【実施例1】
【0009】
図1〜
図6は、本発明の第1実施例を示している。
この熱交換器は、
図1に示す如く、多数の偏平チューブ3が並列され、その偏平チューブ3の両開口3bの端部が一対のヘッダプレート1(下部側のタンクを省略する)の長手方向に並列して穿設されたチューブ挿通孔2に挿通される。そして、各チューブ3間にコルゲートフィンを配置してコアが形成され、高温の炉内でコアの各部品が一体にろう付けされる。ろう材は、予め、各部品間に塗布され、又は部材に被覆される。
このヘッダプレート1は、金属板(アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等)のプレス成型よりなり、その底部1cの外周縁に側壁8が立ち上げられる皿状のものであり、側壁8の先端縁には、カシメ爪9が離間して突設されている。その各ヘッダプレート1の底面1cは、チューブ挿通孔2が穿設される挿通孔穿設面1bと、その外周と側壁8との間にパッキンが載置されるシール面1aが設けられる。
そのシール面1aにパッキン7が載置された状態で、タンク本体5がそこに被嵌される。タンク本体5は樹脂の射出成型により形成されたフランジ部6を有し、周縁に突設されたカシメ爪9によりタンク本体5がコアに固定される。
ここで、本発明は、樹脂製のタンク本体5とヘッダプレート1との組み付けの構造に特徴がある。このタンク本体5は、一つの面を開放する略方形箱状に形成され、その開放端の外周にフランジ部6が環状に形成される。それとともに、
図1〜
図4に示す如く、タンク本体5の内面側の内周面に沿って、多数の歯部10が、突設されている。
その歯部10は、タンク本体5のフランジ部6の端面6aから突出しており、タンク本体5の長手方向の両端には、一対の弧状歯部14(左側を省略する。)が突設される。各歯部10と一対の弧状歯部14の端面6aからの突出長さは、同一である。
即ち、タンク本体5の端面6aと歯部10の外側の側面10aは、
図2、
図3に示す如く、タンク本体5の幅方向の横断面がL字状の段差を形成する。
これらの各歯部10間には、偏平チューブ3のチューブ挿通孔2の位置に整合するように、チューブ端逃がし部11が凹陥して形成される。このチューブ端逃がし部11は、
図1〜
図3に示す如く、フランジ部6の端面6aに向かって、タンク本体5の幅方向の横断面が頭部のない逆「J」の字状に凹陥している。
次に、ヘッダプレート1には、
図5、
図6に示す如く、その底面1cの挿通孔穿設面1bの長手方向に並列するように、チューブ挿通孔2が定間隔に穿設される。チューブ挿通孔2の孔縁部には、ヘッダプレート1の周壁8の立ち上げ方向に向かって立ち上げられたバーリング加工部13が形成される。そして、各チューブ挿通孔2に隣接する位置に、周壁8の立ち上げ方向に向けて凸部4が突設される。そして
図2に示す如く、その凸部4の外側の縁4aにタンク本体5の先端縁10bが当接するようになっている。
図1〜
図6の例では、その凸部4は、挿通孔穿設面1bの全体に亘りヘッダプレート1の内面底部1cから平面状に盛り上がった形状になっている。ヘッダプレート1の内面底部1cからの突出高さH1は、
図5に示す如く、内面底部1cから偏平チューブ3の挿通された開口端部までの高さH2を超えないように形成される。
この凸部4を設けることにより、タンク本体5の歯部10を位置決めし、タンク本体5の横ずれを防止することができる。また、バーリング加工部13を設けることにより、タンク本体5に外力が加わった時に、偏平チューブ3の挿通端部にその外力が直接伝わって、偏平チューブ3の端部が変形することを防止できる。
この例では、凸部4の外側の縁4aとヘッダプレート1の周壁8との間に環状の溝形のシール面1aが形成される。
このような熱交換器のコアに樹脂製のタンク本体5を組み付ける際、予め、ヘッダプレート1のシール面1aに環状のパッキン7を配置する。その時、パッキン7の内周は、バーリング加工部13の長軸側の側縁に当接し、パッキン7が位置決めされる。
次いで、タンク本体5をヘッダプレート1に被嵌する。タンク本体5のフランジ部6の端面6aがパッキン7を介してシール面1aに載置される。その際、
図2に示す如く、タンク本体5の歯部10と弧状歯部14の内側の先端縁10bが、ヘッダプレート1の凸部4の外側の縁4aに当接し、タンク本体5が位置決めされる。
その時、溝状のシール面1aと周壁8、歯部10の側面10aと、フランジ部6の端面6aとにより、環状のパッキン収容部12が形成され、そのパッキン収容部12にパッキン7が配置される構造になる。
バーリング加工部13の長軸側の側縁は、タンク本体5の歯部10の外側の側面10aより突出するように形成されているため、タンク本体5の歯部の外側の側面10aとパッキン7の内周との間に隙間101が生じる。このことにより、歯部10がパッキン7に乗り上げることが防止でき、良好なシール性を保つことができる。
また、各偏平チューブ3は、
図2及び
図3から明らかなように、ヘッダプレート1のバーリング加工部13のチューブ挿通孔2に挿通され、その側縁3aが各歯部10間のチューブ端逃がし部11に挿入される。それにより、偏平チューブ3の開口3bの長軸方向の側縁3aは、周壁8側に突出される。そしてその側縁3aは、タンク本体5の歯部10の先端縁10bよりも、周壁8側に位置される。その結果、周壁8の幅が縮小され、コンパクトな構造となる。
次いで、この状態で、ヘッダプレート1の周壁8の端部のカシメ爪9を、タンク本体5のフランジ部6側にカシメることにより、タンク本体5をコアに固定し、熱交換器を完成する。この時、パッキン7はシール面1a側に押圧され、水密構造を形成する。
図面では、本願の特徴となる部分を強調して記載しているため、熱交換器のタンク内部に流体を流通させる流体出入口等の必要な部分は、省略して記載している。それらは、タンク本体5を樹脂成型する際、タンク本体5と同時に形成される。
【実施例2】
【0010】
図7〜
図11は、本発明の第2実施例を示している。
第1実施例との違いは、
図7に示す如く、パッキン7がタンク本体5の歯部10に接している点である。また、その組み立ての際、予め、
図8に示す如く、パッキン7をタンク本体5の歯部10の外周の側面10aに被着することで、容易に組立てることができる組立て方法に特徴がある。
タンク本体5の構造と、ヘッダプレート1の構造は、第1実施例と同様なので説明を省略する。
第2実施例では、
図8に示す如く、タンク本体5のフランジ部6の端面6aと歯部10,弧状歯部14の外側の側面10aとからなる段差に、予め、環状のパッキン7を引き延ばした状態で、その内周に被着する。その時、パッキン7は、歯部10,弧状歯部14の先端面より下側に、段差15の分だけ僅かに突出する。
その状態で、タンク本体5をヘッダプレート1に被嵌し、押圧すると、その段差15の分が押圧されて、
図9、
図10に示すように、パッキン7の内周7bが押し出されて、各偏平チューブ3のチューブ挿通孔2のバーリング加工部13の長軸側の側縁に当接されて、パッキン7が位置決めされる。この状態で、タンク本体5のフランジ部6に周壁8のカシメ爪9がカシメられて、タンク本体5とコアが固定される。
上記2つの実施例では、チューブ挿通孔2の孔縁にバーリング加工部13を設けた例により説明してきたが、バーリング加工部13を設けずに、そのまま偏平チューブ3をヘッダプレート1に挿通することもできる。この場合、パッキン7の内周を、偏平チューブ3の挿通された端部の側縁3aに接触させ、パッキン7を位置決めすることもできる。
また、図面では、チューブ端逃がし部11の形状を横断面が頭部のない逆「J」の字状に凹陥する構成をとるが、チューブ端を無理なく挿通できる形状であれば、これに限定されるものではない。
(ヘッダプレート1の凸部4の形状の他の例)
さらに、ヘッダプレート1の凸部4の形状は、
図11、
図12に示す如く、チューブ挿通孔2の間に直線状に延びる突条とすることができる。また、
図13に示す如く、チューブ挿通孔2の並列方向に延びる直線状の突条とすることもできる。さらに、
図14に示す如く、ディンプル状の突起を設けて凸部4とすることで、タンク本体5の歯部10の位置ずれ防止を行うこともできる。
ヘッダプレート1に設ける凸部4の形状は、本発明の凸部4の効果(少なくとも、タンク本体5の歯部10の位置ずれ防止機能)を奏するものであればよいので、上記の実施例に限定されない。