(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非ドープのシリカガラスからなる管状のシリカガラス層と、前記シリカガラス層の外周面を隙間なく囲うフッ素含有シリカガラス層と、を有する二重ガラス管を準備する二重ガラス管準備工程と、
前記二重ガラス管に内周面側からアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物を堆積及び拡散させるアルカリ拡散工程と、
前記アルカリ拡散工程の後、前記二重ガラス管を加熱して縮径させると共に中実化させてシリカガラスロッドを作製する中実化工程と、
を備えることを特徴とする光ファイバ用母材の製造方法。
前記2次外付け層形成工程の前の前記シリカガラスロッドの長手方向に垂直な断面において、前記シリカガラス層に由来する部位の断面積をs、前記フッ素含有シリカガラス層に由来する部位の断面積をSとする場合、
1<S/s<200
である
ことを特徴とする請求項5に記載の光ファイバ用母材の製造方法。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信システムにおいて光伝送距離の長距離化や光伝送速度の高速化を図るためには、光信号ノイズ比が高められなければない。そのため、光ファイバの伝送損失の低減が求められている。光ファイバの製造方法が高度に洗練されている現在では、光ファイバに含まれる不純物による伝送損失はほぼ限界まで低下していると考えられている。残る伝送損失の主な原因は、光ファイバを構成するガラスの構造や組成の揺らぎに伴う散乱損失である。これは光ファイバがガラスで構成されているが故に不可避なものである。
【0003】
上記のようなガラスの構造や組成の揺らぎに伴う散乱損失が低減され得る光ファイバとしては、アルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物が少量ドープされたシリカガラスでコアが構成されると共にフッ素がドープされたシリカガラスでクラッドが構成される光ファイバが知られている。以下、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物をアルカリ酸化物という場合がある。
【0004】
シリカガラスにアルカリ酸化物がドープされることによって、シリカガラスの軟化点が大きく低下する。すなわち、アルカリ酸化物がドープされていないシリカガラスと同じ温度で比較する場合、アルカリ酸化物がドープされたシリカガラスは粘度が低いため構造緩和が促進され易い。このため、アルカリ酸化物がドープされたシリカガラスがコアとなるように光ファイバ用母材を作製し、この光ファイバ用母材を溶融紡糸して光ファイバを製造する際、コアを構成するシリカガラスの構造的な揺らぎが速やかに低減される。その結果、伝送損失が低減され得る光ファイバを製造することができる。
【0005】
下記特許文献1には、シリカガラスにアルカリ酸化物をドープして光ファイバ用母材を製造する方法が開示されている。下記特許文献1において、シリカガラスにアルカリ酸化物をドープする方法の概要は下記の通りである。まず、純粋なシリカガラスからなるシリカガラス管を用意し、当該シリカガラス管を改良型化学気相成長(MCVD)法で用いられるガラス形成用旋盤に懸け、当該シリカガラス管の中空部にキャリアガスとして酸素を含む気体を流通させる。次に、アルカリ酸化物の原料であるアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の化合物(以下、アルカリ化合物という場合がある。)を固体状態でシリカガラス管のうちキャリアガスが流れる方向の上流側に配置する。次に、第1の加熱手段によって当該アルカリ化合物を融点以上の温度に加熱して蒸気圧にしたがって気化させると共に気化したアルカリ化合物をキャリアガスでシリカガラス管の他方の端部まで流通させる。次に、アルカリ化合物を配置した位置よりも下流側で、キャリアガスの上流側から下流側までシリカガラス管に対して相対的に移動する第2の加熱手段によって、アルカリ化合物が熱酸化反応によってアルカリ酸化物となる温度で加熱すると、当該アルカリ酸化物がシリカガラス管の内周面に堆積する。アルカリ酸化物が堆積した部位が第2の加熱手段によって更に加熱されることにより、アルカリ酸化物がシリカガラス管を構成するシリカガラス内に拡散する。このようにしてアルカリ酸化物がドープされたシリカガラス管を加熱して収縮及び中実化させることにより、アルカリ酸化物がドープされたシリカガラスロッドを得ることができる。
【0006】
上記のようにアルカリ酸化物がドープされたシリカガラスロッドは、光ファイバのコアとされる。したがって、このようなシリカガラスロッドの周囲にクラッドとなるガラスから成る層を形成することによって、光ファイバ用母材とすることができる。クラッドとなるガラスから成る層を形成する方法としては、例えば、スート法が考えられる。具体的には、上記シリカガラスロッドの外周面に多孔質のシリカガラススートを堆積させ、次いで堆積したシリカガラススートを加熱して焼結することにより透明なガラスとすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アルカリ酸化物がドープされたシリカガラスは融点が大幅に低下する。このため、上記従来の光ファイバ用母材の製造方法のように、アルカリ酸化物がドープされたシリカガラスロッドの外周面に堆積した多孔質のシリカガラススートを焼結する場合、熱によってシリカガラスロッドの剛性が低下し、シリカガラスロッドに意図しない変形が生じる場合があることが、上記特許文献2で指摘されており、このような熱による変形を「パドリング」と呼んでいる。このパドリングが生じると光ファイバ用母材の長手方向において外径が不均一になったり、アルカリ酸化物の濃度に偏りが生じたりして、所望の特性を示す光ファイバ用母材の製造歩留まりが低下する懸念がある。
【0009】
上記のように、光ファイバのコアとなる部位にアルカリ酸化物がドープされた光ファイバ用母材は、この光ファイバ用母材から得られる光ファイバの伝送損失を低減させ得るが、製造が困難である。
【0010】
そこで、本発明は、伝送損失が低減され得る光ファイバを容易に製造することができる光ファイバの製造方法及び当該光ファイバの製造方法に用いる光ファイバ用母材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の光ファイバ用母材の製造方法は、非ドープのシリカガラスからなる管状のシリカガラス層と、前記シリカガラス層の外周面を隙間なく囲うフッ素含有シリカガラス層と、を有する二重ガラス管を準備する二重ガラス管準備工程と、前記二重ガラス管に内周面側からアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物を堆積及び拡散させるアルカリ拡散工程と、前記アルカリ拡散工程の後、前記二重ガラス管を加熱して縮径させる共に中実化させてシリカガラスロッドを作製する中実化工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
ここで、「非ドープのシリカガラス」とは、シリカ以外の成分が意図的に添加(ドープ)されておらず、遷移金属などの不純物の濃度が光ファイバの伝送損失に大きな影響を与えない程度に十分に低いシリカガラスを意味する。市販の光ファイバ用シリカガラスや気相合成法により合成したシリカガラスには、その脱水工程で用いる含塩素脱水化合物に由来する少量の塩素が、伝送損失に影響を与えない程度に含まれる場合がある。ただし、これらのシリカガラスに含まれる塩素等は伝送損失に大きな影響を与えないため、これらのシリカガラスも非ドープのシリカガラスと見做される。
【0013】
上記光ファイバ用母材の製造方法では、二重ガラス管のうち内周面側の部位にはアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物がドープされ、外周面側の部位にはフッ素がドープされる。アルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物がドープされたシリカガラスは軟化点が低下する。また、フッ素がドープされたシリカガラスの軟化点も低下する。したがって、二重ガラス管の内周面側と外周面側との軟化点の差は小さくなる。このことから、二重ガラス管が中実化工程において加熱される際に、シリカガラスロッドの中心部となる部位にパドリングが生じることを抑制することができる。このようにしてパドリングが生じることを抑制しつつ中心部にアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物がドープされたシリカガラスロッドを容易に得ることができる。また、上記のようにこのシリカガラスロッドの外周面側にはフッ素がドープされているので、このシリカガラスロッドを線引きすることによって、アルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物がドープされたシリカガラスからなるコアを有すると共にフッ素がドープされたシリカガラスからなるクラッドを有する光ファイバを製造することができる。このような光ファイバは、コアを構成するシリカガラスの構造的な揺らぎが低減され易いため、上記のように伝送損失が低減され得る。したがって、本発明によれば、伝送損失が低減され得る光ファイバ用母材を製造することができる。
【0014】
また、上記光ファイバ用母材の製造方法の前記二重ガラス管準備工程は、前記シリカガラス層となるシリカガラス管を準備するシリカガラス管準備工程と、前記シリカガラス管の外周面上に前記フッ素含有シリカガラス層を形成する外付け層形成工程と、を有することが好ましい。
【0015】
外付け層形成工程では、例えば、スート法やジャケット法によってシリカガラス層の外周面にフッ素含有シリカガラス層を形成することができる。すなわち、スート法による場合は、シリカガラス層となるシリカガラス管の外周面にシリカガラススートを堆積させたのち、含フッ素化合物含有雰囲気下において焼結させることによって、シリカガラス層の外周面にフッ素含有シリカガラス層を形成することができる。また、ジャケット法による場合は、シリカガラス層となるシリカガラス管にフッ素がドープされたシリカガラス管を被せて融着させることによって、シリカガラス層の外周面にフッ素含有シリカガラス層を形成することができる。上記のように、フッ素がドープされたシリカガラスの軟化点は、非ドープのシリカガラスの軟化点よりも低い。したがって、非ドープのシリカガラスから成るシリカガラス層の外周面上に上記のようにフッ素含有シリカガラス層を形成する際、当該シリカガラス層が軟化することが抑制されるので、パドリングの発生を抑制することができる。
【0016】
上記のように、前記外付け層形成工程では、前記シリカガラス管の外周面上に、前記フッ素含有シリカガラス層となるフッ素含有シリカガラス管が被せられても良い。
【0017】
また、前記二重ガラス管準備工程は、前記フッ素含有シリカガラス層となるフッ素含有シリカガラス管を準備するフッ素含有シリカガラス管準備工程と、前記フッ素含有シリカガラス管の内周面上に前記シリカガラス層を形成する内付け層形成工程と、を有することが好ましい。
【0018】
このような方法であっても、非ドープのシリカガラスからなる管状のシリカガラス層と当該シリカガラス層の外周面を隙間なく囲うフッ素含有シリカガラス層とを有する二重ガラス管を得ることができる。
【0019】
また、上記光ファイバ用母材の製造方法は、前記シリカガラスロッドの外周面上にフッ素含有シリカガラス層を更に形成する2次外付け層形成工程を備えることが好ましい。
【0020】
このようにフッ素含有シリカガラス層を複数回に分けて形成することによって、フッ素含有シリカガラス層の厚さを所望の厚さとすることが容易になる。また、シリカガラスロッドの外周面側にはフッ素含有シリカガラス層が形成されているため、当該シリカガラスロッドの外周面側の部位の軟化点と2次外付け層形成工程において更に形成されるフッ素含有シリカガラス層の軟化点との差を小さくすることができる。このため、2次外付け層形成工程においてフッ素含有シリカガラス層が形成される際にシリカガラスロッドが軟化することが抑制され、パドリングの発生を抑制することができる。さらに、通常の光ファイバ用母材におけるドープ濃度の範囲では、フッ素がドープされたシリカガラスの軟化点はアルカリ酸化物がドープされたシリカガラスの軟化点よりも高い。よって、同じ温度で比較する場合、フッ素がドープされたシリカガラスはアルカリ酸化物がドープされたシリカガラスよりも剛性が高い。したがって、2次外付け層形成工程においてシリカガラスロッドの外周面上にフッ素含有シリカガラス層を更に形成する際、シリカガラスロッドの外周面側に既に形成されているフッ素含有シリカガラス層がシリカガラスロッドの剛性を確保する。このため、パドリングの発生を抑制することができる。
【0021】
また、上記2次外付け層形成工程を行う場合、前記2次外付け層形成工程の前の前記シリカガラスロッドの長手方向に垂直な断面において、前記シリカガラス層に由来する部位の断面積をs、前記フッ素含有シリカガラス層に由来する部位の断面積をSとすると、S/sの上限は200未満であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、70以下であることが更に好ましい。また、S/sの下限は1より大きいことが好ましく、5.3以上であることがより好ましく、8.0以上であることが更に好ましい。
【0022】
標準的なシングルモード光ファイバの外径は125μm、コア径は9μm程度であるため、長手方向に垂直な断面において、コアの断面積とクラッドの断面積との比は、1:200程度である。したがって、S/s<200である場合に上記2次外付け層形成工程を行うことが好ましい。また、2次外付け層形成工程において形成されるフッ素含有シリカガラス層の質量がシリカガラスロッドの質量に対して数倍程度とされることにより、当該フッ素含有シリカガラス層を形成する精度が高められる。したがって、光ファイバのコアの断面積とクラッドの断面積との比が1:200とされる場合、S/sの上限は100以下であることがより好ましく、70以下程度であることが更に好ましい。すなわち、S/s≦100であることがより好ましく、S/s≦70であることが更に好ましい。また、2次外付け層形成工程においてパドリングを抑制し易くする観点からは、2次外付け層形成工程においてフッ素含有シリカガラス層が形成されるシリカガラスロッドの体積のうち少なくとも半分以上はフッ素含有シリカガラス層であることが好ましい。すなわち、1<S/sであることが好ましい。また、非ドープのシリカガラスに由来する部位の外径をd、フッ素含有シリカガラス層に由来する部位の外径をDとすると、D/dが概ね2.5から3.0よりも大きくなる条件で一層目のフッ素含有シリカガラス層を形成した後に、追加のフッ素含有シリカガラス層を形成することが好ましい。D/dが概ね2.5から3.0よりも大きくなる条件で一層目のフッ素含有シリカガラス層が形成されることによって、二層目以降のフッ素含有シリカガラス層がOH基を含む場合であっても、当該OH基のコアへの拡散を抑制し得る。したがって、二層目以降のフッ素含有シリカガラス層に起因する伝送損失を抑制し得る。よって、D/dは、2.5以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましい。すなわち、5.3≦S/sであることがより好ましく、8.0≦S/sであることが更に好ましい。
【0023】
また、本発明の光ファイバの製造方法は、上記光ファイバ用母材の製造方法で光ファイバ用母材を作製する工程と、前記光ファイバ用母材を線引きする線引工程と、を備えることを特徴とする。
【0024】
上記のように、上記光ファイバ用母材の製造方法によれば、パドリングが生じることを抑制しつつ、中心部はアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物がドープされたシリカガラスからなり、外周面側はフッ素がドープされたシリカガラスからなる光ファイバ用母材を容易に得ることができる。この光ファイバ用母材を線引きすることによって、アルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物がドープされたシリカガラスからなるコアを有すると共にフッ素がドープされたシリカガラスからなるクラッドを有する光ファイバを製造することができる。このような光ファイバは、上記のように伝送損失が低減され得る。したがって、本発明によれば、伝送損失が低減され得る光ファイバを容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、伝送損失が低減され得る光ファイバを容易に製造することができる光ファイバの製造方法、及び、当該光ファイバの製造方法に用いる光ファイバ用母材の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る光ファイバ用母材の製造方法、及び、これを用いた光ファイバの製造方法の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る光ファイバを示す断面図である。
図1に示すように本実施形態の光ファイバ1は、コア11と、コア11の外周面を隙間なく囲むクラッド12と、クラッド12の外周面を被覆する内側保護層13と、内側保護層13の外周面を被覆する外側保護層14と、を備える。コア11は、アルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物がドープされたシリカガラスから成り、クラッド12は、フッ素がドープされたシリカガラスから成る。クラッド12の非ドープのシリカガラスに対する比屈折率差は、例えば−0.5%以上、−0.2%以下程度とされ、光ファイバ1は、例えばG.652準拠のシングルモード光ファイバとされる。
【0029】
次に、光ファイバ1の製造方法について説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図2は、本実施形態に係る光ファイバの製造方法の工程を示すフローチャートである。
図2に示す光ファイバの製造方法は、シリカガラス管準備工程P11と外付け層形成工程P12とを有する二重ガラス管準備工程P1、アルカリ拡散工程P2、中実化工程P3、2次外付け層形成工程P4、及び線引工程P5を備える。
【0031】
<二重ガラス管準備工程P1>
図3は、二重ガラス管準備工程P1で準備される二重ガラス管20を示す斜視図である。二重ガラス管準備工程P1は、中心に中空部20hを有する管状のシリカガラス層21とシリカガラス層21の外周面を隙間なく囲うフッ素含有シリカガラス層22とを備える二重ガラス管20を準備する工程である。シリカガラス層21はドーパントが添加されないシリカガラスからなり、フッ素含有シリカガラス層22はフッ素がドープされたシリカガラスからなる。
【0032】
本実施形態の二重ガラス管準備工程P1は、シリカガラス管準備工程P11と外付け層形成工程P12とを有する。シリカガラス管準備工程P11は、シリカガラス層21となるシリカガラス管を準備する工程である。外付け層形成工程P12は、シリカガラス管準備工程P11において準備されるシリカガラス管の外周面側にフッ素含有シリカガラス層22を形成する工程である。外付け層形成工程P12では、例えば、スート法によってシリカガラス管の外周面にフッ素含有シリカガラス層22を形成することができる。すなわち、シリカガラス管の外周面にシリカガラススートを堆積させたのち、含フッ素化合物含有雰囲気下において焼結させることによって、シリカガラス層21の外周面にフッ素含有シリカガラス層22が形成された二重ガラス管20とすることができる。
【0033】
図4はスート法による外付け層形成工程P12の様子を示す図である。外付け層形成工程P12は、例えば、Outside vapor deposition(OVD)法により行い、シリカガラス層21となるシリカガラス管の外周面にフッ素含有シリカガラス層22となるシリカガラススートを堆積する。まず、シリカガラス管を不図示の旋盤のチャックに固定して軸中心に回転させる。そして、
図4に示すようにシリカガラス管を回転させながら、フッ素含有シリカガラス層22となるシリカガラススートを堆積する。なお、
図4では、シリカガラス管にフッ素含有シリカガラス層22となるシリカガラススートが未だ堆積されていない状態を示している。堆積するシリカガラススートは、流量が制御されたキャリアガスにより、気化されたSiCl
4を酸水素バーナ25の火炎中に導入してSiCl
4からSiO
2(シリカガラス)とすると共に、酸水素バーナ25をシリカガラス管の長手方向に複数回往復移動させながら、SiO
2のシリカガラススートをシリカガラス管の外周面を被覆するように堆積する。こうして必要な回数だけ酸水素バーナ25を移動させて、
図5に示すようにシリカガラス層21の外周面上にシリカガラススート22aが必要な量堆積された状態となる。
【0034】
上記のようにシリカガラススート22aが堆積した後、必要に応じて脱水を行う。脱水は、ヒータが設けられ、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等のガスが充填された炉内で所定時間エージングされることにより行われる。さらに脱水剤として、塩素(Cl
2)、塩化チオニル(SOCl
2)等の含塩素化合物を共存させてもよい。
【0035】
次に、濃度を制御して四フッ化ケイ素(SiF
4)、四フッ化メタン(CF
4)、六フッ化エタン(C
2F
6)などの含フッ素化合物を炉内に導入し、炉内の温度を更に上げてシリカガラススート22aが透明なガラス体となるまで焼結させることによって、フッ素含有シリカガラス層22が形成される。このとき用いる炉は上記の脱水に用いる炉であっても良く、上記脱水に用いる炉と異なる炉であっても良い。ただし、通常上記の脱水工程に連続して行うことで、シリカガラススート22aへの水分の再吸着を抑制することができ、低含水量のフッ素含有シリカガラス層22とすることができる。
【0036】
フッ素がドープされたシリカガラスの軟化点は、非ドープのシリカガラスの軟化点よりも低い。したがって、フッ素含有シリカガラス層22は、非ドープのシリカガラスの軟化点よりも低い温度で形成することができる。このため、非ドープのシリカガラスから成るシリカガラス層21の外周面上に上記のようにフッ素含有シリカガラス層22を形成する際、シリカガラス層21が軟化することが抑制されるので、パドリングの発生を抑制することができる。
【0037】
<アルカリ拡散工程P2>
アルカリ拡散工程P2は、アルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物を二重ガラス管20に内周面側から堆積及び拡散させる工程である。アルカリ拡散工程P2は、二重ガラス管20が改良型化学気相成長(MCVD)法に用いられるガラス形成用旋盤に取り付けられて行われる。
図6はアルカリ拡散工程P2の様子を示す図である。
【0038】
まず、
図6に示すように、二重ガラス管20の一方の端部において、内側に向かって突出する環状の凸部20aを、二重ガラス管20の長手方向に沿って2つ形成する。二重ガラス管20の中空部20hにおいて、2つの凸部20aの間にアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の化合物30を配置する。本実施形態では、化合物30として塩化カリウム(KCl)を用いる。
【0039】
次に、二重ガラス管20を軸中心に回転させながら、二重ガラス管20の一方の端部から他方の端部に向けてキャリアガス(CG)を流通させる。キャリアガス(CG)としては、例えば、室温、あるいは80℃から120℃程度の温度に加熱された乾燥酸素を含む気体を用いることができる。また、第1の加熱手段である酸水素バーナ31によって、化合物30を融解させる。例えば、化合物30を780℃程度に加熱する。このように化合物30を融解させたまま乾燥空気を中空部20hに流通させることによって、化合物30を乾燥させる。次に、化合物30を一旦冷却させ、化合物30の蒸気の発生を抑制する。
【0040】
次に、上記と同様に加熱されたキャリアガス(CG)を流通させながら、再度、酸水素バーナ31によって化合物30を780℃から900℃程度の温度で加熱して融解させ、蒸気圧に従って化合物30の蒸気を発生させる。このようにして発生する化合物30の蒸気は、キャリアガス(CG)により冷却されて凝結し、微粒子状の固体となり、キャリアガス(CG)により中空部20h内でエアロゾルとして搬送される。化合物30の微粒子の搬送が定常状態となった後、凸部20aよりも他方の端部側において、第2の加熱手段である酸水素バーナ32をキャリアガス(CG)の上流側から下流側へ二重ガラス管20に対して相対的に所定の速度(例えば、およそ100mm/min)で移動させつつ、二重ガラス管20の外表面を1100℃から1850℃程度のある温度に加熱する。この段階において、化合物30の微粒子は、キャリアガス(CG)に含まれる酸素によって熱酸化され、酸化カリウム(K
2O)として二重ガラス管20の内周面に堆積されると同時にシリカガラス層21の内部に拡散する。この工程は、シリカガラス層21にドープされたカリウム濃度が所望の値となるまで繰り返し行うことができる。その後、酸水素バーナ31による加熱を停止し、化合物30の蒸気の発生を停止する。
【0041】
<中実化工程P3>
中実化工程P3は、上記アルカリ拡散工程P2の後、二重ガラス管20を加熱して縮径すると共に中実化してシリカガラスロッドを得る工程である。
図7は中実化工程P3の様子を示す図である。また、
図8は中実化工程P3を経て得られるシリカガラスロッド40を示す斜視図である。
【0042】
図7に示すように、二重ガラス管20を軸中心に回転させながら外周面側から例えば酸水素バーナ33によって2000℃程度に加熱することによって、二重ガラス管20を縮径すると共に中実化することができる。酸水素バーナ33を二重ガラス管20の長手方向に沿って往復移動させながら二重ガラス管20を加熱することにより、二重ガラス管20の全体を徐々に縮径させて中実化する。このようにしてシリカガラス層21由来の母材コア部11Pと、フッ素含有シリカガラス層22由来で後にクラッド12の一部となる部位23と、を有するシリカガラスロッド40が得られる。すなわち、シリカガラスロッド40は、中心部はアルカリ酸化物がドープされたシリカガラスからなり、外周面側はフッ素がドープされたシリカガラスからなる。
【0043】
なお、上記特許文献1にも記載されている通り、中実化工程P3では、二重ガラス管20を中実化する前に、二重ガラス管20の内周面側をエッチングすることが好ましい。アルカリ拡散工程P2で用いる化合物30は遷移金属等の不純物を含む場合があるが、アルカリ酸化物がシリカガラス層21の内部深くまで拡散するのに対し、当該不純物はアルカリ酸化物よりもシリカガラス層21内を拡散し難いため、二重ガラス管20の内周面側に残留しやすい傾向にある。したがって、二重ガラス管20の内周面側をエッチングすることによって、当該不純物を取り除き得る。
【0044】
<2次外付け層形成工程P4>
2次外付け層形成工程P4は、中実化工程P3を経て得られるシリカガラスロッド40の外周面上にフッ素含有シリカガラス層を更に形成する工程である。2次外付け層形成工程P4は、上記外付け層形成工程P12と同様とすることができる。したがって、2次外付け層形成工程P4では、例えばスート法によってフッ素含有シリカガラス層を形成することができる。
【0045】
図9はスート法による2次外付け層形成工程P4の様子を示す図である。2次外付け層形成工程P4は、例えば、OVD法により行い、シリカガラスロッド40の外周面にフッ素含有シリカガラス層となるシリカガラススートを堆積する。まず、シリカガラスロッド40を不図示の旋盤のチャックに固定して軸中心に回転させる。そして、
図9に示すようにシリカガラスロッド40を回転させながら、フッ素含有シリカガラス層となるシリカガラススートを堆積する。堆積するシリカガラススートは、流量が制御されたキャリアガスにより、気化されたSiCl
4を酸水素バーナ34の火炎中に導入してSiCl
4からSiO
2(シリカガラス)とすると共に、酸水素バーナ34をシリカガラスロッド40の長手方向に複数回往復移動させながら、SiO
2のシリカガラススートをシリカガラスロッド40の外周面を被覆するように堆積する。こうして必要な回数だけ酸水素バーナ34を移動させて、
図10に示すようにシリカガラスロッド40の外周面上にシリカガラススート24aが必要な量堆積された状態となる。上記のようにシリカガラススート24aが堆積した後、必要に応じて脱水を行う。脱水は、ヒータが設けられ、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等のガスが充填された炉内で所定時間エージングされることにより行われる。さらに脱水剤として、塩素(Cl
2)、塩化チオニル(SOCl
2)等の含塩素化合物を共存させてもよい。次に、濃度を制御して四フッ化ケイ素(SiF
4)、四フッ化メタン(CF
4)、六フッ化エタン(C
2F
6)などの含フッ素化合物を炉内に導入し、炉内の温度を更に上げてシリカガラススート24aが透明なガラス体となるまで焼結させることによって、フッ素含有シリカガラス層が形成される。ここで形成されるフッ素含有シリカガラス層は上記フッ素含有シリカガラス層22由来の部位23と一体となる。このようにして、
図11に示すように、シリカガラス層21由来の母材コア部11Pとフッ素含有シリカガラス層由来の母材クラッド部12Pとを有する光ファイバ用母材1Pとなる。光ファイバ用母材1Pにおいて、フッ素含有シリカガラス層由来の母材クラッド部12Pは、上記フッ素含有シリカガラス層22由来の部位23と、シリカガラススート24aが透明ガラス体となった部分からなるが、必要な光ファイバの特性に合わせて、これらに含まれるフッ素の濃度は同じでもよいし、異なってもよい。
【0046】
<線引工程P5>
図12は、線引工程P5の様子を示す図である。まず、本工程を行う準備段階として、上記工程により光ファイバ用母材1Pを紡糸炉110に設置する。
【0047】
次に、紡糸炉110の加熱部111を発熱させて、光ファイバ用母材1Pを加熱する。このとき光ファイバ用母材1Pの下端は、例えば2000℃に加熱され溶融状態となる。そして、光ファイバ用母材1Pからガラスが溶融して、ガラスが線引きされる。そして、線引きされた溶融状態のガラスは、紡糸炉110から出ると、すぐに固化して、母材コア部11Pがコア11となり、母材クラッド部12Pがクラッド12となることで、コア11とクラッド12とから構成される光ファイバ素線となる。その後、この光ファイバ素線は、冷却装置120を通過して、適切な温度まで冷却される。冷却装置120に入る際、光ファイバ素線の温度は、例えば1800℃程度であるが、冷却装置120を出る際には、光ファイバ素線の温度は、例えば40℃〜50℃となる。
【0048】
冷却装置120から出た光ファイバ素線は、内側保護層13となる紫外線硬化性樹脂が入ったコーティング装置131を通過し、この紫外線硬化性樹脂で被覆される。更に紫外線照射装置132を通過し、紫外線が照射されることで、紫外線硬化性樹脂が硬化して内側保護層13が形成される。次に内側保護層13で被覆された光ファイバは、外側保護層14となる紫外線硬化性樹脂が入ったコーティング装置133を通過し、この紫外線硬化性樹脂で被覆される。更に紫外線照射装置134を通過し、紫外線が照射されることで、紫外線硬化性樹脂が硬化して外側保護層14が形成され、
図1に示す光ファイバ1となる。また、内側保護層13となる紫外線硬化性樹脂をコーティングしたのち、紫外線照射装置を通過させず、引き続き外側保護層14となる紫外線硬化性樹脂をコーティングしたのち、紫外線照射装置を通過し、紫外線が照射されることで、二つの紫外線硬化性樹脂を一度に硬化させてもよいし、内側保護層13となる紫外線硬化性樹脂と外側保護層14となる紫外線硬化性樹脂を一つのコーティング装置において一括でコーティングしたのち、紫外線照射装置を通過し、紫外線が照射されることで、二つの紫外線硬化性樹脂を一度に硬化させてもよい。
【0049】
そして、光ファイバ1は、ターンプーリー141により方向が変換され、リール142により巻取られる。
【0050】
こうして
図1に示す光ファイバ1が製造される。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバ用母材1Pの製造方法では、二重ガラス管20のうち内周面側の部位にはアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物がドープされ、外周面側の部位にはフッ素がドープされる。アルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物がドープされたシリカガラスは軟化点が低下する。また、フッ素がドープされたシリカガラスの軟化点も低下する。したがって、二重ガラス管20の内周面側と外周面側との軟化点の差は小さくなる。このことから、二重ガラス管20が中実化工程P3において加熱される際に、シリカガラスロッド40の中心部となる部位にパドリングが生じることを抑制することができる。このようにしてパドリングが生じることを抑制しつつ中心部にアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物がドープされたシリカガラスロッド40を容易に得ることができる。
【0052】
また、本実施形態では、シリカガラスロッド40の外周面上にフッ素含有シリカガラス層を更に形成する2次外付け層形成工程P4を備えている。このようにフッ素含有シリカガラス層を複数回に分けて形成することによって、フッ素含有シリカガラス層の厚さを所望の厚さとすることが容易になる。また、シリカガラスロッド40の外周面側にはフッ素含有シリカガラス層22が形成されているため、当該シリカガラスロッド40の外周面側の部位の軟化点と2次外付け層形成工程P4において更に形成されるフッ素含有シリカガラス層の軟化点との差を小さくすることができる。このため、2次外付け層形成工程P4においてフッ素含有シリカガラス層が形成される際にシリカガラスロッド40が軟化することが抑制され、パドリングの発生を抑制することができる。さらに、通常の光ファイバ用母材におけるドープ濃度の範囲では、フッ素がドープされたシリカガラスの軟化点はアルカリ酸化物がドープされたシリカガラスの軟化点よりも高い。よって、同じ温度で比較する場合、フッ素がドープされたシリカガラスはアルカリ酸化物がドープされたシリカガラスよりも剛性が高い。したがって、外周面側にフッ素含有シリカガラス層を有するシリカガラスロッド40の外周面上にフッ素含有シリカガラス層を更に形成する際、シリカガラスロッド40の外周面側に既に形成されているフッ素含有シリカガラス層がシリカガラスロッド40の剛性を確保する。このため、パドリングの発生を抑制することができる。
【0053】
また、上記2次外付け層形成工程P4を行う場合、シリカガラスロッド40の長手方向に垂直な断面において、シリカガラス層21に由来する部位(母材コア部11P)の断面積をs、フッ素含有シリカガラス層22に由来する部位23の断面積をSとすると、S/sの上限は200未満であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、70以下であることが更に好ましい。また、S/sの下限は1より大きいことが好ましく、5.3以上であることがより好ましく、8.0以上であることが更に好ましい。
【0054】
標準的なシングルモード光ファイバの外径は125μm、コア径は9μm程度であるため、長手方向に垂直な断面において、コアの面積とクラッドの面積との比は、およそ1:200程度である。したがって、S/s<200である場合に上記2次外付け層形成工程P4を行うことが好ましい。また、2次外付け層形成工程P4において形成されるフッ素含有シリカガラス層の質量がシリカガラスロッド40の質量に対して数倍程度とされることにより、当該フッ素含有シリカガラス層が形成される精度を高めることができる。したがって、光ファイバ1のコア11の面積とクラッド12の面積との比が1:200とされる場合、S/sの上限は100以下であることが好ましく、70以下であることがより好ましい。すなわち、S/s≦100であることが好ましく、S/s≦70であることが更に好ましい。また、2次外付け層形成工程P4においてパドリングを抑制し易くする観点からは、シリカガラスロッド40の体積のうち半分以上はフッ素含有シリカガラス層22由来の部位23であることが好ましい。すなわち、1<S/sであることが好ましい。また、非ドープのシリカガラスに由来する部位(母材コア部11P)の外径をd、フッ素含有シリカガラス層22に由来する部位23の外径をDとすると、D/dが概ね2.5から3.0よりも大きくなる条件で一層目のフッ素含有シリカガラス層22を形成した後に、2次外付け層形成工程P4において追加のフッ素含有シリカガラス層を形成することが好ましい。D/dが概ね2.5から3.0よりも大きくなる条件で一層目のフッ素含有シリカガラス層22が形成されることによって、二層目以降のフッ素含有シリカガラス層がOH基を含む場合であっても、当該OH基のコア11への浸透を抑制し得る。したがって、二層目以降のフッ素含有シリカガラス層に起因する伝送損失を抑制し得る。また、中実化工程P3が上記のように酸水素バーナ33を用いて行われる場合、火炎中で生成された水の一部がフッ素含有シリカガラス層22に溶解する場合がある。しかし、D/dが概ね2.5から3.0よりも大きくされることによって、上記水に起因するOH基がコア11まで浸透することが抑制され得る。よって、D/dは、2.5以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましい。すなわち、5.3≦S/sであることが好ましく、8.0≦S/sであることがより好ましい。
【0055】
上記のように、上記光ファイバ用母材1Pの製造方法によれば、パドリングが生じることを抑制しつつ、中心部はアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物がドープされたシリカガラスからなり、外周面側はフッ素がドープされたシリカガラスからなる光ファイバ用母材を容易に得ることができる。この光ファイバ用母材を線引きすることによって、アルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物がドープされたシリカガラスからなるコアを有すると共にフッ素がドープされたシリカガラスからなるクラッドを有する光ファイバを製造することができる。このような光ファイバは、コアを構成するシリカガラスの構造的な揺らぎが低減され易いため、上記のように伝送損失が低減され得る。したがって、伝送損失が低減され得る光ファイバを容易に製造することができる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について以下に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0057】
図13は、本発明の第2実施形態に係る光ファイバの製造方法の工程を示すフローチャートである。本実施形態では、二重ガラス管準備工程P1は、フッ素含有シリカガラス管準備工程P13、予備乾燥工程P14、及び内付け層形成工程P15を有する。
【0058】
フッ素含有シリカガラス管準備工程P13は、フッ素含有シリカガラス層22となるフッ素含有シリカガラス管22Pを準備する工程である。このようなフッ素含有シリカガラス管22Pとしては、例えば、Heraeus社製のSuprasil F320(Suprasilは登録商標、外径:30mm、厚さ:2.0mm、シリカガラスに対する比屈折率差:−0.31%、フッ素濃度:約1wt%)を用いることができる。
【0059】
次に、本実施形態では、アルカリ拡散工程P2の準備として予備乾燥工程P14を行う。まず、フッ素含有シリカガラス管準備工程P13で準備されたフッ素含有シリカガラス管22Pの両端のそれぞれにダミーガラス管50を溶着して一体のガラス管とする。
図14は、フッ素含有シリカガラス管22Pの両端にダミーガラス管50を接続した様子を示す斜視図である。このようなダミーガラス管50としては、例えば、信越石英社製の実質的に純粋なシリカガラス管であるSuprasil F300(Suprasilは登録商標、外径:30mm、厚さ:2.0mm)を用いることができる。
【0060】
図15は、予備乾燥工程P14の様子を示す図である。上記のようにフッ素含有シリカガラス管22Pにダミーガラス管50を溶着させた後、改良型化学気相成長(MCVD)に用いられる不図示のガラス形成用旋盤のチャックにダミーガラス管50を固定する。その後、一方のダミーガラス管50に2つの環状の凸部20aを形成し、これら2つの凸部20aの間に化合物30を配置する。本実施形態では、第1実施形態と同様に、化合物30として塩化カリウム(KCl)を用いる。次に、化合物30の予備乾燥を行う。ダミーガラス管50及びフッ素含有シリカガラス管22Pを軸中心に回転させながら、ダミーガラス管50の中空部とフッ素含有シリカガラス管22Pの中空部とからなる中空部22hに酸素等のキャリアガス(CG)を流通させ、化合物30を酸水素バーナ31で加熱する。このように化合物30を酸水素バーナ31で加熱し、加熱溶融した状態で化合物30を30分間程放置することで化合物30を乾燥させる。その後、酸水素バーナ31による加熱を停止し、化合物30の蒸気の発生を停止する。
【0061】
本実施形態では、上記予備乾燥工程P14を行った後、内付け層形成工程P15を行う。内付け層形成工程P15は、フッ素含有シリカガラス管準備工程P13において準備されるフッ素含有シリカガラス管22Pの内周面上にシリカガラス層21を形成する工程である。
【0062】
内付け層形成工程P15では、キャリアガス(CG)である酸素(O
2)と共に気化されたSiCl
4を中空部22hに流通させ、フッ素含有シリカガラス管22Pを軸中心に回転させながら酸水素バーナ32によって加熱する。この加熱は、フッ素含有シリカガラス管22Pの長手方向に沿って酸水素バーナ32を相対的に往復移動させながら、SiCl
4から生成されるシリカガラスよって形成されるシリカガラス層が所望の厚さとなるまで行う。このときの加熱温度は、例えば1600℃程度とすることができる。このようにして、フッ素含有シリカガラス管22Pの内周面に非ドープのシリカガラスからなる層を堆積させることができる。
【0063】
上記のように、二重ガラス管20は、フッ素がドープされたフッ素含有シリカガラス管22Pの内周面上に非ドープのシリカガラスからなる層を形成することによっても得られる。その後、上記第1実施形態と同様にアルカリ拡散工程P2及び中実化工程P3を行って、
図8に示すシリカガラスロッド40を得ることができる。その後、上記第1実施形態と同様に2次外付け層形成工程P4を行って光ファイバ用母材1Pを製造し、線引工程P5を行って光ファイバ1を製造することができる。
【0064】
図16は、シリカガラスロッド40のうち非ドープのシリカガラスに由来する部位(母材コア部11P)の外径dとフッ素含有シリカガラス層22に由来する部位23の外径Dとの比(D/d)に対する伝送損失の関係を示すグラフである。この伝送損失は、光ファイバ1のコア11に波長1383nmの光を伝搬させたときの損失である。
図16からわかるように、D/dが大きくなるにしたがって伝送損失が低下する。このことから、D/dが大きくなるにしたがって、コア11における水酸基の含有量が少なくなり、水酸基による光の吸収が抑制されていると考えられる。D/dが2.5を超えると伝送損失が0.4dB/kmを下回り、G.652.Dに準拠する低含水量の光ファイバとすることができる。さらに、D/dが3.0を超えるとより低含水量の光ファイバとなり、伝送損失が0.32dB/kmでほぼ一定となる。すなわち、上記第1実施形態で説明したように、5.3≦S/sであることが好ましく、8.0≦S/sであることがより好ましい。
【0065】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では2次外付け層形成工程P4を備える場合を例に挙げて説明したが、2次外付け層形成工程P4は必須の工程でない。例えば、外付け層形成工程P12において十分な厚さのフッ素含有シリカガラス層を形成しても良い。また、2次外付け層形成工程P4が複数回行われることによって、クラッド12が上記実施形態よりも多くの工程に分けて形成されても良い。
【0066】
また、上記第1実施形態では、二重ガラス管20の一方の端部に2つの環状の凸部20aする例を挙げて説明したが、第1実施形態でも第2実施形態と同様に、二重ガラス管20の端部にダミーガラス管を接続し、当該ダミーガラス管に2つの環状の凸部20aが形成されても良い。また、第2実施形態において、ダミーガラス管50を用いずに、第1実施形態と同様に二重ガラス管20の一方の端部に2つの環状の凸部20aが形成されても良い。
【0067】
また、上記第2実施形態では、アルカリ拡散工程P2に先立って予備乾燥工程P14を行う例を挙げて説明したが、第2実施形態でも第1実施形態と同様に、アルカリ拡散工程P2の一連の工程として予備乾燥工程P14を行っても良い。
【0068】
また、上記実施形態では化合物30として塩化カリウムを例に挙げたが、化合物30はこれに限定されない。化合物30としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属や、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属のハロゲン化物(塩化物、臭化物、フッ化物、ヨウ化物)、硫化物、炭酸塩、炭酸水素塩などを用いることができる。原料としていずれを採用するかの観点は、それらの融点、各温度における蒸気圧、蒸気の熱容量などの物質固有の物性により適宜選択される。なお、水酸化物、水素化物、有機酸の塩なども使用することが可能であるが、これらの化合物はOH基生成の原因となる水素を分子内に水素を含んでいるため、これらの化合物を用いる場合は追加の脱水処理を施すことが好ましい。
【0069】
また、上記第1実施形態における外付け層形成工程P12、および第1ならびに第2実施形態における2次外付け層形成工程P4ではフッ素含有シリカガラス層をスート法によって形成する例を挙げて説明したが、フッ素含有シリカガラス層の形成方法はこれに限定されない。例えばジャケット法によってもフッ素含有シリカガラス層を形成することができる。すなわち、フッ素がドープされたフッ素含有シリカガラス管を、シリカガラス層21となるシリカガラス管あるいはシリカガラスロッド40に被せて融着させることによってもフッ素含有シリカガラス層を形成することができる。
【0070】
また、上記実施形態では加熱手段として酸水素バーナを用いる場合を例に挙げて説明したが、加熱手段は電気炉やプラズマ加熱などであっても良い。