特許第6796075号(P6796075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6796075疎水化ヒアルロン酸をベースとする生分解性自己支持性フィルム,その調製法及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796075
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】疎水化ヒアルロン酸をベースとする生分解性自己支持性フィルム,その調製法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/04 20060101AFI20201119BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20201119BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20201119BHJP
   C08B 37/08 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   A61L31/04 120
   A61L31/14 500
   A61L31/16
   C08B37/08 Z
【請求項の数】18
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-547385(P2017-547385)
(86)(22)【出願日】2016年3月9日
(65)【公表番号】特表2018-511377(P2018-511377A)
(43)【公表日】2018年4月26日
(86)【国際出願番号】CZ2016000027
(87)【国際公開番号】WO2016141903
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2019年2月26日
(31)【優先権主張番号】PV2015-166
(32)【優先日】2015年3月9日
(33)【優先権主張国】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】507211897
【氏名又は名称】コンティプロ アクチオヴァ スポレチノスト
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】特許業務法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォグラロヴァ,マルツェラ
(72)【発明者】
【氏名】フエルタ−アンジェレス,グロリア
(72)【発明者】
【氏名】ネスポロヴァ,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】スレシングロヴァ,クララ
(72)【発明者】
【氏名】ミナジーク,アントニム
(72)【発明者】
【氏名】フメラシュ,ヨゼフ
(72)【発明者】
【氏名】スラコヴァ,ロマナ
(72)【発明者】
【氏名】カレル,セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレブニー,ヴラディミル
【審査官】 吉田 知美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−520902(JP,A)
【文献】 特開平06−025306(JP,A)
【文献】 特開2011−093936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)によるヒアルロン酸のC10−C22−アシル化誘導体を含むことを特徴とするヒアルロン酸エステルをベースとする自己支持性フィルムであって,且つ厚さが2〜100μmの範囲であるフィルム:
式中,RはH又はNaであり,そして,RはH又は−C(=O)C(式中,xは9から21までの範囲内の整数であり,yは11から43までの範囲内の整数であり,Cは直鎖又は分岐した,飽和又は不飽和のC−C21鎖である)であり,少なくとも一つの繰り返し単位において1つ以上のRが−C(=O)Cであり,nは12から4000までの範囲内である。
【請求項2】
パルミトイル化ヒアルロナン又はラウロイル化ヒアルロナンを含むことを特徴とする請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸のC10−C22−アシル化誘導体が1×10〜1×10g/molの分子量を有することを特徴とする請求項1又は2記載のフィルム。
【請求項4】
前記ヒアルロン酸のC10−C22−アシル化誘導体が,15〜160%の範囲内の置換度を有することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のフィルム。
【請求項5】
5μmから25μmまでの範囲内の厚さを有することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のフィルム。
【請求項6】
少なくとも一方の面の二乗平均平方根で表される表面粗さが0.5nmから100nmまでの範囲内であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載のフィルム。
【請求項7】
少なくとも一種類の,薬学的及び美容的活性物質からなる群から選ばれる生物学的活性物質をさらに含むことを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載のフィルム。
【請求項8】
前記一般式(I)によるヒアルロン酸のC10−C22−アシル化誘導体を含む溶液を,水とC−Cアルコールの混合物中で調製し,それを撹拌し,その後それを支持体上に塗布し,閉鎖空間で乾燥させ,そしてその後,前記支持体から取り出すことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載のフィルムの調製方法。
【請求項9】
前記C−Cアルコールと水との混合比が,25〜55vol%対45〜75vol%であり,前記溶液中の前記ヒアルロン酸のC10−C22−アシル化誘導体の量が,0.5重量%から3重量%までの範囲内であることを特徴とする請求項8記載のフィルムの調製方法。
【請求項10】
前記溶液を20時間〜72時間撹拌することを特徴とする請求項8又は9記載のフィルムの調製方法。
【請求項11】
前記乾燥が,20℃〜50℃の温度で,3〜6時間行われることを特徴とする請求項8〜10いずれか1項記載のフィルムの調製方法。
【請求項12】
前記乾燥が,前記支持体上にあるフィルムの下面を,そのフィルムの反対側の上面が加熱又は冷却される温度より少なくとも1℃高い温度に加熱する温度勾配で行われることを特徴とする請求項8〜10いずれか1項記載のフィルムの調製方法。
【請求項13】
前記支持体上にある前記フィルムの前記下面を,20℃から60℃までの範囲内の温度に加熱し,前記フィルムの反対側の前記上面を,10℃から59℃までの範囲内の温度に加熱又は冷却することを特徴とする請求項12記載のフィルムの調製方法。
【請求項14】
前記フィルムを前記温度勾配で,6〜12時間乾燥することを特徴とする請求項12又は13記載のフィルムの調製方法。
【請求項15】
少なくとも一種類の生物学的活性物質を前記溶液に混入し,前記物質が薬学的及び美容的活性物質からなる群より選択されることを特徴とする請求項8〜14いずれか1項記載のフィルムの調製方法。
【請求項16】
前記支持体が,ポリビニルアルコール,ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリオキシメチレン又はポリスチレンからなる群から選ばれたポリマー,又は疎水化ガラスであり,濡れ角は,30°〜120°の範囲内であることを特徴とする請求項8〜15いずれか1項記載のフィルムの調製方法。
【請求項17】
医療用途又はバイオテクノロジー用途における使用のための請求項1〜7いずれか1項記載のフィルム。
【請求項18】
医療機器の構造に使用するための請求項1〜7いずれか1項記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は疎水化ヒアルロン酸をベースとする自己支持性生分解性フィルム,その調製法及びその使用,特にその制御された溶解度,生分解性,表面形態,機械的及びその他の特性に基づく医療用途における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸又はその塩(HA)は線状多糖類であり,それはN−アセチルグルコサミンにβ-1,3−グリコシド結合によって結合されたグルクロン酸によって形成された二糖単位の繰り返しから構成される。
【0003】
それは生物に自然に生じる物質であり,細胞外マトリックスの一部であり,関節,目などにおける潤滑剤として作用する。さらに,それは細胞のレセプタと相互に作用し,それにより細胞を調節することができる。その特性のおかげで,HAは様々な医療用途への使用が予定されている(Necas, Bartosikova et al. 2008)。HAは水性環境,又は体液に非常に急速に溶けるので,いくつかの用途のためにはそれを修正することが必要である。多くのタイプの修正,例えばチラミンにより誘導された可溶型HAの調製があり,これは架橋剤の添加により不溶性のヒドロゲルネットワークを形成する(Calabro, Darr et al. 2004, Wolfova, Pravda et al. 2013)。HA鎖の溶解度は疎水基を結合することによっても減少し得る(Valle and Romeo 1987, Smejkalova, Huerta-Angeles et al. 2014, Scudlova, Betak et al. 2014 et al. 2014)。そして,そのような誘導体は水性媒体に不溶であり,水と有機溶媒の混合物にはほとんどの場合可溶である(疎水性鎖による置換度と分子量の組み合わせに依存する)。
【0004】
国際特許出願WO2014082609(Smejkalova, Huerta-Angeles et al. 2014)は,生物学的に活性な疎水性物質の担体としての疎水化ヒアルロン酸の調製に関する。ヒアルロナンの疎水化は,長鎖カルボン酸によるヒアルロナンのエステル化反応によって行われ,その活性化は2,4,6−トリクロロ安息香酸(TCBA)又は他の有機塩化物によって行なわれる。
【0005】
疎水化ヒアルロナンの興味深い適用形態の一つは,外用又は内用の薄いフィルムの調製である。医療用途に適用可能なフィルムは知られており,例えば,セプラフィルム(Seprafilm)は繰り返される開腹術における癒着の防止に使用された。セプラフィルムは2つの陰イオン性多糖類,HA及びカルボキシメチルセルロースから構成され,1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)によって共に架橋された透明な付着バリアである(Altuntas, Kement et al. 2008, Beck 2008)。
【0006】
実験ベースではHAを含むフィルムがいくつか調製された。例えばLuo, Kirker et al. (2000)である。さらに,いくつかの特許文献は,不溶性又は架橋されたヒアルロナン,所望により別のポリマーとの混合物におけるヒアルロナン製のフィルムの調製を開示する(Becker, Dayton et al. 1996, Beck 2008)。ヒアルロナン層は,さらに特許文献CN202822230においても使用されたが,ここではそれは自己支持性フィルムではなく,また,言及されているのは天然のヒアルロナンのみである。疎水性を増強するために添加されたレシチンを伴う天然のヒアルロナンが論文(Bialopiotrowicz, Janczuk et al. 2006)に記載された。特に抗付着バリアの調製に使用される別のフィルムは,ヒアルロナンのエポキシド誘導体製のフィルムであり,これは有機溶媒中の沈澱によって調製される(EP2644623)。
【0007】
特許出願US20100092545によるフィルムは,水溶性又は不溶性のポリマー,好ましくはポリエチレンオキシドから調製され,その期待される用途は経口投与剤形の代替物である。そのため,薬物の分散が均質であること(サンプル中10%以下の変動),調製中に薬物の凝集及び再分散が生じないことは非常に重要である。これは,特に高粘度(アルギン酸塩,カラギーナン,グアーガム,その他のような他の物質の添加によってさらに上昇させ得る)で添加されるポリマーによって達成され,また薬物の凝集及び移行を防ぐ安定剤も添加し得る。さらに,著者によれば,ポリマー溶液から粘弾性のフィルムが生じ,そこで移行又は凝集が進行できないように,溶媒の一部を最初の10分間に除去しなければならない。これは高温を用いることにより達成されるが,それがフィルムの劣化を導くことになるためヒアルロナン及びその誘導体の場合には用いることができない。US20100092545では,著者は乾燥中及び乾燥後のフィルムの支持体への付着によって影響を受ける得られたフィルムの外観については議論していない。フィルム表面の粗さは測定されず影響も受けていない。この方法で変更できるであろうフィルムの性質,例えば膨張性及び分解率は,この文献には示されていない。著者は意図された利用に関してフィルムを水性環境に溶解させる方が良いと考えている。
【0008】
特許文献JP06025306は,高度に置換されたアシル化ヒアルロナン誘導体の合成,及びファイバー及びフィルムの調製のためのその使用を開示する。その合成は,有機酸中の多糖類の懸濁液の調製を含む。それは懸濁液であるので,多糖類は系内に完全には溶解せず,それによって系内での不均一反応及び多糖類の適合性の損失が引き起こされる。著者は,この反応は超酸,この場合は水と激しく反応する超求電子の(superelectrophilic)トリフルオロ酢酸無水物によって触媒されると述べている。従って,工業的プロセスの場合には危険性が高い。気湿に接した時に無水物の加水分解によって生じるトリフルオロ酢酸の残渣が製品中に存在する可能性があり,生物医学的な用途においてその誘導体を使用する場合に著しい危険をもたらす(Maeda N. et al., 2014)。さらに,この誘導体の合成には塩素化溶媒が使用されており,これはファイバー及びフィルムの中にそれらの残渣が移行する危険性が高いためFDAが医療用具への使用を勧めないものである。この特許文献は,一般的な用語においてファイバー及びフィルムの調製に言及しているだけであり,それらの性質の特定を扱ってはいない。
【0009】
別の米国特許出願US20120088832はヒアルロナン及びアルギン酸塩をベースとする多孔性フィルムの調製を開示し,ここで該フィルムは特に抗付着剤として医療に用いられるべきものである。該フィルムは多孔性を有する架橋された相互侵入編目構造である。この文献の実施例では,フィルムの膨潤性,生物分解性,溶解性については何も言及されておらず,残留溶媒の測定は含まれていない。
【0010】
フィルムを調製するために,特許文献EP0216453は,エステル化され,このためブロックされてCD44レセプタへの結合にアクセス不能なグルクロン酸のカルボキシル基を有する疎水化ヒアルロナンを使用した。エステル化には低分子又は芳香族アルコールが使用された。自己支持性フィルムを調製する方法は,ジメチルスルホキシド(DMSO)中にHAエステルを溶解し,溶解後にガラス上にそれを塗布し,該ガラスをDMSOを抽出するエタノールに浸し(フィルムはエタノールに可溶ではない),次に,フィルムをガラス支持体から剥がし,エタノール,水,そして再びエタノールで洗浄することを含む。得られたフィルムは,圧縮機中,30℃で48時間乾燥させる。
【0011】
特許文献US20040192643も疎水化ヒアルロナン,好ましくはベンゾイルHA誘導体製のフィルムに言及する。ここでも,カルボキシル基の置換が行われ,ヒアルロナンの不溶性を達成するために,HAの全カルボキシル基の80〜100%がブロックされる。フィルム調製の方法は上記のEP216453に開示された,既に言及された方法に対応するものである。しかしながら,乾燥は真空下63℃で30分間行われる。
【0012】
他の溶媒へのDMSO抽出によって,制御できない表面欠陥が生じる可能性があり,それはいくつかの用途においては許容できないものであり得る。さらに,抽出用溶媒を使用することが必要な場合,最終生産物中の残留溶媒が低濃度であることを保証することができない。更に,上記の文献EP0216453及びUS20040192643にはフィルムの機械的,物理的又は生物学的性質の言及はない。
【0013】
特許文献WO2010137374は,親水性ポリマーと疎水性ポリマーの構成要素が共有結合で結合したブロック共重合体を含む自己支持性ポリマー透析膜であって,親水性ポリマー構成要素が垂直に配向された円柱構造を形成し,疎水性ポリマー構成要素は架橋可能であるものを開示する。従って,該膜は共有結合で架橋されたブロック共重合体からなる。ヒアルロン酸への言及はない。当該膜の調製方法に関する限り,支持体上に存在するいわゆる「犠牲層」の存在は必要である。ブロック重合体の溶液を「犠牲層」に塗布し,その後該溶媒を蒸発させ,ブロック共重合体の疎水性ポリマー構成要素を光架橋し,次に,得られた膜から「犠牲層」を溶解により,好ましくは膜自体が不溶性の溶媒中で除去しなければならない。
【0014】
上記のように,今までに知られているヒアルロン酸ベースのフィルムの欠点は,特に多工程の複雑な調製を含んでいる。フィルム調製の他の既知のプロセスは,ヒアルロナン及びその誘導体に使用することができない。いくつかの特許又は特許出願の著者は,医療用具への利用に望ましいフィルムの溶解性,膨潤性及び生分解性に影響する可能性に言及していない。EP0216453又はUS20040192643による方法の場合,フィルムの外観及びその機械的性質は,溶媒と繰り返し接触することによって影響を受けるかもしれない(DMSOが抽出されるエタノールは,ヒアルロナンの沈澱剤である)。さらに,例えばDMSOが使用され,それは許容される制限時間内に乾燥により除去することができない。別の欠点は,多くの溶媒が使用され,生成物に残留溶媒が存在する可能性がより高くなることである。いくつかのプロセスは,最終材料の不溶性を増加させるため,又は最初の高分子溶液の特性に影響を及ぼすために,ヒアルロン酸に加えて他のポリマーをも使用する。
【0015】
発明の要約
従来技術の上記の欠点は,本発明によるヒアルロン酸エステルをベースとする自己支持性フィルムであって,且つ厚さが2〜100μmの範囲であるフィルムによって克服され,その主題は,一般式(I)によるC10−C22アシル化ヒアルロン酸誘導体を含むことにある:
式中,RはH又はNaであり,そして,RはH又は−C(=O)C(式中,xは9から21までの範囲内の整数であり,yは11から43,好ましくは19〜43までの範囲内の整数であり,Cは直鎖又は分岐した,飽和又は不飽和のC−C21鎖である)であり,少なくとも一つの繰り返し単位において1つ以上のRが−C(=O)Cであり,nが12から4000まで,好ましくは250から4000まで,より好ましくは250から2500まで,最も好ましくは250から1000までの範囲内である。パルミチン酸は体内で脂肪酸のβ酸化により分解されるので,本発明によるフィルムは好ましくはパルミトイル化ヒアルロナンを含む。さらに,本発明によるフィルムは好ましくはラウロイル化ヒアルロナンを含む。
【0016】
本発明によるフィルムはC10−C22アシル化ヒアルロナン誘導体(即ち疎水化ヒアルロナン)を含み,ここでC10−C22アシル中の1つ以上の結合が不飽和であってよく,C10−C22アシルは,好ましくはN−アセチルグルコサミンの6位の第一級アルコールにのみ結合される。従って,カルボキシル基は修飾されず,それらの保持は細胞の相互作用,付着及び移動を媒介し,また細胞とヒアルロナンとの相互作用に関与するCD44レセプターとヒアルロナンの相互作用に必要である。ヒアルロナンカルボキシル基の置換度が高いほど,ヒアルロナンと細胞の相互作用のプロセスが悪いことが証明された(Qiu, Li et al. 2014)。この観点から,特により高い置換度の要求がある場合,それは殆どの用途において必要であるが,カルボキシル基の修飾を行なわず,第一級及び/又は第二級アルコール基である他の反応部位に注目することが有利である。
【0017】
上記の式IによるC10−C22−アシル化ヒアルロン酸誘導体から調製された本発明によるフィルムは,細胞に関して非細胞毒性であり,高度に置換された誘導体(アシルによる100%の置換度を含む)を使用する場合でさえ,生体適合性であり生物分解性である。医療用の場合,フィルムが機械的にストレスを受けることが前提であり(抗付着バリア,組織工学など),多くの場合膨張により脆弱になる共有結合で架橋された形の代わりに,水性溶媒に不溶な形態,即ち本発明によるフィルムを使用するのが望ましい。本発明によるフィルムは水和に対して抵抗性で弾性のフィルムを形成し,それはある程度の機械的ストレス(伸長,曲げ,圧縮による)にさらすことができる。
【0018】
本フィルムは細胞に関して非細胞毒性である(インビトロ試験)。
【0019】
本発明の好ましい実施態様によれば,本フィルムは,1×10〜1×10g/molまで,好ましくは1×10〜5x10g/mol,より好ましくは2×10〜3×10g/molの分子量を有するヒアルロン酸のアシル化誘導体を含む。
【0020】
本発明の別の好ましい実施態様によれば,本フィルムは,15〜160%,好ましくは50〜100%,より好ましくは80〜100%の範囲内の置換度を有するヒアルロン酸のアシル化誘導体を含む。
【0021】
100%の置換度は,ヒアルロナン二量体の第一級アルコール基(−C6)の全てが1つの脂肪族鎖によって置換されることを意味する。100%以上の置換度は,該二量体の全ての第一級アルコール基(−C6)に加えて,さらにいくつかの第二級アルコール基(N‐アセチルグルコサミンのC4又はグルクロン酸の−C2又は−C3)が無作為に置換されることを意味する。
【0022】
驚くべきことに,本発明によるフィルムは80〜100%,さらには160%までもの高い置換度を有する誘導体を使用する場合にさえ生物分解性であることが見出された。
【0023】
本発明の別の好ましい実施態様によれば,本フィルムは,2μmから100μmまで,好ましくは5μmから25μmまでの範囲内の厚さを有し,乾燥状態で1MPaから5000MPaまで,好ましくは500MPaから5000MPaまで,より好ましくは1000MPaから3000MPaまでの範囲内のヤング率を有する。
【0024】
本発明による乾燥した水和されていないフィルムの場合には,ヤング率が,置換度,置換基及びHAの分子量に依存しない。技術的な理由により,水和された状態でヤング率の量を計るのは非常に難しいが,目視検査により,分子量の減少に伴いフィルムの靭性が減少し,フィルムがより脆弱になることが評価され得る。さらに,置換度の増加に伴い,水和状態のヤング率は増加している。
【0025】
本発明の別の好ましい実施態様によれば,フィルム面の少なくとも一方の表面粗さRMS(二乗平均平方根)が0.5nmから100nmまでの範囲内,好ましくは0.5nmから2nmまでの範囲内にある。
【0026】
本発明の別の好ましい実施態様によれば,本フィルムは,薬学的及び美容的活性物質,好ましくはビタミン類,医薬,好ましくは細胞増殖抑止剤,ステロイド,その他の植物エキス(phytoextracts),植物錯体(phytocomplexes)又は植物活性物質等からなる群から選ばれる生物学的活性物質を含み得る。
本発明によるフィルムの独特な特徴は次のとおりである:
【0027】
1)本フィルムは疎水化ヒアルロナンのみからなる,2)合成高分子は使用されない,3)本フィルムはいかなる毒性溶媒も含まない,4)最終的な残留溶媒は無毒であり,医療用途に対する制限値未満である,5)本フィルムの膨張性及び溶解性はヒアルロナンの置換度の変更により調整することができる,6)本フィルムの分解率はヒアルロナンの置換度の変更により調整することができる,7)本フィルムは表面上で変形されず,厚さが均質である,8)本フィルムの表面外観はコントロールすることができる,9)本フィルムの機械的性質は特にその水和形においてコントロールすることができる,10)本フィルム面の少なくとも一方のRMS粗さは,2nm未満であり得る,11)本フィルムの厚さはコントロールすることができる,12)本フィルムは細胞に対して非付着性である,13)本フィルムはいわゆる「外皮表面(skin surface)」を含まない。「外皮表面」は表面の硬い膜(crust)であり,これによりフィルムが変形したり,ねじれたり,その下で泡が生じたりする。これは,しばしば高度に濃縮されたポリマーの層が表面の近くに見られる場合に,空気中で高分子溶液を乾燥する間に生じる。この層はフィルムの残りの部分に対して著しく異なる流動学的性質を有する。本発明によるフィルムの乾燥は,フィルムがその周囲の環境に解放されないような方法で行われるため(それは閉鎖空間で乾燥される),より遅い速度で乾燥され,より高い蒸気圧の溶媒蒸気が溶液の上方に存在する。そのような方式は,表面の硬い膜の形成を防ぐのに役立つ。驚くべきことに,フィルム乾燥中に閉鎖空間の湿度が低かった場合でさえ,表面の硬い膜が生じないことが見出された。
【0028】
その上でフィルムが調製される支持体に由来する疎水化剤の残渣は,本発明によるフィルムには見出されていない。
【0029】
従来技術の方法と比較すると,本発明によるフィルムの調製法は非常に単純であり,(任意の示された分子量,及び任意の示された置換度の)疎水化ヒアルロナンを各溶媒に溶解し,これを各量で定められた支持体上に塗布し,そして閉鎖空間で乾燥される該溶液の上方により高い蒸気圧の溶媒が存在する方式で該溶媒を蒸発させることからなる。この溶媒の蒸発は,溶媒の自由な蒸発によって,又はフィルムの上面を加熱又は冷却しながら支持体上のフィルムの下面を加熱することによって行われる(温度勾配及び閉鎖空間中での乾燥)。従って,本発明によるフィルムの調製法は非常に安価で単純である。さらに,本発明によるフィルムの表面が支持体に隣接する側(つまりフィルムの下面)で非常に平滑であること(2nm以下のRMS)は重要である。該フィルムの反対側の面(つまりフィルムの上面)は,乾燥条件及び誘導体のタイプに依存するが,より粗い。
【0030】
別の観点において,本発明はさらに本発明によるフィルムの調製法に関し,それは,一般式(I)によるC10−C22アシル化ヒアルロン酸誘導体を水とC−Cアルコール,好ましくはエタノール又はプロパン−2−オールの混合物中に含む溶液を調製し,それを撹拌し,その後,それを支持体上に塗布し,閉鎖空間で乾燥させ,そして支持体から取り出すことからなる。
【0031】
本発明による方法の別の好ましい実施態様によれば,該溶液中のC10−C22−アシル化ヒアルロン酸誘導体の量が,0.5重量%から3重量%までの範囲であり,C−Cアルコール,好ましくはエタノール又はプロパン−2−オールの含量が,25〜55vol%の範囲にあり,及び該溶液中の水の含量が45〜75vol%の範囲内である。調製された溶液は比較的低粘度であるため,この溶液を撹拌及び添加するときの泡の形成が防止される。
本発明による方法の別の好ましい実施態様によれば,該溶液は20〜72時間,好ましくは20〜48時間撹拌される。
【0032】
本発明による方法の別の好ましい実施態様によれば,該フィルムの乾燥は,閉鎖空間で20℃〜50℃,好ましくは30℃〜40℃の温度で,3〜6時間,好ましくは4〜5時間行われる。
【0033】
本発明による方法の別の好ましい実施態様によれば,フィルムの乾燥は,支持体上にあるフィルムの下面を,そのフィルムの反対側の上面が加熱又は冷却される温度より少なくとも1℃高い温度に加熱することにより達成される温度勾配で行なわれる。好ましくは,支持体上にあるフィルムの下面は,20℃から60℃までの範囲内の温度に加熱され,フィルムの反対側の上面は,10℃から59℃の範囲内の温度に加熱又は冷却される。より好ましくは,支持体上にあるフィルムの下面は50℃の温度に加熱され,フィルムの反対の上面は20℃の温度に冷却される。該温度勾配を適用し,フィルムを閉鎖空間で乾燥する。
【0034】
本発明による方法の別の好ましい実施態様によれば,該溶液は6時間〜12時間,好ましくは6時間,該温度勾配で乾燥される。
【0035】
本発明によるフィルムの調製の利点は,フィルムが水性溶媒に不溶であり,かつ架橋剤及び別の処理を加える必要なしに上記で定義した一般式(I)によるアシル化ヒアルロナンのみで形成されるという事実である。また,本発明によるフィルムは多量の,好ましくは85%より多い量の乾燥物質(dry matter)を含む。
【0036】
本発明によるフィルムの調製に使用されるアシル化ヒアルロナン誘導体の溶液は,様々な方法で好ましく変更されてもよく,生物学的活性物質を該溶液に混入させてもよく,該生物学的活性物質は薬学的及び美容的活性物質,好ましくはビタミン類,医薬,好ましくは細胞増殖抑止剤,ステロイド,その他の植物エキス,植物錯体又は植物活性物質等からなる群より選ばれる。
【0037】
本発明による方法の別の好ましい実施態様によれば,支持体は,ポリビニルアルコール,ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリオキシメチレン又はポリスチレンからなる群から選ばれたポリマーである。さらに,支持体は疎水化ガラスであってもよい。好ましい実施態様では,疎水化ガラスが使用される。脱塩(demi)水による支持体表面の濡れ角は,30°〜120°,好ましくは50°〜70°の範囲内である。
【0038】
本発明による上記に示された方法の利点は,その単純性のほか,それ自体非常に滑らかな適切な支持体を選ぶことにより支持体の側から表面が非常に平滑なフィルム(即ち非常に滑らかな下面を有するフィルム)を調製する可能性にある。
【0039】
フィルムの変形及び全体的な外観に影響を及ぼす可能性は非常に有用であると考えられ,その影響は,溶液が塗布されかつ乾燥が行われる支持体に対するポリマー溶液並びに乾燥中及び乾燥後のフィルムの付着(相互作用)に影響を及ぼすことにより達成される。ポリマーフィルムは支持体に完全に付着し,自然に剥がれず,それと同時に,フィルムは最小の力を加えるだけで支持体から取り外し得るのが好ましい。
【0040】
ポリマー溶液による支持体表面の良好な濡れ性は,付着の第一段階である。本発明による乾燥中の及び乾燥したフィルムの支持体への付着,及びこれによるフィルムの外観は,接触角で表される表面の濡れ性が様々である支持体の選択によって影響され得る。各タイプの誘導体(異なる修飾,異なる分子量及び異なる置換度)に対して,全く特有な濡れ性の値を有する支持体が好ましく使用され得る。よく付着させたフィルムの場合には,剥がした後,それらの表面は平滑であり,あまり付着していないフィルム又は非付着性のフィルムの場合には,その表面は多かれ少なかれ変形するか縮んでいる。好ましくは,疎水化ガラスが支持体として使用される。
【0041】
本フィルムは,有機溶媒(典型的にC-Cアルコール)と水との混合物を蒸発させることにより調製される。このように調製したフィルムの表面は,最適な溶媒,誘導体,乾燥条件及び支持体の選択によってコントロールされた表面外観及びRMS粗さを有し,また,透明なものとして調製し得る。このフィルムの厚さは2〜100μm,好ましくは5〜25μmである。このフィルムは濡れ性を調整し得る支持体上で調製されているので,支持体へのフィルムの付着,またそれによりフィルム表面の形態も影響を受け得る。
【0042】
フィルムの調製は次の方法で行われる:比較的低粘度であるアシル化ヒアルロナン誘導体の溶液を,十分に撹拌した後に,適切な支持体上に塗布し乾燥する。支持体上に塗布する溶液の粘度が低いことにより,溶液を撹拌しドーズするときの泡の形成が防止される。その後,フィルムを支持体から取り外す。乾燥時間は溶液の体積及び濃度,さらに設定温度及び使用する溶媒によって,5〜12時間まで変動する。該フィルムは,0.02%未満の溶媒,例えばエタノール,プロパン−2−オールを含み,これは医療用の残留溶媒量についての必要条件を安全に満たす。そのような材料は医療機器の構造に使用されてもよい。本発明によるそのようなフィルムの調製法の利点は,フィルムが水性溶媒に不溶性で,架橋剤及び別の処理を加える必要なしに修飾されたヒアルロナンのみからなることである。
【0043】
本発明によるフィルムは,例えば抗付着バリアの生産,及び医学及び獣医学における他の用途のために,本発明により使用することができる。人体中での本フィルムの分解は,使用される誘導体の分子量,及びアシル基によるヒアルロナンの置換度によって調節することができるが,数時間と数か月の間の範囲である。アシル化ヒアルロナン誘導体並びにそこから調製されたフィルムはインビトロで分解できる。
【0044】
フィルムの膨張性又はその溶解性解度も,使用される誘導体の分子量,及びC10−C22アシル基によるヒアルロン酸鎖の置換度によって調節される。
【0045】
先行技術特許文献に示された誘導体に対立するものとして,本発明によるフィルムがヒアルロナンの生物学的性質の原因である基であるグルクロン酸のカルボキシル基をすべて保持したC10−C22−アシル化ヒアルロン酸誘導体のみを含むことは重要である。
【0046】
本発明の別の態様は,その上でフィルムが調製されている支持体への乾燥したポリマーの付着に影響を及ぼすことによりフィルムの表面外観に影響を及ぼすことである。その結果,折り目が付かず縮まずに非常に平滑なフィルムとなり得る。
【0047】
さらに別の実施態様によれば,上に定義された本発明によるフィルムは,医薬用途,バイオテクノロジー用途,又は活性成分の沈着のための支持体として使用される。好ましくは,細胞がそれに付着しないので,抗付着バリアのような医療機器の構造に使用される。さらに,本発明によるフィルムが使用されてもよい好ましい医療用途には,例えば,慢性及び急性創傷の治療のような医学薬学用途又は例えば歯科用途が含まれる。
【0048】
用語の定義
用語「置換度」は,100個のヒアルロナン二量体に結合したC10−C22アシル基の数を意味する。例えば,20%の置換度は,100のヒアルロナン二量体当たり20がC10−C22アシル基によって置換されることを意味する。置換において,N−アセチルグルコサミンの第一級水酸基,第二級水酸基又はグルクロン酸の第級二水酸基上の水素原子が,C10−C22アシル基によって置換される。
【0049】
用語「フィルム」は自己支持性の薄いポリマーシート,平面構造を意味する。
【0050】
用語「フィルム面積」は,その寸法(m2)から計算されたフィルムの面積を意味する。
【0051】
用語「医療機器」は単独で又は診断もしくは医療目的のための特定用途に使用される付属品と組み合わせて使用可能な補助具,例えば抗付着バリアを意味する。
【0052】
用語「閉鎖空間」は,その中で特定温度で又は温度勾配でフィルムの乾燥が行なわれ,大気の自由な出入りなしに閉じられている空間を意味する。
【0053】
用語「調整培地」はTHP−1(ヒト単球癌細胞株)調整培地を意味する。それは,ヒト細胞株THP−1細胞を7日間続けて培養した10%のウシ胎児血清を添加した標準RPMI培地(Roswell Park Memorial Institute培地)である。THP−1細胞はヒト単球モデルとして使用され,それらは,多くの発育因子及びサイトカインのほか,さらに細胞外マトリックス成分の分解を起こす酵素,特にマトリックスメタロプロテアーゼ,ヒアルロニダーゼ又はエステラーゼを生産する。培地は使用又は凍結の前に,純度と無菌状態を保証するために遠心分離機にかけ,0.22μmフィルタで濾過する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】その表面外観(c)に対するヒアルロン酸ナトリウムのオレイル誘導体をベースとするフィルムの付着効果(a,b)。
図2】その表面外観に対するヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をベースとするフィルムの付着効果。
図3】調整培地中で3週間分解した後の実施例2(b)及び18(a)によって調製されたフィルムの比較。
図4】酵素を添加したDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)中でのインキュベーションの後の実施例5によるフィルム(DS=20%)の溶液におけるHAベースのオリゴ糖類の存在のHPLCによる証明。図は,(i)HAオリゴ糖類標準(標準HA2(tR = 4.1min),HA4(tR = 12min),HA6(tR = 18.1min),HA8(tR = 22.9min))の分離 (ii)ブランク試料-酵素添加DMEM及び(iii)フィルムのインキュベーションが実行された溶液,に対応する3つのクロマトグラムを開示する。
図5】実施例16によって調製されたフィルムの支持体側の形態。
図6】ヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をベースとする実施例1によって調製されたフィルムと共に24時間及び72時間のインキュベーションを実施した後の懸濁THP−1細胞の生存度。
図7】ヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をベースとする実施例1によって調製されたフィルムと共に24時間のインキュベーションを実施した後の細胞死の誘導。
図8】ヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をベースとする実施例1によって調製されたフィルムと共に72時間のインキュベーションを実施した後の細胞死の誘導。
図9】実施例1によって調製されたフィルムによって引き起こされたマウスの3T3スイス繊維芽細胞の増殖の接触抑制。
図10】フィルム:A−実施例17によって調製されたフィルムのフィルム上面,B−実施例17によって調製されたフィルムのフィルム下面,C−実施例2によって調製されたフィルムのフィルム上面,D−実施例2によって調製されたフィルムのフィルム下面,CTRL−コントロールの細胞抗付着性。
【0055】
実施例
実施例1:ヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をベースとするフィルムの調製
置換度100%及び分子量2.8×10g/molのヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体100mgを,プロパン−2−オールの55%溶液20mlに溶解し,少なくとも72時間攪拌した。攪拌後,demi水によって61°(+/−2°)の濡れ性を有する疎水化ガラス上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,下板の温度50℃,上板の温度40℃の温度勾配で12時間乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,疎水化ガラスから取り出し,特徴づけた。このように調製したフィルムの厚さは約15μmであることがわかった。乾燥物質は約92%であるとわかった。
【0056】
実施例2:ヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をベースとするフィルムの調製
置換度100%及び分子量2.12×10g/molのヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体100mgを,プロパン−2−オールの55%の溶液の20mlに溶解し,少なくとも48時間攪拌した。攪拌後,demi水によって61°(+/−2°)の濡れ性を有する疎水化ガラス上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,下板の温度50℃,上板の温度20℃の温度勾配で6時間乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,疎水化ガラスから取り出し,特徴づけた。このように調製したフィルムの厚さは約15μmであることがわかった。
【0057】
実施例3:ヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をベースとするフィルムの調製:
置換度55%及び分子量6.0×10g/molのヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体100mgを,エタノールの50%溶液20mlに溶解し,少なくとも20時間攪拌した。攪拌後,demi水によって79°(+/−4°)の濡れ性を有するポリエチレン支持体上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,下板の温度30℃,上板の温度29℃の温度勾配で12時間乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,支持体から取り出し,特徴づけられた。このように調製したフィルムの厚さは約15μmであることがわかった。
【0058】
実施例4:ヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をベースとするフィルムの調製
置換度31%及び分子量9.9×10g/molのヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体50mgを,エタノールの45%溶液20mlに溶解し,少なくとも20時間攪拌した。攪拌後,demi水によって61°(+/−2°)の濡れ性を有する疎水化ガラス上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,30℃の温度で4時間溶媒を蒸発させることにより乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,支持体から取り出し,特徴づけた。このように調製したフィルムの厚さは約8μmであることがわかった。
【0059】
実施例5:ヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をベースとするフィルムの調製
置換度20%及び分子量2.4×10g/molのヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体100mgを,エタノールの25%溶液20mlに溶解し,少なくとも20時間攪拌した。攪拌後,demi水によって102°(+/−4°)の濡れ性を有するポリスチレン支持体上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,下板の温度50℃,上板の温度20℃の温度勾配で12時間乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,支持体から取り出し,特徴づけた。このように調製したフィルムの厚さは約15μmであるとわかった。
【0060】
実施例6:ヒアルロン酸ナトリウムのエルコイル(erucoyl)誘導体をベースとするフィルムの調製
置換度160%及び分子量2.04×10g/molのヒアルロン酸ナトリウムのエルコイル誘導体100mgを,プロパン−2−オールの60%溶液20mlに溶解し,少なくとも20時間攪拌した。攪拌後,demi水によって105°(+/−2°)の濡れ性を有するポリプロピレン支持体上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,50 ℃の温度で3時間溶媒を蒸発させることにより乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,支持体から取り出し,特徴づけた。このように調製したフィルムの厚さは約15μmであることがわかった。
【0061】
実施例7:ヒアルロン酸ナトリウムのラウロイル誘導体をベースとするフィルムの調製
置換度64%及び分子量3.2×10g/molのヒアルロン酸ナトリウムのラウロイル誘導体100mgをプロパン−2−オールの50%溶液20mlに溶解し,少なくとも20時間攪拌した。攪拌後,demi水によって50°(+/−3°)の濡れ性を有する疎水化ガラス上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,下板の温度50℃,上板の温度20℃の温度勾配で6時間乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,支持体から取り出し,特徴づけた。このように調製したフィルムの厚さは約15μmであるとわかった。
【0062】
実施例8:ヒアルロン酸ナトリウムのラウロイル誘導体をベースとするフィルムの調製
置換度90%及び分子量1.88×10g/molのヒアルロン酸ナトリウムのラウロイル誘導体100mgをプロパン−2−オールの50%溶液20mlに溶解し,少なくとも20時間攪拌した。攪拌後,demi水によって61°(+/−2°)の濡れ性を有する疎水化ガラス上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,20℃の温度で6時間溶媒を蒸発させることにより乾燥させた。乾燥後,フィルムは評価され,支持体から取り出され,特徴づけられた。このように調製したフィルムの厚さは約15μmであるとわかった。
【0063】
実施例9:ヒアルロン酸ナトリウムのオレイル誘導体をベースとするフィルムの調製
置換度20%及び分子量2.8×10g/molのヒアルロン酸ナトリウムのオレイル誘導体100mgをプロパン−2−オールの50%の溶液の20mlに溶解し,少なくとも20時間攪拌した。攪拌後,demi水によって95°(+/−5°)の濡れ性を有するポリ塩化ビニル支持体上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,下板の温度50℃,上板の温度20℃の温度勾配で6時間乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,支持体から取り出し,特徴づけた。このように調製したフィルムの厚さは約15μmであるとわかった。
【0064】
実施例10:ヒアルロン酸ナトリウムのオレイル誘導体をベースとするフィルムの調製
置換度20%及び分子量2.8×10g/molのヒアルロン酸ナトリウムのオレイル誘導体300mgをプロパン−2−オールの30%溶液20mlに溶解し,少なくとも20時間攪拌した。攪拌後,demi水によって57°(+/−3°)の濡れ性を有する疎水化ガラス上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,下板の温度50℃,上板の温度20℃の温度勾配で12時間乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,支持体から取り出し,特徴づけた。このように調製したフィルムの厚さは約40μmであるとわかった。
【0065】
実施例11:ヒアルロン酸ナトリウムのオレイル誘導体をベースとするフィルムの調製
置換度20%及び分子量2.8×10g/molヒアルロン酸ナトリウムのオレイル誘導体300mgをプロパン−2−オールの30%溶液20mlに溶解し,少なくとも20時間攪拌した。攪拌後,demi水によって107°(+/−1°)の濡れ性を有する疎水化ガラス上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,下板の温度50℃,上板の温度20℃の温度勾配で12時間乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,支持体から取り出し,特徴づけた。このように調製したフィルムの厚さは約40μmであるとわかった。
【0066】
実施例12:ヒアルロン酸ナトリウムのカプリニル(caprinyl)(C10)誘導体をベースとするフィルムの調製
置換度87%及び分子量2.50×10g/molのヒアルロン酸ナトリウムのカプリニル(C10)誘導体100mgを50%エタノール20mlに溶解し,少なくとも20時間攪拌した。攪拌後,demi水によって61°(+/−2°)の濡れ性を有する疎水化ガラス上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,下板の温度60℃,上板の温度40℃の温度勾配で10時間乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,支持体から取り出し,特徴づけた。このように調製したフィルムの厚さは約15μmであるとわかった。乾燥物質は約92%であるとわかった。フィルムの膨張性は平衡状態で100%より大きいことがわかった(フィルム面積の変動を測定した)。
【0067】
実施例13:ヒアルロン酸ナトリウムのベヘノイル(behenoyl)誘導体をベースとするフィルムの調製
置換度16%及び分子量3.3×10g/molのヒアルロン酸ナトリウムのベヘノイル誘導体100mgをプロパン−2−オールの50%の溶液の20mlに溶解し,少なくとも20時間攪拌した。攪拌後,demi水によって105°(+/−2°)の濡れ性を有するポリプロピレン支持体上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,下板の温度50℃,上板の温度20℃の温度勾配で6時間乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,支持体から取り出し,特徴づけた。このように調製したフィルムの厚さは約15μmであるとわかった。
【0068】
実施例14:ヒアルロン酸ナトリウムのラウロイル誘導体をベースとするフィルムの調製
置換度29%及び分子量1.88×10g/molのヒアルロン酸ナトリウムのラウロイル誘導体100mgを,プロパン−2−オールの50%溶液20mlに溶解し,少なくとも20時間攪拌した。攪拌後,demi水によって61°(+/−2°)の濡れ性を有する疎水化ガラス上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,下板の温度50℃,上板の温度20℃の温度勾配で7時間乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,支持体から取り出し,特徴づけた。このように調製したフィルムの厚さは約15μmであるとわかった。
【0069】
実施例15:ヒアルロン酸ナトリウムのオレイル誘導体をベースとするフィルムの調製
置換度15%及び分子量2.8×10g/molのヒアルロン酸ナトリウムのオレイル誘導体100mgをプロパン−2−オールの50%溶液20mlに溶解し,少なくとも48時間攪拌した。攪拌後,demi水によって61°(+/−2°)の濡れ性を有する疎水化ガラス上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,下板の温度50℃,上板の温度20℃の温度勾配で12時間乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,支持体から取り出し,特徴づけた。このように調製したフィルムの厚さは約15μmであるとわかった。
【0070】
実施例16:ヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をベースとするフィルムの調製
置換度34%及び分子量2.67×10g/molのヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をエタノールの50%溶液20mlに溶解し,少なくとも48時間攪拌した。攪拌後,demi水によって61°(+/−2°)の濡れ性を有する疎水化ガラス上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,下板の温度50℃,上板の温度20℃の温度勾配で12時間乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,支持体から取り出し,特徴づけた。このように調製したフィルムの厚さは約15μmであるとわかった。
【0071】
実施例17:ヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をベースとするフィルムの調製
置換度60%及び分子量2.8×10g/molのヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体100mgをエタノールの50%溶液20mlに溶解し,少なくとも48時間攪拌した。攪拌後,demi水によって61°(+/−2°)の濡れ性を有する疎水化ガラス上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,下板の温度50℃,上板の温度20℃の温度勾配で12時間乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,支持体から取り出し,特徴づけた。このように調製したフィルムの厚さは約15μmであるとわかった。
【0072】
実施例18:ヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をベースとするフィルムの調製
置換度31%及び分子量2.7×10g/molのヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体100mgをプロパン−2−オールの50%溶液20mlに溶解し,少なくとも20時間攪拌した。攪拌後,demi水によって61°(+/−2°)の濡れ性を有する疎水化ガラス上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,下板の温度50℃,上板の温度20℃の温度勾配で12時間乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,支持体から取り出し,特徴づけた。このように調製したフィルムの厚さは約15μmであるとわかった。
【0073】
実施例19:ヒアルロン酸ナトリウムのラウロイル誘導体をベースとするフィルムの調製
置換度58%及び分子量1.88×10g/molのヒアルロン酸ナトリウムのラウロイル誘導体100mgをプロパン−2−オールの50%溶液20mlに溶解し,少なくとも48時間攪拌した。攪拌後,demi水によって61°(+/−2°)の濡れ性を有する疎水化ガラス上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,下板の温度20℃,上板の温度10℃の温度勾配で12時間乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,支持体から取り出し,特徴づけた。このように調製したフィルムの厚さは約15μmであるとわかった。
【0074】
実施例20:様々な疎水化剤の使用により得られた支持体の濡れ性の比較
得られるdemi水による濡れ性が10°以下となるように,疎水性化すべきガラスをまず徹底的に清浄した。その後,ガラスの疎水性化を実施した。ガラスの疎水性化については,次の疎水化剤が使用された:クロロトリメチルシラン(CTMS),(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)及びオクタデシルトリクロロシラン(OTS)。ガラス濡れ性(1%の薬剤使用濃度による)の値の結果を表1に列挙する。さらに,CTMSについては,ヘキサン中の様々な薬剤濃度で試験した。測定されたガラス濡れ性の値の結果を表2に列挙する。
【0075】
表1:1%濃度の薬剤による疎水性化に対して接触角により表されるガラス濡れ性
CAは接触角を意味する。
【0076】
表2:ヘキサン中のCTMSの様々な濃度による疎水性化による接触角により表されるガラス濡れ性
CAは接触角を意味する。
【0077】
実施例21:実施例1により調製されたフィルム中の疎水化剤残渣の測定
トリメチルシラノール(Trimethylsilanol)をヒアルロナン誘導体のOH基との反応後の塩化トリメチルシリルの残留物として分析した。その分析は,ヘッドスペースサンプラ及び単純な四重極型の質量分析法検出器を装備したガスクロマトグラフで行なわれた。実施例1によって調製されたフィルムのサンプルを,50%(vol/vol)のプロパン−2−オールの中に6mg/mlの濃度で溶解し,溶解により内部標準として作用する4.75mlのサンプル及び0.25mlのn−ブタノール(1mg/ml)をピペットでバイアルに移した。塩化トリメチルシリル (1mg/ml)の原液を,同様に50%のプロパン−2−オール中に調製し,ただちにトリメチルシラノールと反応させた。この溶液から,0.5〜15.0μg/mlの範囲の較正シリーズを内部標準としてn−ブタノールを添加して調製した。分析されたフィルムサンプルでは,最初の較正点より高濃度のトリメチルシラノールの存在は証明されなかった。即ち,フィルムサンプル中のトリメチルシラノール量は0.008重量%未満であった。
【0078】
実施例22:ヒアルロン酸ナトリウムのオレイル誘導体をベースとするフィルムの付着の表面外観に対する影響
実施例10及び11によって調製されたフィルムを,濡れ性が異なる2つのガラス (すなわち57°(+/−3°),107°(+/−1°))上で調製した。乾燥後,フィルムの表面外観を評価し,付着と関連付けた。支持体へのフィルムの付着が良好な場合は,フィルム表面は平滑であり,表面の変形がない。該フィルムは,より低い接触角を有する支持体には完全に付着し,より高い接触角を有する支持体では部分的に剥離し変形した。結果を図1a,1b,1cに示す。図は,フィルムが表面へ完全に付着している場合は平らであり,剥離した後に表面変形がないことを示唆する(図1cの右)。反対に,不完全な付着の場合には,フィルムは多かれ少なかれ変形する(図1cの左)。
【0079】
実施例23:ヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をベースとするフィルムの付着の表面外観に対する影響
実施例2によって61°(+/−2°)の濡れ性を有するガラス上に調製されたヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をベースとするフィルムを評価した。乾燥後,付着及びフィルムの外観を評価した。付着の結果を図2に示す。
【0080】
実施例24:フィルム中の残留プロパン−2−オールの測定
実施例1,8及び12によって調製されたフィルム中の有機溶媒プロパン−2−オールの残留濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。該溶媒測定の原理は,その高温の気相への転移,そのガスクロマトグラフによる分離及び続いての水素炎イオン化検出器による検出である。フィルム中のプロパン−2−オールの濃度は,検量線から読むことにより,常に2回(つまり二つのサンプルについて)測定された。サンプル重量は常に50mgであった。分析を終えた後に,残留プロパン−2−オールの濃度はすべてのフィルムにおいて最低の検量線ポイントより低いことが確定し,<0.02重量%として表された。この値は,安全にEUの薬局方によるクラス3の残留溶媒量についての必要条件を満たす。
【0081】
実施例25:その面積内の重量均質性の測定
実施例1によって調製されたフィルムを,1cm2の面積で55個の正方形に切断した。測定に先立って個々のサンプルを部屋の湿度及び温度で5時間放置した。その後,個々の正方形を分析スケールで秤量した。個々の正方形の重量の結果を表3に挙げる。平均,標準偏差及び変動系数を表に挙げたすべての値に基づいて計算した。
計算値:平均2.35mg,標準偏差0.18mg,変動系数7.51%。
【0082】
表3:フィルムの重量均質性の測定
【0083】
実施例26:その面積内の厚さの均一性の測定
1cm2の面積で総数35の正方形のグリッドを,実施例15によって調製されたフィルム上に引いた。各正方形において,フィルムの厚さを機械式厚さ計Mytutoyo VL-50によって測定した。その測定は,湿度50%及び温度25℃の安定な環境において行なわれた。測定値を表4に挙げる。平均,標準偏差及び変動系数を表に挙げたすべての値に基づいて計算した。
計算値:平均14.6μm,標準偏差1.17μm,変動系数8.02%。
【0084】
表4:厚さ均一性の測定,値はμm
【0085】
実施例27:様々な置換度を有するヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体から調製されたフィルムのpH7.4の0.1M燐酸緩衝液中での膨張性の比較
実施例2,16及び17によって調製されたフィルムを,正確に測定された正方形に切断し,秤量し,0.1M燐酸緩衝液(PBS) pH7.4,37 ℃に入れ,フィルムの膨張性をモニターした;各実験はそれぞれ3回繰り返して行われた。フィルムの重量及び寸法の変化を評価した。結果を表5に挙げる。この表からフィルムの置換度が低いほど膨張性が高いことが明白である。高い置換度の使用の場合には,フィルム面積の変化を少なくすることができる。これは多くの適用において非常に重要かもしれない。
【0086】
表5:様々な置換度を有するパルミトイル誘導体から調製されたフィルムの膨張性
【0087】
実施例28:ヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体から調製されたフィルムの調整培地中での分解−2つの置換度の比較
実施例2及び実施例18によって調製されたフィルムを,正確に測定された正方形に切断し,秤量し,調整培地に入れた。培地の汚染及び不適当な反応が生じないように,すべての調製は層流箱内で実施した。37℃で,フィルムの面積の変化及びその外観を,所定間隔でチェックした。この特性は分解に関係し得る。調整培地は一定間隔で交換した;実験は3回繰り返して実施した。実施例2により調製されたフィルムは実施例18により調製されたフィルムに比べて著しく遅く分解し始めた。結果を図3a及び3bに示す。ここでは,調整培地において3週間分解した後のフィルムの外観が示されている。表6は,実施例2及び実施例18によるフィルムの1週間の分解後,及び実施例2によるフィルムの3週間の分解後(実施例18によるフィルムは3週間後には粉々に分解されたか,溶けた)のフィルム面積の変化を示す。これらの結果に基づくと,分解速度がヒアルロン酸ナトリウムのアシル鎖による置換度に著しく依存することは明白である。実施例2によって調製された高度に置換されたフィルムの場合には,分解が数か月の期間で進行した。
【0088】
表6:調整培地における1週後のフィルム面積の変化,2つの置換度の比較
【0089】
実施例29:ヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をベースとするフィルムの分解
実施例5によって調製されたフィルムのサンプルを,フィルム1mgあたり300IUの酵素を追加した細胞培養の標準培地(ダルベッコ改変イーグル培地)でインキュベートした。インキュベーションは37℃で実施した。また,サンプルは24時間後に分析した。サンプル分析は,HPLCシステム,アライアンス(ウォータース)で内部の標準操作手順に従って行なわれた。24時間後,まだ分解していない数片のフィルムを観察することができた。それにもかかわらず,図4に示されるように,ヒアルロナンをベースとするオリゴ糖類が溶液中で検出された。
【0090】
実施例30:ヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をベースとするフィルムの分解
実施例2により調製されたフィルムのサンプルを,フィルム1mgあたり300IUの酵素を追加した細胞培養の標準培地(ダルベッコ改変イーグル培地)でインキュベートした。インキュベーションは37℃で実施した。また,サンプルは24時間後に分析した。サンプル分析は,HPLCシステム,アライアンス(ウォータース)で内部標準操作手順に従って行なわれた。24時間後,ヒアルロナンをベースとするオリゴ糖類は,溶液中に検出されなかった。これは,実施例2によるフィルムについて非常に長い分解時間が観察された実施例28に適合するものである。これは置換度による分解の調節の可能性を実証する。
【0091】
実施例31:ヤング率によるフィルムの特徴づけ
ヤング率を,実施例10,15,16及び19によって調製されたフィルムについて乾燥状態で測定した。フィルムを100Nヘッドの単段引張試験機INSTRON3343による機械的性質に関して試験した。ヤング率は,少なくとも9つの有効な測定の平均値に基づいて計算した。表7は乾燥した水和されていないフィルムのヤング率が,分子量,置換又は置換度に依存しないことを示す。
【0092】
表7:フィルムのヤング率
【0093】
実施例32:フィルム表面形態の評価及びAFMによるRMSの測定
実施例8及び16によって調製されたフィルムを原子間力顕微鏡(AFM)法によって評価し,特にそこでは表面の外観及び性質をモニターした。特に,RMS粗さ(二乗平均平方根粗さ)を測定した。RMSの値が2nm以下である非常に平滑な表面が支持体の側で得られることが見出された(実施例16によるフィルム用の図5を参照)。乾燥中に大気に暴露されるフィルムの側は通常はより粗く,RMSは約50nm以上である。
【0094】
実施例33:温度勾配及び閉鎖空間において乾燥させたフィルムの比較
実施例8及び19によって調製されたフィルムを,乾燥後に視覚的に比較した。両方ともフィルムの表面は変形せず,表面の硬い膜はいずれのフィルムにも生じなかった。両方のフィルムは質的に同じ(目視比較)であった。
【0095】
実施例34:ヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をベースとする実施例1によって調製されたフィルムと共に24時間及び72時間インキュベートした後のTHP−1懸濁細胞の生存度
THP−1細胞株を10%ウシ胎児血清を添加した培地で培養した。十分な密度及び生存度(自動細胞計数装置CASY TT,Rocheによって測定された)を達成した後に,細胞を10%培地2ml中の6ウェルパネルに接種した。試験フィルムを,1mg/ml及び0.5mg/mlの量で該細胞に添加した。24時間及び72時間のインキュベーションの後,細胞を洗浄し,それらの生存度及び細胞死の出現をフローサイトメーターMACSQuant(登録商標)(Miltenyi Biotec)上の検出キットApoFlowEx(登録商標) FITC Kit(Exbio)によって検出した。ヨウ化プロピジウムの螢光が検出されなかった場合,細胞は生存と評価された。図6は,24時間のインキュベーションの後に生存率のごくわずかな減少があり,それは72時間後にはもはや検出されないことを示す。従って,試験されたフィルムは前述の濃度において非細胞毒性であるとして評価される。
【0096】
実施例35:ヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体をベースとした実施例1により調製されたフィルムと共に24時間及び72時間インキュベートした後のTHP−1懸濁細胞の細胞死の分析
THP−1細胞株を10%ウシ胎児血清を添加した培地で培養した。十分な密度及び生存度(自動細胞計数装置CASY TT,Rocheによって測定された)を達成した後に,細胞を10%培地2ml中の6ウェルパネルに接種した。試験フィルムを,1mg/ml及び0.5mg/mlの量で該細胞に添加した。24時間及び72時間のインキュベーションの後,細胞を洗浄し,それらの生存度及び細胞死の出現をフローサイトメーターMACSQuant(登録商標)(Miltenyi Biotec)上の検出キットApoFlowEx(登録商標) FITC Kit(Exbio)によって検出した。細胞死(アポトーシスとネクローシス)の存在の評価はキット製造者の推奨に従って実施した。要するに,個別細胞の個体群を,ヨウ化プロピジウム及びAnnexin V-FITCの蛍光強度に基づいて3つの群:両方のチャネルに陰性(生存細胞),Annexin V-FITCのチャネルにのみ陽性(アポトーシス細胞)及びチャネルヨウ化プロピジウム+/-Annexin V-FITCに陽性の細胞 (ネクローシス細胞)に分けた。図7及び8は,24時間後及び72時間後に,培養液にアポトーシス又はネクローシスの細胞の数に大きな増加が生じず,従って,試験されたサンプルが,細胞死を引き起こさないとして評価され得ることを示唆する。
【0097】
実施例36:マウス3T3スイス繊維芽細胞の増殖の接触抑制
マウスの3T3スイス繊維芽細胞株を10%ウシ胎児血清を添加した培地で培養した。指数増殖期に,細胞を10%の培地2ml中6ウェルパネルに接種した。コンフルエントに達した後,実施例1により調製された1cm2の面積の試験フィルムを入れて,単層培養上のフィルムが著しく動かないように,シリコン滅菌リングを載せた。同時に,対照細胞を処理を加えることなく,シリコンリングのみと共にインキュベートした。72時間のインキュベーションの後,フィルムサンプル及びシリコンリングを除去し,細胞をPBSで洗浄し,4%のホルムアルデヒドによって固定した(10分間/室温)。細胞を脱イオン水で洗浄した後,クリスタルバイオレットで染色し(水中0.1%,30分間/室温),色素を洗い流した後,細胞領域を撮影し光学顕微鏡下で観察した。試験材料の下の細胞面積,細胞の損傷の範囲及び損傷を受けたゾーンの大きさが評価された。拡大写真(図9)は,単層の損傷を受けたゾーンが限られており,フィルムの直下の細胞のみが損傷を受けており,それはおそらく少しの摩擦によるものであろうことを明白に示す。光学顕微鏡からの詳細は,細胞がフィルムの下で再度成長する傾向があったことを示す。試験されたフィルムの縁の細胞についてはいかなる損傷も形態学的変化も観察されなかった。従って,試料が細胞増殖の接触抑制を示さないと仮定することができる。
【0098】
実施例37:フィルムの細胞の抗付着性
実施例2及び実施例17(誘導体は2つの異なる置換度を有する)により調製されたフィルムを,無菌的方法で1cm2の寸法の切片に裁断した。これらの切片を,6ウェル培養パネルに上向き又は下向きに入れた。その後,それらに無菌のシリコンリングを載せ,このように調製したサンプルに,10%のウシ胎児血清を含む一次ヒト線維芽細胞(NHDF)の培養液(2ml)をピペットで入れた。その間にNHDF懸濁液を調製し,100000細胞/サンプルの量でフィルム面上のシリコンリングの中央にピペットで移した。細胞を含むサンプルを72時間インキュベートし,光学顕微鏡下で24時間の間隔でチェックした。良好な付着性を有する細胞培養に適したポリスチレンを,陽性対照(CTRL)として使用した。インキュベーションの完了後,シリコンリングを除去し,細胞を有するフィルムを4%のホルムアルデヒドによって10分間固定し,その後,水中の1%のクリスタルバイオレットで染色した(10分間)。未結合のクリスタルバイオレットを徹底的に(蒸留水で2×5分間のすすぎ)洗い流した後に,サンプルを100倍の倒立顕微鏡(Nicon)を使用して撮影した。結果を図10に示す。CTRL写真においては,ほとんどコンフルエントな細胞層が見られ得る。フィルムの写真(A-D)においては,恐らく培地中での長いインキュベーションにより形成され,クリスタルバイオレットによって可視化された一定の構造が観察される。しかしながら,細胞はフィルム上には存在しない。従って,フィルムはこの系において完全に非付着性であり,培地中のタンパク質の存在さえ付着を促進しないと述べることができる。
【0099】
実施例38:オクテニジン二塩酸塩を用いたフィルムの調製
エタノール中の10mg/mlの重量濃度のオクテニジン二塩酸塩の原液20μlを50%のプロパン−2−オール20mlと混合した。徹底的に撹拌した後,57%の置換度及び2.67×10g/molの分子量を有するヒアルロン酸ナトリウムのパルミトイル誘導体100mgをこの溶液に添加した。該溶液を72時間攪拌した。攪拌後,65°(+/−3°)の濡れ性を有する疎水化ガラス上に該溶液をドーズし,閉鎖空間中,下板の温度50℃,上板の温度20℃の温度勾配で6時間乾燥させた。乾燥後,フィルムを評価し,支持体から取り出し,特徴づけた。このように調製したフィルムの厚さは約15μmであるとわかった。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10