特許第6796050号(P6796050)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンリツ産機システム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6796050-X線検査装置およびX線検査方法 図000002
  • 特許6796050-X線検査装置およびX線検査方法 図000003
  • 特許6796050-X線検査装置およびX線検査方法 図000004
  • 特許6796050-X線検査装置およびX線検査方法 図000005
  • 特許6796050-X線検査装置およびX線検査方法 図000006
  • 特許6796050-X線検査装置およびX線検査方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796050
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】X線検査装置およびX線検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20201119BHJP
【FI】
   G01N23/04
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-207243(P2017-207243)
(22)【出願日】2017年10月26日
(65)【公開番号】特開2019-78686(P2019-78686A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2019年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】302046001
【氏名又は名称】アンリツインフィビス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】井上 学
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−107456(JP,A)
【文献】 特開2005−091015(JP,A)
【文献】 特開2005−024549(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0246930(US,A1)
【文献】 特開2018−059845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が包装材に包まれて該内容物を収容する内容物収容領域(S4)の外側がシールされた被検査物(W)を所定間隔おきに搬送しながらX線を照射し、前記被検査物を透過したX線の透過画像を用いて前記被検査物を検査するX線検査装置(1)であって、
前記透過画像から前記被検査物(W)の外形部領域(S1)を抽出する外形部領域抽出手段(12)と、
前記透過画像から前記被検査物の内容物領域(S2)を抽出する内容物領域抽出手段(13)と、
前記内容物領域における前記内容物の輪郭から前記内容物収容領域の前記内容物が片寄って存在する一辺の一部分に相当する基準線(L1)を算出し、該基準線に基づいて得られる前記内容物収容領域(S4)を抽出する内容物収容領域抽出手段(14)と、
前記内容物収容領域抽出手段にて抽出された内容物収容領域を前記外形部領域抽出手段にて抽出された前記被検査物の外形部領域から除いてシール部領域(S3)を算出するシール部領域算出手段(15)と、
前記シール部領域内に不要物があるか否かによりシール不良の有無を判定するシール不良判定手段(16)と、を含む信号処理部(6)を備えたことを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記内容物収容領域抽出手段(14)は、前記内容物領域における前記内容物の輪郭について直線近似して前記基準線(L1)を算出する基準線算出手段(14a)と、
前記基準線を延長して構成される前記内容物収容領域(S4)の基準辺に隣接する隣接辺の一部となる近隣線(L3)を、前記内容物領域における前記内容物の輪郭について直線近似して算出する近隣線算出手段(14b)とを備えたことを特徴とする請求項記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記基準線算出手段(14a)は、前記内容物収容領域(S4)の基準辺の位置に対応して前記内容物領域における前記内容物の輪郭を直線近似した近似直線の中点を基準として前記基準線(L1)を算出することを特徴とする請求項記載のX線検査装置。
【請求項4】
内容物が包装材に包まれて該内容物を収容する内容物収容領域(S4)の外側がシールされた被検査物(W)を所定間隔おきに搬送しながらX線を照射し、前記被検査物を透過したX線の透過画像を用いて前記被検査物を検査するX線検査方法であって、
前記透過画像から前記被検査物の外形部領域(S1)を抽出するステップと、
前記透過画像から前記被検査物の内容物領域(S2)を抽出するステップと、
前記内容物領域における前記内容物の輪郭から前記内容物収容領域の前記内容物が片寄って存在する一辺の一部分に相当する基準線(L1)を算出し、該基準線に基づいて得られる前記内容物収容領域を抽出するステップと、
前記内容物収容領域を前記被検査物の外形部領域から除いてシール部領域(S3)を算出するステップと、
前記シール部領域内に不要物があるか否かによりシール不良の有無を判定するステップとを含むことを特徴とするX線検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される被検査物にX線を照射し、このX線を照射したときのX線の透過画像を用いて被検査物のシール不良の検査を行うX線検査装置およびX線検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線検査装置は、例えば、生肉、魚、加工食品、医薬などを被検査物とし、被検査物にX線を照射したときのX線の透過画像を用いて被検査物の検査を行う装置として従来から知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1のX線検査装置では、被検査物にX線を曝射したときの透過画像から外形を抽出し、抽出した外形を基準として、予め設定されたシール部情報に基づいて被検査物のシール部領域を算出し、算出したシール部領域の画像の濃度レベルを用いてシール不良の検査を行っている。
【0004】
また、下記特許文献2のX線検査装置では、被検査物の製品サイズ及びシール部のシール幅の位置と長さを特定する識別子を付与した被検査物の外形画像と、製品サイズやシール幅を設定する設定項目を識別子に対応付けさせて一画面上の設定入力画面として表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−024549号公報
【特許文献2】特開2005−091015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1や特許文献2のX線検査装置では、外形を基準としてシール部領域を特定したり、製品サイズやシール幅を設定する場合、包装材が折れ曲がって外形が変形すると、シール部領域でない領域をシール部領域として算出するおそれがあり、シール部領域を正しく特定することができないという問題があった。また、仮に、内容物を基準にシール部領域を特定する場合には、包装材に収容される内容物の形状が安定していないと、正しくシール部領域を特定することができないという問題が生じる。その結果、シール部領域の内側に噛み込んだものを見逃してしまうことがあった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、従来よりも高精度にシール部領域内の不要物の有無を判定してシール不良の検査を行うことができるX線検査装置およびX線検査方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載されたX線検査装置は、内容物が包装材に包まれて該内容物を収容する内容物収容領域S4の外側がシールされた被検査物Wを所定間隔おきに搬送しながらX線を照射し、前記被検査物を透過したX線の透過画像を用いて前記被検査物を検査するX線検査装置1であって、
前記透過画像から前記被検査物Wの外形部領域S1を抽出する外形部領域抽出手段12と、
前記透過画像から前記被検査物の内容物領域S2を抽出する内容物領域抽出手段13と、
前記内容物領域における前記内容物の輪郭から前記内容物収容領域の前記内容物が片寄って存在する一辺の一部分に相当する基準線L1を算出し、該基準線に基づいて得られる前記内容物収容領域S4を抽出する内容物収容領域抽出手段14と、
前記内容物収容領域抽出手段にて抽出された内容物収容領域を前記外形部領域抽出手段にて抽出された前記被検査物の外形部領域から除いてシール部領域S3を算出するシール部領域算出手段15と、
前記シール部領域内に不要物があるか否かによりシール不良の有無を判定するシール不良判定手段16と、を含む信号処理部6を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項に記載されたX線検査装置は、請求項のX線検査装置において、
前記内容物収容領域抽出手段14は、前記内容物領域における前記内容物の輪郭について直線近似して前記基準線L1を算出する基準線算出手段14aと、
前記基準線を延長して構成される前記内容物収容領域S4の基準辺に隣接する隣接辺の一部となる近隣線L3を、前記内容物領域における前記内容物の輪郭について直線近似して算出する近隣線算出手段14bとを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項に記載されたX線検査装置は、請求項のX線検査装置において、
前記基準線算出手段14aは、前記内容物収容領域S4の基準辺の位置に対応して前記内容物領域における前記内容物の輪郭を直線近似した近似直線の中点を基準として前記基準線L1を算出することを特徴とする。
【0012】
請求項に記載されたX線検査方法は、内容物が包装材に包まれて該内容物を収容する内容物収容領域S4の外側がシールされた被検査物Wを所定間隔おきに搬送しながらX線を照射し、前記被検査物を透過したX線の透過画像を用いて前記被検査物を検査するX線検査方法であって、
前記透過画像から前記被検査物の外形部領域S1を抽出するステップと、
前記透過画像から前記被検査物の内容物領域S2を抽出するステップと、
前記内容物領域における前記内容物の輪郭から前記内容物収容領域の前記内容物が片寄って存在する一辺の一部分に相当する基準線L1を算出し、該基準線に基づいて得られる前記内容物収容領域を抽出するステップと、
前記内容物収容領域を前記被検査物の外形部領域から除いてシール部領域S3を算出するステップと、
前記シール部領域内に不要物があるか否かによりシール不良の有無を判定するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来と比較して、より高精度にシール部領域内の不要物の有無を判定してシール不良の検査を行うことができ、シール不良検査の品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るX線検査装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】被検査物の透過画像の一例を示す図である。
図3】本発明に係るX線検査装置を用いたX線検査方法の概略手順を示すフローチャートである。
図4図3の内容物収容領域の算出手順を示すフローチャートである。
図5】(a)〜(f)内容物収容領域の算出手順の一例を示す説明図である。
図6】(a),(b)内容物収容領域の他の算出手順の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
[本発明の概要]
本発明に係るX線検査装置は、例えば搬送ラインの一部に組み込まれ、一定間隔おきに順次搬送されてくる被検査物(物品)に対し、包装材に包装された内容物のシール部への噛み込み等による不要物の有無を判定してシール不良を検査するものである。
【0017】
検査対象である被検査物としては、例えばフェイスマスクのような液体(化粧水、美容液)を含んだシートが折り畳まれたシート状の内容物を包装材に収容した包装品、レトルト食品のような液体やゲル状の内容物を包装材に充填した包装品、粉状の内容物を包装材に充填した包装品などがある。
【0018】
例えばフェイスマスクの場合、包装工程の違いにより、三方シールされた袋状の包装材の一辺をなす上部開口からシートと液体を充填した後に封止して4辺が覆われた包装品と、帯状の包装材が所定間隔おきにシールされ、シール部間の開口した2つの側面部開口からシートと液体を充填した後に封止して4辺が覆われた包装品とがある。
【0019】
そして、最終的に4辺で覆われた矩形状(長方形又は正方形)の包装品は、内容物が収容される内容物収容領域がほぼ一定であるが、特に粘質の高い液体のような内容物が内容物収容領域の一辺(特に、一辺の中央)に片寄った状態で搬送される傾向がある。
【0020】
そこで、本発明は、上記傾向を利用し、被検査物の透過画像における内容物収容領域の一辺(内容物が片寄って収容される辺)の一部に相当する直線(基準線)から内容物収容領域を特定し、被検査物の外形部領域から内容物収容領域をマスクしてシール部領域を特定することでシール部領域内に不要物があるか否かによりシール不良の検査を行う機能を有する。
【0021】
[X線検査装置の構成]
図1に示すように、本実施の形態のX線検査装置1は、上記機能を実現するため、搬送装置2、X線発生器3、X線検出器4、設定入力部5、信号処理部6、表示部7を含んで概略構成される。
【0022】
搬送装置2は、検査対象の被検査物Wを搬送路上で所定間隔おきに順次搬送するもので、例えば装置本体に対して水平に配置されたベルトコンベアで構成される。
【0023】
搬送装置としてのベルトコンベア2は、X線を透過しやすい材料(原子量の大きい元素以外の元素)からなる搬送ベルト2aを備え、被検査物Wの検査を行うときに、不図示の搬送制御手段の制御に基づく駆動モータMの回転により予め設定入力部5にて設定される搬送速度で搬送ベルト2aを駆動する。これにより、搬入口から搬入された被検査物Wは、搬出口側に向けて図1の搬送方向Xに搬送される。
【0024】
X線発生器3は、搬入口から搬出口に向かって搬送方向Xに搬送路上を搬送される被検査物WにX線を照射するもので、電圧を印可して加速させた電子をターゲットに射突させてX線を発生させる円筒状のX線管と、X線管が発生させたX線をX線検出器4に向けて照射するための照射スリットとを有する。
【0025】
X線管は、例えば金属製の箱体内部に設けられる円筒状のX線管を絶縁油により浸漬した構成であり、X線管の陰極からの電子ビームを陽極ターゲットに照射させてX線を生成する。X線管は、その長手方向が被検査物Wの搬送方向(図1のX方向)の平面上で直交する方向に設けられ、生成したX線を、下方のX線検出器4に向けて、長手方向に沿った照射スリットによりスクリーン状にして照射する。
【0026】
X線検出器4は、搬送される被検査物Wの搬送方向Xの平面上で搬送方向Xと直交する方向に複数の素子が一直線上に配置されたものである。さらに説明すると、X線検出器4は、ライン状に整列して配設された複数のフォトダイオードと、ライン状のフォトダイオード上に設けられたシンチレータとを備えてアレイ状に構成される。
【0027】
X線検出器4は、複数の素子(フォトダイオードとシンチレータのアレイ)によって被検査物Wおよび搬送ベルト2aを透過するX線を検出し、この検出した検出データを素子毎に複数の素子数を1ラインとして信号処理部6に順次出力し、被検査物Wの搬送に伴い順次出力を繰り返す。
【0028】
設定入力部5は、装置本体に設けられる例えばキー、押しボタン、スイッチ、表示部7の表示画面上のソフトキーなどで構成される。
【0029】
設定入力部5は、被検査物Wのシール不良の検査を行うにあたって、図2に示す被検査物Wの外形部領域S1を抽出するための閾値、内容物領域S2を抽出するための閾値、シール部領域S3内の不要物の有無に基づくシール不良の判定基準となる検出リミット値を被検査物Wの品種や異物の種類などに応じて適宜設定して信号処理部6の後述する記憶手段11に記憶する際に操作される。
【0030】
また、設定入力部5は、搬送装置2の搬送ベルト2aの搬送速度の設定、図2に示す被検査物Wの内容物収容領域S4の基準辺の位置、基準線L1の長さ、隣接線L2の長さ、近隣線L3(L3a,L3b)の長さを設定して信号処理部6の記憶手段11に記憶する際に操作される。
【0031】
さらに説明すると、内容物収容領域S4の基準辺の位置は、前述した包装工程や搬送方向Xに応じて変わるものであり、内容物が片寄って収容される内容物収容領域S4の一辺の位置に相当し、例えば矩形状(正方形、長方形)の内容物収容領域S4の4つの辺のうち、上辺、下辺、右辺、左辺の何れかの辺が基準辺の位置として設定入力部5にて設定される。例えば図2は、内容物が内容物収容領域S4の左辺に片寄っているので、内容物収容領域S4の左辺が基準辺の位置として設定された状態を示している。
【0032】
また、基準線L1は、内容物収容領域S4の基準辺を特定するための線であり、その長さ(例えばmm単位)が設定入力部5にて設定される。隣接線L2は、内容物収容領域S4の基準辺に隣接する2つの隣接辺を特定するための線であり、その長さが設定入力部5にて設定される。近隣線L3(L3a,L3b)は、隣接線L2の位置を特定するための線であり、その長さ(例えばmm単位)が設定入力部5にて設定される。
【0033】
信号処理部6は、図1に示すように、記憶手段11、外形部領域抽出手段12、内容物領域抽出手段13、内容物収容領域算出手段14、シール部領域算出手段15、シール不良判定手段16を含んで構成される。
【0034】
記憶手段11は、X線検出器4からの各被検査物W毎のX線透過データを記憶する。X線透過データは、X線検出器4からの電気信号を不図示のA/D変換器によりA/D変換して得られる。さらに説明すると、記憶手段11は、1つの被検査物Wの検査を行う毎に、X線検出器4の1ライン(Y方向)あたり例えば数百個のX線透過データを、少なくとも搬送される被検査物Wの搬送方向の長さ(前端から後端までの検出期間に相当)に対応した所定ライン数(例えば数百ライン)だけ格納する。
【0035】
外形部領域抽出手段12は、記憶手段11に格納されたX線透過データから透過量が大きいほど淡いとした濃淡値に対応する濃度レベルをもつ全体の透過画像(被検査物Wとベルト面を含む画像)を作成し、この作成した全体の透過画像から設定入力部5に設定される閾値以上の濃度レベルの透過画像を包装材Waの外形部領域(図2に示す被検査物Wの輪郭から内側の面積を示す領域)S1として抽出する。
【0036】
なお、外形部領域抽出手段12は、記憶手段11に格納されたX線透過データから作成した全体の透過画像の全体の濃度ヒストグラムを求め、求めた濃度ヒストグラムから被検査物Wのデータと被検査物W以外(ベルト面)のデータとに切り分けて2値化し、例えば全体の濃度ヒストグラムにおいて、被検査物のデータを255、被検査物以外のデータを0としてデータを2値化し、2値化したデータのうち被検査物Wのデータを包装材Waの外形部領域S1として抽出することもできる。
【0037】
内容物領域抽出手段13は、設定入力部5にて設定された閾値を用い、外形部領域S1内の透過画像から閾値を超える濃度レベルの透過画像を被検査物Wの内容物Wbが存在する内容物領域(図2に示す内容物の輪郭から内側の面積を示す部分)S2として抽出する。また、内容物領域抽出手段13は、外形部領域S1の抽出処理と並行して、設定入力部5にて設定された閾値を超える濃度レベルの透過画像を被検査物Wの内容物Wbが存在する内容物領域S2として抽出してもよい。
【0038】
なお、内容物領域抽出手段13にて抽出された内容物領域S2の画像は、外形に細かな凹部が存在するため、この内容物領域S2の画像に対し、N回の膨張の後にN回の収縮を行うクロージング処理により外形の凹部を穴埋めする画像処理を行うのが好ましい。
【0039】
内容物収容領域算出手段14は、図2に示すように、内容物が収容される領域を形成する矩形状(正方形、長方形)の内容物収容領域S4を算出するもので、基準線算出手段14a、近隣線算出手段14bを備える。
【0040】
基準線算出手段14aは、図2に示すように、内容物収容領域S4の基準辺(一辺)の一部分に相当する基準線L1を算出する。さらに説明すると、基準線算出手段14aは、被検査物Wの内容物領域S2における内容物の輪郭について、設定入力部5にて設定された内容物収容領域S4の基準辺の位置に対応する部分を直線近似し、設定入力部5にて設定された長さの直線近似部分を基準線L1として算出する。その際、基準線L1は、内容物収容領域S4の基準辺の位置に対応して内容物領域S2における内容物の輪郭を直線近似した近似直線の中点を基準とし、近似直線の中点と基準線L1の中点とが一致するように算出する。なお、近似直線は、内容物の輪郭を構成する点群(画素の集まり)について直線との距離の総和が最小となる直線を求める最小二乗近似を用いて算出する。
【0041】
近隣線算出手段14bは、図2に示すように、内容物収容領域S4の基準辺に隣接する隣接辺(2つの辺)の一部分に相当する近隣線L3(L3a,L3b)を算出する。さらに説明すると、近隣線算出手段14bは、被検査物Wの内容物領域S2における内容物の輪郭について、内容物収容領域S4の基準辺に隣接する隣接辺に対応する部分を直線近似して2本の近隣線L3(L3a,L3b)を算出する。
【0042】
内容物収容領域算出手段14は、図2に示すように、近隣線算出手段14bにて算出した2本の近隣線L3(L3a,L3b)を延長し、基準線算出手段14aにて算出した基準線L1の両端を延長した近似直線からなる延長基準線L4との交点を始点とする2本の隣接線L2(L2a,L2b)を設定入力部5にて設定された長さで算出する。そして、延長基準線L4と2本の隣接線L2(L2a,L2b)と、この2本の隣接線L2(L2a,L2b)の終点間を結ぶ直線L5とによって囲まれる領域を内容物収容領域S4として算出する。
【0043】
シール部領域算出手段15は、図2に示すように、内容物収容領域算出手段14にて算出された内容物収容領域S4を外形部領域抽出手段12にて抽出された被検査物Wの外形部領域S1から除いてシール部領域S3を算出する。
【0044】
シール不良判定手段16は、図2に示すように、シール部領域算出手段15にて算出したシール部領域S3内に不要物があるか否かによりシール不良の有無を判定する。
【0045】
表示部7は、例えば液晶表示器などの表示装置で構成され、外形部領域S1、内容物領域S2、シール部領域S3、内容物収容領域S4を含む被検査物Wの全体画像、判定結果に基づく被検査物Wを平面視したX線透過画像、「OK」や「NG」の良否判定結果、総検査数、良品数、NG総数などの検査結果を設定入力部5の操作に基づいて表示画面に表示する。
【0046】
[X線検査方法]
そして、上記のように構成されるX線検査装置1を用いて被検査物Wのシール不良の有無を判定するX線検査方法について図3のフローチャートを用いて説明する。
【0047】
まず、記憶手段11に記憶されたX線透過データによる透過画像から被検査物Wの包装材の外形部領域S1を外形部領域抽出手段12にて抽出する(ST1)。また、記憶手段11に記憶されたX線透過データによる透過画像から内容物領域S2を内容物領域抽出手段13にて抽出する(ST2)。
【0048】
続いて、内容物領域抽出手段13にて抽出した内容物領域S2の内容物の輪郭から内容物収容領域S4の基準辺の一部分である基準線L1を算出し、この基準線L1を用いて以下に説明する算出方法により内容物収容領域S4を算出する(ST3)。
【0049】
[内容物収容領域の算出方法]
以下、内容物収容領域算出手段14による内容物収容領域S4の算出方法について図4のフローチャートと図5の説明図を参照しながら説明する。ここでは、被検査物Wの内容物収容領域S4の基準辺の位置が左辺に設定され、基準線L1、隣接線L2、近隣線L3a,L3bそれぞれの長さが設定入力部5にて設定されているものとする。
【0050】
内容物収容領域S4を算出する場合には、まず、内容物領域抽出手段13にて抽出した内容物領域S2の内容物の輪郭について直線近似して基準線L1を算出する(ST11)。具体的には、図5(a)に示すように、設定入力部5にて設定された内容物収容領域S4の基準辺の位置に対応する内容物領域S2の内容物の輪郭について直線近似し、直線近似した内容物の輪郭の左辺の中点と基準線L1の中点とが一致するように基準線L1を引く。
【0051】
次に、図5(b)に示すように、基準線L1の両端を延長した近似直線からなる延長基準線L4を引く(ST12)。
【0052】
次に、内容物収容領域S4の基準辺に隣接する隣接辺(2辺)の一部分に相当する2本の近隣線L3a,L3bを算出する(ST13)。具体的には、図5(c)に示すように、内容物領域抽出手段13にて抽出した内容物領域S2の内容物の輪郭について、内容物収容領域S4の基準辺に隣接する隣接辺に対応する部分を直線近似し、基準線L1の両端を延長した近似直線からなる延長基準線L4との交点を始点として、設定入力部5にて設定された長さで2本の近隣線L3a,L3bを引く。
【0053】
次に、2本の近隣線L3a,L3bを基準として、内容物収容領域S4の基準辺に隣接する隣接辺(2辺)に相当する2本の隣接線L2(L2a,L2b)を算出する(ST14)。具体的には、図5(d)に示すように、一方の近隣線L3aを通って延長基準線L4と交差する交点P1を始点として、予め設定入力部5にて設定された長さで一方の隣接線L2aを引く。同様に、他方の近隣線L3bを通って延長基準線L4と交差する交点P2を始点として、予め設定入力部5にて設定された長さで他方の隣接線L2bを引く。これにより、図5(e)に示すように、隣接線L2aの始点と隣接線L2bの始点との間に位置する延長基準線L4が内容物収容領域S4の基準辺に相当する。
【0054】
次に、図5(f)に示すように、隣接線L2aの終点と隣接線L2bの終点との間を直線L5で結び(ST15)、延長基準線L4と2本の近隣線L3a,L3bと直線L5とで囲まれる領域を内容物収容領域S4として算出する(ST3)。
【0055】
次に、シール部領域算出手段15は、上記のようにして内容物収容領域算出手段14にて算出された内容物収容領域S4を外形部領域抽出手段12にて抽出された被検査物Wの外形部領域S1から除いてシール部領域S3を算出する(ST4)。
【0056】
そして、シール不良判定手段16は、シール部領域算出手段15にて算出したシール部領域S3内に不要物があるか否かによりシール不良の有無を判定し(ST5)、判定処理を終了する。
【0057】
[変形例]
ところで、上述した実施の形態において、ほぼ一定の内容物収容領域S4の外形寸法が予め判っている場合には、内容物収容領域S4の外形寸法(縦、横サイズ)を設定入力部5から入力し、図6(a)に示すように、前述した算出方法によって基準線L1を延長した近似直線からなる延長基準線L4と2本の近隣線L3(L3a,L3b)から得られるコ字状の辺(内容物収容領域S4の基準辺と隣接辺に対応する辺)に対し、設定入力部5から入力された外形寸法の内容物収容領域S4を位置合わせしてシール部領域S3を特定してもよい。
【0058】
そして、上記のようにして得られる内容物収容領域S4を外形部領域抽出手段12にて抽出された被検査物Wの外形部領域S1から除いてシール部領域S3を算出し、算出したシール部領域S3内に不要物があるか否かによりシール不良の有無をシール不良判定手段16が判定する。例えば図6(b)の例では、シール部領域S3内に不要物Wa(図の黒く塗りつぶした部分)が存在するので、シール不良判定手段16がシール不良有りと判定する。
【0059】
このように、本実施の形態のX線検査装置及びX線検査方法では、内容物が収容される内容物収容領域の一辺の一部の直線から内容物収容領域を特定し、被検査物の外形部領域から内容物収容領域をマスクしてシール部領域を特定する。これにより、被検査物の包装材の外形が変形したり、包装材に収容される内容物の形状がばらついたとしても、特定するシール部領域の信頼性が高くなり、従来と比較して、より高精度にシール部領域内の不要物の有無を判定してシール不良の検査を行うことができ、シール不良検査の品質の向上を図ることができる。
【0060】
以上、本発明に係るX線検査装置およびX線検査方法の最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
1 X線検査装置
2 搬送装置
2a 搬送ベルト
3 X線発生器
4 X線検出器
5 設定入力部
6 信号処理部
7 表示部
11 記憶手段
12 外形部領域抽出手段
13 内容物領域抽出手段
14 内容物収容領域算出手段
14a 基準線算出手段
14b 近隣線算出手段
15 シール部領域算出手段
16 シール不良判定手段
W 被検査物
Wa 不要物
X 搬送方向
S1 外形部領域
S2 内容物領域
S3 シール部領域
S4 内容物収容領域
L1 基準線
L2(L2a,L2b) 隣接線
L3(L3a,L3b) 近隣線
L4 延長基準線
L5 直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6