【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記IR700−分子結合体が、IR700−抗体結合体、IR700−抗体フラグメント結合体、IR700−Affibody(登録商標)分子結合体、IR700−ハプテン結合体、IR700−レクチン結合体、IR700−タンパク質結合体、IR700−核酸分子結合体またはIR700−機能的核酸結合体を含み、ここで、該抗体、抗体フラグメント、Affibody(登録商標)分子、ハプテン、レクチン、タンパク質、核酸分子および該機能的核酸は、前記標的分子に特異的に結合し得る、請求項1または2に記載のインビトロの方法。
前記サンプルが、食品サンプル、環境サンプル、リアクタサンプル、発酵サンプルまたは被験体から得られたサンプルである、請求項1〜3のいずれかに記載のインビトロの方法。
前記疎水性IR700−分子結合体−標的分子複合体が形成された後に、該サンプルを遠心分離して、該疎水性IR700−分子結合体−標的分子複合体にペレットを形成させる、請求項1〜5のいずれかに記載のインビトロの方法。
前記疎水性IR700−分子結合体−標的分子複合体が形成された後に、該疎水性IR700−分子結合体−標的分子複合体を容器の底に沈降させる、請求項1〜5のいずれかに記載のインビトロの方法。
前記疎水性IR700−分子結合体−標的分子複合体を前記サンプルから分離する工程が、該疎水性IR700−分子結合体−標的分子複合体が形成された後、上清を回収する工程を含む、請求項1〜7のいずれかに記載のインビトロの方法。
前記IR700−分子結合体が、IR700−抗体結合体、IR700−抗体フラグメント結合体、IR700−Affibody(登録商標)分子結合体、IR700−ハプテン結合体、IR700−レクチン結合体、IR700−タンパク質結合体、IR700−核酸分子結合体またはIR700−機能的核酸結合体を含み、ここで、該抗体、抗体フラグメント、Affibody(登録商標)分子、ハプテン、レクチン、タンパク質、核酸分子および該機能的核酸は、前記標的分子に特異的に結合し得る、請求項11に記載の組成物。
前記被験体に照射する工程が、該被験体が装着したデバイスを用いる工程を含み、該デバイスは、近赤外(NIR)発光ダイオード(LED)を備える、請求項11〜13のいずれかに記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
いくつかの実施形態の詳細な説明
別段説明されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学用語は、開示される発明が属する分野の当業者が通常理解している意味と同じ意味を有する。単数形の用語「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに別のことを示していない限り、複数の指示対象を含む。同様に、単語「または」は、文脈が明らかに別のことを示していない限り、「および」を含むと意図される。「含む(Comprising)」は、「含む(including)」を意味する。ゆえに、「AまたはBを含む」は、「Aを含む」または「Bを含む」または「AおよびBを含む」を意味する。
【0012】
本開示の実施形態を実施するおよび/または試験するのに適した方法および材料が、下記で説明される。そのような方法および材料は、単なる例証的なものであって、限定することが意図されていない。本明細書中に記載される方法および材料と類似または等価な他の方法および材料を使用することができる。例えば、本開示が属する分野で周知の従来の方法は、様々な全般的な参考文献およびより具体的な参考文献に記載されており、それらの参考文献としては、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989;Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3d ed.,Cold Spring Harbor Press,2001;Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates,1992(および2000年までの補遺);Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,4th ed.,Wiley & Sons,1999;Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1990;およびHarlow and Lane,Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999が挙げられる。
【0013】
特許および特許出願を含むすべての参考文献が、参照により本明細書中に援用される。さらに、本明細書中で参照されるすべてのGenBank(登録商標)アクセッション番号に関連する配列も、2014年8月8日に入手可能な配列について参照により援用される。
【0014】
本開示の様々な実施形態の精査を容易にするために、以下に具体的な用語の説明が提供される:
【0015】
投与:ある作用物質、例えば、IR700−分子結合体を任意の効果的な経路によって被験体に提供するかまたは与えること。例示的な投与経路としては、局所的、注射(例えば、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、腫瘍内、動脈内および静脈内)、経口、眼球、舌下、直腸、経皮的、鼻腔内、経膣および吸入経路が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの例において、投与は、臓器灌流などの灌流中に達成される。
【0016】
抗体(Ab):インタクトな免疫グロブリン(例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体)、抗体のバリアント(例えば、キメラ抗体)および抗体の一部、例えば、天然に存在する抗体または組換え抗体の抗原結合フラグメントを含む。通常、Abは、標的タンパク質などの抗原のエピトープを特異的に認識してそれに結合する、少なくとも軽鎖免疫グロブリン可変領域または重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドリガンドである。各重鎖および軽鎖は、重鎖可変(V
H)領域および軽鎖可変(V
L)領域と呼ばれる可変領域を有する。そのV
H領域およびV
L領域は、一緒になって、抗体が認識する抗原への結合に関与する。抗体は、日常的な方法を用いてIR700分子に結合体化され得、例えば、インビトロまたはインビボにおいて標的分子を除去するため、単離するためまたは分離するために、本明細書中に提供される方法において使用され得る。
【0017】
抗原(Ag):動物において抗体の産生またはT細胞応答を刺激し得る化合物、組成物または物質であって、動物に注射されるかまたは吸収される組成物(例えば、腫瘍特異的タンパク質を含む組成物)が含まれる。抗原の例としては、免疫細胞によって認識されるものなどの抗原決定基を含むペプチド、脂質、多糖および核酸が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの例において、抗原には、腫瘍特異的ペプチド(例えば、がん細胞の表面上に見出されるもの)またはその免疫原性フラグメントが含まれる。
【0018】
抗原は、開示される抗原などの異種抗原によって誘導されるものを含む、特異的な体液性免疫または細胞性免疫の産物と反応する。「エピトープ」または「抗原決定基」とは、B細胞および/またはT細胞が反応する抗原の領域を指す。1つの実施形態において、エピトープが、MHC分子とともに提示されているとき、T細胞は、そのエピトープに反応する。エピトープは、連続したアミノ酸、またはタンパク質の三次元折りたたみによって隣接した不連続のアミノ酸の両方から形成され得る。連続したアミノ酸から形成されるエピトープは、通常、変性溶媒に曝露されても保持されるのに対して、三次元折りたたみによって形成されるエピトープは、通常、変性溶媒で処理されると失われる。エピトープは、ユニークな空間立体構造の中に、通常、少なくとも3つ、より一般的には少なくとも5つ、約9つまたは約8〜10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間立体構造を決定する方法としては、例えば、X線結晶構造解析および核磁気共鳴が挙げられる。
【0019】
抗体が標的抗原またはそのエピトープに結合することは、本明細書中に提供される方法を用いて標的を除去するために使用され得る。
【0020】
アプタマー:特異的な標的作用物質(例えば、タンパク質または有機小分子)に高親和性かつ高特異性(例えば、10
−14Mもの高さ)で結合する一本鎖(ss)核酸分子(例えば、DNAまたはRNA)であって、標的に結合したとき、そのss核酸分子は、立体構造変化を起こし、三次構造を形成する。それらは、通常、およそ15〜60ヌクレオチド(nt)長であるが、いくつかはそれより長い(例えば、200nt超)。したがって、いくつかの例において、アプタマーは、少なくとも15nt、少なくとも20nt、少なくとも25nt、少なくとも30nt、少なくとも50nt、少なくとも60nt、少なくとも75nt、少なくとも100nt、少なくとも150nt、少なくとも200nt、例えば、15〜250nt、15〜200ntまたは20〜50ntである。アプタマーは、日常的な方法を用いてIR700分子に結合体化され得、例えば、インビトロまたはインビボにおいて標的分子を除去するため、単離するためまたは分離するために、本明細書中に提供される方法において使用され得る。
【0021】
アプタマーは、公知のものであり、指数的富化によるリガンドの系統進化(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)(SELEX)と呼ばれる、コンビナトリアル選択プロセスによって得られている(例えば、Ellingtonら、Nature 1990,346,818−822;Tuerk and Gold Science 1990,249,505−510;Liuら、Chem.Rev.2009,109,1948−1998;Shamahら、Acc.Chem.Res.2008,41,130−138;Famulokら、Chem.Rev.2007,107,3715−3743;Manimalaら、Recent Dev.Nucleic Acids Res.2004,1,207−231;Famulokら、Acc.Chem.Res.2000,33,591−599;Hesselberthら、Rev.Mol.Biotech.2000,74,15−25;Wilsonら、Annu.Rev.Biochem.1999,68,611−647;Morrisら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1998,95,2902−2907を参照のこと)。そのようなプロセスでは、目的の標的分子に結合することができるDNA分子またはRNA分子は、選択、増幅および変異の反復工程によって、10
14〜10
15個の異なる配列からなる核酸ライブラリーから選択される。アデノシンなどの有機小分子から、トロンビンなどのタンパク質ならびにさらにウイルスおよび細胞まで、広範囲の標的に特異的なアプタマーが同定された(Liuら、Chem.Rev.2009,109:1948−98;Leeら、Nucleic Acids Res.2004,32,D95−D100;Navani and Li,Curr.Opin.Chem.Biol.2006,10,272−281;Songら、TrAC,Trends Anal.Chem.2008,27:108−17)。標的に対するアプタマーの親和性は、抗体の親和性に匹敵し得るものであり、ピコモル濃度範囲ほど低い解離定数を有する(Morrisら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1998,95:2902−7;Greenら、Biochemistry 1996,35:14413−24)。
【0022】
自己免疫疾患:免疫系が、正常な宿主の一部である抗原(すなわち、自己抗原)に対して免疫応答(例えば、B細胞応答またはT細胞応答)を起こし、結果として組織に損傷をもたらす疾患。自己抗原は、宿主細胞に由来し得るか、または正常に粘膜表面にコロニー形成する微生物(共生生物としても知られる)などの共生生物に由来し得る。
【0023】
哺乳動物が罹る例示的な自己免疫疾患としては、関節リウマチ、若年性乏関節炎、コラーゲン誘発関節炎、アジュバント誘発関節炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎)、自己免疫性胃萎縮症、尋常性天疱瘡、乾癬、白斑、1型糖尿病、非肥満性糖尿病、重症筋無力症、グレーブス病、橋本甲状腺炎、硬化性胆管炎、硬化性唾液腺炎、全身性エリテマトーデス、自己免疫性血小板減少紫斑病、グッドパスチャー症候群、アジソン病、全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血などが挙げられる。
【0024】
結合:2つの物質間または分子間の会合、例えば、1つの核酸分子と別の核酸分子(またはそれ自体)とのハイブリダイゼーション、抗体、Affibody(登録商標)分子、ハプテンもしくは機能的核酸とタンパク質もしくは有機小分子との会合、タンパク質と別のタンパク質もしくは核酸分子との会合、レクチンと炭水化物との会合、またはハプテンと抗体との会合。結合は、当業者に公知の任意の手順によって検出され得、その手順としては、ウエスタンブロット、イムノブロット、酵素結合免疫吸着測定法(enzyme−linked immunosorbant assay)(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫沈降、表面プラズモン共鳴、化学発光、蛍光偏光、リン光、免疫組織化学的解析、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(matrix−assisted laser desorptionlionization)飛行時間型質量分析、マイクロサイトメトリー(microcytometry)、マイクロアレイ、顕微鏡法、蛍光活性化細胞分取(FACS)およびフローサイトメトリーが挙げられるがこれらに限定されない。
【0025】
特定の作用物質(「特異的結合剤」)が、特定の標的と特異的に反応し得るが、無関係な分子とは反応しないとき、1つの分子は、別の分子に「特異的に結合する」、例えば、標的と特異的に免疫反応するか、標的に特異的にハイブリダイズするか、または標的に特異的に結合すると言われる。例えば、鉛特異的結合剤は、インビトロまたはインビボにおいて、鉛にのみ実質的に結合し、CD45特異的結合剤は、インビトロまたはインビボにおいて、CD45タンパク質にのみ実質的に結合する。この結合は、例えば、特異的結合剤(例えば、抗体もしくはその機能的フラグメント、Affibody(登録商標)分子、ハプテン、レクチン、タンパク質、核酸分子または機能的核酸分子)と標的(例えば、細胞、タンパク質、炭水化物、病原体、有機小分子、金属、DNAまたはRNA)との間の、非ランダムな結合反応である。結合特異性は、特異的結合剤が標的と無関係な分子とをを区別して結合する能力、ゆえに、2つの異なる分子を区別する能力の基準点から決定され得る。例えば、十分な量のオリゴヌクレオチド分子がその標的核酸分子と塩基対を形成するかまたはその標的核酸分子にハイブリダイズする場合、そのオリゴヌクレオチド分子は、標的核酸分子に結合するかまたは安定に結合して、その結合の検出を可能とする。
【0026】
いくつかの例において、ある分子(例えば、IR700−分子結合体の分子)は、サンプルまたは被験体における他の分子についての結合定数より少なくとも10
3M
−1高いか、10
4M
−1高いか、または10
5M
−1高い結合定数で、標的(例えば、タンパク質)に特異的に結合する。特定の例において、2つの化合物は、構成要素間の複合体形成に対する結合定数が少なくとも10
4L/mol、例えば、少なくとも10
6L/mol、少なくとも10
8L/molまたは少なくとも10
10L/molであるとき、特異的に結合すると言われる。2つの構成要素についての結合定数は、当該分野で周知の方法を用いて決定され得る。
【0027】
特定の例において、2つの化合物は、少なくとも約0.1×10
−8M、少なくとも約0.3×10
−8M、少なくとも約0.5×10
−8M、少なくとも約0.75×10
−8M、少なくとも約1.0×10
−8M、少なくとも約1.3×10
−8M、少なくとも約1.5×10
−8M、少なくとも約2.0×10
−8M、少なくとも約2.5×10
−8、少なくとも約3.0×10
−8、少なくとも約3.5×10
−8、少なくとも約4.0×10
−8、少なくとも約4.5×10
−8または少なくとも約5.0×10
−8Mの結合親和性のとき、特異的に結合すると言われる。
【0028】
ある特定の実施形態において、標的に結合する特異的結合剤は、≦104nM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10
−8Mまたはそれ未満、例えば、10
−8M〜10
−13M、例えば、10
−9M〜10
−13M)の解離定数(Kd)を有する。1つの実施形態において、Kdは、目的の抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて行われる放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される(例えば、Chenら、J.Mol.Biol.293:865−881,1999を参照のこと)。別の例において、Kdは、約10反応単位(response unit)(RU)において、固定化された抗原CM5チップとともに25℃においてBIACORES−2000またはBIACORES−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,N.J.)を用いる表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定される。
【0029】
がん:異常な細胞成長または制御されない細胞成長を特徴とする悪性腫瘍。がんに関連することが多い他の特徴としては、転移、隣接する細胞の正常な機能の干渉、サイトカインまたは他の分泌産物の異常なレベルでの放出および炎症応答または免疫学的応答の抑制または増悪、リンパ節などの周囲のまたは遠位の組織または臓器の浸潤などが挙げられる。「転移性疾患」とは、元の腫瘍部位を残して、例えば血流またはリンパ系を介して身体の他の部分に遊走するがん細胞のことを指す。1つの例において、開示される方法による除去のための標的となる細胞は、がん細胞である。
【0030】
接触:固体または液体の形態を含む、直接的な物理的会合での配置。接触することは、インビトロもしくはエキソビボにおいて、例えば、サンプルに試薬を加えることによって、またはインビボにおいて被験体に投与することによって、生じ得る。
【0031】
減少:何らかの質、量または強度が低下すること。1つの例において、本明細書中の方法は、サンプル、供給源または被験体における標的の量を減少させる。例えば、IR700−分子複合体の使用は、IR700−分子が特異的に結合する作用物質であり得るかまたはIR700−分子複合体の分子であり得る標的の量を減少させる。いくつかの例において、標的の減少または低下は、IR700−分子が加えられない場合およびNIR光が適用されない場合に観察される標的の量と比べて、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%である。他の例において、減少は、IR700−分子が加えられない場合およびNIR光が適用されない場合に観察される標的の量と比べて、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍またはさらに少なくとも15もしくは20倍の標的の減少などの倍率変化として表現される。そのような減少は、当該分野における日常的な方法ならびに本明細書中に開示される方法を用いて測定され得る。
【0032】
検出:特定の作用物質(例えば、標的)が存在するかまたは存在しないかを決定することであって、いくつかの例では、検出された場合、その作用物質の半定量または定量をさらに含む。
【0033】
デオキシリボザイム(DNAザイム):特定の標的に対して触媒活性を示す機能的DNA分子。触媒DNAとも称される。DNAザイムは、通常、単一のRNA塩基および酵素鎖を含む基質鎖を含む。DNAザイムは、特定の基質(例えば、標的)に対して高い触媒性加水分解切断活性を示す。その特定の標的の存在下において、その標的は、酵素鎖に結合して、DNAザイムの立体構造変化をもたらし、その基質鎖をRNA塩基において切断する。DNAザイムは、日常的な方法を用いてIR700分子に結合体化され得、例えば、インビトロまたはインビボにおいて標的分子を除去するため、単離するためまたは分離するために、本明細書中に提供される方法において使用され得る。
【0034】
様々な金属イオン、例えば、Pb
2+(Breaker,and Joyce,Chem.Biol.1994,1:223−9;Li and Lu,J.Am.Chem.Soc.2000,122,10466−7)、Cu
2+(Carmiら、Chem.Biol.1996,3:1039−46;Cuenoudら、Nature 1995,375:611−14)、Zn
2+(Santoroら、J.Am.Chem.Soc.2000,122,2433−243;Liら、Nucleic Acids Res.2000,28,481−488)、Co
2+(Meiら、J.Am.Chem.Soc.2003,125:412−20;Bruesehoffら、Comb.Chem.High Throughput Screening 2002,5:327−35)、Mn
2+(Wangら、J.Am.Chem.Soc.2003,125,6880−1)およびUO
22+(Liuら、Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.2007,104:2056−61)に対して高い特異性を有するDNAザイムが入手可能である。
【0035】
有効量:単独で、またはさらなる治療薬(複数可)(例えば、化学療法剤)とともに、例えば、インビトロ、インビボもしくはエキソビボにおいて、所望の効果を達成するのに十分な組成物の量。作用物質(例えば、IR700−分子結合体またはNIR光)の有効量は、いくつかの因子に依存し得、その因子としては、サンプル、供給源、処置される被験体または細胞、適用される供給源、処置される状態の重症度およびタイプ、特定の治療薬(例えば、特定のIR700−分子結合体)、ならびに投与様式が挙げられるがこれらに限定されない。有効量は、様々なインビトロ、インビボまたはインサイチュイムノアッセイによっても決定され得る。IR700−分子結合体および/またはNIR光は、所望の応答を得るために必要に応じて、単回または数回で、投与され得る。
【0036】
1つの例において、有効量または有効濃度は、標的をサンプル、供給源または被験体から除去するまたは分離するのに十分な量または濃度である。1つの例において、治療有効量または治療有効濃度は、疾患の進行を遅延させるのに十分であるかもしくは疾患を後退させるのに十分であるか、またはがんなどの疾患によって引き起こされる症候を減少させることができる、量または濃度である。1つの例において、治療有効量または治療有効濃度は、腫瘍を有する患者の生存時間を延長するのに十分な量または濃度である。
【0037】
1つの例において、有効量または有効濃度は、標的をサンプル、供給源または被験体から除去するまたは分離するのに十分な量または濃度である。1つまたはそれを超える標的は、当該方法が有効であるために、完全に排除されなくてもよい。例えば、IR700−分子結合体を含む組成物をサンプルまたは供給源または被験体に接触させるかまたは投与した後、NIR光を照射することは、そのサンプル、供給源または被験体に存在する標的の量を、IR700−分子結合体の接触または投与の前に存在する標的の量と比べて、実質的に減少させ得る(例えば、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%またはさらに少なくとも100%の減少)。
【0038】
1つの例において、有効量または有効濃度は、インビボまたはインビトロにおいて、細胞の混合集団から標的細胞を減少させるかまたは排除する(およびいくつかの例においては死滅させる)のに十分な量または濃度である。1つまたはそれを超える標的細胞は、当該方法が有効であるために、完全に排除される必要はない。例えば、IR700−分子結合体を含む組成物をサンプルまたは供給源または被験体に接触させるかまたは投与した後、NIR光を照射することは、そのサンプル、供給源または被験体における細胞混合物に存在する標的細胞の量を、IR700−分子結合体の接触または投与の前に存在する標的細胞の量と比べて、実質的に減少させ得る(例えば、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%またはさらに少なくとも100%の減少)。
【0039】
1つの例において、有効量または有効濃度は、サンプル、供給源または被験体から標的を単離するかまたは精製するのに十分な量または濃度である。1つまたはそれを超える標的は、当該方法が有効であるために、完全に単離または精製される必要はない。例えば、IR700−分子結合体を含む組成物をサンプルまたは供給源または被験体に接触させるかまたは投与した後、NIR光を照射することは、IR700−分子結合体の接触または投与の前に存在する量の標的の純度と比べて、その標的の純度を実質的に上昇させ得る(例えば、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%またはさらに少なくとも100%の純度)。
【0040】
1つの特定の例において、有効量または有効濃度は、例えば、疾患または障害に関連する1つまたはそれを超える症候を減少させるかまたは阻害することによって、被験体におけるその疾患または障害を処置するのに十分な量または濃度である。1つまたはそれを超える症候は、当該組成物が有効であるために、完全に排除されなくてもよい。例えば、IR700−分子結合体を含む組成物を被験体に投与した後、NIR光を照射することは、その疾患または障害の1つまたはそれを超える徴候または症候を、IR700−分子結合体の接触または投与の前の徴候または症候と比べて、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%またはさらに少なくとも100%実質的に減少させ得る。
【0041】
特定の例において、インビトロまたはエキソビボの目的のためのIR700−分子結合体の有効量は、少なくとも0.5μg/m
2、例えば、少なくとも1μg/m
2、少なくとも2μg/m
2、少なくとも5μg/m
2、少なくとも10μg/m
2、少なくとも25μg/m
2、少なくとも50μg/m
2、少なくとも100μg/m
2、少なくとも250μg/m
2または少なくとも500μg/m
2、例えば、0.5μg/m
2〜500μg/m
2、1μg/m
2〜500μg/m
2、1μg/m
2〜50μg/m
2または2μg/m
2〜20μg/m
2である。しかしながら、当業者は、例えば、特定のIR700−分子結合体またはサンプルに応じて、それより多いまたは少ない量も使用され得ることを認識する。
【0042】
特定の例において、インビボの目的のためのIR700−分子結合体の有効量は、例えば、iv投与されるとき、60キログラムあたり0.5ミリグラム(mg/kg)、少なくとも5mg/60kg、少なくとも10mg/60kg、少なくとも20mg/60kg、少なくとも30mg/60kg、少なくとも50mg/60kg、例えば、0.5〜50mg/60kg、例えば、1mg/60kg、2mg/60kg、5mg/60kg、20mg/60kgまたは50mg/60kgの用量である。別の例において、IR700−分子結合体の有効な用量は、例えば、腫瘍内に投与されるかまたはip投与されるとき、少なくとも10μg/kg、例えば、少なくとも100μg/kg、少なくとも500μg/kgまたは少なくとも500μg/kg、例えば、10μg/kg〜1000μg/kg、例えば、100μg/kg、250μg/kg、約500μg/kg、750μg/kgまたは1000μg/kgの用量である。1つの例において、IR700−分子結合体の有効な用量は、例えば、局所用溶液として投与されるとき、少なくとも1μg/ml、例えば、少なくとも5000μg/ml、例えば、20μg/ml〜100μg/ml、100μg/ml〜500μg/ml、100μg/ml〜5000μg/ml、例えば、10μg/ml、20μg/ml、30μg/ml、40μg/ml、50μg/ml、60μg/ml、70μg/ml、80μg/ml、90μg/ml、100μg/ml、500μg/ml、1000μg/ml、2500μg/mlまたは5000μg/mlである。しかしながら、当業者は、例えば、特定のIR700−分子結合体に応じて、それより多いまたは少ない投与量も使用され得ることを認識する。特定の例において、そのような毎日の投与量は、1つもしくはそれを超える分割量(例えば、2、3または4回)または単一製剤で投与される。開示されるIR700−分子結合体は、他の治療薬(例えば、抗新生物剤(anti-neoplastic agent))の存在下において薬学的に許容され得るキャリアの存在下において単独で投与され得る。
【0043】
通常、IR700−分子結合体をサンプルまたは供給源と接触させた後またはIR700−分子結合体を被験体に投与した後の好適な照射線量は、660〜710nmの波長における少なくとも1J cm
−2、660〜710nmの波長における少なくとも2J cm
−2、660〜710nmの波長における少なくとも4J cm
−2、660〜710nmの波長における少なくとも8J cm
−2、660〜710nmの波長における少なくとも10J cm
−2、660〜710nmの波長における少なくとも16J cm
−2、660〜710nmの波長における少なくとも50J cm
−2または660〜710nmの波長における少なくとも100J cm
−2、例えば、660〜710nmの波長における1〜500J cm
−2である。いくつかの例において、波長は、680〜690nmである。特定の例では、IR700−分子結合体をサンプルもしくは供給源と接触させた後またはIR700−分子結合体を被験体に投与した後に、複数回の照射が行われる(例えば、少なくとも2回、少なくとも3回または少なくとも4回の照射、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10回の別個の施行)。
【0044】
機能的核酸(FNA):酵素として(触媒のため)、レセプターとして(標的への結合のため)またはその両方として使用され得る核酸分子(例えば、DNA分子またはRNA分子)。FNAには、リボザイムおよびDNAザイム(例えば、Robertson and Joyce,Nature 1990,344:467;Breaker and Joyce,Chem.Biol.1994,1,223−229を参照のこと)、アプタマー(例えば、Tuerk and Gold,Science 1990,249,505を参照のこと)、アプタザイム(例えば、Breaker,Curr.Opin.Biotechnol.2002,13,31を参照のこと)およびアプタマーが含まれる。さらなる例は、本明細書中に提供され、当該分野で公知である。FNAは、日常的な方法を用いてIR700分子に結合体化され得、例えば、インビトロまたはインビボにおいて標的分子を除去するため、単離するためまたは分離するために、本明細書中に提供される方法において使用され得る。
【0045】
IR700(IRDye(登録商標)700DX):以下の式:
【化1】
を有するフタロシアニン色素。
【0046】
この化合物は、LI−COR(Lincoln,NE)から商業的に入手可能である。IR700は、比較的親水性の色素であり、IR700のNHSエステルを用いて抗体(または他のタンパク質)に共有結合的に結合体化され得、ソラレンによって官能化されたIR700などの他のリンカー化学またはクリックケミストリーを用いて核酸分子に結合体化され得る。IR700は、従来の光増感剤、例えば、ヘマトポルフィリン誘導体Photofrin(登録商標)(630nmにおける1.2×10
3M
−1cm
−1)、メタ−テトラヒドロキシフェニルクロリン;Foscan(登録商標)(652nmにおける2.2×10
4M
−1cm
−1)およびモノ−L−アスパルチルクロリンe6;NPe6/Laserphyrin(登録商標)(654nmにおける4.0×10
4M
−1cm
−1)よりも5倍超高い吸光係数(689nmの吸収極大において2.1×10
5M
−1cm
−1)も有する。
【0047】
切断されたまたは疎水性のIR700分子は、NIR光への曝露後に生じる分子である(
図1および2を参照のこと)。例えば、例示的な切断されたまたは親水性のIR700分子としては、
【化2】
のうちの1つまたはそれを超えるものが挙げられ、これらは、それに結合体化された分子(例えば、分子または特異的結合剤)を有し得る。NIR光への曝露後に除去されるIR700の一部は、
【化3】
である。
【0048】
IR700−分子結合体:IR700色素と、別の分子、例えば、薬物(例えば、医薬品)または特異的結合剤(例えば、抗体もしくはそのフラグメント、Affibody(登録商標)分子、ハプテン、タンパク質、レクチン、核酸分子、機能的核酸など)との両方を含む分子。例えば、IR700−抗体結合体は、IR700に結合体化された、抗体または抗体フラグメント、例えば、標的特異的抗体を含む分子である。
【0049】
単離された:「単離された」作用物質(例えば、タンパク質または核酸分子)は、当該構成要素が存在する他の構成要素から実質的に分離されているか、その他の構成要素から離れて生成されているか、またはその他の構成要素から離れて精製されている。例えば、その作用物質、例えば、標的は、当該構成要素が存在するサンプルまたは供給源(例えば、生物学的サンプル、食品サンプル/供給源または環境サンプル/供給源)の他の構成要素から分離され得る。例えば、その作用物質、例えば、標的は、細胞または生物学的サンプル(例えば、血液サンプル)の他の構成要素、例えば、他の染色体DNAおよび染色体外DNAならびにRNA、ならびにタンパク質から分離され得る。いくつかの例において、精製されたまたは単離された細胞、タンパク質または核酸分子は、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%純粋であり得る。
【0050】
医薬品または医薬組成物:有効量で被験体に適切に投与されたとき、所望の治療的作用または予防的作用を誘導することができる化学的な化合物または組成物。医薬組成物は、治療薬、例えば、1つまたはそれを超えるIR700−分子結合体を含み得る(いくつかの例では、その分子は、治療薬、例えば、化学療法剤である)。治療薬または医薬品は、単独でまたはさらなる化合物と一緒に、所望の応答を誘導する(例えば、被験体に投与されたとき、治療的作用または予防的作用を誘導する)ものである。特定の例において、医薬組成物は、治療有効量の少なくとも1つのIR700−分子複合体を含む。
【0051】
薬学的に許容され得るキャリア:本開示において有用な薬学的に許容され得るキャリア(ビヒクル)は、従来のものである。E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA,19th Edition(1995)には、1つまたはそれを超える化合物、例えば、1つまたはそれを超えるIR700−分子結合体の薬学的送達に適した組成物および製剤が記載されている。
【0052】
一般に、キャリアの性質は、使用される特定の投与様式に依存する。例えば、非経口的製剤は、通常、薬学的におよび生理的に許容され得る流体、例えば、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、デキストロース水溶液、グリセロールなどをビヒクルとして含む注射可能な流体を含む。固体の組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤またはカプセルの形態)のための、従来の無毒性の固体キャリアには、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンまたはステアリン酸マグネシウムが含まれ得る。投与される医薬組成物は、生物学的に中性のキャリアに加えて、微量の無毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤ならびにpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートを含み得る。
【0053】
光免疫療法(PIT):細胞表面レセプターを標的化するモノクローナル抗体(MAb)などの特異的結合剤に結合体化された近赤外(NIR)フタロシアニン色素IR700に基づく標的特異的光増感剤を利用する分子標的化治療。1つの例において、その細胞表面レセプターは、混合細胞集団における標的細胞上、例えば、腫瘍における標的細胞上に特異的に見出されるものであり、ゆえに、PITは、そのような細胞を死滅させるために使用され得る。抗体−IR700分子がそれらの細胞に結合し、それらの細胞にNIRが照射されると、それらの細胞の細胞死が生じるが、IR700−分子結合体によって認識される細胞表面レセプターを発現しない細胞は、かなりの数が死滅しない。
【0054】
除去するまたは分離する:例えば、何かを取り去ることによって、分割するかまたは離すこと。
【0055】
サンプル:標的作用物質を含み得る(または含むと判明しているかまたは含むと疑われる)任意の生物学的、食品または環境の検体(または供給源)が本明細書中の方法において使用され得る。
【0056】
被験体または患者:ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含む用語。1つの例において、被験体は、ヒト被験体または獣医学的被験体、例えば、マウス、非ヒト霊長類、ネコ、イヌなどである。いくつかの例において、被験体は、がんを有するかまたはがんについて処置されている哺乳動物(例えば、ヒト)である。いくつかの例において、被験体は、望まれない標的、例えば、病原体による感染、トキシン、毒液または胞子への曝露などを有する哺乳動物である。いくつかの例において、被験体は、薬理学的作用物質を投与されることになっている哺乳動物である。
【0057】
標的(または標的作用物質):1つの例において、それは、除去または分離が望まれる物質であり、それらとしては、化学的化合物、金属(例えば、重金属)、病原体、トキシン、毒液、核酸(例えば、DNAまたはRNA)またはタンパク質(例えば、サイトカイン、ホルモンまたは抗原)、ならびに特定の細胞(例えば、がん細胞、細菌細胞または血液中の特定の細胞)または胞子が挙げられるがこれらに限定されない。1つの例において、それは、薬物動態が制御されるべきである物質、例えば、治療的医薬品、例えば、化学療法剤である。
【0058】
腫瘍、新形成、悪性疾患またはがん:新生物は、過剰な細胞分裂に起因する組織または細胞の異常な成長物である。新生物性の成長は、腫瘍をもたらし得る。個体における腫瘍の量は、その腫瘍の数、体積または重量として測定され得る「腫瘍負荷」である。転移しない腫瘍は、「良性」と称される。周囲の組織に浸潤する腫瘍および/または転移し得る腫瘍は、「悪性」と称される。「非がん性組織」は、悪性新生物が形成した同じ臓器に由来する組織であるが、上記新生物の特徴的な病態を有しない。一般に、非がん性組織は、組織学的に正常に見える。「正常な組織」は、ある臓器由来の組織であって、その臓器が、その臓器のがんまたは別の疾患もしくは障害に罹っていない組織である。「がんのない」被験体は、その臓器のがんと診断されておらず、検出可能ながんを有しない。
【0059】
特許請求される方法によって処置され得る例示的な腫瘍、例えば、がんとしては、固形腫瘍、例えば、乳癌(例えば、小葉癌および腺管癌)、肉腫、肺の癌(例えば、非小細胞癌、大細胞癌、扁平上皮癌および腺癌)、肺の中皮腫、結腸直腸腺癌、胃癌、前立腺腺癌、卵巣癌(例えば、漿液性嚢胞腺癌および粘液性嚢胞腺癌)、卵巣胚細胞腫瘍、精巣癌および胚細胞性腫瘍、膵臓腺癌、胆管腺癌、肝細胞癌、膀胱癌(例えば、移行上皮癌、腺癌および扁平上皮癌を含む)、腎細胞腺癌、子宮内膜癌(例えば、腺癌およびミュラー管混合腫瘍(癌肉腫)を含む)、子宮頸内膜、子宮頸外膜(ectocervix)および膣の癌(例えば、それらの各々の腺癌および扁平上皮癌)、皮膚の腫瘍(例えば、扁平上皮癌、基底細胞癌、悪性黒色腫、皮膚付属器腫瘍(skin appendage tumor)、カポジ肉腫、皮膚リンパ腫、皮膚付属器腫瘍(skin adnexal tumor)ならびに様々なタイプの肉腫およびメルケル細胞癌)、食道癌、鼻咽頭および口腔咽頭部の癌(その扁平上皮癌および腺癌を含む)、唾液腺癌腫、脳および中枢神経系の腫瘍(例えば、グリア起源、神経細胞起源および髄膜起源の腫瘍を含む)、末梢神経の腫瘍、軟部組織肉腫ならびに骨および軟骨の肉腫、ならびにリンパの腫瘍(B細胞およびT細胞悪性リンパ腫を含む)が挙げられる。1つの例において、腫瘍は、腺癌である。
【0060】
上記方法は、液性腫瘍(liquid tumor)、例えば、リンパ、白血球または他のタイプの白血病を処置するためにも使用され得る。特定の例において、処置される腫瘍は、血液の腫瘍、例えば、白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、ヘアリーセル白血病(HCL)、T細胞前リンパ球性白血病(T−PLL)、大顆粒リンパ性白血病および成人T細胞白血病)、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫)およびミエローマ)である。
【0061】
(可能にするの)に十分な条件下において:所望の活性を可能にする(permit)かまたは可能にする(allow)任意の環境を記載するために使用される句。1つの例において、「〜に十分な条件下において」には、IR700−分子結合体が、あるサンプル、例えば、生物学的サンプル、環境サンプルまたは食品サンプル中の1つまたはそれを超える標的に結合するのを可能にするのに十分な、該IR700−分子結合体と該サンプルとの接触が含まれる。特定の例において、所望の活性は、凝集物の形成であり、それにより、サンプルをNIR光に曝露した後に標的作用物質の除去が可能になる。1つの例において、「〜に十分な条件下において」には、IR700−分子結合体がインビボにおいて標的に結合するのを可能にするのに十分な、被験体への該IR700分子結合体の投与が含まれる。特定の例において、所望の活性は、被験体にNIR光を照射した後の、IR700−分子結合体が結合した望まれない標的の除去である。1つの例において、「〜に十分な条件下において」には、IR700−分子がインビボにおいて治療効果を有するのを可能にするのに十分な、被験体への該IR700分子結合体の投与が含まれる。特定の例において、所望の活性は、被験体にNIR光を照射することによる処置後のIR700−分子結合体の除去である。
【0062】
無処置:所望の作用物質、例えば、IR700−分子結合体と接触されていない細胞、サンプルまたは被験体。ある例において、無処置の細胞、サンプルまたは被験体は、IR700−分子結合体が送達されたビヒクルまたはキャリアを投与される細胞、サンプルまたは被験体である。
【0063】
ある特定の具体的な例の開示は、他の実施形態を排除すると意味されていない。さらに、本明細書中に記載されるいずれの方法または処置も、必ずしも他の方法を排除せず、他の生理活性の作用物質または処置様式と組み合わされ得る。
【0064】
技術の概要
色素IR700は、近赤外(NIR)範囲において励起される光増感剤である。本発明者らは、IR700色素を適切な波長のNIR光に曝露すると、IR700分子の一部が切断されることを明らかにした(
図1)。この切断は、その結果として生じる「超疎水性」IR700化合物:
【化4】
のうちの1つまたはそれを超えるものを生成する。
【0065】
この疎水性によって、上に示された疎水性IR700化合物および任意の関連分子が凝集する。例えば、
図2に示されているように、IR700に結合体化された抗体(IR700−抗体結合体)は、結果として生じる疎水性IR700化合物に結合した状態のまま残る。さらに、疎水性IR700−抗体結合体に特異的に結合した任意のタンパク質もまた、結合したままである。
図3に示されているように、IR700−抗体結合体が、細胞表面上のタンパク質に結合されている場合、その抗体に結合したIR700は、NIRへの曝露の後、化学的に変化して疎水性を誘導し、それにより、細胞膜の完全性が破壊され、膜損傷および細胞死に至る。シリカ−酸素結合に基づく類似の構造を有するシリカ−フタロシアニンの親水性誘導体も、IR700に対して同様の結果を有するので、本明細書中のIR700の代わりに使用することができる。そのような化合物の1つの例は、La Jolla Blueである(Peng and Braney,Fluorescence Labeling,2004を参照のこと)。
【化5】
【0066】
この知見に基づくと、本開示は、結果として生じる疎水性IR700複合体を溶液から除去(例えば、分離または単離)ための方法(例えば、沈殿または遠心分離によって)、または例えば、疎水性IR700複合体を肝臓に輸送し、その後、肝臓によってその複合体を分解することによって、疎水性IR700複合体を被験体の循環から除去(例えば、分離または単離)ための方法を提供する。
【0067】
標的をサンプルから除去する方法
1つまたはそれを超える標的分子または作用物質を、サンプル、例えば、食品サンプル(または供給源)、環境サンプル(または供給源)、発酵サンプルもしくはリアクタサンプル(または供給源)または被験体から得られたサンプルから除去する、例えば、単離するかまたは分離する方法が本明細書中に提供される。例えば、その方法は、少なくとも2つの異なる標的、例えば、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つの異なる標的、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の異なる標的をサンプルから除去するためまたは単離するために使用され得る。例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個)の異なるIR700分子結合体が、同じサンプルに対して(例えば、同時にまたは一斉に)使用され得、ここで、各々が異なる標的に特異的である。このことにより、複数の標的をサンプルから除去することが可能になる。サンプルから除去され得るかまたは分離され得る例示的な標的としては、タンパク質、ペプチド、レクチン、炭水化物、金属(例えば、重金属)、核酸分子、有機小分子、薬物、毒液、病原体(例えば、ウイルス、寄生生物、細菌または真菌)または細胞(例えば、細胞の混合集団における標的細胞)が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの例において、上記方法は、除去された標的を検出する工程も含む。
【0068】
1つの例において、そのような方法は、望まれない作用物質(例えば、不純物、金属、病原性生物、胞子、トキシン、薬物、細胞など)をサンプルから除去するために使用される。例えば、製造プロセス(例えば、薬物製造プロセス)の一部として生成される不純物が、サンプルまたは供給源から除去され得るかまたは分離され得る。別の例において、病原体、トキシン、胞子、金属または他の望ましくない作用物質が、環境サンプルまたは供給源から除去される。1つの例において、病原体、トキシン、胞子、抗生物質または他の望ましくない作用物質が、食品サンプルまたは供給源から除去される。1つの例において、望ましくない標的細胞が、複数の異なる細胞型を含む組織または臓器の培養物から除去される(およびいくつかの例においては死滅させられる)。
【0069】
1つの例において、そのような方法は、所望の作用物質(例えば、標的細胞、病原体、金属、胞子、タンパク質、核酸分子など)をサンプルから取り出すために使用される。例えば、そのような方法は、所望の細胞を患者、例えば、血液サンプルから取り出すため、分離するためまたは単離するために使用され得る。例えば、PBMCまたは幹細胞(例えば、ヒト幹細胞)が、適切なCD特異的抗体を用いて血液サンプルから取り出され得る(ここで、それらのPBMCまたは幹細胞は、所望であればエキソビボにおいて操作され得、被験体、例えば、移植を受ける被験体に再び導入され得る)。1つの例において、そのような方法は、標的をサンプルから取り出すために使用され(例えば、免疫沈降と同様に)、その標的は、いくつかの例において、その標的に結合する他の作用物質を同定するためにさらに使用される(例えば、免疫共沈降と同様に)。したがって、例えば、それらの方法は、標的タンパク質、レクチン、炭水化物、病原体、核酸分子、細胞または抗体をサンプル、例えば、研究室におけるサンプルから取り出すために使用され得る。いくつかの例において、その標的タンパク質、レクチン、炭水化物、病原体、核酸分子、細胞または抗体に結合する他の作用物質が同定される。いくつかの例において、そのような方法は、サンプル中に存在する標的細胞もしくは試薬、例えば、標的細胞、病原体、金属、胞子、タンパク質、毒液、核酸分子など濃縮するためまたはそれらを富化するために使用され得る(例えば、その標的は、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍または少なくとも500倍富化されるかまたは濃縮される)。いくつかの例において、例えば、組織再生の用途における、細胞培養物中の望まれない夾雑物または変異した細胞が、開示される方法を用いて除去され得る。
【0070】
サンプルからの標的の完全な除去、単離または分離は、当該方法が有効であるために必要ではない。例えば、その方法は、サンプル(または供給源)中の標的作用物質の量を、例えば、IR700−分子結合体をそのサンプルに加える前およびそのサンプルにNIR光を照射する前に存在する標的の量と比べて、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも(at lest)99.9%(およびいくつかの例では100%)減少させる工程を含み得る。いくつかの例において、その方法は、標的が、例えば、IR700−分子結合体をサンプルに加えないときおよびサンプルにNIR光を照射しないときの標的の純度または濃度と比べて、少なくとも20%純粋、例えば、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%純粋であるように、その標的を単離するかまたは標的を富化するかまたは標的を濃縮する。
【0071】
特定の例において、上記方法は、サンプルをIR700−分子結合体と接触させる工程を含む。IR700−分子結合体の分子は、標的に対して特異性を有するがゆえに他の分子と比べてその標的に優先的に結合する特異的結合剤であり得る。特異的結合剤の非限定的な例としては、抗体およびそのフラグメント、Affibody(登録商標)分子、ハプテン、機能的核酸分子(例えば、アプタマーおよびDNAザイム)、核酸分子(例えば、核酸分子が互いにハイブリダイズするように、標的核酸分子に対して配列相補性を有するもの)、レクチン(炭水化物結合タンパク質)、タンパク質などが挙げられる。標的がサンプル中に存在する場合、このことによって、IR700−分子結合体−標的複合体が形成される。特定の例において、IR700−分子結合体およびIR700−分子結合体−標的複合体は、NIR光への曝露の前は親水性である。
【0072】
サンプルには、IR700−分子結合体−標的複合体のIR700部分の一部(例えば、
図2の丸で囲まれた部分を参照のこと)を切断(除去)するのに十分な条件下において、例えば、660nm〜710nm(例えば、680または690nm)の波長、例えば、少なくとも1J cm
−2の線量のNIRが照射され、それにより、疎水性IR700−分子結合体−標的複合体が生成される。いくつかの例において、以下のものが、NIR光への曝露後にIR700−分子結合体−標的複合体から除去される:
【化6】
【0073】
したがって、IR700−分子結合体は、NIR光への曝露後に、親水性分子から疎水性分子に変化する。結果として、IR700−分子結合体は、NIR光への曝露後に凝集して、サンプルからの標的の分離または除去(それが凝集物または沈殿物の状態である)が可能になる。ケイ素フタロシアニン(silicon phthalocyanines)の溶解度および凝集特性は、アキシアル置換基の性質によって非常に影響される(Dyes and Pigments,2013,99:59−66)。アキシアル置換基を有しないケイ素フタロシアニン、例えば、親化合物であるケイ素フタロシアニン二水酸化物(silicon phthalocyanine dihydroxide)(CAS#19333−15−4)は、水をはじめとした種々の溶媒において、測定可能な溶解度を有しない(Yangら、J.Phys.Chem.A.,2011,115:12474)。
図5に示されているように、IR700は、NIR光への曝露前に、種々の水性溶媒および有機溶媒に溶解し得る(親水性)。
【0074】
次いで、結果として生じる疎水性IR700−分子結合体−標的複合体は、サンプルから除去され得る(例えば、単離され得るかまたは分離され得る)。例えば、サンプルは、疎水性IR700−分子結合体−標的分子複合体が凝集するかまたは沈殿物を形成する(例えば、溶液中に固体を形成する)ことを可能にする条件下において、インキュベートされ得るかまたは反応され得る。そのような条件には、疎水性IR700−分子結合体−標的を含む溶液を混合すること(例えば、ボルテックスすることによって、スターバーを用いて混合することによって、振動させることによってなど)が含まれ得る。いくつかの例において、疎水性IR700−分子結合体−標的を含む溶液は、疎水性IR700−分子結合体−標的が凝集物または沈殿物を形成するまで(例えば、少なくとも30秒、少なくとも1分、少なくとも2分、少なくとも5分、少なくとも10分、少なくとも15分または少なくとも30分、例えば、1〜5分、1〜2分、1〜10分または10〜20分)、室温において単に静置される。いくつかの例において、インビトロまたはエキソビボにおける方法は、少なくとも4℃、少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも37℃または少なくとも40℃、例えば、約4℃〜37℃または25℃〜37℃の温度において行われる。
【0075】
疎水性IR700−分子結合体−標的は、サンプルから分離されるかまたは取り出され、それにより、標的分子がサンプルから単離される。溶液から沈殿物または凝集物を分離するための方法は、公知であり、それらの方法としては、遠心分離(例えば、スピニング)、濾過、クロマトグラフィー、沈殿物を静置すること、またはそれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。例えば、サンプルは、疎水性IR700−分子結合体−標的が入れ物(vessel)または容器の底でペレットになることを可能にする条件下において遠心分離され得、得られた上清(標的を実質的に含まない)が回収され得るかまたは除去され得る。したがって、得られた上清は、望まれない標的を含まない(または実質的に含まない)可能性がある。いくつかの例において、得られたペレットは、例えば、標的がサンプル中に存在したかを決定するために、または標的に結合した他の作用物質を同定するために、解析される。遠心分離の代替法として(または遠心分離に加えて)、いくつかの例において、サンプルは、疎水性IR700−分子結合体−標的がフィルターに結合するかまたはフィルターによって捕捉されるのを可能にする条件下において濾過され得、得られた上清(標的を含まないかまたは実質的に含まない)が回収され得る。いくつかの例において、そのフィルターは、例えば、標的がサンプル中に存在したかを決定するために、または標的に結合した他の作用物質を同定するために、解析される。いくつかの例において、サンプルは、疎水性IR700−分子結合体−標的が容器の底においてペレットになるかまたは凝集することを可能にする条件下において、単に静置されるかまたは放置され、得られた上清(標的を実質的に含まない)が回収される。いくつかの例において、ペレットは、例えば、標的がサンプル中に存在したかを決定するために、または標的に結合した他の作用物質を同定するために、解析される。
【0076】
いくつかの例において、上記方法は、サンプルをその方法で複数回処置する工程、例えば、IR700−分子結合体と接触させる工程、NIR光を照射する工程、疎水性IR700−分子結合体を凝集させる工程および疎水性IR700−分子結合体をサンプルから分離する工程のうちの1つまたはそれを超える工程を、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも10回または少なくとも20回繰り返すことを含む。
【0077】
いくつかの例において、上記方法は、サンプルから除去された標的を測定する工程または検出する工程をさらに含む。そのような測定は、定量的または定性的であり得る。
【0078】
いくつかの例において、上記方法は、標的に結合した他の分子を検出するかまたは測定する工程をさらに含む。例えば、疎水性IR700に結合した標的を含むペレットもしくはフィルターまたは他の材料/入れ物が解析され得る。いくつかの例において、そのフィルター(filer)または他の材料は、洗浄されるか、またはその他の方法で処理されることにより、そのフィルターまたは他の材料に結合したまたは付着した任意の疎水性IR700−分子結合体−標的が放出される。いくつかの例において、そのペレット、フィルター、またはフィルターから放出された物質は、標的に結合した他のタンパク質を同定するために、免疫学的方法、例えば、免疫組織化学検査、ウエスタンブロッティング、分光法(例えば、質量分析、IR、ラマンまたはFT−IR)、クロマトグラフィー(例えば、液体クロマトグラフィー)などを用いて解析される。いくつかの例において、そのペレット、フィルター、またはフィルターから放出された物質は、標的に結合した核酸分子を同定するためのハイブリダイゼーションまたは配列決定方法、例えば、インサイチュハイブリダイゼーション、ノーザンブロッティング、サザンブロッティング、PCRなどを用いて解析される。
【0079】
例示的なサンプル
標的作用物質を含み得る(または含むと判明しているかまたは含むと疑われる)任意の生物学的検体、食品検体または環境検体が、本明細書中の方法において使用され得る。サンプルには、発酵流体、反応流体(例えば、所望の化合物、例えば、医薬品を生成するために使用されるもの)および組織または臓器の培養流体も含まれ得る。
【0080】
生物学的サンプルは、通常、被験体から得られ、それには、ゲノムDNA、RNA(mRNAを含む)、タンパク質、細胞またはそれらの組み合わせが含まれ得る。例としては、組織または腫瘍の生検材料、細針吸引液、気管支肺胞洗浄液、胸膜液、髄液、唾液、痰、外科的検体、リンパ節液、腹水、末梢血(例えば、血清または血漿)、骨髄、尿、唾液、頬側スワブおよび剖検材料が挙げられる。そのようなサンプルを得るための手法は、当該分野で周知である(例えば、血清サンプルを回収する場合、Schlugerら、J.Exp.Med.176:1327−33,1992を参照のこと)。血清または他の血液画分は、従来の様式で調製され得る。したがって、本明細書中に提供される方法を用いて、体内の標的分子、例えば、細胞(例えば、PBMC、HSC、リンパ球)、タンパク質、核酸、炭水化物、レクチン、病原体、トキシン、金属、薬物または他の標的が検出され得、および/または除去され得る(例えば、血液または骨髄から除去され得る)。いくつかの例において、上記方法は、正常な免疫応答を増幅することまたは抑制することによって障害を引き起こし得る正常な細胞(例えば、リンパ球、単球、マクロファージ、樹状細胞および幹細胞)をサンプルから除去するために使用される。そのような細胞を除去することによって、正常な免疫応答が局所的に回復し得る。あるいは、細胞に基づく治療において生じるように、細胞を外因的に投与される他の細胞で置き換えることを可能にするために、該細胞が除去され得る。所望であれば、標的細胞が枯渇したサンプルが、同じ被験体または異なる被験体に戻され得る。いくつかの例において、サンプルは、少なくとも2つの異なる細胞型(例えば、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたは少なくとも10個の異なる細胞型)を含む組織培養物または臓器培養物であり、ここで、それらの細胞型のうちの1つが、除去されるべき標的細胞である。
【0081】
環境サンプルには、環境媒体から得られるもの、例えば、水、空気、土壌、塵、木材、植物または食品(例えば、そのようなサンプルのスワブ)が含まれる。1つの例において、サンプルは、表面、例えば、建物または住宅に見出される表面から得られるスワブである。したがって、本明細書中に提供される方法を用いて、環境中に見出される有害な生成物、例えば、病原体、トキシン、金属または他の有害な生成物が、検出され得、除去され得る(例えば、環境の供給源から除去され得る)。いくつかの例において、開示される方法は、1つまたはそれを超える薬学的薬物夾雑物(例えば、水域環境におけるもの)、例えば、抗生物質、高血圧薬(hypertensive medication)、抗うつ剤、鎮痛剤、生殖ホルモンまたは他の処方箋薬を検出するおよび/または除去する。
【0082】
1つの例において、サンプルは、食品サンプル、例えば、食肉、乳製品、果物または野菜サンプルである。例えば、本明細書中に提供される方法を用いて、食料品における不純物(adulterant)、例えば、病原体もしくはトキシンまたは他の有害な生成物が、検出され得、除去され得る(例えば、食料品から除去され得る)。例えば、飲料(例えば、乳、クリーム、ソーダ、ボトルドウォーター、フレーバーウォーター、ジュースなど)および他の液体または半液体生成物(例えば、ヨーグルト)が、本明細書中に提供される方法によって処理され得る。いくつかの例において、食料品、例えば、食肉、野菜または果物を除染するために使用される液体は、使用される液体から不純物(impurity)または有害作用物質を除去するために、開示される方法で処理される。
【0083】
1つの例において、サンプルは、化学反応からのサンプル、例えば、所望の化合物、例えば、医薬品を生成するために使用されるものである。例えば、本明細書中に提供される方法を用いて、化学反応中に生成された望まれない作用物質、すなわち夾雑物が、検出され得、除去され得る。いくつかの例において、そのような方法は、最終産物をさらに精製するために使用される。例えば、重金属副産物が、IR−700−特異的結合分子結合体、例えば、金属配位基(例えば、EDTA、DTPA、DOTA)を含むIR700−分子結合体を用いて、そのような反応から除去され得る。
【0084】
他の例において、サンプルには、コントロールサンプル、例えば、特定の量の標的を含むと判明しているかまたは含まないと判明しているサンプルが含まれる。
【0085】
いったんサンプルが得られると、そのサンプルは、そのまま使用され得るか、濃縮され得るか(例えば、遠心分離または濾過によって)、精製され得るか、液化され得るか、流体に希釈され得るか、またはそれらの組み合わせが行われ得る。いくつかの例において、タンパク質、細胞、核酸または病原体が、サンプルから抽出され、得られた調製物(例えば、単離された細胞、病原体、DNA、RNAおよび/またはタンパク質を含むもの)が、本明細書中に提供される方法を用いて解析される。
【0086】
サンプルまたは供給源の照射
サンプルが、1つまたはそれを超えるIR700−分子結合体と接触された後、そのサンプルにNIR光が照射される。照射方法は、当該分野で公知である。いくつかの例において、サンプルは、インビトロにおいて、例えば、組織培養皿、試験管、マルチウェルプレート、発酵リアクタ、エッペンドルフチューブ、ペトリ皿、医療用チューブおよびバッグなどにおいて、照射される。いくつかの例において、食品サンプルまたは食料品(例えば、1バッチの乳、果物もしくは野菜の小片または食肉(meat))が照射される。いくつかの例において、環境サンプルまたは環境区域(例えば、ある区域の陸地、水、土壌または空気)が照射される。いくつかの例において、発酵溶液または他の反応溶液(例えば、所望の生成物を生成するもの)が照射される。
【0087】
他の例において、サンプルは、エキソビボにおいて照射され、例えば、被験体から得られたサンプル(例えば、血液サンプルまたはその画分)が照射される。そのようないくつかの例では、被験体にIR700−分子結合体が予め投与されているか、またはサンプルが被験体から取り出された後に、IR700−分子結合体がサンプルと接触されるかまたはサンプルとともにインキュベートされる。
【0088】
サンプルは、660nm〜710nm、例えば、660nm〜700nm、670nm〜710nm、680nm〜700nm、670nm〜690nm、例えば、680nmまたは690nmの波長での放射線量(dose of radiation)が照射される。具体的な例において、サンプルには、LEDまたはレーザー、例えば、690nm+/−20nmのLEDまたは690nm+/−4nmのレーザーシステムを用いて、NIRが照射される。特定の例において、サンプルは、少なくとも1J cm
−2、例えば、少なくとも2J cm
−2、少なくとも4J cm
−2、少なくとも8J cm
−2、少なくとも10J cm
−2、少なくとも15J cm
−2、少なくとも30J cm
−2、少なくとも50J cm
−2、少なくとも100J cm
−2または少なくとも500J cm
−2、例えば、1〜1000J cm
−2、1〜500J cm
−2、1〜20J cm
−2、1〜10J cm
−2、30〜50J cm
−2、10〜100J cm
−2、4〜8J cm
−2、5〜10J cm
−2または10〜50J cm
−2の線量が照射される。
【0089】
サンプルは、1回またはそれを超える回数で照射され得る。したがって、照射は、1日で完了し得るか、または同じ投与線量もしくは異なる投与線量を用いて複数日数で繰り返し行われ得る(例えば、少なくとも2つの異なる時点、3つの異なる時点、4つの異なる時点、5つの異なる時点または10個の異なる時点における照射)。反復照射は、同じ日に、連続した日に、または1〜3日毎、3〜7日毎、1〜2週間毎、2〜4週間毎、1〜2ヶ月間毎もしくはさらに長い間隔毎に、行われ得る。
【0090】
被験体から標的を除去するための方法
上に記載されたインビトロの方法と類似の方法を、インビボにおいて行うことができる。1つまたはそれを超える標的分子または標的作用物質を、被験体、例えば、哺乳動物、例えば、ヒト、マウス、霊長類、ネコ、イヌまたは他の獣医学的被験体から除去する、例えば、単離するかまたは分離する方法が本明細書中に提供される。例えば、その方法は、少なくとも2つの異なる標的、例えば、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つの異なる標的、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の異なる標的を被験体から除去するためまたは単離するために使用され得る。例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個)の異なるIR700分子結合体が、同じ被験体において(例えば、同時にまたは一斉に)使用され得、ここで、各々が異なる標的に特異的である。このことにより、複数の標的を被験体から除去することが可能になる。被験体から除去され得るか、単離され得るかまたは分離され得る例示的な標的としては、タンパク質、ペプチド、レクチン、炭水化物、金属(例えば、重金属)、核酸分子、有機小分子、薬物(例えば、レクリエーショナルドラッグまたは治療的/薬理学的薬物)、毒液、病原体(例えば、ウイルス、細菌または真菌)または細胞(例えば、細胞の混合集団における細胞、例えば、腫瘍における標的細胞)が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの例において、上記方法は、標的が被験体から除去された後にその除去された標的を検出する工程、処置後の被験体における標的の減少を検出する工程、またはその両方も含む。
【0091】
1つの例において、そのような方法は、望まれない作用物質(例えば、金属、病原性生物、胞子、トキシン、毒液、細胞、レクリエーショナルドラッグ、治療的薬物、タンパク質、核酸分子など)を被験体から除去するために使用される。例えば、望まれない作用物質は、IR700−分子結合体を使用することによって被験体から除去され得、ここで、その結合体の分子は、除去されるべき標的に対する特異的結合剤である。いくつかの例において、被験体から除去される望まれない作用剤は、患者にとって有毒な金属、例えば、重金属であり、ここで、IR700−分子結合体の分子が、除去されるべき金属に対する特異的結合剤である(例えば、鉛または水銀に結合する)。いくつかの例において、被験体から除去される望まれない作用物質は、病原体、例えば、ウイルス、真菌、寄生生物、細菌細胞などであり、ここで、IR700−分子結合体の分子が、除去されるべき病原体に対する特異的結合剤である(例えば、特定の病原性タンパク質または核酸に結合する)。いくつかの例において、被験体から除去される望まれない作用物質は、例えば、毒のある動物(例えば、クモ、サソリ、アリ、ヘビ、魚類、ハチまたはスズメバチ)に噛まれたまたは刺された被験体からの毒液であり、ここで、IR700−分子結合体の分子が、除去されるべき毒液に対する特異的結合剤である(例えば、ヘビ毒に結合する)。いくつかの例において、被験体から除去される望まれない作用物質は、例えば、過剰投与された被験体からのレクリエーショナルドラッグであり、ここで、IR700−分子結合体の分子は、除去されるべき薬物に対する特異的結合剤である(例えば、コカインまたはヘロインに結合する)。
【0092】
いくつかの例において、望まれない作用物質は、複数のトキシン、例えば、腎臓透析では除去されないより小さいトキシンである。したがって、上記方法は、腎臓透析の代わりに、または腎臓透析に加えて、トキシンまたは他の望まれない作用物質を血液から除去するために使用され得る(およびゆえに腎不全の被験体で使用され得る)。
【0093】
いくつかの例において、被験体から除去される望まれない作用物質は、タンパク質または核酸分子(例えば、存在または増加が疾患、例えば、自己免疫疾患またはがんを引き起こすかまたは悪化させるタンパク質または核酸)であり、ここで、IR700−分子結合体の分子が、除去されるべきタンパク質または核酸分子に対する特異的結合剤である(例えば、タンパク質または核酸分子にそれぞれ結合するかまたはハイブリダイズする)。
【0094】
いくつかの例において、望まれない作用物質は、存在または増加が疾患(例えば、アレルギー、自己免疫疾患またはがん)を引き起こすかまたは悪化させる細胞、例えば、細菌細胞または他の細胞である。そのような細胞の例としては、リンパ球、樹状細胞、マクロファージなど、例えば、腫瘍における免疫細胞が挙げられるがこれらに限定されない。1つの例において、活性化T細胞または他の望ましくない免疫細胞が、自己免疫疾患またはアレルギーを有する被験体から除去される。別の例では、サプレッサー型の細胞が、がんを有する被験体から除去される。1つの例において、がん幹細胞が、がんを有する被験体から除去される(または枯渇され、例えば、死滅させられる)。
【0095】
いくつかの例において、標的免疫細胞が、インビボにおいて腫瘍組織から除去される(例えば、死滅させられる)。そのような細胞の例としては、負の調節性T細胞(negative regulatory T−cells)(例えば、CD4
+CD25
+FoxP3
+)が挙げられるがこれらに限定されない。1つの例において、そのような細胞は、foxp3、CD25(例えば、抗CD25抗体であるダクリツマブまたはバシリキシマブを用いて)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)(例えば、抗CTLA4抗体であるイピリムマブ(ipilimumab)またはトレメリムマブ(tremelimumab)を用いて)、CD52(例えば、抗CD52抗体であるアレムツズマブを用いて)、CD132またはそれらの組み合わせの発現によって標的化される。したがって、開示される方法は、いくつかの例において、1つまたはそれを超える抗体−IR700分子およびNIRによる処置を行わないときと比べて、処置されたCD4
+CD25
+Foxp3
+Tregの少なくとも10%、例えば、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%(例えば、処置前の被験体におけるCD4
+CD25
+Foxp3
+Tregの総数の%、または腫瘍の区域(例えば、処置前の腫瘍および腫瘍を取り囲んでいる少なくとも1mm(例えば、少なくとも(at last)2mm、少なくとも3mm、少なくとも4mmまたは少なくとも5mm)を含む区域)におけるCD4
+CD25
+Foxp3
+Tregの総数の%として)を死滅させる。1つの例において、使用される2つの異なる抗体−IR700分子は、2つの異なるタンパク質または抗原に特異的であり、例えば、1つの抗体が、CTLA4に特異的であり、別の抗体が、CD25に特異的である。例えば、抗体−IR700分子をNIR光と組み合わせて使用することにより、腫瘍の体積、腫瘍のサイズ、腫瘍の重量、転移の数、転移の体積、転移のサイズ、転移の重量またはそれらの組み合わせが、処置を行わないときと比べて、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%または少なくとも95%減少し得る。
【0096】
上記方法は、正常な免疫応答を増幅することまたは抑制することによって障害を引き起こし得る正常な細胞、例えば、リンパ球、単球、マクロファージ、樹状細胞および幹細胞を被験体から除去するためにも使用され得る。そのような細胞を除去することによって、正常な免疫応答が局所的に回復し得る。あるいは、細胞に基づく治療において行われるように、細胞を外因的に投与される他の細胞で置き換えることを可能にするために、該細胞が除去され得る。
【0097】
いくつかの例において、例えば、被験体における臓器を1つまたはそれを超える所望のIR700−分子結合体で灌流することによって、望まれない作用物質が、その臓器から除去され得る。
【0098】
いくつかの例において、被験体から除去される望まれない作用物質は、薬学的薬物、例えば、化学療法剤、生物学的薬剤(biologic agent)(例えば、mAb、抗体薬物結合体、例えば、トキシンに結合体化されたものなど)、抗生物質(例えば、ペニシリン、アンピシリン、メトロニダゾール、テトラサイクリン、シプロ(cipro)など)、抗高血圧剤(例えば、チアジド利尿薬、ACE阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬、ベータ遮断薬およびアンギオテンシンIIレセプターアンタゴニスト)、抗うつ剤(例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)、三環系抗うつ剤(TCA)、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAOI)、ブプレノルフィン、トリプトファン、抗精神病薬、セイヨウオトギリソウ、例えば、プロザック)、鎮痛剤(例えば、アセトアミノフェン、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、COX−2阻害薬およびオピオイド薬物、例えば、モルヒネ、コデインおよびオキシコドン)、生殖ホルモン(例えば、エストロゲン、テストステロンおよびプロゲステロン)、血液希釈剤(例えば、ワルファリン)、ステロイド(例えば、プレドニゾン)、コレステロールを減少させるスタチン(例えば、Mevacor、Zocor、Pravachol)および他の処方箋薬であり、ここで、IR700−分子結合体の分子は、除去されるべき標的である(例えば、化学療法剤である)。例えば、そのような方法は、薬学的薬物の薬物動態(例えば、半減期)を制御するため、例えば、所望の時間が経過した後にそれを不活性化するためおよびそれを被験体から除去するために使用され得る。そのような薬物をIR700に結合体化することによって、NIR光を照射した後に、そのIR700色素に結合体化された薬物は、凝集し、例えば、肝臓および/または脾臓を介した、身体からの除去について標的化される。したがって、薬物の半減期が、所望の時間よりも長い場合(それにより、いくつかの例において、身体においてその薬物の望ましくない蓄積が引き起こされ得るか、または望ましくない副作用が引き起こされ得る)、IR700−薬物結合体の投与後に所望の時間が経過した後、患者をNIR光に曝露し、それによりその薬物を不活性化することによって、その薬物を減少させ得る。
【0099】
1つの例において、そのような方法は、所望の作用物質(例えば、標的細胞、タンパク質、核酸分子など)を被験体から除去するために使用される。例えば、そのような方法は、所望の細胞を、患者、例えば、血液サンプルまたは骨髄から除去するため、分離するためまたは単離するために使用され得る。いくつかの例において、そのような方法は、アフェレーシス手順の一部である。例えば、細胞、例えば、PBMCまたは幹細胞(例えば、ヒト幹細胞)が、アフェレーシス手順中またはアフェレーシス手順後に血液サンプルから除去され得る。1つの例において、血液が被験体から取り出され、その血液サンプルから、例えば、適切なCD特異的抗体を用いて、所望の細胞が取り出されるかまたは単離される。例えば、HSCが望まれる場合、血液サンプルは、HSCに結合するIR700−CD34抗体結合体と接触され得る。PBMCが望まれる場合、血液サンプルは、PBMCに結合するIR700−CD19抗体結合体と接触され得る。患者から取り出された細胞は、所望であれば、エキソビボにおいて操作され得(例えば、拡大され得、遺伝子治療法によって操作され得るなど)、同じまたは異なる被験体に、例えば、移植を受ける被験体に再び導入され得る)。他の例において、細胞培養物または臓器培養物における汚染細胞が、除去され得る。いくつかの例において、疾患(例えば、自己免疫疾患またはアレルギー)を刺激している免疫細胞または宿主応答を阻害している細胞(例えば、がんにおける免疫寛容におけるような)が、除去され得る。いくつかの例において、そのような方法は、所望のタンパク質(例えば、抗体)または核酸分子を被験体(例えば、ヒトまたは実験動物)、例えば、血液サンプルまたは骨髄から取り出すため、分離するためまたは単離するために使用され得る。
【0100】
いくつかの例において、被験体から取り出された後の生物学的サンプルとIR700−分子結合体および/またはNIR光が接触され、標的(例えば、望ましい標的または望ましくない標的)が除去されたサンプル(またはその一部)が、同じ被験体または異なる被験体に戻される。いくつかの例において、被験体にIR700分子結合体が投与され得、その被験体はNIR光に曝露され得、次いで、結果として生じた、標的を含む凝集物が、被験体から得られたサンプルからそれらを除去することによって被験体から除去され得る(例えば、血液が被験体から取り出され、その血液から凝集物が除去され、標的を含まない(または実質的に標的を含まない)血液が、その被験体(または異なる被験体)に戻される、アフェレーシス手順(procure)中に)。
【0101】
1つの例において、そのような方法は、被験体から標的を除去するために使用され、その標的は、いくつかの例において、その標的に結合する他の作用物質を同定するためにさらに使用される。したがって、例えば、それらの方法は、標的病原体、トキシン、薬物、タンパク質、レクチン、炭水化物、核酸、抗体、細胞などを被験体から除去するために使用され得る。いくつかの例において、標的病原体、トキシン、薬物、タンパク質、レクチン、炭水化物、核酸、抗体、細胞などに結合する他の作用物質は、被験体から除去された後に同定される。
【0102】
被験体からの標的の完全な除去、単離または分離は、当該方法が有効であるために必要ではない。例えば、その方法は、被験体における標的作用物質の量を、例えば、IR700−分子結合体をその被験体に投与する前およびその被験体にNIR光を照射する前に存在する標的の量と比べて、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%減少させる工程を含み得る。いくつかの例において、その方法は、標的が、例えば、IR700−分子結合体を被験体に加えないときおよび被験体にNIR光を照射しないときの標的の純度または濃度と比べて、少なくとも20%純粋、例えば、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%純粋であるように、その標的を単離する。
【0103】
特定の例において、上記方法は、1つまたはそれを超えるIR700−分子結合体を被験体に投与する工程を含み、ここで、そのIR700に結合体化された分子は、標的分子を含むか、またはそのIR700に結合体化された分子は、標的分子に特異的に結合する(例えば、標的に対して特異性を有し、ゆえに、他の分子と比べてその標的に優先的に結合する)を含む。特異的結合剤の非限定的な例としては、抗体およびそのフラグメント、Affibody(登録商標)分子、ハプテン、機能的核酸分子(例えば、アプタマーおよびDNAザイム)、核酸分子(例えば、核酸分子が互いにハイブリダイズするように、標的核酸分子に対して配列相補性を有するもの)、レクチン(炭水化物結合タンパク質)、タンパク質などが挙げられる。IR700−分子結合体は、薬学的に許容され得るキャリア、例えば、薬学的におよび生理的に許容され得る流体の存在下において、例えば、IR700−分子結合体が標的に特異的に結合するのを可能にする条件下(例えば、その分子が特異的結合剤である場合)または治療効果を有するのを可能にする条件下(例えば、その分子が、標的、例えば、薬学的薬物である場合)において、被験体に投与され得る。例えば、IR700−分子結合体は、ビヒクルとしての、薬学的に有効なキャリア、例えば、水、生理食塩水、平衡塩類溶液(例えば、PBS/EDTA)、デキストロース水溶液、ゴマ油、グリセロール、エタノール、それらの組み合わせなどの中に存在し得る。そのキャリアおよび組成物は、滅菌され得、その製剤は、投与様式に適している。
【0104】
IR700−分子結合体の分子が特異的結合剤である場合において、その標的が、被験体に存在する場合、このことにより、IR700−分子結合体−標的複合体が形成される。
【0105】
特定の例において、IR700−分子結合体およびIR700−分子結合体−標的複合体は、NIR光に曝露される前は、親水性である。IR700−分子結合体の分子がその標的に結合するのを可能にするかまたはIR700−分子結合体の分子が治療効果を有するのを可能にする条件下において、1つまたはそれを超えるIR700−分子結合体を接触させた後または投与した後、被験体には、IR700の切断を可能にする条件下において、例えば、660nm〜710nm(例えば、680nm〜690nm)の波長で、例えば、少なくとも10J cm
−2の線量のNIR光が照射される。そのような条件は、IR700−分子結合体またはIR700−分子結合体−標的複合体のIR700部分の一部を切断し(除去し)(例えば、
図2の丸で囲まれた部分を参照のこと)、それにより、疎水性IR700−分子結合体または疎水性IR700−分子結合体−標的複合体が生成される。1つの例において、細胞とIR700−分子結合体との接触と照射との間には、少なくとも10分、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも4時間、少なくとも8時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも96時間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間または少なくとも4週間(例えば、1〜4時間、30分〜1時間、10分〜60分または30分〜8時間)が存在する。NIR励起光の波長は、組織内への少なくとも数センチメートルの透過を可能にするものである。例えば、ディフューザーチップを有するファイバー結合型レーザーダイオードを使用することによって、NIR光は、身体表面に対して数センチメートル以内の深部に位置する区域に送達され得る。さらに、循環している標的は、表在血管を通り抜けるとき励起され得るので、標的化され得る(例えば、本明細書中に開示されるNIR LED装着可能なデバイスを用いて)。いくつかの例では、被験体が装着する(または被験体を覆う)デバイスを使用することによって、被験体は照射され、ここで、そのデバイスは、NIR発光ダイオード(LED)を備える。いくつかの例において、以下のものが、NIR光への曝露後に、IR700−分子結合体またはIR700−分子結合体−標的複合体から除去される:
【化7】
したがって、IR700−分子結合体またはIR700−分子結合体−標的複合体は、NIR光への曝露後に、親水性分子から疎水性の分子に変化する。結果として、疎水性IR700−分子結合体または疎水性IR700−分子結合体−標的複合体は、NIR光への曝露後に凝集し、被験体からの標的の分離または除去が可能になる。例えば、そのような凝集物は、肝臓および/または脾臓に到達し得、そこでそれらの凝集物は分解され、身体からの除去(例えば、排泄)のための標的となる。
【0106】
次いで、結果として生じた疎水性IR700−分子結合体または疎水性IR700−分子結合体−標的複合体が、被験体から除去され得る(例えば、排泄され得る)。上記方法は、被験体における標的分子の量の減少を検出する工程(例えば、被験体から得られた血液サンプル中の標的の絶対量または相対量を測定すること)または被験体から排泄された標的分子(またはその分解産物)の量の増加を検出する工程(例えば、肝臓における異化作用の後に、排泄された標的は、尿または排便(bowel movement)において検出され得る)も含み得る。そのような標的の測定は、定量的または定性的であり得る。
【0107】
いくつかの例において、上記方法は、標的が身体から除去された後に、その標的に結合した他の分子を検出するかまたは測定する工程をさらに含む。例えば、排泄された疎水性IR700−分子結合体または疎水性IR700−分子結合体−標的複合体は、例えば、標的に結合した他のタンパク質を同定する免疫学的方法、例えば、免疫組織化学検査、ウエスタンブロッティング、分光法(例えば、質量分析、IR、ラマンまたはFT−IR)、クロマトグラフィー(例えば、液体クロマトグラフィー)などを用いて解析され得る。いくつかの例において、ペレット、フィルター、またはフィルターから放出された物質は、標的に結合した核酸分子を同定するためのハイブリダイゼーションまたは配列決定方法、例えば、インサイチュハイブリダイゼーション、ノーザンブロッティング、サザンブロッティング、PCRなどを用いて解析される。
【0108】
いくつかの例において、上記方法は、被験体をその方法で複数回処置する工程、例えば、IR700−分子結合体を投与する工程、NIR光を照射する工程、疎水性IR700−分子結合体を凝集させる工程および疎水性IR700−分子結合体を被験体から除去する工程のうちの1つまたはそれを超える工程を、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも10回または少なくとも20回繰り返すことを含む。
【0109】
開示される方法は、体内の固定された標的作用物質、ならびに循環中の標的(例えば、白血病細胞、転移腫瘍(metastases)、循環している腫瘍細胞)を除去するために使用され得る。しかしながら、循環している標的は、その性質からして、非常に長く光に曝露させることができない。したがって、標的が、全身を循環しているものである場合、上記方法は、装着され得るデバイスまたは身体の一部を覆うデバイスを使用することによって達成され得る。例えば、そのようなデバイスは、長時間にわたって装着され得る。NIRを発する発光ダイオード(NIR emitting light emitting diodes)(LED)および/またはレーザーシステム(例えば、アルゴンNIRレーザー)ならびにバッテリーパックを組み込んでいる毎日装着可能なアイテム(例えば、腕時計、宝飾品類(例えば、ネックレスまたはブレスレット)、ブランケット、衣類(例えば、下着、ソックスおよび靴の中敷き)および他の毎日装着可能なアイテム)が使用され得る。そのようなデバイスは、デバイスの下にある皮膚に長時間にわたって光を生成し、長期にわたって表在血管に光を連続的に曝露させる。循環している標的は、そのデバイスの下にある区域を通過するとき、その光に曝露される。一例として、このデバイスの腕時計またはブレスレットバージョンは、一日の大部分にわたって装着されるために、バッテリーパワーパックとともに一連のNIR LEDおよび/またはレーザー(例えば、アルゴンNIRレーザー)を備え得る。
【0110】
例えば、1つまたはそれを超えるIR700−分子結合体が(例えば、静脈内に)投与された後、適切な場合、循環している標的(例えば、細胞)が、IR700−分子結合体に結合する。これらの細胞または他の標的は、毎日装着可能なアイテム(例えば、ブレスレットまたは腕時計)に存在するLEDおよび/またはレーザー(例えば、アルゴンNIRレーザー)に隣接する血管内を流れるとき、NIR光に曝露され、IR700およびそれに結合した分子を切断および凝集に対して感受性にする。光の線量は、診断および標的のタイプに従って調整可能であって良い。
【0111】
いくつかの例において、上記方法は、1つまたはそれを超えるさらなる治療薬を投与するかまたは処置を施す工程も含む。そのようなさらなる作用物質の例としては、抗新生物剤、例えば、化学療法剤および血管新生抑制剤または化学療法および血管新生抑制療法、例えば、放射線治療が挙げられるがこれらに限定されない。
【0112】
例示的な被験体
いくつかの例において、開示される方法は、被験体から標的を除去するために使用される。1つの例において、IR700−分子結合体は、標的に結合し得るかまたはハイブリダイズし得る特異的結合剤を含む。そのようなIR700−分子結合体は、その標的の存在または量の増加に起因する障害を有する被験体、例えば、標的病原体に感染した者、毒のある動物に噛まれたまたは刺された者、望まれない細胞の存在に起因する障害(例えば、がんまたは自己免疫障害またはアレルギー)を有する者、標的タンパク質、細胞または核酸分子の存在あるいは標的タンパク質、細胞または核酸分子の量の増加に起因する障害を有する者、薬物標的を過剰投与された者などにとって有用である。1つの例において、被験体は、単離されるべき所望の標的抗体、タンパク質、細胞または核酸分子を有する、ヒトまたは実験動物、例えば、ウサギまたはマウスである。
【0113】
1つの例において、IR700−分子結合体は、治療的薬物を含む。そのようなIR700−薬物結合体は、被験体、例えば(or example)、標的薬物(例えば、薬理学的薬物)による処置の恩恵を受ける障害を有する被験体にとって有用である。
【0114】
1つの例において、被験体は、がん、例えば、乳房、肝臓、腎臓、子宮、結腸、卵巣、前立腺、膵臓、脳、頸部、骨、皮膚または肺のがんを有する。
【0115】
開示される方法は、任意の哺乳動物被験体、例えば、ヒトまたは獣医学的被験体において使用され得る。いくつかの例において、被験体は、他の治療を受けた者であるが、それらの他の治療は、所望の治療的応答を提供しなかった。いくつかの例において、上記方法は、開示される治療の恩恵を受ける被験体を選択する工程を含む。
【0116】
IR700−分子結合体の投与
IR700−分子結合体およびさらなる治療薬(例えば、抗新生物剤)は、例えば、細胞が成長している(the cells or growing)成長培地にIR700−分子結合体を加えることによって、インビトロにおいてサンプルと接触され得るか、または例えば、処置されるべき被験体にIR700−分子結合体を投与することによって、インビボにおいて細胞と接触され得る。
【0117】
IR700−分子結合体は、当該分野で公知の任意の方法を用いて、局所的にまたは全身性に投与され得る。特定の例が提供されるが、当業者は、開示されるIR700−分子結合体およびさらなる治療薬を投与する代替方法を使用することができることを十分に理解する。そのような方法は、例えば、処置を必要とする被験体に数時間から数日間の期間にわたって持続注入を提供するためにカテーテルまたは植え込み型ポンプを使用することを含み得る。
【0118】
1つの例において、IR700−分子結合体は、腫瘍への(腫瘍内)直接的な注射、直接的な注射または注入を含む非経口的手段によって投与される。さらに、またはあるいは、開示されるIR700−分子結合体は、腫瘍(例えば、がん)を有する被験体に、全身性に、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内、皮下または経口的に投与され得る。
【0119】
被験体に投与されるIR700−分子結合体の投与量は、絶対的な限界に左右されず、組成物およびその活性成分の性質ならびにその望まれない副作用(例えば、特異的結合剤に対する免疫応答)、処置されている被験体および処置されている状態のタイプおよび投与様式に依存する。通常、用量は、治療有効量、例えば、所望の生物学的作用を達成するのに十分な量、例えば、標的を被験体から実質的に除去する(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%、例えば、80〜100%、80〜99.9%、90〜95%または90〜99%除去する)のに有効な量である。開示される方法と組み合わせて使用され得るさらなる治療薬(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤、免疫抑制剤など)の投与量は、当該分野で公知である。
【0120】
IR700−分子結合体の静脈内投与の場合、単回処置で被験体に投与するための例示的な投与量は、0.5〜100mg/60kg体重、1〜100mg/60kg体重、1〜50mg/60kg体重、1〜20mg/60kg体重、例えば、約1または2mg/60kg体重の範囲であり得る。なおも別の例において、ip投与されるまたは腫瘍内投与されるIR700−分子結合体の治療有効量は、1kgの体重に対して10μgから5000μgまでのIR700−分子結合体、例えば、10μg/kgから1000μg/kg、10μg/kgから500μg/kgまたは100μg/kgから1000μg/kgまで変動し得る。
【0121】
1つの例において、ヒト患者に投与されるIR700−分子結合体の用量は、少なくとも50mg、例えば、少なくとも100mg、少なくとも300mg、少なくとも500mg、少なくとも750mgまたはさらには1gである。
【0122】
開示されるIR700−分子結合体(およびさらなる治療薬)による処置は、1日で完了し得るか、または同じもしくは異なる投与量を用いて複数日数において繰り返し行われ得る。反復処置は、同じ日に、連続した日に、または1〜3日毎、3〜7日毎、1〜2週間毎、2〜4週間毎、1〜2ヶ月間毎もしくはさらに長い間隔で、行われ得る。
【0123】
被験体または細胞の照射
被験体および/または細胞は、1つまたはそれを超えるIR700−分子結合体と接触された後に照射される。照射方法は、当該分野で周知である。いくつかの例において、細胞は、被験体から取り出された後に、例えば、組織培養皿または医療用チューブもしくはバッグにおいて(例えば、アフェレーシス中に)、インビトロにおいて照射される。他の例において、被験体は、インビボにおいて照射され、例えば、IR700−分子結合体を予め投与された被験体が照射される。いくつかの例において、被験体の一部分、例えば、臓器が照射されるか、または被験体内の、標的が存在すると疑われる他の区域(例えば、肝臓、心臓、脳または胃)が照射され得る。
【0124】
被験体または細胞は、例えば、660〜710nm、例えば、660nm〜700nm、680nm〜700nm、670nm〜690nm、例えば、680nmまたは690nmの波長での治療放射線量(therapeutic dose of radiation)が照射される。特定の例において、細胞または被験体は、少なくとも1J cm
−2、少なくとも4J cm
−2、例えば、少なくとも10J cm
−2、少なくとも30J cm
−2、少なくとも50J cm
−2、少なくとも100J cm
−2または少なくとも500J cm
−2、例えば、1〜1000J cm
−2、1〜500J cm
−2、30〜50J cm
−2、4〜8J cm
−2、10〜100J cm
−2または10〜50J cm
−2の線量が照射される。
【0125】
細胞(または患者)は、1回またはそれを超える回数、照射され得る。したがって、照射は、1日で完了し得るか、または同じ投与線量もしくは異なる投与線量を用いて複数日数で繰り返し行われ得る(例えば、少なくとも2つの異なる時点、3つの異なる時点、4つの異なる時点、5つの異なる時点または10個の異なる時点における照射)。反復照射は、同じ日に、連続した日に、または1〜3日毎、3〜7日毎、1〜2週間毎、2〜4週間毎、1〜2ヶ月間毎もしくはさらに長い間隔で、行われ得る。
【0126】
NIR LEDおよび/またはレーザーを備える例示的なデバイス
装着することができるかまたは身体上に置くことができ、NIR LEDおよび/またはレーザーシステム(例えば、アルゴンNIRレーザー)の組み込みに適用できる、任意のタイプのアイテムが、本明細書中に記載される方法において使用され得る。1つの例において、そのデバイスは、患者に挿入されるチャンバーである。そのようなデバイスは、身体に存在する標的、例えば、血液中もしくはリンパ液中または皮膚における標的を除去するために使用され得る。
【0127】
身体内の十分な量の標的(複数可)を適切に除去するために、上記デバイスを長期間にわたって、例えば、数週間または数ヶ月間にわたって装着する必要があり得る。したがって、これらのデバイスは、毎日の衣類、宝飾品類、およびブランケットなどの寝具に組み込まれ得る。これらのデバイスは、処置がプライベートのままであり、日常の活動に干渉しないように、持ち運びできる日常の衣料品および宝飾品類を用いて患者をNIR光に曝露することを可能にする。例えば、NIR LEDおよび/またはレーザー(例えば、アルゴンNIRレーザー)を組み込んでいるネックレスは、患者の好みにカスタマイズ可能であり得、治療(例えば、頚動脈および首の他の血管系を通過するIR700−分子結合体を切断する)のために日中に目立たずに装着され得る。同様の「日常の」性質の複数のデバイス(ブランケット、ブレスレット、ネックレス、下着、ソックス、靴の中敷きなど)が、処置期間中に同じ患者によって装着され得る。例えば、就寝中、患者は、NIRブランケットを使用し得る。それらのデバイスは、電源、例えば、バッテリー、およびブランケットとしてのそのようなデバイスの過熱を防ぐための冷却要素も備え得る。
【0128】
1つの例において、上記デバイスは、宝飾品類、例えば、指輪、腕時計、ブレスレットまたはネックレスである。別の例において、上記アイテムは、衣料品またはアクセサリー、例えば、シャツ、ベルト、ズボン、下着、ソックス、上着、靴の中敷き、スカーフ、帽子、リストガード、手袋などである。別の例において、上記デバイスは、身体を覆うことができる物品、例えば、ブランケットまたはタオルである。別の例において、上記デバイスは、皮膚を直接曝露する全身用光チャンバーである(そのようなデバイスは、電源および/または冷却源も備え得る)。
【0129】
1つもしくはそれを超えるNIR LED(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも10個、少なくとも20個または少なくとも50個のNIR LED)および/またはレーザー(例えば、アルゴンNIRレーザー)を組み込むデバイスを装着することによって、標的は、身体(例えば、血液、リンパ液または皮膚)に存在し、そのNIR LEDまたはレーザー(例えば、660〜710nm、例えば、670〜710nmまたは680〜700nmで放射するNIR LEDまたはレーザー)によって生成される光に曝露されるようになる。そのNIR LEDおよび/またはレーザー(例えば、アルゴンNIRレーザー)から放射された光は、皮膚および血管(例えば、頚動脈または皮膚における微小血管系)を透過し得るので、その光が、IR700−分子結合体(標的を含み得るかまたは標的に結合され得る)を活性化することができ、ゆえに、IR700が切断され、それ(およびそれに結合した任意の分子)の凝集が引き起こされる。それらのNIR LEDおよび/またはレーザー(例えば、アルゴンNIRレーザー)は、確実に皮膚または血管またはリンパ系が標的化されるようにデバイスの中に配置され得る。
【0130】
本明細書中に提供される方法において使用され得るNIR LEDおよび/またはおよびレーザー(例えば、アルゴンNIRレーザー)デバイスは、商業的に入手可能である。1つの製造者Marubeni America製の適用可能な製品を下記に列挙する。最初の製品である成形されたLEDは、低出力であるが、より長い曝露時間にわたって使用することができた。他の選択肢は、より高出力であるがゆえに、さらなる冷却のための措置から恩恵を受け得る。25mm×18mmの金属ケースの中に包装された最後の1つを除いては、その他のものは、装着可能なデバイス、例えば、ブレスレット、ネックレス、下着、ソックス、手袋、帽子および他の装着可能なアイテムに応用可能である。すべてのものが、ブランケット、携帯用デバイスまたはチャンバーとして使用可能である。
【0131】
例えば、Marubeni America Corporation(tech−led.com/index.shtml)は、照射パターンを設定するためのレンズオプションを備えた以下のNIR LEDを提供している:直径が5mmであり、4mWという総放射電力、5mWcm
−2という計算出力密度(calculated power density)および1.8V 20mAという所要電力を有する、Molded LED(www.tech−led.com/data/L680−AU.pdf);3.5mm×2.7mmであり、3mWという総放射電力、32mWcm
−2という計算出力密度および1.9V 50mAという所要電力を有する、Surface Mount LED;7.6mm×7.6mmであり、20〜52mWという総放射電力、34〜90mWcm
−2という計算出力密度および1.65V 100mAという所要電力を有する、Super Beam(tech−led.com/Superbeam_LEDs.shtml);5mm×5mmまたは直径7mmであり、90mWという総放射電力、360mWcm
−2という計算出力密度および2.4V 500mAという所要電力を有する、High Power Surface Mount(tech−led.com/SMB_BL_LEDs.shtml);および25mm×18mmであり、150mWという総放射電力、33mWcm
−2という計算出力密度および10V 120mAという所要電力を有する、High Power Illuminators(tech−led.com/High_Power_Illuminators.shtml)。あるいは、短くて強い間欠パルスで同様の力を有する690nmの光を放射するそのようなデバイスが作製され得る。
【0132】
インビトロ実験において、2.2mWcm
−2(または2.2mJs
−1cm
−2)の出力密度を有するNIR光が、細胞死を誘導した。組織に対する減衰係数が4cm
−1であると仮定すると、その光の強度は、5.8mmでは10%まで、および12mmでは1%まで低下する。このことは、インビボで適用するためには、必要とされる出力密度が、10〜100倍大きい必要があることを示す。すなわち、そのNIR LEDデバイスによって放射される光の線量は、いくつかの例において、少なくとも20mWcm
−2、例えば、少なくとも50mWcm
−2、少なくとも100mWcm
−2、少なくとも150mWcm
−2、少なくとも200mWcm
−2または少なくとも300mWcm
−2である。より広い面積をカバーするために、複数のNIR LEDが2次元配列で配置され得る。1つの例において、LEDに対する代替物としてのNIR光源としてレーザーが使用される。
【0133】
NIR LEDおよび/またはレーザー(例えば、アルゴンNIRレーザー)は、電源(そのデバイスの直接または間接的な一部であり得る)を使用することによって電力供給され得る。その所要電源は、そのデバイスにおけるLEDおよびレーザーの数に依存する。例えば、NIR LEDに電力供給するために、1つまたはそれを超えるバッテリーが使用され得る。いくつかのLEDでは、4つのAAバッテリーが、直列の3つのLEDに電力供給し得る。アルカリAAバッテリーは、3000mAhという最大値が見積もられているので、この配置は、最大150、60および30時間にわたって20、50および100mAの電力を供給する。
【0134】
いくつかの例において、上記デバイスは、冷却デバイス(そのデバイスの直接または間接的な一部であり得る)をさらに備える。例えば、ヒートシンクが、受動冷却または能動冷却のために使用され得る。別の代替物は、熱電効果(ペルチェ)である。これは、さらなる電力を引き出すが、所要電力が、プラグインACアダプターを必要とする用途において使用され得る。
【0135】
開示される方法とともに使用され得る別のタイプのデバイスは、NIR LEDおよび/またはレーザー(例えば、アルゴンNIRレーザー)を備えるフラッシュライト様デバイスである。そのようなデバイスは、手術中の病巣治療のために使用され得るか、またはIR700−分子結合体の投与後にNIR光を身体表面に適用するための内視鏡に組み込まれ得る。そのようなデバイスは、身体上の特定の標的に処置を向けるために、医師または資格のある医療従事者によって使用され得る。
【0136】
装着可能なNIR LEDを用いた処置
本明細書中に記載されるように、開示される方法は、インビボにおいて標的を除去するために使用され得る。いくつかの例において、身体内を循環しているかまたは皮膚に存在する標的を除去するために、患者は、NIR LEDを組み込むデバイスを装着し得る。いくつかの例において、患者は、少なくとも2つのデバイス、例えば、日中に衣料品または宝飾品類および夜間にブランケットを使用する。いくつかの例において、患者は、少なくとも2つのデバイスを同時に、例えば、2つの衣類を使用する。これらのデバイスは、処置がプライベートのままであり、日常の活動に干渉しないように、持ち運びできる日常の衣料品および宝飾品類を用いて患者をNIR光に曝露することを可能にする。いくつかの例において、そのデバイスは、PIT治療のために日中に目立たずに装着され得る。
【0137】
1つの例において、患者は、本明細書中に記載される方法を用いて、1つまたはそれを超えるIR700−分子結合体(例えば、1つまたはそれを超える用量)を投与される。次いで、その患者は、NIR LEDを組み込んだデバイスを装着し、それにより、長期間の治療、および血液中もしくはリンパ液中または皮膚に存在する標的の除去が可能になる。いくつかの例において、その線量は、少なくとも少なくとも1J cm
−2、少なくとも10J cm
−2、少なくとも20J cm
−2または少なくとも30J cm
−2、例えば、20J cm
−2または30J/cm
2である。いくつかの例において、IR700−分子結合体の投与は、確実に治療/有効レベルが身体に存在するように、ある期間にわたって繰り返される(例えば、1週間に2回、1日おき、1週間おき、1ヶ月に2回、毎月または1か月おきにに)。
【0138】
いくつかの例において、患者は、上記デバイスまたはデバイスの組み合わせを、少なくとも1週間、例えば、少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも8週間、少なくとも12週間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも6ヶ月間またはさらには少なくとも1年間、装着するかまたは使用する。いくつかの例において、患者は、上記デバイスまたはデバイスの組み合わせを、1日に少なくとも4時間、例えば、1日に少なくとも12時間、1日に少なくとも16時間、1日に少なくとも18時間または1日に24時間、装着するかまたは使用する。同様の「日常の」性質の複数のデバイス(ブランケット、ブレスレット、ネックレス、下着、ソックス、靴の中敷き)が、処置期間中に同じ患者によって装着され得ることが可能である。夜間、患者は、NIR LEDブランケットまたは他の被覆物を使用し得る。
【0139】
例示的な標的
開示される方法は、インビトロ、エキソビボまたはインビボにおいて、目的の任意の標的作用物質を除去するかまたは単離するためにデザインされ得る。したがって、本明細書中に提供される方法およびIR700−分子結合体は、本明細書中に提供される特定の例などの、目的の任意の標的作用物質を除去するかまたは単離するために使用され得る。例示的な標的作用物質は、下記に提供される;しかしながら、当業者は、開示される方法およびIR700−分子結合体を用いて他の標的作用物質も除去できることを十分に理解する。本明細書中に記載されるように、標的作用物質に結合するかまたはハイブリダイズする適切な特異的結合剤を選択することにより、特定の標的作用物質を除去するか、分離するかまたは単離するためのIR700−特異的結合剤結合体を開発することが可能になる。
【0140】
金属
1つの例において、標的作用物質は、金属(例えば、高い電気伝導度を有する元素、化合物または合金)、例えば、重金属または栄養金属(nutritional metal)である。したがって、開示される方法およびIR700−分子結合体は、インビボ、エキソビボまたはインビトロにおいて金属の除去を可能にする。金属は、周期表の大部分を占め、非金属元素は、元素周期表の右側にのみ見ることができる。ホウ素(B)からポロニウム(Po)に引かれた斜めの線が、金属と非金属を分ける。この線上のほとんどの元素が、メタロイドであり、時折、半導体と呼ばれる。この区分線の左下の元素は、金属と呼ばれ、この区分線の右上の元素は、非金属と呼ばれる。
【0141】
標的重金属には、比較的高密度を有し、有毒であるか、高度に有毒であるかまたは低濃度で有毒である、任意の金属化学元素が含まれる。標的重金属の例としては、水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、ヒ素(As)、クロム(Cr)、タリウム(Tl)、ウラニウム(U)、プルトニウム(Pu)および鉛(Pb)が挙げられる。
【0142】
標的栄養金属イオンには、動物の栄養において重要なものが含まれ、それらは、特定の生物学的機能に必要であり得、それらとしては、カルシウム、鉄、コバルト、マグネシウム、マンガン、モリブデン、亜鉛、カドミウム、ナトリウム、カリウム、リチウムおよび銅が挙げられる。
【0143】
特定の金属に特異的な抗体は、当該分野で公知であり、そのような抗体は、IR700に結合体化され得、本明細書中に提供される方法のために使用され得る。例えば、Zhuらは、キレート化されたカドミウムイオンに特異的なmAbを記載しており(J.Agric.Food Chem.55:7648−53,2007)、Wylieらは、水銀(II)イオンに特異的なmAbを記載しており(PNAS 89:4104−8,1992)、Loveらは、インジウム(inidium)に特異的なmAbを記載している(Biochem.32:10950−9,1993)。さらに、金属イオンキレート剤(EDTA、DTPA、DOTA)の二官能性の誘導体が、タンパク質に共有結合的に結合体化され得、所望の金属イオンをロードし得る。これらの結合体は、金属特異的モノクローナル抗体を合成するハイブリドーマ細胞株を調製するために使用され得る。さらに、Zn(II)(Ciesiolkaら、RNA 1:538−550,1995)およびNi(II)(Hofmannら、RNA,3:1289−1300,1997)などの金属イオンを認識するアプタマーが開発された。さらに、特定の金属イオン、例えば、鉛、銅、ウラニウム、亜鉛、水銀、カドミウムおよびマグネシウムに特異的なDNAザイムが公知である。そのような分子は、標的金属を除去するためのIR700−分子結合体を作製するために使用され得る。
【0144】
病原体/微生物
任意の病原体または微生物が、本明細書中に提供される方法およびIR700−分子結合体を用いて除去され得るかまたは単離され得る。いくつかの例において、特定の微生物細胞もしくは微生物、特定の胞子または特定のウイルスが除去される。例示的な標的病原体としては、ウイルス、細菌、真菌、線虫および原虫が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書中に提供される方法を用いて除去され得るかまたは単離され得る病原体の非限定的なリストは、下記に提供される。
【0145】
例えば、標的ウイルスとしては、プラス鎖RNAウイルスおよびマイナス鎖RNAウイルスが挙げられる。例示的な標的プラス鎖RNAウイルスとしては、ピコルナウイルス(例えば、Aphthoviridae[例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)])、Cardioviridae;Enteroviridae(例えば、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルスおよびポリオウイルス);Rhinoviridae(ライノウイルス));Hepataviridae(A型肝炎ウイルス);トガウイルス(この例としては風疹;アルファウイルス(例えば、西部ウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルスおよびベネズエラウマ脳炎ウイルス)が挙げられる);フラビウイルス(この例としては、デングウイルス、ウエストナイルウイルスおよび日本脳炎ウイルスが挙げられる);Calciviridae(これにはノロウイルスおよびサポウイルスが含まれる);およびコロナウイルス(この例としては、SARSコロナウイルス、例えば、Urbani株が挙げられる)が挙げられるがこれらに限定されない。例示的なマイナス鎖RNAウイルスとしては、オルソミクソウイルス(Orthomyxyoviruses)(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス)およびパラミクソウイルス(この例としては、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルスおよびパラインフルエンザウイルスが挙げられる)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0146】
ウイルスには、DNAウイルスも含まれる。標的DNAウイルスとしては、ヘルペスウイルス(例えば、水痘帯状疱疹ウイルス、例えば、Oka株;サイトメガロウイルス;および単純ヘルペスウイルス(HSV)1型および2型)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス1型およびアデノウイルス41型)、ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス)およびパルボウイルス(例えば、パルボウイルスB19)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0147】
ウイルスの別の群には、レトロウイルスが含まれる。標的レトロウイルスの例としては、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)、例えば、サブタイプC;HIV−2;ウマ伝染性貧血ウイルス;ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ネコ白血病ウイルス(FeLV);サル免疫不全ウイルス(SIV);およびトリ肉腫ウイルスが挙げられるがこれらに限定されない。
【0148】
1つの例において、開示される方法またはセンサーを用いて検出されるウイルスは、以下のうちの1つまたはそれを超えるウイルスである:HIV−1(例えば、HIV抗体、p24抗原またはHIVゲノム);A型肝炎ウイルス(例えば、A型肝炎抗体またはA型肝炎ウイルスゲノム);B型肝炎(HB)ウイルス(例えば、HBコア抗体、HB表面抗体、HB表面抗原またはHBウイルスゲノム);C型肝炎(HC)ウイルス(例えば、HC抗体またはHCウイルスゲノム);D型肝炎(HD)ウイルス(例えば、HD抗体またはHDウイルスゲノム);E型肝炎ウイルス(例えば、E型肝炎抗体またはHEウイルスゲノム);呼吸器系ウイルス(例えば、インフルエンザAおよびB、呼吸器合胞体ウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルスまたはヒトメタニューモウイルス)またはウエストナイルウイルス。
【0149】
病原体には細菌も含まれる。細菌は、グラム陰性またはグラム陽性として分類され得る。例示的な標的グラム陰性菌としては、Escherichia coli(例えば、K−12およびO157:H7)、Shigella dysenteriaeおよびVibrio choleraeが挙げられるがこれらに限定されない。例示的な標的グラム陽性菌としては、Bacillus anthracis、Staphylococcus aureus、Listeria、pneumococcus、gonococcusおよびstreptococcal meningitisが挙げられるがこれらに限定されない。1つの例において、開示される方法およびIR700−分子結合体を用いて除去される細菌は、以下のうちの1つまたはそれを超える細菌である:A群連鎖球菌属;B群連鎖球菌;Helicobacter pylori;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌;バンコマイシン耐性腸球菌;Clostridium difficile;大腸菌(E. coli)(例えば、志賀毒素産生株);Listeria;Salmonella;Campylobacter;炭疽菌(B. anthracis)(例えば、胞子);Chlamydia trachomatis;EbolaおよびNeisseria gonorrhoeae。
【0150】
原虫、線虫(nemotodes)および真菌もまた、病原体のタイプである。例示的な標的原虫としては、Plasmodium(例えば、マラリアを診断するPlasmodium falciparum)、Leishmania、Acanthamoeba、Giardia、Entamoeba、Cryptosporidium、Isospora、Balantidium、Trichomonas、Trypanosoma(例えば、Trypanosoma brucei)、NaegleriaおよびToxoplasmaが挙げられるがこれらに限定されない。例示的な標的真菌としては、Coccidiodes immitisおよびBlastomyces dermatitidisが挙げられるがこれらに限定されない。
【0151】
1つの例において、細菌の胞子が除去される。例えば、Bacillus属およびClostridium属の細菌は、検出され得る胞子を産生する。したがって、C. botulinum、C. perfringens、B. cereusおよび炭疽菌の胞子が検出され得る(例えば、炭疽菌胞子の検出)。緑色植物からの胞子もまた、本明細書中に提供される方法およびIR700−分子結合体を用いて除去され得ることも認識される。
【0152】
いくつかの例において、インタクトな微生物が、例えば、その微生物上の標的表面タンパク質(例えば、レセプター)に特異的な抗体、DNAザイムまたはDNAアプタマーを含むIR700−分子結合体を用いて、例えば、その微生物上のその標的タンパク質に結合することによって、除去される。例えば、開示される方法およびIR700−分子結合体とともに使用され得る抗体は、商業的供給源から入手可能であり、例えば、Novus Biologicals(Littleton,CO)およびProSci Incorporated(Poway,CA)は、大腸菌特異的抗体を提供しており;KPL(Gaithersburg,MD)は、リステリア(Listeria)特異的抗体を提供しており;Thermo Scientific/Pierce Antibodies(Rockford,IL)は、細菌およびウイルス、例えば、インフルエンザA、HIV−1、HSV1および2、大腸菌、Staphylococcus aureus、Bacillus anthracisおよびその胞子、PlasmodiumならびにCryptosporidiumを含むいくつかの微生物に特異的な抗体を提供している。さらに、微生物タンパク質に特異的なアプタマー、例えば、HIV逆転写酵素(Chaloinら、Nucleic Acids Research,30:4001−8,2002)およびC型肝炎ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ(Biroccioら、J.Virol.76:3688−96,2002);トキシン、例えば、コレラ全毒素(cholera whole toxin)およびブドウ球菌エンテロトキシンB(Bruno and Kiel,BioTechniques,32:pp.178−180および182−183,2002);ならびに細菌の胞子、例えば、炭疽菌(Bruno and Kiel,Biosensors & Bioelectronics,14:457−464,1999)に特異的なアプタマーが、開示される方法およびIR700−分子結合体とともに使用され得る。さらに、微生物タンパク質に特異的なDNAザイム、例えば、Escherichia coli−K12に特異的なDNAザイム(Aliら、Angewandte Chemie International Edition.50,3751−4,2011;Li,Future Microbiol.6,973−976,2011;およびAguirreら、J.Visualized Experiments.63,3961,2012)が、開示される方法およびIR700−分子結合体とともに使用され得る。そのような分子は、標的病原体または標的胞子を除去するためのIR700−分子結合体を作製するために使用され得る。
【0153】
タンパク質/ペプチド
開示される方法およびIR700−分子結合体は、種々のタンパク質およびペプチド、例えば、細胞表面レセプター、サイトカイン、抗体、ホルモン、レクチンならびにトキシンおよび毒液の除去または単離も可能にする。いくつかの例において、疾患または状態に関連する標的タンパク質が選択され、その標的タンパク質の除去または減少は、その疾患または状態を処置するために使用され得る。特定の例において、IR700−分子結合体は、タンパク質またはペプチド標的に特異的に結合し得る(例えば、そのタンパク質に特異的な抗体、機能的抗体フラグメント、Affibody(登録商標)分子、核酸分子、ハプテンまたは機能的核酸を含むIR700−分子結合体)。例えば、特定のタンパク質に対する特異的結合剤は、当該分野で公知である。例えば、そのような抗体は、商業的供給源、例えば、Invitrogen、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA);ABCam(Cambridge,MA)およびIBL International(Hamburg,Germany)から入手可能である。そのような分子は、標的タンパク質を除去するためのIR700−分子結合体を作製するために使用され得る。
【0154】
標的分子がタンパク質であるいくつかの例において、試験されるサンプルは、細胞または病原体の破壊を可能にする作用物質で処理され得る。それらのタンパク質は、抽出され得るかまたは単離され得、次いで、タンパク質の混合物から標的タンパク質を単離するかまたは除去することを可能にするために、本明細書中に開示されるIR700−分子結合体、例えば、標的タンパク質に特異的なIR700−分子結合体に曝露され得る。
【0155】
1つの例において、標的タンパク質は、サイトカインである。サイトカインは、他の細胞に影響する、免疫細胞によって分泌される低分子タンパク質である。標的サイトカインの例としては、インターロイキン(IL)およびインターフェロン(IFN)ならびにケモカイン、例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−6、IL−8、IL−10、IFN−γ、IFN−β、トランスフォーミング成長因子(TGF−β)および腫瘍壊死因子(TNF)−αが挙げられる。
【0156】
1つの例において、標的タンパク質は、ホルモンである。ホルモンは、1つの細胞から別の細胞にシグナルを運ぶ化学メッセンジャーである。標的ホルモンの例としては、植物ホルモンおよび動物ホルモン、例えば、内分泌ホルモンまたは外分泌ホルモンが挙げられる。特定の例としては、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、成長ホルモン、プロゲステロンなどが挙げられる。
【0157】
1つの例において、標的タンパク質は、トキシンである。トキシンは、細胞または生物、例えば、植物、動物、微生物(細菌、ウイルス、真菌、リケッチアまたは原虫を含むがこれらに限定されない)によって産生される有毒な物質である。標的トキシンの特定の例としては、ボツリヌス毒素、リシン、ジフテリア毒素、志賀毒素、コレラ毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンBおよび炭疽毒素が挙げられる。別の例において、トキシンは、環境毒素である。1つの例において、トキシンは、マイコトキシン、例えば、アフラトキシン、シトリニン、麦角アルカロイド、パツリン、フザリウム毒素またはオクラトキシンAである。1つの例において、標的トキシンは、シアノトキシン、例えば、ミクロシスチン、ノジュラリン、アナトキシン−a、アプリシアトキシン、シリンドロスパーモプシン(cylindrospermopsins)、リングビアトキシン−aおよびサキシトキシンである。1つの例において、標的トキシンは、エンドトキシン、血液毒、心臓毒、神経毒、壊死毒、神経毒または細胞毒である。
【0158】
1つの例において、標的タンパク質は、毒液(または毒液中の構成要素、例えば、トキシン)、例えば、スズメバチ、アリ、クモ、サソリ、魚類、ヘビなどによって産生されるものである。例としては、スズメバチ毒液タンパク質であるホスホリパーゼA1およびB、神経毒、ヘビ毒タンパク質、例えば、メタロプロテイナーゼ、ホスホジエステラーゼ、ホスホリパーゼA2、オキシダーゼ、プロテアーゼおよびヒアルロニダーゼ、ならびにサソリ毒タンパク質であるクロロトキシン(chlorotoxin)が挙げられる。
【0159】
1つの例において、標的タンパク質は、レクチンである。レクチンは、細胞の表面上の特定の炭水化物を認識してそれに結合するタンパク質である。レクチンは、通常、炭水化物単位に対する2つまたはそれを超える結合部位を含む。動物では、レクチンは、糖タンパク質合成を招く細胞接着を調節し、血液中のタンパク質レベルを制御し、可溶性の細胞外および細胞内糖タンパク質に結合する。また、免疫系では、レクチンは、病原体上に特異的に見出される炭水化物、または宿主細胞上では認識できない炭水化物を認識する。臨床的には、精製されたレクチンは、血液型検査のために個体の赤血球上の糖脂質および糖タンパク質を同定するために使用され得る。例示的なレクチンとしては、コンカナバリンA、レンチルレクチン、スノードロップレクチン(これらのすべてがマンノースに結合する);リシン、ピーナッツ凝集素、ジャカリンおよびヘアリーベッチレクチン(これらのすべてがガラクトースに結合する);コムギ胚芽凝集素(これはN−アセチルグルコサミンに結合する);エルダーベリーレクチン、マアキアアムレンシス(maackia amurensis)赤血球凝集素(これらのすべてがN−アセチルノイラミン酸に結合する);およびハリエニシダ(ulex europaeus)凝集素およびaleuria aurantiaレクチン(これらのすべてがフコースに結合する)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0160】
1つの例において、標的タンパク質は、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原、例えば、CA−125(卵巣がんマーカー)、アルファフェトプロテイン(AFP、肝臓がんマーカー);癌胎児性抗原(CEA;腸がん)、BRCA1および2(乳がん)などである。そのようなタンパク質は、腫瘍細胞の除去に有用である。
【0161】
1つの例において、標的タンパク質は、生殖能力関連バイオマーカー、例えば、hCG、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)または胎児フィブリノゲンである。
【0162】
1つの例において、標的タンパク質は、診断上のタンパク質、例えば、前立腺特異的抗原(PSA、例えば、GenBank(登録商標)アクセッション番号NP_001025218)、C反応性タンパク質、環状シトルリン化ペプチド(CCP、例えば、関節リウマチを診断するため)または糖化ヘモグロビン(Hb A1c)である。別の例において、そのタンパク質は、標的微生物または標的細胞、例えば、細菌細胞、ウイルス、胞子または腫瘍細胞の表面上に見出されるタンパク質である。そのようなタンパク質、例えば、レセプターは、微生物または細胞に特異的であり得る(例えば、HER2、IGF1R、EGFR、または下記の「核酸」において述べられる他の腫瘍特異的レセプター)。1つの(on)例において、そのタンパク質は、抗体またはPSA特異的アプタマーを用いて標的化され得る前立腺特異的抗原(PSA、例えば、GenBank(登録商標)アクセッション番号NP_001025218)である(例えば、Savoryら、Biosensors & Bioelectronics 15:1386−91,2010およびJeongら、Biotechnology Letters 32:378−85,2010を参照のこと)。
【0163】
核酸分子
開示される方法は、標的核酸分子、そのようなDNAまたはRNA(例えば、cDNA、ゲノムDNA、mRNA、miRNAなど)、例えば、目的の特定の病原体または細胞に特異的なDNA配列またはRNA配列の除去または単離も可能にする。例えば、病原体は、その病原体に特異的な保存されたDNA配列またはRNA配列を有し得(例えば、保存された配列は、HIV、鳥インフルエンザおよび豚インフルエンザに対して当該分野で公知である)、細胞は、その細胞に特有の特異的なDNA配列またはRNA配列を有し得る。いくつかの例において、疾患または状態に関連する標的核酸分子が選択され、その標的核酸分子の除去または減少は、その疾患または状態を処置する(例えば、発現をダウンレギュレートする)ために使用され得る。1つの例において、標的核酸分子は、サンプルで優位を占めているものであり、ゆえに、サンプルから除去されることにより、そのサンプル中のより稀な核酸分子(例えば、そのサンプル中の稀な生物由来の核酸分子)の解析(例えば、同定またはクローニング)が可能になり得る。
【0164】
特定の例において、IR700−分子結合体は、核酸分子標的に特異的に結合し得る(例えば、標的核酸分子に特異的なタンパク質または核酸分子を含むIR700−分子結合体)。例えば、特定の核酸分子に対する特異的結合剤は、当該分野で公知であり、日常的な方法を用いてデザインされ得る。例えば、標的核酸分子にハイブリダイズするのに十分な相補性を有する核酸分子(例えば、標的に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の配列相補性を有するもの)が、生成され、IR700に結合体化され得る。そのような分子は、標的核酸分子を除去するためのIR700−分子結合体を作製するために使用され得る。
【0165】
標的分子が核酸分子であるいくつかの例において、試験されるサンプルは、細胞または病原体の破壊を可能にする作用物質で処理され得る。それらの核酸分子は、抽出されるかまたは単離され、次いで、本明細書中に開示されるIR700−分子結合体(例えば、標的核酸分子に特異的なIR700−分子結合体)に曝露されることにより、核酸分子の混合物から標的核酸分子の単離または除去が可能になり得る。
【0166】
特定の非限定的な例において、標的核酸配列は、腫瘍(例えば、がん)に関連する。数多くの染色体異常(転座および他の再配列、重複(reduplication)(増幅)または欠失を含む)が、新生物細胞、特に、がん細胞、例えば、B細胞白血病およびT細胞白血病、リンパ腫、乳がん、卵巣がん、結腸がん、神経がんなどにおいて同定されている。
【0167】
例示的な標的核酸としては、染色体18q11.2の分岐点領域に位置するSYT遺伝子(滑膜肉腫軟部組織腫瘍によく見られる);c−erbB2またはHER2/neuとしても知られるHER2(代表的なヒトHER2ゲノム配列は、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000017、ヌクレオチド35097919〜35138441で提供されている)(HER2は、ヒトの乳がん、卵巣がん、胃がんおよび他のがんにおいて増幅される);p16(D9S1749、D9S1747、p16(INK4A)、p14(ARF)、D9S1748、p15(INK4B)およびD9S1752を含む)(ある特定の膀胱がんにおいて欠失される);EGFR(7p12;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000007、ヌクレオチド55054219〜55242525)、MET(7q31;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000007、ヌクレオチド116099695〜116225676)、C−MYC(8q24.21;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000008、ヌクレオチド128817498〜128822856)、IGF1R(15q26.3;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000015、ヌクレオチド97010284〜97325282)、D5S271(5p15.2)、KRAS(12p12.1;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000012、相補体、ヌクレオチド25249447〜25295121)、TYMS(18p11.32;例えば、GENBANK
TMアクセッション番号NC_000018、ヌクレオチド647651〜663492)、CDK4(12q14;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000012、ヌクレオチド58142003〜58146164、相補体)、CCND1(11q13、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000011、ヌクレオチド69455873〜69469242)、MYB(6q22−q23、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000006、ヌクレオチド135502453〜135540311)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)(8p22;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000008、ヌクレオチド19840862〜19869050)、RB1(13q14;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000013、ヌクレオチド47775884〜47954027)、p53(17p13.1;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000017、相補体、ヌクレオチド7512445〜7531642)、N−MYC(2p24;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000002、相補体、ヌクレオチド15998134〜16004580)、CHOP(12q13;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000012、相補体、ヌクレオチド56196638〜56200567)、FUS(16p11.2;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000016、ヌクレオチド31098954〜31110601)、FKHR(13p14;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000013、相補体、ヌクレオチド40027817〜40138734)、aALK(2p23;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000002、相補体、ヌクレオチド29269144〜29997936)、Ig重鎖、CCND1(11q13;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000011、ヌクレオチド69165054〜69178423)、BCL2(18q21.3;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000018、相補体、ヌクレオチド58941559〜59137593)、BCL6(3q27;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000003、相補体、ヌクレオチド188921859〜188946169)、AP1(1p32−p31;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000001、相補体、ヌクレオチド59019051〜59022373)、TOP2A(17q21−q22;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000017、相補体、ヌクレオチド35798321〜35827695)、TMPRSS(21q22.3;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000021、相補体、ヌクレオチド41758351〜41801948)、ERG(21q22.3;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000021、相補体、ヌクレオチド38675671〜38955488);ETV1(7p21.3;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000007、相補体、ヌクレオチド13897379〜13995289)、EWS(22q12.2;例えば、GENBANK
TMアクセッション番号NC_000022、ヌクレオチド27994017〜28026515);FLI1(11q24.1−q24.3;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000011、ヌクレオチド128069199〜128187521)、PAX3(2q35−q37;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000002、相補体、ヌクレオチド222772851〜222871944)、PAX7(1p36.2−p36.12;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000001、ヌクレオチド18830087〜18935219)、PTEN(10q23.3;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000010、ヌクレオチド89613175〜89718512)、AKT2(19q13.1−q13.2;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000019、相補体、ヌクレオチド45428064〜45483105)、MYCL1(1p34.2;例えば、GENBANK
TMアクセッション番号NC_000001、相補体、ヌクレオチド40133685〜40140274)、REL(2p13−p12;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000002、ヌクレオチド60962256〜61003682)およびCSF1R(5q33−q35;例えば、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000005、相補体、ヌクレオチド149413051〜149473128)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0168】
炭水化物
開示される方法およびIR700−分子結合体は、種々の炭水化物(例えば、サッカライド)の除去も可能にする。例としては、単糖類(monosaccarides)および二糖類が挙げられる。特定の例において、炭水化物標的に特異的に結合する特異的結合剤は、レクチンである。例えば、コンカナバリンA、レンチルレクチンおよびスノードロップレクチンが、マンノースを除去するために使用され得;リシン、ピーナッツ凝集素、ジャカリンおよびヘアリーベッチレクチンが、ガラクトースを除去するために使用され得;コムギ胚芽凝集素が、N−アセチルグルコサミンを除去するために使用され得;エルダーベリーレクチンおよびマアキアアムレンシス赤血球凝集素が、N−アセチルノイラミン酸を除去するために使用され得;ハリエニシダ凝集素およびaleuria aurantiaレクチンが、フコースを除去するために使用され得る。そのような分子は、標的炭水化物を除去するためのIR700−分子結合体を作製するために使用され得る。
【0169】
レクリエーショナルドラッグ
開示される方法およびIR700−分子結合体は、種々のレクリエーショナルドラッグの除去も可能にする。例えば、そのような薬物は、そのような薬物を過剰投与された被験体から除去され得る。特定の薬物に特異的な抗体は、当該分野で公知である。例えば、テトラヒドロカンナビノール、ヘロイン、コカイン、カフェインおよびメタンフェタミンに対する抗体が、AbCam(Cambridge,MA)から入手可能である。特定の例において、薬物標的に特異的に結合する特異的結合剤は、核酸(例えば、機能的核酸、例えば、アプタマーまたはDNAザイム)である。そのような分子は、標的レクリエーショナルドラッグを除去するためのIR700−分子結合体を作製するために使用され得る。
【0170】
例えば、カフェイン、コカイン、オピエート類およびオピオイド類(例えば、オキシコドン)、大麻(例えば、テトラヒドロカンナビノール(THC)を検出することによって)、ヘロイン、メタンフェタミン、クラック、エタノール、アセトアミノフェン、ベンゾジアゼピン類、メタドン、フェンシクリジンまたはタバコ(例えば、ニコチンを検出することによって)が、開示される方法およびIR700−分子結合体を用いて除去され得るかまたは単離され得る。
【0171】
細胞
任意の標的細胞が、開示される方法およびIR700−分子結合体を用いて、インビボ、インビトロまたはエキソビボにおいて除去され得るかまたは単離され得る。被験体から除去されるかまたは単離される標的細胞は、望ましくない細胞もしくはその成長が望まれない細胞(例えば、腫瘍細胞、がん幹細胞、病的な細胞、または被験体において疾患もしくは障害を引き起こすかもしくは悪化させる細胞)であり得るか、または望まれている細胞、例えば、PBMCもしくはHSCであり得る。いくつかの例において、細胞は、表面タンパク質、例えば、その細胞の表面上のレセプターを認識する特異的結合剤を使用することによって除去されるかまたは単離される。例えば、標的細胞は、他の非標的細胞の表面上には実質的に見出されない細胞表面タンパク質を発現し得、そのようなタンパク質を特異的に認識する特異的結合剤が選択され得、IR700−分子結合体が、そのタンパク質に対して生成され得る。例えば、特定の細胞および細胞表面タンパク質に特異的な抗体および機能的核酸分子が、当該分野で公知であり、商業的供給源、例えば、AbCamおよびSanta Cruz Biotechnologyから入手可能である。
【0172】
1つの例において、除去されるべき細胞は、悪性または良性いずれかの固体または液体(例えば、血液原)であり得る腫瘍細胞である。1つの例において、標的細胞は、被験体から除去されるべき望まれない細胞、例えば、がんを有する患者におけるがん細胞である。開示される方法を用いて除去され得る例示的な細胞としては、以下の腫瘍の細胞が挙げられる:液性腫瘍、例えば、急性白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病および赤白血病)、慢性白血病(例えば、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病および慢性リンパ性白血病)を含む白血病、真性多血症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(低悪性度、中悪性度および高悪性度のものを含む)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム(Waldenstrdm’s)マクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、マントル細胞リンパ腫および骨髄形成異常。別の例において、除去される細胞は、固形腫瘍、例えば、肉腫および癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫および他の肉腫、滑膜腫(synovioma)、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞癌(hepatocellular carcinomna)、肺がん、結腸直腸がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌(例えば、膵臓、結腸、卵巣、肺、乳房、胃、前立腺、頸部または食道の腺癌)、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、ヘパトーマ、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、膀胱癌、CNS腫瘍(例えば、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫(craniopharyogioma)、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫(menangioma)、メラノーマ、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫)由来のものである。
【0173】
したがって、いくつかの例において、細胞表面タンパク質は、腫瘍特異的タンパク質(腫瘍特異的抗原としても当該分野で公知)であり、IR700−分子結合体は、IR700−腫瘍特異的タンパク質結合剤結合体である。腫瘍特異的抗原の例としては、EGFレセプターファミリーのメンバー(例えば、HER1、2、3および4)およびサイトカインレセプターのメンバー(例えば、CD20、CD25、IL−13R、CD5、CD52など)が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、HER2は、主に乳がんに見出されるが、HER1は、主に腺癌に見出され、腺癌は、多くの臓器(例えば、膵臓、乳房、前立腺および結腸)に見出し得る。標的細胞上に見出し得る(およびそのタンパク質に対する特異的結合剤がIR700−腫瘍特異的タンパク質結合剤結合体を製剤化するために使用され得る)例示的な腫瘍特異的タンパク質としては、様々なMAGE(メラノーマ関連抗原E)のうちのいずれか(MAGE1(例えば、GenBankアクセッション番号M77481およびAAA03229)、MAGE2(例えば、GenBankアクセッション番号L18920およびAAA17729)、MAGE3(例えば、GenBankアクセッション番号U03735およびAAA17446)、MAGE4(例えば、GenBankアクセッション番号D32075およびA06841.1)などを含む);様々なチロシナーゼのうちのいずれか(例えば、GenBankアクセッション番号U01873およびAAB60319);変異体ras;変異体p53(例えば、GenBankアクセッション番号X54156、CAA38095およびAA494311);p97メラノーマ抗原(例えば、GenBankアクセッション番号M12154およびAAA59992);乳腺腫瘍に関連するヒト乳脂肪球(HMFG)(例えば、GenBankアクセッション番号S56151およびAAB19771);様々なBAGE(ヒトBメラノーマ関連抗原E)のうちのいずれか(BAGE1(例えば、GenBankアクセッション番号Q13072)およびBAGE2(例えば、GenBankアクセッション番号NM_182482およびNP_872288)を含む)、様々なGAGE(G抗原)のうちのいずれか(GAGE1(例えば、GenBankアクセッション番号Q13065)またはGAGE2〜6のうちのいずれかを含む);様々なガングリオシドおよびCD25(例えば、GenBankアクセッション番号NP_000408.1およびNM_000417.2)が挙げられるがこれらに限定されない。他の腫瘍特異的抗原としては、子宮頸がんに関連するHPV16/18およびE6/E7抗原(例えば、GenBankアクセッション番号NC_001526、FJ952142.1、ADB94605、ADB94606およびU89349)、乳癌に関連するムチン(MUC1)−KLH抗原(例えば、GenBankアクセッション番号J03651およびAAA35756)、結腸直腸がんに関連するCEA(癌胎児性抗原)(例えば、GenBankアクセッション番号X98311およびCAA66955)、例えばメラノーマに関連するgp100(例えば、GenBankアクセッション番号S73003およびAAC60634)、メラノーマに関連するMART1抗原(例えば、GenBankアクセッション番号NP_005502)、卵巣がんおよび他のがんに関連するがん抗原125(ムチン16またはMUC16としても知られるCA125)(例えば、GenBankアクセッション番号NM_024690およびNP_078966);肝臓がんに関連するアルファ−フェトプロテイン(AFP)(例えば、GenBankアクセッション番号NM_001134およびNP_001125);結腸直腸がん、胆道がん、乳がん、小細胞肺がんおよび他のがんに関連するLewis Y抗原;腺癌に関連する腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72);および前立腺がんに関連するPSA抗原(例えば、GenBankアクセッション番号X14810およびCAA32915)が挙げられる。他の例示的な腫瘍特異的タンパク質としては、さらに、固形腫瘍の新生血管構造(neovasculature)および前立腺がんに関連するPMSA(前立腺膜特異的抗原;例えば、GenBankアクセッション番号AAA60209およびAAB81971.1);乳がん、卵巣がん、胃がんおよび子宮がんに関連するHER−2(ヒト上皮成長因子レセプター2、例えば、GenBankアクセッション番号M16789.1、M16790.1、M16791.1、M16792.1およびAAA58637)、肺がん、肛門がんおよび神経膠芽腫(gliobastoma)ならびに腺癌に関連するHER−1(例えば、GenBankアクセッション番号NM_005228およびNP_005219);メラノーマ、肉腫、精巣癌および他のがんに関連するNY−ESO−1(例えば、GenBankアクセッション番号U87459およびAAB49693)、hTERT(テロメラーゼとしても知られる)(例えば、GenBankアクセッション番号NM_198253およびNP_937983(バリアント1)、NM_198255ならびにNP_937986(バリアント2));プロテイナーゼ3(例えば、GenBankアクセッション番号M29142、M75154、M96839、X55668、NM00277、M96628、X56606、CAA39943およびAAA36342)およびウィルムス腫瘍1(WT−1、例えば、GenBankアクセッション番号NM_000378およびNP_000369(バリアントA)、NM_024424ならびにNP_077742(バリアントB)、NM_024425およびNP_077743(バリアントC)、ならびにNM_024426およびNP_077744(バリアントD))が挙げられるがこれらに限定されない。1つの例において、腫瘍特異的タンパク質は、慢性リンパ性白血病に関連するCD52(例えば、GenBankアクセッション番号AAH27495.1およびCAI15846.1);急性骨髄性白血病に関連するCD33(例えば、GenBankアクセッション番号NM_023068およびCAD36509.1);および非ホジキンリンパ腫に関連するCD20(例えば、GenBankアクセッション番号NP_068769 NP_031667)である。
【0174】
いくつかの例において、除去されるかまたは単離される細胞は、自己免疫疾患に負に影響する細胞、例えば、CD4、CD25を発現する細胞、T細胞などである。
【0175】
いくつかの例において、取り出されるかまたは単離される細胞は、望まれる細胞、例えば、血液中または骨髄中の細胞である。1つの例において、取り出されるかまたは単離される細胞は、末梢血単核球(PBMC)である。例えば、IR700−CD19特異的結合剤は、サンプル、例えば、血液サンプルからPBMCを単離するためまたは取り出すために使用され得る。IR700−CD19特異的結合剤は、IR700−CD19特異的結合剤がサンプル中のPBMCに結合するのを可能にする条件下においてそのサンプルとともにインキュベートされ、次いで、結果として得られたIR700−CD19特異的結合剤−PBMC複合体が凝集するのを可能にする条件下において、それにNIR光が照射される。結果として生じた凝集物が回収され、それにより、PBMCが単離される。サンプルから単離されたPMBCは、いくつかの例において、移植を受ける被験体に投与される。
【0176】
1つの例において、取り出されるかまたは単離される細胞は、ヒト幹細胞(HSC)である。HSCは、臍帯、血液および/または骨髄から取り出され得るかまたは単離され得る。例えば、IR700−CD34特異的結合剤(例えば、abcamのカタログ#ab8158またはSanta Cruz Biotechnlogyのカタログ#sc19587)および/またはIR700−CD133特異的結合剤(例えば、MyBioSource.comのカタログ#MBS856765)が、サンプル、例えば、血液サンプルからHSCを単離するためまたは取り出すために使用され得る。IR700−CD34特異的結合剤および/またはIR700−CD133特異的結合剤は、そのIR700−CD34特異的結合剤および/またはIR700−CD133特異的結合剤がサンプル中のHSCに結合するのを可能にする条件下において、そのサンプルとともにインキュベートされ、次いで、結果として生じたIR700−CD34特異的結合剤−HSCおよび/またはIR700−CD133特異的結合剤−HSC複合体が凝集するのを可能にする条件下において、それにNIR光が照射される。結果として生じた凝集物が回収され、それにより、HSCが単離される。サンプルから単離されたHSCは、いくつかの例において、移植を受ける被験体に投与される。いくつかの例において、HSCを取り出すかまたは単離する前に、ドナー被験体に、サイトカイン、例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)が注射されることにより、細胞が骨髄を出て血管に循環するように誘導される。例えば、ドナーに、G−CSFを単独でまたはCXCR4阻害剤(例えば、プレリキサフォル(plerixafor))と組み合わせて注射した後、その細胞が回収され得る。1つの例において、G−CSF(例えば、10μg/kg)が、ドナー被験体の皮下に4日間にわたって毎日投与され、5日目に、G−CSFに加えてCXCR4阻害剤(例えば、プレリキサフォル)(例えば、240μg/kg)が皮下に投与される。次いで、動員された末梢血幹細胞(PBSC)の濃縮物が、5日目、プレリキサフォル投与の12時間後およびG−CSFの最後の投与の2時間後に、白血球搬出法によって回収され得る。別の例では、G−CSF(例えば、10μg/kg)が、ドナー被験体の皮下に5日間にわたって毎日投与され、次いで、動員されたPBSC濃縮物が、5日目に白血球搬出法によって回収され得る。それらのPBSCは、CD34および/またはCD133を発現する。1つの例において、Bloanらの方法が、PBMCを得るために使用される(Br.J.Haematol.120:801−7,2003)。結果として得られたPBMCサンプルは、HSCを単離するために使用され得る。
【0177】
1つの例において、非HSCをサンプルから枯渇させる方法が使用され、それにより、HSCの富化が可能になる(つまり、ネガティブ選択)。例えば、IR700−分子結合体(例えば、CD2、CD3、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD56、CD123およびCD235a(グリコホリンA)に対する特異的結合剤を含むもの)は、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、単球、顆粒球および/または赤血球の数を実質的に減少させるために使用され得る。1つの例において、望まれない細胞に特異的なIR700−分子結合体が、サンプルとともにインキュベートされ得、そのIR700−分子結合体が望まれない細胞に結合するのが可能になる。次いで、結果として得られたIR700分子−標的細胞複合体が凝集するのを可能にする条件下において、そのサンプルにNIR光が照射される。結果として生じた凝集物が回収され、それにより、望まれない細胞が除去され、HSCが富化される。
【0178】
サンプルから単離されたHSCは、いくつかの例において、移植を受ける被験体に投与される。いくつかの例において、それらのHSCは、処置される同じ被験体から得られる(自家であって、ドナーとレシピエントとが同じ人である)。他の例では、それらのHSCは、処置される被験体と異なる被験体から得られる(同種異系であって、ドナーとレシピエントとは異なる個体であるか、または同系であって、ドナーとレシピエントとが一卵性双生児である)。
【0179】
1つの例において、例えば、移植片拒絶に関連する細胞を除去するために、CD25を発現している細胞をサンプルから枯渇させる方法が使用される。したがって、そのサンプルは、移植を受ける被験体または移植のために臓器を提供する被験体から得られ得る。例えば、IR700−CD25特異的結合剤結合体は、例えば、IL−2Rαレセプター(CD25)を標的化するバシリキシマブまたはダクリズマブを用いて、サンプル中のCD25を発現している細胞の数を実質的に減少させるために使用され得る。1つの例において、IR700−CD25特異的結合剤結合体が、サンプルとともにインキュベートされ得、IR700−CD25特異的結合剤結合体が、望まれない細胞に結合するのが可能になる。次いで、結果として得られたIR700−CD25特異的結合剤−CD25細胞複合体が凝集するのを可能にする条件下において、そのサンプルにNIR光が照射される。結果として生じた凝集物が回収され、それにより、望まれない細胞が除去される。
【0180】
1つの例において、がん幹細胞(CSC)が、被験体、例えば、がんを有する被験体から取り出される(およびいくつかの例においては死滅させられる)。1つの例において、CSCは、膀胱のCSCであり、IR700−分子の特異的結合剤は、以下のうちの1つまたはそれを超えるものを認識する(または1つより多いIR700−分子結合体が使用される):アルデヒドデヒドロゲナーゼ1−A1/ALDH1A1;CD47;CD44およびCEACAM−6/CD66c。1つの例において、CSCは、乳房のCSCであり、IR700−分子の特異的結合剤は、以下のうちの1つまたはそれを超えるものを認識する(または1つより多いIR700−分子結合体が使用される):アルデヒドデヒドロゲナーゼ1−A1/ALDH1A1、GLI−1、BMI−1、GLI−2、CD24、IL−1アルファ/IL−1F1、CD44、IL−6Rアルファ、コネキシン43/GJA1、CXCR1/IL−8RA、CXCR4、インテグリンアルファ6/CD49f、DLL4、PON1、EpCAM/TROP1、PTENおよびErbB2/Her2。1つの例において、CSCは、結腸のCSCであり、IR700−分子の特異的結合剤は、以下のうちの1つまたはそれを超えるものを認識する(または1つより多いIR700−分子結合体が使用される):ALCAM/CD166、EpCAM/TROP1、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1−A1/ALDH1A1、GLI−1、CD44、Lgr5/GPR49、DPPIV/CD26およびMusashi−1。1つの例において、CSCは、胃のCSCであり、IR700−分子の特異的結合剤は、以下のうちの1つまたはそれを超えるものを認識する(または1つより多いIR700−分子結合体が使用される):CD44、Lgr5/GPR49およびDLL4。1つの例において、CSCは、神経膠腫/髄芽腫のCSCであり、IR700−分子の特異的結合剤は、以下のうちの1つまたはそれを超えるものを認識する(または1つより多いIR700−分子結合体が使用される):A20/TNFAIP3、IL−6Rアルファ、ABCG2、インテグリンアルファ6/CD49f、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1−A1/ALDH1A1、L1CAM、BMI−1、c−Maf、CD15/Lewis X、Musashi−1、CD44、c−Myc、CX3CL1/フラクタルカイン、ネスチン、CX3CR1、ポドプラニン、CXCR4、SOX2およびHIF−2アルファ/EPAS1。1つの例において、CSCは、頭頚部のCSCであり、IR700−分子の特異的結合剤は、以下のうちの1つまたはそれを超えるものを認識する(または1つより多いIR700−分子結合体が使用される):ABCG2、CD44、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1−A1/ALDH1A1、HGF R/c−MET、BMI−1およびLgr5/GPR49。1つの例において、CSCは、白血病のCSCであり、IR700−分子の特異的結合剤は、以下のうちの1つまたはそれを超えるものを認識する(または1つより多いIR700−分子結合体が使用される):BMI−1、GLI−1、CD34、GLI−2、CD38、IL−3Rアルファ/CD123、CD44、MICL/CLEC12A、CD47、Musashi−2、CD96、TIM−3およびCD117/c−kit。1つの例において、CSCは、肝臓のCSCであり、IR700−分子の特異的結合剤は、以下のうちの1つまたはそれを超えるものを認識する(または1つより多いIR700−分子結合体が使用される):アルファ−フェトプロテイン(AFP)、CD90/Thy1、アミノペプチダーゼN/CD13、NF2/マーリン(Merlin)およびCD45。1つの例において、CSCは、肺のCSCであり、IR700−分子の特異的結合剤は、以下のうちの1つまたはそれを超えるものを認識する(または1つより多いIR700−分子結合体が使用される):ABCG2、CD117/c−kit、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1−A1/ALDH1A1、EpCAM/TROP1およびCD90/Thy1。1つの例において、CSCは、メラノーマのCSCであり、IR700−分子の特異的結合剤は、以下のうちの1つまたはそれを超えるものを認識する(または1つより多いIR700−分子結合体が使用される):ABCB5、MS4A1/CD20、ABCG2、ネスチン、ALCAM/CD166およびNGF R/TNFRSF16。1つの例において、CSCは、ミエローマのCSCであり、IR700−分子の特異的結合剤は、以下のうちの1つまたはそれを超えるものを認識する(または1つより多いIR700−分子結合体が使用される):ABCB5、CD38、CD19、MS4A1/CD20、CD27/TNFRSF7およびシンデカン−1/CD138。1つの例において、CSCは、骨肉腫のCSCであり、IR700−分子の特異的結合剤は、以下のうちの1つまたはそれを超えるものを認識する(または1つより多いIR700−分子結合体が使用される):ABCG2、ネスチン、CD44、STRO−1およびエンドグリン/CD105。1つの例において、CSCは、卵巣のCSCであり、IR700−分子の特異的結合剤は、以下のうちの1つまたはそれを超えるものを認識する(または1つより多いIR700−分子結合体が使用される):アルファ−メチルアシル−CoAラセマーゼ/AMACR、CD117/c−kit、CD44、エンドグリン/CD105。1つの例において、CSCは、膵臓のCSCであり、IR700−分子の特異的結合剤は、以下のうちの1つまたはそれを超えるものを認識する(または1つより多いIR700−分子結合体が使用される):アルデヒドデヒドロゲナーゼ1−A1/ALDH1A1、CXCR4、BMI−1、EpCAM/TROP1、CD24、PON1およびCD44。1つの例において、CSCは、前立腺のCSCであり、IR700−分子の特異的結合剤は、以下のうちの1つまたはそれを超えるものを認識する(または1つより多いIR700−分子結合体が使用される):ABCG2、CD44、ALCAM/CD166、CD151、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1−A1/ALDH1A1、c−Maf、アルファ−メチルアシル−CoAラセマーゼ/AMACR、c−Myc、BMI−1およびTRA−1−60(R)。
【0181】
薬理学的薬物
いくつかの例において、標的は、薬物動態が制御されるべき薬物である。例えば、その薬物は、所望の治療効果を有するがそれが身体内に長時間存在することは望ましくない場合がある薬理学的薬物(例えば、処方箋薬または薬局から入手可能なもの)であり得る。開示される方法およびIR700−薬物結合体は、所望の長さの時間が経過した後、例えば、その薬物が所望の治療効果を有した後に、結合体化された医薬品を身体から除去することを可能にする。例えば、IR700−薬物結合体は、その薬物が所望の効果を有するのに十分な時間にわたって被験体に有効量で投与され得る。次いで、IR700−薬物複合体が凝集するのを可能にする条件下において、その被験体にNIR光が照射される。結果として生じた凝集物が、除去されるか、または身体によって、例えば肝臓によって分解され、それにより、その薬物が身体から除去される(またはその薬物が不活性になる)。いくつかの例において、被験体には、IR700−薬物複合体の投与とそれに続くNIR光への曝露の複数回の繰り返し(multiple rounds)、例えば、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回もしくは少なくとも20回またはそれを超えるそのような処置の繰り返しが行われる。
【0182】
IR700に結合体化され、開示される方法において使用され得る(有効量で投与され得る)例示的な薬物としては、抗新生物化学療法剤、抗生物質、アルキル化剤および抗酸化剤、キナーゼ阻害剤ならびに他の作用物質が挙げられるがこれらに限定されない。他の例としては、微小管結合剤、DNAインターカレーターまたはDNA架橋剤、DNA合成阻害剤、DNAおよび/またはRNA転写阻害剤、抗体、酵素、酵素阻害剤ならびに遺伝子調節剤(gene regulator)が挙げられる。そのような作用物質は、当該分野で公知である。例示的な化学療法剤は、Slapak and Kufe,Principles of Cancer Therapy,Harrison’s Principles of Internal Medicine,14th editionの中のChapter 86;Perryら、Chemotherapy,Abeloff,Clinical Oncology 2nd ed.,2000の中のCh.17、Churchill Livingstone,Inc;Baltzer and Berkery.(eds):Oncology Pocket Guide to Chemotherapy,2nd ed.St.Louis,Mosby−Year Book,1995;およびFischer Knobf,and Durivage(eds):The Cancer Chemotherapy Handbook,4th ed.St.Louis,Mosby−Year Book,1993)に記載されている。
【0183】
「微小管結合剤」とは、チューブリンと相互作用することにより、微小管の形成を安定化するかまたは不安定化し、それにより、細胞分裂を阻害する作用物質のことを指す。本明細書中に提供される方法とともに使用され得る微小管結合剤の例としては、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン(ナベルビン)、エポチロン、コルヒチン、ドラスタチン15、ノコダゾール、ポドフィロトキシンおよびリゾキシンが挙げられるがこれらに限定されない。そのような化合物のアナログおよび誘導体も使用され得、それらは当業者に公知である。例えば、好適なエポチロンおよびエポチロンアナログは、国際公開番号WO2004/018478に記載されている。タキソイド、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル、ならびに米国特許第6,610,860号;同第5,530,020号;および同第5,912,264号に教示されているパクリタキセルのアナログが使用され得る。
【0184】
以下のクラスの化合物が、IR700に結合体化され得、本明細書中に開示される方法とともに使用され得る:アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシンならびにそれらの誘導体およびアナログを含むがこれらに限定されないDNAおよび/またはRNA転写調節物質。使用され得るDNAインターカレーターおよびDNA架橋剤としては、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ブレオマイシン、クロラムブシル、シクロホスファミドならびにそれらの誘導体およびアナログが挙げられるがこれらに限定されない。使用に適したDNA合成阻害剤としては、メトトレキサート、5−フルオロ−5’−デオキシウリジン、5−フルオロウラシルおよびそれらのアナログが挙げられるがこれらに限定されない。好適な酵素阻害剤の例としては、カンプトテシン、エトポシド、フォルメスタン、トリコスタチンならびにそれらの誘導体およびアナログが挙げられるがこれらに限定されない。遺伝子調節に影響する好適な化合物としては、1つまたはそれを超える遺伝子の発現の増加または減少をもたらす作用物質、例えば、ラロキシフェン、5−アザシチジン、5−アザ−2’−デオキシシチジン、タモキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、ミフェプリストンならびにそれらの誘導体およびアナログが挙げられる。キナーゼ阻害剤には、成長因子のリン酸化および活性化を妨げるGleevac、IressaおよびTarcevaが含まれる。
【0185】
1つの例において、化学療法薬は、エピルビシン、トポテカン、イリノテカン、ゲムシタビン、チアゾフリン(iazofurine)、バルスポダール(valspodar)、ミトキサントロンまたはDoxil(リポソームに包まれた(liposome encapculated)ドキソルビシン(doxiorubicine))である。1つの例において、薬物は、アドリアマイシン、アピゲニン、ゼブラリン(zebularine)、シメチジン、テオフィリンまたはそれらの誘導体もしくはアナログである。
【0186】
1つの例において、薬物は、生物学的薬剤(例えば、mAb)または小分子、例えば、下記の表に示されるものである:
【表1】
【0187】
1つの例において、薬物は、関節リウマチを処置するための生物学的薬剤(例えば、mAb)または小分子、例えば、トシリズマブまたはリツキシマブである。
【0188】
1つの例において、薬物は、以下のうちの1つまたはそれを超える薬物である:抗生物質(例えば、ペニシリン、アンピシリン、メトロニダゾール、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、トブラマイシン、シプロなど)、抗高血圧剤(例えば、チアジド利尿薬、ACE阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬、ベータ遮断薬およびアンギオテンシンIIレセプターアンタゴニスト)、抗うつ剤(例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、三環系抗うつ剤(TCA)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、ブプレノルフィン、トリプトファン、抗精神病薬およびセイヨウオトギリソウ、例えば、プロザック)、鎮痛剤(例えば、アセトアミノフェン、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、COX−2阻害剤およびオピオイド薬物、例えば、モルヒネ、コデインおよびオキシコドン)、生殖ホルモン(例えば、エストロゲン、テストステロンおよびプロゲステロン)、血液希釈剤(例えば、ワルファリン)、ステロイド(例えば、プレドニゾン)、コレステロールを減少させるスタチン(stain)(例えば、Mevacor、Zocor、Pravachol)、免疫抑制剤(例えば、ラパマイシン、シクロスポリンおよびメトトレキサート、アザチオプリン、リツキシマブまたはステロイド)またはサイトカイン(例えば、GM−CSF)および他の処方箋薬。
【0189】
例示的な特異的結合剤
IR700−分子複合体における分子は、特異的結合剤と標的作用物質との選択的結合を可能にする特異的結合剤であり得る。特異的結合剤は、当該分野で公知であり、非限定的な例が下記に提供される。例えば、IR700−分子結合体は、IR700−抗体結合体、IR700−抗体フラグメント結合体、IR700−Affibody(登録商標)分子結合体、IR700−ハプテン結合体、IR700−レクチン結合体、IR700−タンパク質結合体、IR700−核酸分子結合体またはIR700−機能的核酸結合体であり得、ここで、その抗体、抗体フラグメント、Affibody(登録商標)分子、ハプテン、レクチン、タンパク質、核酸分子および機能的核酸は、標的分子に特異的に結合し得る。商業的に入手可能な特異的結合剤およびそれらを作製するための公知の方法は、任意のIR700−特異的結合剤複合体を作製することを可能にする。例えば、数多くの作用物質、例えば、タンパク質(例えば、サイトカイン、腫瘍抗原など)、金属、有機小化合物および核酸分子に対する抗体(およびその機能的フラグメント)、DNAザイムおよびアプタマーが入手可能である。さらに、特定の標的に特異的な抗体、機能的核酸および核酸分子を作製する方法は、当該分野で周知である。
【0190】
特異的結合剤をIR700に結合させるための方法は、日常的なものである。例えば、IR700は、IR700のNHSエステルを使用することによって、タンパク質(例えば、抗体)に結合体化され得る。さらに、IR700は、ソラレンによって官能化されたIR700などのリンカー化学またはクリックケミストリーを使用することによって、核酸(例えば、機能的核酸)に結合体化され得る。
【0191】
抗体および抗体フラグメント
様々な分子に特異的な抗体および抗体フラグメントが、当該分野で周知である。したがって、いくつかの例において、IR700−分子複合体における分子は、抗体または抗体フラグメントと標的(例えば、標的タンパク質)との特異的結合を可能にする、抗体またはそのフラグメントである。本明細書中に提供される方法において使用され得る抗体には、インタクトな免疫グロブリン、バリアント免疫グロブリンおよび抗体の一部、例えば、天然に存在する抗体または組換え抗体の抗原結合フラグメントが含まれる。
【0192】
代表的には、天然に存在する免疫グロブリンは、ジスルフィド結合によって相互接続された重(H)鎖および軽(L)鎖を有する。軽鎖には、2つのタイプ、ラムダ(λ)およびカッパー(k)がある。抗体分子の機能活性を決定する5つの主要な重鎖クラス(またはアイソタイプ)がある:IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgE。
【0193】
重鎖および軽鎖の各々は、定常領域および可変領域を含む(それらの領域は、「ドメイン」としても知られる)。重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、一緒になって、抗原に特異的に結合する。軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる3つの超可変領域によって分断された「フレームワーク」領域を含む。フレームワーク領域およびCDRの範囲は定義されている(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Department of Health and Human Services,1991(参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。Kabatデータベースは、現在、オンラインで維持されている。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で、例えば、ヒトの間で比較的保存されている。ある抗体のフレームワーク領域、すなわち、構成物である軽鎖および重鎖の組み合されたフレームワーク領域は、CDRを3次元空間に位置付け、位置合わせするように働く。
【0194】
CDRは、主に、抗原のエピトープへの結合に関与する。各鎖のCDRは、通常、CDR1、CDR2およびCDR3(N末端から順番に番号づけられた)と称され、通常、特定のCDRが位置する鎖によって特定される。したがって、V
HCDR3は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメインに位置するの対して、V
LCDR1は、それが見出される抗体の軽鎖の可変ドメイン由来のCDR1である。異なる特異性(すなわち、異なる抗原に対して異なる結合部位)を有する抗体は、異なるCDRを有する。CDRは、抗体によって異なるが、それらのCDR内の限られた数のアミノ酸位置しか、抗原結合に直接関わらない。CDR内のこれらの位置は、特異性決定残基(SDR)と呼ばれる。
【0195】
「V
H」または「VH」への言及は、Fv、scFv、dsFvまたはFabの可変領域を含む、免疫グロブリン重鎖の可変領域のことを指す。「V
L」または「VL」への言及は、Fv、scFv、dsFvまたはFabの可変領域を含む、免疫グロブリン軽鎖の可変領域のことを指す。
【0196】
抗体という用語の範囲内に包含される結合フラグメントの具体的で非限定的な例としては、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab)’
2フラグメント、一本鎖Fvタンパク質(「scFv」)およびジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)が挙げられる。scFvタンパク質は、免疫グロブリンの軽鎖可変領域と免疫グロブリンの重鎖可変領域とがリンカーによって結合された融合タンパク質である一方で、dsFvでは、それらの鎖は、それらの鎖の会合を安定化するためにジスルフィド結合を導入するように変異されている。
【0197】
1つの例において、Abは、遺伝的に操作されたAb、例えば、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体)である。Pierce Catalog and Handbook,1994−1995(Pierce Chemical Co.,Rockford,IL);Kuby,J.,Immunology,3
rd Ed.,W.H.Freeman & Co.,New York,1997も参照のこと。キメラ抗体は、1つの種、例えば、ヒト由来のフレームワーク残基、および別の種、例えば、ヒトEGFRに特異的に結合するマウス抗体由来のCDR(一般に、抗原結合を付与する)を有する。
【0198】
1つの例において、Abは、ヒト化Abまたはヒト化免疫グロブリンである。ヒト化免疫グロブリンは、ヒトフレームワーク領域、および非ヒト(例えば、マウス、ラットまたは合成)免疫グロブリン由来の1つまたはそれを超えるCDRを含む免疫グロブリンである。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは、「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは、「アクセプター」と呼ばれる。1つの実施形態において、ヒト化免疫グロブリンにおけるすべてのCDRが、ドナー免疫グロブリンに由来する。定常領域は、存在しなくてもよいが、存在する場合、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、すなわち、少なくとも約85〜90%、例えば、約95%またはそれを超えて同一でなければならない。ゆえに、ヒト化免疫グロブリンのおそらくCDRを除くすべての部分が、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖およびヒト化重鎖免疫グロブリンを含む抗体である。ヒト化抗体は、CDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合する。ヒト化免疫グロブリンまたはヒト化抗体のアクセプターフレームワークは、ドナーフレームワークから取られたアミノ酸による限られた数の置換を有し得る。ヒト化抗体または他のモノクローナル抗体は、抗原結合または他の免疫グロブリン機能に実質的に影響しないさらなる保存的アミノ酸置換を有し得る。ヒト化免疫グロブリンは、遺伝子操作を用いて構築され得る(例えば、米国特許第5,585,089号を参照のこと)。
【0199】
1つの例において、Abは、ヒトフレームワーク領域およびヒト免疫グロブリン由来のCDRのすべてを含むヒト抗体(完全ヒト抗体とも呼ばれる)である。1つの例において、フレームワークおよびCDRは、同じ起源のヒト重鎖および/または軽鎖アミノ酸配列に由来する。しかしながら、1つのヒト抗体に由来するフレームワークが、異なるヒト抗体に由来するCDRを含むように操作され得る。ヒト免疫グロブリンのすべての部分が、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。
【0200】
1つの例において、Abは、モノクローナル抗体(mAb)である。mAbは、Bリンパ球の単一クローンによるかまたは単一の抗体の軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子がトランスフェクトされた細胞によって産生される抗体である。mAbは、当業者に公知の方法、例えば、ミエローマ細胞と免疫脾臓細胞との融合によってハイブリッド抗体形成細胞を作製することによって、産生される。mAbには、ヒト化mAbが含まれる。
【0201】
本明細書中で使用されるとき、抗体という用語には、細胞において1つまたはそれを超える抗体鎖をコードする核酸の発現によって産生される組換え抗体も含まれる(例えば、米国特許第4,745,055号;米国特許第4,444,487号;WO88/03565;EP256,654;EP120,694;EP125,023;Faoulknerら、Nature 298:286,1982;Morrison,J.Immunol.123:793,1979;Morrisonら、Ann Rev.Immunol.2:239,1984を参照のこと)。
【0202】
具体的な例において、抗体は、がんを処置するために使用される生物製剤(biologic)、例えば、腫瘍タンパク質に特異的なものである。例えば、以下の結合体が使用され得る:IR700−パニツムマブ結合体、IR700−トラスツズマブ結合体、IR700−結合体結合体、IR700−Zenapax結合体、IR700−Simitect結合体、IR700−J591結合体またはIR700−セツキシマブ結合体。
【0203】
Affibody(登録商標)分子
様々な標的に特異的なAffibody(登録商標)分子が当該分野で周知である(例えば、Affibody,Sona,Sweden製のもの)。したがって、いくつかの例において、IR700−分子複合体における分子は、Affibody(登録商標)分子と標的(例えば、標的タンパク質)との特異的結合を可能にする、Affibody(登録商標)分子である。Affibody(登録商標)分子は、約6kDaの低分子タンパク質抗体模倣物である。いくつかの例において、Affibody(登録商標)分子は、58アミノ酸を有する3つのアルファヘリックスからなる。対照的に、mAbは、約150kDaであり、単一ドメイン抗体は、約12〜15kDaである。ユニークな結合特性を有するAffibody(登録商標)分子は、通常、親タンパク質ドメインの結合活性に関与する2つのアルファ−ヘリックスに位置する13個のアミノ酸のランダム化によって生成される。いくつかの例において、結合表面の外側のアミノ酸は、その骨格において置換されて、先祖のプロテインAドメインと全く異なる表面をもたらす。標的タンパク質に結合する特定のAffibody(登録商標)分子は、数十億個の異なるバリアントを含むプール(ライブラリー)から、ファージディスプレイを用いて「釣り上げられ」得る。
【0204】
ハプテン
ハプテンは、より大きなキャリア(例えば、タンパク質)に結合されたとき、通常、免疫応答の誘発だけを行い得る小分子である。ハプテンは、不完全な抗原または部分的な抗原として当該分野で公知である。しかし、ハプテンは、抗体と同様に標的分子に結合し得るので、いくつかの例において、IR700−分子複合体における分子は、ハプテンであり、そのハプテンと標的(例えば、標的タンパク質)との特異的結合が可能になる。
【0205】
レクチン
1つの例において、特異的結合剤は、レクチンである。レクチンは、特定の炭水化物、例えば、細胞の表面上の炭水化物を認識してそれに結合するタンパク質である。したがって、いくつかの例において、IR700−分子複合体における分子は、レクチンであり、そのレクチンと標的炭水化物との特異的結合が可能になる。レクチンは、IR700への結合体化/結合を可能にするタンパク質またはペプチド伸長物を含むように改変され得る。
【0206】
レクチンは、動物、植物および微生物に見出され、具体的な例は、当該分野で公知である。例えば、下に示されるように、植物レクチンであるコムギ胚芽凝集素、ピーナッツレクチンおよびフィトヘマグルチニンは、異なるオリゴ糖を認識する。
【化8】
【0207】
特定の炭水化物を除去するために使用され得る例示的なレクチンとしては、コンカナバリンA、レンチルレクチン、スノードロップレクチン(これらのすべてがマンノースに結合する);リシン、ピーナッツ凝集素、ジャカリンおよびヘアリーベッチレクチン(これらのすべてがガラクトースに結合する);コムギ胚芽凝集素(これはN−アセチルグルコサミンに結合する);エルダーベリーレクチン、マアキアアムレンシス赤血球凝集素(これらのすべてがN−アセチルノイラミン酸に結合する);およびハリエニシダ凝集素およびaleuria aurantiaレクチン(これらのすべてがフコースに結合する)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0208】
タンパク質
1つの例において、特異的結合剤は、タンパク質である。特定のタンパク質、核酸分子および他の結合パートナーを認識してそれに結合するタンパク質が使用され得る。例えば、タンパク質リガンドは、細胞表面上の特定のレセプタータンパク質に結合するために使用され得る。したがって、いくつかの例において、IR700−分子複合体における分子は、タンパク質であり、そのタンパク質と標的タンパク質、核酸分子または他の結合分子との特異的結合およびそのタンパク質に結合する分子(例えば、そのタンパク質と共有結合を形成する分子)の除去が可能になる。
【0209】
タンパク質間相互作用が当該分野で周知であり、タンパク質間相互作用には、シグナル伝達、細胞輸送、筋機能(アクチン/ミオシン)に関与するものが含まれる。さらに、タンパク質−核酸分子相互作用も当該分野で周知であり、タンパク質−核酸分子相互作用には、核酸分子(DNAまたはRNA)の構造および機能、例えば、転写、翻訳、DNA複製、修復および組換えならびにRNAのプロセシングおよび移行を制御するものが含まれる。
【0210】
核酸分子
1つの例において、特異的結合剤は、核酸分子である。特定のタンパク質、核酸分子(ハイブリダイゼーションを介して)および他の結合パートナーを認識してそれに結合する核酸分子が使用され得る。例えば、標的核酸分子に対して十分な相補性を有する核酸分子は、その相補的な配列にハイブリダイズし、その相補的な配列を除去し得る。したがって、いくつかの例において、IR700−分子複合体における分子は、核酸分子であり、その核酸分子と標的タンパク質、核酸分子または他の結合分子との特異的結合、およびその核酸分子に結合する分子の除去が可能になる。
【0211】
1つの例において、標的は、核酸分子であり、IR700−分子結合体は、2つの核酸分子間のハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な相補性(配列同一性)の配列を有する核酸分子を含む。例えば、核酸分子は、標的核酸分子の少なくとも一部と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性、例えば、このレベルの配列同一性を、標的の少なくとも30個連続したヌクレオチド、標的の少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも500個、少なくとも1000個または少なくとも10,000個連続したヌクレオチドまたはそれを超えるヌクレオチドにわたって、有し得る。
【0212】
さらに、タンパク質−核酸分子相互作用も当該分野で周知であり、タンパク質−核酸分子相互作用には、核酸分子(DNAまたはRNA)の構造および機能、例えば、転写、翻訳、DNA複製、修復および組換えならびにRNAのプロセシングおよび移行を制御するものが含まれる。
【0213】
機能的核酸(FNA)
1つの例において、特異的結合剤は、機能的核酸分子(FNA)(Liuら、Chem.Rev.2009,109,1948−1998)である。DNAザイムおよびDNAアプタマーを含むFNAは、広範囲の標的を認識してそれに高親和性かつ高特異性で結合する核酸分子(例えば、DNAまたはRNA)である。したがって、いくつかの例において、IR700−分子複合体における分子は、FNAであり、そのFNAと標的との特異的結合、およびそのFNAに結合する標的の除去が可能になる。
【0214】
本明細書中に提供される方法およびIR700−分子結合体において使用されるために改変され得るかまたは適合され得るFNA配列は、当該分野で公知である(例えば、US8,058,415を参照のこと)。FNAの1つの例は、触媒核酸である。その触媒活性核酸は、DNAザイム/RNAザイム、デオキシリボザイム/リボザイム、DNA酵素/RNA酵素としても知られる触媒DNA/RNAであり得る。触媒活性核酸には、修飾された核酸も含まれ得る。アプタザイム、RNAザイムおよびDNAザイムは、被検体に結合すると、化学反応を起こす(例えば、FNAの基質鎖を切断する)ことによって反応性になる。各場合において、その反応性のポリヌクレオチドが反応性になった結果は、凝集物の脱凝集および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの放出を引き起こすことである。FNAの他の例は、標的に結合すると立体構造変化を起こすアプタマーである。アプタマーは、被検体に結合すると、立体構造変化を起こすことによって反応性になる。
【0215】
FNAは、約10
15個のランダムな配列を有するDNA(通常、2〜25kDa)のプールから、インビトロ選択、または指数的富化によるリガンドの系統進化(SELEX)として公知のプロセスによって選択され得る。DNAザイムおよびアプタマーは、様々な標的に対してそれぞれ特異的な触媒活性および強い結合親和性を示す。標的は、金属イオンおよび有機小分子から、生体分子およびさらにはウイルスまたは細胞にまで及び得る。
【0216】
特定の標的作用物質に特異的なFNAを同定する方法は、当該分野において日常的なものであり、いくつかの特許に記載されている。例えば、米国特許第7,192,708号;同第7,332,283号;同第7,485,419号;同第7,534,560号;および同第7,612,185号、ならびに米国特許公開番号20070037171および20060094026には、特定のイオン、例えば、鉛およびコバルトに結合し得る機能的DNA分子を同定する方法が記載されている。さらに、具体的な例が提供されている。それらの例のいくつかは、フルオロフォアを有する機能的DNA分子を記載しているが、そのような標識は、本明細書中に記載される方法には必要ない。
【0217】
アプタマーは、高親和性かつ高特異性で標的を認識する一本鎖(ss)核酸(例えば、DNAまたはRNA)であり、それは、それらの標的の存在下において立体構造変化を起こす。例えば、コカインアプタマーは、対応する標的としてコカインに結合する。したがって、アプタマーは、特異的結合剤として使用され得る。インビトロ選択方法は、例外的に高親和性を有し、ピコモル濃度範囲ほど高い解離定数を有する、広範囲の標的分子に対するアプタマーを得るために使用され得る(Brody and Gold,J.Biotechnol.74:5−13,2000;Jayasena,Clin.Chem.,45:1628−1650,1999;Wilson and Szostak,Annu.Rev.Biochem.68:611−647,1999)。例えば、金属イオン、例えば、Zn(II)(Ciesiolkaら、RNA 1:538−550,1995)およびNi(II)(Hofmannら、RNA,3:1289−1300,1997);ヌクレオチド、例えば、アデノシン三リン酸(ATP)(Huizenga and Szostak,Biochemistry,34:656−665,1995);およびグアニン(Kigaら、Nucleic Acids Research,26:1755−60,1998);コファクター、例えば、NAD(Kigaら、Nucleic Acids Research,26:1755−60,1998)およびフラビン(Lauhon and Szostak,J.Am.Chem.Soc.,117:1246−57,1995);抗生物質、例えば、バイオマイシン(Wallisら、Chem.Biol.4:357−366,1997)およびストレプトマイシン(Wallace and Schroeder,RNA 4:112−123,1998);タンパク質、例えば、HIV逆転写酵素(Chaloinら、Nucleic Acids Research,30:4001−8,2002)およびC型肝炎ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ(Biroccioら、J.Virol.76:3688−96,2002);トキシン、例えば、コレラ全毒素およびブドウ球菌エンテロトキシンB(Bruno and Kiel,BioTechniques,32:pp.178−180および182−183,2002);および細菌の胞子、例えば、炭疽菌(Bruno and Kiel,Biosensors & Bioelectronics,14:457−464,1999)を認識するアプタマーが開発された。抗体と比べて、DNA/RNAベースのアプタマーは、短期間(数日 対 数ヶ月)かつ限られたコストでインビトロにおいて得られるので、入手がより容易で、作製がより安価である。さらに、DNA/RNAアプタマーは、それらの生物認識(biorecognition)能力を失わずに何度も変性および再生することができる。
【0218】
DNA/RNAザイムは、通常、標的を認識する(およびRNA塩基を含み得る)基質鎖および触媒ドメインまたは酵素ドメインを含む。いくつかの例において、コファクター、例えば、金属イオンが、基質の切断を触媒する。例えば、鉛DNAザイムは、対応する標的として鉛に結合する。したがって、DNA/RNAザイムは、特異的結合剤として使用され得る。アプタザイムは、アプタマーとDNAザイムまたはリボザイムとの組み合わせ物である。標的が、DNAザイム/リボザイム活性を誘発するアプタマーまたはDNAザイム/リボザイム活性を阻害するアプタマーに結合したとき、アプタザイムは働く。したがって、アプタザイムは、特異的結合剤として使用され得る。
【実施例】
【0219】
実施例1
IRDye700結合体化トラスツズマブ(抗Her2)の合成
【0220】
この実施例は、モノクローナル抗体であるトラスツズマブをIRDye700DX NHSエステルに結合体化するために使用される方法を記載する。当業者(On skilled in the art)は、標的細胞表面タンパク質に特異的な任意の抗体、例えば、任意のモノクローナル抗体が、同様の方法を用いてIRDye700DX NHSエステルに結合体化され得ることを認識する。
【0221】
ヒト化抗HER2抗体であるトラスツズマブ(Tra;Genentech,San Francisco,CA)(1mg,6.8nmol)を、0.1mol/L Na
2HPO
4(pH8.5)中において室温で30〜120分間、IRDye700DX NHSエステル(IR700;LI−COR Bioscience,Lincoln,NE)(66.8μg,34.2nmol,DMSO中の5mmol/L)とともにインキュベートした。トラスツズマブは、ヒト上皮成長因子レセプター(EGFR)2(HER2)チロシンキナーゼレセプターの細胞外ドメインに対して誘導された組換えヒト化モノクローナル抗体(mAb)である。その混合物を、Sephadex G50カラム(PD−10;GE Healthcare,Piscataway,NJ)を用いて精製した。タンパク質濃度を、Coomassie Plusタンパク質アッセイキット(Pierce Biotechnology,Rockford,IL)を用い、UV−Visシステム(8453 Value System;Agilent Technologies,Palo Alto,CA)を用いて595nmにおける吸収を測定することによって、決定した。各トラスツズマブ分子に結合体化されたフルオロフォア分子の数を確認するために、UV−Visシステムを用いて、IR700の濃度を吸収によって測定した。トラスツズマブ1つあたりのIR700の数は、約3であった。
【0222】
Tra−IR700結合体の純度を、分析用サイズ排除HPLC(SE−HPLC)およびドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(elctrophoresis)(SDS−PAGE)によって確認した。SE−HPLCは、32Karatソフトウェアによって制御される、モデル126溶媒送達モジュール、モデル168UV検出器およびJASCO蛍光検出器(励起689nmおよび発光700nm)が備え付けられた Beckman System Gold(Fullerton,CA)を用いて行った。SEクロマトグラフィーは、0.5mL/分でリン酸緩衝食塩水(PBS)を用いて45分間にわたって溶出されるTSKgel G2000SWxl(Tosoh Bioscience LLC,Montgomeryville,PA)において行った。SDS−PAGEは、4%〜20%グラジエントポリアクリルアミドゲル(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて行った。タンパク質を分離した直後に、励起用の670nmの内部レーザーおよび発光用の705nmのロングパスフィルターを備えたFujifilm FLA−5100蛍光スキャナー(Valhalla,NY)を用いて、蛍光強度を解析した。各バンドの蛍光強度を、Multigageソフトウェア(Fujifilm)を用いて解析した。次いで、ゲルをColloidal Blue Staining Kit(Invitrogen)で染色し、デジタル的にスキャンした。各バンドにおけるタンパク質濃度を、ImageJソフトウェアを用いて解析した。トラスツズマブ−1R700(Tra−1R700)およびパニツムマブ−1R700(Pan−1R700;実施例8を参照のこと)の調製物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動SDS−PAGEによって決定したとき、強い会合を示し、検出可能なMAb凝集物を含まなかった。
【0223】
IR700結合体のインビトロにおける結合の特色を明らかにするために、Indo−Gen手順を用いたその結合体の
125I標識を行った。放射標識された抗体の比活性は、トラスツズマブの場合、8.52mCi/mgであり、パニツムマブの場合、7.84mCi/mgであった(下記の実施例8を参照のこと)。結合の73.38±0.39%(
125I−Tra−IR700)および78.61±0.89%(
125I−Pan−IR700)が、それぞれ各MAb結合体によって達成され、過剰量の天然の結合体化されていないMAbによってブロックすることによって結合の特異性が確認された(1.4%未満)ことが観察された。同じ方法を用いて測定された
125I−Traおよび
125I−Panの免疫反応性は、それぞれ78±2%および82±3%であったので、IR700結合体化によるMAbの最小の損失が確認された。免疫反応性アッセイを先に記載したように行った。簡潔には、トリプシン処理後に、2×10
6個の3T3/HER2細胞またはA431細胞を、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSに再懸濁した。
125I−Tra−IR700または
125I−Pan−IR700(1mCi,0.2μg)を加え、氷上で1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、ペレットにし、上清をデカントし、2470Wizard
2γカウンター(Perkin Elmer,Shelton,CT)においてカウントした。それらの細胞への非特異的結合を、抗体過剰の条件下(200μgの非標識トラスツズマブまたはパニツムマブ)において調べた。
【0224】
実施例2
IRDye700に結合体化されたVectibix(登録商標)(抗HER1)の合成
【0225】
ヒトEGFRに対して誘導された完全ヒト化IgG
2MAbであるパニツムマブ(Vectibix(登録商標))をAmgen(Thousand Oaks,CA)から購入し、実施例1に記載された方法を用いてIR700に結合体化した。この化合物は、パニツムマブ−IR700またはPan−IR700と称される。パニツムマブ1つあたりのIR700の数は、約3であった。
【0226】
実施例3
IRDye700に結合体化されたHuJ591の合成
【0227】
ヒトPSMAに対して誘導された完全ヒト化IgG
2MAbであるJ591を、Prof.Neil Bander,Cornell Univから入手し、実施例1に記載された方法を用いてIR700に結合体化した。この化合物は、J591−IR700と称される。J591 1つあたりのIR700の数は、約2であった。
【0228】
実施例4
IRDye700に結合体化されたセツキシマブの合成
【0229】
ヒトEGFRに対して誘導されたキメラ(マウス/ヒト)MAbであるセツキシマブ(Erbitux(登録商標))をBristol−Myers Squibb(Princeton,NJ)から購入し、実施例1に記載された方法を用いてIR700に結合体化した。この化合物は、セツキシマブ−IR700またはCet−IR700と称される。セツキシマブ1つあたりのIR700の数は、約3であった。
【0230】
実施例5
NIRへの曝露後のIR700の切断
【0231】
Pan−IR700を、実施例2に記載されたように作製した。Pan−IR700(2μg)をPBSに懸濁し、LEDまたはレーザーを用いて、2、4、8または16J/cm
2のNIR光(LEDの場合690nm+/−20nm;レーザーの場合690nm+/−4nm)に曝露した。得られた溶液を4〜20%ポリアクリルアミドゲルにおいて泳動し、クマシーブルー(Comassie blue)で染色し、700nmの光または蛍光を用いて可視化した。いくつかのサンプルにはNIR光に曝露させなかった。
【0232】
図4の下のクマシーゲルは、NIR光(LEDまたはレーザー)への曝露後に、PanIR700(青色のバンド)が分解されたかまたは切断されたことを示している。同様に、上のゲルにおける不鮮明なバンドは、PanIR700が切断されたことを示している。上のゲルは、吸収された光がこの光化学反応を線量依存的に誘導することを示するレーザー放出光のより良好な効率的な吸収に起因して、同じ光線量を用いたとき、レーザーがLEDよりも良好に働いたことを示している。
【0233】
この切断されたPan−IR700複合体が凝集することにより、溶液から析出することが可能となり、その結果、該Pan−IR700複合体に結合した任意の分子がその溶液から除去され得る。
【0234】
実施例6
IR700はNIRへの曝露後に蛍光を失わない
【0235】
IR700(0.5μM)を、DMFまたはPBSに懸濁し、レーザー(690nm+/−4)を用いて2、4、8または16J/cm
2のNIR光に曝露した。得られた溶液を、700nmの蛍光を用いて可視化した(エッペンドルフチューブ内で)。いくつかのサンプルにはNIR光に曝露しなかった。
【0236】
図5に示されているように、IR700は、強いNIR光への曝露後でさえも、なおも蛍光性である。したがって、NIR光への曝露後にかなりの分解産物が放出されたとしても、IR700は、光退色しない。
【0237】
実施例7
IR700は酸素の非存在下でNIRによって切断され得る
【0238】
Pan−IR700を実施例2に記載されたように作製した。Pan−IR700(2μg)をPBSに懸濁し、LEDまたはレーザーを用いて、0、8または16J/cm
2のNIR光(LEDの場合、690nm+/−20nm;レーザーの場合、690nm+/−4nm)に曝露した。いくつかの例は、反応性酸素スカベンジャーであるNaN
3(アジ化ナトリウム)を含むかまたは酸素を含まなかった(20分間にわたってアルゴンガスフラッシュを用いた)。得られた溶液をSCS−PAGEゲルにおいて泳動し、クマシーブルーで染色し、700nmの光または蛍光を用いて可視化した。いくつかのサンプルはNIR光に曝露させなかった。
【0239】
図6に示されているように、強いPanIR700バンドが、最初の3つのレーン(NIRなし)において観察される。レーン4〜6は、8J/cm
2のNIRであり、酸素なし(O2−)でさえもPan−IR700バンドの不鮮明化を示す。これは、16J/cm
2のNIRにおけるレーン7〜9にも見られる。したがって、IR700の切断は、通常の酸素(処理なし)におけるとき、ROSスカベンジャー(NaN
3)を用いたとき、および低酸素条件において、生じることから、このプロセスが、酸素非依存的であることが示される。
【0240】
実施例8
酸素飽和はNIRによるIR700の切断を減少させ得る
【0241】
Pan−IR700を実施例2に記載されたように作製した。Pan−IR700(2μg)をPBSに懸濁し、LEDまたはレーザーを用いて、0、4、8または16J/cm
2のNIR光に曝露した(LEDの場合、690nm+/−20nm;レーザーの場合、690nm+/−4nm)。いくつかの例は、過剰量の酸素を含んだ(20分間にわたって100%酸素ガスフラッシュを用いた)。得られた溶液を4〜20%SDS−PAGEゲルにおいて泳動し、クマシーブルーで染色し、700nmの光または蛍光を用いて可視化した。いくつかのサンプルはNIR光に曝露させなかった。
【0242】
図6に示されているように、過剰量の酸素(100%)の存在は、Pan1R700のより少ない分解をもたらしたことから、酸素飽和が、NIRの存在下におけるIR700の切断を減少させるかまたは阻害することが示唆された。このゲルは、凝集の量をよりよく示すために、異なるレベルおよびウインドウ設定を示している。100%O
2を用いたとき、凝集形成は効率性が低く、これは、
図1および2に示される化学反応を支持する。
【0243】
実施例9
切断されたIR700のインビボ輸送
【0244】
SCN−Bz−PTPAをPan−IR700に結合体化したことを除いては実施例2に記載されたように、
111In−DTPA−IR700−Panを作製した。SCN−Bz−DTPAを、ホウ酸緩衝液pH8.5中のPan−IR700に溶解した。精製を、G25ゲルを用いるゲル濾過によって行った。
【0245】
111In−DTPA−IR700−Panを、エキソビボにおいてNIR光に曝露したか(注射前に、レーザー)または注射後にインビボにおいてNIR光に曝露した(腹部である腹の大部分を曝露した)。
111In−DTPA−IR700−Pan(100μg/マウス)を、A431を有するマウスに注射した。NIRを曝露された
111In−DTPA−IR700−Panの投与または腹へのNIRの曝露の1時間後に、臓器を回収し、以下のとおり解析した。マウスを屠殺し、解剖して、主要なすべての臓器を分離した。臓器を回収し、計量し、ガンマカウンター(Wizard 2’)を用いてカウントすることにより、それらの臓器における放射能を定量した。
【0246】
図8に示されているように、エキソビボ(注射前)またはインビボ(腹部の大部分の曝露)におけるNIR光への曝露後、
111In−DTPA−IR700−Panは肝臓および脾臓に向かった。このことから、凝集物が形成され、細網内皮系におけるマクロファージによって捕捉されたことが示される。NIRの非存在下では、切断された結合体は肝臓に蓄積する。しかしながら、NIRがマウスの腹(腫瘍が存在する場所ではない)に送達されたとしても、NIR曝露後、肝臓における切断された結合体の量は劇的に増加する。同じことが脾臓においても観察される。これは、Pan−IR700が凝集して肝臓および脾臓によって取り込まれることと一致し、このことから、光治療後の複合体の疎水性の増大が示される。
【0247】
したがって、薬物または特異的結合剤へのIR700の結合体化は、その薬物または特異的結合剤を肝臓および脾臓に向けて取り除くこと(clearing)により、該薬物の、または該特異的結合剤の薬物動態を制御するために使用することができる。そのような方法は、例えば、毒性を回避するため、または実質的には「毒性をなくす」ために、身体から薬物または特異的結合剤を「取り除く」または「追い払う(chasing)」際に有用である。そのような方法は、その薬物または特異的結合剤に結合する作用物質を肝臓および脾臓に向けて取り除くことによって、該作用物質を身体から除去するためにも使用することができる。
【0248】
実施例10
【0249】
パニツムマブ−IR700を、NIR(690nmレーザーを用いて16J/cm
2)の照射ありまたはなしで、可溶性EGFRとモル比4:1で混合した。
図9に示されているように、EGFR分子は、NIR後に抗体とともに凝集し、ゆえに、溶液から排除され得る(SDS−PAGEによって確認される)。いったん凝集物が完全に形成されたら、凝集形成の完了は、IR700蛍光を遮断すること(shutting down)によって確定された。
【0250】
実施例11
材料および方法
【0251】
この実施例は、実施例12に記載される結果のための材料および方法を提供する。
【0252】
試薬
水溶性のケイ素−フタロシアニン誘導体であるIRDye700DX NHSエステルは、LI−COR Bioscience(Lincoln,NE,USA)製であった。EGFRに対して誘導された完全ヒト化IgG2 mAbであるパニツムマブは、Amgen(Thousand Oaks,CA,USA)製であった。HER2に対して誘導された95%ヒト化IgG1 mAbであるトラスツズマブは、Genentech(South San Francisco,CA,USA)製であった。他のすべての化学物質は、試薬グレードであった。
【0253】
IR700に結合体化されたトラスツズマブ、パニツムマブまたは抗PSMA抗体の合成
色素とmAbとの結合体化は、以前の報告(Mitsunagaら、Nat.Med.17,1685−1691,2011;Satoら、Mol.Oncol.8,620−632,2014)に従って行った。簡潔には、パニツムマブ、トラスツズマブまたは抗PSMA ab(1mg,6.8nmol)を、0.1mol/L Na2HPO4(pH8.6)中において室温で1時間、IR700 NHSエステル(60.2μg,30.8nmol)とともにインキュベートした。その混合物を、Sephadex G50カラム(PD−10;GE Healthcare,Piscataway,NJ,USA)を用いて精製した。タンパク質濃度を、分光法(8453 Value System;Agilent Technologies,Santa Clara,CA,USA)を用いて595nmにおける吸収を測定することによって、Coomassie Plusタンパク質アッセイキット(Thermo Fisher Scientific Inc,Rockford,IL,USA)を用いて決定した。各mAbに結合体化されたIR700分子の数を確認するために、分光法を用いて、IR700の濃度を689nmにおける吸収によって測定した。その合成は、平均4つのIR700分子が単一の抗体に結合されるように制御された。SDS−PAGEを、以前に報告されたように(Sanoら、ACS Nano 7,717−724,2013)、各結合体に対する品質管理として用いた。トラスツズマブに結合体化されたIR700は、Tra−IR700と省略され、パニツムマブに結合体化されたIR700は、Pan−IR700と省略され、抗PSMA抗体に結合体化されたIR700は、PSMA−IR700と省略される。
【0254】
細胞培養
GFPおよびルシフェラーゼを安定に発現するA431細胞、3T3/HER2細胞(HER2を安定に発現するBalb/3T3細胞)またはPC3−PIP細胞(PSMAを安定に発現するPC3細胞)を、RediFect Red−FLuc−GFP(PerkinElmer,Waltham,MA,USA)のトランスフェクションによって樹立した。GFPおよびルシフェラーゼの高発現が、継代数10において確認された。RFPを安定に発現するBalb/3T3細胞を、RFP(EF1a)−Puroレンチウイルス粒子(AMSBIO,Cambridge,MA,USA)によるトランスフェクションによって樹立した。RFPの高発現を、継代数10において選択剤の非存在下で確認した。これらの細胞は、それぞれA431−luc−GFP、3T3/Her2−luc−GFP、PC3−PIP−luc−GFP、Balb/3T3−RFPと省略される。細胞は、37℃、95%大気および5%二酸化炭素の雰囲気の加湿恒温器内の組織培養フラスコ内の、10%ウシ胎児血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies)が補充されたRPMI1640(Life Technologies,Gaithersburg,MD,USA)において成長させた。
【0255】
3D球状体培養
5000個の細胞を50μLの培地に懸濁し、次いで、製造者の指示に従って96ウェルプレート(3D Biomatrix Inc,Ann Arbor,MI,USA)に分注するハンギングドロップ法によって、球状体を生成した(Satoら、Mol.Oncol.8,620−632,2014)。混合された球状体を、5,000個のBalb/3T3−RFP細胞および500個のA431−luc−GFP細胞(100:10))を用いて作製した。観察または処理の後、球状体を再度、新しい培地を含むハンギングドロッププレートでインキュベートした。それらの球状体の体積を、式:球状体積=4/3π×半径
3を用いて算出した。
【0256】
フローサイトメトリー
APC剤とのインキュベーション後の細胞から生じる蛍光を、フローサイトメーター(FACS Calibur,BD BioSciences,San Jose,CA,USA)およびCellQuestソフトウェア(BD BioSciences)を用いて測定した。細胞(1×10
5個)を、37℃において6時間にわたって各APCとともにインキュベートした。結合体化された抗体の特異的結合を検証するために、過剰量の抗体(50μg)を使用して、0.5μgの色素−抗体結合体をブロックした(Satoら、Mol.Oncol.8,620−632,2014)。
【0257】
蛍光顕微鏡法
IR700結合体の抗原特異的局在化を検出するために、蛍光顕微鏡法を行った(IX61またはIX81;Olympus America,Melville,NY,USA)。10000個の細胞を、底がカバーガラスのディッシュ上に播種し、24時間インキュベートした。次いで、APCをその培養培地に10μg/mLで加え、37℃で6時間インキュベートした。次いで、それらの細胞をPBSで洗浄し;ヨウ化プロピジウム(PI)(1:2000)(Life Technologies)およびCytox Blue(1:500)(Life Technologies)を使用して、死細胞を検出した。これらを、観察の30分前の培地に加えた。次いで、それらの細胞をNIR光に曝露し、連続的な像を得た。590〜650nm励起フィルターおよび665〜740nm帯域発光フィルターを用いてフィルターをセットし、IR700蛍光を検出した。
【0258】
Hoechst33342(1:500)(Life Technologies)とともに30分間インキュベーションした後に共焦点レーザー顕微鏡(LSM5 meta,Carl Zeiss,Jena,Germany)を用いて、球状体の3D再構成像を得た。球状体の切片を、まず、PBS中の3.7%ホルムアルデヒドで室温において10分間固定した後、OCT(SAKURA,Tokyo,Japan)で包埋した。次いで、それらを−80℃で凍結し、クリオトーム(LEICA CM3050 S,Leica microsystems,Wetzlar,Germany)を用いて10μmにスライスした。像の解析を、ImageJソフトウェア(http://rsb.info.nih.gov/ij/)を用いて行った。
【0259】
インビトロPIT
20万個のA431−luc−GFP細胞を24ウェルプレートに播種するか、または2000万個の細胞を10cmディッシュ上に播種し、24時間インキュベートした。培地を、10μg/mLのtra−IR700を含む新鮮培養培地に交換し、それを37℃で6時間インキュベートした。PBSで洗浄した後、フェノールレッドフリー培養培地を加えた。次いで、細胞に、670〜710nm波長の光を放射するNIRレーザー(L690−66−60;Marubeni America Co.,Santa Clara,CA,USA)を照射した。実際の出力密度(mW/cm2)を光パワーメータ(PM100,Thorlabs,Newton,NJ,USA)で測定した。
【0260】
細胞傷害性/光毒性アッセイ
APCによるPITの細胞傷害作用を、ルシフェラーゼ活性およびフローサイトメトリーPI染色またはGFPによって決定した。ルシフェラーゼ活性に対しては、150μg/mLのD−ルシフェリン含有培地(Gold Biotechnology,St Louis,MO,USA)を、PITの1時間後に、PBSで洗浄した細胞に投与し、生物発光イメージング(BLI)システム(Photon Imager;Biospace Lab,Paris,France)において解析した。フローサイトメトリーアッセイに対しては、細胞を、処理の1時間後にトリプシン処理し、PBSで洗浄した。その細胞懸濁液にPIを加え(最終2μg/mL)、室温において30分間インキュベートした後、フローサイトメトリーを行った。
【0261】
インビトロにおけるGFP/RFP蛍光強度の推定
20万個の細胞を、底がカバーガラスのディッシュ上に播種し、12時間インキュベートした。次いで、APCをその培地(フェノールレッドフリー)に10μg/mLで加え、37℃で6時間インキュベートした。それらの細胞をPBSで洗浄し、培地を新しいフェノールレッドフリー培地に交換し、カバーガラスの下側にマークをつけた(それによって観察位置を決定した)。PITの1時間後に、細胞を再度観察した。GFP/RFP強度を、各球状体20の同じ視野において同じ閾値を用いて総画素数で評価した。像の解析を、ImageJソフトウェア(http://rsb.info.nih.gov/ij/)を用いて行った。処理された細胞からの蛍光を、フローサイトメーター(FACS Calibur)を用いて測定した。
【0262】
動物モデルおよび腫瘍モデル
すべてのインビボ手技が、Guide for the Care and Use of Laboratory Animal Resources(1996),US National Research Councilに従って行われ、地域のAnimal Care and Use Committeeによって承認された。6〜8週齢の雌のホモ接合体無胸腺ヌードマウスをCharles River(NCI−Frederick)から購入した。手技の間、マウスをイソフルランで麻酔にかけた。
【0263】
モノカルチャー(monoculture)腫瘍モデルのために、400万個のA431−luc−GFP細胞をマウスの両側腹部の皮下に(右および左に対称的に)注射した。混合腫瘍モデルの場合は、4×10
6個のA431−luc−GFP細胞と4×105個のBalb/3T3−RFP細胞との混合された細胞(100:10)を両側腹部の皮下に(右および左に対称的に)注射した。
【0264】
インビボPIT
100μgのpan−IR700をマウスに注射するか、または以下のとおりマウスを照射した:(1)注射後の1日目に50J/cm2のNIR光を投与し、2日目に右の腫瘍に100J/cm2のNIR光を投与し、(2)左の腫瘍にはNIR光を投与せず、該腫瘍は、コントロールとして働き、保護物(shield)であった。コントロールには、(1)1日目に50J/cm2のNIR光を曝露し、2日目に右の腫瘍に100J/cm2のNIR光を曝露するだけのもの;(2)左の腫瘍に対する処置がないものが含まれた。これらの治療は、細胞移植後の7日目に一度だけ行われた。マウスを毎日モニターし、連続的な画像解析を行った。
【0265】
インビボ蛍光イメージング
IR700蛍光を検出するためにPearl Imager(LI−COR Bioscience)およびGFP/RFPのためにMaestro Imager(CRi,Woburn,MA,USA)を用いて、インビボ蛍光像を得た。GFP/RFPの場合、GFPに対しては445〜490nmの帯域フィルター(励起)および515nm超のロングパスブルーフィルター(発光)、RFPに対しては503〜555nm(励起)および580nm超のロングパスグリーンフィルターをそれぞれ使用した。調整可能な発光フィルターを、一定の曝露(800msec)で515nmから580nmまで10nmずつ自動的に上げた。蛍光スペクトル像は、自己蛍光スペクトルおよびGFP/RFP(腫瘍)からのスペクトルからなり、それらを、Maestroソフトウェア(CRi)を用いてGFPの特徴的なスペクトルパターンに基づいて分離した(unmixed)。そのモデルに適切であるように、側腹部の腫瘍におけるまたは腹部領域にわたる関心領域(ROI)を手動で描写し(manually drawn)、蛍光強度を測定した。
【0266】
インビボ生物発光イメージング
BLIの場合、D−ルシフェリン(15mg/mL,200μL)を腹腔内に注射し、6日目にPhoton Imagerを用いてルシフェラーゼ活性についてマウスを解析した。さらなる研究のために、腫瘍サイズおよび生物発光に基づいてマウスを選択した。ルシフェラーゼ活性を定量するために、同様のサイズのROIを腫瘍全体にわたって配置した。
【0267】
統計解析
データは、別段示されない限り、最低4回の実験からの平均値±s.e.m.として表わされる。統計プログラム(GraphPad Prism;GraphPad Software,La Jolla,CA,USA)を用いて、統計解析を行った。
【0268】
実施例12
細胞の部分集団の選択的死滅化
【0269】
細胞培養物および組織は、目的の他の細胞と潜在的に干渉するかまたは該細胞を汚染する細胞の部分集団を含むことが多い。しかしながら、保護しようとしているまさしくその細胞集団を損傷せずに、望まれない細胞を排除することは困難である。この実施例は、開示される方法が、近赤外光免疫療法(PIT)を用いることによって、混合された2Dまたは3D細胞培養物および混合集団のインビボ腫瘍モデルから特定の細胞の部分集団を有意に減少させるかまたは排除するために使用され得ることを実証する。
【0270】
科学的な理由と実際的な理由の両方のために、特定のタイプの細胞を細胞培養物またはインビボ組織から排除することが、望ましいことが多いが、しかしながら、隣接する細胞または生物全体を損傷せずに達成することは困難である。細胞培養物が、細菌で汚染されているときは、抗生物質を用いてそれらを排除することが比較的単純明快な方法であるが、しかしながら、その汚染が、別の真核細胞型による汚染であるときは、選択的な排除は、より困難である。例えば、幹細胞(例えば、胚性幹細胞:ESまたは人工多能性幹細胞:iPS)に基づく組織培養物は、再生医学の分野において重要な役割を果たし、臨床試験に着手されようとしている(Yamanaka,Cell Stem Cell 10,678−84,2012;Yamanaka & Blau,Nature 465,704−12,2010;Birchall & Seifalian,Lancet 6736,11−12,2014;Kamaoら、Stem cell reports 2,205−18,2014;およびKlimanskayaら、Nat.Rev.Drug Discov.7,131−42,2008)。組織の再生において、潜在的な懸念は、新生物に至る形質転換した細胞による汚染である(Okitaら、Nature 448,313−7,2007;Ohnishiら、Cell 156,663−77,2014;Ben−David & Benvenisty,Nat.Rev.Cancer 11,268−77,2011;およびKnoepfler,Stem Cells 27,1050−6,2009)。組織移植片の完全性を維持するためにこれらの形質転換した細胞を選択的に除去することが極めて望ましい。
【0271】
望ましい選択的細胞排除のさらなる例は、免疫細胞ネットワークを都合良く変化させるために腫瘍または炎症から特定の免疫細胞を除去することであり、その結果として、腫瘍の全体的な成長速度または炎症の程度に影響が及ぶ。このように、宿主免疫は、意図的に調節され得る(Pardoll,Nat.Rev.Cancer 12,252−64,2012)。同様に、腫瘍からがん幹細胞を排除することにより、再発が予防され得る(Valentら、Nat.Rev.Cancer 12,767−75,2012)。いくつかのグループが、確立された組織からまたは移植後に標的細胞を排除するための技術を研究したが、同じ環境における他の細胞を損傷しない、明らかに実用的な方法は報告されなかった(Miuraら、Nat.Biotechnol.27,743−5,2009;Ben−Davidら、Nat.Commun.4,1992,2013;Leeら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.110,E3281−90,2013;およびTangら、Nat.Biotechnol.29,829−34,2011)。
【0272】
光免疫療法(PIT)は、フタロシアニンベースの光増感剤(IR700)に結合体化されたモノクローナル抗体(mAb)(または他の特異的結合剤)から構成される抗体−光増感剤結合体(APC)を使用する。近赤外(NIR)光に曝露されると、APCに結合した標的細胞においてのみ、細胞傷害性が誘導される(Mitsunagaら、Bioconjug.Chem.23,604−609,2012)。
【0273】
下記の結果は、一連の標的細胞を選択的に排除するためのPITの使用可能性を示している。2Dおよび3D(球状体)の混合細胞培養、ならびに混合腫瘍異種移植モデルを用いた。光学的レポーターであるRFP、GFPおよびルシフェラーゼを用いて、種々の細胞集団をPITによって選択的に排除した。したがって、開示される方法は、インビボにおいて標的細胞を細胞培養物または組織から排除するかまたは実質的に減少させる(例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも99.9%減少させる)ために使用することができる。
【0274】
2つの細胞集団をこれらの実験において使用し、一方は、EGFRを発現している腫瘍細胞株(A431)であり、他方のコントロール細胞株は、EGFRが陰性である(Balb/3T3)。A431モデルを、GFPおよびルシフェラーゼ(luc)を発現するように遺伝的に改変し、Balb/3T3を、RFPを発現するように改変した(
図10A〜10B)。標的を発現しているA431−luc−GFP細胞へのパニツムマブ−IR700(Pan−IR700)の特異的結合が実証されたが、Balb/3T3−RFP細胞に対して、結合は示されなかった(
図10C)。Pan−IR700を用いた、新たに樹立されたA431−luc−GFP細胞に対するPITの死滅化の有効性を、インビトロで2D細胞培養物において死細胞PI染色を用いて評価した(
図11A〜11C)。A431−luc−GFP細胞は、光線量依存的様式で死滅させられた。PITは、生物発光(BLI)およびGFP蛍光強度の減少も光線量依存的様式で誘導し(
図12A〜C、
図13A〜13Cおよび
図14A〜14B)、これは、PI死細胞染色と一致した。これらのデータは、PITが、GFP蛍光およびBLIを用いてモニターされ得ることを示した。
【0275】
次に、A431−luc−GFPまたはBalb/3T3−RFPからなる3D球状体に対するPITの有効性を評価した(
図15A)。これらの細胞は、直径およそ500μmの大きさの球状体を形成した(
図15B)。3次元共焦点顕微鏡法は、これらの球状体が実際に球状であることを示した(
図15C)。凍結切片の蛍光像は、細胞がその球状体全体にわたって均一に分散していることを明らかにした(
図15D)。Pan−IR700は、IR700−蛍光顕微鏡法において示されたように、外周部から球状体内に徐々に浸透した;染色された領域は、時間依存的様式でその球状体の中心に向かって徐々に広がった(
図15E)。
【0276】
PITは、3D球状体におけるA431−luc−GFP細胞のAPC結合層において壊死性細胞死を引き起こした(
図16)。GFP蛍光、BLIおよびサイズ体積測定によってモニターされたA431−luc−GFP球状体に対するPITの死滅化作用のすべてが、光線量依存性を示した(
図17A〜17E)。毎日反復されたPITは、球状体内のA431−luc−GFP細胞を完全に根絶させた(
図18A〜18F)。これらの結果は、反復PITが、3D球状体において成長している、標的を発現している細胞を根絶させ得ることを示している。最後に、マウスのA431−luc−GFP側腹部腫瘍モデルにおいて、PITの効果を評価した(
図19A〜Dおよび
図20)。反復PIT(
図19A)は、A431−luc−GFP腫瘍においてGFPシグナルとルシフェラーゼ活性の両方を消失させたことから(
図19Bおよび
図20)、A431−luc−GFP腫瘍の完全な根絶が示唆された(
図19C〜19D)。エキソビボのA431−luc−GFP腫瘍像が、インビボの結果を確証した(
図21A〜21B)。
【0277】
2Dおよび3Dの混合細胞培養物または混合腫瘍モデルからの、標的を発現している細胞の選択的排除を実証するために、本発明者らは、先に記載した2つの細胞株(A431−luc−GFPおよびBalb/3T3−RFP)を使用した(
図22A)。A431−luc−GFPの選択的な細胞の死滅化を、Cytox死細胞染色を用いて証明した(
図22B)。ほぼコンフルエントな2D混合細胞培養物からのA431−luc−GFPの排除が、PIT後に実証された(
図23A)。反復PIT(
図23B)は、非標的細胞の成長に影響せずに、完全に標的細胞を排除した(
図23Cおよび
図24A〜24C)。蛍光シグナルおよびルシフェラーゼ活性による細胞成長の定量によって、A431−luc−GFPの選択的死滅化が確認された(
図23Dおよび23E)。
【0278】
PITを用いたとき、標的を発現していない3D球状体に対して著しい変化は検出されず、標的の3D球状体は、明らかにサイズが減少した(
図25A)。3D細胞培養物からの標的細胞の排除を実証するために、3D混合球状体を確立した(
図25B)。反復PIT(
図25A)は、非標的細胞を損傷せずに、3D混合細胞培養物から標的細胞を完全に排除した(
図26Bおよび
図27A〜27C)。各細胞集団を蛍光シグナルおよびBLIによってモニターした(
図26C〜26D)。
【0279】
他の標的細胞が球状体に加えられたとき、適切に標的化されたAPCおよびNIRが、3D混合球状体からそれらを選択的に排除した。例えば、3T3/HER2−luc−GFP細胞およびPC3−PIP−luc−GFP細胞の混合モデルにおける標的化されたHER2およびPSMA APCは、各場合においてこれらの標的化された細胞を選択的に排除した(
図28Aおよび28B)。
【0280】
最後に、マウスの側腹部に移植された混合腫瘍内の標的細胞の完全な排除が実証された。細胞培養物と同様に、標的を発現していない腫瘍細胞は、最小の損傷しか示さなかったが、標的を発現している細胞は根絶された(
図29Aおよび29B)。反復PIT(
図30A)は、非標的細胞に対しては最小の損傷で、インビボにおいて混合腫瘍から標的を発現している細胞を完全に排除した(
図30Bおよび31)。細胞集団の定量は、蛍光シグナルおよびルシフェラーゼ活性を用いて行われた(
図30C、30D)。混合腫瘍からの完全な細胞の排除は、エキソビボの像においても確認された(
図30Eおよび32A〜32B)。
【0281】
結論として、この実施例は、開示される方法が、2D混合培養物、3D混合球状体およびインビボ混合腫瘍から標的細胞を選択的に除去するために使用することができることを示している。したがって、開示される方法は、細胞混合物、球状体およびインビボ腫瘍から細胞を選択的に排除するために使用することができる。
【0282】
本開示の原理が適用され得る多くの可能性のある実施形態を考慮すると、例証された実施形態は、本開示の単なる例であって、本発明の範囲に対する限定とみなされるべきでないことが認識されるべきである。むしろ、本発明の範囲は、以下の請求項によって定義される。ゆえに、本発明者らは、これらの請求項の範囲内および精神内に入るすべてのものを本発明者らの発明と主張する。