(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796072
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】ヒトおよび動物における「プラークおよびもつれ」の処置のための組成物と方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/82 20060101AFI20201119BHJP
A61K 36/74 20060101ALI20201119BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20201119BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20201119BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20201119BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20201119BHJP
A61K 9/02 20060101ALI20201119BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20201119BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20201119BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20201119BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20201119BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20201119BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20201119BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20201119BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20201119BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20201119BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
A61K36/82
A61K36/74
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/02
A61K9/12
A61P25/28
A61P43/00 105
A61P21/00
A61P25/00
A61P25/00 171
A61P9/00
A61P25/16
A61P35/00
A23L33/105
A23L2/00 F
【請求項の数】25
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-545681(P2017-545681)
(86)(22)【出願日】2016年2月25日
(65)【公表番号】特表2018-513838(P2018-513838A)
(43)【公表日】2018年5月31日
(86)【国際出願番号】US2016019572
(87)【国際公開番号】WO2016138270
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2019年2月22日
(31)【優先権主張番号】62/126,026
(32)【優先日】2015年2月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/170,822
(32)【優先日】2015年6月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517297913
【氏名又は名称】コグニティヴ クラリティ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】カム,ジュディ
(72)【発明者】
【氏名】レイク,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フ,キュバイ
(72)【発明者】
【氏名】カミングス,ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】スノウ,アラン ディー.
【審査官】
鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−230977(JP,A)
【文献】
特開2005−298425(JP,A)
【文献】
特開2007−182403(JP,A)
【文献】
特開2003−171298(JP,A)
【文献】
特開2007−277163(JP,A)
【文献】
特開2010−013423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A23L 2/00−2/84
A23L 33/00−33/29
A61K 9/00−9/72
A61P 9/00
A61P 21/00
A61P 25/00
A61P 25/16
A61P 25/28
A61P 35/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における記憶、認知、注目及び/又は集中の改善用の組成物の製造のためのウーロン茶抽出物と組み合わせてUncaria tomentosa(キャッツクロー)抽出物の治療有効量を含む組成物の使用。
【請求項2】
記憶低下の軽減用の組成物の製造のためのウーロン茶抽出物と組み合わせてUncaria tomentosa(キャッツクロー)抽出物の治療有効量を含む組成物の使用。
【請求項3】
丸薬、錠剤、カプレット剤、軟ゼラチンカプセル剤もしくは硬ゼラチンカプセル剤、薬用ドロップ、サシェ剤、カシェ剤、ベジカプセル剤、液滴剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、飲料製剤、冷たいもしく温かい茶飲料剤、シロップ剤、ティーバッグ剤、エアゾール剤、坐剤、無菌注射用製剤、または無菌包装粉剤から選択される経路の1つによる投与のために製剤化された請求項1又は2に記載の組成物の使用。
【請求項4】
キャッツクロー抽出物の100〜500mgがウーロン茶抽出物100〜500mgと組み合わされる、請求項1又は2に記載の組成物の使用。
【請求項5】
キャッツクロー抽出物の100〜500mgがウーロン茶抽出物100〜500mgと組み合わされかつ200〜1000mgカプセルへと製剤化される、請求項1又は2に記載の組成物の使用。
【請求項6】
哺乳動物におけるアミロイドーシスの処置のための組成物の製造におけるキャッツクロー抽出物およびウーロン茶抽出物を含む組成物の使用。
【請求項7】
前記アミロイドーシスがアルツハイマー病、ダウン症候群、ボクサー認知症、認知機能障害症候群、イヌの認知機能障害、多系統萎縮症、封入体筋炎、オランダ型アミロイドーシスによる遺伝性脳出血、ニーマン・ピック病C型、脳βアミロイド血管障害、皮質基底核変性症に関連する認知症、2型糖尿病のアミロイドーシス、慢性炎症のアミロイドーシス、悪性腫瘍と家族性地中海熱のアミロイドーシス、多発性骨髄腫とB細胞疾患のアミロイドーシス、プリオン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・ストロイスラー症候群、クールー病、スクレイピーのアミロイドーシス、手根管症候群に関連するアミロイドーシス、老人性心アミロイドーシス、家族性アミロイドポリニューローパチー、および内分泌腫瘍に関連するアミロイドーシスから選択される、請求項6に記載の組成物の使用。
【請求項8】
アミロイド原線維の形成、沈着、蓄積、または残留を処置するための組成物の製造におけるキャッツクロー抽出物およびウーロン茶抽出物を含む組成物の使用。
【請求項9】
前記抽出物が丸薬、錠剤、カプレット剤、軟ゼラチンカプセル剤もしくは硬ゼラチンカプセル剤、薬用ドロップ、サシェ剤、カシェ剤、ベジカプセル剤、液滴剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、冷たいもしく温かい飲料剤、シロップ剤、ティーバッグ剤、エアゾール剤、坐剤、無菌注射用製剤、または無菌包装粉剤から選択される経路の1つによる投与のために製剤化される、請求項8に記載の組成物の使用。
【請求項10】
βアミロイドを含有するプラークの形成、沈着、蓄積、または残留を処置するための組成物の製造におけるキャッツクロー抽出物およびウーロン茶抽出物を含む組成物の使用。
【請求項11】
ヒトまたは哺乳動物におけるタウオパチーの処置のための組成物の製造におけるキャッツクロー抽出物およびウーロン茶抽出物を含む組成物の使用。
【請求項12】
前記タウオパチーがアルツハイマー病、タウ封入体(FLTD−タウ)による前頭側頭葉変性症、ピック病、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、嗜銀顆粒性認知症、プリオン病、グアムの筋萎縮性側索硬化症−パーキンソ認知症複合(Lytico Bodig病とも呼ばれる)、パーキンソン病、神経原線維変化型老年期認知症、神経節腫、神経節膠腫、神経節細胞腫、髄膜腫症、亜急性硬化性全脳炎、鉛脳症、結節性硬化症、ハレルフォルデン・スパッツ病、リポフスチン沈着症、外傷性脳損傷(TBI)、慢性外傷性脳障害(CTE)、ボクサー認知症、脳震盪、頭部への一撃もしくは繰り返し衝撃、および心的外傷後ストレス障害から選択される、請求項11に記載の組成物の使用。
【請求項13】
タウタンパク質を含有する神経原線維もつれの形成、沈着、蓄積、または残留を処置するための組成物の製造におけるキャッツクロー抽出物およびウーロン茶抽出物を含む組成物の使用。
【請求項14】
前記抽出物が丸薬、錠剤、カプレット剤、軟ゼラチンカプセル剤もしくは硬ゼラチンカプセル剤、薬用ドロップ、サシェ剤、カシェ剤、ベジカプセル剤、液滴剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、飲料剤、シロップ剤、ティーバッグ剤、エアゾール剤、坐剤、無菌注射用製剤、または無菌包装粉剤から選択される経路の1つによる投与のために製剤化される、請求項12に記載の組成物の使用。
【請求項15】
アミロイド疾患を患っている哺乳動物において認知能力を改善するおよび/または認知機能低下を遅らせるための組成物の製造におけるキャッツクロー抽出物およびウーロン茶抽出物を含む組成物の使用であって、当該組成物は、哺乳動物におけるβアミロイドタンパク質のプラークまたは原線維の形成、沈着、蓄積または残留を減少させることを特徴とする、組成物の使用。
【請求項16】
投与されるキャッツクロー抽出物およびウーロン茶抽出物の量が、キャッツクロー抽出物約100〜500mgおよびウーロン茶抽出物約100〜500mgである、請求項15に記載の組成物の使用。
【請求項17】
加齢性記憶障害(AAMI)、軽度認知障害(MCI)またはアルツハイマー病の哺乳動物において学習、記憶、認知、注目および/または集中を改善するための組成物の製造におけるキャッツクロー抽出物とウーロン茶抽出物を含む組成物の使用。
【請求項18】
投与される前記キャッツクロー抽出物およびウーロン茶抽出物の量が、キャッツクロー抽出物約100〜500mgおよびウーロン茶抽出物約100〜500mgである、請求項17に記載の組成物の使用。
【請求項19】
単回または複数回の脳震盪、外傷性脳損傷(TBI)、慢性外傷性脳障害(CTE)、心的外傷後ストレス障害、脳老化、軽度認知障害またはアルツハイマー病を経験したことのある哺乳動物の脳におけるタウタンパク質を含有する神経原線維もつれの形成、沈着、蓄積、または残留を予防する、減少させるまたは処置するための組成物の製造におけるキャッツクロー抽出物とウーロン茶抽出物を含む組成物の使用。
【請求項20】
前記使用は、組成物の有効量でタウタンパク質を含有する神経原線維もつれの形成、沈着、蓄積、または残留を処置することを含む、請求項19に記載の組成物の使用。
【請求項21】
投与される前記キャッツクロー抽出物およびウーロン茶抽出物の量が、キャッツクロー抽出物約100〜500mgおよびウーロン茶抽出物約100〜500mgである、請求項20に記載の組成物の使用。
【請求項22】
高齢のイヌまたはネコの脳におけるβアミロイドを含有するプラークおよびタウタンパク質を含有する神経原線維もつれの形成、沈着、蓄積、または残留を予防する、減少させるまたは処置するための組成物の製造におけるキャッツクロー抽出物およびウーロン茶抽出物を含む組成物の使用。
【請求項23】
投与される前記キャッツクロー抽出物およびウーロン茶抽出物の量が、キャッツクロー抽出物約100〜500mgおよびウーロン茶抽出物約100〜500mgである、請求項22に記載の組成物の使用。
【請求項24】
高齢のイヌまたはネコにおいて認知能力を改善するおよび/または認知機能低下を遅らせるための組成物の製造におけるキャッツクロー抽出物およびウーロン茶抽出物を含む組成物の使用であって、前記高齢のイヌまたはネコの脳が、βアミロイドを含有するプラークの形成、沈着、蓄積および/または残留、ならびにタウタンパク質を含む神経原線維もつれの形成、沈着、蓄積および/または残留を示す、組成物の使用。
【請求項25】
投与される前記キャッツクロー抽出物およびウーロン茶抽出物の量が、キャッツクロー抽出物約100〜500mgおよびウーロン茶抽出物約100〜500mgである、請求項24に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2015年2月27日出願の米国特許仮出願第62/126,026号および2015年6月4日出願の米国特許仮出願第62/170,822号に優先権を主張し、それら全体を参照によって本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、ヒトおよび動物(すなわち高齢イヌおよび高齢ネコなど)のアミロイドーシスおよびタウオパチーにおいて、加齢脳に蓄積する「プラークおよびもつれ」を処置するためのUncaria tomentosa(ウンカリアトメントーサ、キャッツクロー)およびウーロン茶の植物抽出物の配合組成物と処置方法に関する。加えて、本発明は、外傷性脳損傷(TBI)、脳震盪(大半の運動選手および軍人/兵士で観察される)、頭部への一撃と繰り返し衝撃、および慢性外傷性脳障害(CTE)を予防し処置するために、キャッツクローおよび特定のウーロン茶の植物抽出物の組み合わせからなる栄養補助食品を配合した組成物の開発に関する。
【背景技術】
【0003】
アミロイドーシスおよび種々の障害の脳におけるβアミロイドプラークの蓄積
アルツハイマー病は、βアミロイドタンパク質またはAβと名付けられた39〜43アミノ酸ペプチドが線維状で蓄積し、細胞外アミロイドプラークとして、および脳血管壁内にアミロイドとして存在することによって特徴づけられる。アルツハイマー病において原線維Aβアミロイドの沈着は患者にとって有害であると考えられており、アルツハイマー病に顕著な特徴である毒性と神経細胞死とを最終的にもたらす。蓄積するエビデンスは、アルツハイマー病の病因の主要な原因因子として、アミロイド、より具体的には、Aβ原線維の形成、沈着、蓄積および/または残留を示している。加えて、アルツハイマー病の他に、多数の他のアミロイド疾患がAβ原線維の形成、沈着、蓄積および残留と関係しており、ダウン症候群、コンゴーレッド親和性血管障害を含む種々の障害、例えばこれらに限定されないがオランダ型遺伝性脳出血、封入体筋炎、ボクサー認知症、脳βアミロイド血管障害、進行性核上性麻痺に関連する認知症、皮質基底核変性症に関連する認知症および軽度認知障害が挙げられる。
【0004】
アミロイド疾患(アミロイドーシス)は、アミロイドタンパク質ならびに元の疾患の種類によって分類される。アミロイド疾患には、いくつかの共通の特徴があり、例えば各アミロイドは特有の型のアミロイドタンパク質からなる。アミロイド疾患としては、これらに限定されないが、アルツハイマー病に関連するアミロイド、ダウン症候群、イヌの機能不全症候群(CDS)、イヌおよびネコなどの高齢動物に見られるイヌの認知機能障害(CCD)、オランダ型アミロイドーシスによる遺伝性脳出血、ボクサー認知症、封入体筋炎(Askanasら,Ann.Neurol.43:521−560,1993)と軽度認知障害(この特異的なアミロイドはβアミロイドタンパク質またはAβと呼ばれる)、慢性炎症に関連するアミロイド疾患、種々の型の悪性腫瘍と家族性地中海熱(この特異的なアミロイドはAAアミロイドまたは炎症関連アミロイドーシスと呼ばれる)、多発性骨髄と他のB細胞疾患に関連するアミロイド(この特異的なアミロイドはALアミロイドと呼ばれる)、2型糖尿病に関連するアミロイド(この特異的なアミロイドはアミリンまたは膵島アミロイドポリペプチドまたはIAPPと呼ばれる)、プリオン病に関連するアミロイド、例えばクロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・ストロイスラー症候群、クールー病と動物のスクレイピー(この特異的なアミロイドはPrPアミロイドと呼ばれる)、長期血液透析と手根管症候群に関連するアミロイド(この特異的なアミロイドはα2−ミクログロブリンアミロイドと呼ばれる)、老人性心アミロイドーシスに関連するアミロイドと家族性アミロイドポリニューローパチー(この特異的なアミロイドはトランスサイレチンまたはプレアルブミンと呼ばれる)、および甲状腺髄様癌などの内分泌腫瘍に関連するアミロイド(この特異的なアミロイドはプロカルシトニン変異体と呼ばれる)が挙げられる。加えて、アミロイド様原線維を形成し、コンゴーレッドとチオフラビンS陽性(原線維アミロイド沈着物を検出するために用いられる特殊染色)であるα−シヌクレインタンパク質は、パーキンソン病、レビー小体病(Lewy in Handbuch der Neurologie,M.Lewandowski,編,Springer,Berlin pp. 920−933,1912;Pollanenら,J.Neuropath.Exp.Neurol.52:183−191,1993;Spillantiniら,Proc. Natl.Acad.Sci.USA 95:6469−6473,1998;Araiら,Neurosc.Lett.259:83−86,1999)、多系統萎縮症(Wakabayashiら,Acta Neuropath.96:445−452, 1998)、レビー小体型認知症およびアルツハイマー病のルビー小体亜型の患者の脳でのレビー小体の一部として見いだされている。本開示の目的上、パーキンソン病は、原線維(コンゴーレッドとチオフラビンS陽性であり、顕著なβプリーツシート二次構造を含有する)がパーキンソン病の患者の脳内に発生するという事実によって現在、アミロイド疾患の特徴も示す疾患としてみなされている。
【0005】
アルツハイマー病のための治療標的としてのアミロイド
アルツハイマー病は、βアミロイドタンパク質、Aβまたはβ/A4と名付けられた39〜43アミノ酸ペプチドの沈着および蓄積によって特徴づけられる(GlennerとWong,Biochem.Biophys.Res.Comm.120:885−890,1984;Mastersら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:4245−4249,1985;Husbyら,Bull.WHO 71:105−108,1993)。Aβは、βアミロイド前駆体タンパク質(APP)と名付けられ、選択的にスプライシングされるいくつかの変異体がある大きい前駆体タンパク質からプロテアーゼ切断によって得られる。APPで最も多い形態は、696、751および770のアミノ酸からなるタンパク質を含む(Tanziら,Nature 31:528−530,19980)。
【0006】
小さいAβペプチドは、アルツハイマー病患者の脳内でアミロイド沈着物または「プラーク」を構成する主成分である。加えて、アルツハイマー病は、神経細胞質中で異常に蓄積する対らせん状微細線維からなる多数の神経原線維の「もつれ」の存在によって特徴づけられる(Grundke−Iqbalら,Proc.Natl.Acad.Sci. USA 83:4913−4917,1986;Kosikら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:4044−4048,1986;Leeら,Science 251:675−678,1991)。したがって、アルツハイマー病の病理学的特徴は、「プラーク」および「もつれ」の両方が存在することであり、アミロイドがプラークの中核に沈着される。アルツハイマー病の脳で認められる他の主要な病変の型は、脳実質内および脳の外側にある髄膜血管壁中の双方での血管壁中のアミロイドの蓄積である。血管壁に局在するアミロイド沈着物は、脳血管アミロイドまたはコンゴーレッド親和性血管障害と呼ばれる(Mandybur,J.Neuropath.Exp.Neurol.45:79−90,1986;Pardridgeら,J.Neurochem.49:1394−1401,1987)。
【0007】
長年にわたって、アルツハイマー病での「アミロイド」の重要性について、およびこの疾患の特徴である「プラーク」と「もつれ」が疾患の原因であるか、または単に結果であるかについて科学的な論議が続いていた。ここ数年間で、諸研究は、今ではアミロイドが実際にアルツハイマー病原因の一因子であり、単に罪のない局外者としてみなされるべきではないことを示している。細胞培養においてアルツハイマーのAβタンパク質は、短期間に神経細胞の変性を生じることが示されている(Pikeら,Br.Res.563:311−314,1991;J.Neurochem.64:253−265,1995)。諸研究は、すべてのアミロイドに特徴的な原線維構造(顕著なβプリーツシート二次構造からなる)が神経毒性作用の原因であることを示している。Aβは、海馬スライス培養物中で神経毒性であり(Harriganら,Neurobiol.Aging 16:779−789,1995)、および遺伝子導入マウス中で神経細胞死を誘発する(Gamesら, Nature 373:523−527,1995;Hsiaoら,Science 272:99−102,1996)ことも判明している。アルツハイマーのAβをラット脳に注入することも、記憶障害と神経機能障害を引き起こす(Floodら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3363−3366,1991; Br.Res.663:271−276,1994)。
【0008】
おそらく、Aβアミロイドがアルツハイマー病の病態形成に直接関与しているという最も説得力のある証拠は、遺伝学的研究から来ている。Aβの産生がその前駆体であるβアミロイド前駆体タンパク質をコードする遺伝子中の変異に起因しうることが、発見された(Van Broeckhovenら,Science 248:1120−1122, 1990;Murrellら,Science 254:97−99,1991;Haassら,Nature Med.1:1291−1296,1995)。早期発症型家族性アルツハイマー病を引き起こすβアミロイド前駆体タンパク質遺伝子中の変異の同定は、アミロイドがこの疾患の根底にある発病過程の中核をなすという最も強い論拠である。家族性アルツハイマー病を引き起こす際のAβの重要性を示す、既報のいくつかの病因性変異体が発見されている(Hardy,Nature Genet.1:223−234,1992に概説されている)。ヒトおよび動物の脳での原線維Aβの形成、沈着、蓄積および/または残留を減少させる、除去するおよび/または予防するための療法、薬物または栄養補助剤を提供することは効果的な治療薬として十分に役立つことを、これらの研究のすべてが示唆している。
【0009】
加齢ヒトよび動物の脳における「プラークおよびもつれ」の蓄積
ヒトの脳は、宇宙で最も複雑な器官である。その重さは、わずか3ポンド、または体重の約2%である。だが、脳は、消費されるカロリーの20〜30%、呼吸される酸素の20%、および体内の血流の25%を使用し、その85%が水分からなっている(Daniel G.Amen,M.D..“12 prescriptions for creating a brain healthy life.”情報源:www.amenclinics.com/cybcyb/12−prescriptions−for−creating−a−brain−healthy−life/)。脳には神経細胞(すなわちニューロン)が約1000億、およびシナプスと呼ばれる接合部位が最大1000兆まで存在する(同書)。年をとるにつれて、ヒトの脳は、1日当たり約85,000、すなわち毎秒約1つの皮質ニューロンを失う(Deepak Chopra,M.D.とRudolph Tanzi,Ph.D.“Super Brain. Unleashing the Explosive Power of Your Mind to Maximize Health, Happiness, and Spiritual Well Being.” //www.chopra.com/super−brain−by−deepak−chopra−rudolph−tanziを参照されたい)。20代から始まる脳の加齢とともに、2種類の神経毒性タンパク質のゆっくりとだが慎重な蓄積がある。第1は、「βアミロイドタンパク質」またはAβとして知られている不溶性の(凝集した)特定の神経毒性タンパク質の脳での蓄積である。「
プラーク」形態のβアミロイドタンパク質沈着物(顕微鏡下で脳内の「ミートボール」のように見える)は、健康なニューロンを死滅させる手段であり、海馬依存性の記憶と認知の低下を引き起こすことが明らかになっている。アラン・スノー博士と共同発明者らは、「試験管中のプラーク」(ヒト脳で見られるものと同じ)を生成するための諸方法を開発し特許を取得し、これらの方法を用いて天然の「プラークを低減する」栄養補助成分をスクリーニングし、特定した(米国特許第7,148,001号、その全体を参照によって本明細書に組み込む)。
【0010】
加齢脳に蓄積する第2の神経毒性タンパク質は、「タウタンパク質」として知られており、「
もつれ」として知られているねじれた対らせん状微細線維を形成する。神経原線維もつれはニューロン内側に蓄積してニューロンを死滅させ、顕微鏡下で「乾燥したスパゲッティ束」のように見える。スノー博士の研究室は、試験管中で「もつれ」を形成するための独自方法を開発し、次いでこれらのアッセイを用いて「もつれを阻害する」栄養補助成分(下記の例を参照されたい)を特定した。このように、加齢脳内で「
プラークおよびもつれ」の両方は蓄積し、ニューロンを死滅させ、神経細胞間の接合部位(シナプスと呼ばれる)を崩壊させ、および記憶と認知を徐々に低下させる。「プラークおよびもつれ」の蓄積を脱凝集し、減少させることが可能な化合物または薬剤は、記憶改善と記憶低下の軽減をもたらすことが明らかになっている(Karlnoskiら.Suppression of amyloid deposition leads to long−term reductions in Alzheimer’s pathologies in Tg2576 mice. J.Neurosc.29:4964−4971,2009;Vellasら,Long−term follow−up of patients immunized with AN1792: Reduced functional decline in antibody responders. Current Alz.Res.6:144−151,2009;Morganら,Aβ peptide vaccination prevents memory loss in an animal model of Alzheimer’s disease. Nature 408:982−985,2000;Chenら,A learning deficit related to age and β−amyloid plaques in a mouse model of Alzheimer’s disease. Nature 408:975−979,2000;Janusら,Aβ peptide immunization reduces behavioral impairment and plaques in a model of Alzheimer’s disease. Nature 408:979−985, 2000;Schenkら,Immunization with amyloid−β attenuates Alzheimer−disease like pathology in PDAPP mouse. Nature 400:173−177,1999;Yanamandraら,Anti−tau antibodies that block tau aggregate seeding in vitro markedly decreases pathology and improves cognition in vivo. Neuron 80:402−414,2013; Dumontら,Bezafibrate administration improves behavioral deficits and tau pathology in P3015 mice. Human Molecular Genetics 21:5091−5105,2012; Oddoら,Reduction of soluble Abeta and tau, but not soluble Abeta alone, ameliorates cognitive decline in transgenic mice with plaques and tangles. J.Biol.Chem.281:39413−39423,2006;Santacruzら,Tau suppression in a neurodegenerative mouse model improves memory function. Science 309:476−481,2005)。
【0011】
加齢性記憶障害(AAMI)、次いで軽度認知障害(MCI)に至り、および場合によってはアルツハイマー病に至りうる加齢脳と、そうでない脳の間の唯一の相違点は、脳における「プラークおよびもつれ」の数である。アルツハイマー病の脳は、平方ミリメートル当たり数万から数十万もの「プラークおよびもつれ」が詰め込まれており、ニューロン死を著しく増加させ、シナプス(ニューロン間の接合部位)の消失および同時的な記憶障害と認知機能低下を引き起こす。
【0012】
したがって、βアミロイドとタウは、記憶障害と認知機能低下に直接関係があることが示されている不溶性の「プラークおよびもつれ」として蓄積する、加齢脳における2つの重要なタンパク質である。今のところ、脳でβアミロイドタンパク質「プラーク」とタウタンパク質含有「もつれ」の両方を減少させ除去するために承認されている医薬品はない。
【0013】
加齢イヌおよび加齢ネコの脳における「プラーク」の蓄積
イヌおよびネコも、年をとるにつれてその脳に、記憶低下と認知機能障害に関与すると考えられている「プラーク」(そして、より少ない程度で「もつれ」)を蓄積する。ヒトの脳に蓄積するのと同じβアミロイドタンパク質(すなわち「プラーク」)とタウタンパク質(「もつれ」)が、高齢イヌにおいても蓄積し(Papoiannouら,Immunohistochemical investigation of the brain of aged dogs.I.Detection of neurofibrillary tangles and of 4−hydroxynonenal protein,an oxidative damage product,in senile plaques.Amyloid 8:11−21,2001;Uchidaら,Amyloid angiopathy with cerebral hemorrhage and senile plaque in aged dogs. Nihon Juigaku Zasshi 52:605−11,1990)、および高齢ネコにおいても蓄積する(Gunn−Mooreら,Cognitive dysfunction and the neurobiology of ageing in cats. J Small Anim.Pract.48:546−53,2007;Nakamuraら.Senile plaques in very aged cats.Acta Neuropath.91:437−9,1996)。
【0014】
イヌの認知機能障害(CCD)(認知機能障害症候群またはCDSとしても知られている)は、ヒトで見られるような認知症またはアルツハイマー病の症状を示すイヌ(およびネコ)の一般的な疾患である。CCDは、イヌ(およびネコ)の精神機能を低下させる脳での病理変化を生じさせ、記憶、運動機能および若年期の訓練からの学習行動の喪失をもたらす。イヌおよびネコの脳において、問題の原因はここでも、脳で「プラーク」を形成するβアミロイドタンパク質またはAβである。イヌが年をとるにつれて、ますます多くの「プラーク」が蓄積し、神経細胞が死滅する。障害の初期症状が軽度であっても、症状は経時的に徐々に悪化し、「認知機能低下」として分かってもくる。アミロイド「プラーク」は、高齢イヌでは5〜7歳頃に、ネコでは10歳頃(それらの15〜20年の平均寿命に比例する)に生じる。実際に、認知機能障害症候群の臨床徴候は、11歳を超えるイヌの50%で見つかり、15歳までにイヌの68%は少なくとも1つの徴候を示す。イヌは家の見慣れた場所でまごつくことが多くなり、家の一か所で長い時間を過ごし、呼びかけや命令に反応しなくなり、睡眠パターンが不規則になる。
【0015】
「プラーク」を含有するβアミロイドタンパク質は、他の高等哺乳動物、例えばサル、クマ、ラクダ、およびウマの脳でも特定されている(Nakamuraら,Histopathological studies of senile plaques and cerebral amyloidosis in cynomolgus monkeys.J Med Primatol.27:244−52,1998;Capucchioら,studies.J Comp Pathol 142:61−73,2010;Nakamuraら,Senile plaques in an aged two−humped (Bactrian) camel (Camelus bactrianus), Acta Neuropathol 90:415−8,1995; Uchidaら,Senile plaques and other senile changes in the brain of an aged American black bear,Vet.Pathol.32:412−4,1995)。
【0016】
タウオパチーと「もつれ」
タウは1970年代中頃に微小管結合タンパク質として発見された(Weingarten,1975)。ニューロンおよび他の細胞における微小細管安定化因子であること以外に、タウはその後、細胞分化、分極および軸索輸送において重要な役割を果たすことが判明した。正常なタウは微小細管に結合した可溶タンパク質であるが、現在タウオパチーとして知られている一連の神経変性疾患において、タウは病原性で不溶性の原線維タンパク質として蓄積する。これらのタウ封入体は、認知症の重症度およびこれらの神経変性疾患の臨床兆候を調節すると思われる。タウオパチーとしては、アルツハイマー病、ピック病、進行性核上性麻痺と大脳皮質基底核変性症などのタウ封入体(FTLD−タウ)による前頭側頭葉変性症、嗜銀顆粒性認知症、一部のプリオン病、筋委縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合、慢性外傷性脳障害、および一部の遺伝性パーキンソン病などの疾患が挙げられる(V.M.Leeら,Ann.Rev.Neurosci. 24:1121−1159,2001;B.Omaluら,Neurosurgery 69(1):173−83,2011;A.Rajputら,Neurology 67:1506−1508,2006;G.Santpere and I. Ferrer, Acta Neuropathol.117:227−246,2009)。
【0017】
脳で増加する原線維タウの最も顕著な影響の一つは、短期記憶、すなわち、ごく最近格納された記憶を直ちに思い出す能力が徐々に劣化することである(P.Giannakopoulosら,Neurology 60:1495−1500,2003)。これらの障害のための治療がないので、この病原性タンパク質を目標とし、記憶障害を改善することができる新規発明を見つけることは重要である。
【0018】
外傷性脳損傷(TBI)、脳震盪、頭部外傷および慢性外傷性脳障害(CTE)において「もつれ」は脳に蓄積する
タウタンパク質からなる脳の「もつれ」はまた、頭部への強打後に脳で徐々に蓄積し、脳震盪、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、および爆風による外傷性脳損傷(単一爆風によって引き起こされた外傷性頭部損傷を有する兵士と軍人に認められる)が考慮される。映画「コンカッション」およびNFL選手協会は、繰り返される脳震盪および/または頭部への強打(外傷性脳損傷またはTBIとして知られている)の後で選手に認められる認知症型の行動をすべて検討している。意識消失は脳震盪の臨床的特質であるが、診断を下すのに必要とされない。他の症状としては、混乱、見当識障害、不安定さ、めまい、頭痛、および視覚障害が挙げられる。
【0019】
外傷性脳損傷に対する長期的な影響は、慢性外傷性脳障害(CTE)と呼ばれ、これはタウオパチーの型(すなわち、脳でのタウタンパク質を含有する「もつれ」)である。CTEは、即座に症状を引き起こさない、頭部への衝撃による軽い脳震盪を含む、繰り返し頭部外傷を患った人に認められる進行性変性疾患である。この疾患は、最初にボクシング歴を有する人たちに認められたので、以前はボクサー認知症(DP)、すなわち「パンチドランク」と呼ばれていた。現在、CTEは、フットボールを行うNFL選手を含むプロスポーツ選手、頭部損傷をうけやすいスポーツ選手、例えばアイスホッケー、ラグビー、スキー、スケートボーディング、スタントパフォーミング、ブルライディング、ロデオ、および参加者が繰り返し頭部外傷を経験する他のすべてのコンタクトスポーツを行う人たちの脳で認められている。CTEを有する人は、記憶障害、攻撃行動、混乱および抑うつなどの認知症の多くの徴候を示し、徴候は外傷から数年後、または数十年後に現れることもある。2015年9月に、退役軍人省およびボストン大学の研究者らは、検査したNFLフットボール選手うちの96%に、およびすべてのフットボール選手のうちの79%にCTEが確認されたことを発表した(Jason Breslow, New:87 deceased NFL players test positive for brain disease. Frontline January 9,2016)。
【0020】
顕微鏡下でその神経病理は明白である。すなわち、アルツハイマー病患者の脳に認められる「もつれ」と同様の、タウタンパク質からなる「もつれ」の蓄積が主に存在する。βアミロイドタンパク質沈着物(すなわち「プラーク」)も一部存在するが、これは、通常は珍しく、脳での「もつれ」の蓄積よりも少ない特徴である。これらの知見は、頭部への強打がほぼ即座に脳に「もつれ」蓄積を引き起こすことがあり、次いで記憶障害および認知機能低下を含む認知症様症状を引き起こすことを示唆している。脳での「もつれ」の減少および/または排除に役立ち得る栄養補助食品を特定すれば、すべての種類のスポーツ選手、NFL選手、軍人およびその兵士が毎日摂取する驚くべき栄養補助剤になるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
開示
本発明の一目的は、ヒトにおいて脳の「プラーク」および「もつれ」を予防、減少および/また排除するために、認知および記憶の栄養補助剤の開発用のキャッツクローおよびウーロン茶の抽出物からの植物抽出物の組み合わせを提供することである。本発明は、同じ植物源由来であっても種々の植物抽出物にはプラークおよびもつれを溶解するための異なる効果があり、ウーロン茶抽出物、特にLOTEは、キャッツクロー抽出物と組み合わせると、他の植物抽出物または各々単独の抽出物と比較して、予想外の驚くべき活性を示すという驚くべき発見に基づいている。
【0022】
本発明の別の目的は、脳のアミロイド「プラーク」を減少させ、認知、記憶、短期記憶、注目と集中を改善する高齢イヌ用のペットフード栄養補助剤を生成するために、キャッツクローとウーロン茶の抽出物からの植物抽出物の組み合わせを提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、脳のアミロイド「プラーク」を減少させ、認知、記憶、短期記憶、注目および集中を改善する高齢ネコ用のペットフード栄養補助剤を生成するために、キャッツクローとウーロン茶の抽出物からの植物抽出物の組み合わせを提供することである。
【0024】
キャッツクローを用いて種々の慢性病を処置できることをいくつかのヘルスケア提供者が示唆しているが、タウオパチーで生じるようなタウ原線維の形成、沈着、蓄積および/または残留の処置のためのこの化合物の何らかの用途または使用の示唆はどこにもない。
さらに、いくつかの他の化合物が、例えば、外傷性脳損傷(TBI)、脳震盪(大半の運動選手および軍人/兵士で観察される)、心的外傷後ストレス障害、頭部外傷、頭部への衝撃(一撃または繰り返しのいずれか)、および慢性外傷性脳障害(CTE)を予防および/または処置するために、タウオパチーの処置においてキャッツクローと組み合わせて相乗効果または補足効果を有しうることはどこにも示唆されてない。
【0025】
本発明の別の目的は、外傷性脳損傷(TBI)、脳震盪(大半の運動選手および軍人/兵士で観察される)、心的外傷後ストレス障害、頭部外傷、頭部への衝撃(一撃または繰り返しのいずれか)、および慢性外傷性脳障害(CTE)を有する人に認められるような、脳の「もつれ」の効果的な防止剤および/または軽減剤を生成するために、キャッツクローとウーロン茶の抽出物からの植物抽出物の組み合わせを提供することである。
【0026】
本発明は、1)タウ原線維の形成を阻害する(初期段階から中期段階のタウオパチー患者にとって重要)、2)タウ原線維の増殖を阻害する(初期段階から中期段階のタウオパチー患者にとって重要)、および3)予め形成されたタウ原線維の溶解/崩壊を引き起こす(後期段階のタウオパチーにとって重要)ために、ウーロン茶植物抽出物との特定の組み合わせでのキャッツクロー(ネコの爪)植物抽出物の有効性を明確に示す。
【0027】
本発明の一目的は、有益な治療効果を達成するために、以下に開示する、ウーロン茶抽出物と組み合わせて、タウオパチーでの沈着、蓄積および/または残留を処置/阻害するために、キャッツクロー(ウニャ・デ・ガトまたはネコの爪とも呼ばれる)由来の内部樹皮および/または根を用いることである。キャッツクローまたはネコの爪は、Paraguayo、Garabato、Garbato casha、Tambor huasca、Una de gavilan、Hawk’s claw(タカの爪)、Nail of Cat(ネコの爪)、およびNail of Cat Schulerとも呼ばれるがこれらに限定されない。
【0028】
本発明の別の目的は、その臨床症状を問わず、タウ原線維の形成、沈着、蓄積、および/または残留を阻害するために、ウーロン茶抽出物とともにキャッツクローを使用すること(市販の供給源を問わず、およびヒトが摂取するための最終形態、すなわち、丸薬、錠剤、カプレット剤、軟ゼラチンカプセル剤および硬ゼラチンカプセル剤、薬用ドロップ剤、サシェ剤、カシェ剤、ベジカプセル剤、液滴剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、ティーバッグ剤、エアゾール剤(固体として、もしくは液状媒質中で)、坐剤、無菌注射用製剤、無菌包装粉剤、樹皮束および/または樹皮粉末を問わず)を提供することである。
【0029】
以下の開示から明らかになるように、本発明のこれらおよび他のそのような目的は、本明細書に開示される本発明によって満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0030】
用途
本発明の用途は、脳の「プラーク」(およびより少ない程度まで「もつれ」)を生じ、イヌの認知機能障害(CCD)として定義されている認知症を有する高齢イヌおよびネコに有益であるキャッツクローからの植物抽出物および特定のウーロン茶抽出物の使用を提供する。
【0031】
本発明者らは、天然に存在する植物性産物である、植物のキャッツクローまたはネコの爪からの内部樹皮および/または根を以前に発見し、それをPTI−00703(登録商標)と呼び、1998年11月19日付けのWIPO国際公開第98/51302号、表題‘Composition and Methods for Treating Alzheimer’s Disease and other Amyloidoses’(アルツハイマー病および他のアミロイドーシスを処置するための組成物および方法)に開示してきた。同公開は、その全体を参照により本明細書に組み込む。それに開示されているように、この植物化合物は単独で、アミロイド沈着物および他の蓄積物を崩壊させおよび/または溶解することにおいて驚くべき効力を有し、アルツハイマー病、2型糖尿病、および他のアミロイドーシスにおけるアミロイド形成の強力な阻害物質であると考えられている。
【0032】
しかし、我々のデータはここで、本明細書に開示される特定のウーロン茶抽出物(「LOTE」と呼ぶ)とのPTI−00703(登録商標)の製剤が、タウオパチー、および「もつれ」が脳に認められる疾患(例えばTBI、脳震盪を有するヒトでのCTE、頭部損傷および/または頭部外傷において)、ならびに例えば高齢イヌおよびネコにおいて過剰な「脳でのプラーク」を含む疾患(イヌの認知機能障害)の処置に
驚くべき、これまでに思いも寄らなかった強力な効力を有することを示す。
【0033】
本発明は、アミロイドーシスの治療介入のためのウーロン茶抽出物および「703」または「PTI−703」と呼ばれるキャッツクロー抽出物PTI−00703(登録商標)のうちの1つまたは複数を含む混合組成物の使用に関する。種々の市販製剤に含まれる、ウーロン茶抽出物、および/またはPTI−00703(登録商標)の混合組成物の使用は、アミロイド原線維形成の阻害およびアミロイド原線維の脱凝集に対して予想外の効果を示す。
【0034】
これらのニーズに対する本発明の用途は、本発明が、タウオパチー、アミロイド疾患、脳に「プラークおよび/またはもつれ」を有するヒト患者、および外傷性脳損傷(TBI)、脳震盪(大半の運動選手および軍人/兵士で観察される)、心的外傷後ストレス障害、頭部外傷、頭部への衝撃(一撃または繰り返しのいずれか)、および慢性外傷性脳障害(CTE)を有する人に利益をもたらすために、ウーロン茶抽出物とともに、キャツクローの内部樹皮と根元部からの抽出物の使用を効果的に提供する唯一の系であるという点で特に有益である。
【0035】
これらのニーズに対する本発明の用途は、タウ原線維形成を効果的に阻害し、タウ増殖を阻害し、原線維タウ−プロテオグリカン相互作用、原線維タウ−グリコサミノグリカン相互作用を阻害し、および予め形成されたタウ原線維を溶解および/または崩壊させる、ウーロン茶抽出物と組み合わせたキャッツクローの新たに発見された能力により、本発明が、タウオパチーのヒト患者に利益をもたらすために、ウーロン茶抽出物とともに、キャッツクローの内部樹皮および根元部からの抽出物の使用を提供する唯一の系であるという点で特に有益である。
【0036】
コーヒーおよびマテの抽出物とともに25を超える茶の抽出物を、種々のアッセイを用いて、インビトロでアミロイド原線維凝集の阻害および脱凝集についてスクリーニングした。1つのリードウーロン茶抽出物が選択され、PTI−00703(登録商標)と組み合わせて試験された。この特定のリードウーロン茶抽出物(LOTE)とPTI−00703(登録商標)との組み合わせが茶抽出物またはPTI−00703(登録商標)単独よりもアミロイド原線維形成を阻害したことが判明し、およびLOTEとPTI−00703(登録商標)の組み合わせは予め形成されたアミロイド原線維を急速に(15分以内に)脱凝集する能力も有したことが判明した。
【0037】
本発明は、タウオパチーの治療介入のためのウーロン茶抽出物および「703」または「PTI−703」と呼ばれるキャッツクロー抽出物PTI−00703(登録商標)のうちの1つまたは複数を含む混合組成物の使用にも関する。種々の市販製剤内に含まれる、ウーロン茶抽出物、および/またはPTI−00703の混合組成物の使用は、タウ原線維形成の阻害およびタウ原線維の脱凝集に対して予想外の効果を示す。
【0038】
コーヒーおよびマテの抽出物とともに25を超える茶の抽出物を、インビトロでタウ原線維凝集の阻害および脱凝集についてスクリーニングした。1つのリードウーロン茶抽出物が選択され、PTI−00703(登録商標)と組み合わせて試験された。この特定のリードウーロン茶抽出物(LOTE)とPTI−00703(登録商標)との組み合わせが茶抽出物またはPTI−00703(登録商標)単独よりもタウ原線維形成を阻害し、および予め形成されたタウ原線維を急速に脱凝集する能力も有することがわかった。
【0039】
この特定のリードウーロン茶抽出物(LOTE)とPTI−00703(登録商標)との組み合わせがβアミロイドタンパク質原線維の形成をウーロン茶抽出物またはPTI−00703(登録商標)単独よりも多く阻害し、および予め形成されたアミロイド原線維を急速に脱凝集する能力も有することもわかった。
【0040】
好ましい薬物は、キャッツクローの治療有効量を約10〜約1,000mg/kg患者体重の範囲での用量で好ましくは有し、より好ましくは約10〜約100mg/kg患者体重の範囲で有する。
【0041】
組成物は、リードウーロン茶抽出物(LOTE)とPTI−00703(登録商標)の混合組成物の治療有効量を約0.1〜約500mg/kg患者体重の範囲での用量で好ましくは有し、より好ましくは約1.0〜約100mg/kg患者体重の範囲で有する。
【0042】
好ましい医薬品は、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤も有し得る。医薬品は、50%を超える原線維阻害活性または効力を好ましくは有する。
【0043】
植物物質は好ましくは、市販品の丸薬、錠剤、カプレット剤、軟ゼラチンカプセル剤および硬ゼラチンカプセル剤、薬用ドロップ、サシェ剤、カシェ剤、ベジカプセル剤、液滴剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、ティーバッグ剤、エアゾール剤(固体として、もしくは液状媒質中で)、坐剤、無菌注射用製剤、無菌包装粉剤、樹皮束および/または樹皮粉末から成り、それらはウーロン茶抽出物と組み合わせて、キャッツクロー、その抽出物もしくは誘導体を含有する(および乾燥粉末キャッツクロー、その抽出物または誘導体を含む市販のゼラチン被覆カプセル剤から取り出されてもよい)。
【0044】
本発明の一目的は、ウーロン茶抽出物と組み合わせて、アミロイドーシスにおけるアミロイドの沈着、蓄積および/または残留を処置する/阻害するために、キャッツクロー(ウニャデガトまたはネコの爪とも呼ばれている)からの内部樹皮および/または根を用いて、以下に開示する有益な治療効果を達成することである。Uncaria tomentosa(ウンカリアトメントーサ)またはキャッツクローは、Paraguiayo、Garabato、Garbato casha、Tambor huasca、Una de gavilan、Hawk’s claw(タカの爪)、Nail of Cat(ネコの爪)、およびNail of Cat Schulerとも呼ばれているが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の別の目的は、その臨床症状を問わず、アミロイド原線維の形成、沈着、蓄積および/または残留を阻害するために、ウーロン茶抽出物とともにキャッツクローを使用すること(市販の供給源を問わず、およびヒトが摂取するための最終形態、すなわち、丸薬、錠剤、カプレット剤、軟ゼラチンカプセル剤および硬ゼラチンカプセル剤、薬用ドロップ、サシェ剤、カシェ剤、ベジカプセル剤、液滴剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、ティーバッグ剤、飲料剤、エアゾール剤(固体として、もしくは液状媒質中で)、坐剤、無菌注射用製剤、無菌包装粉剤、樹皮束および/または樹皮粉末を問わず)を提供することである。
【0046】
これらのニーズに対する本発明の用途は、アミロイド原線維の形成を最も著しく効果的に阻害し、アミロイド原線維増殖を阻害し、および予め形成されたアミロイド原線維を分解および/または崩壊させる、ウーロン茶抽出物と組み合わせたキャッツクローの新たに発見された能力により、本発明が、アミロイドーシスのヒト患者および高齢動物(高齢になるにつれて脳にアミロイド「プラーク」が生じるイヌおよびネコなど)に利益をもたらすために、特定のウーロン茶抽出物とともに、キャッツクローの内部樹皮および根元部からの抽出物の使用を提供する唯一の系であるという点で特に有益である。
【0047】
ウーロン茶抽出物と組み合わせて、ウンカリア属、トメントーサ種の植物由来の植物物質の治療有効量を患者に投与するステップを含む、患者においてタウオパシーを処置する方法も開示される。植物物質は、経口カプセル剤、飲料剤、もしくは任意の他の方法など経口的に、またはエアゾールスプレーにより、または非経口的な注射剤形もしくは注入剤形で好ましくは投与される。
【0048】
本特許または出願ファイルには、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれる。カラー図面とともに本特許または特許出願公開のコピーは、要求および必要な料金の支払いに応じて特許庁から提供される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】リードウーロン茶抽出物(LOTE)およびPTI−00703(登録商標)とともにインキュベートした後、チオフラビンT蛍光光度法およびコンゴーレッド結合によって測定したAβ1〜42凝集のグラフである。
【
図2A-2C】LOTEおよびPTI−00703(登録商標)を加えた、または加えなかったAβ原線維のコンゴーレッド、チオフラビンS、および電子顕微鏡写真の代表的な画像である。
【
図3】LOTEおよびPTI−00703(登録商標)とともにインキュベートした後、チオフラビンT蛍光光度法およびコンゴーレッド結合によって測定したAβ1〜40凝集のグラフである。
【
図4】LOTEおよびPTI−00703(登録商標)の濃度を上げて処置した後の、Aβ1〜40の円偏光二色性スペクトルである。
【
図5A-5G】タウ凝集阻害物資のスクリーニング用にTauRD原線維の特性を明らかにするための種々の内部試験からのデータである。
【
図6】複数の茶抽出物とともにインキュベートした後、チオフラビンS蛍光光度法で測定したタウ凝集のグラフである。
【
図7】LOTEおよびPTI−00703とともにインキュベートした後、チオフラビンS蛍光光度法によって測定したタウ凝集のグラフである。
【
図8】LOTEで処置した後、円偏光二色性分光法で測定したタウ二次構造のグラフである。
【
図9】PTI−00703およびLOTEによるタウ原線維形成の電子顕微鏡写真である。
【
図10】PTI−00703およびLOTEで処置した予め形成されたタウ原線維の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
「治療有効量」は、疾患を処置するために対象または動物に投与される場合、その疾患の望ましい程度の処置に影響を及ぼすのに十分な量を一般に意味する。「治療有効量」または「治療的に有効な投与量」は、タウ原線維の形成、沈着、蓄積および/または残留を好ましくは阻害し、減少し、崩壊し、分解し、またはこれらの状態を伴う疾患、例えばタウオパチーを、無処置の対象と比較して、少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%、さらに好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも80%処置する。哺乳動物対象の処置のための本発明の化合物またはその組成物の有効量は、約0.1〜約1000mg/kg対象体重/日、例えば約1〜約100mg/kg/日、特に約10〜約100mg/kg/日である。開示されている組成物の広い範囲の投与量は、安全かつ効果的であると考えられている。
【0051】
本発明の組成物による処置に適した「アミロイド疾患」または「アミロイドーシス」は、アミロイド原線維の、特に、βアミロイドタンパク質すなわちAβ、AAアミロイド、ALアミロイド、IAPPアミロイド、PrPアミロイド、α2−マイクログロブリンアミロイド、トランスサイレチン、プレアルブミンおよびプロカルシトニンからなる群から選択されるアミロイドタンパク質、特にAβおよびIAPPアミロイドの原線維の形成、沈着、蓄積および/または残留と関連する疾患である。そのような疾患に適しているのは、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知障害(MCI)、イヌの認知機能障害(CDD)、外傷性脳損傷(TBI)、慢性外傷性脳障害(CTE)、脳震盪、頭部外傷、頭部への一撃と複数の衝撃、心的外傷後ストレス障害、ボクサー認知症、多系統委縮症、封入体筋炎、オランダ型アミロイドーシスによる遺伝性脳出血、ニーマン・ピック病C型、脳βアミロイド血管障害、皮質基底核変性症に関連する認知症、2型糖尿病のアミロイドーシス、慢性炎症のアミロイドーシス、悪性腫瘍と家族性地中海熱のアミロイドーシス、多発性骨髄腫とB細胞疾患のアミロイドーシス、プリオン病のアミロイドーシス、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・ストロイスラー症候群、クールー病、スクレイピー、手根管症候群に関連するアミロイドーシス、老人性心アミロイドーシス、家族性アミロイドポリニューローパチー、および内分泌腫瘍に関連するアミロイドーシスが挙げられる。
【0052】
「原線維形成」は、タウ原線維、微細線維、封入体、沈着物、封入体などの形成、沈着、蓄積および/または残留を指す。
【0053】
「原線維形成の阻害」は、そのようなアミロイド「プラーク」またはタウ「もつれ」原線維様沈着物の形成、沈着、蓄積および/または残留の阻害を指す。
【0054】
「原線維または原線維形成の崩壊」は、通常は顕著なβシート二次構造で存在する予め形成されたβアミロイドまたはタウ原線維の崩壊を指す。本発明の化合物によるそのような崩壊は、本明細書に提示する実施例によって示されるように、種々の方法、例えば円偏光二色性分光法、チオフラビンS蛍光光度法、SDS−PAGE/ウエスタンブロッティング、または陰性染色電子顕微鏡観察によって評価されるβアミロイドまたはタウ原線維の著しい減少または分解を含むこともある。
【0055】
「哺乳動物」は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方、例えば伴侶動物(イヌ、ネコなど)、実験動物(例えばマウス、ラット、モルモットなど)および家畜(ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなど)を含む。
【0056】
「プラーク」は、脳の種々の領域(海馬、大脳皮質、前頭部皮質その他を含む)で認められるβアミロイドタンパク質またはAβからなるミートボールのような「アミロイド沈着物」を指し、それは脳の老化、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病の病理学的特徴であり、およびイヌ、ネコ(イヌの認知機能障害またはCDD)、サル、北極熊、ウマなどの加齢哺乳動物で認められる。脳でのアミロイド「プラーク」の蓄積は、神経変性、シナプスとニューロン間の接合部位の消失、認知機能低下、記憶の低下と喪失、および注目と集中の喪失をもたらすと考えられている。
【0057】
「もつれ」は、脳の種々の領域(海馬、大脳皮質、前頭部皮質その他を含む)で認められるタウタンパク質からなる「ひからびた」スパゲッティのような「もつれ沈着物」を指し、それは脳の老化、軽度認知障害(MCI)、軽度認知障害、アルツハイマー病、脳震盪、外傷性脳損傷(TBI)、頭部への一撃もしくは繰り返し衝撃、心的外傷後ストレス障害、慢性外傷性脳障害(CTE)などの病理学的特徴である。
【0058】
本発明の化合物による処置に適した「タウオパチー」も、タウ原線維の形成、沈着、蓄積、または残留に関連する疾患である。適した疾患としては、アルツハイマー病、ピック病、進行性核上性麻痺と大脳皮質基底核変性症などのタウ封入体(FTLD−タウ)による前頭側頭葉変性症、嗜銀顆粒性認知症、一部のプリオン病、グアムの筋萎縮性側索硬化症/パーキンソ認知症複合(Lytico Bodig病とも呼ばれる)、ボクサー認知症、慢性外傷性脳障害、パーキンソン病と特にパーキンソン病のいくつかの遺伝形態、もつれ−優勢認知症(アルツハイマー病と同様の神経原線維もつれを含むが、アミロイドプラークは含まない)が挙げられる。
【0059】
タウ原線維は、多様であるが、特定の細胞内または細胞外のタンパク質沈着物のグループを指す一般的名称であり、すべてが共通の形態的性質、染色特性、およびX線回折スペクトルを有する。
【0060】
「処置する」または疾患の「処置」は、その疾患にかかりやすいかもしれないが、まだその疾患の症状を体験してない、または示していない哺乳動物においてその疾患が起こるのを防ぐことを含む(予防処置)。処置は、たとえば予め形成されたタウ原線維の崩壊により、疾患を阻害する(その発症を遅らせる、または抑える)こと、疾患の症状または副作用の軽減をもたらす(緩和療法を含む)こと、および疾患を軽減する(疾患を退行させる)ことを意味することもある。処置は絶対的である必要はない。そのような予防処置の1つは、軽度認知障害(MCI)を処置するための本開示の化合物の使用でありうる。
【0061】
「ウニャデガト」(スペイン語で)または「ネコの爪」(英語で)として知られている植物ウンカリアトメントーサは、ペルーのアマゾン熱帯雨林に生育する木質つる植物を指す。生育が遅いこのつる植物は十分に成長するのに20年かかり、自生樹木に取りついてそれに巻きつくため、100フィートを超える長さに成長することができる。この植物は、高度2000〜8000フィートの山麓の丘陵地帯で豊富に見られる。つるが「ネコの爪」と呼ばれるのは、その葉の根元から突き出る特徴的な湾曲した爪状のとげのためである。キャッツクローは、免疫支持性、抗炎症性、抗ウイルス性、抗変異原性および抗酸化の特性を有すると考えられている。抗炎症性特性は、例えば、関節炎、リウマチ、滑液包炎および痛風の処置に有益であると思われる。理論に束縛されることなく、関節炎痛を処置する際の有益な効果は、消化管を洗浄し、および体から毒素を除去するのに役立つその能力に一部起因しうると思われる。さらに、キャッツクローまたはネコの爪は痛みを軽減すると予想され、例えば、化学療法、放射線治療およびAZT使用に付随する痛みを和らげるのに役立つことが予想される。
【0062】
キャッツクローまたはネコの爪は、ウイルス感染を初期段階で止め、AID患者において日和見感染症に抵抗し、一部の皮膚がんと嚢胞のその成長し得る大きさを減少させるのに役立つことも予想される。キャッツクローを用いて、種々の病気、例えば、癌、AID、クローン病、呼吸器感染症、アレルギー、ヘルペス、前立腺問題、ループス、エプスタイン・バーウイルス、慢性疲労症候群、および種々の胃腸障害を処置することもできる。
【0063】
キャッツクローに関するさらなる付加的な情報と背景について、本発明者らのWIPO国際公開第98/51302号も参照されたい。同書はその全体を参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
さらなる態様および利用法
本発明の別の実施形態は、患者への投与に先立ち、1種または複数種の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤中にキャッツクローおよびウーロン茶抽出物を含む医薬混合物を調製することである。
【0065】
別の実施形態において、任意の形態で商業的に入手されるキャッツクローは、ラクトース、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水シロップ、メチルセルロース、メチルとプロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱物油を含む適切な担体、賦形剤および希釈剤を用いてさらに調節されてよい。製剤は、潤滑剤、湿潤剤、乳化と懸濁化剤、保存剤、甘味剤または香味剤をさらに含んでよい。本発明の組成物は、患者への投与後に活性成分の迅速な応答、持続した応答または遅延した応答をもたらすように調製されてもよい。組成物は、好ましくは単位剤形で調製され、各用量は約1〜約10,000mgのキャッツクロー(またはその活性成分)、より一般的には約500〜約2,000mgのキャッツクロー(またはその活性成分)を含有する。
【0066】
しかし、当然のことながら、投与される治療用量は、処置される臨床状態、タウ原線維の蓄積に冒されているもしくは冒されていると疑われる臓器もしくは組織、および選択される投与経路を含む関連する状況に照らして医師によって決定されるであろう。したがって、上記の投与量範囲は、多少なりとも本発明の範囲を限定するものではない。
【0067】
「単位剤形」という用語は、ヒト対象および他の動物のための単位投与として適した物理的に個別の単位を指し、各単位は、適切な医薬担体と関連して、所望の治療効果をもたらすように算出された所定量の活性物質を含有する。
【0068】
タウ原線維形成を効果的に阻害し、タウ増殖を阻害し、原線維タウ−プロテオグリカン相互作用、原線維タウ−グリコサミノグリカン相互作用を阻害し、および予め形成されたタウ原線維を溶解および/または崩壊させる、ウーロン茶抽出物と組み合わせたキャッツクローの新たに発見された能力により、キャッツクローの内部樹皮および根元部からの抽出物、およびその混合物の使用は、タウオパチーのヒト患者に有益である。
【0069】
組成物および投与形態
一般に、単離された、および/または精製されたキャッツクローおよびウーロン茶植物抽出物は、当技術分野で既知の通常様式のいずれかによって、単独で、または本開示の抽出物の少なくとも一つと組み合わせて、治療有効量で投与される。投与は、以下の経路の1つで行われる:経口経路、局所的経路、および合成経路(例えば、経皮的に、鼻腔内にもしくは座薬によって)、または非経口経路(例えば、筋肉内に、皮下に、もしくは静脈内注射で)。組成物は、錠剤、丸薬、カプセル剤、半固形剤、粉末剤、徐放性製剤、液剤、懸濁剤、エリキシル剤、エアゾール剤、または任意の他の適当な組成物の形態をとることができ、および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む。好適な賦形剤は当業者にとって周知であり、それら、および組成物の調製方法は、標準参考文献Alfonso A R:Remington’s Pharmaceutical Sciences,17版編.,Mack Publishing Company, Easton, Pa,1985に見出すことができる。適切な液状担体としては、特に注射剤用に、水、水性食塩水、デキストロース水溶液、およびグリコールが挙げられる。
【0070】
特に、化合物(複数可)は、例えば、錠剤、トローチ剤、薬用ドロップ、水性もしくは油性懸濁剤、分散性粉末剤もしくは顆粒剤、乳剤、硬もしくは軟カプセル剤、シロップ剤またはエリキシル剤として経口投与されてよい。一実施形態において、唯一のそのような化合物が、任意の特定の剤形で投与される。経口使用を目的とする組成物は、栄養補助組成物の製造で当技術分野で既知いずれの方法で調製されてよく、栄養補助的に洗練され、かつ美味の製剤を提供するために、そのような組成物は、甘味剤、香味剤、着色剤および保存料からなる群から選択される1種または複数種の薬剤を含有してよい。
【0071】
錠剤は、錠剤の製造に適している非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合で植物抽出物を含有する。これらの賦形剤としては、例えば、不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;造粒剤および崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプンまたはアルギン酸;結合剤、例えば、トウモロコシデンプン、ゼラチンまたはアラビアゴム;および潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸またはタルク挙げられる。錠剤は、被覆されていなくてもよく、または既知の技術によって被覆されて消化管での崩壊および吸収を遅らせ、それによって長時間にわたり持続作用をもたらし得る。例えば、グリセロールモノステアレートもしくはグリセロールジステアレートのような時間遅延材料が使用されてよい。経口使用のための製剤は硬ゼラチンカプセルとして調製されてよく、この場合化合物は不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンと混合され、または軟ゼラチンカプセルとして調製されてもよく、この場合活性成分は水もしくは油性媒質、例えばピーナッツ油、流動パラフィンもしくはオリーブ油と混合される。
【0072】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に適した賦形剤と混合して、化合物を含む。そのような賦形剤としては、例えば、懸濁化剤、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムとアラビアゴム;および天然起源のホスファチドである分散剤と湿潤剤、例えばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物;例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、またはエチレンオキシドと長連鎖脂肪族アルコールの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはエチレンオキシドと、ヘキシトールなどの脂肪酸由来の部分エステルの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール無水物由来の部分エステルの縮合生成物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエ−トが挙げられる。水性懸濁剤はまた、1種または複数種の保存剤、例えばエチルもしくはn−プロピルp−ヒドロキシベンゾアート、1種または複数種の着色剤、1種または複数種の香味剤、および/またはショ糖もしくはサッカリンなどの1種または複数種の甘味剤を含んでもよい。
【0073】
油性懸濁剤は、抽出物を植物油中に、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、もしくはココナツ油中に、または流動パラフィンなどの鉱物油中に懸濁することによって調製されてよい。油性懸濁剤は、増粘剤、例えば蜜ろう、ハンドパラフィンまたはセチルアルコールを含んでよい。以下に記載のものなどの甘味剤、および香味剤を加えて、美味な経口製剤を提供できる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を加えることによって保存されてよい。
【0074】
水を加えることによる水性懸濁液の調製に適した分散性粉末剤および顆粒剤は、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁化剤および1種または複数種の保存剤との混合物で活性化成分を提供する。適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤は、すでに上に記載のものによって例示される。さらなる賦形剤、例えば甘味料、香味料および薬剤が存在することもありえる。
【0075】
植物抽出物は、水中油型乳剤の形態でもありうる。植物油、例えばオリーブ油もしくはラッカセイ油の油性相、または鉱物油、例えば流動パラフィン、あるいはそれらの混合物の油性相。適切な乳化剤は、天然起源のゴム、例えばアラビアゴムもしくはトラガカントゴム、天然起源のホスファチド、例えばダイズ、レシチン、および脂肪酸とヘキシトール無水物由来のエステルまたは部分エステル、例えばエチレンオキシドとソルビタンエステル、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、および前述の部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートでありえる。乳剤は、甘味料および香味剤を含んでもよい。シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味料、例えば、グリセロール、ソルビトールまたはショ糖で調製されてよい。そのような製剤は、保護剤、保存剤および香味料と着色剤を含んでもよい。
【0076】
以下の非限定的な実施例は、例示としてのみ挙げられており、本開示を限定するものとみなすべきではない。本開示の多数の明らかな変更は、その趣旨または範囲から逸脱することなく可能である。
【0077】
実施例
組成物の調製
本研究のために、市販の茶葉または抽出物を、種々の供給業者から入手した。茶葉から抽出物を作るために、2gの茶葉を100℃の脱イオン水中に20分間、ときどき混合しながら抽出した。茶抽出物を10μm未満のカットフィルターを通して濾過して、大きい粒子を除去した。抽出物をドライアイス/エタノール中で急速凍結し、次いで凍結乾燥して乾燥濃縮粉末を得た。乾燥粉末を秤量し、DMSO中に再懸濁して、100mg/mLの濃縮原液を作製した。DMSO濃度が最終反応中で0.28%未満になるように原液を凝集反応液中に希釈した。
【0078】
ウーロン茶(AuNutra Industries Inc.,Chino,CA)からLOTEを調製した。PTI−00703(登録商標)は、ペルー産のキャッツクロー(RFI Ingredients,Blauvelt,NY)の内部樹皮の水抽出から作られた粉末抽出物である。PTI−00703(登録商標)を調製する方法は、例えばWIPO国際公開第98/51302号に記載されている。ウーロン茶および/またはキャッツクローのエタノール抽出物は、本発明の範囲内である。
【0079】
実施例1:本発明の組成物はアルツハイマーのAβ原線維または凝集体の強力な崩壊物質/阻害物質である
この組成物はAβタンパク質原線維または凝集体の強力な崩壊物質/阻害物質であることが判明した。一連の試験において、アルツハイマー病の予め形成されたアミロイド原線維(すなわち、Aβ1〜42またはAβ1〜40からなる)の分解/崩壊/脱凝集を引き起こす組成物の効力を分析した。
【0080】
A部:チオフラビンT蛍光光度法
本試験では、チオフラビンT蛍光光度法を用いて本組成物の効果を決定した。チオフラビンTは原線維アミロイドに特異的に結合し、この結合は、形成されるアミロイド原線維の量に直接比例する485nmでの蛍光増強を生成する。蛍光が高くなればなるほど、形成されるアミロイド原線維の量は多くなる(Nakaiら,Lab.Invest 65:104−110,1991;Levine III,Protein Sci. 2:404−410,1993;Amyloid Int.J.Exp.Clin.Invest.2:1−6,1995)。
【0081】
本試験では、1mg/mL溶液(蒸留水に溶解した)または予め線維化した40μLのヒトAβ1〜42(rPeptide)を単独(対照)で、またはLOTE+PTI−00703(登録商標)(試験組成物:Aβの重量比1:1と1:0.1で)(「Cognitive Clarity(商標)」と呼ぶ)の存在下で37℃、3日間インキュベートした。反応物中のAβの最終濃度は、最終量100μLでリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4+0.02%アジ化ナトリム中で0.4mg/mL(88μM)であった。3日間のコインキュベーションの後に、12.5μLの各インキュベーション混合物を37.5μLのPBSと200μLのチオフラビンT溶液(すなわち、62.5mMリン酸緩衝液、pH6.8に溶解した125μMチオフラビンT)とを含有する96ウェルマイクロタイタープレートに移した。ブランクとして緩衝液だけまたは組成物だけをサブトラクションした後、ELISAプレート蛍光光度計を使用して、発光蛍光を485nm(励起波長444nm)で読み取った。
【0082】
3日間のインキュベーションの結果を
図1に示す。「Cognitive Clarity」(すなわち、LOTEとPTI00703(登録商標)の組み合わせ)とのAβ1〜42のインキュベーションにより用量依存的崩壊が生じた。
【0083】
予め形成されたAβ1〜42原線維の分解/脱凝集。試験組成物:Aβの重量比0.1:1で、LOTE+PTI−00703(登録商標)は、原線維を62.8%阻害した。同量の均等物(試験組成物:Aβの重量比1:1)では、チオフラビンT蛍光の阻害は93.6%であった。本試験は、この独特の組み合わせがアルツハイマー病型Aβ原線維の強力な崩壊物質/阻害物質であり、用量依存的様式でその効果を発揮することを示した。
【0084】
B部:コンゴーレッド
コンゴーレッド結合アッセイにおいて、コンゴーレッドに結合するβアミロイドを変える試験組成物の能力を定量する。このアッセイでは、Aβ1〜42(チオフラビンTアッセイのために調製した)を単独(対照)で、または増加する量の試験組成物と共に3日間インキュベートし、次いで0.2μmフィルターを通して真空濾過した。次いで、コンゴーレッド(125μMコンゴーレッド、100mM Tris、50mM NaCl、pH7)でフィルターを染色した後、フィルター中に保持されたAβ1〜42の量を定量した。フィルターを適切に洗浄した後に、試験組成物の存在下でのフィルター上のコンゴーレッドカラーの何らかの低下(試験組成物の非存在下でのアミロイドタンパク質のコンゴーレッド染色と比較して)は、凝集したコンゴーレッド親和性Aβの量を減少させる/変える試験組成物の能力を示した。
【0085】
一試験において、LOTE+PTI−00703(登録商標)の非存在下またはその増加する量の存在下(試験組成物:Aβの重量比1:1と0.1:1)で、Aβ原線維がコンゴーレッドに結合する能力を決定した。3日間のインキュベーションの結果を
図1に示す。LOTE+PTI−00703(登録商標)は、コンゴーレッドへのAβ結合の用量依存的阻害を引き起こした。試験組成物:Aβの重量比0.1:1で、LOTE+PTI−00703(登録商標)は、コンゴーレッド結合を20.9%阻害した(p<0.001)。同量の均等物(試験組成物:Aβの重量比1:1)では、コンゴーレッド結合の阻害は58.6%(p<0.001)であった。
【0086】
コンゴーレッド結合アッセイの結果と同様に、本試験も、特定のリードウーロン茶抽出物(LOTE)とPTI−00703(登録商標)のこの組み合わせが、チオフラビンT蛍光光度アッセイによって評価されたようにAβ原線維の強力な崩壊物質/阻害物質であり、用量依存的様式でその効果を発揮した(
図1)ことを示した。LOTE+PTI−00703(登録商標)の組み合わせは、試験組成物:Aβの重量比0.1:1で70%(p<0.001)(
図1)の、および試験組成物:Aβの重量比1:1で95%(
図1)のチオフラビンT結合の用量依存的減少(Aβ原線維の崩壊/減少を示す)を引き起こした。
【0087】
C部:スライドベースのコンゴーレッド結合、チオフラビンSと電子顕微鏡
スライドベースのコンゴーレッドアッセイにおいて、コンゴーレッド染料をAβ1〜42とともにインキュベートし、スライド上に点在させ、偏光下で撮像する。コンゴーレッドに結合されたアミロイド原線維は、偏光下で特徴的な「青リンゴ色の複屈折」を発する。本試験では、予め原線維化した0.4mg/mLのAβ1〜42(チオフラビンTアッセイ用に調製したように)を試験組成物とともに、または試験組成物を含まずに3日間インキュベートした。コンゴーレッド溶液10μL(dH20 1L中に溶解した250mgのコンゴーレッド染料(純度54%;Sigma))を、試験組成物を含むまたは含まない10μLのAβ1〜42に加え、30秒間ボルテックして混合した。次いで試料をコンゴーレッド溶液とともに室温で10分間、インキュベートした。次いで、試料を2000gで3分間遠心して、10μLの上清を除去した。グリセロール2μLをペレットに加え、15回上下にピペッティングすることによって混合した。試料をボルテックスし、次いで10μLの染色されたタンパク質をオートクレーブ処理可能なブルースライドの18ウェル5MM HTC(R)上に点在させた。試料を小さい円形のカバーガラスで覆い、次いで直ちに偏光下で撮像した。Q−Imaging Retiga 1300デジタルカメラを装備したHBO100イルミネーターとともにZeiss Axioscope2plus顕微鏡で画像キャプチャを行った。
【0088】
図2A(左パネル)では、代表的な画像が、無処置Aβ1〜42が青リンゴ色複屈折と、視野全体に均一に分布される豊富な原線維タンパク質とを有することを示す。
図2A(右パネル)では、LOTE+PTI−00703(Aβ42との重量比0.1:1)による処置が実質的により少ないコンゴーレッド染色原線維をもたらし、この植物抽出物の組み合わせが予め形成されたAβ1〜42原線維を減少し、かつ脱凝集/溶解することができることを示している。
【0089】
チオフラビンTと同様に、チオフラビンSは原線維アミロイドタンパク質に結合する同類のアニオン染料であり、製顕微鏡スライドガラスに結合した原線維タンパク質を検出するために使用できる。本試験において、予め線維化したAβ1〜42(チオフラビンTアッセイ用に調製したように)を試験組成物とともに、または試験組成物を含まずに3日間インキュベートした。試験組成物を含むまたは含まない0.4mg/mLのAβ1〜42の4μLを、オートクレーブ処理可能なブルースライドの18ウェル5MM HTC(R)上に点在させた。試料を2時間空気乾燥させた。10μLのチオフラビンS溶液(31mgのチオフラビンSを50mLのdH20中に溶解した)をスライド上の乾燥タンパク質に静かに加えた。タンパク質を1分間染色し、次いでチオフラビン溶液をピペットで除去した。40μLの70%エタノール溶液を染色タンパク質上に静かにピペットで移し、1分間リンスした。この溶液をピペットで静かに除去した。2μLのVectashield(Vecor)封入剤を染色されたタンパク質に加え、次いで円形のカバーガラスで覆った。蛍光灯下で画像を観察し、Q−Imaging Retiga 1300デジタルカメラを装備したHBO100イルミネーターとともにZeiss Axioscope2Plus顕微鏡で画像キャプチャを行った。
【0090】
図2B(左パネル)では、無処置Aβ1〜42の代表的な画像が、視野全体に均一に分布される豊富なチオフラビンS蛍光原線維を示す。LOTE+PTI−00703(登録商標)とともに72時間インキュベートした(Aβ1〜42との重量比0.1:1で)予め形成されたAβ1〜42原線維は、蛍光原線維のかなりの減少を示した(
図2B、右パネル)。
【0091】
図2B(右パネル)では、代表的な画像が、LOTE+PTI−00703処置によりチオフラビンS−蛍光原線維が消えたことを示す。
【0092】
陰性染色電子顕微鏡観察(EM)分析を用いて、予め形成されたAβ原線維を崩壊させる種々の組成物の有効性を別々に観察した。これらの実験において、予め形成されたAβ1〜42原線維(チオフラビンTアッセイのために調製した)を試験組成物の非存在下で(対照)または増加する濃度の試験組成物の存在下でインキュベートした。3日間のインキュベーション後、試料10μLをグリッド上にスポッティングして、2%酢酸ウラニルで染色し、JEOL1010透過型電子顕微鏡を用い、8,000〜30,000倍率で可視化した。
【0093】
図2C(下段パネル)では、EM分析で、処置のない条件でAβ原線維の形成を確認した(すなわち、
図2C、対照)。無処置(
図2C、左パネル)で、Aβは、視野を均一に覆った大きな凝集原線維を形成した。これらの試料も、チオフラビンTアッセイで試験し、チオフラビンT蛍光陽性原線維であることを確認した。LOTE+PTI−00703(登録商標)の存在下で(
図2C、右パネル)、凝集Aβ原線維の数はかなり減少し、溶解した。これらの結果は、処置によりチオフラビンT蛍光が減少したことを示したチオフラビンT蛍光光度データおよび、処置によりコンゴーレッド結合が減少したことを示したコンゴーレッド結合データとよく相関する。これらの独立した方法を用いて、本発明者らは、強力なAβ崩壊物質/阻害物質としてPTI−00703(登録商標)と組み合わせたリードウーロン茶抽出物(LOTE)(すなわち、LOTE+PTIー00703(登録商標))を特定し、検証した。
【0094】
実施例2:本発明の組成物は原線維構造体を含有するβシートへのAβのインビトロでの変換を直接的に阻害/崩壊する
A部:チオフラビンT蛍光光度法
LOTE+PTI−00703(登録商標)がAβのβシート形成を阻害することができるかどうかを試験するために、実施例1に記載した同じチオフラビンTアッセイを活用したが、基質として代わりにAβ1〜40を使用した。Aβ1〜42と同様に、Aβ1〜40はチオフラビンT陽性凝集体を形成するが、完全に線維化されるには振盪しながら37℃での24時間を超えるインキュベーションを必要とする。Aβ1〜40はアッセイ開始時には非原線維状態であるので、このタンパク質は、凝集阻害を測定するための組成物の存在下で凝集され得る。凍結乾燥されたヒトAβ1〜40(rPeptide)をdH20中で1mg/mL(220μM)に溶解した。別の試験管中で、試験組成物原液を種々の濃度でPBS中に溶解して調製し、等量の試験組成物原液とAβ溶液を含有する最終反応物が、試験組成物:Aβの重量比1:1、0.5:1、1:1、および0.2:1で0.5mg/mL(110μM)の最終Aβ濃度になるようにした。次いで、Aβ+試験組成物(またはAβ凝集の対照としてAβ+PBS)を含有する反応物を2日間インキュベートした。インキュベーション混合物を1:10で0.05mg/mLに希釈した。Aβと希釈した各インキュベーション混合物50μLとを、200μLのチオフラビンT溶液(すなわち、62.5mMリン酸緩衝液、pH6.8中の125μMのAβチオフラビンT)を含む96ウェルマイクロタイタープレートに移した。ブランクとしてPBS緩衝液だけまたは組成物だけをサブトラクションした後、ELISAプレート蛍光光度計を使用して、蛍光を485nm(励起波長444nm)で読み取った。
【0095】
図3に示す本試験の結果は、本発明のLOTE+PTI−00703(登録商標)が、チオフラビンT蛍光光度法で評価されたように原線維の形成を防止するその能力によって示されるように、Aβ凝集を阻害したことを示した。試験組成物:Aβの重量比0.2:1でLOTE+PTI−00703(登録商標)は原線維を14.1%阻害し、重量比0.5:1でLOTE+PTI−00703(登録商標)は原線維を73%阻害した(p<0.001)。同量の均等物(試験組成物:Aβの重量比1:1)では、チオフラビンT蛍光の阻害は89.3%(p<0.001)であった。本試験は、LOTE+PTI−00703(登録商標)が、チオフラビンT蛍光光度法で評価されたようにβシートに富むAβ原線維形成の強力な阻害物質であり、この組み合わせは用量依存的様式でその効果を発揮することを示した。
【0096】
B部:コンゴーレッド
LOTE+PTI−00703(登録商標)がAβのβシート形成を阻害することができるかどうかを試験するために、実施例1に記載した同じコンゴーレッドアッセイを活用したが、基質として代わりにAβ1〜40を使用した。このアッセイでは、Aβ1〜40(チオフラビンTアッセイのために調製したように)および試験組成物を2日間インキュベートし、次いで0.2μmフィルターを通して真空濾過した。次いで、コンゴーレッド(125μMコンゴーレッド、100mM Tris、50mM NaCl、pH7)でフィルターを染色した後、フィルター中に保持されたAβ1〜40の量を定量した。フィルターを適切に洗浄した後に、試験組成物の存在下でのコンゴーレッドカラーの何らかの低下(試験組成物の非存在下でのアミロイドタンパク質のコンゴーレッド染色と比較して)は、凝集したコンゴーレッド親和性Aβの量を減少させる/変える試験組成物の能力を示した。
【0097】
一試験において、LOTE+PTI−00703(登録商標)の非存在下またはその増加する量の存在下(試験組成物:Aβの重量比1:1、0.5:1および0.2:1)で、Aβ原線維がコンゴーレッドに結合する能力を決定した。2日間のインキュベーションの結果を
図3に示す。LOTE+PTI−00703(登録商標)は、コンゴーレッドへのAβ結合の用量依存的阻害を引き起こした。試験組成物:Aβの重量比0.2:1でLOTE+PTI−00703は、コンゴーレッド結合を41.7%阻害し、および重量比0.5:1でLOTE+PTI−00703(登録商標)は、コンゴーレッド結合を62.5%阻害した(p<0.001)。同量の均等物(試験組成物:Aβの重量比1:1)では、コンゴーレッド結合の阻害は83.3%(p<0.001)であった。チオフラビンT蛍光光度アッセイの結果と同様に、本試験も、コンゴーレッドへのAβの結合によって評価されたように、LOTE+PTI−00703(登録商標)がAβ原線維の強力な阻害物質であり、用量依存的様式でその効果を発揮することを示した。
【0098】
C部:CD分光法
凝集しやすい条件下で、Aβ1〜40のβシート二次構造の形成を阻害するLOTE+PTI−00703(登録商標)の効力を決定するためにCD分光測定を行った。βシート構造はAβ原線維の特徴であるため、タンパク質の二次構造をモニタリングすることで、組成物の凝集阻害の有効性のさらなる証拠を提供できる。増減する濃度の組成物とともにAβ1〜40試料のCDスペクトルを、25℃でJASCO Model J−810分光偏光計で分析した。2つの独立したアッセイの結果を相関させるために、同じ試料調製から平行してCD分光法とチオフラビンTアッセイで分析した。
【0099】
図4において、LOTE+PTI−00703(登録商標)で処置したAβ1〜40のCDスペクトルは、原線維を含有するβシートの用量依存的阻害を示した。218nmでの最小値は、βシート構造の存在を示す。218nmでの楕円率の正シフトは、より少ないβシート構造を示す。試験組成物:Aβの重量比0.2:1で、LOTE+PTI−00703(登録商標)は、無処置から30.9%少ないβシート構造を示した。
0.5:1で、LOTE+PTI−00703(登録商標)は、対照よりも53.9%少ないβシート構造を示した。同量の均等物(試験組成物:Aβの重量比1:1)では、対照と比較してBシート構造が64.8%少なかった。
【0100】
これらのデータは、LOTE+PTI−00703(登録商標)が線維状のβシート集合体へのAβの異常な集合を阻害する重要な能力を有し、病原性のより低い形でAβ1〜40を維持することを確認した。
【0101】
タウ凝集阻害物質のインビトロでのスクリーニングのための組換え型タウ繰り返しドメインの使用
タウ凝集阻害物質を特定するためのインビトロでのスクリーニングの間、本発明者らは、同じ実験条件下で、購入した市販の完全長タウタンパク質(rPeptideからのTau441)からの対らせん状微細線維(PHF)の形成がタウ繰り返しドメイン(TauRD;Tau441のQ244〜E372を含有する)からのそれ(≧24時間)よりもかなり遅い(>11日間、データ不図示)ことを見出した(S.Barghornら,Methods Mol Biol,299:35−51,2005)。
【0102】
著しく短い転換時間および共通の凝集特性のため、本発明者らは、本発明でタウ凝集阻害物質を特定するためのインビトロでのスクリーニング用にTauRDを使用した。TauRDタンパク質は市販されてないので、本発明者らは、このプロジェクトのために我々独自のタンパク質を生成した。ヒトTauRDをコードするcDNAフラグメントを細菌発現ベクター中にクローン化し、次いでこの構築物を大腸菌(E.coli)中で発現させた。次いで、TauRDの高レベルの発現を示す細菌クローンを、タンパク質精製のために選択した。次いで、組換え型TauRDタンパク質を、微修正を伴い記載されるように熱安定性処置と、陽イオン交換クロマトグラフィーとによって精製した(S.Barghornら,Methods Mol Biol,299:35−51,2005)。この方法を用いて、本発明者らは細菌培養1リットル当たり20mgのタンパク質収量を達成した。精製したTauRDの凝集とPHF形成を、原線維への結合後に蛍光を発する染料であるチオフラビンS(チオS)蛍光光度法(
図5D)、タンパク質の二次構造の変化を検出する方法である円偏光二色性(CD)分光法(
図5Bと5C)および電子顕微鏡観察法(
図5E〜G)を含む独立したアッセイによって評価し、検証した。結果は、800〜1000rpmで1日以上振盪しながら、等モルヘパリン(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)とともに37℃でインキュベートされると、TauRD(10μM)はチオS陽性のβシート含有PHFを形成できることを一貫して示す。
【0103】
図5Aにおいて、大腸菌から精製したTauRD(15kDa)タンパク質を95%以上の一般的な純度でSDS−PAGE/銀染色により評価した。
図5B〜Cにおいて、非凝集のおよび凝集したTauRDタンパク質のCD分光測定の例を示す。TauRD凝集体を20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中の等モル(10μM)比のTauRDとヘパリンの存在下で調製し、0〜120時間振盪しながら37℃でインキュベートした。ヘパリンの非存在下で、非凝集TauRDのCDスペクトルは、195nmで最小楕円率を有するランダムコイルであった(
図5B)。ヘパリンの存在下で、CDスペクトルは、時間0でのランダムコイル(195nmで最小値)から20〜120時間でのβシート(218nmで最小値)への、TauRDタンパク質の時間依存的立体構造変化を示した(
図5C)。
図5Dは、経時的にチオS蛍光光度法によってモニタリングされたTauRD凝集の一例である。
図5Dでの結果は、20時間のインキュベーション後のチオS陽性TauRD原線維の形成を示す。原線維の形成がないヘパリンの非存在下で、TauRDチオSシグナルは、すべての時点で蛍光の200未満の任意単位(A.U.)であった。タウ原線維形成を
図5E〜Gの陰性染色EMによって確認した。代表的な画像は、ヘパリンを伴う48時間のインキュベーション後に、タウ原線維の形成を示す。時間0でのTauRDモノマーを
図5E(バー=200nm)に示す。48時間でのTauRD原線維の形成を
図5F〜G(バー=50nm)に示す。直線状および対らせん状の微細線維の両方が認められた。
【0104】
実施例3:チオフラビンS蛍光光度スクリーニングによる新規タウ凝集阻害物質の特定
原線維形成を測定する周知の方法は、チオフラビンT(チオT)蛍光光度法(H.Naikiら,Lab.Invest.65:104−110,1991;H.Levine III,Protein Sci.2:404−410,1993;H.Levine III,Amyloid 2:1−6,1995;H.NaikiとK.Nakakuki, Lab.Invest.74:374−383,1996)である。チオTは、原線維タンパク質に結合することが知られており、蛍光の増加は原線維形成の増加に相関し、一方蛍光の減少は分解および/または崩壊に起因する原線維の減少に相関する。本発明者らは、チオTを同様の特性を有する同類のアニオン染料であるチオフラビンS(チオS)と交換することによってアッセイを修正した。後者は感受性がより高く、タウPHFの定量化を再現できることが示されているからでる(データ不図示。P.Friedhoffら,Biochemistry,37(28):10223−30,1998)。チオS蛍光光度法を用いて、上記の混合組成物が原線維の分解/崩壊を引き起こすことができるかどうかを評価した。
【0105】
凝集したタウ原線維を、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中の等モル比のTauRDとヘパリン(各10μM)の存在下で調製した。この反応混合物を(800〜1000rmp)で24時間〜72時間振盪しながら、37℃でインキュベートした。試験組成物は、0.14mg/mLTauRDとヘパリンで様々な重量対重量濃度において試験した。同じ反応混合物(+増加する濃度の試験組成物)にTauRDを加えないものも平行して準備し、バックグラウンド対照として役立たせた。すべての試験化合物のバックグラウンドについてチオS蛍光測定値は極めて低く、通常、TauRD含有ウェルの化合物の5%未満であった。
【0106】
24〜72時間のコインキュベーション後に、50μLの各インキュベーション混合物を黒色96ウェルマイクロタイタープレート(Santa Cruz Biotechnology,Inc.,Dallas,TX)中に、50μLのリン緩衝生理食塩水(PBS;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)および25μLのチオフラビンS溶液(PBS、pH7.4中の500mMチオフラビンS、Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)とともに移した。ELISAプレート蛍光光度計を使用して、ブランクとして緩衝液だけまたは組成物だけをサブトラクションした後、蛍光を485nm(励起波長444nm)で読み取った。
【0107】
タウ凝集体の50%阻害、すなわちIC
50をPrismバージョン5ソフトウェア(GraphPad Software)を使用し、非線形回帰[(対数[阻害物質]対正規化応答;可変勾配)]によって算出した。最初のスクリーニングでは、試験化合物は、タウタンパク原線維形成を阻害するための広範囲の活性を示し、IC
50値は、<14mg/mL(アッセイでのTauRD濃度以下)から無限大(すなわち何の活性もない)にわたった。結果は、阻害活性が試験対象特有であることを示唆した。いくつかの試料も、予め形成されたタウ原線維を崩壊させるその能力について試験した(崩壊アッセイ)。
【0108】
25以上の茶抽出物を、チオS−陽性タウ凝集体の阻害について試験した。大多数の茶は、ウーロン茶抽出物であった。
図6は、数種のウーロン茶抽出物、カモミール茶および緑茶の存在下での凝集したタウのチオS蛍光の例である。上昇する濃度の抽出物を0.14mg/mL(10μM)のTauRDおよび等モルのヘパリンとともに37℃で24〜72時間、1000rpmで振盪しながらインキュベートした。リードウーロン茶抽出物(LOTE)は、他のウーロン茶、カモミール茶または緑茶の抽出物より多くタウ凝集体を阻害した。LOTEは、組成物対タウの重量比0.23:1でタウ凝集を50%阻害した(IC
50)。この実験は、LOTEが、線維状の病原性集合体へのタウの異常な集合を阻害する他の組成物よりも優れた能力を有することを示す。
【0109】
優れたタウ凝集阻害をもつ茶抽出物を特定した後、タウ凝集阻害アッセイにおいてリードウーロン茶抽出物(LOTE)を単独で、またはPTI−00703(登録商標)と組み合わせてインキュベートした。特定のウーロン茶とPTI−00703(登録商標)の組み合わせは、LOTEまたはPTI−00703(登録商標)単独よりもチオS−陽性タウ凝集体を多く阻害した(*対t−検定により有意、p<0.05)(
図7)。リードウーロン茶抽出物とPTI−00703(登録商標)とのこの組み合わせは、タウ凝集/原線維形成の強力な阻害物質であり、タウオパチーの新規治療薬として使用されることが可能である。
【0110】
実施例4:円偏光二色性(CD)分光法によるタンパク質二次構造の分析によって確認されたリードウーロン茶抽出物によるタウ凝集阻害
CDは、タンパク質の構造が変わったことを色素に依存しないで確認できる強力な方法である。CDは、左旋円偏光と右旋円偏光の間の差分吸収を測定する。タンパク質は、楕円率の単位で測定される明確なCDシグナルを示す、非対称の要素を含む。チオフラビンS蛍光のタウ凝集体は、218nmで最小楕円率を有し、これはβシートを含むタンパク質の特徴である。非凝集タウは195nmで特徴的な最小楕円率を有し、ランダムコイル構造を示す。凝集しやすい条件下でTauRD中のβシート二次構造の形成を阻害する各組成物の効力を判定するために、CD分光測定を行った。増加する濃度の化合物とともに±TauRDを含む、または含まない試料からCDスペクトルを測定し、25℃でJASCO Model J−810分光偏光計で分析した。2つの独立したアッセイの結果を相関させるために、同じ試料調製から平行してCD分光法とチオSアッセイで分析した。
【0111】
図8において、リードウーロン茶抽出物(LOTE)またはカモミール茶抽出物でタウを48時間処置した。LOTEで処置したタウは、原線維を含有するβシートへの変換を用量依存的に阻害される。最も高濃度でのLOTE処置で、タウは、約195nmの最小値を有して可溶なランダムコイル状のままである。反対に、最も高濃度のカモミール茶抽出物での処置では、タウは、無処置対照と同様の凝集したβシート構造に依然として変化する。これらのデータから、LOTEが、線維状のβシート集合体へのタウの異常な集合を阻害する他の組成物よりも優れた能力を有し、タウを非病原性の可溶なランダムコイル状に維持することが確認される。
【0112】
実施例5:陰性染色電子顕微鏡観察(EM)で決定したPTI−00703+LOTEによるタウタンパク質原線維形成の阻害および予め形成されたタウ原線維の脱凝集
EM分析を用いて、タウ原線維形成を阻害する複数の組成物の有効性をそれぞれモニタリングした。これらの実験において、タウ原線維は、試験組成物の非存在下(対照)または増大する濃度の試験組成物の存在下で、等モル比のTauRDタンパク質とヘパリン(各10μM)をインキュベートすることによって集合させた。2日間のインキュベーション後、試料をグリッド上にスポッティングして、2%酢酸ウラニルで染色し、JEOL1010透過型電子顕微鏡を用い、8,000〜30,000倍率で可視化した。
【0113】
図9、左パネルで、EM分析は、処置のない条件でタウ原線維の形成を確認した。無処置で、タウはヒトタウオパチーで認められるものと同様の対直線状および対らせん状の微細線維の混合物を形成した(V.M.Leeら,Ann.Rev.Neurosci. 24:1121−159,2001)。これらの試料はチオSアッセイとCDでも試験して、チオS−蛍光陽性でβシート構造であることを確認した。PTI−00703(登録商標)およびPTI−00703(登録商標)+LOTEの存在下で(
図9、中央および右パネル)、タウ原線維は短くまばらになり、タウ原線維形成が阻害されたことを示した。PTI−00703(登録商標)およびLOTEの両方で処置したタウ試料においてさらに原線維が少ないことが明らかである。これらの結果は、チオS蛍光の減少およびβシート構造の低下を示したチオS蛍光光度およびCD分析とよく相関する。3つの独立した方法を用いて、本発明者らは、タウ凝集/原線維形成の強力な阻害物質として、PTI−00703+リードウーロン茶抽出物を特定し、検証した。
【0114】
EM分析を活用して、予め形成されたタウ原線維がPTI−00703(登録商標)およびLOTEの両方の存在下で急速に脱凝集することを示した。前のアッセイで記述したように、TauRDを等モルヘパリンとともにインキュベートして、原線維を形成した。TauRDを試験組成物とともに、または試験組成物なしで希釈して、種々の時点について37℃で振盪しながらインキュベートした。各時点で、TauRD+/−試験化合物をチオS蛍光光度についてアッセイし、かつEM分析のため急速凍結した。
図10(左パネル)で、無処置の予め原線維化したタウは長い微細線維のままであった。次のパネルにおいて、予め原線維化したタウは、PTI−00703(登録商標)+LOTEの存在下で急速に脱凝集することが判明した。PTI−00703(登録商標)+LOTEとの早ければ15分間のインキュベーションで、タウ原線維は無処置よりも短く、まばらになる。タウ原線維の崩壊は、チオSアッセイによっても確認された(データ不図示)。これらのデータは、PTI−00703(登録商標)+LOTEの組成物がタウ凝集を阻害できるだけでなく、予め形成されたタウ原線維を脱凝集することもできることを示している。
【0115】
実施例6:認知および記憶の改善についてPTI+00703(登録商標)+LOTEのさらなるインビボでの試験
さらなるインビボでの試験を用いて、PTI−00703(登録商標)+LOTE植物抽出物の組み合わせの有効性を、脳の「プラークおよびもつれ」負荷の減少および認知と記憶の改善について試験する。40〜60人の男性と女性を臨床試験のために選択する。被験者は加齢性記憶障害(AAMI)があり、6ヵ月の試験期間内に記憶障害の症状が悪化すると予想されるが、それ以外では健康状態は良好である。
【0116】
本試験はプラセボ群を含む。すなわち、被験者は2つの群に分けられ、一つの群は本開示のPTI−00703(登録商標)+ウーロン茶抽出物配合カプセルを摂取し(PTI−00703(登録商標)+ウーロン茶抽出物を1:1の重量比組み合わせで含有する390mgカプセルを2個、食事ともに、好ましくは昼食とともに)、もう一方の群はプラセボ(本試験生成物の活性成分を含まないカプセルを2個)を摂取する。患者は、記憶、認知、注目、集中、推論および軽度認知障害(MCI)に伴う他の症状に関して評価される。試験群の被験者は、治療用量の組み合わせ試験生成物抽出物またはプラセボを6ヵ月間摂取し、処置から0ヵ月目、1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目に短期記憶、認知、注目および集中についての分析が検討される。記憶、注目および集中に関する正確な記録は、両群で評価された症状について保持され、本試験終了時にこれらの結果が比較される。結果はまた、各群のメンバー間でも比較される。加えて、各患者についての結果は、本試験の開始前に各患者によって報告された症状と比較される。PTI−00703(登録商標)+ウーロン茶抽出物を組み合わせた試験生成物の活性は、一般的な認知機能の低下、短期記憶の低下、認知、注目と集中、および/または加齢性記憶障害(AAMI)に伴う関連する行動障害の減退によって示される。
【0117】
本明細書に記載のすべての参考文献および特許公報は、それら全体を参照により本明細書に組み込まれる。