(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
押圧機構により中空部品の開口部に押し込まれることにより先端部が上記開口部に気密に装着され、引っ張られることにより上記開口部から離間させられる気密栓において、上記気密栓の基部端が上記押圧機構の基盤に位置規制部材により移動可能に支持されていると共に、上記気密栓の基部端の上記押圧機構の基盤に接触する接触部分が上記先端部と同軸の円形平面又は球面であり、接触部分が円形平面である場合はその円形平面の直径Wが気密栓の全長Lの0.12倍より大きく0.2倍より小さく、接触部分が球面である場合はその球面の曲率半径Rが気密栓の全長Lより大きいことを特徴とする、気密栓。
上記気密栓がハウジングと、該ハウジングによって保持されているシリンダと、該シリンダ内で軸方向に移動可能なピストンと、該ピストンの先端とシリンダの先端の間に嵌め込まれたOリングとを備え、ピストンが作動流体の作用により移動可能で、該ピストンが移動してピストンの先端がシリンダ側にOリングを押圧すると、Oリングは軸方向に潰され半径方向に膨大することを特徴とする、請求項1に記載の気密栓。
【背景技術】
【0002】
フューエルデリバリパイプは内燃機関のシリンダヘッドに取り付けるインジェクタに燃料を送る金属配管であって、一つの燃料注入口と通常は複数のインジェクタカップを備えている。使用時には、インジェクタカップにインジェクタが差し込まれる。複数のインジェクタカップは、フューエルデリバリパイプのパイプ本体にブレージング等によって取り付けられて製造される。また、フューエルデリバリパイプは、製造後出荷前に全数が気密検査を経て出荷される。
【0003】
複数のインジェクタカップを備えるフューエルデリバリパイプの出荷前の気密検査を行う際に、例えば、フューエルデリバリパイプの燃料供給口を気密に閉塞し、複数のインジェクタカップの中の一つを除くすべてのインジェクタカップを気密栓で閉塞し、残りの一つのインジェクタカップは、検査流体をフューエルデリバリパイプ内部に流すため、流体通路を内部に有する検査流体導入用気密栓にて閉塞し、その状態で検査流体をフューエルデリバリパイプに圧送した後、内部圧力の経時変化等を測定して気密性を検査することが行われている。
【0004】
特許文献1に、シリンダヘッドにおけるインジェクタの取付孔のリークをテストする装置であって、上記取付孔の開口部周縁を閉塞する環状のパッドと、該パッドの中心に配置されインジェクタの噴射孔を閉塞するロッドと、該パッドとロッドとの間から圧縮エアをインジェクタ側に供給するエア供給通路とを具え、この供給された圧縮エアのリークをエアリークテスタで所定の設定圧と比較して検出するインジェクタ取付部のリークテスト装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2に、開口端から適宜距離内部に縮径部を有する管体の前記開口と、該開口に挿嵌する装着部材との間を、該装着部材の軸部に嵌合させた環状シール部材によってシールする管体のシール構造において、前記軸部の先端部に、その軸芯方向に移動可能にブッシュを嵌合するとともに、前記環状シール部材を、その基部から前記ブッシュまでの間に移動可能に嵌合させ、前記環状シール部材の移動域の、前記軸部の前記ブッシュ側の端部に小径部を形成し、前記軸部の基部側の端部に大径部を形成し、前記装着部材の軸部を前記管体の開口端から管体内に挿入させ、前記ブッシュを前記管体の縮径部に当接させて、該ブッシュを前記軸部の基部方向に移動させ、前記ブッシュで前記環状シール部材を前記軸部の小径部から大径部に移動させることによって、前記環状シール部材を前記開口の内周面方向に膨出変形させ、該環状シール部材を前記管体の内周面に圧接させることによって気密を図る管体のシール構造が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1には、近年では、ガソリンエンジンにおいても、ディーゼルエンジンと同様に、燃料を直接シリンダ内に噴射する筒内噴射ガソリンエンジンの生産化が実現されていること、またこれにより、機関の運転状態に応じて燃料噴射タイミングを大きく変更することが可能となり、機関の性能を向上させながら排出流体を低減することができるようになること、当該エンジンのインジェクタは、吸気マニホールドに取り付けられるMPI(マルチ ポイント インジェクション)エンジンのインジェクタと異なり、燃焼圧を直接受けることから、前記シート面におけるシール性を保証することが重要、即ち、シート面の鋳巣や傷等の欠陥を予知する必要があることを指摘している。さらに、上述したインジェクタ取付部のリークテストを行うため、上記取付部に高圧エアを供給すると、該エアが噴射孔からインジェクタ内に漏れて測定ミスを生じることがあると指摘している。
特許文献1は、この問題を解決する手段として、環状のパッドと、噴射孔を閉塞するロッドと、エア供給通路との構造に焦点を当てた、インジェクタ取付部のリークテスト装置を開示している。
【0008】
上記特許文献2は、フューエルデリバリパイプのパイプ本体に複数のインジェクタカップがブレージングによって固着されている場合があること、ブレージングされた管体等ではインジェクタカップの取り付けにバラつきがあること、管体の全ての開口を気密栓によって塞いだ状態でその管体内に所定圧の空気を注入し、所定時間後の内部圧力を圧力計によって測定することによって管体の気密性を確認する気密検査が行われることを開示している。
また、特許文献2は、ナットによる螺合を使用しないで、気密栓にインジェクタカップを押し込むだけでインジェクタカップを閉塞できる管体のシール構造を提案している。さらに、特許文献2に開示されている気密栓では、気密栓にインジェクタカップを相対的に押し込むことにより閉塞し、また相対的に引っ張るだけで引き抜くことができるようになっている。インジェクタカップと気密栓が互いに密着して装着されている時、インジェクタカップの軸線と気密栓の軸線が一致している必要がある。軸線が一致していなければ気密が保たれないからである。これは、インジェクタカップと気密栓を装着させる時、両軸線が一致する状態で押し込まなければならないことを意味する。
【0009】
従来技術による、インジェクタカップを有するフューエルデリバリパイプの気密検査装置においては、上記特許文献1,2に示されているように、気密栓の位置と軸方向は気密検査装置の本体によって固定されている。例えば特許文献2では、気密栓の基部端の鍔部は広い平面状に形成され、その平面が気密検査装置本体の広い平面基盤に密着しては配置されている。そして位置及び向きが固定された気密栓にインジェクタカップを相対的に押し付けて気密栓をインジェクタカップに装着している。
【0010】
普通、複数のインジェクタカップは共通の配管であるフューエルデリバリパイプに例えばブレージングにより固定される。従って、それら複数のインジェクタカップの位置には許容公差(例えば、位置度Φ0.4)の範囲内でバラつきがある。
複数のインジェクタカップの位置に許容公差の範囲内であってもバラつきがあるとき、気密検査装置の本体に軸線方向が固定された従来型の気密栓にインジェクタカップを押し込むとき、全てのインジェクタカップの軸線の方向に気密栓の軸線を同時に一致させることはできない。
【0011】
本発明の課題は、中空部品の開口部に押し付けるだけで装着できる気密栓を、その押し付け時の力を利用して開口部に自動的に調芯して挿入し、複数の開口部の位置に許容公差がある場合でも、全ての開口部において開口部の軸線の方向と各気密栓の軸線の方向を自動的に一致させることができる気密栓を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するため、本発明は、次の〔1〕〜〔4〕に記載した気密栓
及び気密検査装置とした。
〔1〕押圧機構により中空部品の開口部に押し込まれることにより先端部が上記開口部に気密に装着され、引っ張られることにより上記開口部から離間させられる気密栓において、
上記気密栓の基部端が上記押圧機構の基盤に位置規制部材により移動可能に支持されていると共に、上記気密栓の基部端の上記押圧機構の基盤に接触する接触部分が上記先端部と同軸の円形平面又は球面であり、接触部分が円形平面である場合はその円形平面の直径Wが気密栓の全長Lの0.12倍より大きく0.2倍より小さく、接触部分が球面である場合はその球面の曲率半径Rが気密栓の全長Lより大きいことを特徴とする、気密栓。
〔2〕上記気密栓の先端肩部にテーパにより面取り部が形成されていることを特徴とする、上記〔1〕に記載の気密栓。
〔3〕上記気密栓がハウジングと、該ハウジングによって保持されているシリンダと、該シリンダ内で軸方向に移動可能なピストンと、該ピストンの先端とシリンダの先端の間に嵌め込まれたOリングとを備え、ピストンが作動流体の作用により移動可能で、該ピストンが移動してピストンの先端がシリンダ側にOリングを押圧すると、Oリングは軸方向に潰され半径方向に膨大することを特徴とする、上記〔1〕に記載の気密栓。
〔4〕
上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の気密栓を複数個備えたことを特徴とする、気密検査装置。
【発明の効果】
【0013】
上記した本発明に係る気密栓によれば、開口部の位置と気密栓の位置にズレがあるとき、気密栓は傾きその基部端が基盤と線接触又は点接触となり、開口部を気密栓に相対的に押し付けるとその線接触部又は点接触部が基盤の表面上で移動することにより、開口部の軸線の方向と気密栓の軸線の方向が一致することになる。この結果、基盤を開口部の方に相対的に押し付けることにより、開口部の軸線と気密栓の軸線が一致した状態で押し込まれ、そして、気密栓は着脱自在にその開口部に装着される。このように、気密栓を開口部に挿入する際の力を利用して調芯することで、装置全体のコスト増や複雑な検査工程を含むことなく、検査精度を向上させることができる。また、調芯に必要な力が小さくて済むため、検査工程が原因の変形・傷・位置ズレといった不具合を被検査体である中空部品に付けることもない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る気密栓及びその気密栓を用いた中空部品の気密検査装置の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の好ましい実施形態である気密栓の概念図であり、該気密栓10は、閉塞される中空部品50の開口部51に押し付けられることにより気密に開口部51に装着され、引き抜くことにより開口部51から離間されるものである。
【0017】
この図示した気密栓10の構造は次の通りである。
気密栓10の先端部にはピストン11があり、該ピストン11はシリンダ12の中でその軸芯方向に移動可能である。シリンダ12はハウジング13によって保持されており、ピストン11は、作動流体をシリンダ12に作動流体口14,15を介して導入・排出することによりシリンダ12内で移動する。ピストン11の先端部11aとシリンダ12の先端部12aの間にはOリング16が装着されており、ピストン11が移動してピストンの先端部11aがシリンダ12側にOリング16を押圧すると、Oリング16は軸方向に潰され半径方向に膨出し、開口部51の内壁面に強く圧接される。気密栓10の先端肩部、即ちピストン11の先端周縁はテーパにより面取り部17が形成されている。この面取り部17を形成する理由は後述する。
【0018】
本発明に係る気密栓10は、気密栓の基部端20の構造に特徴を有する。
図1の実施形態においては、気密栓10の基部端20はテーパにより縮径されて直径Wの円形の平面部21が形成されている。気密栓10を支える基盤30は基部端20の円形の平面部21に接触した状態で気密栓10を支持する。円形の平面部21の直径Wの大きさ及び機能については後述する。
【0019】
図2は、本発明の他の好ましい実施形態である気密栓を示した概念図である。
この
図2に図示された気密栓10においても、ピストン11、シリンダ12等を有し、装着されたOリング16をピストン11により潰し、開口部51の内壁面に強く圧接させるように構成されている。また、気密栓10の先端肩部にテーパにより面取り部17が形成されている。
【0020】
図2の実施形態に係る気密栓10においては、
図1の実施形態とは異なり、気密栓10の基部端20は曲率半径Rの球面部22に形成され、その球面部22と基盤30は点接触をしている。なお、球面部22は微小(W≦0.016L)な平面部を最下端部に有するものであっても良い。球面部22の曲率半径Rの大きさと機能については後述する。なお、
図2においてそのほか
図1と同一部材・部分については同一符号を付してその説明は省略する。
【0021】
図3は、気密検査の対象である中空部品50としてフューエルデリバリパイプを気密検査装置で気密検査を行う場合の、フューエルデリバリパイプ1と気密栓10の関係を示した概念図である。
【0022】
フューエルデリバリパイプ1は、内燃機関のシリンダヘッドに取り付けられるインジェクタに燃料を送る金属配管であって、パイプ本体2と、複数のインジェクタカップ3(図示の例では4個のインジェクタカップ3A,3B,3C,3D)から成る。インジェクタカップ3の開口端3aには、本来インジェクタが差し込まれて使用される。複数のインジェクタカップ3は、フューエルデリバリパイプ1にブレージング等によって取り付けられる。フューエルデリバリパイプは燃料を送る配管であり、かつ複数のブレージング箇所があるので、気密性が確保されていることを確認するために製造後に気密検査が行われる。
【0023】
図3の実施形態では、4つの気密栓10A,10B,10C,10Dの内3つの気密栓10A,10B,10Dは、先端に配置されインジェクタカップ3内に嵌入するピストン11と、該ピストン11がその中で摺動するシリンダ12と、シリンダ12を保持するハウジング13とを備え、装着されたOリング16をピストン11により潰し、インジェクタカップ3の内壁面に強く圧接させるように構成された
図1或いは
図2に図示した本発明に係る気密栓10である。気密栓10の基部端20に位置するハウジング13の下方部周壁には切り欠き18が形成され、該切り欠き18に緩く係合する位置規制部材31によって基盤30の面上での気密栓10の移動が規制されている。この位置規制部材31については後に説明する。
【0024】
図4は、フューエルデリバリパイプの気密検査装置の概念図である。
この図示した気密検査装置にあっては、フューエルデリバリパイプ1の4つのインジェクタカップ3の内の3つインジェクタカップ3A,3B,3Dは上記したように本発明に係る気密栓10A,10B,10Dを用いて気密に閉塞され、残りの一つのインジェクタカップ3Cは流体通路19を備える検査流体導入用気密栓10Cを用いて気密に閉塞されている。このように4つのインジェクタカップを気密に閉塞した後、検査流体導入用気密栓10Cの流体通路19を介して高圧の検査流体(例えば25MPaのヘリウムガス)をフューエルデリバリパイプ1内に送り内部を加圧状態にし、周囲をかこむチャンバー4に接続されたリークディテクター5により検査流体の漏れ量を検出することにより、フューエルデリバリパイプ1の気密性を確認する。
【0025】
図3は、気密検査をする直前のフューエルデリバリパイプ1と気密栓10の関係を概念的に示している。本発明に係る気密栓10A,10B,10Dは、気密検査装置の基盤30の上に位置規制部材31によって僅かに移動可能に規制された状態で載置され、流体通路19を備える検査流体導入用気密栓10Cは、基盤30を貫通して基盤に固定されている。
【0026】
図5は、上記位置規制部材31の構成例を示した概念図である。この位置規制部材31は、鉤状断面を有する3つの部材31a,31b,31cによって2つの気密栓10A,10Bの周縁を支持した構成のものである。各部材の鉤部32は気密栓10に設けられた切り欠き18に間隙を設けて緩く係合しており、基盤30の上に支持されている気密栓10A、10Bの基部端20が基盤30上面に沿って僅かに移動できるように、余裕をもって基盤30の面上での位置が規制されている。気密栓10Dも同様に余裕をもって同様の図示しない位置規制部材31によって面上での位置が規制されている。
【0027】
4つの気密栓10A,10B,10C,10Dはフューエルデリバリパイプ1の4つのインジェクタカップ3A,3B,3C,3Dに対応する位置に、かつそれぞれの軸線が各インジェクタカップの軸線と一致するように配置されている。そのため、フューエルデリバリパイプ1の4つのインジェクタカップ3A,3B,3C,3Dが公差なしに正確に取り付けられている場合、
図3の矢印に示すようにフューエルデリバリパイプ1を気密検査装置の基盤30の方向に図示しない押圧機構を用いて相対的に移動させると、4つのインジェクタカップ3A,3B,3C,3Dと4つの気密栓10A,10B,10C,10Dの位置は一致しているので、スムーズに気密栓はインジェクタカップの開口端に挿入されて該開口端を閉塞することとなる。
【0028】
しかし、フューエルデリバリパイプ1に4つのインジェクタカップ3A,3B,3C,3Dがブレージング等で取り付けられているので許容公差の範囲内で取り付け位置に関してバラつきが避けられない。この結果、4つのインジェクタカップ3A,3B,3C,3Dと4つの気密栓10A,10B,10C,10Dの位置が同時には一致しないという事態が生じ得る。
【0029】
図3は、
図2に示した基部端が球面である気密栓10を利用している場合を示す。ただし、
図1に示したものにも代替可能である。流体通路19を有する検査流体導入用気密栓10Cは気密検査装置の基盤30を貫通して基盤に固定されている。他方、残りの3つの気密栓10A,10B,10Dの基部端20は曲率半径Rが大きい球面部22に形成されているので、気密栓10A,10B,10Dのそれぞれの軸線方向は固定されておらず、また基盤30と点接触し、かつ気密栓10A,10B,10Dの基部端20は外力が働くと基盤30の上で移動できる自由度を有して位置規制部材31によって支持されている。
【0030】
気密栓10A,10B,10Dの基部端20は上記したように曲率半径Rが大きい球面部22に形成されていて、かつ軸対称に形成されているので、初期状態では基盤上でほぼ直立している。従って気密検査装置の基盤30の方向に相対的にフューエルデリバリパイプの4つのインジェクタカップ3A,3B,3C,3Dが近づくと、それらの位置に少しバラつきがあっても、インジェクタカップ3A,3B,3C,3Dの開口端3aと、気密栓の先端が突き合わされる。この際、気密栓の先端肩部にテーパによる面取り部17があると、気密栓とインジェクタカップは容易に係合することとなる。インジェクタカップ3A,3B,3C,3Dの位置にバラつきがある場合には、気密栓の中の幾つかは僅かに傾き、軸線方向が対応するインジェクタカップの軸線とは異なることが生じる。
【0031】
気密栓10A,10B,10Dは上記したように傾斜することも僅かに基盤30の上で移動することもできるので、そのように軸線が一致しない場合、フューエルデリバリパイプの4つのインジェクタカップ3A,3B,3C,3Dがさらに基盤30側に近づくと、気密栓10A,10B,10Dの軸線がインジェクタカップ3A,3B,3Dの軸線と一致するように移動する。この結果、インジェクタカップ3A,3B,3Dの軸線と気密栓10A,10B,10Dの軸線が一致し、その状態でフューエルデリバリパイプのインジェクタカップ3の軸線に沿って気密栓10が押し込まれる。
【0032】
検査流体導入用気密栓10Cは底面が球面ではなく基盤30に固定されていて位置及び軸線方向は固定されているので、軸線を合わせることができない場合があるように思われるが、フューエルデリバリパイプ1の装置への取り付け位置に遊びがあるので、それを利用してインジェクタカップ3Cの軸線方向を気密栓10Cの軸線方向に合わせることができる。そしてその状態で残りのインジェクタカップの軸線方向と気密栓の軸線を合わせればよい。実際は、これらは同時に起こり、フューエルデリバリパイプの4つのインジェクタカップ3A,3B,3C,3Dの軸線に沿って4つの気密栓10A,10B,10C,10Dを押し付けるだけで調芯させることができる。即ち、フューエルデリバリパイプのインジェクタカップに気密栓を押し付けるだけで調芯させることができる。なお、本明細書における「調芯」とは両軸線を一致させることをいう。
【0033】
上記した本発明に係る気密栓の自動調芯機能を、
図6に基づいて更に詳細に説明する。
図6は、
図2の気密栓の位置とフューエルデリバリパイプのインジェクタカップの位置とが一致していないときの、インジェクタカップと気密栓の調芯機能を説明する側面図である。
図2の気密栓10の場合、基部端20が球面部22に形成されている。
【0034】
気密栓10は当初直立しているが、フューエルデリバリパイプ1のインジェクタカップ3と気密栓10が最初に係合すると、インジェクタカップ3の位置がズレていることから気密栓10の軸線はインジェクタカップ3の方向に傾く。
図6は、インジェクタカップ3の開口端3aの右端と気密栓10のピストン11の先端肩部のテーパによる面取り部17とが係合した状態で、角度θだけ傾いている状態を示している。気密栓10の基部端20は球面部22に形成されているので傾斜角度に自由度があり、気密栓10は容易に傾く。
【0035】
フューエルデリバリパイプ1が相対的に気密栓10側に更に接近すると、
図6の配置では、気密栓10のピストン11の左上隅の面取り部17の点で時計周りの力等が働き、気密栓10の基部端の球面部22と基盤30の接触点22aを
図6で左方向、即ち気密栓10を直立させる方向に移動させようとする。この際、気密栓10の基部端は球面部22に形成されているので傾斜角度に自由度があり、また基盤30に点接触しているだけなので基盤30の面上で移動できる自由度もある。そのため、上記した気密栓10を時計方向に回転させようとする力を受けて気密栓10の軸線の方向がインジェクタカップの軸線と一致するように、気密栓10の基部端の球面部22の接触点22aが移動する。フューエルデリバリパイプ1が基盤30側に相対的に接近するに従ってこの過程が繰り返され、インジェクタカップ3の軸線と気密栓10の軸線が一致するように気密栓10が動くことにより調芯される。
【0036】
ここで、
図2に示したように気密栓10の軸方向の全長をLとし、基部端の球面部22の曲率半径をRとするとき、曲率半径Rが気密栓の全長Lより大きい(L<R)ものであれば、気密栓は傾いても自動的に直立し、調芯機能が生じる。ただし、曲率半径が大き過ぎ、平面と見做し得るものとなる場合には、気密栓は傾斜することができず調芯機能を発揮することができない場合が生じ得る。そのため、曲率半径Rの実用的上限は気密検査装置の他の部材の寸法諸元にも依存するが存在し、概ねLの2倍より小さい(R<2L)ものとすることが好ましい。
【0037】
次に、
図1の気密栓の位置とフューエルデリバリパイプのインジェクタカップの位置とが一致していないときの、インジェクタカップと気密栓の調芯機能を
図7を参照しながら説明する。
図1の気密栓10の場合、基部端20が円形の平面部21に形成されている。
【0038】
気密栓10は基部端に円形の平面部21が形成されているので、気密栓10は当初は直立している。しかし、フューエルデリバリパイプ1のインジェクタカップ3と気密栓10が最初に係合すると、気密栓10はインジェクタカップ3の方向に傾く。
図7は、インジェクタカップ3の開口端3aの右端と気密栓10のピストン11の先端肩部のテーパによる面取り部17とが係合した状態で、角度θだけ傾いている状態を示している。ここで、中心軸からの円形の平面部21の周縁までの距離が大きくなればなるほど基盤30との接触点21aが外側に行くため、気密栓10が受ける力のうち回転方向成分が減ってしまうことで、気密栓10は傾かなくなる。そのため、円形の平面部21の直径Wは気密栓の全長Lに対して 0.2倍より小さい(W<0.2L)ものであることが必要である。
【0039】
気密栓10が傾いた状態でフューエルデリバリパイプ1が相対的に気密栓10側に更に接近すると、
図7の配置では、気密栓10のピストン11の左上隅の面取り部17の点で時計周りの力等が働き、気密栓の基部端の円形平面部21の周縁の基盤30との接触点21aを
図7で左方向、即ち気密栓10を直立させる方向に移動させようとする。この際、気密栓10の基部端の円形平面部21は周縁で点接触しているので傾斜角度に自由度があり、また基盤30に点接触しているだけなので基盤30の面上で少し移動できる自由度もある。従って、気密栓10の軸線の方向はインジェクタカップの軸線と一致するように、気密栓10の基部端の円形平面部21の接触点21aが移動し、調芯が図られる。この傾いた状態から垂直に戻るためには、気密栓10に働く力、即ち基盤30からの垂直抗力、気密栓10の重心における自重、そして上記した気密栓の先端17において開口部から受ける力の合力が傾きを戻すように働く必要があり、その条件は、気密栓の軸方向の全長をLとし基部端の円形平面部21の直径をW(
図1参照)とするとき、円形平面部の直径Wは気密栓の全長Lに対して 0.12倍より大きい(0.12L<W)ものである。即ち、気密栓10の基部端の円形平面部21の直径Wが全長Lに対して小さ過ぎると傾いた時に戻ることができず、大きすぎると傾かないことが生じ、0.12L<W<0.2Lであれば気密栓は傾いても自動的に直立して調芯機能を発揮する。
【0040】
以上、本発明に係る気密栓の実施形態を説明したが、本発明は、何ら既述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した技術的思想としての本発明の範囲内において、種々の変形及び変更が可能であることは当然である。
例えば、上記実施形態では、本発明に係る気密栓をフューエルデリバリパイプ1のインジェクタカップ3の閉塞に適用した例を示しているが、他の中空部品に形成された開口部の閉塞に適用できることは言うまでもない。
また、本発明に係る気密栓の構成、例えばピストン11、シリンダ12等を有し、装着されたOリング16をピストン11により潰し、開口部51の内壁面に強く圧接させるようにした構成等は一例を示したに過ぎず、何ら上記した実施形態の構成に限定されるものではない。