(54)【発明の名称】加速度の測定値を処理して、ユーザによるステップを識別する方法及び対応するコンピュータプログラム、並びに加速度の測定値を処理して、ユーザによるステップを識別する装置及びそのような装置を備えるデバイス
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
処理ユニット又はコンピュータにより実行されると、前記処理ユニット又は前記コンピュータに請求項1乃至10いずれか一項記載の方法を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記アルゴリズムは、ペンダントとして装着されるデバイス内に存在する場合でさえも、歩行検出の非常に高い精度を提供することが見出されている。しかしながら、このアルゴリズムは、常に100%の精度であるわけではなく、感度及び精度のさらなる改善が望まれる。したがって、ユーザの動きの測定値において歩行を検出するための改善されたアルゴリズムの必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に従うと、加速度の測定値を処理して、ユーザによるステップを識別する方法が提供される。本方法は、ユーザにより装着されている又は運ばれているデバイスから、加速度の測定値を得る段階と、加速度の測定値を解析して、加速度の測定値においてユーザによるステップを識別するために使用される閾値を決定する解析段階と、決定された閾値を使用して、加速度の測定値においてユーザによるステップを識別する使用段階と、を含む。
【0010】
好ましくは、解析段階は、加速度の測定値から、1以上の特性を決定する段階と、1以上の特性から、ユーザによるステップを識別するために使用される閾値を決定する段階と、を含む。好ましくは、1以上の特性を決定する段階は、測定値の平均値及び/又は標準偏差を決定する段階を含む。
【0011】
加速度の測定値から、1以上の特性を決定する段階は、好ましくは、加速度の測定値、加速度の測定値のノルム、加速度の微分係数(derivative)、又は加速度の微分係数のノルムの1以上の特性を決定する段階を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、閾値を決定する段階は、|grav|+ThresFac*(Mean-|grav|+Std)を計算する段階を含み、ここで、|grav|は、重力に起因する加速度であり、ThresFacは、定数であり、Meanは、加速度の測定値の平均値又は加速度の測定値のノルムの平均値であり、Stdは、加速度の測定値の標準偏差又は加速度の測定値のノルムの平均値である。
【0013】
他の実施形態において、閾値を決定する段階は、Mean+ThresFacIn*Std及びMean-ThresFacOut*Stdを使用して、2つの閾値を算出する段階を含み、ここで、ThresFacIn及びThresFacOutは、定数であり、Meanは、加速度の測定値の微分係数の平均値又は加速度の測定値の微分係数のノルムの平均値であり、Stdは、加速度の測定値の微分係数の標準偏差又は加速度の測定値の微分係数のノルムの平均値である。
【0014】
いくつかの実施形態において、本方法は、加速度の測定値において識別されたステップから、歩行パート(walking part)についての最初のステップ及び最後のステップを識別する段階と、歩行パートに対応する加速度の測定値に対して解析段階及び使用段階を繰り返して、ユーザによるステップを識別する段階と、をさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、決定された閾値を使用して、加速度の測定値においてユーザによるステップを識別する使用段階は、決定された閾値を使用して、加速度の測定値の少なくとも一部又は加速度の測定値のノルムの少なくとも一部が、決定された閾値を満たす、測定値のクラスタを識別する段階と、各クラスタにおける極測定値(extremum measurement)での又は各クラスタにおける極測定値近くの測定値として、ステップを識別する段階と、を含む。
【0016】
他の実施形態において、決定された閾値を使用して、加速度の測定値においてユーザによるステップを識別する使用段階は、決定された閾値を使用して、加速度の測定値の微分係数の値の少なくとも一部又は加速度の測定値の微分係数のノルムの少なくとも一部が、決定された閾値を満たす、測定値のクラスタを識別する段階と、各クラスタにおける微分係数の極値又は微分係数のノルムの極値での、又は、各クラスタにおける微分係数の極値又は微分係数のノルムの極値近くの測定値として、ステップを識別する段階と、を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、加速度の測定値において識別されたステップの系列(a series of steps)を含む歩行パートについて、本方法は、規則性(regularity)について、識別されたステップをテストするテスト段階と、テスト段階の結果から、ユーザによるステップが見逃されたと判定された場合、ステップの系列に、ユーザによるステップを追加する段階と、テスト段階の結果から、ユーザによる重複ステップが存在すると判定された場合、ステップの系列から、ユーザによるステップを除去する段階と、をさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、テスト段階は、ステップの系列における連続するステップからなる各ペアについてのステップ時間を、連続するステップの間の時間として決定する段階と、決定されたステップ時間の平均値として、代表ステップ時間を決定する段階と、ステップ時間が、代表ステップ時間から閾量内にある場合、規則的であるとしてステップ時間を識別する段階と、を含む。
【0019】
好ましくは、テスト段階は、連続するステップからなる特定のペアについてのステップ時間が、代表ステップ時間の閾量内にない場合、連続するステップからなるペアのうちの一方と、連続するステップからなるペアのうちの他方に隣接するステップと、の間のステップ時間を決定する段階と、連続するステップからなるペアのうちの一方と、連続するステップからなるペアのうちの他方に隣接するステップと、の間の決定されたステップ時間が、代表ステップ時間の2倍の値から閾量内にある場合、規則的であるとして、連続するステップからなる特定のペアについてのステップ時間を識別する段階と、連続するステップからなるペアのうちの一方と、連続するステップからなるペアのうちの他方に隣接するステップと、の間の決定されたステップ時間が、代表ステップ時間の2倍の値から閾量内にない場合、不規則的であるとして、連続するステップからなる特定のペアについてのステップ時間を識別する段階と、をさらに含む。
【0020】
好ましくは、テスト段階は、連続するステップからなる特定のペアについてのステップ時間が、不規則的であるとして識別された場合、ステップ時間を代表ステップ時間と比較する段階と、ステップ時間が、代表ステップ時間以上である場合、連続するステップからなるペアの間のステップが見逃されたと判定する段階と、ステップ時間が、代表ステップ時間未満である場合、連続するステップからなるペアにおけるステップが重複ステップであると判定する段階と、をさらに含む。
【0021】
代替実施形態において、テスト段階は、ステップの系列における連続するステップからなる各ペアについてのステップ時間を、連続するステップの間の時間として決定する段階と、最小である決定されたステップ時間について、連続するステップからなる各ペアについてのステップ時間の分散として、第1の分散を算出し、最小である決定されたステップ時間を有する、ステップのペアを形成する1番目のステップが除かれた場合のステップ時間の分散として、第2の分散を算出し、最小である決定されたステップ時間を有する、ステップのペアを形成する2番目のステップが除かれた場合のステップ時間の分散として、第3の分散を算出する段階と、第2の分散が、第1の分散と第2の分散と第3の分散とのうち最小の分散である場合、最小である決定されたステップ時間を有する、ステップのペアを形成する1番目のステップを除去する段階と、第3の分散が、第1の分散と第2の分散と第3の分散とのうち最小の分散である場合、最小である決定されたステップ時間を有する、ステップのペアを形成する2番目のステップを除去する段階と、を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、加速度の測定値において識別されたステップの系列を含む歩行パートについて、本方法は、歩行パートが、閾継続時間以下の継続時間を有する場合、歩行パートを破棄する段階をさらに含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、加速度の測定値において識別されたステップの系列を含む歩行パートについて、本方法は、歩行パートのストライド規則性を評価する段階をさらに含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、歩行パートのストライド規則性を評価する段階は、歩行パートの自己相関度(autocorrelation)を決定する段階をさらに含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、歩行パートのストライド規則性を評価する段階は、歩行パートの決定された自己相関度をフィルタリングして、ストライドピークを識別する段階を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、歩行パートのストライド規則性を評価する段階は、ストライドピークが識別された場合、ストライドピークと零ラグ(zero lag)における自己相関度とから、自己共分散比を算出する段階と、自己共分散比を閾値と比較する段階と、自己共分散比が閾値より大きい場合、歩行パートが歩行に関連すると判定する段階と、を含む。
【0027】
好ましい実施形態において、歩行パートのストライド規則性を評価する段階は、歩行パートの一部分について、ストライド規則性を評価する段階を含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、加速度の測定値において識別されたステップの系列を含む歩行パートについて、本方法は、歩行パートに対応する加速度の測定値から、ユーザの活動レベルを決定する段階と、ユーザの活動レベルが、ユーザが歩行していないことを示す場合、歩行パートを破棄する段階と、をさらに含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、歩行パートに対応する加速度の測定値から、ユーザの活動レベルを決定する段階は、加速度の分散から、活動レベルを算出する段階を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、本方法は、決定された活動レベルを1以上の閾値又は範囲と比較することにより、ユーザが歩行しているか否かを判定する段階を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、加速度の測定値において識別されたステップの系列を含む歩行パートについて、本方法は、歩行パートが、ユーザの階段上り歩行又は階段下り歩行に対応するかどうかを判定する段階と、歩行パートが、ユーザの階段上り歩行又は階段下り歩行に対応すると判定された場合、歩行パートを破棄する段階と、をさらに含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、歩行パートが、ユーザの階段上り歩行又は階段下り歩行に対応するかどうかを判定する段階は、ユーザにより装着されている又は運ばれているデバイスから、気圧の測定値を得る段階と、得られた気圧の測定値を処理して、歩行パートの間に、ユーザの階段上り又は階段下り歩行に整合する、高さの変化があったかどうかを判定する処理段階と、を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、処理段階は、気圧の測定値をフィルタリングする段階と、予め定められた時間期間にわたる、フィルタリングされた測定値における気圧の変化を、閾値と比較する段階と、予め定められた時間期間にわたる気圧の変化が閾値より大きい場合、歩行パートが、ユーザの階段上り歩行又は階段下り歩行に対応すると判定する段階と、を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、気圧の測定値をフィルタリングする段階は、中央値フィルタを気圧測定値に適用する段階を含む。
【0035】
本発明の第2の態様に従うと、加速度の測定値を処理して、ユーザによるステップを識別するための装置が提供される。本装置は、ユーザにより装着されている又は運ばれているデバイスから、加速度の測定値を得、加速度の測定値を解析して、加速度の測定値においてユーザによるステップを識別するために使用される閾値を決定し、決定された閾値を使用して、加速度の測定値においてユーザによるステップを識別するよう構成されている処理ユニットを備える。
【0036】
処理ユニットが、上述した方法の実施形態を実装するようさらに構成されている、本装置の様々な実施形態も意図されている。
【0037】
いくつかの実施形態において、本装置は、ユーザにより装着される又は運ばれるデバイスの一部であり、デバイスは、加速度の測定値を提供するための加速度計を備える。
【0038】
代替実施形態において、本装置は、ユーザにより装着される又は運ばれるデバイスからリモートにあり、デバイスは、加速度の測定値を提供するための加速度計を備える。
【0039】
別の態様に従うと、ユーザにより装着されている又は運ばれているデバイスから得られた加速度の測定値において識別されたステップの系列を表す信号を処理する方法が提供される。本方法は、規則性について、識別されたステップをテストするテスト段階と、テスト段階の結果から、ユーザによるステップが見逃されたと判定された場合、ステップの系列に、ユーザによるステップを追加する段階と、テスト段階の結果から、ユーザによる重複ステップが存在すると判定された場合、ステップの系列から、ユーザによるステップを除去する段階と、を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、テスト段階は、ステップの系列における連続するステップからなる各ペアについてのステップ時間を、連続するステップの間の時間として決定する段階と、決定されたステップ時間の平均値として、代表ステップ時間を決定する段階と、ステップ時間が、代表ステップ時間から閾量内にある場合、規則的であるとしてステップ時間を識別する段階と、を含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、テスト段階は、連続するステップからなる特定のペアについてのステップ時間が、代表ステップ時間から閾量内にない場合、連続するステップからなるペアのうちの一方と、連続するステップからなるペアのうちの他方に隣接するステップと、の間のステップ時間を決定する段階と、連続するステップからなるペアのうちの一方と、連続するステップからなるペアのうちの他方に隣接するステップと、の間の決定されたステップ時間が、代表ステップ時間の2倍の値から閾量内にある場合、規則的であるとして、連続するステップからなる特定のペアについてのステップ時間を識別する段階と、連続するステップからなるペアのうちの一方と、連続するステップからなるペアのうちの他方に隣接するステップと、の間の決定されたステップ時間が、代表ステップ時間の2倍の値から閾量内にない場合、不規則的であるとして、連続するステップからなる特定のペアについてのステップ時間を識別する段階と、をさらに含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、テスト段階は、連続するステップからなる特定のペアについてのステップ時間が、不規則的であるとして識別された場合、ステップ時間を代表ステップ時間と比較する段階と、ステップ時間が、代表ステップ時間以上である場合、連続するステップからなるペアの間のステップが見逃されたと判定する段階と、ステップ時間が、代表ステップ時間未満である場合、連続するステップからなるペアにおけるステップが重複ステップであると判定する段階と、をさらに含む。
【0043】
代替実施形態において、テスト段階は、ステップの系列における連続するステップからなる各ペアについてのステップ時間を、連続するステップの間の時間として決定する段階と、最小である決定されたステップ時間について、連続するステップからなる各ペアについてのステップ時間の分散として、第1の分散を算出し、最小である決定されたステップ時間を有する、ステップのペアを形成する1番目のステップが除かれた場合のステップ時間の分散として、第2の分散を算出し、最小である決定されたステップ時間を有する、ステップのペアを形成する2番目のステップが除かれた場合のステップ時間の分散として、第3の分散を算出する段階と、第2の分散が、第1の分散と第2の分散と第3の分散とのうち最小の分散である場合、最小である決定されたステップ時間を有する、ステップのペアを形成する1番目のステップを除去する段階と、第3の分散が、第1の分散と第2の分散と第3の分散とのうち最小の分散である場合、最小である決定されたステップ時間を有する、ステップのペアを形成する2番目のステップを除去する段階と、を含む。
【0044】
別の態様に従うと、ユーザにより装着されている又は運ばれているデバイスから得られた加速度の測定値において識別されたステップの系列を表す信号を処理するための装置が提供される。本装置は、規則性について、識別されたステップをテストし、テストの結果から、ユーザによるステップが見逃されたと判定された場合、ステップの系列に、ユーザによるステップを追加し、テストの結果から、ユーザによる重複ステップが存在すると判定された場合、ステップの系列から、ユーザによるステップを除去するよう構成されている処理ユニットを備える。
【0045】
処理ユニットが、上述した方法の実施形態を実装するようさらに構成されている、本装置の様々な実施形態も意図されている。
【0046】
さらなる態様に従うと、ユーザにより装着されている又は運ばれているデバイスから得られた加速度の測定値において識別されたステップの系列であって、歩行パートに対応するステップの系列を表す信号を処理する方法が提供される。本方法は、歩行パートのストライド規則性を評価する段階を含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、歩行パートのストライド規則性を評価する段階は、歩行パートの自己相関度を決定する段階を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、歩行パートのストライド規則性を評価する段階は、歩行パートの決定された自己相関度をフィルタリングして、ストライドピークを識別する段階を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、歩行パートのストライド規則性を評価する段階は、ストライドピークが識別された場合、ストライドピークと零ラグにおける自己相関度とから、自己共分散比を算出する段階と、自己共分散比を閾値と比較する段階と、自己共分散比が閾値より大きい場合、歩行パートが歩行に関連すると判定する段階と、を含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、歩行パートのストライド規則性を評価する段階は、歩行パートの一部分について、ストライド規則性を評価する段階を含む。
【0051】
さらなる態様に従うと、ユーザにより装着されている又は運ばれているデバイスから得られた加速度の測定値において識別されたステップの系列であって、歩行パートに対応するステップの系列を表す信号を処理するための装置が提供される。本装置は、歩行パートのストライド規則性を評価するよう構成されている処理ユニットを備える。
【0052】
処理ユニットが、上述した方法の実施形態を実装するようさらに構成されている、本装置の様々な実施形態も意図されている。
【0053】
さらに別の態様に従うと、ユーザにより装着されている又は運ばれているデバイスから得られた加速度の測定値において識別されたステップの系列であって、歩行パートに対応するステップの系列を表す信号を処理する方法が提供される。本方法は、歩行パートに対応する加速度の測定値から、ユーザの活動レベルを決定する段階と、ユーザの活動レベルが、ユーザが歩行していないことを示す場合、歩行パートを破棄する段階と、を含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、歩行パートに対応する加速度の測定値から、ユーザの活動レベルを決定する段階は、加速度の分散から、活動レベルを算出する段階を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、本方法は、決定された活動レベルを1以上の閾値又は範囲と比較することにより、ユーザが歩行しているか否かを判定する段階を含む。
【0056】
さらに別の態様に従うと、ユーザにより装着されている又は運ばれているデバイスから得られた加速度の測定値において識別されたステップの系列であって、歩行パートに対応するステップの系列を表す信号を処理するための装置が提供される。本装置は、歩行パートに対応する加速度の測定値から、ユーザの活動レベルを決定し、ユーザの活動レベルが、ユーザが歩行していないことを示す場合、歩行パートを破棄するよう構成されている処理ユニットを備える。
【0057】
処理ユニットが、上述した方法の実施形態を実装するようさらに構成されている、本装置の様々な実施形態も意図されている。
【0058】
別の態様に従うと、ユーザにより装着されている又は運ばれているデバイスから得られた加速度の測定値において識別されたステップの系列であって、歩行パートに対応するステップの系列を表す信号を処理する方法が提供される。本方法は、歩行パートが、ユーザの階段上り歩行又は階段下り歩行に対応するかどうかを判定する段階と、歩行パートが、ユーザの階段上り歩行又は階段下り歩行に対応すると判定された場合、歩行パートを破棄する段階と、を含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、歩行パートが、ユーザの階段上り歩行又は階段下り歩行に対応するかどうかを判定する段階は、ユーザにより装着されている又は運ばれているデバイスから、気圧の測定値を得る段階と、得られた気圧の測定値を処理して、歩行パートの間に、ユーザの階段上り歩行又は階段下り歩行に整合する、高さの変化があったかどうかを判定する処理段階と、を含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、処理段階は、気圧の測定値をフィルタリングする段階と、予め定められた時間期間にわたる、フィルタリングされた測定値における気圧の変化を、閾値と比較する段階と、予め定められた時間期間にわたる気圧の変化が閾値より大きい場合、歩行パートが、ユーザの階段上り歩行又は階段下り歩行に対応すると判定する段階と、を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、気圧の測定値をフィルタリングする段階は、中央値フィルタを気圧測定値に適用する段階を含む。
【0062】
さらに別の態様に従うと、ユーザにより装着されている又は運ばれているデバイスから得られた加速度の測定値において識別されたステップの系列であって、歩行パートに対応するステップの系列を表す信号を処理するための装置が提供される。本装置は、歩行パートが、ユーザの階段上り歩行又は階段下り歩行に対応するかどうかを判定し、歩行パートが、ユーザの階段上り歩行又は階段下り歩行に対応すると判定された場合、歩行パートを破棄するよう構成されている処理ユニットを備える。
【0063】
処理ユニットが、上述した方法の実施形態を実装するようさらに構成されている、本装置の様々な実施形態も意図されている。
【0064】
本発明の最後の態様に従うと、コンピュータ読み取り可能なコードが具現化されているコンピュータプログラム製品であって、コンピュータ読み取り可能なコードが、適切な処理ユニット又はコンピュータにより実行されると、処理ユニット又はコンピュータが、上述した実施形態の態様のうちのいずれかに従った方法を実行するように、コンピュータ読み取り可能なコードが構成されている、コンピュータプログラム製品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図1は、ユーザ4の首の周りに装着されているペンダントの形態のデバイス2を示しており、
図2は、デバイス2のブロック図である。いくつかの実施形態において、デバイス2は、例えば、歩行中の、例えば、怪我又は転倒の防止をサポートするために、又は、パーソナルフィットネスの目的で、ユーザ4の身体活動をモニタリングする活動モニタである。さらに、ステップ/歩行検出アルゴリズムは、個人を識別するためのバイオメトリックとして歩行パラメータを使用するデバイス又はシステムにおいて、使用されてもよいし、ランニング、跳躍等といった、歩行とは異なる他の形態の動きを検出するために、デバイス又はシステムにおいて、使用されてもよい。他の実施形態においては、デバイス2は、他の目的のために、使用されてもよい。例えば、デバイス2は、ステップカウンタ(歩数計)、速度モニタ、又は安定性モニタであってもよい。
【0067】
デバイス2は、デバイス2の動きを測定する少なくとも1つの動きセンサ6を備える。好ましくは、少なくとも1つの動きセンサ6は、デバイス2に作用する加速度の大きさ及び方向を測定する加速度計6を含む。加速度計6は、3次元の加速度を測定し、3軸(例えば、x軸、y軸、及びz軸)について、その軸に沿って作用する加速度の大きさを経時的に示す信号を出力する。加速度計6は、予め定められたサンプリング周波数で、例えば、50Hzで、加速度を測定するが、他のサンプリング周波数が使用されてもよい。
【0068】
デバイス2は、加速度計6から加速度測定値を受信し、加速度測定値を処理して、ユーザ4が歩行しているときを識別する処理ユニット8をさらに備える。デバイス2はまた、処理ユニット8に本発明に従って加速度測定値を処理させるために処理ユニット8により実行されるコンピュータ読み取り可能なコード又は命令を記憶するために使用することができるメモリモジュール10も備える。メモリモジュール10はまた、処理ユニット8による処理の前、間、及び後に、加速度測定値を記憶するために使用することができる。
【0069】
本発明の好ましい実施形態において、デバイス2は、ユーザ4の首の周りにひも又は糸状のもので装着されるペンダントの形態であるが、デバイス2は、ユーザ4の身体の異なる部分、例えば、腰、胸、腕、手首、脚、又は足首に装着される代替形態で実施されてもよいことが理解されよう。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、デバイス2がこれらの代替位置のうちの1つの位置に配置されたときに観測される異なる動き/加速度を踏まえて、ユーザ4のフットステップ(footstep)又は歩行を検出するために使用される処理を変更する必要がある場合がある。これらの変更については、以下の適切な箇所で言及する。
【0070】
本発明のこの例示的な実施形態において、デバイス2は、ユーザ4により装着され、動き測定値を収集して処理する単一のユニットを備える。代替実施形態においては、測定値の処理は、センサからリモートにあるユニット(例えば、ユーザ4の身体の異なる部分に装着されるユニット、ユーザの自宅に配置され得るベースユニット、又は、ヘルスケアサービスプロバイダの施設に配置されるリモートサーバ)において実行されてもよく、この場合、デバイス2は、ユーザ4により装着されるセンサユニットであって、測定値をこのようなリモートユニットに送信するための適切な送信機又はトランシーバ回路を有するセンサユニットを備える。この実施形態においては、ユーザにより装着されるセンサユニットは、測定値を処理して、ユーザのフットステップ又は歩行を検出することができる処理ユニットを含む必要がない。
【0071】
さらなる実施形態において(そのうちのいくつかは、以下でさらに言及される)、デバイス2は、ユーザ4の動き又は向きを測定するための1以上のさらなるセンサを備えてもよい。例えば、デバイス2は、デバイス2における気圧を測定するための気圧センサ(気圧計)12を備えてもよく、処理ユニット8は、気圧測定値を処理して、デバイス2の高度又は高度変化/高さ変化の度合い(measure)を得ることができる。他の可能なセンサは、デバイス2の向き及び/又は向きの変化を判定するために処理され得る信号を出力することができるジャイロスコープ、地球磁場を測定するための磁力計であって、デバイス2の方向又は方位を判定するために使用することができる磁力計、例えば、衛星測位システム受信機(例えば、全地球測位システム(GPS)受信機)といった、デバイス2の位置を判定するための位置センサを含む。
【0072】
実用的な実装において、デバイス2は、
図2に示され上述したコンポーネント以外の他のコンポーネント又はさらなるコンポーネントを備えてもよい。そのようなコンポーネントとして、ユーザが、デバイス2をアクティブ化及び/又は操作することを可能にするユーザインタフェース、デバイス2に電力供給するための電源(バッテリ等)がある。
【0073】
図3は、ユーザ4が歩行しているときを判定するための(すなわち、入力センサ信号のどの部分がユーザ歩行に対応するかを判定するための)、本発明のいくつかの実施形態に従った、処理ユニット8により使用されるアルゴリズムにおける処理段階を概説している。本アルゴリズムの全体的な目的は、ユーザが歩行している1以上の時間期間の開始時間及び終了時間を検出することである。そのような各時間期間は、本明細書において、「歩行パート」と呼ばれる。
【0074】
本アルゴリズムの第1部分であるブロック20において、動き測定値(例えば、加速度測定値)が処理されて、ユーザ4によるステップが検出される。このブロック20の出力は、ステップ系列(step series)(すなわち、検出された複数のステップのタイミングを示す信号)であり、その一例が、
図4に示されている。
図4において、丸が、識別されたステップを示す。ステップ系列が、第2ブロック22に渡され、第2部分22は、歩行とみなされる十分な継続時間を有さない、識別されたステップの系列を破棄する(例えば、ユーザは、ある部屋から別の部屋に歩くこともあるし、且つ/又は、椅子から立ち上がることもあり、わずかなステップで何かにたどり着くこともあり、これらのステップは、(少なくともフィットネスモニタリング又は転倒リスク評価の目的で)継続的歩行又は規則的歩行とみなされるべきではない)。第2ブロック22の出力(この出力は、1以上の候補歩行パートを表す信号である)が、第3ブロック24に渡され、第3ブロック24は、各候補歩行パートを妥当性検証して、各候補歩行パートが、歩行として適切に分類されるべきかどうかを判定する。
【0075】
本アルゴリズムの様々な部分について、より詳細に説明する。
【0076】
ステップ検出ブロック20において、ステップ(フットステップ)が、ユーザの遊脚の踵が接地(踵接地(HS:heel strike)と呼ばれる)した時点として定められ得る。本発明の態様が基づくステップ検出に関する以下に記載の技術のうちの一部は、国際公開第2011/004322号に記載されている。
【0077】
ユーザ4の上半身にきつく取り付けられた加速度計6に関して、踵接地(又は、本明細書においてステップ境界とも呼ばれる)は、通常、垂直加速度の「ゼロ」交差を観測することにより発見される。もちろん、重力がユーザ4に常に作用しているので、実際の「交差」は、1g(9.81ms
−2)を経ることになる。垂直加速度は、加速度計6の向きを判定し、加速度の垂直成分を抽出することにより、決定され得るが、きつく取り付けられた加速度計に関して、垂直方向に対応する座標軸に沿った、加速度計の読み取りは、通常、十分な近似値を提供する。
【0078】
しかしながら、デバイス2がペンダントの形態である好ましい実施形態において、デバイス2(したがって、加速度計6)は、ユーザ4に対して自由に動く。これは、加速度計の座標系もユーザ4に対して動くことを意味する。この場合、加速度信号のノルムが観測され得、踵接地は、通常は、このノルムにおいて、大きなピークとして出現する。したがって、本アルゴリズムのステップ検出部分において、踵接地に対応し得るピークを探すために、加速度測定値/信号が調べられる。
【0079】
いくつかの単純な実施形態において、加速度信号(又は、加速度信号のノルム)における、閾値を超える全てのピーク(すなわち、極大値)が、可能性のあるステップであるとみなされ得る。加速度信号のノルムの一例が、
図5において、|acc|と表記されて示されている。
図5において、加速度のノルムが閾値を超えている、可能性のある踵接地事象がマーク付けされている。
【0080】
いくつかの他の単純な実施形態において(これらは、デバイス2(又は、少なくとも加速度計6)が、ユーザ4の下半身部分に配置される場合に特に有用である)、加速度信号の微分係数(又は、加速度信号の微分係数のノルム)が決定され、踵接地事象に対応する、閾値を超えるピークを探すために(以下で説明するいくつかの場合においては、閾値未満の極小値を探すために)、微分係数が調べられる。加速度の微分係数は、本明細書において、「ジャーク(jerk)」と呼ばれる。加速度の微分係数は、後続の加速度サンプル値間の差を求めてサンプリング周波数f
sを乗算する(すなわち、サンプリング時間で除算する(1/f
s))ことにより算出することができる(しかしながら、演算労力を低減させるために、乗算又は除算は、必要に応じて省略されてもよい)。
【0081】
より好ましい実施形態において、加速度信号又はジャーク信号におけるサンプルのクラスタが識別され、各クラスタにおける最大値(又は、最大値に近い別の値)が、ステップ境界として識別される。詳細には、信号が解析されて、加速度信号(又は、加速度のノルム、ジャーク、若しくはジャークのノルム)におけるサンプルのうちの少なくとも一部が閾値を超える(又は、適切な場合には、閾値未満である)、それらサンプルの領域が識別される。
【0082】
第1の例示的な実装において、クラスタは、閾値(例えば、重力より2ms
−2大きい値、すなわち、〜12ms
−2)を超えるサンプルのセットに対応し得る。第2の例示的な実装において、クラスタは、閾値を超えるサンプルのセットであって、ギャップのサイズが予め定められた限界値threshold
gap未満であるという条件で、閾値を超えないサンプルの小さなギャップが許容される、サンプルのセットに対応し得る。予め定められた限界値は、好ましくは、ステップ間の典型的な時間(約0.5秒)より小さい。この性質の例示的なクラスタが、
図5の時間358と時間359との間で確認され得る。
【0083】
第3の例示的な実装において、1つの閾値を使用して、クラスタの一部を形成するサンプルを識別する代わりに、2つの閾値が使用され得る。これはヒステリシスを導入する−第1の閾値を超えるサンプルは、クラスタの最初を示し、第2の閾値を下回る最初のサンプルは、そのクラスタの最後を示す。クラスタの最初と最後との間の最小継続時間(おそらくは、ステップ時間、すなわち、2つの連続するステップの間の時間に関連する)が、必要に応じて適用され得る。2つの閾値の使用は、加速度信号のジャークを解析してステップ境界を識別する場合に、特に有用である。
【0084】
図6におけるグラフは、上述した実装に従って、様々な例示的な加速度信号において、クラスタがどのように識別され得るかを示している。一般的なケースが、
図6(a)に示されており、ここでは、2つの閾値threshold
acc1及びthreshold
acc2が、サンプルに適用され、サンプルが第1の閾値を超えない、最大継続時間のギャップthreshold
gapが許容される。
図6(a)において、ギャップは、Δtと表記され、Δt<threshold
gapの場合には、クラスタが発見される。
【0085】
図6(b)は、クラスタを識別するための閾値を超えることが全てのサンプルに要求される、クラスタ識別の上述した第1の例示的な実装を示している(すなわち、
図6(b)におけるクラスタ検出は、
図6(a)の一般的ケースにおいて、threshold
acc1=threshold
acc2であり、ギャップが許容されないことに対応する)。
【0086】
図6(c)は、閾値を超えないサンプルのギャップがクラスタにおいて許容される、クラスタ識別の上述した第2の例示的な実装を示している(すなわち、
図6(c)におけるクラスタ検出は、
図6(a)の一般的ケースにおいて、threshold
acc1=threshold
acc2であり、threshold
gap=Y(Yは、ゼロでない正の値)であることに対応する)。
【0087】
図6(d)は、2つの閾値が使用される、クラスタ識別の上述した第3の例示的な実装を示している(すなわち、
図6(d)におけるクラスタ検出は、
図6(a)の一般的ケースにおいて、threshold
acc1≠threshold
acc2であり、ギャップが許容されないことに対応する)。
【0088】
上記クラスタリング技術は、ユーザ4の上半身に取り付けられる加速度計6に関して、概して、踵接地の有用な推定を提供する。加速度計6が、ユーザ4の下半身(例えば、足首)に取り付けられる場合、加速度が検討されるときに、通常は、2つのクラスタが、ステップごとに、又は、
図7に示されるように、実際にストライドごとに、出現する(
図7は、2つの閾値の使用も示していることに留意されたい)。加速度計信号が、足首において観測されるので、ストライド(すなわち、左足及び右足の両方によるステップ)の周期が確認される。一方のクラスタは、足の上げに対応し、他方のクラスタは、踵接地に対応し、各クラスタにおける固有の最小値は、遊脚相に対応する。これら2つのクラスタのうちどちらが踵接地であるかを判定することは難しい場合がある。しかしながら、1つの最小値がステップごとに生じることも観測でき、デバイス2が、ユーザ4の下半身で使用される場合には、本アルゴリズムは、1以上の閾値を下回るサンプルの各クラスタにおいて生じている最小値(又は、最小値に近い値)を探すために、加速度信号のノルムを調べることができる。
【0089】
ステップの代わりに、本アルゴリズムは、ストライドの観点で設計されてもよい。これは、非対称歩行パターン(いわゆる周期−2信号(period-2 signal))の場合に、有効であり得る。ステップは、片足の変位であり、ストライドは、両足の変位(左足による1ステップ、右足による1ステップ)である。加速度計6が、足又は足首に配置される場合、対応する足が動いているときには、加速度計測定値において明らかな強いピークが存在し、他方の足が動いているときには、わずかな「クロストーク(cross talk)」が存在する。加速度計6が、胴体に配置される場合、両足の動きは、類似する加速度計信号を生成させる。身体のサイドに配置される加速度計6は、加速度計測定値において何らかの非対称性を示し得る。
【0090】
代替的に、上述したように、ユーザ4の下半身に配置される加速度計6に関して、加速度信号の微分係数を決定することにより、ジャークを決定することができ、ジャークを解析して、上述したように、クラスタを識別することができる。
図8におけるグラフは、識別されたストライド境界がマーク付けされている、例示的なジャーク信号を示している。
【0091】
上記技術に関して発見された1つの問題は、加速度信号が、しばしば、ステップごとに(すなわち、踵接地ごとに)複数のピークを含むことである、又は、ユーザ4によるステップの間に発生するランダムなピークを含むことさえある、ということである。ユーザ4が、一定の歩調(すなわち、ステップの一定の速度)を有すると仮定した場合、これらの複数のピーク及びランダムなピークは、ステップ時間変動全体に大きく影響を及ぼすステップを除去することにより、結果として生じるステップ系列からフィルタリング除去され得る(filtered out)。このフィルタリングは、本発明の後の態様を参照して、以下でより詳細に説明される。ステップ境界が、加速度計信号において識別されると、「ステップ時間」が導出され得る。「ステップ時間」は、加速度計測定値がユーザ4の胴体で収集される場合には、2つの連続する識別されたステップの間の時間であり、加速度計測定値がユーザ4の足又は足首で収集される場合には、2つの連続する識別されたストライドの間の時間である。明瞭にするために、1つのステップの時点は、「ステップピーク」又は「踵接地」と呼ばれる。したがって、いくつかの実装におけるステップ時間は、2つのステップピークの間の時間である。発見されたステップ時間が、規則性についてテストされる。詳細には、各ステップ時間が解析されて、ステップ又はストライドの間のギャップ(ステップ時間により表される)が、非常に長く、異なる歩行パートの間のギャップであるとみなされると実際にみなされるべきかどうかが判定される。1つの特定の実装において、代表ステップ時間(例えば、ステップ時間の平均値(平均値又は中央値))が、T
stepであるとすると、(例えば、Threshold
step*T
stepにより与えられる)ある秒数においてステップが検出されなければ、歩行パートの終了境界が、その最後のステップで発見される。この時間閾値(Threshold
step*T
step)の使用は、特定のユーザ4が歩行している速度に境界を適応させるので有利であるが、ユーザごとに独立した固定の時間閾値が、必要に応じて使用されてもよい。同様の方法を使用して、歩行パートの開始を線引きする(delineate)。Threshold
stepの好ましい値は、4である。
【0092】
本発明の一態様は、ステップ検出に対する変更を提供する。詳細には、(ユーザの身体における加速度計6の位置に応じた)ステップ境界に対応する極値(すなわち、極大値又は極小値)を識別するために使用される1つの閾値(又は、クラスタを識別するために2つの閾値が使用される場合には2つの閾値)が、加速度信号(又は、ジャーク信号)の特性に応じて適応される。このように閾値を信号に適応させることは、ステップ境界をより信頼性高く検出することを可能になる。これは、例えば、踵接地の間に加速度計6が受ける最大加速度又は最小加速度が、ユーザの身体に対するデバイス2の位置の変化に起因して、時間とともに変化し得るためである。閾値を適応させることはまた、本アルゴリズムが、特定のユーザ4(例えば、特に重い又は軽い踵接地を有するユーザ)の特性又はユーザ4が歩行している面の特性に、より良く適応することが可能になる。
【0093】
本発明のこの態様に従った、加速度測定値を処理して、ステップ境界を識別する方法を示すフローチャートが、
図9に示されている。第1段階である段階101において、ユーザ4に取り付けられている又はユーザ4により装着されている加速度計6を使用して、加速度測定値が得られる。
【0094】
段階103において、加速度測定値の1以上の特性が決定される。いくつかの実施形態において、1以上の特性は、加速度測定値の平均値及び/又は加速度測定値の標準偏差を含むが、例えば、センサ軸ごとの、より高次のモーメント及び/又は信号が、追加的又は代替的に、使用されてもよい。
【0095】
次いで、段階105において、加速度測定値においてステップ境界を識別するために使用される閾値が、加速度測定値の1以上の特性から決定される。
【0096】
次いで、決定された閾値が使用されて、加速度測定値においてステップ境界が識別される(段階107)。上述したように、閾値は、該閾値を超える測定値サンプルのクラスタを識別するために使用され得、いくつかの実施形態において、ステップ境界は、各識別されたクラスタにおけるピーク又は最小値により与えられる。
【0097】
したがって、この方法は、ステップ境界検出のために使用される閾値が、加速度信号の特性に基づいて適応されることをもたらす。
【0098】
上述した様々な実施形態に従うと、この方法は、3軸の加速度測定値を組み合わせること、組み合わせた加速度測定値のノルムを得ること、組み合わせた加速度測定値の微分係数を決定すること(すなわち、ジャークを決定すること)、3軸の加速度測定値の微分係数を得て、微分係数を組み合わせてジャークを決定すること、又は、組み合わせた加速度測定値の微分係数を決定して、結果のノルムを得ること(すなわち、|jerk|を決定すること)をさらに含んでもよく、段階103、段階105、及び段階107のうちの任意の1以上の段階は、加速度測定値のノルム、ジャーク、又はジャークのノルムに対して実行されてもよいことが理解されよう。信号のノルムを得ることは、例えば、ユークリッド距離(すなわち、L2ノルム)又はマンハッタン距離(すなわち、L1ノルム−3軸の絶対値を合計する)を算出することによって等、任意の既知の方法で行うことができることが理解されよう。
【0099】
いくつかの実施形態において、測定値のサブセット(例えば、20秒ウィンドウ)について、段階103において、特性が算出され、特性から導出された閾値が、そのウィンドウにおける測定値に適用されて、ステップ境界が識別される。次いで、ウィンドウが、(例えば、ウィンドウ長の半分−10秒以上といった予め定められた量だけ)加速度測定値に沿ってシフトされ得(段階109)(このシフトにおいて、ウィンドウの連続する位置の間、又は、等しい数の加速度サンプルの間には何らかのオーバーラップが存在する)、段階103、段階105、及び段階107が、ウィンドウにおける測定値の新たなセットについて繰り返される。
【0100】
特定の実施形態において、閾値は、信号(例えば、加速度のノルム又はジャークのノルム)の平均値及び標準偏差を使用することにより適応される。平均値及び標準偏差は、例えば、20秒の期間であるウィンドウにわたって算出される。加速度信号、加速度信号のノルム、ジャーク信号、又はジャーク信号のノルムにおいてクラスタを識別するための閾値は、そのウィンドウについての平均値及び標準偏差の関数により与えられる。いくつかの実施形態において、|acc|信号についての閾値は、
stepThres=|grav|+ThresFac*(stepMean-|grav|+stepStd) (1)
により与えられ、ここで、|grav|は、重力の値(9.81ms
−2)であり、ThresFacは、(例えば、1.1又は0.9という値を有する)定数であり、stepMeanは、信号の平均値であり、stepStdは、信号の標準偏差である。
【0101】
いくつかの実施形態において、ジャーク信号においてクラスタを識別するために使用される閾値は、
strideThresIn=strideMean+ThresFacIn*strideStd (2)
strideThresOut=strideMean-ThresFacOut*strideStd (3)
により与えられ、ここで、ThresFacIn及びThresFacOutは、(例えば、それぞれ1.7及び0.2という値を有する)定数であり、strideMeanは、信号の平均値であり、strideStdは、信号の標準偏差である。
【0102】
代替実施形態においては、加速度信号又はジャーク信号においてクラスタを識別するために使用される1つの閾値又は複数の閾値は、例えば、回帰モデルを使用して決定されてもよい。
【0103】
上述したように、信号の特性から決定された閾値は、信号に適用されて、ステップ(又は、ストライド)が、サンプルのクラスタにおける最大値又は最小値として識別される。最初のステップ及び最後のステップが、歩行パートを定める。最初のステップ及び最後のステップは、上述したように決定され得る。例えば、現在のステップ後のある秒数(Threshold
step*T
step)において、ステップが検出されなければ、歩行パートの終了境界が、その最後のステップで発見される。
【0104】
任意的に、識別された歩行パートを使用して、代表ステップ時間の新たな値が、歩行パートにおける全てのステップ時間の中央値として算出される。識別された歩行パートは、信号のうち関心のある部分のより良い線引きを与え、したがって、代表ステップ時間の推定は、より良い線引きされたデータセットに基づく(これにより、外れ値の影響が低減され、代表ステップ時間のより良い推定値が与えられる)。このステップ時間は、クラスタを検出するためのパラメータを設定するために使用される。また、上記閾値は、信号のうち、識別された歩行パート内の部分のみを使用して、再算出される。最後に、ステップピークが、新たなパラメータ及び閾値を使用して、歩行パート内で探すことにより、識別される。このように、歩行パートについてのステップピークを精緻にして、歩行検出を改善することができる。
【0105】
上述した閾値適応は、デバイス2が最初にスイッチオンされるとき又はユーザ4により最初に使用されるときに、デバイス2のカスタマイゼーションモード又は設定モードで実行され得ることが理解されよう。この場合、加速度の測定値が、上述したように、1以上の閾値を決定するために、得られて処理され得、1以上の閾値が、ユーザ4によるデバイス2の後の使用の間に得られた加速度の測定値に適用されて、ユーザのステップが識別され得る。
【0106】
本発明の別の態様は、加速度信号においてステップ(詳細には、ステップが生じた時間)を識別した後、ステップが、ステップ時間規則性についてテストされることを提供する。本発明のこの態様は、国際公開第2011/004322号に記載されている技術又は上述した技術を使用して識別されたステップに適用され得る。
【0107】
上述したように、閾値を使用してピークを検出する場合(且つ、閾値が、加速度信号の特性に適応される場合でさえも)、ステップの時間における加速度又はジャークの大きさが閾値を満たさないために、ステップに対応するいくつかのピークは、見逃される可能性があることが見出されている。他の場合において、1つのステップについて、2つのピークが発見されることがある。なぜならば、加速度信号は、複数のクラスタが識別されること、したがって、複数のステップピークをもたらす、閾時間(threshold
gap)よりも長い間閾値を下回ることが、偶然にも起こるからである。閾値適応によっても、信号強度/エネルギーが変化する可能性がある範囲を所与として、最適閾値を発見することは、難しい場合があり、見逃されたステップ及び重複ステップが依然として存在する場合がある。本発明のこの態様に従うと、(複数の異なる活動のうちの任意の1つとして加速度信号を一般に分類するのではなく、)加速度信号のうち、ユーザの歩行に対応する部分を識別することが望まれるので、ユーザ4が歩行しているときに、ステップが規則的に生じることを仮定する。したがって、規則性を仮定することにより、閾値検出により見逃されたステップ又は重複ステップピークが、補正され得る。
【0108】
規則性を補正する例示的な方法を示すフローチャートが、
図10に示されている。第1段階である段階121において、ステップが検出された時間を示すステップ系列信号が得られる。このステップ系列信号は、上述した技術のうちの任意の技術を使用して得ることができる。
【0109】
各ステップを順に得て、ステップ時間(現在のステップピークと前のステップピークとの間の時間)が、代表ステップ時間と比較される(段階123)。ステップ時間が、代表ステップ時間から閾量(threshold
reg)内にある場合(段階125)、ステップ時間は、規則的ステップ時間であるとみなされ(段階127)、次のステップ、したがって、次のステップ時間が評価される(段階129)。いくつかの実施形態において、閾値は、クラスタサイズ(これは、信号(例えば、|acc|)が閾値を満たすクラスタのサイズ/継続時間を識別するために使用される数である)に対応する。クラスタサイズは、典型的には、ステップ時間の半分の値である。
【0110】
段階125において、ステップ時間が不規則的であるとみなされた場合(段階131)であっても、後続のステップが規則的である可能性があり、この場合、次のステップと前のステップとの間のステップ時間が、閾値(すなわち、threshold
reg)と比較される(段階133及び段階135)。
【0111】
例えば、現在のステップがステップ[k](これは、ステップ[k]が生じた時間を表す)であり、前のステップであるステップ[k-1]からステップ[k]までのステップ時間がステップ時間[k](これは、不規則的であるとみなされている)であるとすると、
|(ステップ[k+1]-ステップ[k-1]-2*代表ステップ時間)|<threshold
reg (4)
であるかどうかが判定される。
【0112】
評価(4)の結果が真である場合、ステップ[k-1]からステップ[k+1]までのステップ時間は、規則的であるとみなされ、したがって、ステップ時間[k]は、規則的であるとみなされる(段階137)。次いで、次のステップ時間が評価される(段階129)。
【0113】
評価(4)の結果が偽である場合、現在のステップ時間は、不規則的であるとみなされ、ステップ系列からステップを除去すること又はステップ系列にステップを挿入することのいずれかが必要である。どちらが必要であるかを判定するために、ステップ時間[k]が、代表ステップ時間と比較される(段階139)。
【0114】
現在のステップ時間(ステップ時間[k])が代表ステップ時間未満である場合、除去が必要である(段階141)。この場合、ステップ時間[k]についての2つのステップのうちの1つ(すなわち、ステップ[k]又はステップ[k-1])が除去される。これらのステップのうちのどちらを除去するかの決定は、いくつかのルールのうちの1つのルールに基づき得る。1つのルールにおいて、最小の大きさを有するステップが除去される。しかしながら、このルールは、規則性テストにしたがって大き過ぎる、(残りのステップとその新たな隣接ステップとの間の)結果として生じるステップ時間をもたらす可能性があり、この場合、規則性テストに通らなければ、他方のステップ(すなわち、最大の大きさを有するステップ)が代わりに除去される。
【0115】
現在のステップ時間(ステップ時間[k])が代表ステップ時間以上である場合、挿入が必要である(段階143)。ステップピークが、継続時間における1つの代表ステップ時間の範囲内で、ステップ系列信号の最大値(又は、適切である場合には最小値)に挿入され得る。この範囲の開始は、前のステップ(ステップ[k-1])後の一クラスタサイズとして発見され得る。いくつかの場合において、挿入されたステップと次のステップとの間のステップ時間が、依然として、規則性マージン(regularity margin)を超えていれば、挿入プロセスが繰り返され得る(スパート(spurt)は、(典型的には)4つのステップ時間で線引きされ得るので、この挿入プロセスは、その境界で終了する)。
【0116】
(上記方法に対する代替方法として)不規則的ステップ時間を補正する別の方法は、一連のステップ時間の分散を観測することである。反復的に、最小ステップ時間を構成する2つのステップ(ピーク)が調べられる。これら2つのステップを所与として、次の3つの分散が算出される:所与のステップ時間の系列の分散、2つのステップのうちの1番目のステップが除かれた場合のステップ時間の系列の分散、及び、2つのステップのうちの2番目のステップが除かれた場合のステップ時間の系列の分散。第1の分散が、これら3つの分散のうち最小である場合、反復プロセスは終了する。第2の分散が最小である場合、2つのステップのうちの1番目のステップが、ステップ系列から除去される。第3の分散が最小である場合、2つのステップのうちの2番目のステップが、ステップ系列から除去される。次いで、反復プロセスが、新たなステップ系列について繰り返される。除去されるステップを選択するためのこの決定ルールは、上述した最初の規則性テストにおいて使用されてもよいことに留意すべきである。
【0117】
図3を参照して上述したように、ステップ検出アルゴリズム20が、加速度計測定値においてステップを検出した後、ステップ系列が、第2ブロック22に渡され、第2ブロック22は、歩行であるとみなされる十分な継続時間を有さない識別されたステップの系列を破棄する。詳細には、ブロック22において、ステップ系列において識別された各歩行パートの継続時間が、閾値(最小継続時間)と比較される。閾値を超えない継続時間を有する全ての歩行パートが破棄される。例示的な最小継続時間は、10秒とすることができるが、他の値が使用されてもよい。最小継続時間を超える全ての歩行パートに関するステップ系列が、候補歩行パートとして、第3ブロック24に渡され、第3ブロック24において、歩行ではないユーザ活動又は異常な歩行に対応するユーザ活動に対応する歩行パートをフィルタリング除去するために、候補歩行パートが妥当性検証される。
【0118】
本発明のさらに別の態様に従うと、第1のタイプの妥当性検証は、所定の規則性を伴うストライド時間を有する歩行パートを識別することを含み、ここで、各ストライドの信号形状は類似する。本発明のこの態様は、国際公開第2011/004322号に記載されている技術又は上述した改善された技術を使用して識別されたステップに適用され得る。
図11におけるフローチャートは、本発明のこの態様に従った、妥当性検証を実行する方法を示している。前の態様において、誤ったステップを除去するために又は見逃されたステップを追加するために、ストライド規則性を仮定したが、この態様においては、発見されたステップの規則性がテストされる(すなわち、前の態様のように規則性を仮定するものではない)。
【0119】
この態様において、歩行パートのストライド規則性が、局所的に評価される(これは、以下の特定の実施形態において説明するように、歩行パートのウィンドウ設定された部分を含み得る、又は、歩行パート全体を含み得る)。ストライド規則性が、歩行パートの自己相関度を解析することにより評価され得る。詳細には、上述したように得られた候補歩行パート(段階161)について、歩行パートの局所部分が、例えば、ウィンドウを歩行パートに適用することにより、解析のために選択される(段階163)。ウィンドウは、例えば、5秒という幅を有するが、他の幅が使用されてもよい。
【0120】
段階165において、歩行パートの局所部分に対応する、加速度測定値の局所部分の自己相関度が決定される。自己相関度は、正規化された加速度にわたって、又は、別個のx軸、y軸、若しくはz軸のいずれかにわたって、算出され得る。いくつかの実施形態において、自己相関度は、候補歩行パートのウィンドウ設定された部分に対応する加速度信号にわたって、自己共分散の不偏推定値を得ることにより算出される。
【0121】
次いで、段階167において、段階165において決定された自己相関度系列がフィルタリングされて、ストライドピークが識別される。
図12は、ユーザの胴体に配置された加速度計についての例示的な自己相関信号を示している。
図12において、左足及び右足からのステップが、次の3つのラベル付けたピークを有する類似する信号として出現している:零ラグにおける自己相関度(自己共分散)に対応するA
0、(1番目のピークとも呼ばれる)ステップピークに対応するA
step、及び、(2番目のピークとも呼ばれる)ストライドピークに対応するA
stride。周期−2型信号であれば、より大きなストライドピークを有するであろう。
【0122】
いくつかの実施形態において、段階167は、例えば0.16秒というウィンドウ幅を有する移動平均フィルタを使用して、ストライドピークを識別することを含む。この代表移動平均フィルタは、信号を平滑化して、ストライドピークA
strideをより信頼性高く識別するのに役立つ。なぜならば、フィルタリングされない自己相関信号は、しばしば、複数のピークを有するからである。
【0123】
フィルタリングされた自己相関度系列においてストライドピークを発見することができない場合(段階169)、これは、候補歩行パートの局所部分(例えば、ウィンドウ設定された部分)が、歩行に対応しないこと、又は、異常な(例えば、乱れた)歩行を含むことのいずれかを示唆する。したがって、候補歩行パートの局所部分が、ストライド規則性テストに通らなかったとして記録される(段階171)。
【0124】
次いで、例えば、信号に沿って、例えば0.1秒だけ候補歩行パート上でウィンドウをシフトする(段階173)ことにより、候補歩行パートの別の局所部分が解析され、この方法は、段階165に戻り、信号の新たなウィンドウ設定された部分について繰り返す。
【0125】
段階171において、候補歩行パートの局所部分は、ストライド規則性テストに通らなかったとして記録され得るが、この部分は、まだ破棄されないことに留意されたい。なぜならば、局所部分が、ストライド規則性テストに通らなかったとしても、信号のオーバーラップ部分(例えば、0.1秒だけシフトされるウィンドウの一部)が、ストライド規則性テストに通ることができる可能性があるからである。全ての局所部分(例えば、ウィンドウ設定された部分)がテストされると、候補歩行パートの任意の部分が破棄され得るかどうかについての決定がなされ得る。
【0126】
段階169において、ストライドピークが発見された場合、段階175において、(R. Moe-Nilssen及びJ. L. Helbostadによる"Estimation of gait cycle characteristics by trunk accelerometry" Journal of Biomechanics, vol. 37, no. 1, pp. 121-126, 2004に記載されているように、)A
stride/A
0により与えられる自己共分散比が算出される。この自己共分散比は、ストライド規則性を表すものである。
【0127】
次いで、(自己共分散比により与えられる)ストライド規則性が、閾値と比較される(段階177)。使用することができるデフォルトの最小ストライド規則性閾値は、0.5であり、これは、感度と精度との間の良好なトレードオフであることが見出されている。歩行検出の精度は、一般に、閾値を大きくすることにより、増大され得るが、閾値を大きくすることは、歩行検出の感度を低減させる。
【0128】
ストライド規則性を局所的に(例えば、候補歩行パートのウィンドウ設定された部分内で)妥当性検証することは、歩行中の可変のペースを許容し、上記方法に従うと、歩行は、各時点の間局所的に規則的である場合には、規則的であるとみなされる。局所的なペース(すなわち、ストライド規則性)が、ウィンドウ設定された(例えば、5秒の)部分内で大きくは変化しなかった場合、歩行パートの諸部分は、十分に規則的であるとみなされ得る。段階177において、部分についてのストライド規則性が、閾値以下であると判定された場合、その部分は、ストライド規則性に通らなかったとして記録される(段階171)。部分についてのストライド規則性が、閾値を超えると判定された場合、その部分は、歩行として妥当性検証され(段階179)、ウィンドウが、候補歩行パートに沿ってシフトされる(段階173)。
【0129】
候補歩行パートの評価にしたがって、パート(例えば、部分)が破棄される場合、これは、候補歩行パートが2つの別個の歩行パートに分割されることをもたらす。次いで、これらの新たな別個の歩行パートが、テストされて、(ブロック22に関して上述したように)これらが歩行パートであるとみなされる十分な継続時間を有するかどうかが判定され、十分な継続時間を有さない場合、これらの別個の歩行パートの一方又は両方が、同様に破棄され得る。
【0130】
上記ストライド規則性妥当性検証段階は、不規則的パターンを有する活動をフィルタリング除去するが、ユーザ4の心拍数及びランニング等の他のファクタ又は活動が、歩行に類似する規則性を有することがあり、これらのファクタ又は活動に実際に対応する歩行パートが、ストライド規則性妥当性検証に通ることがある。したがって、本発明の別の態様に従うと、これらの歩行パートを識別して除外することを目的とする妥当性検証テストが提供される。詳細には、前のステップ検出及び最初の妥当性検証段階(適用される場合)に通り、ユーザ4による歩行には対応しないタイプの活動は、一般に、歩行とは異なる動きの強さ(movement vigour)を有する。したがって、本発明のこの態様に従うと、歩行パートの動きの強さが算出され、動きの強さが、1以上の閾値又は許容可能範囲と比較され、1以上の閾値を満たさない又は許容可能範囲内に含まれない全ての歩行パートが破棄される。本発明のこの態様は、国際公開第2011/004322号に記載されている技術又は上述した改善された技術を使用して識別されたステップに適用され得る。
【0131】
一実施形態において、動きの強さ(本明細書において活動レベルとも呼ばれる)は、x軸、y軸、及びz軸の各々に沿った加速度の分散から、
活動レベル=10*log
10(var(acc
x)+var(acc
y)+var(acc
z)) (5)
を使用して算出され得る。
【0132】
この実施形態において、活動レベルが、許容可能範囲内に含まれない場合、歩行パートは破棄される。式(5)に従って算出される活動レベルに関する例示的な許容可能範囲は、[5.8,20.5]であるが、他の範囲が使用されてもよいことが理解されよう。
【0133】
いくつかの実施形態において、信号のエネルギーの尺度は、単に、x軸、y軸、及びz軸の各々に沿った加速度の分散の合計により与えられ得る。代替実施形態においては、上記で与えられる活動レベルの式の代わりに、加速度信号のエネルギーの他の尺度が使用されてもよい。
【0134】
活動レベル、又は信号のエネルギーの他の尺度は、候補歩行パートの全体又は候補歩行パートのウィンドウ設定された部分について、算出され得る(ウィンドウは、上述したストライド規則性の実施形態において使用されるウィンドウと同じサイズであってもよいし異なるサイズであってもよい)。
【0135】
上記ストライド規則性妥当性検証及び動きの強さの妥当性検証にしばしば通り、歩行であると必ずしもみなされるべきではない別のタイプの活動は、ユーザ4が階段を上って又は下って歩行しているときである。階段を上って又は下って歩行することは、水平な面上での歩行に類似する規則的な動きのパターン及び強さを有するが、多くの場合(例えば、ユーザ4の転倒リスクを判定するために、検出された歩行パートが解析されるべき場合)、階段歩行に対応する候補歩行パート又は候補歩行パートの部分は、破棄されるべきである。したがって、本発明のさらなる態様は、候補歩行パートが解析されて、候補歩行パートが階段歩行に対応するかどうかが判定されることを提供する。詳細には、気圧センサ12からの測定値が収集され使用されて、デバイス2の高さの変化が決定され、ユーザの階段上り歩行若しくは階段下り歩行(又は、スロープ上り歩行若しくはスロープ下り歩行)に整合する、デバイス2の高さの変化があった場合には、歩行パートが破棄され得る。本発明のこの態様は、国際公開第2011/004322号に記載されている技術又は上述した改善された技術を使用して識別されたステップに適用され得る。
【0136】
このさらなる態様に従った方法を示すフローチャートが、
図13に示されている。第1段階である段階201において、加速度測定値が得られている間に、気圧センサ12からの測定値が得られる。次いで、(任意的に、)気圧の短期変動の影響を平滑化するために、気圧測定値が、ローパスフィルタリングされる(段階203)。これは、例えば、Butterworthフィルタを使用して行うことができる。このフィルタのカットオフ周波数は、例えば、1/8Hzであり得る。
【0137】
段階205において、気圧測定値が処理されて、特定の候補歩行パートの間におけるデバイス2の高さの変化が決定される。段階205は、候補歩行パートに時間的に対応する、気圧測定値の部分を処理することを含む。気圧の変化は、高度又は高さの変化を示し得る。当業者は、気圧又は気圧の変化を、高度/高さの尺度又は高度/高さの尺度の変化に変換するための適切な技術/式を認識するであろうが、好ましい実施形態において、高さ又は高さの変化への気圧又は気圧の変化の変換は、必要とされない。なぜならば、気圧信号の変化は、高さの変化を反映するからである。
【0138】
ユーザにより装着されるデバイス2のコンテキストにおいて、短期時間期間にわたる高さの明らかな変化は、空気の乱れ(例えば、風、ドアの開放又は閉鎖等)に起因するものであり得、十分な継続時間の間続き、十分な大きさの気圧変化(したがって、高さ変化)だけが、階段歩行としてみなされる。
【0139】
したがって、段階205において、デバイス2の高さの実際の変化を示さない可能性が高い、気圧の短期変化をフィルタリング除去するために、フィルタが気圧信号に適用される。いくつかの実施形態において、移動平均(MA)フィルタ等の線形位相フィルタが使用される。しかしながら、気圧センサ12からの測定値は、短継続時間のピークを示すことがあるので、中央値フィルタ等の非線形フィルタの使用が好ましい。中央値フィルタについて2秒という半分のウィンドウサイズが好ましい。
【0140】
フィルタにより出力される信号は、(例えば、風、又は、ドアの開放若しくは閉鎖により引き起こされる)短期気圧変化を除いた長期高さを表す。何らかの時間期間Tにわたる気圧の(絶対)変化が、閾値と比較される(段階207)。例えば、この閾値は、3秒という時間期間Tにわたる0.1hPaという値を有することができる。何らかの時間期間Tにわたる気圧の(絶対)変化が、閾値以下である場合、歩行パートは、ユーザ4の階段上り歩行又は階段下り歩行に関連するとはみなされず、歩行パートは、歩行として妥当性検証される(段階209)。
【0141】
何らかの時間期間Tにわたる気圧の(絶対)変化が、閾値より大きい場合、歩行パートは、ユーザ4の階段上り歩行又は階段下り歩行に関連するとみなされ、歩行パート(又は、歩行パートのうち、気圧の変化が生じた部分)が破棄される(段階211)。いくつかの実施形態において、階段歩行であるとみなされる、候補歩行パートの領域又は部分は、事前準備として破棄されるその領域の前及び後に、1秒(又は、同様の時間スケール)というさらなる安全マージンを有し得る。なぜならば、ユーザ4は、階段に対する最初のステップの前に、歩みをわずかに変化させることがある、且つ/或いは、気圧の最初の変化ポイントは、上述した処理によりピックアップされないことがあるからである。
【0142】
本発明の上記態様のうちのいずれも、既存の歩行検出アルゴリズムの精度を改善するために、独立して又は組み合わせて、使用することができることが理解されよう。
【0143】
国際公開第2011/004322号におけるステップ/歩行検出アルゴリズムの性能の改善における本発明の上記態様の有効性が、以下の表1に示されている。国際公開第2011/004322号に記載されているアルゴリズムは、66.1%という感度及び98.2%という精度を有することが見出された(ここで、感度は、歩行として識別された、ユーザによる歩行のパーセンテージを表しており、精度は、検出の信頼性(すなわち、アルゴリズムが発見した歩行パートのうち、歩行検出がどれくらい正しかったか)を表している)。加速度測定値は、1日又は2日の間通常の日常活動を行った5人のユーザについて得られた。次いで、加速度測定値は、上述した本発明の態様により提供される変更を伴う、国際公開第2011/004322号に記載されているアルゴリズムに従って処理された。表1に示されるように、この変更は、感度を80.1%に増大させており、精度を99.9%に増大させている。精度は、最小ストライド規則性閾値を大きくすることにより、感度が低減する代わりに、さらに増大され得る。
【表1】
【0144】
処理ユニット8は、本明細書において、加速度測定値を処理して、ユーザ4が歩行しているときを識別するものとしてのみ、説明されているが、デバイス2又は活動モニタの実用的な実装において、処理ユニット8は、ユーザ4が、ランニング/ジョギングしているとき、ジャンプしているとき、立ち上がる/座る動きをしているとき(すなわち、座っている位置から立ち上がる動作/椅子に座る動作をしているとき)、階段を上って又は下って歩行しているとき、ベッドに入る/ベッドから出る動作をしているとき等を判定するためのアルゴリズムを実行することもできる。追加的又は代替的に、処理ユニット8は、加速度測定値を処理して、ユーザ4が転倒したかどうかを検出してもよい。
【0145】
したがって、既存の歩行検出アルゴリズムに対する、デバイスのユーザによる歩行を識別する際の増大した感度及び精度を提供するいくつかの改善が提供される。
【0146】
本発明が、図面及び上記記載において、詳細に図示及び説明されているが、そのような図示及び説明は、限定的なものではなく、例示的なものと考えられるべきである。本発明は、開示した実施形態に限定されるものではない。
【0147】
開示した実施形態に対する変形が、図面、本開示、及び請求項を検討することから、特許請求される発明を実施する際に、当業者により理解され、もたらされ得る。請求項において、「備える、含む、有する(comprising)」という用語は、他の要素又は段階を排除せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を排除しない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項中に記載された複数のアイテムの機能を満たしてもよい。所定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されるという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用され得ないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又は他のハードウェアの一部として提供される光記憶媒体又はソリッドステート媒体等の適切な媒体上に記憶/配布され得るが、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介して等、他の形で配布されることもある。請求項中のいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。