特許第6795978号(P6795978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795978
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】実装装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20201119BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20201119BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   H01L21/60 311T
   H01L21/52 F
   H05K13/04 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-527832(P2016-527832)
(86)(22)【出願日】2015年6月9日
(86)【国際出願番号】JP2015066644
(87)【国際公開番号】WO2015190496
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2018年5月7日
【審判番号】不服2019-7145(P2019-7145/J1)
【審判請求日】2019年5月31日
(31)【優先権主張番号】特願2014-120816(P2014-120816)
(32)【優先日】2014年6月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺田 勝美
【合議体】
【審判長】 辻本 泰隆
【審判官】 加藤 浩一
【審判官】 西出 隆二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−229442(JP,A)
【文献】 特開2010−34095(JP,A)
【文献】 特開2005−19957(JP,A)
【文献】 特開平7−209126(JP,A)
【文献】 特開2013−53985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/52
H01L21/60
B23K20/00
B23K20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合物同士を接合する実装装置であって、
一方の被接合物を保持する保持手段と、
該保持手段を被接合物の接合方向に5N以下の低加圧力をもって加圧可能なシリンダー機構からなる第1の加圧手段と、
前記第1の加圧手段を形成するシリンダー上面に、前記保持手段を介して伝達される加圧力を検出する圧力検出手段を介して接合方向に連結された、50N以上の高加圧力をもって加圧可能な第2の加圧手段と
記第1の加圧手段と、前記第2の加圧手段との間に前記保持手段を介して伝達される加圧力を検出する圧力検出手段とを備え、
前記圧力検出手段が、500Nの加圧力での機械的変形が0.1μm以下である、水晶圧電素子からなる圧力検出器である実装装置。
【請求項2】
請求項1の発明において、水晶圧電素子からなる圧力検出器を実装装置の加圧軸を中心に等距離で複数個配置した実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被接合物同士を接合する実装装置に関し、とくに、低加圧力領域から高加圧力領域まで精度良く所望の加圧力を制御することが可能な実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被接合物同士を接合する実装装置で、低加圧力領域から高加圧領域まで精度良く所望の加圧力を制御できることが可能な実装装置が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の実装装置の縦断面図を図5に示す。
【0003】
この実装装置は、低加圧領域ではエアベアリングシリンダ7とピストン8を用い加圧ポート9とバランス圧ポート10の圧力を制御することにより加圧力を制御している。一方、高加圧領域では加圧力を検出する圧力センサ17としてロードセルが用いられており、ピストン8に当接した状態で圧力を検出し、加圧力のフィードバック制御や、被接合物同士の接触位置の検出ができるようになっている。
【0004】
また、被接合物同士の接触位置やハンダの溶融タイミングを検出する検出手段として、リニアセンサを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献2)。ロードセルを用いると、ロードセルの荷重による変形ひずみが発生し、ハンダの溶融時に残留ひずみが開放されるので、これによりハンダバンプが押しつぶされると言う問題から、ロードセルを用いないで、外部にリニアセンサを設け、リニアセンサの検出信号からバンプの接触位置やハンダの溶融位置を検出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−229442号公報
【特許文献2】特開2011−254032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加圧力の検出手段にロードセルを用いると、ロードセルに設けられたロードボタン(圧力検出する際に接触させる部分)が圧力に比例してたわむ現象が発生する。このたわみ量の影響で、被接合物同士の接地後、被接合物の変形や加熱による伸びにともなうZ軸方向(加圧方向)の変位が生じ、これに起因した問題が発生している。
【0007】
例えば、加重50N以上の高加圧の状態から、加重5N以下の低加圧の状態に切り換える場合において、高加圧状態では図6(a)のように圧力センサ17がピストン8に当接しているが、低加圧状態では図6(b)のように圧力センサ17とピストン8を離れた状態にして加圧ポート9とバランス圧ポート10の圧力で加圧力を制御するようにする。ところが、切り換え直後は圧力センサ17がロードセルであれば加重により6μm程度たわんだ状態であるため、低加圧時に図6(b)の状態にしようとしても、たわんだ分がのびるため、図6(c)(圧力センサ17のたわみが17bだけ戻る)のようになる。このため、加圧ポート9とバランス圧ポートの圧力により設定した圧力に加えて、ロードセルののびに伴う加圧力がピストン8に加わってしまう。
【0008】
また、被接合物同士の高さ位置制御において高精度が求められる用途において、ロードセルのたわみ(及びのび)が無視出来ないレベルになっている。特に、昨今では、従来のはんだボールバンプに代わり、柱状のCuピラーバンプの頭頂にはんだを形成したバンプを用いた接合が多くなって来ているが、高さ方向の接合精度として1〜3μmが必要とされている。このため、加重50Nで生じる6μm程度のたわみは接合精度において大きな問題となる。これらの問題を解決するためにはたわみ量を検出するリニアスケールなどの、位置検出手段を新たに設ける必要があり、構造が複雑となる。
【0009】
そこで本発明の課題は、新たに位置検出手段を設けずに、低加圧力領域から高加圧力領域まで精度良く所望の加圧力を制御することが可能な実装装置を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
被接合物同士を接合する実装装置であって、
一方の被接合物を保持する保持手段と、
該保持手段を被接合物の接合方向に5N以下の低加圧力をもって加圧可能なシリンダー機構からなる第1の加圧手段と、
前記第1の加圧手段を形成するシリンダー上面に、前記保持手段を介して伝達される加圧力を検出する圧力検出手段を介して接合方向に連結された、50N以上の高加圧力をもって加圧可能な第2の加圧手段と
記第1の加圧手段と、前記第2の加圧手段との間に前記保持手段を介して伝達される加圧力を検出する圧力検出手段とを備え、
前記圧力検出手段が、500Nの加圧力での機械的変形が0.1μm以下である、水晶圧電素子からなる圧力検出器である実装装置である。

【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明において、
水晶圧電素子からなる圧力検出器を実装装置の加圧軸を中心に等距離で複数個配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、圧力検出器に水晶圧電素子を用いているので、圧力による撓みの影響を受けることがほとんど無い。そのため低加圧領域から高加圧領域まで精度良く所望の加圧力を制御することができる。また撓み量を無視出来るので、高価なリニアスケールなどが不要になり構造もシンプルに出来る。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、モーメント荷重による圧力検出器の変位を極小化でき高精度な荷重制御ができる。また、圧力の分解能も圧力検出器にかかる荷重が分散されるので小さくすることができる。そのため、高精度な荷重制御ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る実装装置の概略側面図である。
図2】別の実施の形態の実装装置の概略側面図である。
図3】複数の圧力センサを配置した実装装置の概略側面図である。
図4】複数個の圧力センサを配置した際の平面図である。
図5】従来の実装装置の概略側面図である。
図6】(a)従来の実装装置での高加圧状態を示す図である(b)従来の実装装置で低加圧状態を示す図である(c)従来の実装装置で高加圧状態から低加圧状態に切り換えた直後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施態様に係る実装装置1を示している。図1においては、被接合物として、一方はチップ2で他方は基板3である場合を例示している。チップ2は、被接合物保持手段としての、ヘッド部4の下部に設けられた、ヒータを内蔵したヒートツール5の下面に保持されており、基板3はステージ6上に保持されている。本実施態様では、ステージ6はX,Y方向(水平方向)および/または回転方向(θ方向)に位置調整できるようになっており、ヒートツール5はZ方向(上下方向)および/または回転方向(θ方向)に位置調整できるようになっており、これらの調整により、接合前に両被接合物の平行度等を含む相対位置関係が調整、制御されるようになっている。ヘッド部4またはステージ6には、ヒートツール5に保持されたチップ2とステージ6に保持された基板3との平行度を調整可能な機構が組み込まれていてもよい。
【0016】
なお、上記において、チップ2とは、たとえば、ICチップ、半導体チップ、光素子、表面実装部品、ウエハーなど、種類や大きさに関係なく、基板3と接合させる側の全てのものをいう。また、基板3とは、たとえば、樹脂基板、ガラス基板、フイルム基板、チップ、ウエハーなど、種類や大きさに関係なく、チップ2と接合される側の全てのものを指す。
【0017】
また、上記のようなステージ6,ヒートツール5は、一般には、平行移動および/または回転自在に装着されるが、必要に応じて、それらと昇降とを組み合わせた形態に装着してもよい。さらに、チップ2と基板3の位置合わせに関して、チップ2と基板3の位置合わせ後にツール5を下降させる装置形態であってもよい。
【0018】
ヘッド部4は、エアベアリングシリンダ7のピストン8に連結されている。エアベアリングシリンダ7は、低摺動抵抗シリンダでバランス圧ポート10からヘッド部4の自重をキャンセルするエアーが供給されている。なお、本発明の第1の加圧手段は、エアベアリングシリンダ7とピストン8による加圧機構に対応する。
【0019】
エアベアリングシリンダ7の上端は、取り付けベース11と連結部材12を介して接続されている。取り付けベース11には圧力検出手段として水晶圧電素子からなる圧力センサ17が固定用ボルト18とボルト受け板16を用いて固定されている。ボルト受け板16の下端部はピストン8の上端部と接触し、ヘッド部4の加圧力が圧力センサ17に伝達されるようになっている。圧力センサ17は、リング状の形状で、中央部に固定用ボルト18が貫通できるようになっている。
【0020】
伝達加圧力の検知に際し、従来の圧力検出手段であるロードセルでは、ロードセル自身の撓みの影響を受け、チップ2が基板3に接地した後のチップ2の変形やヘッド部4のヒートツール5による熱膨張によるZ方向の変位を正確に測定できない問題があった。圧力センサを水晶圧電素子にすることで、撓みの影響を殆ど受けないため、Z方向の変位を正確に測定できるようになる。水晶圧電素子は、機械的な負荷が作用した際に電荷を発生する圧電材料で、その際の機械的変形がごくわずかな特性を有している。例えば、実装装置等で使用されるロードセルの場合500N仕様で0.065mmの撓み量が発生する。これに対し水晶圧電素子の場合500N仕様で0.1μm以下の撓み量となっており撓みの影響を殆ど受けることが無い。
【0021】
取り付けベース11は、ボールネジ14が連結されている。ボールネジ14はカップリング19を介して駆動モータ20に連結されている。駆動モータ20にはエンコーダ21がマウントされている。駆動モータ20はサーボモータから構成されている。なお、本発明の第2の加圧手段は、駆動モータ20とボールネジ14,取り付けベース11から構成される加圧機構に対応する。
【0022】
制御部30は、駆動モータ20の駆動制御、およびステージ6の駆動制御を圧力センサ17の検出信号およびエンコーダ21の信号に基づいて行うようになっている。
【0023】
このような構成の実装装置1は、圧力センサ17に水晶圧電素子を用いているので、圧力による撓みの影響を受けること無く、低加圧領域から高加圧領域まで精度良く所望の加圧力を制御することができる。
【0024】
図2に、別の実施態様の実装装置1を示す。図2に示す実装装置1では、エアベアリングシリンダ7の上面にベース板15を取り付け、圧力センサ17を介して固定用ボルト18がベース板15と取り付けベース11とを連結している。こうすることで、エアベアリングシリンダ7を固定するガイド機構が不要となり、また剛性も高めることができる。
【0025】
図3に、別の実施態様の実装装置1を示す。図3に示す実装装置1では、圧力センサ17を実装装置1の加圧軸を中心に等距離で複数個配置している。図4に圧力センサ17の配置を平面図で示す。こうすることにより、チップ中心がヘッド中心からオフセットした位置で加圧した場合に発生するモーメント荷重による圧力センサ17の変位を極小化でき高精度な荷重制御ができる。また、圧力の分解能も圧力センサ17にかかる荷重が分散されるので小さくすることができる。そのため、高精度な荷重制御ができる。
【0026】
なお、低加圧のための第1の加圧手段は、エアーベアリングシリンダが望ましい形態だが、圧力を圧力検出器に直接伝わる機構となるように構成すればボイスコイルモーターやリニアモーター、油圧シリンダーなど圧力を発生する手段を備えていればどのような形態であっても良い。
【符号の説明】
【0027】
1 実装装置
2 チップ
3 基板
4 ヘッド部
5 ヒートツール
6 ステージ
7 エアベアリングシリンダ
8 ピストン
10 バランス圧ポート
11 取り付けベース
12 連結部材
14 ボールネジ
15 ベース板
16 ボルト受け板
17 圧力センサ
18 固定用ボルト
19 カップリング
20 駆動モータ
21 エンコーダ
30 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6