【文献】
J. Jpn. Assoc. Dietary Fiber Res.,2005年,Vol.9, No.1,pp.34-46
【文献】
Nippon Shokuhin Kagaku Kaishi,2004年,Vol.51, No.1,pp.28-33
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−124100号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Ohsawa, I., et al., Nat. Med., 2007, 13(6): p. 688-694.
【非特許文献2】Kajiyama, S., et al., Nutr. Res., 2008. 28(3): p. 137-143.
【非特許文献3】Li, Q., et al., Med. Gas. Res., 2013, 3(1): p. 20.
【非特許文献4】Suzuki, Y., et al., FEBS Lett., 2009, 583(13): p. 2157-2159.
【非特許文献5】Shimouchi, A., et al., Biomark. Insights, 2009, 4: p. 27-32.
【非特許文献6】Shimouchi, A., et al., Dig. Dis. Sci., 2009, 54(8): p. 1725-1729.
【非特許文献7】Nishimura, N., et al., J. Nutr., 2013, 143(12): p. 1943-1949.
【非特許文献8】Nishimura, N., et al., Br. J. Nutr., 2012, 107(4): p. 485-492.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、2種類以上の難消化性成分の組合せが配合された飲食品を提供する。本発明はまた、2種類以上の難消化性成分の組合せを含む大腸内水素ガス産生剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上に鑑み、本件の発明者は、水素ガスを体内に供給するための供給源として腸内細菌により産生される水素ガスに注目し、研究を開始した。鋭意検討の結果、難消化性成分の組合せを見出した。当該知見に基づいて、本発明は完成された。
【0009】
すなわち、一態様において、本発明は以下のとおりであってよい。
【0010】
[1]マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナン、イソマルトオリゴ等、ラクトース、セロビオース、キシロオリゴ糖、キシリトール、ソルビトール、エリトリトール、マンニトール、ペクチン、レジスタントスターチ、難消化性デキストリンおよび還元難消化性デキストリンからなる群より選択される2以上の難消化性成分の組合せが配合された、飲食品。
[2]難消化性成分の組合せが、以下:
(a)マルチトール、ガラクトオリゴ糖およびグルコマンナンからなる群より選択される2種類の難消化性成分の組合せ;または
(b)マルチトール、ガラクトオリゴ糖およびグルコマンナン;
である、上記[1]に記載の飲食品。
[3]難消化性成分の組合せを、0.01%w/w〜20%w/w含む、上記[1]または[2]に記載の飲食品。
[4]さらにプロバイオティクスを含む、[1]ないし[3]のいずれか1項に記載の飲食品。
[5]大腸内で水素ガスを産生させるためのものである、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の飲食品。
[6]飲食品が乳製品である、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の飲食品。
[7]乳製品が、乳飲料、ヨーグルト、アイスクリームおよびプリンからなる群より選択される、上記[6]に記載の飲食品。
[8]イソマルトオリゴ等、ラクトース、ガラクトオリゴ糖、セロビオース、キシロオリゴ糖、キシリトール、ソルビトール、エリトリトール、マルチトール、マンニトール、ペクチン、グルコマンナン、レジスタントスターチ、難消化性デキストリンおよび還元難消化性デキストリンからなる群より選択される2以上の難消化性成分の組合せを含む、大腸内水素ガス産生剤。
[9]難消化性成分の組合せが、以下:
(a)マルチトール、ガラクトオリゴ糖およびグルコマンナンからなる群より選択される2種類の難消化性成分の組合せ;または
(b)マルチトール、ガラクトオリゴ糖およびグルコマンナン;
である、上記[8]に記載の大腸内水素ガス産生剤。
[10]さらにプロバイオティクスを含む、[8]または[9]に記載の大腸内水素ガス産生剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明の飲食品または大腸内水素ガス産生剤は、ヒトの腸内菌叢は個体差が大きいという事情にも関わらず、より多くのヒトの腸内で腸内細菌を利用して持続的且つ多量の水素ガス産生が誘導できるものとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本明細書で特段に定義されない限り、本発明に関連して用いられる科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。
【0014】
(飲食品)
本発明は、2種類以上の難消化性成分が配合された飲食品に関する。
【0015】
本明細書において、2種類以上の難消化性成分は、マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナン、イソマルトオリゴ等、ラクトース、セロビオース、キシロオリゴ糖、キシリトール、ソルビトール、エリトリトール、マンニトール、ペクチン、レジスタントスターチ、難消化性デキストリンおよび還元難消化性デキストリンからなる群より選択される2以上の難消化性成分の組合せである。好ましくは、2種類以上の難消化性成分は、マルチトール、ガラクトオリゴ糖およびグルコマンナンからなる群より選択される2種類、またはマルチトール、ガラクトオリゴ糖およびグルコマンナンの3種類の成分の組合せである。
【0016】
本発明の飲食品は、上記2種類以上の難消化性成分に加えて、腸内細菌により水素を発生させることが可能であることが知られている他の成分を含んでいてもよい。そのような他の成分としては、例えば、ラクトース、ターメリック、フラクタン、ラクチュロース、ラフィノース、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、キトサンオリゴ糖、環状オリゴ糖、パラチノースなどが含まれる。
【0017】
マルチトールは、4−O−α−D−グルコピラノシル−D−グルシトールであり、還元麦芽糖とも呼ばれる。
【0018】
ガラクトオリゴ糖は、4’−ガラクトシルラクトースである。
【0019】
グルコマンナンは、グルコースとマンノースがおよそ2:3の割合でβ−1,4−結合で直鎖上に連なった多糖である。本発明に用いるグルコマンナンの重合度は特に限定されない。
【0020】
イソマルトオリゴ糖は、グルコースを基本構成単位とする多糖であって、α−1,6−結合、α−1,4−結合、α−1,3−結合を1カ所以上含むものである。本発明に用いるイソマルトオリゴ糖の重合度は特に限定されない。本発明に用いるイソマルトオリゴ糖として好ましいものには、イソマルトース、イソマルトトリオース、パノースが挙げられる。
【0021】
キシロオリゴ糖は、キシロースが2〜7個程度、β−1,4−結合した構造を有する多糖である。
【0022】
ペクチンは、ガラクツロン酸がα−1,4−結合したポリガラクツロン酸が主成分の複合多糖類である。本発明に利用可能なペクチンの分子量は特に限定されない。
【0023】
レジスタントスターチは、ヒトの小腸までの消化器官において消化されずに大腸に届くデンプンおよびデンプン分解物の総称である。レジスタントスターチ(RS)は、その特性により4つのタイプに分類される。タイプ1(RS1)は精製度の低い穀粒のようなα−アミラーゼ等の消化酵素が作用しないデンプン、タイプ2(RS2)はアミロース含量の多いデンプン、タイプ3(RS3)は加熱調理等により糊化した後、冷めていく過程で構造が変化した老化デンプン、タイプ4(RS4)は加工デンプン(化学修飾デンプン)である。本発明においては、いずれのタイプのレジスタントスターチを用いてもよい。
【0024】
難消化性デキストリンは、デンプンに微量の酸を添加して高温で加水分解し、α−アミラーゼおよびグルコアミラーゼで加水分解したものより精製された食物繊維である。難消化性デキストリンは、平均分子量約2,000のグルカンであり、デンプンが本来有するα−1,4−結合およびα−1,6−結合に加え、α−1,2−結合およびα−1,3−結合などを有して、原料デンプンと比較して枝分かれの発達した構造を有している。還元難消化性デキストリンは、難消化性デキストリンに対して還元処理を行ったものである。
【0025】
本発明の飲食品における難消化性成分の組合せの添加量は特に限定されないが、好ましくは、飲食品の重量に対して難消化性成分の組合せを0.01%w/w〜20%w/w、好ましくは0.5%w/w〜15%w/w、更に好ましくは1%w/w〜10%w/w、含む。
【0026】
難消化性成分の各成分間の比率は特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。例えば、難消化性成分の各成分は、難消化性成分の全体に対して、少なくとも0.5%以上、1%以上、5%以上、10%以上、20%以上の比率で含まれることが好ましい。難消化性成分の各成分は、難消化性成分の全体に対して等量ずつ含まれていてもよく、または互いに異なる比率で含まれていてもよい。
【0027】
例えば、難消化性成分の組み合わせがマルチトール、ガラクトオリゴ糖およびグルコマンナンを含む場合、飲食品に含まれるマルチトールの濃度は0.01%w/w〜3%w/w、好ましくは0.5%w/w〜2.5%w/w、0.8%w/w〜1.5%w/wであってよく、飲食品に含まれるガラクトオリゴ糖の濃度は0.01%w/w〜3%w/w、好ましくは0.5%w/w〜2.5%w/w、0.8%w/w〜1.5%w/wであってよく、そして、飲食品に含まれるグルコマンナンの濃度は、0.01%w/w〜2.5%w/w、好ましくは0.05%w/w〜2.0%w/w、0.05w/w〜0.5%w/wであってよい。上記の濃度は、飲食品の重量に対する濃度である。
【0028】
本発明の飲食品は、上記2種類以上の難消化性成分に加えて、プロバイオティクスを含んでいてもよい。本明細書においてプロバイオティクスは、摂取することによりヒトに有益な作用をもたらす生きた微生物を意味する。本発明の飲食品に含まれるプロバイオティクスは特に限定されないが、当該技術分野においてビフィズス菌と称されるビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)に属する微生物、乳酸菌と理解される微生物、例えば、ラクトバチルス属(Lactobacillus)に属する微生物、、ラクトコッカス・ラクティス、エンテロコッカス・フェカリス、ペディオコッカス・ペントサセウスが挙げられる。プロバイオティクスは、上記微生物の単独の株を含むものであってもよく、又は、複数の種若しくは株の組合せを含むものであってもよい。
【0029】
ラクトバチルス属に属する微生物の例として、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・デリブルエッキ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ロイテリが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
ビフィドバクテリウム属に属する微生物の例として、ビフィドバクテリウム・アニマリス・亜種アニマリス、ビフィドバクテリウム・アニマリス・亜種ラクティス、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュラタム、ビフィドバクテリウム・カテニュラタム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス及びビフィドバクテリウム・アドレスセンティスが挙げられるが、これらに限定されない。これらのうち、好ましくはビフィドバクテリウム・アニマリス・ラクティス及びビフィドバクテリウム・シュードカテニュラタム、より好ましくはビフィドバクテリウム・アニマリス・ラクティスを用いることができる。ビフィドバクテリウム・アニマリス・ラクティスの一態様として、LKM512株を用いることができる。LKM512株は、受託番号FERMP−21998として受託機関(NITE特許生物寄託センター)から入手することができる。
【0031】
本発明の飲食品に含まれるプロバイオティクスの量は特に限定されないが、例えば、飲食品100gあたり、2×10
3〜8×10
12cfu、好ましくは2×10
5〜8×10
11cfu、より好ましくは2×10
7〜8×10
10cfuを含むように配合することができる。本明細書においてcfuとは、コロニー形成ユニットを意味する。cfuは、当業者に知られたいずれの方法を用いて測定してもよいが、例えば、微生物をリン酸緩衝液(PBS)で希釈し、当該希釈液をMRS培地上にまき、37℃で48時間培養した後、生育したコロニーの数をカウントすることにより測定することができる。
【0032】
本発明の飲食品は、食品または飲料である限り特に限定されないが、好ましくは乳製品または洋生菓子である。乳製品は、生乳または加工乳を原料に使用した食品または飲料で有る限り特に限定されないが、例えば、乳飲料、チーズ、発酵乳、およびアイスクリーム類が含まれ、洋生菓子にはプリンが含まれる。特に好ましい態様において本発明の飲食品は乳飲料である。
【0033】
本明細書において乳飲料とは、生乳または加工乳を原料に乳由来でない成分を添加した飲料を意味する。乳飲料は、脱脂乳(脱脂粉乳を水で戻したもの)、脱脂粉乳、をさらに含んでいてもよい。乳飲料はまた、添加する成分として、コーヒー、果汁、香料など味や香り等の嗜好を調整するものや、ビタミンやミネラルなどの栄養素を含んでいてもよい。
【0034】
本発明の飲食品は、それを摂取した対象の大腸内の腸内菌叢に働いて水素ガスを産生させることができる。したがって、本発明の飲食品は大腸内で水素ガスを産生させるために利用できる。本発明の飲食品について、大腸内で水素ガスを産生させる効果は、例えば後述の実施例において示すような方法により確認することができる。これはすなわち、本発明の飲食品を摂取した対象から、当該飲食品摂取後の所定の時間に呼気サンプルを採取し、採取したサンプル中の水素濃度を、当該飲食品摂取前の呼気サンプル中の水素ガス濃度と比較することにより行うことができる。あるいは、対象に本発明の飲食品を摂取させ、所定時間経過後に当該対象から採取した呼気サンプル中の水素濃度と、同じ対象に本発明の難消化性成分の組合せが配合されていない飲食品(対照)を摂取させ、同様の所定時間経過後に当該対象から採取した呼気サンプル中の水素濃度とを比較することにより行うことができる。
【0035】
(大腸内水素ガス産生剤)
本発明は、2種類以上の難消化性成分を含む大腸内水素ガス産生剤に関する。本発明の大腸内水素ガス産生剤に含まれる2種類以上の難消化性成分の組合せについては、上記飲食品の項目において定義したとおりである。
【0036】
本発明の大腸内水素ガス産生剤における難消化性成分の組合せの量は特に限定されないが、好ましくは、1回の摂取あたり、難消化性成分の組合せを0.1g〜20g、好ましくは0.5g〜20g、更に好ましくは1g〜10g含むように配合される。
【0037】
難消化性成分の各成分間の比率は特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。例えば、難消化性成分の各成分は、難消化性成分の全体に対して、少なくとも0.5%以上、1%以上、5%以上、10%以上、20%以上の比率で含まれることが好ましい。難消化性成分の各成分は、難消化性成分の全体に対して等量ずつ含まれていてもよく、または互いに異なる量で含まれていてもよい。
【0038】
例えば、難消化性成分の組み合わせがマルチトール、ガラクトオリゴ糖およびグルコマンナンを含む場合、大腸内水素ガス産生剤に含まれるマルチトールの量は0.02g〜6.0g、好ましくは1.0g〜5.0g、1.5g〜3.0gであってよく、大腸内水素ガス産生剤に含まれるガラクトオリゴ糖の濃度は0.02g〜6.0g、好ましくは1.0g〜5.0g、1.5g〜3.0gであってよく、そして、大腸内水素ガス産生剤に含まれるグルコマンナンの濃度は、0.02g〜5g、好ましくは0.05g〜3.0g、0.1g〜1.0gであってよい。上記の量は、大腸内水素ガス産生剤の1回の摂取あたりの量である。
【0039】
本発明の大腸内水素ガス産生剤は、さらにプロバイオティクスを含んでいてもよい。本発明の大腸内水素ガス産生剤に含まれるプロバイオティクスについては、上記飲食品の項目において定義したとおりである。この態様において大腸内水素ガス産生剤は、難消化性成分の組合せとプロバイオティクスとが同一の組成物中に含まれるものであってもよく、あるいは難消化性成分の組合せを含む組成物及びプロバイオティクスを含む組成物で構成される組合せ組成物であってもよい。組合せ組成物の場合、難消化性成分の組合せを含む組成物とプロバイオティクスを含む組成物は、同時に摂取するものであってもよく、あるいは別々に摂取するものであってもよい。
【0040】
本発明の大腸内水素ガス産生剤におけるプロバイオティクスの量は特に限定されないが、1回の摂取あたり、2×10
3〜8×10
12cfu、好ましくは2×10
5〜8×10
11cfu、より好ましくは2×10
7〜8×10
10cfuを含むように配合することができる。
【0041】
本発明の大腸内水素ガス産生剤の形態は、ヒトが摂取するのに適した形態である限り特に限定されず、例えば、液体、懸濁液(分散液状)、乳濁液、半固体、ペースト、粉末、顆粒、錠剤、タブレット剤、カプセル剤、または丸剤の形態であってもよい。また、本発明の大腸内水素ガス産生剤は、甘味料、防腐剤、着色料、酸化防止剤、または香料等の添加剤を含んでいてもよい。
【0042】
本発明の大腸内水素ガス産生剤の効果は、上記飲食品の項目において説明した方法により確認することができる。
【0043】
(大腸内で水素ガスを産生させる方法)
本発明はまた、本発明の飲食品または大腸内水素ガス産生剤を、対象に摂取させるもしくは投与することを含む、対象の大腸内で水素ガスを産生させる方法に関する。
【0044】
本発明はまた、対象の大腸内で水素ガスを産生させる方法において使用するための、上記2種類以上の難消化性成分の組合せまたは当該組合せが配合された飲食品に関する。本発明はさらに、大腸内水素ガス産生剤の製造のための、上記2種類以上の難消化性成分の使用に関する。
【0045】
本明細書において「対象」とは、哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0046】
本発明について全般的に記載したが、さらに理解を得るために参照する特定の実施例をここに提供する。しかし、これらは例示目的とするものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0047】
(実施例1:水素ガス産生促進効果の高い難消化性成分の選抜(糞便培養系))
<試薬>
23種類の難消化性成分のそれぞれ(セルロース、イソマルトオリゴ糖、ラクトース、フラクトオリゴ等、ガラクトオリゴ糖、セロビオース、キシロオリゴ糖、キシリトール、ソルビトール、エリトリトール、マルチトール、マンニトール、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、グルコマンナン、リグニン、キチン、キトサン、レジスタントスターチ、難消化性デキストリン、還元難消化性デキストリン、ケールまたは大麦若葉)をリン酸緩衝液生理食塩水(PBS)で2.5%(w/v)になるように調製した。その際、完全に溶解しなかった成分においては、懸濁した状態で使用した。対照はこれら成分を含まないPBSを使用した。
【0048】
<被験者・糞便>
糞便は健常成人10名(男性7名、女性3名、平均年齢35.8歳)から回収し、排便後5時間以内に使用した。
【0049】
<糞便処理・培養>
糞便5gに20mlの嫌気性希釈液(KH
2PO
4、Na
2HPO
4、L−システイン塩酸塩、Tween80、0.1%レサズリンを溶解し、N
2・CO
2(80%・20%)を噴射注入しブチル栓で封をしてオートクレーブ処理したもの)を加え、ボルテックスで撹拌した後、遠心分離(1000g×1分間)にて未消化の食べかす等の固形物を除去した。糞便菌が存在する上層部の糞便懸濁液をエッペンドルフチューブに160μlずつ分注し、そこに調製した難消化性成分のPBS溶液を40μlずつ添加した(難消化性成分の終濃度は0.5%)。糞便懸濁液と難消化性成分の混ざったエッペンドルフチューブをバイアルビン(40mm×75mm、50ml)に蓋を開けた状態で入れ、嫌気性菌培養装置(AG−2)にてN
2・CO
2(79.8%・20.2%)混合ガスを噴射注入し、エッペンドルフチューブ内およびビン内を嫌気状態にした。ブチル栓で密封して、インキュベーターにて培養した(37℃、24時間)。また、1サンプル当たり2連で、3回繰り返し実験を行った。
【0050】
<水素ガス濃度測定>
1.0mlのガスタイトシリンジ(ハミルトン)でバイアルビン内のガスを0.5ml採取し、TRIlyzer(太陽日酸株式会社)で測定した。その際、濃度が検出限界を超えた場合は50mlのバイアルビンにサンプル1mlを注入して、50倍希釈し、値を測定した。なお、採取前にはシリンジで5回ビン内の空気を撹拌させた。
【0051】
<結果>
各試料の水素ガス産生濃度の対照比を算出し、対照比が10倍以上となった値に網掛けした(表1)。10名中、イソマルオリゴ糖は5名、ラクトースは4名、フラクトオリゴ糖は7名、ガラクトオリゴ糖は5名、セロビオースは7名、キシロオリゴ糖は1名、キシリトールは6名、ソルビトールは4名、エリトリトールは2名、マルチトールは6名、マンニトールは5名、ペクチンは1名、グルコマンナンは3名、レジスタントスターチは1名、難消化性デキストリンは2名、還元難消化性デキストリンは2名の糞便が10倍以上となった。
【0052】
【表1】
【0053】
このように成分を単独で添加した場合、水素ガス産生促進効果が認められる成分は被験者によって異なっていた。これは腸内菌叢の個体差が大きく、分解できる成分がヒトによって異なるためであると考えられる。そこで、全ての被験者において水素ガス産生促進効果の期待できる(対照比が10倍以上)難消化性成分の組み合わせを探索した結果、マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナンの組み合わせで可能となることがわかった。(表2)。
【0054】
【表2】
【0055】
(実施例2:難消化性成分を混合配合することによる相乗効果の検証(糞便培養系))
<試薬>
マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナンをそれぞれ0.8%溶液となるようにPBSに溶解した。同様に3種混合液として、3種類の成分を0.8%量ずつ混合してPBSに溶解した。対照は成分を含まないPBSを使用した。
【0056】
<被験者・糞便>
14名(男性11名、女性3名、平均年齢40.9歳)の健常成人の糞便を用いた。
【0057】
<糞便処理・培養および水素ガス濃度測定>
実施例1と同様の方法で行った
<結果>
各成分を3種混合で添加した場合に、単独成分を添加した場合と比較して水素ガス産生量が増加した(
図1)。また、単独成分添加で水素ガス産生濃度の対照比が2倍以上となった糞便は被験者14名中、マルチトールは9名、ガラクトオリゴ糖は8名、グルコマンナンは4名の糞便である一方、3種混合添加で水素ガス産生濃度の対照比が2倍以上となった糞便は、被験者14名中13名の糞便であった(
図2)。同様に、被験者14名中、水素ガス産生濃度の対照比が3倍以上となった糞便は、単独成分添加の場合、マルチトールは5名、ガラクトオリゴ糖は0名、グルコマンナンは1名の糞便である一方、3種混合添加では11名の糞便であり、さらに、水素ガス産生濃度の対照比が5倍以上となった糞便は、単独成分添加の場合、マルチトールは2名、ガラクトオリゴ糖は0名、グルコマンナンは0名の糞便である一方、3種混合添加では9名の糞便であった。以上の結果より、これら難消化性成分を組み合わせることによって適応範囲の広い水素ガス産生促進効果が認められた。
【0058】
(実施例3:水素ガス産生乳飲料の検討(呼気中水素濃度測定)(1))
<被験者>
牛乳を飲んで下痢になることはない健常成人6名を被験者とした。
【0059】
<試験食>
水200ml(対照)、牛乳200ml、難消化性成分添加牛乳(200mlの牛乳にマルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナンをそれぞれ2gずつ溶解させた)合計3種類を試験食とし、比較に用いた。
【0060】
<呼気採取スケジュール>
12時間の絶食(水のみ自由摂取)後、200mlの牛乳を1分間かけて摂取させた。別日に試験食である、水(対照)、難消化性成分添加牛乳を摂取させ、試験を実施した。体の負担を考え、各試験は2日間以上の間隔をあけて実施した。摂取後、12時間後まで、1時間毎に呼気を採取した。試験食摂取直前にも採取し、これを試験食摂取後0hの呼気サンプルとした。
【0061】
<呼気採取方法>
呼気採取前に、被験者を5分間安静に座らせた。呼気の採取は、被験者による次の一連の操作により行った:5分間椅子に座って安静にした後、鼻から大きく息を吸い込み、15秒間息を止めてからゆっくり吐き出した後の肺胞末端中の呼気(すなわち終末呼気)を呼気採取バッグ(大塚製薬)に吹き込む。
【0062】
<呼気サンプル中の水素濃度測定>
ガスタイトシリンジで呼気採取バッグ中の呼気を5回撹拌した後、当該シリンジでバッグ中の呼気を0.5mL採取した。当該シリンジで採取した呼気サンプルについて、生体ガス測定システムであるTRIlyzer(株式会社タイヨウ)を用いて当該サンプル中の水素濃度を測定した。
【0063】
<結果>
牛乳単体を摂取した際と比較して、難消化性成分添加牛乳を摂取した際の呼気中水素ガス量が増加した(
図3)。AUC(曲線下面積)値においても、難消化性成分添加牛乳での水素ガス産生促進効果が高いことを示した。
【0064】
(実験例4:水素ガス産生乳飲料へのプロバイオティクス添加の検討(マウス呼気中水素濃度測定))
<実験動物>
9週齢のICR(雄)マウス10匹を、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp.lactis)LKM512株(本明細書において単にLKM512とも記載する)懸濁液投与群およびPBS投与群(対照)の2群(各5匹)に分けた。LKM512懸濁液及びPBSを1日300μl、週に5回、3週間に渡り胃ゾンデで強制経口投与した。LKM512懸濁液中のLKM512菌数は7.0×10
8 cfu / 300μlとした。3週間の投与期間を終えた21日目に難消化性成分添加牛乳(実施例3と同様に調製したもの)を投与し、水素ガス産生量を測定した。
【0065】
<水素ガス産生量測定試験>
15時間マウスを絶食させた後、待機ケージ(餌、水、床敷きなし)に2時間入れて環境に順化させた。その後、難消化性成分添加牛乳を360μl強制経口投与した。測定は難消化性成分添加牛乳投与前、投与2時間後に2回ずつ行い、それぞれ2つの数値の平均をとった。
【0066】
<サンプル採取方法及び測定方法>
ブチル栓製空気回収口付アクリルボックスにマウスを5分間閉じ込め、マウスの体内から発生するガス(呼気ガス、屁)をボックス中に溜めた。その後、ブチルゴム栓部からガスタイトシリンジでボックス中の空気を0.5mL採取した。その際、ボックス内に設置したファンを回すことで中の空気を撹拌させた。採取した空気サンプルは生体ガス測定システムであるTRIlyzer (株式会社タイヨウ)を用いて水素ガス濃度を測定した。
<結果>
難消化性成分添加牛乳投与前に水素ガス産生量に差はなかったが、難消化性成分添加牛乳投与後の水素ガス産生量は、LKM512懸濁液投与群の方がPBS投与群と比較して約3.2倍多い結果となった(
図4)。
【0067】
(実施例5:水素ガス産生乳飲料の検討(呼気中水素濃度測定)(2))
<試験方法>
牛乳を飲んで下痢になることはない健常成人7名で、単群・群内比較・オープン試験を実施した。試験食は、難消化性成分添加乳飲料(生乳および脱脂粉乳を含む乳飲料に1.6%ガラクトオリゴ糖、1.1%マルチトール、および0.1%グルコマンナンとなるよう難消化性成分を添加して得た)、成分無調整牛乳、市販水素水(メロディアン)を用い、入院による終日観察により測定を行った。入院は1週間毎に3回行い、初回に難消化性成分添加乳飲料、2回目に成分無調整牛乳、3回目に水素水をそれぞれ200 ml摂取し、呼気中水素濃度に及ぼす影響を比較した。
【0068】
12時間の絶食(水のみ摂取可能)後、難消化性成分添加乳飲料、成分無調整牛乳、または水素水を200 ml摂取させた時点を、試験を開始とした。被験者はOS-1(大塚食品)を試験開始2時間後から2時間毎(2時間、4時間、6時間、8時間、10時間後)に100 mlずつ摂取し、ボンコロン(大塚食品)の朝食1食分を4時間後に摂取した。試験開始後は水の摂取は禁止した。呼気中水素濃度の測定は、難消化性成分添加乳飲料および成分無調整牛乳摂取時は、試験直前、その後1時間毎に12時間後まで、計13回実施した。水素水摂取時は、試験直前、その後の1時間は5分毎に、1時間後から2時間後までは15分毎に、2時間後から10時間後までは1時間毎に測定した。呼気採取方法及び呼気サンプル中の水素濃度測定は、実施例3に記載した方法により行った。
【0069】
<結果>
成分無調整牛乳を摂取した際と比較して、難消化性成分添加乳飲料を摂取した際の呼気中水素ガス濃度の増加は高く、添加成分の有効性が確認できた(
図5)。また、市販水素水と比較しても、摂取20分間は水素水摂取時の方が高かったが、その後は、難消化成分添加乳飲料の方が圧倒的に高い結果を示した。AUC(曲線下面積)値においても、難消化性成分添加乳飲料は、成分無調整乳および水素水と比較して、それぞれ2.5倍および6.7倍高い値を示した。