(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
音波血栓溶解(sonothrombolysis)は、低出力かつ低周波数の音響パルスによる血栓の溶解である。医療研究は、心臓組織に適用される低出力、低周波数の超音波パルスが、微小血管および心外膜の血流を改善し、心臓組織を含む組織の灌流を改善し得ることを示している。血流および灌流の改善は、超音波誘発性の血栓溶解および微小血管系における血管拡張の誘発に起因すると考えられている。これらの効果は、単独で適用された超音波で観察され、任意的にマイクロバブルの存在によって増強されてもよく、および/または薬物治療と組み合わせてもよい。
【0003】
心臓音波血栓溶解は、心臓血管疾患の治療効果を有し得る。慢性心血管疾患および/または急性心臓事象の治療として使用することができる。特に、いくつかの研究は、心筋梗塞中の音波血栓溶解が梗塞後合併症を予防することができることを示唆している。場合によっては、栄養分が不足している(starving)心筋への栄養供給を増加することがある。これは、心筋梗塞に起因する組織死の程度を減少させ、別の医学的介入が有効であり得る時間窓を増大させることもある。例えば、患者が音波血栓溶解で治療される場合、緊急血管形成術、ステント配置、および/または冠動脈バイパス手術は遅れることがある。これにより、患者の転帰を改善することができ、特に遠隔地域および/またはすぐに利用可能な介入的心臓機能がないクリニックで心筋梗塞を経験した患者の場合にそうである。
【0004】
現在、心臓音波血栓溶解は、典型的には、広範な機器、熟練したソノグラファーおよび医師を伴う臨床環境を必要とする実験手順である。これは、医療施設(clinical setting)の外でしばしば起こる急性の心臓事象の有効な治療としての心臓音波血栓溶解の使用を、制限することがある。
【0005】
本出願は、2014年11月14日に出願された米国仮出願第62/079,768号、及び2015年9月9日に出願された米国仮出願第62/215,774号の優先権を主張するものであり、両文献の全体をここに参照援用する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ある例示的な実施形態の以下の説明は、事実上単なる例示に過ぎず、決して本発明またはその応用または用途を限定するものではない。本システムおよび方法の実施形態の以下の詳細な説明では、本明細書の一部を構成し、説明されたシステムおよび方法が実施され得る具体的な実施形態が例示される添付の図面が参照される。これらの実施形態は、当業者が本開示のシステムおよび方法を実施することを可能にするように十分に詳細に記載されている。言うまでもなく、他の実施形態を利用してもよく、構造的および論理的な変更は、本システムの精神と範囲から逸脱することなく、行うことができる。
【0011】
それゆえ、以下の詳細な説明は、限定的な意味に取ってはならず、本システムの範囲は添付した請求項により規定される。図中の参照番号の先頭の桁は、一般的に、図の番号に対応するが、例外として、複数の図に現れる同一の構成要素が同じ参照番号によって識別される。さらに、明りょう化のために、ある特徴は、当業者には明らかである場合、本システムの説明を不明瞭にしないように、詳細には説明しない。
【0012】
本明細書に記載されているのは、携帯装置で音波血栓溶解治療を患者に提供するシステム、アプリケーションおよび/または方法の様々な実施形態である。いくつかの用途では、患者は心臓事象を経験している可能性がある。いくつかの用途では、患者は、血栓または狭窄などの他の血管循環障害を経験している可能性がある。音波血栓溶解システムおよび方法は、心臓音波血栓溶解(CS)システムおよび方法を参照して説明されるが、言うまでもなく、音波血栓溶解は、体の他の領域、例えば、頸動脈の狭窄および脚の血餅に音波血栓溶解が適用され得る心臓血栓溶解システムおよび方法の様々な実施形態の説明は、本発明の範囲を単にCSシステムおよび方法に限定することを意図するものではない。いくつかの実施形態では、システムは、携帯システムに結合された2つの超音波プローブを含むことができる。いくつかの実施形態では、システムは、非臨床の場で使用されるように構成されてもよい。したがって、医療施設への輸送前および/または輸送中に、急性心臓事象を経験している患者にCS治療を提供することが可能である。これにより、梗塞後の合併症を軽減し、患者の転帰を改善することができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、携帯型CS装置は、緊急医療対応者(EMR)(例えば、救急隊員、救急医療技術者、消防士)による使用するように構成されてもよい。ポータブルCSデバイスは、グラフィックス、電子ディスプレイ、オーディオおよび/またはビデオを介して、EMRに、使用の指示を提供することができる。EMRは、医療緊急事態に応答して、患者が急性の心臓事象、例えば、心筋梗塞を起こしていると判断することができる。EMRは、携帯型CS装置で患者を治療することを選択することができる。携帯型CSデバイスは、患者の適切な位置に2つ以上の超音波プローブの配置を誘導して、心臓音波血栓溶解治療を提供することができる。超音波プローブは、粘着剤(adhesive)を含み、一旦EMRによって配置された位置にプローブが留まるようにすることができる。超音波プローブが配置されると、CS装置は自動的に患者を治療することができる。いくつかの実施形態では、CSデバイスは、CS治療を提供するためのさらなるアクションを実行するようにEMRを導くことができる。いくつかの実施形態では、CS装置は、自動除細動器と共にEMRによって使用されてもよい。いくつかの実施形態では、CSデバイスおよびAEDは、単一のデバイスに含まれてもよい。EMRは、患者に対する他の治療(例えば、酸素、アスピリン、CPR)および医療施設への輸送中に、CSデバイスで患者を治療し続けることができる。EMRが患者にCS治療を施すことを可能にする装置を提供することは、患者が医療施設を必要とする有効な介入を受けられる時間窓を増加させる可能性がある。
【0014】
いくつかの実施形態では、心臓音波血栓溶解治療を提供する装置および/またはシステムは、臨床環境で使用される従来の超音波イメージングシステムに含まれても、または結合されてもよい。この装置は、治療される領域の検出を容易にし、適切な領域へのターゲットデリバリ(target delivery)を提供し得る。これにより、CS治療に対する患者のアクセスが多くなり、患者におけるCSの有効性の差異が減少する可能性がある。臨床環境におけるデバイスは、慢性および急性心血管疾患の両方の治療に使用され得る。
【0015】
図1を参照して、本発明の原理により構成された超音波イメージングシステム10をブロック図に示した。
図1の超音波画像診断システムでは、超音波プローブ12は、超音波を送信しエコー情報を受信するトランスデューサアレイ14を含む。様々なトランスデューサアレイ、例えば線形アレイ、凸型アレイ、マトリクスアレイ、またはフェーズドアレイが当該技術分野において周知である。トランスデューサアレイ14は、例えば、2D及び/又は3Dイメージングのために仰角及び方位の両方の次元で走査可能なトランスデューサ素子の(図示した)2次元アレイを含むことができる。アレイの要素は、例えば圧電素子または容量性微細加工トランスデューサ(CMUT)を含むことができる。トランスデューサアレイ14は、アレイ内のトランスデューサ素子による信号の送信および受信を制御するプローブ12内のマイクロビームフォーマ16に結合される。この例では、マイクロビーム成形器は、送信/受信(T/R)スイッチ18にプローブケーブルによって結合されている。このスイッチ18は、送信と受信とを切り替え、主ビームフォーマ22を高エネルギー送信信号から保護する。いくつかの実施形態では、システム内のT/Rスイッチ18および他の要素は、別個の超音波システムベースではなくトランスデューサプローブに含めることができる。マイクロビームフォーマ16の制御下のトランスデューサアレイ14からの超音波ビームの送信は、T/Rスイッチ18およびビームフォーマ22に結合された送信コントローラ20によって指示される。送信コントローラ20は、ユーザインターフェースまたは制御パネル24のユーザ操作からの入力を受け取る。送信コントローラ20によって制御される機能の1つは、ビームがステアリングされる方向である。ビームは、トランスデューサアレイからまっすぐに(直交するように)、またはより広い視野のために異なる角度でステアリングされてもよい。送信コントローラ20は、ユーザおよび/または超音波システム10に含まれる他のプロセッサによって指定された位置で所望の平面を走査するのに必要な方向に送信ビーム成形および受信ビーム成形のための集束係数のシーケンスを再計算および/または選択することができる。画像平面のこのステアリング(steering)により、超音波プローブ12を物理的に動かすことなく、体の複数の領域を画像化し、および/または超音波治療に曝すことができる。マイクロビームフォーマ16によって生成された部分的にビーム成形された信号は、主ビームフォーマ22に結合され、トランスデューサ素子の個々のパッチからの部分的にビーム成形された信号は、完全にビーム成形された信号に結合される。
【0016】
ビーム成形された信号は、信号プロセッサ26に結合される。信号プロセッサ26は、受信されたエコー信号を、帯域通過フィルタリング、デシメーション、I成分およびQ成分分離、および高調波信号分離などの様々な方法で処理することができる。信号プロセッサ26はまた、スペックル低減、信号合成(signal compounding)、およびノイズ除去などの追加の信号エンハンスメントを実行してもよい。処理された信号は、Bモードプロセッサ28に結合される。Bモードプロセッサ28は、体内の構造の画像化のために振幅検出を使用することができる。Bモードプロセッサによって生成された信号は、スキャンコンバータ30およびマルチプレーナ・リフォーマッタ32に結合される。スキャンコンバータ30は、受信された空間的関係にあるエコー信号を、所望の画像フォーマットに構成する。例えば、スキャンコンバータ30は、エコー信号を、2次元(2D)セクタ形状のフォーマットまたはピラミッド3次元(3D)画像に構成することができる。マルチプレーナ・リフォーマッタ32は、米国特許第6,443,896号(Detmer)に記載されているように、身体のボリューム領域内の共通平面内の点から受信したエコーを、その平面の超音波画像に変換することができる。ボリュームレンダラ34は、米国特許第6,530,885(Entrekin et al.)に記載されているように、3Dデータセットのエコー信号を、所与の基準点から見て投影された3D画像に変換する。2D画像または3D画像は、スキャンコンバータ30、マルチプレーナ・リフォーマッタ32、およびボリュームレンダラ34から画像プロセッサ38に結合され、画像ディスプレイ38上に表示するためのさらなるエンハンスメント、バッファリングおよび一時的記憶を行う。グラフィックスプロセッサ36は、超音波画像と共に表示するためのグラフィックオーバーレイを生成することができる。これらのグラフィックオーバーレイは、例えば、患者の氏名、画像の日時、画像化パラメータなどの標準的な識別情報を含むことができる。これらの目的のために、グラフィックプロセッサは、入力された患者の名前のような、ユーザインターフェース24からの入力を受け取る。ユーザインターフェースは、複数のマルチプレーナリフォーマット(MPR)画像の表示の選択および制御のために、マルチプレーナ・リフォーマッタ32に結合することもできる。
【0017】
上述のような超音波システム10は、本発明の一実施形態による心臓の音波血栓溶解(CS)治療を提供することができるが、超音波システム10は、追加の機能を提供し得る追加の要素も含むことができる。以下に説明するように、追加機能により、熟練超音波診断装置ではない臨床医師が、より一貫したCS治療を提供することが可能になる。
【0018】
いくつかの実施形態では、超音波システム10は、閉塞検出プロセッサ42を含むことができる。閉塞検出プロセッサ42は、画像プロセッサ36および/またはスキャンコンバータ30からデータを受信することができる。閉塞検出プロセッサ42は、オブジェクトが超音波プローブ12の視野を閉塞(block)していることを決定することができる。起こり得る閉塞には、肋骨、肺、および移植可能な器具が含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、閉塞は、トランスデューサアレイ14の個々のトランスデューサ素子からのデータのコヒーレンスを決定することによって検出される。本明細書で使用する「コヒーレンス」は、トランスデューサアレイの異なる要素によって記録されたデータ間の類似性を意味する。コヒーレンスの1つのゲージは、Yen等の米国特許公開第2009/0141957号に記載されているような、ビーム合計データに基づく(a beam summed−data−based)コヒーレンス推定方法である。他の推定方法を用いても良い。選択されるコヒーレンス推定方法は、肋骨、肺および/または他の閉塞を検出するように調整することができる。1つ以上のトランスデューサ素子の強度および/またはエコー遅延の急激な変化は、トランスデューサ12の視野内の閉塞を示すことがある。閉塞検出プロセッサ42は、検出された閉塞を空間的に画定するようにさらに構成され得る。いくつかの実施形態では、閉塞検出プロセッサ42は、閉塞がトランスデューサの視野を妨害している可能性があるという警告をユーザに提供することができる。いくつかの実施形態では、閉塞検出プロセッサ42は、閉塞を回避するように超音波トランスデューサ12のビームをステアリング(steer)するように、送信コントローラ20に命令を提供することができる。閉塞検出プロセッサ42は、臨床医師によって行われる必要があるプローブの熟練した微調整を低減または排除することができる。これにより、閉塞検出プロセッサ42は、より一貫した障害のないトランスデューサの視野を提供することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、超音波システム10は、心臓認識プロセッサ44を含むことができる。心臓認識プロセッサ44は、画像プロセッサ36からデータを受信することができる。心臓認識プロセッサ44は、画像プロセッサ36からのデータを分析し、超音波プローブ12が心臓の所望のビュー(view)を有するかどうかを決定するように構成することができる。所望のビューは、CS治療の標的となる心臓または心臓の特定の部分の完全なビューであり得る。いくつかの実施形態では、心臓認識プロセッサ44は、所望のビューが得られたか否かを示す信号をユーザに送信することができる。いくつかの実施形態では、心臓認識プロセッサ44は、心臓の所望のビュー(view)が捕捉されない場合、超音波トランスデューサ14のビームをステアリング(steer)して、心臓の所望のビューを取得するように送信コントローラ20に命令を提供するようにさらに構成され得る。心臓認識プロセッサ44は、CS治療の適切なデリバリ(delivery)のために心臓の所望のビューを得るために、臨床医師によるプローブの物理的操作を低減または排除することができる。
【0020】
送信コントローラ20は、CS治療を提供するために、ユーザインターフェース24、閉塞検出プロセッサ42、および/または心臓認識プロセッサ44から制御信号を受信することができる。いくつかの実施形態では、送信コントローラ20は、メモリ(図示せず)に格納された既存のCS治療制御信号を含むことができる。送信コントローラ20は、制御信号をマイクロビームフォーマ16に供給して、トランスデューサアレイ14に制御信号を供給してCS治療を提供することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、
図1に示す超音波イメージングシステム10は、臨床環境で使用される「オンカート(on cart)」システムであってもよい。いくつかの実施形態において超音波システム10を実施するために使用され得るオンカートシステムの例は、フィリップス(Philips)(登録商標)Sonos超音波システムである。いくつかの実施形態では、第2の超音波プローブ(図示せず)がイメージングシステム10に結合される。第2の超音波プローブは、超音波プローブ12と同様であってもよい。2つの超音波プローブはマトリクスプローブであってもよい。イメージングに加えて、超音波プローブは、音波血栓溶解(sonothrombolysis)のための低出力超音波治療を提供するように構成されてもよい。例えば、プローブは、機械的指数(MI)が1.9以下であり、空間ピーク時間平均強度(ISPTA)が720mW/cm
2以下である、2.5MHz以下の周波数で約5〜200μsのパルスを提供するように構成されてもよい。超音波プローブ12は、熱放散を助けるためにトランスデューサアレイ14のための能動的冷却素子(図示せず)を含むことができる。
【0022】
図2は、本開示の一実施形態による例示的ハンズフリープローブ200を示す。ハンズフリープローブ200は、CS治療をデリバリするための従来のハンドヘルド超音波プローブに加えて、またはその代わりに使用されてもよい。ハンズフリープローブ200は、
図1の超音波プローブ12を実装するために使用されてもよい。2つの超音波プローブが使用される場合、両方がハンズフリーであってもよい。ハンズフリープローブ200は、マトリクストランスデューサアレイ(図示せず)を囲むハウジング205を含む。マトリクストランスデューサアレイは、側方発射構成(sideward firing configuration)を有するように構成することができる。側方発射構成により、ハウジング205内のトランスデューサが、保持ソケット220に結合される。
図2において、ハウジング205は球として示され、保持ソケット220はリングとして図示されているが、異なる形状のハウジングおよび保持ソケットを使用することができる。保持ソケット220は、患者の皮膚に取り外し可能に結合され得るリム215を有し得る。リム215は、接着、吸引、および/または別の結合方法によって結合することができる。保持ソケット220とハウジング205との間の中間スペース210には、ハウジング205と患者との間の音響結合を改善することができるゲル(図示せず)を充填することができる。いくつかの実施形態では、使用者はゲルを塗布することができる。いくつかの実施形態では、ハンズフリープローブ200にゲルが予め充填されていてもよい。いくつかの実施形態では、リム215から保持ソケット220の反対側のトランスデューサまでケーブル225を結合することができる。ケーブル225は、超音波イメージングシステムからトランスデューサに電力信号および/または制御信号を送信および/または受信することができる。幾つかの実施形態では、ケーブル225は省略される。ハンズフリープローブ200は、バッテリーおよび送信器(図示せず)を含み、超音波イメージングシステムと無線通信する。幾つかの実施形態では、ハンズフリープローブは、機械的指数(MI)が1.9以下であり、空間ピーク時間平均強度(ISPTA)が720mW/cm
2以下である、2.5MHz以下の周波数で約5〜200μsのパルスを提供するように構成されてもよい。ハンズフリープローブ200は、熱放散を助けるためにトランスデューサアレイのための能動的冷却素子(図示せず)を含むことができる。
【0023】
オンカート超音波システムを用いた臨床環境における本開示の実施形態の典型的な動作では、ユーザは、
図2に示したハンズフリー超音波プローブのような1つ以上の超音波プローブを患者の胴体に適用することができる。
図3は、心臓への音響窓を提供する、可能性のある適用部位を示す図である。例えば、ユーザは、心尖部窓(apical window)および胸骨傍窓(parasternal window)にプローブを適用することができる。他のプローブ位置を使用してもよい。次いで、ユーザは、ユーザインターフェース24を介して超音波システム上でCSシーケンスを開始することによって、患者にCS治療を提供することができる。いくつかの実施形態では、ユーザは、例えば、投与量、持続時間、脈拍シーケンス、および/または他のパラメータなどのパラメータを入力するように促されても良い。いくつかの実施形態では、超音波システムはパラメータで予めプログラムされていてもよい。いくつかの実施形態では、ユーザは、CS治療の前または間に、患者にマイクロバブルおよび/または薬物を投与することによってCS治療を強化することができる。いったん患者に治療が行われると、ユーザはプローブを取り除くことができる。
【0024】
図4は、超音波システムによって実行される例示的なプロセス400を示すフローチャートである。まず、ステップ405において、1つ以上の超音波プローブで患者の画像を取得することができる。ステップ410において、閉塞検出プロセッサおよび/または心臓認識プロセッサによって、画像が分析されてもよい。患者の心臓が1つまたは複数の超音波プローブの視野内に十分にないと解析で判定された場合、1つまたは複数の超音波プローブをステアリング(steer)して適切なイメージングを行うことができる。ビームをステアリングして適切な視野を得ることができない場合、超音波システムは、1つまたは複数の超音波プローブを取り外して再適用する必要があることをユーザに警告することができる。いくつかの実施形態では、超音波システムは、所望の視野(field of view)を見つけるために、トラクタトレッディング(tractor−treading)および/またはビームステアリングとトラクタトレッディングの組み合わせを使用することができる。心臓が1つ以上の超音波プローブの視野内に十分にあると判定された後、超音波プローブは、ステップ425で患者にCS治療をデリバリ(deliver)することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、心臓の音波血栓溶解を提供するデバイスおよび/またはシステムは、非臨床環境で使用するためのポータブルデバイスに含めることができる。例えば、救急時に、家庭、企業、または屋外で緊急医療対応者(EMR)が使用することができる。ポータブルCSデバイスは、主に急性心血管イベントの治療に使用されるように構成することができる。
【0026】
ポータブルCSデバイスは、
図1の超音波イメージングシステム10と同様の要素を含むことができる。しかし、それは能力が低下する可能性がある。例えば、ユーザインターフェース24に提供される制御、オプション、および/またはメニューがより少ないかも知れない。ディスプレイ38および/またはより小さなディスプレイを有していないかも知れない。ディスプレイが小さくなればなるほど、解像度は低くなる可能性がある。ポータブルCSデバイスでは、従来の臨床用超音波システムに典型的なボリュームレンダリング、画像処理、および他の処理能力が減少することがある。高解像度イメージング、画像処理、およびユーザへの画像提供は、CS治療をうまくデリバリするためには必要でないかもしれない。機能を削減すると、従来の臨床用超音波システムより、装置が軽量で低コストになる可能性がある。
【0027】
図5および
図6は、本開示の実施形態による例示的なポータブルCSデバイス500,600を示す概略図である。デバイス500および600の両方において、タブレットコンピュータ505,605は、超音波イメージングシステムの動作の全部または一部を実行するように構成されてもよい。例えば、タブレットコンピュータ505,605は、信号処理、ビームステアリング、および/または他の操作を実行するためのプロセッサ、コントローラ、およびレンダラ(renderers)を含むことができる。超音波イメージングシステムの動作の全部または一部を実行するように構成されたタブレットコンピュータの一例は、Philips VISIQ超音波システムである。ユーザは、タッチスクリーン520,620上のユーザインターフェースを介してポータブルCSデバイス500,600とインターフェースすることができる。ポータブルCSデバイス500,600は、1つ以上の超音波プローブ510A−B、610A−Bをさらに含むことができる。超音波プローブ510A−B、610A−Bは、
図2に示した超音波プローブ200により実施されてもよい。
図5に示すように、いくつかの実施形態では、超音波プローブ510A−Bは、タブレット505と通信するように構成されてもよい。超音波プローブ510A〜510Bは、電源、例えばバッテリー及び送信器(図示せず)を含むことができる。あるいは、
図6に示すように、超音波プローブ610A−Bは、ケーブル615を介してタブレット605に結合するように構成することができる。タブレット605は、ケーブル615を介して超音波プローブ610A−Bに制御信号およびパワーを供給することができる。幾つかの実施形態では、タブレット605は、ケーブル615を介して制御信号のみを提供し、超音波プローブ610A−Bは、独立した電源、例えばバッテリー(図示せず)を含むことができる。いくつかの実施形態では、ポータブルCSデバイスは、ワイヤレスでもケーブルでも動作可能な超音波プローブを含むように構成され、ユーザがポータブルデバイスを好みに適合させることを可能にする。
【0028】
患者を治療するEMRは、急性の心臓事象が生じたと判断することができる。EMRは、ポータブルデバイス500または600などのポータブルCSデバイスを使用することができる。EMRは、タブレットコンピュータ上でアプリケーションを実行することができる。このアプリケーションにより、EMRがCS治療の患者へのデリバリを制御することを可能にできる。いくつかの実施形態では、アプリケーションは、ポータブルデバイスを操作するために、EMRに視覚的、聴覚的、および/または映像的な命令を提供することができる。例えば、ポータブルCSデバイスは、EMRに、1つまたは複数の超音波プローブを患者にどのように適用するかを指示することができる。ポータブルCSデバイスは、プローブが正しく配置されていないと判断した場合に、プローブを再配置するようにEMRにさらに指示することができる。超音波が正しく配置されると、ポータブルCSデバイスは、EMRに、CS治療をデリバリするさらなる指示および/またはオプションを提供することができる。EMRは、タッチスクリーンインターフェースを介してポータブルCSデバイスとインターラクト(interact)することができる。他のユーザインターフェースを用いても良い。EMRは、ポータブルCSデバイスによって提供されるCS治療を手動で変更してもよく、またはポータブルCSデバイスが適切な治療を自動的に決定してもよい。いくつかの実施形態では、ポータブルCSデバイスは、手動モードと自動モードの両方を有することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、ポータブルCSデバイスは、患者に提供される治療の記録を記憶し得るメモリを含み得る。例えば、ポータブルCSデバイスは、日付、治療時間、期間、投与量、および/または他の治療の詳細を記録することができる。ポータブルCSデバイスにより、EMRは、メモリに記録するための追加の患者情報を入力することが可能になる。例示的な情報には、患者の氏名、年齢、投薬リスト、および既知のアレルギーが含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ポータブルCSデバイスは、治療および患者データを遠隔地、例えば病院または医院に送信することができる。ポータブルCSデバイスは、無線で情報を送信することができる。いくつかの実施形態では、EMRは、CS装置を救急車、病院および/または他の場所のコンピュータステーションに持ち込むことができる。ポータブルCSデバイスは、コンピュータステーションに結合され、メモリからコンピュータステーションに情報を転送することができる。これにより、患者を治療している臨床医師は、その前に提供された治療に関する情報を得ることができる。
【0030】
図7は、本開示の一実施形態による例示的なポータブルCSデバイス700を示す概略図である。いくつかの実施形態では、ポータブルCSデバイス700は、CS治療を提供する機能を実行するように構成されたプロセッサ、コントローラ、およびレンダラを含むカスタマイズされた回路基板として実装されてもよい。カスタマイズされた回路基板は、頑丈なプラスチックおよび/または金属のケース705に封入されてもよい。ポータブルCSデバイス700は、小さなディスプレイを有していてもよいし、ディスプレイを有していなくてもよい。ケース705は、ディスプレイに加えてまたはディスプレイの代わりに、デバイスを使用するための印刷されたグラフィッカルな説明書き710を有することができる。ポータブルCSデバイス700のユーザインターフェースは、1つ以上のボタン715に限定されてもよい。ポータブルCSデバイス700は、ユーザに音声命令を提供するためのスピーカ720をさらに含むことができる。ポータブルCSデバイス700は、ケーブルを介して、または無線で、1つまたは複数の超音波プローブ(図示せず)に結合されてもよい。超音波プローブは、
図2に示す超音波プローブを使用して実施することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、
図7に示すポータブルデバイス700などのポータブルCSデバイスは、EMRまたは苦痛のある患者に応じた医療トレーニングを受けていない人物によって使用されてもよい。たとえば、その人は、EMRが到着する前に、ショッピングセンターや公園で誰かの救助をすることができる。いくつかの実施形態では、ポータブルデバイスのケースに印刷されたグラフィックスは、オペレータに、携帯CSデバイスをどのようにオンにするかを指示することができる。電源が投入されると、ポータブルCSデバイスは、ポータブルCSデバイスを操作するためにオペレータにグラフィッカル、オーディオ、またはビデオによる指示を自動的に提供することができる。例えば、ポータブルCSデバイスは、オペレータに、1つまたは複数の超音波プローブを患者にどのように適用するかを指示することができる。ポータブルCSデバイスは、プローブが正しく配置されていないと判断した場合に、プローブを再配置するようにオペレータにさらに指示することができる。超音波プローブが正しく配置されると、ポータブルCSデバイスは、CS治療を提供するためにオペレータにさらなる指示を提供することができる。いくつかの実施形態では、超音波プローブが正しく配置されると、ポータブルCSデバイスは自動的にCS治療の提供を開始することができる。いくつかの実施形態では、ポータブルCSデバイスは、患者を治療するための追加の指示をオペレータに提供することができる。例えば、ポータブルCSデバイスは、緊急呼吸、脈拍のチェック、および/またはCPRの実行に関する指示を提供することができる。
【0032】
図8は、本開示の一実施形態による超音波プローブ800を示す概略図である。超音波プローブ800は、ポータブルデバイス500,600,700などのポータブルCSデバイスとともに使用することができる。超音波プローブは、オペレータに面する表面に付されたグラフィックス805を有することができる。グラフィックス805は、患者に対する超音波プローブ800の正しい位置を示すことができる。これにより、訓練を受けていないオペレータが超音波プローブ800を正しく配置することをさらに支援できる。いくつかの実施形態では、シース810を使用して、超音波プローブ800をポータブルデバイスに結合するケーブル815を少なくとも部分的に取り囲むことができる。これにより、オペレータは、1つ以上の超音波プローブ800を適用するのを忘れることを防止することができる。また、これにより、1つ以上の超音波プローブ800が、ポータブルCSデバイスから分離される可能性を低減することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、ポータブルCSデバイスを自動体外式除細動器と同時に使用することができる。いくつかの実施形態では、CS治療をデリバリするためのポータブルデバイスは、同時使用のため、自動体外式除細動器(AED)と共にパッケージングされてもよい。いくつかの実施形態において、CS治療および除細動は、交互に患者にデリバリされ得る。例えば、患者は、外部からの除細動で最初に治療され、次いでCS治療が行われてもよく、またはその逆であってもよい。AEDのための電極は、患者の、超音波プローブとは異なる位置に配置することができる。超音波プローブおよび電極は、2つの治療間の干渉を防止するように構成されてもよい。外部除細動とCS治療との組み合わせは、臨床環境の外で起こる急性の心臓事象に対する患者の転帰を改善し得る。
【0034】
図9は、本発明の一実施形態による、オペレータ905が、患者910にCS治療および除細動を提供するところを示す概略図である。オペレータ915は、患者910に適用された超音波プローブ920および電極930に結合されたポータブルCS−AED組合せデバイス915を使用することができる。ポータブルCS−AED組合せデバイス915は、幾つかの実施形態では、ポータブルCSデバイス700の1つまたは複数のコンポーネントを用いて実施し得る。ポータブルCS−AED組合せデバイス915は、いくつかの実施形態において、EMRが到着する前に、医療トレーニングを受けていない人が急性心臓事象の患者に支援を提供できるように、簡略化されたユーザインターフェースを有することができる。
【0035】
図10は、ポータブルデバイス500,600、および700などのポータブルCSデバイスによって実行される例示的なプロセス1000を示すフローチャートである。まず、ステップ1005において、ポータブルCSデバイスは、1つまたは複数の超音波プローブを患者にどのように適用するかの指示をオペレータに提供してもよい。指示は視覚的及び/又は聴覚的に提供されてもよい。ステップ1010において、1つ以上の超音波プローブで患者の画像を取得することができる。ステップ1015において、閉塞検出プロセッサおよび/または心臓認識プロセッサによって、画像が分析されてもよい。患者の心臓が1つまたは複数の超音波プローブの視野内に十分にないと解析で判定された場合、ステップ1020で、1つまたは複数の超音波プローブをステアリング(steer)して適切なイメージングを行うことができる。ビームをステアリングして適切な視野を得ることができない場合、超音波システムは、1つまたは複数の超音波プローブを取り外して再適用する必要があることをオペレータに警告することができる。心臓が1つ以上の超音波プローブの視野内に十分にあると判定された後、超音波プローブは、ステップ1025で患者にCS治療をデリバリ(deliver)することができる。いくつかの実施形態では、患者にCS治療をしているとき、および/又はその後に、ポータブルCSデバイスは、ステップ1030においてオペレータに追加の指示を提供することができる。指示は、治療の変更、患者の追加治療、および/またはポータブルCSデバイス内のメモリへの記録のための患者データの入力に関連するものであってもよい。いくつかの実施形態では、ディスプレイ上でオペレータに画像が提供されない場合でも、ポータブルCSデバイスは、取得された1つまたは複数の画像をメモリに格納することができる。
【0036】
常に表示されているわけではないが、ディスプレイ、タッチスクリーン、および/または他のユーザインターフェースは、ユーザによって選択され、所望に応じて、例えば、スキャン、ファイル、プリント、(例えば、ディスプレイから別のディスプレイへ)画像の転送、ミュート、複写、および/またはヘッドピースの使用を選択できる、例えば、アイコンまたはメニュー項目を含んでもよい、ユーザ選択を示しても良い。さらに、本技術分野で知られている1つまたは複数のメニューを、ユーザの便宜のために提供することができる。表示された画像および関連するデータは、その後の医師の分析のために保存することができる。しかし、履歴モードを起動して、ユーザが元の情報を参照し、および/またはいつ、誰が、生成されるレポートに保存される情報を変更したかを決定するように、データがいつ追加および/または編集されたかを示す情報を収集してもよい。さらに、変更は、後の使用のために保存することもできる。
【0037】
本システムは、心臓の音波血栓溶解超音波システムを参照して説明しているが、本システムは、音波血栓溶解治療が望ましい他の身体領域にも拡張されることが想定される。したがって、本システムは、腎臓、精巣、乳房、卵巣、子宮、甲状腺、肝臓、肺、筋骨格、脾臓、心臓、動脈系および血管系に関連するがこれらに限定されない画像情報を取得および/または記録することに用いることができる。さらに、本システムは、本システムの特徴および利点を提供することができるように、従来のイメージングシステムと共に使用することができる1つまたは複数のプログラムを含むこともできる。
【0038】
さらに、本システム、装置、および方法は、低出力超音波治療がデリバリされ得る任意の小部分イメージングにも拡張され得る。さらに、本方法は、例えば超音波イメージングシステムのような既存のイメージングシステムに適用することができるプログラムコードに埋め込むことができる。好適な超音波イメージングシステムは、例えば、小部分イメージングに適した従来の広帯域リニアアレイトランスデューサをサポートすることができるフィリップス(Philips)(登録商標)超音波システムを含むことができる。さらに、例えば、QLAB(商標)などの分析技術は、イメージング装置と共にオンカート(on−cart)で利用可能であってもよく、または検査室の外で実行され得る後処理プログラムとして利用可能であってもよい。さらに、複数の小結節、卵胞などの解剖学的実体、または他の検出可能なオブジェクトを、本システムを使用してマーキングすることができる。さらに、本システムの方法は、例えば、X−マトリクス(商標)または機械的トランスデューサを含むことができる、例えば2Dアレイトランスデューサなどのトランスデューサを使用して取得されたボリュームに適用することができる。
【0039】
言うまでもなく、本明細書に開示されたシステムおよび方法の任意の部分だけでなく、ブロック図の例示およびブロック図におけるブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令によって実施できる。これらのプログラム命令は、プロセッサに提供され、機械を構成し、その命令が、プロセッサ上で実行され、ブロック図のブロックに指定された動作、又は本明細書に開示されたシステム及び方法について説明された動作を実施する手段を生成する。コンピュータプログラム命令は、プロセッサによって実行され、コンピュータによって実施されるプロセスを生成する一連の動作ステップを実行させてもよい。また、コンピュータプログラム命令は、動作ステップの少なくともいくつかを並行して実行させることができる。さらに、いくつかのステップは、マルチプロセッサコンピュータシステムにおいて生じ得るように、複数のプロセッサにわたって実行されてもよい。さらに、1つまたは複数のプロセスは、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、他のプロセスと並行して、または示されたシーケンスとは異なるシーケンスで実行されてもよい。
【0040】
コンピュータプログラム命令は、任意のコンピュータ読み取り可能ハードウェア媒体に格納されてもよく、この媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリその他のメモリ技術、CD−ROM、デジタルバーサタイルディスク(DVD)その他の光ディスク記憶媒体、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶その他の磁気記憶デバイス、またはその他の、所望の情報の記憶に使え、計算デバイスによりアクセス可能な任意の媒体を含むが、これらに限定されない。さらに、本明細書で説明される心臓認識プロセッサなどのプロセッサは、例えば、適切なマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、画像プロセッサなどを含む集積回路(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ)として使用することができる1つまたは複数の適切なデータプロセッサを含むことができる。
【0041】
本発明の特定の付加的な利点および特徴は、本開示を研究する際に当業者には明らかであり得るか、または本発明の新規のシステムおよび方法を使用する人によって経験され得る。その主なものは、より信頼できる心臓音波血栓溶解装置及びその動作方法が提供されることである。本システムおよび方法の別の利点は、従来の医用画像システムを容易にアップグレードして、本システム、装置および方法の特徴および利点を組み込むことができることである。
【0042】
当然のことながら、言うまでもなく、上記の実施形態またはプロセスのどれでも、1つまたは複数の他の実施形態および/またはプロセスと組み合わせることができ、または本システム、デバイスおよび方法にしたがって別々のデバイスまたはデバイス部分の間で分離および/または実行されてもよい。
【0043】
最後に、上記の説明は本システムを単に例示することを目的としたものであり、添付した請求項をいずれかの実施形態や実施形態のグループに限定するものと解釈してはならない。したがって、本システムを、例示的な実施形態を参照して詳細に説明したが、言うまでもなく、以下の特許請求の範囲に記載した本システムの広範かつ意図された精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって多くの修正および代替実施形態が考案され得ることも理解されるべきである。従って、明細書と図面は例示であるとみなすべきで、添付した請求項の範囲を限定するものと考えるべきではない。