(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796087
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】機能性フィルム、機能性容器、及び鮮度保持方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20201119BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20201119BHJP
B65D 85/52 20060101ALI20201119BHJP
A23B 7/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
C08J5/18
B65D85/50 120
B65D85/52
A23B7/00 101
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-565661(P2017-565661)
(86)(22)【出願日】2017年2月3日
(86)【国際出願番号】JP2017004049
(87)【国際公開番号】WO2017135433
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2018年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2016-19560(P2016-19560)
(32)【優先日】2016年2月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516037442
【氏名又は名称】川上 茂樹
(73)【特許権者】
【識別番号】512100102
【氏名又は名称】株式会社ニッショー化学
(73)【特許権者】
【識別番号】301017112
【氏名又は名称】日産スチール工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516037615
【氏名又は名称】有限会社ゴーイング
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】川上 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 正人
(72)【発明者】
【氏名】西部 清志
【審査官】
加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭61−025340(JP,B1)
【文献】
特開平09−323751(JP,A)
【文献】
特表2002−543977(JP,A)
【文献】
特開平03−212353(JP,A)
【文献】
特開2002−309020(JP,A)
【文献】
特開平10−278167(JP,A)
【文献】
特開平03−297347(JP,A)
【文献】
特開平03−167263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
A23B 7/00
B65D 85/50
B65D 85/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンを表面に付着可能なプラスチック製の機能性フィルムであり、
前記エチレンを、二酸化炭素と水とに分解、及び、前記機能性フィルムの一方の面から他方の面に排出可能な触媒機能を有する粒径が40nm〜400nmの酸化亜鉛を、1ppb〜12ppc(12%)の体積割合でポリエチレンに均一になるように混和して厚さ0.004mm〜0.1mmのシート状に形成してなる、機能性フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の機能性フィルムを、袋状構造、筒状構造、トンネル構造、層状構造、及び入れ子構造のうちいずれか1つ以上を含む構造に形成してなる機能性容器。
【請求項3】
植物又は食物の鮮度を保持する鮮度保持方法であって、
請求項1に記載の機能性フィルム若しくは請求項2に記載の容器を、前記植物又は前記食物の保存箇所に施用する施用工程と、
前記植物又は前記食物の近傍において、前記植物又は前記食物から発生する前記エチレンを、請求項1に記載の機能性フィルム若しくは請求項2に記載の容器に付着する付着工程と、を含むことを特徴とする鮮度保持方法。
【請求項4】
前記付着工程によって付着した前記エチレンを分解して得た前記二酸化炭素および前記水を、請求項1に記載の機能性フィルムの表面若しくは請求項2に記載の容器の表面に維持する工程をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の鮮度保持方法。
【請求項5】
植物又は食物の鮮度を保持する鮮度保持方法であって、
請求項1に記載の機能性フィルム若しくは請求項2に記載の容器を、前記植物又は前記食物の保存箇所に施用する施用工程と、
前記植物又は前記食物の近傍において、前記植物又は前記食物から発生する前記エチレンを、請求項1に記載の機能性フィルム外側に、若しくは請求項2に記載の容器外に排出する排出工程と、を含むことを特徴とする鮮度保持方法。
【請求項6】
請求項1に記載の機能性フィルム若しくは請求項2に記載の容器を用いて、植物又は食物から発生する前記エチレンの付着度と、前記エチレンの二酸化炭素及び水への分解度と、を促進し、前記植物又は前記食物の鮮度を保持する鮮度保持方法であって、
請求項1に記載の機能性フィルム若しくは請求項2に記載の容器を、前記植物又は前記食物の保存用資材又は運搬用資材に施用する施用工程と、
前記植物又は前記食物を、請求項1に記載の機能性フィルム若しくは請求項2に記載の容器で、前記植物又は前記食物の表面近傍において包囲又は内包して貯蔵する貯蔵工程と、
を含むことを特徴とする鮮度保持方法。
【請求項7】
請求項1に記載の機能性フィルムまたは請求項2に記載の容器を暗所下で用いる、請求項3〜6のいずれか1項に記載の鮮度保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物又は食物(特に生鮮食材、青果物など)の鮮度保持(植物の生育保持を含む)に用いられる機能性フィルム及び機能性容器と、該機能性フィルム又は該機能性容器を用いて、植物又は食物の鮮度を保持する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生物を個体・組織レベルで生育ポテンシャルを維持したまま、新鮮に保存可能な技術は、稀少植物の保全ばかりでなく世界的な食糧危機が叫ばれる中、野菜や果実の実生の保存にも応用できるので、重要である。一方、デコレーション用の切り花などの花卉類、キノコ類の保管・輸送に資する分野での生の生物試料の長期保存技術も望まれている。しかしながら、動植物の細胞レベルでの凍結保存技術は確立されてはいるものの、個体・組織レベル、さらに生きたまま(エネルギー消費活動を保ったまま)の保存技術、及び、植物・食物のうまみに関する効果的な保存技術は少ない。
【0003】
このような背景があり、最近では、エチレンにより植物組織自身にダメージを与えるプログラムされた自己消化・融解反応に関与する遺伝子発現や翻訳反応、及び、植物を長期保存することにより進行する生物体内のNADPやATPなどのエネルギー物質の消失を最小限に抑制するあらたな手法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Journal of the Japanese Society for Horticultural Science.37.(3)256-260, 1968
【非特許文献2】香川県農業試験場研究報告 第34号(1982年10月) 44-53
【非特許文献3】香川県農業試験場研究報告 第35号(1983年10月) 39-49
【非特許文献4】日本食品保蔵科学会誌 VOL. 24 NO.6 1998
【非特許文献5】日本食品保蔵科学会誌VOL. 33 NO.3 2007
【非特許文献6】長崎農林技術センター研究報告 第2号、97-118,2011
【0005】
【特許文献1】特開平9−196545号公報
【特許文献2】特開2009−35327号公報
【特許文献3】特開2010−207223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プラスチックフィルムはその材質、延伸方法や厚みによって物性(水蒸気透過性、ガス透過性)に違いがみられる。例えば、一般に青果物に供試されるフィルムは水蒸気透過性が低く、ガス透過性の高いもの(ポリエチレン)が用いられ、内部の湿度は100%近くなり、青果物の蒸散は抑えられる。したがって、プラスチックフィルム包装は青果物の蒸散作用によるしなびを完全に抑制できるので、流通中の青果物の生鮮消耗を抑えることができる。しかしながら、気温の高い時期では、青果物自体のガス障害や微生物の繁殖、及び、老化ホルモン、エチレンガス発生を促進させ、老化熟成・腐敗を引き起こす原因にもなるため、低温管理と組み合わせることが必要とされている。例えば、産地から消費地に至る青果物の各流通過程で、エチレンガス濃度がわずか0.005ppmという微量でも流通量全体の25〜46%が取り返しのつかない損害を被る恐れがある。このように、エチレンガス濃度で安全なレベルというものはない。一般的に流通センターの貯蔵室では、完熟農産物とそうでないものが混ざった状態になっており、エチレンガスによる収穫後の損失は25〜30%にも達すると算出されている。
【0007】
そこで、エチレンを分解する技術は、これまでに多くの企業が光触媒により実現している。しかしながら光触媒の場合、光条件を必要とすること、さらに、光触媒作用により多くのヒドロキシルラジカルを発生させ、エチレンを分解すると同時に、野菜や果物など植物に障害を発生させてしまう欠点を有している。また、脱酸素剤を併用した食品鮮度保持剤においては、アセトアルデヒドが生成することが知られており、これらの臭気は、開袋時刺戟臭・異臭として感知されるばかりでなく、食品の喫食時、食品に移行した臭気が消費者に不快感や違和感を与えるため、該臭気を除去する必要がある。
【0008】
そこで、本発明は、植物又は食物から発生したエチレンを効率よく付着させ分解する機能性フィルムに関するものであり、本分解活性は光条件下だけでなく暗所下でもエチレンを水と二酸化炭素分子に完全分解することが可能な機能性フィルム及び機能性容器を提供する。さらに、該機能性フィルム又は該機能性容器を用いた鮮度保持方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の機能性フィルムは、エチレンを表面に付着可能なプラスチック製のものであり、前記エチレンを、二酸化炭素と水とに分解、又は/及び、前記機能性フィルムの一方の面から他方の面に排出可能な触媒機能を有する物質が、少なくともppmオーダー又はppbオーダーで含有された、又は、表面に塗布若しくは蒸着された、シート状又は層状のものである。
【0010】
(2)本発明の機能性容器は、上記(1)の機能性フィルムを、袋状構造、筒状構造、トンネル構造、層状構造、及び入れ子構造のうちいずれか1つ以上を含む構造に形成してなるものである。
【0011】
(3)別の観点として、本発明は、所定の固形形状に形成され、エチレンを表面に付着可能なプラスチック製の機能性容器であり、前記エチレンを二酸化炭素と水とに分解可能な触媒機能を有する物質が、少なくともppmオーダー又はppbオーダーで含有された、又は、表面に塗布若しくは蒸着されたものであってもよい。
【0012】
(4)本発明に係る植物又は食物の鮮度を保持する鮮度保持方法は、上記(1)に記載の機能性フィルム若しくは上記(2)又は(3)に記載の機能性容器を、前記植物又は前記食物の保存箇所に施用する施用工程と、前記植物又は前記食物の近傍において、前記植物又は前記食物から発生するエチレンを、請求項1に記載の機能性フィルム又は請求項2に記載の容器に付着する付着工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
(5)上記(4)の鮮度保持方法においては、前記付着工程によって付着した前記エチレンを分解して得た前記二酸化炭素および前記水分を、上記(1)に記載の機能性フィルムの表面若しくは上記(2)又は(3)に記載の機能性容器の表面に維持する工程をさらに含むことが好ましい。
【0014】
(6)他の観点として、本発明の植物又は食物の鮮度を保持する鮮度保持方法は、上記(1)に記載の機能性フィルム若しくは上記(2)又は(3)に記載の容器を、前記植物又は前記食物の保存箇所に施用する施用工程と、前記植物又は前記食物の近傍において、前記植物又は前記食物から発生する前記エチレンを、請求項1に記載の機能性フィルム外側に、若しくは上記(2)又は(3)に記載の容器外に排出する排出工程と、を含むものであってもよい。
【0015】
(7)別の観点として、本発明の鮮度保持方法は、上記(1)に記載の機能性フィルム若しくは上記(2)又は(3)に記載の機能性容器を用いて、植物又は食物から発生するエチレンの付着度と、前記エチレンの二酸化炭素及び水への分解度と、を促進し、前記植物又は前記食物の鮮度を保持する方法であって、上記(1)に記載の機能性フィルム若しくは上記(2)又は(3)に記載の容器を、前記植物又は前記食物の保存用資材又は運搬用資材に施用する施用工程と、前記植物又は前記食物を、請求項1に記載の機能性フィルム又は請求項2に記載の容器で、前記植物又は前記食物の表面近傍において包囲又は内包して貯蔵する貯蔵工程と、を含むものであってもよい。
【0016】
上記構成によれば、光条件下だけでなく暗所下でも、植物又は食物の鮮度を保持したまま長期間貯蔵できるプラスチック包装貯蔵を行うことが可能となる。ここで、プラスチック包装貯蔵とは、プラスチックフィルムの水蒸気とガス体との透過性の違いを利用し、植物又は食物をプラスチックフィルムで包装することにより貯蔵中の蒸散及び呼吸作用を抑え、長期間にわたり鮮度を保持することができることをいう。なお、密封されたフィルム内のガス環境は、植物又は食物自体の呼吸作用によってフィルム内の酸素が消費され、炭酸ガスが蓄積される。環境温度や包装資材の材質及び包装する植物又は食物によってフィルム内のガス環境は変わり、例えば低温下(5℃以下)で葉菜類を厚さ0.03mmの低密度ポリエチレンで密封包装すると、フィルム内部のガス環境は、酸素濃度が2〜3%、炭酸ガスが5〜10%で安定する。大気中の酸素濃度は20.9%、炭酸ガスは0.1%未満なので、大気に比べると低酸素−高炭酸ガス濃度の環境になり、この環境下で貯蔵すると大気で貯蔵したものに比べ、鮮度の低下を抑える効果(CA効果)が知られている。
【0017】
上述のプラスチックフィルム又はプラスチック容器による包装貯蔵はMA貯蔵(Modified Atmosphere)とも呼ばれ、多くの植物又は食物を流通する際の内装資材として利用されている。包装貯蔵する目的としては前述のCA効果以外にも、1.青果物等の植物又は食物自体の蒸散作用によるしおれ抑制、2.表面の機械的損傷抑制、3.温度変動による青果物表面の結露抑制、など示されている。
【0018】
プラスチックフィルムはその材質、延伸方法や厚みによって物性(水蒸気透過性、ガス透過性)に違いがみられ、例えば、一般に青果物に供試されるフィルムは水蒸気透過性が低く、ガス透過性の高いものLDPE(低密度ポリエチレン)が用いられている。水蒸気透過性が低いフィルムで包装すると内部の湿度は高まり、青果物の蒸散は抑制される。青果物自体の呼吸作用によってフィルム包装の内部は低酸素−高炭酸ガス濃度下になり、呼吸抑制効果などが発揮することで鮮度保持が可能となる。
【0019】
ここで、本発明に用いられるプラスチックフィルム素材の例を挙げる。LDPE:低密度ポリエチレンの他に使用されているのは、HDPE:高密度ポリエチレン、OPP:延伸ポリプロピレン、CPP:無延伸ポリプロピレン、ON:延伸ナイロン(ポリアミド)、CN:無延伸ナイロン(ポリアミド)、BDR:ポリブタジェン、PMP:ポリメチルベンテン、BOV:延伸ビニロン、OV:PVDC塗布延伸ビニロン、PET:ポリエチレンテレフタレート、PVDC:ポリ塩化ビニルデン、KOP:ポリ塩化ビニルデン塗布OPP、KON:ポリ塩化ビニリデン塗布ON、EVOH:エチレン・ビニルアルコール共重合体、EVA:エチレン・酢酸ビニル共重合体、PS:ポリスチレン、PT:普通セロファン、MST:ポリマータイプ防湿セロファンなどがある。
【0020】
しかし、ガス透過性の低いフィルムでは炭酸ガス濃度が高くなりすぎ、ガス障害(異臭の発生、組織が水浸状になる)が発生する。また、流通の始発点から末端まで同一温度帯で流通することが少なく、温度変動、ことに産地予冷後の同音流通での昇温はフィルム内部のエチレンガス濃度の上昇にもつながり、青果物組織の老化・熟成反応が促進し、急激な鮮度低下をもたらす。
【0021】
そこで、エチレン付着(吸着)効果を有するプラスチックフィルム素材に、エチレンを効率よく分解、又は/及び、エチレンを機能性フィルムの内部から外部に(一方の面から他方の面に)排出する触媒能力を有する物質(触媒物質)を含有、又は、表面に塗布若しくは蒸着する。ここで、エチレンを効率よく分解、又は/及び、エチレンを機能性フィルムの内部から外部に排出する触媒能力を有する物質としては、過マンガン酸カリウム、塩化パラジウム、ニッケル、プラチナ、酸化鉄、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化亜鉛、または、それらの物質にケイ素でコーティングした修飾型有機ケイ素化合物などが挙げられる。これらの物質の終濃度が0.1%から10%になるようにプラスチックフィルム素材と均一になるように混和(含有)、若しくは、フィルム素材表面に塗布、若しくは蒸着させることにより、本発明に係る機能性フィルム表面上に付着したエチレンから、植物又は食物に障害をもたらさない水及び二酸化炭素まで分解する触媒サイクルを有する機能、又は/及び、機能性フィルム表面上に付着したエチレンを機能性フィルムの内部から外部に排出する機能、を付与し、さらに、エチレンガスより分解発生した水分及び二酸化炭素より、植物又は食物からの水分の放出の抑制、二酸化炭素の濃度の上昇効果による呼吸の抑制を短時間で効率よく達成させる。
【0022】
特に、本発明に係る機能性フィルムを、植物又は食物の表皮組織近傍に施し、植物又は食物から発生したエチレンを本発明に係る機能性フィルムの表面又は近傍に集積させることで、集積させたエチレンガスを分解可能な状況下で完全分解させ、発生させた水分の供給による蒸散を抑制し、また、二酸化炭素の濃度上昇による呼吸の抑制を行うことができる。
【0023】
これにより、植物又は食物からエチレンが発生する際、近傍のフィルムにエチレン吸着能を担持する。したがって、エチレンが担持した本発明に係る機能性フィルムそのものがエチレンの吸着剤として機能することができるので、従来のエチレン吸着剤よりも、エチレンを吸着しやすくなる。また、エチレン分解により発生した水分、二酸化炭素によって誘導される呼吸の抑制と蒸散抑制効果を従来よりも向上することができ、引いては、植物又は食物の鮮度保持に寄与することができる。また、本発明に係る機能性フィルム本発明に係る機能性フィルムにおいては、エチレンを機能性フィルムの内部から外部に排出することによって、植物又は食物の鮮度保持に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る実施例における0.02mmの鮮度保持袋(マスターバッチ含有量0.6%(質量割合))の30ppmと100ppmエチレン減衰効果を説明するための図である。
【
図2】本発明に係る実施例における0.006mmの鮮度保持袋(マスターバッチ含有量0.6%(質量割合))の30ppmと100ppmエチレン減衰効果を説明するための図である。
【
図3】本発明に係る実施例における0.01mmの鮮度保持袋(マスターバッチ含有量1.0%(質量割合))の100ppmエチレン減衰効果を説明するための図である。
【
図4】本発明に係る実施例における0.01mmの鮮度保持袋(マスターバッチ含有量1.0%(質量割合))の100ppmエチレン排出効果を説明するための図である。
【
図5】本発明に係る実施例におけるコントロール袋と鮮度保持袋の標準エチレンガスの計測データ比較結果を示す図である。
【
図6】本発明に係る実施例におけるエチレンから二酸化炭素への分解過程の様子を示す図である。
【
図7】本発明に係る実施例における低密度ポリエチレン袋(無加工)のエチレン吸着過程の様子を示す図である。
【
図8】本発明に係る実施例における鮮度保持袋内のミニトマトから発生するエチレン濃度変化の様子を示す図である。青いバーは無加工の低密度ポリエチレン袋、赤いバーが鮮度保持袋サンプルのエチレン濃度を示す。
【
図9】本発明に係る実施例における鮮度保持袋内のホウレンソウから発生するエチレン濃度変化の様子を示す図である。
【
図10】本発明に係る実施例における保存試験後のミニトマトの保存状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
本実施の形態に係る機能性フィルム及び機能性容器は、所定のフィルム素材に上述のエチレン分解機能を有する粒体化合物(径は40nm〜400nm程度、好ましくは100nm〜200nm)を少なくともppmオーダー又はppbオーダー(1ppb〜12ppc(12%)程度、好ましくは1ppb〜5ppc(5%)程度)の体積割合で混和(含有)、若しくは、フィルム素材表面に塗布、若しくは蒸着させてなる。具体的には、(1)フィルム成形加工またはインフレーション成形加工することによりシート状の機能性フィルム、(2)T-ダイ成形加工又はラミネート加工成形により機能性フィルムを熱蒸着(ヒートシール)させることで様々なフィルムに張り合わせた多層のエチレン分解サイクルを有する機能性フィルム、(3)上記(1)、(2)の機能性フィルムを加工して、袋状構造、筒状構造、トンネル状構造、層状構造、又は入れ子構造とした機能性容器、を製造できる。本実施の形態で用いられるフィルム素材の例としては、LDPE:低密度ポリエチレン、HDPE:高密度ポリエチレン、OPP:延伸ポリプロピレン、CPP:無延伸ポリプロピレン、ON:延伸ナイロン(ポリアミド)、CN:無延伸ナイロン(ポリアミド)、BDR:ポリブタジェン、PMP:ポリメチルベンテン、BOV:延伸ビニロン、OV:PVDC塗布延伸ビニロン、PET:ポリエチレンテレフタレート、PVDC:ポリ塩化ビニルデン、KOP:ポリ塩化ビニルデン塗布OPP、KON:ポリ塩化ビニリデン塗布ON、EVOH:エチレン・ビニルアルコール共重合体、EVA:エチレン・酢酸ビニル共重合体、PS:ポリスチレン、PT:普通セロファン、MST:ポリマータイプ防湿セロファンなどが挙げられる。該フィルム素材に上述のエチレン分解機能を有する化合物を混和させた場合、機能性フィルム及び機能性容器の厚みは0.004mmから0.1mmなど厚みに関係なくエチレン吸収を実現することが可能となる。本実施の形態における機能性フィルムの素材及び機能性容器の素材は、上記例の材料が2つ以上混合されたものであってもよい。また、本発明の実施の形態において用いられるフィルム素材はエチレンを付着(吸着)することのできる素材であれば特に制限はない。
【0027】
ここで、本実施の形態の別形態に係る機能性容器は、射出成形などによって例えば蓋付きの箱型形状に固形形成されたものであるが、箱型形状など一定の形状に固形形成できる方法であれば、どのような成形方法であってもよい。また、本実施の形態の別形態に係る機能性容器は、上述のエチレン分解機能を有する化合物を混和(含有)、若しくは、箱型形状に固形形成した後、表面に塗布若しくは蒸着させてなる。なお、ここでの箱型形状の例としては、立方体、直方体、三角柱、円柱、三角錐などが挙げられるが、内部に物を保管できるような状態のものであれば、どのような形状のものであってもよい。また、この別形態に係る機能性容器に用いられるエチレンを付着(吸着)する容器素材の例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)(高圧法)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)(低圧法)、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)、架橋ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリル・スチレン(AS)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート=高耐熱性のエンプラ(PCT)、飽和ポリエステル樹脂、ポリメチルペンテン(TPX)などが挙げられる。なお、この別形態に係る機能性容器の素材においては、上記例の材料が2つ以上混合されたものであってもよい。また、この別形態に係る機能性容器において用いられる容器素材はエチレンを付着(吸着)することのできる素材であれば特に制限はない。
【0028】
次に、本実施形態における機能性フィルムを鮮度保持フィルムとして使用する場合について説明する。該鮮度保持フィルムの施用方法は、例えば、該鮮度保持フィルムを袋状又は容器に加工して、鮮度保持袋又は鮮度保持容器として、内部に青果物等の植物又は食物を封入し、または、該鮮度保持フィルムで青果物等の植物又は食物を覆い、青果物等の植物又は食物に直接接種させたり、青果物等の植物又は食物を保存する段ボール、コンテナなどの内面に機能性フィルムを直接貼り付けたり、青果物等の植物又は食物を保存するための貯蔵庫などの設備の内面に貼付して活用したりすることができる。また、例えば、青果物等の植物又は食物の貯蔵庫などで換気装置、吸気装置に機能性フィルムを取り付け使用してもよい。
【0029】
本実施形態における鮮度保持袋、鮮度保持容器を用いて保存する青果物については、植物の種類、育成方法、気候などに基づいて適宜決定すべきである。
【0030】
なお、上述のエチレン分解機能を有する化合物(触媒物質)は、青果物等の植物又は食物から発生するエチレンと共に、腐食の原因となるアルデヒドなどの腐生ガスも除去することが可能である。保存後、エチレン除去を行いながら、腐生ガスの分解処理を同時に行うことにより、鮮度保持効果を向上させる。なお、鮮度保持の条件としては、暗所化でもほぼ光条件下と同様にエチレン分解が機能する。また、青果物等の植物又は食物の保存において重要な要素である湿度保持条件下においても低湿度条件と同様に、ガス成分を変化させても、エチレン分解性能を発揮する。具体的には、或いは個別包装内に加湿施用したり、ガス分圧を調整することが鮮度保持に好ましく、特に植物又は食物の表面(例えば、青果物の果実部の表面)の近傍に配置するように鮮度保持シートを施用することがより好ましい。
【0031】
ここで、上記鮮度保持袋は、空隙率及び比表面積の高い中空構造、又は、換気機能を有しているので、植物の呼吸に担持される最低限の酸素の補給、より呼吸を抑制する二酸化炭素をエチレン分解により提供することができる。これにより、青果物等の植物又は食物の呼吸抑制を介して鮮度保持がしやすくなり、日持ちを促進することが可能となる。鮮度保持袋及び鮮度保持容器は、表面に高い吸水力(水分を吸着する力)を有し、青果物等の植物又は食物に対して保水性、保湿性を付与することができる。
【0032】
よって、青果物等の植物又は食物を保存するにあたり、鮮度保持袋又は鮮度保持容器を施用することにより、効果的にエチレンの分解及び機能性フィルムが有するエチレンの二酸化炭素・水への感染分解のため、結果的に青果物等の植物又は食物の呼吸を抑制するとともに、青果物等の植物又は食物に湿度を付与することにより鮮度保持を促進させることを図ることができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
【0034】
上記鮮度保持袋として低密度ポリエチレンを用いて、エチレンガス分解試験を実施した。ここで用いた低密度ポリエチレン袋の材料には、低密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンに株式会社ニッショー化学のAP−MOマスターバッチ分散液(以下、単に「マスターバッチ」と表記することがある)を0.1%から10%の質量割合で混和したものを使用した。
【0035】
エチレン吸収・分解に関する実証試験は、先ずサンプル袋内の空気を、エチレンを含まない乾燥空気でエチレンの標準ガスを希釈することにより、エチレン濃度が10ppm、30ppm、100ppm、300ppmのガスの入った1000ccのテドラーバック(フッ化ビニル樹脂製のガス分析用サンプリングバッグ)を用いて作成した。鮮度保持袋サンプル(マスターバッチ含有量0.6%(質量割合)、厚みは0.02mm若しくは0.006mm)の中に前述の標準エチレンガスを挿入し、経時変化に伴いエチレンの吸収・分解量を測定した。また、エチレンガスが分解されているか検証するために検知管を用いてテドラーバック内のCO
2の排出量を測定した。計測時間は0、3、12、24時間後に計測した。
【0036】
同様に、鮮度保持袋サンプル(マスターバッチ含有量1.0%(質量割合)、厚みは0.01mm若しくは0.02mm)の中に前述の標準エチレンガス100ppmを挿入し、経時変化に伴いエチレンの吸収・分解量を測定した。また、エチレンガスが分解・排出されているか検証するために検知管を用いてテドラーバック内のCO
2の排出量を測定した。計測時間は0、3、6, 12、18, 24時間後に計測した。
【0037】
さらに、1000ccのテドラーバック(フッ化ビニル樹脂製のガス分析用サンプリングバッグ)内に、前述の100ppmの標準エチレンガスを100cc挿入した鮮度保持袋サンプル(マスターバッチ含有量0.6%(質量割合)、厚みは0.01mm若しくは0.02mm、縦150mm x横150mm)入れ、経時変化に伴いエチレンがテドラーバック内にサンプル袋から排出されるエチレン量を測定した。計測時間は0、3、6、12、18、24時間後に計測した。試験開始24時間後には約4割のエチレンがサンプル袋から排出していることを
図4に示す。
【0038】
図1〜
図6に示すように、試験開始から48時間後までエチレン標準ガスの減衰効果について計測した。標準エチレンガスは鮮度保持袋内では24時間後には分解又は/及び排出されていることが明らかとなった。
【0039】
図1及び
図2の結果から、鮮度保持袋の厚み0.02mmと0.006mmとの差にかかわらず、30ppmと100ppmの標準エチレンガス共に分解していることが示された。鮮度保持袋の厚みによるエチレン分解効果を詳細に比較すると、薄い鮮度保持袋(マスターバッチ含有量0.6%(質量割合)、厚み0.006mm)の方が、より効率よく、さらに、鮮度保持袋(マスターバッチ含有量1.0%(質量割合)、厚み0.01mm)の方がエチレンを分解していた。また、
図5の結果から、コントロール袋よりも本発明に係る鮮度保持袋(サンプル袋)の方が、標準のエチレン(300ppm)の濃度という高濃度のエチレンガスでも、低濃度のエチレン(10ppm、30ppm、100ppm)と同様に効率よくエチレンを分解することが示された。よって、鮮度保持袋が、植物の鮮度保持に寄与することが確認された。
【0040】
また、
図6の結果から、300ppmのエチレンから600ppmの二酸化酸素が発生していることがわかるので、本実施例により、1分子のエチレンが2分子の二酸化炭素に分解していることを明らかにした。
【0041】
図7の結果から、無処理の低密度ポリエチレン袋は、エチレンを付着(吸着)させていることを示している。300ppmのエチレン1リットルを0.05mmの厚さの低密度ポリエチレン袋に封入し、エチレンがどれくらい吸着されるか検証したところ、20数時間で約30%のエチレンを吸着していることが明らかになった。袋内の二酸化炭素濃度を計測しても、二酸化炭素濃度はあまり高くないことから、エチレンは吸着したり、離脱したりと分解されないまでも、フィルム素材に対して親和性が高いことを示した。
【0042】
また、果実はできる限り大きさのそろった発育正常な果実を選んで使用し、採取後直ちに本発明に係る鮮度保持袋(サンプル袋)に入れ、呼吸量及びエチレン生成量は5日程度測定した。呼吸量は検知管を用いてサンプル袋内のCO2の排出量を測定した。具体的には、ポジティブコントロールとして果物を入れただけのポリ袋、及びエチレン吸着剤を入れた鮮度保持袋(サンプル袋)を作成し、エチレン生成・除去効果を比較検証した。エチレン生成量は、呼吸量測定直後にサンプル袋内の空気を、エチレンを含まない空気で完全に入れかえた後、1テドラーバック内に果実を任意時間密閉し、そのヘッドスペースから約20mlの空気を採取し、さらにその中から1mlを採って、ガスクロマトグラフによりエチレン濃度を測定し、果実によるエチレン生成・吸着量を求めた。なお、使用カラムはパックドカラム、カラム温度100℃、キャリアーは空気、FID検出器を使用した。エチレンの測定は1試料につき2回以上行い、結果は平均値で示す。エチレンの検出限界濃度は0.5ppmである。実験は、1品種3サンプル及び5日問連続して測定を行った。
図6はミニトマトを本発明に係る鮮度保持袋(サンプル袋)に封入し、常温25度で5日間鮮度保持効果を検証した時の、エチレン濃度変化を示したものである。無加工の低密度ポリエチレン袋では徐々に袋内のエチレン濃度が上昇していくのに対して、本発明に係る鮮度保持袋(サンプル袋)では時間の経過にかかわらず、エチレン濃度の上昇は見られなかった。また、66時間後、本発明に係る鮮度保持袋(サンプル袋)ではエチレン濃度が検出限界以下(0.1ppm)となり、測定が困難であった。これらの結果は、本発明に係る鮮度保持袋(サンプル袋)がトマトから発生したエチレンを効率よく分解し、分解した結果、鮮度保持の向上効果があることを示している。なお、
図8に保存試験一週間後のミニトマト保存状況の写真を示す。無加工のLDPE低密度ポリエチレン袋では果実の表面に結露すると共に、果実の軟化が進行し、トマトの形が崩れているものも多々みられた。一方、本発明に係る鮮度保持袋(サンプル袋)を用いた場合ではトマト表面に結露が起きず、また、果実の身持ちも良く、鮮度保持されていることを明らかにした。
【0043】
図9はホウレンソウを本発明に係る鮮度保持袋(サンプル袋)に封入し、常温25度で1週間鮮度保持効果を検証した時の、エチレン濃度変化を示したものである。無加工の低密度ポリエチレン袋では0.2ppmから0.3ppmのエチレン濃度がコンスタントに計測されているのに対して、本発明に係る鮮度保持袋(サンプル袋)では時間の経過にかかわらず、エチレンの検出が92時間まで困難であった。これらの結果は、本発明に係る鮮度保持袋(サンプル袋)がホウレンソウから発生したエチレンを効率よく分解し、分解した結果、鮮度保持の向上効果があることを示している。
【0044】
以上の結果から、エチレン吸着性能を有するフィルム素材にエチレンを分解する触媒物質を混和させることにより、エチレンを短時間で吸着・分解、二酸化炭素と水への完全分解を達成させること、又は/及び、エチレンを青果物近傍より排出することにより、エチレンの老化・熟成効果の減退、青果物の呼吸抑制、及び果実表面からの蒸散抑制を達成することが確認された。従って、青果物の鮮度保持などの効果が得られた。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。例えば、トマトなどの青果物はもちろん根菜類栽培、蘭などの花卉栽培、植物工場での葉物栽培、及び、きのこ類の鮮度保持などにも有効である。