(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、特許文献1では、カバー3の取り外し作業を容易に行うための構成(被接着部30、薄肉部31、厚肉部32等)が開示されている。また、特許文献1では、カバー3を収納ケース2に固定するため、被接着部30に対する接着剤23の塗布及び固定爪36の利用が開示されている(要約、
図3等)。しかしながら、特許文献1に開示の技術では、カバー3(シール部材)の抜け防止又は収納ケース2(ケース)の気密性確保の観点において改善の余地がある。
【0008】
本発明は上記のような課題を考慮してなされたものであり、シール部材の抜け防止又はケースの気密性確保の点を改善可能な駆動回路ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る駆動回路ユニットは、
電源からの電力を変換又は調整してモータに供給する駆動回路と、
貫通孔が形成されたケース壁部を有すると共に、前記駆動回路を収容するケースと、
前記貫通孔を封止するシール部材と、
前記シール部材よりも外側において、前記シール部材の挿入方向で前記シール部材の少なくとも一部と重なるカバーと
を備えるものであって、
前記シール部材は、前記貫通孔を規定する前記ケース壁部の内面に対して接触する第1接触部を有し、
前記シール部材が前記貫通孔内に配置された状態において、前記挿入方向における前記内面の外側端部から前記第1接触部までの第1距離は、前記挿入方向における前記シール部材の外側表面と前記カバーとの間の第2距離よりも長い
ことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、シール部材が貫通孔内に配置された状態において、シール部材の挿入方向におけるケース壁部の内面の外側端部からシール部材の第1接触部までの第1距離は、挿入方向におけるシール部材の外側表面とカバーとの間の第2距離よりも長い。これにより、仮にケース内部の温度上昇に伴ってケース内部の圧力が上昇することにより、シール部材が外側に向かって押し出された場合でも、カバーによって、シール部材の抜けを防止することが可能となる。加えて、シール部材が外側に向かって押し出されてシール部材がカバーに接触した場合、シール部材の第1接触部とケース壁部の内面との接触は維持される。このため、シール部材によるケースの密閉性を確保することが可能となる。
【0011】
前記シール部材は、前記ケース壁部の前記内面に対して接触する第2接触部をさらに有してもよい。これにより、シール部材が貫通孔内に配置された状態において、第1接触部と第2接触部の両方がケース壁部の内面と接触する。従って、ケースの密閉性をより確実に維持することが可能となる。
【0012】
前記シール部材は、前記ケース壁部の前記貫通孔内に挿入される挿入部と、前記ケース壁部の外側表面と接触するフランジとを備えてもよい。また、前記挿入部は、前記貫通孔よりも小さい輪郭である挿入基部と、前記挿入基部から突出し、前記貫通孔よりも大きい輪郭である前記第1接触部及び前記第2接触部とを備えてもよい。
【0013】
これにより、第1接触部及び第2接触部の間には、貫通孔よりも輪郭が小さい挿入基部が配置される。従って、挿入部が全体として接触部を構成する場合と比較して、各接触部(第1接触部及び第2接触部)が変形し易くなるため、シール部材を貫通孔に挿入し易くなる。加えて、挿入部が全体として接触部を構成する場合と比較して、ケース壁部の内面からの応力を第1接触部及び第2接触部に集中させ易くなる。このため、ケースの密閉性を高めることが可能となる。
【0014】
前記シール部材は、前記シール部材が前記貫通孔内に配置された状態において、前記ケース壁部の内側表面と接触する第3接触部を有してもよい。これにより、仮にケース内部の温度上昇に伴ってケース内部の圧力が上昇した場合でも、第3接触部がケース壁部の内側表面に引っ掛かることで、シール部材の抜けを防止し易くなる。
【0015】
前記シール部材は、前記貫通孔よりも前記ケースの内側において前記ケース内部の押圧力を受ける力受け面を有してもよい。これにより、貫通孔に向かう押圧力をケース壁部よりもケースの内側で受けることが可能となる。従って、ケース内の押圧力(圧力)が貫通孔に集中することを回避することで、ケースの密閉性をさらに高めることが可能となる。
【0016】
前記シール部材の前記フランジは、前記シール部材の挿入方向において、前記ケース壁部の前記外側表面に向かって突出して前記外側表面と接触する外周凸部を備えてもよい。これにより、貫通孔に対するシール部材の過剰な押込みを防止して、挿入方向におけるシール部材の位置決めが容易となる。
【0017】
前記ケース壁部の前記貫通孔及び前記シール部材は、前記駆動回路の1つの端子に1つずつ設けられてもよい。また、前記カバーは、複数の前記貫通孔及び複数の前記シール部材に跨って配置されてもよい。
【0018】
これにより、カバー及びシール部材を取り付けない状態では、駆動回路の端子の状態を目視で確認すること、前記端子を他の端子に接続すること等が可能となる。また、カバーは、複数の貫通孔及び複数のシール部材に跨って配置される。換言すると、1つのカバーで、複数の貫通孔及び複数のシール部材を覆う。これにより、1つの貫通孔及び1つのシール部材の組合せそれぞれにカバーを設ける場合と比較して、構成を簡素化することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シール部材の抜け防止又はケースの気密性確保の点を改善可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
A.一実施形態
<A−1.構成>
[A−1−1.全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る駆動回路ユニットとしての電力制御ユニット26(以下「PCU26」という。)を含む車両10の概略的な構成を示す電気回路図である。車両10は、PCU26に加え、走行モータ20と、ジェネレータ22と、高電圧バッテリ24(以下「バッテリ24」又は「BAT24」ともいう。)と、低電圧系28とを有する。車両10は、ハイブリッド車両であり、走行駆動源として、走行モータ20に加え、図示しないエンジンを有する。後述するように、車両10は、その他の種類の車両であってもよい。ジェネレータ22は、前記エンジンの駆動力に基づいて発電する。ジェネレータ22を走行駆動源として用いてもよい。
【0022】
[A−1−2.走行モータ20]
走行モータ20は、3相交流ブラシレス式であり、車両10の走行用の駆動源として動力Ftrcを生成して図示しない車輪(駆動輪)側に供給する。すなわち、走行モータ20は、高電圧バッテリ24からの電力Pbat及びジェネレータ22からの電力Pgenの一方又は両方により駆動する。また、走行モータ20は、車両10の制動時に回生を行い、回生電力Pregをバッテリ24に供給する。回生電力Pregは、低電圧系28に供給されてもよい。
【0023】
以下では、走行モータ20をTRCモータ20又はモータ20とも呼ぶ。TRCモータ20は、走行モータとしての機能に加えて又はこれに代えて、ジェネレータとして機能させてもよい。以下では、走行モータ20に関連するパラメータに「TRC」又は「trc」若しくは「t」を付す。また、
図1では、走行モータ20を「TRC」で示す。
【0024】
[A−1−3.ジェネレータ22]
ジェネレータ22は、3相交流ブラシレス式であり、前記エンジンからの動力Fengにより発電するジェネレータとして機能する。ジェネレータ22が発電した電力Pgenは、バッテリ24又は走行モータ20若しくは低電圧系28に供給される。
【0025】
以下では、ジェネレータ22をGEN22とも呼ぶ。GEN22は、ジェネレータ(発電機)としての機能に加えて又はこれに代えて、走行モータ(traction motor)として機能させてもよい。以下では、ジェネレータ22に関連するパラメータに「GEN」又は「gen」若しくは「g」を付す。また、
図1では、ジェネレータ22を「GEN」で示す。ジェネレータ22は、前記エンジンのスタータモータとして利用することができる。
【0026】
[A−1−4.高電圧バッテリ24]
高電圧バッテリ24は、複数のバッテリセルを含み高電圧(数百ボルト)を出力可能な蓄電装置(エネルギストレージ)であり、例えば、リチウムイオン2次電池、ニッケル水素2次電池等を利用することができる。バッテリ24の代わりに又はこれに加えて、キャパシタ等の蓄電装置を用いることも可能である。
【0027】
[A−1−5.PCU26]
(A−1−5−1.PCU26の概要)
PCU26は、バッテリ24及び/又はジェネレータ22からの電力を変換又は調整して、走行モータ20に供給する。また、PCU26は、ジェネレータ22の発電電力Pgen及び走行モータ20の回生電力Pregを変換又は調整してバッテリ24を充電させる。
【0028】
図1に示すように、PCU26は、第1DC/DCコンバータ30と、第1インバータ32と、第2インバータ34と、第1コンデンサ36と、第2コンデンサ38と、電子制御装置40(以下「ECU40」という。)と、第2DC/DCコンバータ42とを有する。
【0029】
(A−1−5−2.第1DC/DCコンバータ30)
第1DC/DCコンバータ30(以下「コンバータ30」ともいう。)は、昇降圧型のコンバータである。コンバータ30は、バッテリ24の出力電圧Vbat(以下「バッテリ電圧Vbat」ともいう。)を昇圧してTRCモータ20に出力する。また、コンバータ30は、ジェネレータ22の出力電圧Vgen(以下「GEN電圧Vgen」ともいう。)又は走行モータ20の出力電圧Vreg(以下「回生電圧Vreg」ともいう。)を降圧してバッテリ24に供給する。
【0030】
(A−1−5−3.第1インバータ32)
第1インバータ32は、バッテリ24からの直流電流を交流電流に変換して走行モータ20に供給する。また、第1インバータ32は、走行モータ20からの交流電流を直流電流に変換してバッテリ24側に供給する。
【0031】
(A−1−5−4.第2インバータ34)
第2インバータ34は、ジェネレータ22からの交流電流を直流電流に変換してバッテリ24側及び/又は走行モータ20側に供給する。また、ジェネレータ22を走行駆動源として用いる場合、第2インバータ34は、バッテリ24からの直流電流を交流電流に変換してジェネレータ22に供給する。
【0032】
(A−1−5−5.第1コンデンサ36及び第2コンデンサ38)
第1コンデンサ36及び第2コンデンサ38は、平滑コンデンサとして機能する。
【0033】
(A−1−5−6.第2DC/DCコンバータ42)
第2DC/DCコンバータ42は、バッテリ電圧Vbat等を降圧して低電圧系28に出力する。
【0034】
(A−1−5−7.ECU40)
ECU40は、PCU26の各部を制御する制御回路(又は制御装置)であり、図示しない入出力部、演算部及び記憶部を有する。入出力部は、信号線50(通信線)を介して車両10の各部との信号の入出力を行う。なお、
図1では、信号線50が簡略化されて示されていることに留意されたい。入出力部は、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する図示しないA/D変換回路を備える。
【0035】
[A−1−6.低電圧系28]
低電圧系28は、低電圧(例えば12V)を扱う電力系である。低電圧系28は、例えば、低電圧バッテリ、ナビゲーション装置、ヘッドライト(いずれも図示せず)、ECU40等を含む。
【0036】
<A−2.PCU26の具体的構成及び配置>
[A−2−1.概要]
図2は、本実施形態のPCU26の一部を分解して示す斜視図である。
図3は、本実施形態のPCU26の外観を示す斜視図である。
図2及び
図3に示すように、PCU26は、アッパーケース70と、ロアケース72と、ヒートシンク74とを有する。アッパーケース70、ロアケース72及びヒートシンク74は、いずれも金属製(例えばアルミニウム製)である。
【0037】
アッパーケース70及びロアケース72内には、第1DC/DCコンバータ30、第1インバータ32、第2インバータ34、第1コンデンサ36、第2コンデンサ38、ECU40及び第2DC/DCコンバータ42等の回路部品80が配置される。例えば、アッパーケース70では、回路基板82上及びその周辺に回路部品80が配置される。ロアケース72にも同様の回路基板(図示せず)が設けられ、回路部品80が接続される。
【0038】
以下では、回路部品80及び回路基板82を合わせて駆動回路90と呼ぶ。駆動回路90は、バッテリ24からの電力を変換又は調整してモータ20に供給する。加えて、駆動回路90は、ジェネレータ22及びモータ20からの電力をバッテリ24及び第2DC/DCコンバータ42に供給する。アッパーケース70及びロアケース72は、駆動回路90を収容する。
【0039】
ヒートシンク74は、発熱体としての第1DC/DCコンバータ30、第1インバータ32、第2インバータ34等を冷却する板状の部材である。ヒートシンク74の導入側配管100には、図示しない冷媒ポンプから冷媒が供給される。冷媒は、ヒートシンク74内部を移動した後、排出側配管102から排出される。排出側配管102から排出された冷媒は、図示しないラジエータで放熱された後、再度、導入側配管100に供給される。
【0040】
図2及び
図3からわかるように、アッパーケース70、ロアケース72及びヒートシンク74は、第1ねじ110により互いに連結又は固定される。また、第1ねじ110により連結又は固定されたアッパーケース70、ロアケース72及びヒートシンク74(すなわちPCU26)は、図示しないボルトによりモータハウジング(図示せず)に連結又は固定される。前記モータハウジングは、走行モータ20及びジェネレータ22を収容する。
【0041】
[A−2−2.アッパーケース70及びその周辺]
図4は、本実施形態のアッパーケース70及びその周辺の一部を示す断面図である。
図2に示すように、アッパーケース70の壁部120(以下「ケース壁部120」ともいう。)には複数の貫通孔122が形成される。貫通孔122は、第1DC/DCコンバータ30、第1インバータ32、第2インバータ34等の回路部品80の端子130の手前に配置される。これにより、回路部品80の端子130を回路基板82側の端子132(
図4)に接続することができる。本実施形態では、端子130、132の接続は、第2ねじ134により行う。或いは、端子130、132の接続は、特許文献1の
図3のように行ってもよい。
【0042】
図2及び
図4に示すように、各貫通孔122には、シール部材150が挿入される。シール部材150により貫通孔122が封止される。また、各貫通孔122にシール部材150が挿入された状態で、第3ねじ162を介してカバー160がアッパーケース70に取り付けられる。
【0043】
なお、アッパーケース70には、アッパーケース70内外の気圧調整弁(図示せず)を設け、アッパーケース70内の圧力が上昇した場合、圧力を外部に放出してもよい。ロアケース72も同様である。
【0044】
[A−2−3.シール部材150]
(A−2−3−1.シール部材150の構成部品)
図5は、本実施形態のシール部材150が通常位置に挿入された状態(正常状態)を示す断面図である。
図6は、本実施形態のシール部材150がアッパーケース70内の圧力上昇により変位した状態を示す断面図である。
【0045】
図5等に示すように、シール部材150は、樹脂部材170及び芯部材172を有する。樹脂部材170は、ゴム製のキャップである。芯部材172は、樹脂部材170内に配置された金属製の部材である。芯部材172は、樹脂部材170の剛性を高める。
【0046】
(A−2−3−2.シール部材150の各部)
(A−2−3−2−1.概要)
図5に示すように、シール部材150は、ケース壁部120の貫通孔122内に挿入される挿入部180と、ケース壁部120の外側表面184と接触するフランジ182とを有する。
【0047】
(A−2−3−2−2.挿入部180)
挿入部180は、挿入基部200と、第1接触部202と、第2接触部204と、第3接触部206と、力受け面208とを有する。挿入基部200は、貫通孔122よりも小さい直径(輪郭)である。第1接触部202は、第2接触部204よりもアッパーケース70の内側(
図5の右側)に配置される。
図5及び
図6に示すように、第1接触部202及び第2接触部204は、軸方向に沿った断面が略台形状であり、貫通孔122を規定するケース壁部120の内面210に対して接触する。
【0048】
図5及び
図6では示されていないが、アッパーケース70に挿入されない状態では、第1接触部202及び第2接触部204は、貫通孔122よりも大きい直径(輪郭)である。シール部材150が貫通孔122に挿入されると、第1接触部202及び第2接触部204はアッパーケース70の内面210からの反力により変形する。
【0049】
第3接触部206は、第1接触部202よりもアッパーケース70の内側に配置される。第3接触部206は、ケース壁部120の内側表面212と接触する。内側表面212は、貫通孔122を規定する内面210に対して略垂直である。
【0050】
力受け面208は、貫通孔122よりもアッパーケース70の内側においてアッパーケース70内部の押圧力を受ける。
【0051】
図5に示すように、シール部材150が貫通孔122に挿入された状態でも、挿入部180の内側には空洞220が存在するが、芯部材172が存在することで、シール部材150は、その形状を保持することができる。
【0052】
(A−2−3−2−3.フランジ182)
フランジ182は、シール部材150の挿入方向A1において、ケース壁部120の外側表面184に向かって突出して外側表面184と接触する外周凸部230を有する。
【0053】
[A−2−4.カバー160]
(A−2−4−1.カバー160の概要)
カバー160は、金属製(例えば鉄製)の部材である。
図2〜
図6からわかるように、カバー160は、シール部材150よりも外側において、シール部材150の挿入方向A1(
図5の右方向)でシール部材150と重なるように配置される。なお、カバー160は、金属製に限らず、樹脂等のように他の材料で構成されてもよい。
【0054】
(A−2−4−2.カバー160の作用)
上記のように、アッパーケース70の内部には、回路部品80が配置される(
図2及び
図3)。回路部品80に含まれる図示しないスイッチング素子がオン故障し、過電流が発生した場合等には、アッパーケース70の内部圧力Pが過度に上昇する可能性がある。そのような内部圧力Pの上昇が生じた場合、上述の逆止弁により内部圧力Pを開放することが可能である。しかしながら、逆止弁が何らかの原因で動作しない場合、内部圧力Pの増加に伴い、耐圧性能(保持力)が比較的低いシール部材150が外側に(挿入方向A1と反対方向に)変位する可能性がある(
図6)。
【0055】
上記のように、シール部材150が外側に変位した場合でも、カバー160がシール部材150を支持することで、シール部材150が貫通孔122から外れることを防ぐことができる。
【0056】
図5に示すように、シール部材150が貫通孔122内に配置された正常状態において、挿入方向A1における内面210の外側端部240から第1接触部202までの第1距離L1は、挿入方向A1におけるシール部材150の外側表面250とカバー160との間の第2距離L2よりも長い。従って、仮にシール部材150が外側に変位した場合でも、第1接触部202は、ケース壁部120の内面210との接触を維持することが可能となる。
【0057】
図5では、第1距離L1の基準となる第1接触部202の位置(基準位置Pref1)は、第1接触部202が内面210と接触している部分の最も外側としている。但し、第1接触部202の基準位置Pref1は、第1接触部202と内面210の密閉性が確保されるその他の位置としてもよい。
【0058】
なお、
図6では、第2接触部204も、ケース壁部120の内面210と接触している。しかしながら、第2接触部204の接触部分は比較的小さいため、ここでは、第2接触部204と内面210との間の密閉性は十分なものではないと考える。但し、シール部材150とカバー160が接触した際に、第2接触部204と内面210との密閉性も確保させるように、第2接触部204の位置、カバー160の位置等を変化させてもよい。
【0059】
<A−3.本実施形態の効果>
本実施形態によれば、シール部材150が貫通孔122内に配置された状態(
図5)において、第1距離L1(シール部材150の挿入方向A1におけるケース壁部120の内面210の外側端部240から第1接触部202までの距離)は、第2距離L2(挿入方向A1におけるシール部材150の外側表面250とカバー160との間の距離)よりも長い。これにより、仮にケース70内部の温度上昇に伴ってケース70の内部圧力Pが上昇することにより、シール部材150が外側に向かって押し出された場合でも、カバー160によって、シール部材150の抜けを防止することが可能となる(
図6)。加えて、シール部材150が外側に向かって押し出されてシール部材150がカバー160に接触した場合、シール部材150の第1接触部202とケース壁部120の内面210との接触は維持される。このため、シール部材150によるアッパーケース70(ケース)の密閉性を確保することが可能となる。
【0060】
本実施形態において、シール部材150は、ケース壁部120の内面210に対して接触する第2接触部204を有する(
図5)。これにより、シール部材150が貫通孔122内に配置された状態(
図5)において、第1接触部202と第2接触部204の両方がケース壁部120の内面210と接触する。従って、ケース70の密閉性をより確実に維持することが可能となる。
【0061】
本実施形態において、シール部材150は、ケース壁部120の貫通孔122内に挿入される挿入部180と、ケース壁部120の外側表面184と接触するフランジ182とを備える(
図5)。また、挿入部180は、貫通孔122よりも小さい直径(輪郭)である挿入基部200と、挿入基部200から突出し、貫通孔122よりも大きい直径(輪郭)である第1接触部202及び第2接触部204とを備える(
図5)。
【0062】
これにより、第1接触部202及び第2接触部204の間には、貫通孔122よりも直径が小さい挿入基部200が配置される。従って、挿入部180が全体として接触部を構成する場合と比較して、各接触部(第1接触部202及び第2接触部204)が変形し易くなるため、シール部材150を貫通孔122に挿入し易くなる。加えて、挿入部180が全体として接触部を構成する場合と比較して、ケース壁部120の内面210からの応力を第1接触部202及び第2接触部204に集中させ易くなる。このため、アッパーケース70(ケース)の密閉性を高めることが可能となる。
【0063】
本実施形態において、シール部材150は、シール部材150が貫通孔122内に配置された状態(
図5)において、ケース壁部120の内側表面212と接触する第3接触部206を有する。これにより、仮にケース70内部の温度上昇に伴ってケース70の内部圧力Pが上昇した場合でも、第3接触部206がケース壁部120の内側表面212に引っ掛かることで、シール部材150の抜けを防止し易くなる。
【0064】
本実施形態において、シール部材150は、貫通孔122よりもアッパーケース70(ケース)の内側においてアッパーケース70内部の押圧力を受ける力受け面208を有する(
図5)。これにより、貫通孔122に向かう押圧力をケース壁部120よりもアッパーケース70の内側で受けることが可能となる。従って、アッパーケース70内の押圧力(圧力)が貫通孔122に集中することを回避することで、アッパーケース70の密閉性をさらに高めることが可能となる。
【0065】
本実施形態において、シール部材150のフランジ182は、シール部材150の挿入方向A1において、ケース壁部120の外側表面184に向かって突出して外側表面184と接触する外周凸部230を備える(
図5)。これにより、貫通孔122に対するシール部材150の過剰な押込みを防止して、挿入方向A1におけるシール部材150の位置決めが容易となる。
【0066】
本実施形態において、ケース壁部120の貫通孔122及びシール部材150は、駆動回路90の1つの端子130に1つずつ設けられる(
図2及び
図4)。また、カバー160は、複数の貫通孔122及び複数のシール部材150に跨って配置される(
図3)。これにより、カバー160及びシール部材150を取り付けない状態では、駆動回路90の端子130の状態を目視で確認すること、端子130を他の端子132に接続すること等が可能となる。
【0067】
また、カバー160は、複数の貫通孔122及び複数のシール部材150に跨って配置される。換言すると、1つのカバー160で、複数の貫通孔122及び複数のシール部材150を覆う。これにより、1つの貫通孔122及び1つのシール部材150の組合せそれぞれにカバー160を設ける場合と比較して、構成を簡素化することが可能となる。
【0068】
本実施形態において、シール部材150は、樹脂部材170と、樹脂部材170内に配置された金属製の芯部材172とを有する(
図5)。これにより、密閉性と剛性の両立を図ることが可能となる。
【0069】
B.変形例
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、本明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0070】
<B−1.適用対象>
上記実施形態の車両10は、走行モータ20、ジェネレータ22(
図1)及び図示しないエンジンを有した。しかしながら、例えば、シール部材150及びカバー160に着目すれば、これに限らない。例えば、車両10は、複数の走行モータ20とジェネレータ22を有する構成とすることも可能である。
【0071】
<B−2.電源>
上記実施形態では、PCU26を介してモータ20に電力を供給する電源として、高電圧バッテリ24を用いた(
図1)。しかしながら、例えば、シール部材150及びカバー160に着目すれば、これに限らない。例えば、ジェネレータ22を主たる電源と位置付けること(いわゆるレンジエクステンダとしての利用)も可能である。
【0072】
<B−3.PCU26>
[B−3−1.PCU26の全体構成]
上記実施形態では、アッパーケース70及びロアケース72の両方を設けた(
図2)。しかしながら、例えば、シール部材150及びカバー160に着目すれば、これに限らない。例えば、1つ又は3つ以上のケースを設けてもよい。なお、ケースを1つのみ設ける場合とは、モータ20のハウジング(図示せず)にケースを直接固定する場合(駆動回路90をモータハウジングに直接配置する場合)等がある。
【0073】
上記実施形態では、冷媒が循環するヒートシンク74を1つ設けた(
図2、
図3)。しかしながら、例えば、シール部材150及びカバー160に着目すれば、これに限らない。例えば、ヒートシンク74を省略すること又はヒートシンク74を複数設けることが可能である。
【0074】
[B−3−2.シール部材150]
上記実施形態では、挿入部180の内側に空洞220が存在した(
図5)。しかしながら、シール部材150により貫通孔122を封止する観点からすれば、挿入部180の形状はこれに限らない。例えば、空洞220の位置も樹脂を配置させることも可能である。
【0075】
上記実施形態では、シール部材150は、樹脂部材170及び芯部材172を有していた(
図5)。しかしながら、例えば、シール部材150の変位をカバー160で規制する観点からすれば、これに限らない。例えば、シール部材150は、樹脂部材170のみで構成してもよい。その際、空洞220(
図5)の位置にも樹脂を設けてもよい。
【0076】
上記実施形態では、樹脂部材170はゴム製であった。しかしながら、例えば、シール部材150の変位をカバー160で規制する観点からすれば、これに限らず、ゴム以外の素材としてもよい。
【0077】
上記実施形態では、シール部材150の最も外側にフランジ182を設けた(
図5)。しかしながら、例えば、シール部材150の変位をカバー160で規制する観点からすれば、シール部材150の形状はこれに限らない。例えば、フランジ182よりも外側に挿入部180と同等の直径(輪郭)を有する部位を設けてもよい。或いは、フランジ182を有さない(挿入部180のみを有する)シール部材150を用いることも可能である。
【0078】
上記実施形態では、シール部材150のフランジ182に外周凸部230を設けた(
図5)。しかしながら、例えば、ケース壁部120の外側表面184とフランジ182を接触させる観点からすれば、これに限らない。例えば、外側表面184に面するフランジ182の面を平坦としてもよい。
【0079】
上記実施形態では、シール部材150は、第1接触部202、第2接触部204及び第3接触部206を有していた(
図5)。しかしながら、例えば、アッパーケース70の内面210とシール部材150との密閉性を確保する観点からすれば、これに限らない。例えば、第2接触部204及び第3接触部206の一方又は両方を省略することが可能である。
【0080】
[B−3−3.カバー160]
上記実施形態において、カバー160は、シール部材150よりも外側において、シール部材150の挿入方向A1でシール部材150全体と重なるように配置された(
図3〜
図5)。しかしながら、例えば、シール部材150の変位をカバー160で規制する観点からすれば、シール部材150の配置はこれに限らず、挿入方向A1において、カバー160は、シール部材150の少なくとも一部と重なるように配置されればよい。
【0081】
[B−3−4.その他]
上記実施形態では、1つの端子130に1つの貫通孔122及び1つのシール部材150を対応させて設けた(
図2及び
図4)。しかしながら、例えば、シール部材150の変位をカバー160で規制する観点からすれば、これに限らない。例えば、複数(例えば2つ又は3つ)の端子130に1つの貫通孔122及び1つのシール部材150を対応させて設けてもよい。或いは、1つの端子130に1つの貫通孔122を設けつつ、複数(例えば2つ又は3つ)の端子130及び複数の貫通孔122に1つのシール部材150を対応させて設けてもよい。換言すると、複数のシール部材150を一体化して用いてもよい。
【0082】
上記実施形態では、ケース壁部120の貫通孔122並びにシール部材150の挿入部180及びフランジ182それぞれを、断面が真円に近似する円筒状を基調とした(
図5等)。しかしながら、例えば、貫通孔122を封止する観点からすれば、これに限らない。例えば、貫通孔122、挿入部180及びフランジ182それぞれを、断面が楕円となる円筒状を基調としてもよい。或いは、貫通孔122、挿入部180及びフランジ182それぞれを、断面が正方形状又は長方形状となる角筒状を基調としてもよい。