(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コアが上面開口型の容器内に収納され、前記容器の下面に前記コアの底面と接触する放熱板が設けられている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のリアクトル。
前記コアが、前記容器内に軟磁性粉末を充填して振動した後、前記軟磁性粉末に樹脂を含浸させて硬化させたものである請求項6から請求項16のいずれか1項に記載のリアクトル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近、電子機器を構成する各種の機器の小型・薄型化に伴い、リアクトルについても、背の低い薄型のものが要求されている。しかし、単純にコイルやコアを薄くしただけでは、リアクトルに要求される高いインダクタンス値を得るために必要な磁路長やその断面積が確保できない。すなわち、MCコアは、コイルの中央開口部内に充填されているリム部と、コイル周囲に形成されているヨーク部を有しているが、リム部とヨーク部の断面積を一定の関係に保たないと、高いインダクタンス値を得ることができない。しかし、従来技術のリアクトルは、コイルを円形あるいは正方形に巻回したものであることから、薄型化するとリム部の断面積が減少することから、必要とするインダクタンス値を得ることができない。
【0006】
高いインダクタンス値を得るために、コイルの巻き数を増やすことも考えられるが、巻き数を増大させるとその分リアクトルの薄型化が難しくなると共に、直流抵抗(熱損失)の増加も大きくなる問題も生じる。
【0007】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本発明の目的は、薄型化を図りながら、必要とするインダクタンス値を確保することのできるリアクトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のリアクトルは、次のような構成を有する。
(1) コア。
(2) 前記コアの内部に埋設されたコイル。
(3) 前記コイルの内周に設けられた開口部。
(4) 前記コイルの前記開口部内に形成され、前記コイルの軸方向から見た平面形状が長尺と短尺を有するリム部。
(5) 前記コイルの開口部内断面の上面外側に形成されたコアの上ヨーク部。
(6) 前記コイルの断面の下面外側に形成されたコアの下ヨーク部。
(7) 前記リム部の水平断面積S1、上ヨーク部の断面積S2及び下ヨーク部の断面積S3の比率が、S1:S2=1:0.6〜
0.8、且つS1:S3=1:0.6〜
0.8である。
(8) 前記長尺と前記短尺の比率が、1.2〜15:1である。
【0009】
(2)前記コイルが平角線から成る導体を巻回して構成され、その横断面が略四角形であることが好ましい。
【0010】
(3)前記コイルが前記導体をエッジワイズ巻きまたはフラットワイズ巻きで巻いていることが好ましい。
【0011】
(4)前記コイルが前記導体をα巻きで巻き回していることが好ましい。
【0012】
(5)前記コイルが丸線から成る導体を巻回して構成されていることが好ましい。
【0013】
(6)前記コアが上面開口型の容器内に収納され、前記容器の下面に前記コアの底面と接触する放熱板が設けられていることが好ましい。
【0014】
(7)前記上面開口型の容器の壁部は樹脂であり、前記壁部と端子台が一体に形成されていることが好ましい。
【0015】
(8)前記コイルの端部に、回り止め部を備えた端子が設けられていることが好ましい。
【0016】
(9)前記コイルの周囲に絶縁樹脂が設けられ、その絶縁樹脂の外側に前記コアが形成されていることが好ましい。
【0017】
(10)前記絶縁樹脂に、前記コイルの位置決め部材が設けられていることが好ましい。
【0018】
(11)前記位置決め部材が、コイルの下部に空間部を確保するものであり、この空間部にコアが充填されていることが好ましい。
【0019】
(12)前記コイルがコイルケース内に収容され、コイルケースの内側に絶縁樹脂が設けられていることが好ましい。
【0020】
(13)前記コイルケースが蓋を有するものであり、その蓋に開口部が設けられていることが好ましい。
【0021】
(14)前記コイルケースに、前記コイルの位置決め部材が設けられていることが好ましい。
【0022】
(15)前記コイルケースに設けた位置決め部材が、コイルケースの下部に空間部を確保するものであり、この空間部分にコアが充填されていることが好ましい。
【0023】
(16)前記容器に、前記位置決め部材が係合する外れ止め部が設けられていることが好ましい。
【0024】
(17)前記コアが、軟磁性粉末と樹脂を混合して、前記容器内に充填して硬化させたものであることが好ましい。
【0025】
(18)前記コアが、前記容器内に軟磁性粉末を充填して振動した後、前記軟磁性粉樹脂を含浸させて硬化させたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、リアクトルの平面形状を長方形として、コイルの開口部を長方形とすることで、その長辺によりコアのリム部の大きな断面積を確保すると共に、その短辺により短い磁路を利用することが可能になる。その結果、薄型で優れたインダクタンス値を有するリアクトルを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[1. リアクトルの形状]
(1)コアの断面積と、開口部の形状の関係
本実施形態のリアクトルLは、
図1の斜視図に示すように、長辺と短辺に比較して高さが低い側面を有する直方体の外形を有する。リアクトルLの側面の短辺と平行な方向を横断面、リアクトルLの側面の長辺と平行な方向を縦断面、リアクトルLの上部から見た方向を水平断面とする。それぞれの断面を
図1に示す。リアクトルLは、
図2の水平断面図に示すように、内周に長方形の開口部を備えたコイル1と、長辺と短辺に比較して高さが低い直方体の外形を有し、軟磁性粉末と樹脂を混合して構成され、その内部にコイル1を埋設したコア4を有する。
【0029】
図3の横断面図に示すように、コイル1の内周に設けられた開口部内には、コイルの軸方向から見た平面形状が長方形をしたリム部41が設けられている。
図2に示すように、このリム部41は、長尺Aと短尺Bを有し、その水平断面積はS1である。本実施形態において、リム部41の長尺Aと短尺Bの比率は、A:B=1.2〜15:1である。
図3の横断面図に示すように、コア4には、コイル1の上面外側に形成された上ヨーク部42と、コイル1の下面外側に形成された下ヨーク部43と、コイル1の外周面外側に形成された外ヨーク部44が設けられている。
図2に示す外ヨーク部44の断面積S4は、コアのリム部以外で構成される箇所となる。これにより、本実施形態では、
図4に示すように横断面図で見たリム部41、上ヨーク部42、外ヨーク部44及び下ヨーク部43で閉磁路が形成されている。
【0030】
図27は上ヨーク部42の断面積S2および下ヨーク部43の断面積S3を示す斜視図である。
図27の斜線部分がそれぞれ断面積S2、S3である。断面積S2は、上ヨーク部42の高さにリム部41の外周の長さを乗じた面積である。
図27ではS2およびS3の場所を分かり易くするために便宜上実際の高さよりも高さを延ばして表現している。
【0031】
本実施形態において、リム部41の水平断面積S1、上ヨーク部の断面積S2及び下ヨーク部の断面積S3の比率は、S1:S2=1:0.6〜1.0且つS1:S3=1:0.6〜1.0である。コアに形成される磁路の断面積は、
図2の水平断面図に示すように、リム部41についてはその水平断面積S1から決定される。
図4の縦断面図に示すように、上下のヨーク部42,43についてはその断面積S2,S3によって決定される。
【0032】
図5A、5Bは、コアの外径の平面形状が正方形で、その内部に埋設したコイル1も正方形の中央開口部を有する従来技術のリアクトルである。
図1〜
図4に示す本実施形態のリアクトルと、
図5A、5Bの従来のリアクトルについて、コイル1の巻き数とリム部41に形成される磁路の水平断面積S1を同等に合わせて、その磁束分布の解析を行った。その結果は、
図6A,6Bの横断面図に示すとおりである。
【0033】
図6A、6Bから分かるように、コイル1の導体に近い位置ほど磁界は強くなるが、中でもリム部41は特に強くなる。また、
図6A、6Bを比較すると、両者の磁路のリム部41の断面積は等しいが、従来のリアクトルはコイル1の開口部が正方形であるため、必要とするインダクタンス値を得るためにリム部41の断面積を大きくすると、それに従って、リム部41の縦横の長さが両方とも大きくなり、その分コイル間の間隔も広がって磁路長が長くなる。また、磁束が磁路内を円滑に流れるには、リム部41の水平断面積S1と、上下のヨーク部の断面積S2、S3が等しいことが高いインダクタンス値を維持するために必要である。しかし、正方形のリアクトルでリム部41の水平断面積S1を増やして大きな磁路を得ようとすると、それに比例して上下のヨーク部42,43の断面積S2、S3が増大し、その分、リアクトルの薄型化が困難になる。ただし、リム部41の縦横比が1:1であることは、本実施形態の作用効果である薄型化を否定するものではなく、たとえ縦横比が1:1であっても断面積S1、S2、S3の比率を備えたリアクトルは薄型化が可能である。
【0034】
一方、開口部を長方形とした本実施形態のリアクトルは、大きな磁路を有するリム部41を形成する場合、リム部41の水平断面積S1や上下のヨーク部42,43の断面積S2、S3を一定にしたままリム部41の長尺Aの長さを増加させることで磁路の大きさを増加させることが可能である。そのため、本実施形態によれば、水平断面積S1が大きい磁路を形成した場合でも、上下のヨーク部42,43の高さを増加させることなく、その長尺Aの長さを増加させることで、リム部41の水平断面積S1や上下のヨーク部42,43の断面積S2、S3を一定の範囲に維持することができ、リアクトル全体の薄型化が可能である。また、本実施形態のリアクトルは、正方形のリアクトルのように、リム部41の中心に磁束密度が低い部分もなく、リム部41全体を磁路として効果的に使用することができる。また、リム部41の磁路が開口部の短尺B部分を通過するので、磁路を短くすることができ、小型で効率の良いリアクトルを得ることができる。
【0035】
(2)断面積
リム部41の水平断面積S1を1に固定し、上下のヨーク部42,43の断面積S2、S3比を5%ずつ変化させた時の解析値を
図7に示す。この
図7から分かるように、変化はほぼ直線的となり、S1:S2(=S3)が1:1.00の場合にインダクタンス値が最も高くなる。しかし、リアクトルを薄型化する場合、上下のヨーク部42,43の断面積S2、S3を小さくする必要があることから、単に薄型化しただけでは、磁路が狭くなりインダクタンス値が低下する。
【0036】
本実施形態では、リアクトルを薄型化する場合、上下のヨーク部42,43の断面積S2およびS3を小さくしながら、長尺Aを大きくすることで、磁路が狭くなることを防止する。
図8は、インダクタンス変化率とヨーク断面積比の関係を示すグラフで、上下のヨーク部42,43の断面積S2、S3がリム部41の水平断面積S1の60〜100%,すなわちリム部41の水平断面積S1、上ヨーク部42の断面積S2及び下ヨーク部43の断面積S3の比率が、S1:S2=1:0.6〜1.0且つS1:S3=1:0.6〜1.0にあれば、インダクタンスの変化率は75%から100%である。この低下したインダクタンス値をカバーするように開口部の長尺Aの長さを調整することで薄型化したリアクトルを得ることができる。0.6未満とするとコアの高さを押さえ低背化することができるがインダクタンスなどの磁気特性を考慮すると0.6以上が良い。またS1:S2=1:0.8且つS1:S3=1:0.8とした場合は、インダクタンスの変化率は90%程度とすることができ、コアを低背化できるとともにインダクタンスなどの磁気特性も両立させることができることが分かる。このことからより低背化をするにはS1:S2=1:0.6〜0.8且つS1:S3=1:0.6〜0.8とすればより良いことが分かる。
【0037】
リアクトルを長方形にすると、リム部41の長尺Aと短尺Bの比が大きいほど、上下のヨーク部42,43の厚さを薄くできる。また、長尺Aを延伸させればそれに伴う断面積を得ることができるので、インダクタンスも高くなる。しかし、薄くするためにリム部41の長尺Aを長く延ばし過ぎると、コイル長が増えるため、放熱板との接触面積を増やしても、放熱が追いつかないくらいに直流抵抗(熱損失)が増大する。従って、どこまで長尺Aを延ばせるかは、熱損失との兼ね合いになる。長尺Aを多少延伸するよりも、巻数を1ターン増やすほうがインダクタンス値向上の効果は大きいが、直流抵抗(熱損失)の増加も大きくなるため、熱損失との兼ね合いから巻数とコアの断面積、すなわち長尺Aの寸法値を設定する。
【0038】
このように、長尺Aを延ばす範囲は、インダクタンス値の向上と熱損失の双方を考慮して行う必要があり、発熱に関与するコイル1の巻き数、コイル長、コアの樹脂などによって決まる熱伝導度、放熱板の面積、リアクトルの設置環境などを考慮して決定する。本発明者の実験によれば、リム部41の長尺Aと短尺Bの比率は、A:B=1.2〜15:1が好ましい。長尺Aが短尺Bの1.2倍に満たないと、上下のヨーク部42,43の断面積S2、S3の減少によるインダクタンス値の低下をカバーできなくなる。長尺Aが短尺Bの15倍を超えると、リアクトルの横方向の大きさが大きくなってしまい、高さ方向における低背化は可能となるが全体の小型化の観点では好ましくない。また発熱による影響が無視できなくなる。より好ましくはA:B=1.2〜8.0:1とすると良い。長尺Aが短尺Bの8倍を超えると発熱の影響が無視できなくなるからである。
【0039】
本実施形態では、コイル1及びコアの四隅には円弧状(R状)の面取りを設けているため、その分リム部41などの断面積が少なくなる。面取り部の値が大きくなれば、磁気特性(インダクタンスなど)への影響も大きくなるので、コア寸法の設定する際は、面取り部による断面積の減少分も考慮する必要がある。リム部41の面取り部のR寸法が短尺Bの長さの半分と同値になるとき、リム部41はトラック形状となる。
【0040】
[2.リアクトルの構成要素]
以下、本実施形態のリアクトルの構成要素について説明する。本実施形態のリアクトルは、コアとして、軟磁性粉末である第1粉末と第2粉末とを混合し、それを樹脂によって硬化させたものである。硬化の方法としては、例えば、予め混合粉末と未硬化の樹脂を混合して、それを容器内に配置したコイルの周囲に注入・固化させるものと、混合粉末を容器内に配置したコイルの周囲に充填し、その状態で容器に振動を与えた後、混合粉末に未硬化の樹脂を含浸させて、硬化させるものがある。
【0041】
[2−1.第1粉末]
第1粉末としては、Fe−6.5Si及びFe−3.5Siが好ましいが、その他の軟磁性粉末、例えば、純鉄、Fe−Si、Fe−Ni、Fe−Al、Fe−Co、Fe−Cr、Fe−N、Fe−C、Fe−B、Fe−P、Fe−Al−SiなどのFe基合金粉末、あるいは希土類金属粉末、非晶質金属粉末、フェライト粉末などが利用できる。
【0042】
第1粉末の平均粒子径は、100μm以上が好ましく、100μ〜300μmがより好ましい。第1粉末が大きすぎると、必然的に円形度が悪くなり、小さすぎると透磁率が低くなるからである。平均粒子径が300μmを超えると、粒子間の空隙が増加して、第2粉末がその空隙を埋めきることができず、軟磁性複合材料の密度が低下する。100μmに満たない場合には、粒子間の空隙を埋める第2粉末との粒径差が小さくなり、第1粉末と第2粉末との空隙が増加して、密度が低下する。平均粒子径を前記の範囲とすることに加えて、500メッシュの篩にかけることで、500メッシュを越える粒子の第1粉末を除去し、粒子径の均一化を図ることが好ましい。
【0043】
第1粉末の平均円形度は0.895以上が好ましい。円形度がこれ以上低いと、第1粉末の表面の凹凸と、第2粉末との間に空隙が生じ、密度が低下する。第1粉末としては、ガスアトマイズ法や水アトマイズ法あるいは水ガスアトマイズ法で製造されたものを使用することができるが、ガスアトマイズ法による軟磁性粉末はほぼ球状の粒子であることから、そのまま使用することが可能である。水アトマイズ法で製造された軟磁性粉末は、その表面に凹凸が形成された非球状の粒子であることから、ボールミルなどで粉砕して球状に形成した後、表面改質装置を用いて平均円形度を0.895以上とする。この点、以下述べる第2粉末も同様である。
【0044】
第1粉末としては、表面に絶縁被膜を形成したものと、形成しないもののいずれも使用することができる。絶縁被膜としては、粒子径が7n〜500nmのMgO、Al
2O
3、TiO
2、CaO、SiO
2などの無機絶縁粉末にシランカップリング剤を添加してなる絶縁被膜や、加熱硬化型のシリコーン樹脂被膜などが使用できる。
【0045】
[2−2.第2粉末]
第2粉末としては、第1粉末と同一の材料を使用することができるが、異なる材料としても良い。第2粉末の平均粒子径は5μ〜12μmが好ましい。平均粒子径が12μmを超えると、100μ〜300μmの大きさを有する第1粉末に比較して粒径が大きすぎ、第2粉末が第1粉末間に形成される空隙を埋めきることができず、軟磁性複合材料の密度が低下する。5μmに満たない場合には、第2粉末の製造が困難になると共に、容器を振動した場合に第2粉末が容器底部に集中して、得られた軟磁性複合材料の密度が不均一になる。
【0046】
第2粉末の平均円形度は0.895以上で、特に、0.908以上が好ましい。円形度は、第1粉末と第2粉末とで等しくする必要はない。第2粉末の円形度がこれ以上低いと、第1粉末の表面と第2粉末との間に空隙が生じ、密度が低下する。第2粉末として、ガスアトマイズ法や水アトマイズ法あるいは水ガスアトマイズ法で製造されたものを使用することができる点は、第1粉末と同様である。
【0047】
第1粉末と第2粉末の配合比率は、第1粉末が50〜100wt%、第2粉末が0〜50wt%である。好ましくは第1粉末を60〜80wt%、第2粉末を20〜40wt%とすると良い。第1粉末と第2粉末の平均粒子径と平均円形度によると、両者の配合比率がこの範囲を大小いずれの方向に外れても、得られた軟磁性複合材料の密度が低下する。
【0048】
第2粉末としては、第1粉末と同様に、表面に絶縁被膜を形成したものと、形成しないもののいずれも使用することができる。絶縁被膜としては、MgO、Al
2O
3、TiO
2、CaO、SiO
2などの無機絶縁粉末にシランカップリング剤を添加してなる絶縁被膜や、加熱硬化型のシリコーン樹脂被膜などが使用できる。
【0049】
第1粉末及び第2粉末は、全体が均質に混合されていることが好ましく、そのようにすると、混合粉末に樹脂を添加してできあがった軟磁性複合材料の密度が均質になり、透磁率などの性能のばらつきが生じない利点がある。
【0050】
軟磁性複合材料を構成する粉末は、第1粉末と第2粉末を含んでいれば、3種類以上でも良い。その場合、3つ以上の粉末の粒子径をそれぞれ変えたものを使用する。これにより、粉末間の隙間をなくし、密度を上げることができる。3種類以上の粉末を使用する場合、同じ種類の軟磁性粉末を使用しても良いし、別の種類の軟磁性粉末を使用しても良い。言い換えると、軟磁性粉末の粒度分布のピークが2つあると良く、3つ以上あっても良い。この場合、第1粉末と第2粉末の粒子径は、前記の平均粒子径の範囲に限定されないもので、3つ以上の粉末を混合させた場合に、最も密度が高くなる平均粒子径を選択することが望ましい。
【0051】
[2−3.樹脂]
樹脂は、第1粉末と第2粉末を均質に混合した状態で保持するものである。この樹脂としては、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が使用できる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂などが使用できる。紫外線硬化性樹脂としては、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系の樹脂を使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリイミドやフッ素樹脂などの耐熱性に優れた樹脂を使用することが好ましい。硬化剤を添加することにより硬化するエポキシ樹脂は、硬化剤の添加量などによってその粘度を調整できることから、本発明に適している。
【0052】
樹脂には、Al
2O
3、BN、AlNなどの高熱伝導率材料を添加することができる。また、粘度調整材料として、SiO
2、Al
2O
3、Fe
2O
3、BN、AlN、ZnO、TiO
2などを使用することができる。フィラーの平均粒子径は、第2粉末の平均粒子径以下、好ましくは1/3以下が良い。フィラーの粒子径が大きいと、得られた軟磁性複合材料の密度が低下するからである。
【0053】
混合粉末と樹脂を混合する場合に、軟磁性粉末との混合時における樹脂の粘度が50m〜5000mPa・sであることが好ましい。粘度が50mPa・s未満であると、混合時において樹脂が軟磁性粉末に絡みつくことがなく、容器内に注入した軟磁性複合材料の低層部分に片寄ってしまい、軟磁性複合材料の密度や強度にバラツキが生じる。粘度が5000mPa・sを超えると、粘度が高くなりすぎ、平均粒子径が小さい第2粉末が平均粒子径の大きな第1粉末の隙間に円滑に入り込むことができなくなり、得られた軟磁性複合材料の密度が低下する。
【0054】
含浸の場合は、樹脂の種類にもよるが、混合粉末への含浸時における粘度が、3350mPa・s以下が好ましく、100mPa・s以下が更に良く、20m〜100mPa・sがそれよりも良い。粘度が3350mPa・sを超えると、粘度が高くなりすぎ、樹脂が混合粉末の隙間に円滑に含浸されなくなり、得られた軟磁性複合材料の密度が低下する。混合粉末に対する浸透時間を考えると、樹脂がアクリル樹脂またはシリコーン樹脂の場合は、混合粉末への含浸時における粘度が100mPa・s以下が好ましく、樹脂がエポキシ樹脂の場合は、混合粉末への含浸時における粘度が3350mPa・s以下が好ましいが、浸透時間に制限がない場合には、アクリル樹脂またはシリコーン樹脂でも3350mPa・s以下であれば良い。
【0055】
樹脂の添加量は、第1粉末と第2粉末からなる混合粉末に対して4〜7wt%であることが好ましい。4wt%未満であると、軟磁性粉末の接合力が不足し、得られた軟磁性複合材料の強度が低下する。7wt%を超えると、第1粉末間に形成された隙間に樹脂が入り込み、その隙間を第2粉末が埋めることができなくなり、軟磁性複合材料の密度が低下する。含浸の場合は、含浸した樹脂が、容器内に充填した混合粉末の表面まで行き渡るような量が必要である。混合粉末と樹脂量が容器の同一レベルにまで充填された状態において、その樹脂量は、樹脂の種類にもよるが、混合粉末の重量(第1粉末と第2粉末との合計重量)の4wt%以上が好ましい。4wt%未満であると、軟磁性粉末の接合力が不足し、得られた軟磁性複合材料の強度が低下する。樹脂の添加量を多くすることで、容器内における混合粉末が充填された高さよりも高い位置まで樹脂を充填することにより、軟磁性複合材料の表面に樹脂の保護層を形成することができる。ただ、混合粉末に対して必要以上の樹脂を添加すると混合粉末に浸透しきれなかった樹脂が上澄みとなって現れ、保護層が厚くなり過ぎる。また、10wt%を超えると軟磁性複合材料の密度が低下することが考えられる。これらを考慮すると樹脂の添加量は混合粉末に対し、4〜10wt%が好ましい。
【0056】
[2−4.容器]
容器としては、その内部にコイルを収容できる形状のものを使用する。一般的には、上方からコイルを挿入でき、また樹脂を注入できるように、上面開口型の箱形や皿形の容器を使用する。容器は、その全部または一部を樹脂成型品によって構成することが好ましい。樹脂成型品の主材料としては、例えば、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、BMC(バルクモールディングコンパウンド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等を用いることができる。容器の全部または一部に、アルミニウムやマグネシウムなどの熱伝導性の高い金属を使用することができる。これらの金属と容器内のコアとを直接接触させることで、放熱性の向上を図ることができる。
【0057】
容器の形状は、製造するリアクトルの形状に合わせて各種の形状の容器を使用することができる。容器をそのままリアクトルの外装ケースとして使用することも可能である。容器を外装ケースとして使用すれば、コアの硬化後に容器を取り外す必要がない利点がある。容器を外装ケースとして使用しない場合には、板状あるいはコンベア状の部材に複数の凹部を形成し、その内部にコイルを配置して未硬化のコアを注入することにより、複数のリアクトルを同時に製造するような容器も使用できる。
【0058】
本実施形態では、容器として、外装ケースを使用すると共に、外装ケースの枠状をした壁の部分を樹脂の成型品によって構成すると共に、その一部に端子台を一体成型している。このように、端子台と外装ケースの壁部を一体成型することで、リアクトル全体の小型化、部品点数・組立工数の削減を可能としている。端子台を用いない形態としては、導線を巻き回したコイルの端部と外部接続機器とを直接接続しても良い。その場合、コイル端部はコアの側面から突出させる他に、コア上面から突出させても良い。コイル端部は外部の導線と溶接や半田付けで接続したり、コイル端部に圧着端子などを取り付けて接続しても良い。
【0059】
[2−5.コイル]
コイルは、銅線などの導体に絶縁被覆を形成したものを使用する。導体としては、丸線や平角線などの表面にポリイミド樹脂などの絶縁ワニスを形成したものを使用することが好ましい。コイルは、シリコーン樹脂などの絶縁樹脂内に予め埋設したものを使用しても良いし、外装ケース内部にコイルケースを収納し、このコイルケース内にコイルを配置し状態で、コイルの周囲に絶縁樹脂を注入・固化したものでも良い。コイルを絶縁樹脂で被覆する場合には、導体の表面に絶縁ワニスなどをコーティングしなくても良い。本実施形態では、特に、平角線から成る導体をエッジワイズ巻にて巻回することで、リアクトル内におけるコイルの見掛けの断面積を小さくして、リアクトルの小型化を図ると共に、導体径の長辺に当たる線幅を冷却面と並行にすることでコイルの放熱性向上を可能としている。
【0060】
図示のコイルの巻き数は一例であって、本発明はコイルの巻き数や層数や断面形状には限定されない。コイルとしては、エッジワイズ巻きしたα巻きのコイルや、フラットワイズ巻きしたα巻きのコイルを使用できる。コイルをα巻きとして、偶数層にすることで余分なスペースを生じさせることなく、コイルの引出をコイル外周から行えるため、コイルの低背化が可能となる。また、コイルの断面を四角形とすることにより、導体同士を密接させて、放熱性の向上を図っている。また平角線以外の導体も使用可能で、丸線を数回巻き回して上下や左右に積層したコイルも使用可能である。比較的小電流である場合には丸線を用いても良く、丸線を用いることで費用を抑えることができる。また、断面形状が小さな丸線を使った場合は、より小型化することができるといった利点もある。
【0061】
[3.リアクトルの製造方法]
本実施形態のリアクトルの製造方法を、図面に従って説明する。本製造方法は、コアを構成する軟磁性粉末を容器内に充填してから、軟磁性粉末に未硬化の樹脂を含浸させて、硬化するもので、容器はリアクトルの外装ケース3としてそのまま使用可能なものである。
【0062】
[3−1.第1の製造方法]
本製造方法は、コアの製造時とは別に、予め絶縁樹脂の成型品15に埋設したコイル1を使用する。
【0063】
(1)絶縁樹脂にコイルを埋設
図9に示すように、コイル1は、導体である銅線の表面に絶縁ワニスをコーティングした平角線を、長方形に4回×2層分巻回したもので、中心にリアクトルのリム部41となる長方形の開口部11が形成されている。コイル1の両端部12,13は、長方形をしたコイル1の一方の短辺側に、コイル1の最外周部分を延長する方向に引き出されている。コイル1の両端部12,13は、リアクトルに設ける端子2と接続するものであり、そのため、コイル1の巻回部分との間に段部14が設けられている。
【0064】
コイル1は、シリコーン樹脂などの絶縁樹脂の成型品15内に埋設されている。この絶縁樹脂の成型品15には、コイル1を外装ケース3内に配置する際の位置決め部材として、突起151が複数設けられている。本実施形態では、この位置決め用の突起151は、コイル1の各長辺に2箇所ずつ設けられているが他の箇所でも良い。
【0065】
絶縁樹脂の成型品15には、コイル1の中央に設けられた開口部11に合わせて、開口部152が形成されている。絶縁樹脂の成型品15には、コイル1の両端部12,13の被覆部153が一体に設けられている。
【0066】
コイル1の両端部12,13には、端子2がそれぞれ溶接や半田付け、ねじ止めなどの手段により固定されている。これら一対の端子2は、コイル1の巻回部分から突出した両端部12,13の間に挟まれるように固定されている。各端子2は、四角形をしたねじ止め部21と、その一辺にコイル1の平角線の幅に合わせた細幅の溶接部22が設けられている。ねじ止め部21の中心には貫通穴が設けられ、この貫通穴に図示しない外部接続端子を固定するためのねじ24が挿入される。
【0067】
端子2のねじ止め部21の一辺には、
図19に示すように、端子2に対して外部接続端子をねじ24で接続する場合に、端子2のまわり止めとして働く突起23が下向きに設けられている。この突起23は、外装ケース3の端子台311に設けられた係止部314内に嵌め込まれる。これにより、ねじ24の締結時において、端子2の変形防止や溶接部22の断線防止の効果が得られる。この端子2に設ける回り止め部としては、
図19のように、端子2の下方に突起23を形成するものに限定されない。端子台311に設ける係止部314の位置に応じて、端子2の水平方向や上方に突出させても良い。また、その数も複数でも良い。
【0068】
(2)外装ケース
図10に示すように、本発明の容器に相当する外装ケース3は、その内部にコイル1を配置することができる大きさと形状を有する直方体の部材で、上面と下面が開口した枠状の樹脂部31と、その下面の開口部を塞ぐ放熱板32とから構成されている。放熱板32は、枠状の樹脂部31に固定されている。この場合、樹脂部31と放熱板32との接合部分を一体成型することにより、外装ケース3内に充填した混合粉末7や含浸する樹脂が接合部分から洩れ出ないようになっている。なお、樹脂部31と放熱板32の接着には一体成型に限らず、接着剤を塗布するなどしても良い。一体成型としては、放熱板32に1つ以上の開口を設け、その開口に樹脂部31を構成する樹脂を流し込み、樹脂部31と共に固化させることで、放熱板32と樹脂部31とを一体に成型してもよい。放熱板32の開口は、リアクトル設置面から樹脂部31に向かって開口の断面が小さくなるようなテーパー状となっているとよい。
【0069】
樹脂部31の一方の短辺部分には、一対の端子2の位置に合わせて、一対の端子台311が設けられている。これらの端子台311にはナット312が、埋設などの手法により一体に固定され、このナット312に端子2の貫通穴内に挿入したねじ24を締結することにより、端子2とリアクトル外部の外部接続端子(図示せず)とが接続される。樹脂部31には、端子台311に近接して、両端部12,13の被覆部を保持するための一対の凹部313が形成されている。外装ケース3内に配置されたコイル1は、その絶縁樹脂の成型品15に設けた位置決め用の突起151を外装ケース3の内面に当接させると共に、凹部313内に被覆部を嵌め込むことで、外装ケース3内の適正な位置に保持される。
【0070】
図21に示すように、樹脂部31には、位置決め用の突起151が容易に移動することを抑制する外れ止め部が設けられている。この外れ止め部は、本実施形態では、樹脂部31の内面に突出した突起315であって、この突起315が位置決め用の突起151の上面に係合することで、外装ケース3内に成型品15を正確に保持することができる。なお、外れ止め部としては突起315に限らず、位置決め用の突起151の先端が嵌合する凹部でも良い。
【0071】
位置決め用の突起151は、
図20に示すように、成型品15の底部に対してL字形に設けられ、L字形の垂直部分により、コイル1と外装ケース3の底面との間にコア4の下部ヨーク部43が充填される空間部が形成され、L字形の水平部分により、コイル1と外装ケース3の内面との間にコア4の外ヨーク部44が充填される空間部が形成される。これにより、コイル1の周囲に適切な断面積を有するコア4を、簡単且つ確実に形成することが可能になる。
【0072】
(3)混合粉末の充填
本製造方法においては、まず、第1粉末と第2粉末を混合して、混合粉末7を作成しておく。そして、
図11に示すように、外装ケース3内に、絶縁樹脂の成型品15内に埋設したコイル1を配置する。その後、
図12に示すように、外装ケース3の上面開口部から、外装ケース3と絶縁樹脂の成型品15との隙間に、予め用意した混合粉末7を充填する。この場合、混合粉末7は、外装ケース3の上縁部から、外装ケース3の樹脂部31の肉厚程度低い位置まで充填する。容器内に混合粉末7を充填した後は、容器全体を振動させることで、容器内の混合粉末7の密度を高める。振動の方法としては、容器全体をモータやカムなどを利用して上下または/及び前後左右に振動させたり、タッピングしたり、容器をハンマー状の部材で細かく叩く方法でも良い。容器全体を超音波振動子で振動させても良い。
【0073】
外装ケース3内に充填した混合粉末7に振動を与えた後は、外装ケース3と絶縁樹脂の成型品15との隙間に充填されている混合粉末7部分に樹脂8を注入して含浸させる。樹脂8を混合粉末7に円滑に流入させたり、ボイドの発生を防止するため、含浸時に真空引きをすることも可能である。樹脂として熱硬化性樹脂や紫外線硬化樹脂などを使用した場合には、含浸後に所定の温度に加熱したり、紫外線照射を行うことで、樹脂を硬化する。
【0074】
この場合、樹脂8を外装ケース3内における混合粉末7が充填された高さよりも高い、外装ケース3の上縁部一杯の位置にまで充填する。このようにすると、樹脂8が硬化した後は、
図13に示すように、混合粉末7の上部に保護層5となる樹脂8により、硬化したコアの表面が被覆され、耐衝撃性能や絶縁性能が向上すると共に、防滴、防錆の効果もある。この保護層5の厚さは、0.5〜2.0mmとすると良い。
【0075】
(4)第1の製造方法の作用効果
本製造方法では、外装ケース3内に充填した混合粉末7を振動させることで、平均粒子径の大きな第1粉末の隙間に、平均粒子径の小さな第2粉末を確実に送り込むことができ、軟磁性粉末粒子を容器内に高密度で充填することができる。また、粘度の小さな樹脂8を使用することで、密度が高い混合粉末の狭い隙間にも樹脂8を円滑に含浸させることができ、使用する樹脂量を削減することができ、その点でも軟磁性粉末の密度の向上に繋がる。
【0076】
本製造方法では、混合粉末7を外装ケース3内に充填して振動した後、樹脂を含浸・硬化させるだけの工程で、外装ケース3、磁性コア及びコイル1が一体になった製造することができるので、リアクトルの製造が極めて容易になる第1粉末や第2粉末の平均粒子径及び平均円形度を適切に選択し、これらに含浸する樹脂の粘度を適切に選択したので、高密度及び高透磁率を達成することができる。
【0077】
本製造方法では、コアを固化させるための容器が外装ケース3を兼用しているので、リアクトルの製造完了後に容器を取り外す必要がなく、製造作業が簡単に行える。外装ケース3の底部の全面に放熱板32が設けられ、硬化したコアと直接広い面積で接触しているので、リアクトルの通電時に発生する熱を効果的に放熱することができる。また、コイルとコアと放熱板の間に隙間がないことから、熱伝導性に優れている利点もある。
【0078】
本製造方法では、樹脂部31に位置決め用の突起151が容易に移動することを抑制する突起315を設けたので、軟磁性複合材料4の充填時にコイル1が外装ケース3内で不用意にずれるおそれがなく、コイル1周囲に形成されるコアの断面積を設計値通りに確保できる利点がある。
【0079】
[3−2.第2の製造方法]
本製造方法は、外装ケース3内にコイルケース6を配置して、コイル1を絶縁樹脂の成型品15に埋設する点が、第1の製造方法と相違する。以下にその相違点について詳細に説明する。
【0080】
(1)コイル、外装ケース、混合粉末、樹脂
本製造方法のコイル1は、
図14に示すように、第1の製造方法で使用したコイル1と同様なものを使用するが、絶縁樹脂の成型品15内に埋設していない単体を使用する。コイル1の両端部12,13に端子2が予め溶接されている点も同じである。ただし、第1の製造方法や第2の製造方法において、端子2を予め溶接することなく、リアクトルの組立後に溶接しても良い。本製造方法の端子2、外装ケース3、混合粉末7及び樹脂8は、第1の製造方法と同一のものを使用する。
【0081】
(2)コイルケースとその蓋
本製造方法では、
図14に示すように、外装ケース3内部に装着するコイルケース6を使用する。コイルケース6は、コイル1を外形に沿った上面開口型の箱形または皿形をした直方体の部材で、外装ケース3と同様な素材で作成されている。コイルケース6の中央部にはコイル1の中央に設けられた開口部11に合わせて、リアクトルのリム部となる開口部61が形成されている。コイルケース6の一方の短辺側には、両端部12,13の位置に合わせて凹部62が一体に設けられている。コイルケース6の対向する長辺には、それぞれ一対の位置決め用の突起63が設けられている。位置決め用の突起63の位置は、長辺に限らず、他の部分でも良い。
【0082】
この位置決め用の突起63は、第1実施形態において成型品15に設けた位置決め用の突起151に相当するもので、その形状や外装ケース3との関係は第1実施形態に述べた通りである。また、外装ケース3の樹脂部31に、第1の製造方法で述べたような外れ止め部である突起315を設けることも可能である。
【0083】
この位置決め用の突起63は、
図20に示した成型品15の位置決め用の突起151と同様に、コイルケース6の底部に対してL字形に設けられ、L字形の垂直部分により、コイルケース6と外装ケース3の底面との間にコア4の下部ヨーク部43が充填される空間部が形成され、L字形の水平部分により、コイルケース6と外装ケース3の内面との間にコア4の外ヨーク部44が充填される空間部が形成される。これにより、コイル1の周囲に適切な断面積を有するコア4を、簡単且つ確実に形成することが可能になる。
【0084】
コイルケース6には、その上面開口部を塞ぐ蓋64が設けられている。この蓋64にも、コイル1の中央に設けられた開口部11に合わせて、開口部61が設けられている。両端部12,13の位置に合わせてコイルケース6に形成された一対の凹部62を、上方から覆う一対の凸部も設けられている。
【0085】
(3)コイルの埋設工程
図15に示すように、上面が開口した外装ケース3内に、コイルケース6を配置する。この場合、コイルケース6に設けた位置決め用の突起63を樹脂部31の長辺の内面に当接させると共に、外装ケース3の凹部313内にコイルケース6の凹部62を嵌め込むことで、コイルケース6を外装ケース3内の適正な位置に保持させる。次いで、
図16に示すように、コイルケース6内にコイル1単体を嵌め込む。この場合、コイル1の両端部12,13を、コイルケース6の凹部62内に嵌め込むと共に、コイル1の開口部11の内側にコイルケース6の開口部61を嵌め込むことで、コイルケース6内でのコイル1の位置決めを行う。
【0086】
この状態で、
図17に示すように、コイルケース6内に絶縁樹脂を充填・固化することで、絶縁樹脂の成型品15を作成する。このようにしてコイル1が絶縁されると共に、コイルとコイルケースの隙間の空気層がなくなり熱伝導性が確保された後は、
図18に示すように、コイルケース6の上部を蓋64で塞ぎ、密閉する。その後、第1実施形態の
図12と同様に、外装ケース3内に、混合粉末7を充填し、第1実施形態と同様な手法で振動する。混合粉末7の充填及び振動が終了した後は、外装ケース3の上面開口部から混合粉末7に樹脂8含浸させ、この樹脂8を硬化することで、
図13のように、コアとそれを覆う保護層5を形成する。最後に、ねじ24とナット312を用いて、端子台311に端子2を固定することで、リアクトルを完成する。
【0087】
(4)第2の製造方法の効果
第1の製造方法と同様に、第1粉末や第2粉末の平均粒子径及び平均円形度を適切に選択し、これらに含浸する樹脂の粘度、含浸量を適切に選択したので、高密度及び高透磁率を達成することができる。コイル1の絶縁樹脂の周囲に、コイルケース6や蓋64が設けられているので、絶縁樹脂の成型品15の肉厚を少なくしても、十分な絶縁性能を確保できる。
【0088】
本製造方法では、樹脂部31にコイルケース6に設けた位置決め用の突起63が容易に移動することを抑制する突起315を設けたので、軟磁性複合材料4の充填時にコイルケース6が外装ケース3内で不用意にずれるおそれがなく、コイルケース6の周囲に形成されるコアの断面積を設計値通りに確保できる利点がある。
【0089】
また、コイルケースに設けた蓋64に、コイルケース6内に絶縁樹脂を注入した場合、絶縁樹脂から発生する空気をコイルケース6外部に放出するための開口部641を複数設けたので、コイルケース6内に対する絶縁樹脂の充填が円滑に行える。
[3.第1実施形態の作用効果]
【0090】
本実施形態では、平面が長方形のリム部を用い、リム部の水平断面積S1、上ヨーク部の断面積S2及び下ヨーク部の断面積S3の比率をS1:S2=1:0.6〜1.0且つS1:S3=1:0.6〜1.0としたので、リム部の断面積に対応して上下のヨーク部の断面積を広くした場合でも、ヨーク部の高さを増加させることなく、十分な磁路を確保することができる。また、リム部の長尺Aと短尺Bの比率が、A:B=1.2〜15:1の範囲としたので、インダクタンス値の向上と熱損失の増加防止の効果を、バランス良く達成することができる。
【0091】
本実施形態では、外装ケースの壁が樹脂製であり、その部分に端子台が一体成型されているために、端子台とケース壁部一体成型による小型化、部品点数・組立工数の削減などが可能になる効果がある。
【0092】
[4.第2実施形態]
本実施形態は、長方形の一例である角丸長方形(トラック型の長方形)に本発明を適用したものである。本発明において、長方形とは、少なくとも長辺に直線部分を有する、長尺方向と短尺方向を有する形状を意味するものであり、四隅の90°の角度の円弧状の面取り部分の半径が大きく、短辺に直線部分が存在しない形状も含む。
図22は、第2実施形態のリアクトルの水平断面図であって、本発明のおける長尺Aはリム部41の水平断面の長さ寸法を指し、短尺Bはリム部41の水平断面の幅寸法を指す。また、上ヨーク部42の断面積S2と下ヨーク部43の断面積S3は円弧状をした90°の角度の面取り部分の1/2、すなわち45°の角度の位置を基準として決定する。
【0093】
本実施形態では、外装ケース3、コイルケース6やその蓋64が角丸長方形であることをのぞき、第1実施形態の第2の製造方法で説明したリアクトルと同様な構成を有している。
【0094】
本実施形態において、
図23に示すように、コイルケース6の蓋部64に空気抜きの開口部641が形成されている。すなわち、コイルケース6にコイル1を配置して放熱用の絶縁樹脂を充填した後に、コイルケース6に蓋64を取り付けようとした場合、コイルケース6内部に空気が残っていると蓋64が閉まらないという問題を解消するため、空気の逃げ孔として開口部641を設けている。また、この空気の逃げ孔用の開口部641にコア4の充填時にコア4が流入した場合のコア4とコイル1の絶縁のために、開口部の下に位置するコイル1部分に絶縁テープ16を巻付けて絶縁を強化している。絶縁樹脂のみでもコア4とコイル1の絶縁は確保できるが、更なる絶縁性能が求められる場合には、絶縁テープ16を巻き付けることが好ましい。なお、絶縁樹脂の注入量や注入速度、絶縁樹脂の種類によってコイルケース6内に空気が残存しない場合や、リアクトルの性能上残存した空気が無視できる場合には、蓋64に開口部641が設けられていなくても良い。また、第1実施形態においても、蓋64に開口部641を設けることができる。
【0095】
このように、本実施形態においても、リム部の断面積S1、上ヨーク部の断面積S2及び下ヨーク部の断面積S3の比率をS1:S2=1:0.6〜1.0且つS1:S3=1:0.6〜1.0とすることにより、リム部の断面積に対応して上下のヨーク部の断面積を狭くした場合でも、ヨーク部の高さを増加させることなく、十分な磁路を確保することができる。また、リム部の長尺Aと短尺Bの比率を、A:B=1.2〜15:1の範囲とすることにより、インダクタンス値の向上と熱損失の増加防止の効果を、バランス良く達成することができる。
【0096】
[5.他の実施形態]
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではない。以上の実施形態は例として提示したものであって、その他の様々な形態で実施されることが可能である。発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲、要旨、その均等の範囲に含まれる。下記は、その一例である。
【0097】
(1)リム部41は、長尺Aと短尺Bを有していればよく、
図25A、25B、25C、25Dの水平断面図に示すように、例えば、面取り部が直線である長方形(
図25A)、長細の楕円形(
図25B)、長辺が外側に湾曲した曲線であり、短辺が直線のもの(
図25C)、長辺が内側に湾曲した曲線であり、短辺が直線のもの(
図25D)であっても良い。また、六角形などの多角形であっても良い。また、
図26の横断面図に示すように、横断面から見たときのリム部41の高さ部分が内側にくびれた形状70であってもよい。
【0098】
(2)図示の実施形態では、コアに埋設しているコイルは1つであるが、複数のコイルを、左右に並べたり、上下に重ねたりして埋設可能である。
【0099】
(3)容器として、蓋を有するものを使用しても良い。その場合、容器の蓋や容器の樹脂部に設けた注入口から軟磁性複合材料を容器内に注入し、硬化させることで、コアを作製する。容器の蓋に、軟磁性複合材料の注入時における空気抜きのために、開口部を設けても良い。