4−メチレンヘキサ−5−エン−1−イル)(フェニル)スルファンの合成
【0069】
【化11】
【0070】
((3−ヨードプロピル)チオ)−ベンゼン(0.7g、2.5mmol、Tetrahedron(1998),54,(40),12361−12378に従って合成できる)を−20℃に冷却し、5mLのTHF中LiCuCl(0.01当量、21.2mg LiCl + 33.6mg CuCl)を加えた。クロロプレン−グリニャール溶液(2.75mmol、1.1当量、2mLのTHF中、Journal of Applied Polymer Science(2005),Vol.97,1545-1552に従って合成)を滴加した。30分間撹拌し、室温に温めた後、溶媒を減圧下で除去した。カラムクロマトグラフィー(PE/EtOAc 20:1)により、所望化合物を帯黄色油として得た。
【0071】
収量:342.2mg(1.68mmol、67%)
H-NMR (400 MHz, CD): δ= 7.28 - 7.25 (m, 2H, H9 及び 13), 7.02 - 6.99 (m, 2H, H10 及び 12), 6.93 - 6.90 (m, 1H, H11), 6.25 (dd, J = 10.8, 17.6 Hz, 1H, H3), 5.08 (d, J = 17.6 Hz, 1H, H4), 4.91 (d, J = 10.8 Hz, 1H, H4), 4.89 (s, 1H, H1), 4.83 (s, 1H, H1), 2.67 (t, J = 7.2 Hz, 2H, H7), 2.27 (t, J = 7.2, 2H, H5), 1.80 (vquint, J = 7.2 Hz, 2H, H6)。
【0072】
13C-NMR (101 MHz, CD): δ= 145.6 (C2), 138.9 (C3), 137.5 (C8), 129.3 (C9 及び C13), 129.1 (C10 及びC12), 125.8 (C11), 116.4 (C1), 113.5 (C4), 33.3 (C7), 30.5 (C5), 27.8 (C6)。
【0073】
実施例6
本実施例では、1,3-ブタジエンと式VIIのモノマーとの共重合を示す。重合を実施して表2に示されているようなコポリマーサンプルを製造した。
【0074】
式VIIの官能性モノマーは実施例5に記載のようにして合成した。
式VIIのモノマーの30mLトルエン中溶液を、機械的撹拌器、圧力ビュレット及びサーモスタットを備えた200mL入りBuchiエコクレーブ圧力反応容器(ガラス器具、6barまで)に加えた。撹拌下、反応容器をトルエンが沸騰し始めるまで排気した後、ブタジエン(約50mL)を1.2barの定圧に達するまで反応容器内に凝縮させた。反応容器を、内容物を750rpmで撹拌しながら38℃(すなわち、所望の反応温度より2℃下)に加熱した。次に、10μmolの触媒IIの5mLトルエン中溶液を反応容器に圧力ビュレットを通して注入した。重合の開始は、2回目の分量の触媒(5mLトルエン中10μmol)の注入後、2〜5℃の発熱から明白であった。2時間の重合時間後、0.5mLのトリエチルアミンの5mLトルエン中溶液を反応容器に圧力ビュレットを通して注入し、反応容器を25℃に冷却し、過剰のブタジエンを真空下で注意深く除去した。BHT(約100mg/100mL)の存在下でポリマーをMeOH中に沈殿させた。形成されたポリマーを減圧下50℃で一晩乾燥させ、示された収量gのポリ(ブタジエン−コ−(5−メチル−4−メチレンヘキサ−5−エン−1−イル)(フェニル)スルファン)を得た。サンプルを分析し、結果を表2に示した。分子量Mn及び多分散性(PDI)は、THF中でのGPCを用い、ポリスチレン標準に対して測定した。ガラス転移温度TgはDSCを用いて測定した。ポリマーのミクロ構造は、NMR分析(H及び13C)により決定した。
【0075】
【表2】
【0076】
触媒は、サンプル4では、示されているように2回に分けて加えた。
実施例7
以下の実施例において、1,3-ブタジエンと((4−メチレンヘキサ−5−エン−1−イル)スルホニル)ベンゼン(式VIII)との共重合を示す。
【0077】
【化12】
【0078】
官能性モノマーの((4−メチレンヘキサ−5−エン−1−イル)スルホニル)ベンゼンは以下のようにして合成した。
(a)((3−ヨードプロピル)スルホニル)ベンゼンの合成
【0079】
【化13】
【0080】
((3−クロロプロピル)スルホニル)−ベンゼン(4.37g、20mmol、1当量、Bioorganic&Medicinal Chemistry(2004),12,(10),2737−2747に従って合成)をアセトン(50mL)中に溶解し、NaI(6.00g、40mmol、2当量)を加えた。反応混合物を12時間還流した。溶媒を減圧下で除去し、EtO(100mL)を加え、混合物をHO(3×50mL)で抽出した。有機相をNaSO上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去して粗((3−ヨードプロピル)スルホニル)ベンゼンを得た。これをそれ以上精製せずに次の工程で使用した。
【0081】
(b)((4−メチレンヘキサ−5−エン−1−イル)スルホニル)ベンゼンの合成
【0082】
【化14】
【0083】
((3−ヨードプロピル)スルホニル)ベンゼン(930mg、3mmol)を−20℃に冷却し、5mLのTHF中LiCuCl(0.01当量)を加えた。クロロプレン−グリニャール溶液(3.3mmol、1.1当量、2mLのTHF中)を滴加した。30分間撹拌し、室温に温めた後、溶媒を減圧下で除去した。カラムクロマトグラフィー(PE/EtOAc 20:1)により、所望化合物を帯黄色油として得た。
【0084】
収量:627mg(2.6mmol、88%)
H-NMR (400 MHz, CDCl): δ= 7.89 - 7.87 (m, 2H, H9 及び 13), 7.63 - 7.60 (m, 1H, H11), 7.56 - 7.52 (m, 2H, H10 及び H12), 6.27 (dd, J = 17.6, 10.8 Hz, 1H, H3), 5.11 (d, J = 17.6 Hz, 1H, H4), 5.01 (d, J = 11.2 Hz, 1H, H4), 5.00 (s, 1H, H1), 4.91 (s, 1H, H1), 3.08 (m, 2H, H7), 2.27 (t, J = 7.6 Hz, 2H, H5), 1.92 (m, 2H, H6)。
【0085】
13C-NMR (101 MHz, CDCl): δ= 144.0 (C2), 139.1 (C8), 137.9 (C3), 133.5 (C11), 129.2 (C10 及び C12), 127.9 (C9 及び C13), 116.7 (C1), 113.7 (C4), 55.5 (C7), 29.6 (C5), 21.0 (C6)。
【0086】
実施例8
本実施例では、1,3-ブタジエンと式VIIIのモノマーとの共重合を示す。重合を実施して表3に示されているような2個のコポリマーサンプルを製造した。
【0087】
式VIIIの官能性モノマーは実施例7に記載のようにして合成した。
式VIIIのモノマーを、火炎乾燥シュレンクフラスコにトルエン溶液として加え(トルエンの全体積はサンプル5が15mL、サンプル6が35mL)、次いでフラスコをゴムセプタムで密封した。ブタジエンを、反応温度及び1.05barのBD圧でのトルエンの飽和により添加した。トルエン(5mL)中触媒を示された反応温度で添加することにより重合を開始した。重合は、示された時間、その温度で行わせた。0.5mLのNEtを加えて重合を終了させた。残留ブタジエンを減圧下で注意深く除去し、ポリマーを、BHTの存在下(約100mg/100mL)、MeOH中に沈殿させた。形成されたポリマーを減圧下50℃で一晩乾燥させ、示された収量gのポリ(ブタジエン−コ−((4−メチレンヘキサ−5−エン−1−イル)スルホニル)ベンゼン)を得た。サンプルを分析し、結果を表3に示した。分子量Mn及び多分散性(PDI)は、THF中でのGPCを用い、ポリスチレン標準に対して測定した。ガラス転移温度TgはDSCを用いて測定した。ポリマーのミクロ構造は、NMR分析(H及び13C)により決定した。
【0088】
【表3】
【0089】
実施例9
以下の実施例において、1,3-ブタジエンとN−(5−メチル−4−メチレンヘキサ−5−エン−1−イル)ベンゼンスルホンアミド(式IX)との共重合を示す。
【0090】
【化15】
【0091】
官能性モノマーのN−(4−メチレンヘキサ−5−エン−1−イル)ベンゼンスルホンアミドは以下のようにして合成した。
(4−メチレン−5−ヘキセニル)−(ビス(トリメチルシリル)−アミンの合成
【0092】
【化16】
【0093】
(a)2.25g(92.5mmol、1.5当量)のMg削り節をTHFと共に層状に積み重ね、0.36mLのジブロモエタン(0.79g、4.2mmol)を加えて、マグネシウムを活性化した。15.0gの3−クロロプロピル−ビス(トリメチルシリル)アミン(63.1mmol、1当量、Rekken,B.D.;Carre−Burritt,A.E.;Scott,B.L.;Davis,B.L.Journal of Materials Chemistry A 2014,2,16507−16515に従って合成)と0.36mL(0.79g、4.2mmol)のジブロモエタンの63mL THF中混合物を滴加し、反応混合物を60℃で2時間撹拌した。残ったマグネシウムをろ過除去し、透明溶液を次の工程で使用した。
【0094】
(b)0.252g(0.50mmol)の(dppp)NiClと5.9g(66.2mmol、1.05当量)のクロロプレンを21mLのTHF中に溶解した。反応混合物を0℃に冷却し、(a)の下で得られた(3−(ビス(トリメチルシリル)アミノ)プロピル)マグネシウムクロリド溶液の滴加後、混合物を0℃で10分間、その後室温で40分間撹拌した。反応混合物を100mLのヘプタンで処理し、THFを減圧下で除去した。得られた褐色懸濁液をセライト上でろ過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を蒸留により精製し(73℃/3.3・10−1mbar)、12.27g(76.2%)の(4−メチレン−5−ヘキセニル)−(ビス(トリメチルシリル)−アミンを無色液体として得た。
【0095】
H-NMR (400 MHz, CD, 300 K) δ [ppm] = 6.31 (dd, J= 17.6 及び 11.2 Hz 1 H, H3), 5.17 (d, J= 17.6 Hz, 1 H, H4), 4.97 (d, J= 11.2 Hz, 1 H, H4), 4.93 (s, 2 H, H1), 2.78 (m, 2 H, H7), 2.06 (t, J= 7.6 Hz, 2 H, H5), 1. 59 (m, 2 H, H6), 0.13 (s, 18 H, H8)。
【0096】
13C-NMR (100 MHz, CD, 300 K) δ [ppm] = 146.3 (C2), 139.2 (C3), 116.1 (C1), 113.4 (C4), 45.9 (C7), 34.1 (C5), 29.4 (C6), 2.3 (C8)。
(4−メチレン−5−ヘキセニル)−アミンの合成
【0097】
【化17】
【0098】
(4−メチレン−5−ヘキセニル)−(ビス(トリメチルシリル)−アミン(1.95g、7.64mmol)を20mLのメタノール中に溶解し、還流しながら2時間撹拌した。溶媒及びメトキシ−トリメチルシランを減圧下で除去し、粗生成物をそれ以上精製せずに使用した。
【0099】
収量:0.34g(3.1mmol、40%)。NMRデータは、メタノール−dの存在下、現場脱保護のためのものなので、NHシグナルは観察されていない。
H-NMR (400 MHz, CDCl): δ = 6.28 (dd, J = 17.6 及び 10.8 Hz, 1H, H3), 5.16 (d, J = 17.6 Hz, 1H, H4), 4.97 (d, J = 10.9 Hz, 1H, H4), 4.93 (s, 1H, H1), 4.91 (s, 1H, H1), 2.63 (t, J = 7.3 Hz, 2H, H7), 2.16 (t, J = 7.7 Hz, 2H, H5), 1.57 (p, J = 7.4 Hz, 2H, H6)。
【0100】
(4−メチレン−5−ヘキセニル)−フェニルスルホン酸アミドの合成
【0101】
【化18】
【0102】
Dong,X.;Sang,R.;Wang,Q.;Tang,X.−Y.;Shi,M.Chem.−Eur.J.2013,19,16910−16915と同様にして合成。(4−メチレン−5−ヘキセニル)−アミン(1.5g、13.5mmol、1当量)と水酸化カリウム(1.5g、27mmol、2当量)を水中で撹拌した。10 mLのCHCl中ベンゼンスルホニルクロリド(2.38g、13.5mmol、1当量)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、水性相をCHCl(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。カラムクロマトグラフィー(PE/EtOAc 20:1)により、無色油を得た。
【0103】
収量:2.14g(8.5mmol、63%)
H-NMR (400 MHz, CDCl): δ =, 7.86 (m, 2H, H9 及び H13), 7.60 (m, 1H, H11), 7.54 (m, 2H, H10 及び H12), 6.33 (dd, J = 17.6 及び 10.8, 1H, H3), 5.15 (d, J = 17.6 Hz, 1H, H4), 5.03 (d, J = 10.8 Hz, 1H, H4), 5.00 (s, 1H, H1), 4.92 (s, 1H, H1), 4.78 (t, J = 6.3 Hz, 1H, NH), 2.96 (vq, J = 6.7 Hz , 2H, H7), 2.20 (td, J = 7.7 Hz, 2H, H5), 1.65 (vquint, J = 8.0 Hz, 2H, H6)。
13C-NMR (101 MHz, CDCl): δ = 145.8 (C2), 140.6 (C8), 138.9 (C3), 133.2 (C11), 129.7 (C9 及び C13), 127.5 (C10 及び C12), 116.6 (C1), 113.9 (C4), 43.6 (C7), 28.8 (C5), 28.6 (C6)。
【0104】
実施例10
本実施例では、1,3-ブタジエンと式IXのモノマーとの共重合を示す。重合を実施して表4に示されているような3個のコポリマーサンプルを製造した。
【0105】
式IXの官能性モノマーは実施例9に記載のようにして合成した。
式IXのモノマーを、火炎乾燥シュレンクフラスコにトルエン溶液として加え(トルエンの全体積はサンプル7及び8が15mL、サンプル9が35mL)、次いでフラスコをゴムセプタムで密封した。ブタジエンを、反応温度及び1.05barのBD圧でのトルエンの飽和により添加した。トルエン(5mL)中触媒を示された反応温度で添加することにより重合を開始した。重合は、示された時間、その温度で行わせた。0.5mLのNEtを加えて重合を終了させた。残留ブタジエンを減圧下で注意深く除去し、ポリマーを、BHTの存在下(約100mg/100mL)、MeOH中に沈殿させた。形成されたポリマーを減圧下50℃で一晩乾燥させ、示された収量gのポリ(ブタジエン−コ−(4−メチレン−5−ヘキセニル)−フェニルスルホン酸アミド)を得た。サンプルを分析し、結果を表4に示した。分子量Mn及び多分散性(PDI)は、THF中でのGPCを用い、ポリスチレン標準に対して測定した。ガラス転移温度TgはDSCを用いて測定した。ポリマーのミクロ構造は、NMR分析(H及び13C)により決定した。
【0106】
【表4】
【0107】
触媒は、サンプル8では、示されているように6回に分けて加えた。
[発明の態様]
1.1,3−ブタジエン及びイソプレンからなる群から選ばれるモノマーと、式I:
【0108】
【化19】
【0109】
[式中、Rは、共有結合、フェニレン、1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルカンジイル基、又は一つもしくは複数のフェニレン基と一つもしくは複数の1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルカンジイル基との組合せであり;Rは、水素又は1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルキル基であり;Xは、硫黄原子又は式IIもしくはIIIの構造:
【0110】
【化20】
【0111】
であり、Xが式IIIの場合、式IIIのS原子は式Iのフェニル環に隣接し、式IIIのN原子はR1に隣接している]のモノマーとのコポリマー。
2.文章が続く、1記載のコポリマー。
【0112】
3.シス1,4ミクロ構造含量が80重量パーセントを超える、1記載のコポリマー。
4.少なくとも95重量パーセントのシス1,4ミクロ構造含量を含む、1記載のコポリマー。
【0113】
5.0.1〜40重量パーセントの、式Iのモノマーから誘導された単位を含む、1記載のコポリマー。
6.0.5〜20重量パーセントの、式Iのモノマーから誘導された単位を含む、1記載のコポリマー。
【0114】
7.1〜5重量パーセントの、式Iのモノマーから誘導された単位を含む、1記載のコポリマー。
8.式Iのモノマーが、下記構造:
【0115】
【化21】
【0116】
からなる群から選ばれる、1記載のコポリマー。
10.1記載のコポリマーを含むゴム組成物。
11.10記載のゴム組成物を含む空気入りタイヤ。
【0117】
12.1,3−ブタジエン及びイソプレンからなる群から選ばれるモノマーと、式I:
【0118】
【化22】
【0119】
[式中、Rは、共有結合、フェニレン、1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルカンジイル基、又は一つもしくは複数のフェニレン基と一つもしくは複数の1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルカンジイル基との組合せであり;Rは、水素又は1〜10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝アルキル基であり;Xは、硫黄原子又は式IIもしくはIIIの構造:
【0120】
【化23】
【0121】
であり、Xが式IIIの場合、式IIIのS原子は式Iのフェニル環に隣接し、式IIIのN原子はR1に隣接している]のモノマーとを(アリル)(アレーン)Ni(II)重合触媒の存在下で重合させる工程を含むコポリマーの製造法。
【0122】
13.式Iのモノマーが、下記構造:
【0123】
【化24】
【0124】
からなる群から選ばれる、10記載の方法。
14.重合触媒が、式IV:
【0125】
【化25】
【0126】
[式中、BArはテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートである]の触媒である、12記載の方法。