【実施例1】
【0019】
本発明に係る導水樋の一実施形態としての実施例1の導水樋10を、
図1から
図11を用いて説明する。導水樋10は、トンネル、ボックスカルバート、地下構造物、橋台および土留め擁壁等の構造物(11)の壁面12に生じる漏水を排水路13(
図2参照)等に導くために用いられる。実施例1の導水樋10は、
図1に示すように、地中構造物の一例としてのトンネル11の壁面12(内壁面)における漏水箇所を覆いつつ上下方向に伸びて設けられ、トンネル11において線路や走行路等が設けられる路面14に設けられた排水路13の近傍まで伸びるものとされる。
【0020】
導水樋10は、
図1から
図3に示すように、対向壁部20と一対の側壁部30とを備える。対向壁部20は、トンネル11の壁面12と所定の間隔を置いて対向して設けられ、壁面12に沿いつつ上下方向に伸びている。対向壁部20の詳細な構成については後述する。
【0021】
一対の側壁部30は、トンネル11の延伸方向に位置する両側に設けられ、対向壁部20を壁面12に対向させて取り付ける。両側壁部30は、トンネル11の延伸方向に直交する面に関して面対称な構成とされている。各側壁部30は、
図3に示すように、金属材料が折り曲げられて形成され、固定壁部分31と側壁部分32と被覆壁部分33とを有する。
【0022】
固定壁部分31は、壁面12に固定される箇所であり、上下方向に伸びつつ壁面12に沿って湾曲する板状とされている。固定壁部分31には、上下方向に並んで複数の固定穴34が設けられている。固定壁部分31は、トンネル11にコンクリートドリル等を用いて下穴を設け、その下穴に差し入れて固定したアンカーボルト35が固定穴34に通され、そのアンカーボルト35にナット36が嵌められることで、トンネル11の壁面12に固定される。
【0023】
側壁部分32は、各固定壁部分31における内端部(他方の固定壁部分31が存在する側の端部)から、トンネル11の内方側へ向けて伸びる板状とされている。側壁部分32は、対向壁部20と壁面12と協働して、直方体が壁面12に沿って湾曲された形状の空間を構成する。この空間は、漏水箇所からの漏水を排水路13へと導くための導水路37となる。側壁部分32には、長尺方向で所定の間隔を置いて複数の軸穴38(
図3参照)が設けられている。
【0024】
被覆壁部分33は、側壁部分32の突出端から内側へ向けて伸びる板状とされ、対向壁部20に沿って湾曲しつつ上下方向に伸びている。被覆壁部分33は、対向壁部20における壁面12とは反対側すなわちトンネル11の内方側に位置する外表面20aの両側箇所20bを覆う。
【0025】
被覆壁部分33には、内縁部(他方の被覆壁部分33が存在する側の縁部)に水漏防止突起39が設けられている。水漏防止突起39は、被覆壁部分33から対向壁部20へ向けて突出しつつ被覆壁部分33の内縁部に沿って上下方向に伸びて設けられている。
【0026】
この被覆壁部分33は、導水路37が導く漏水が対向壁部20と側壁部分32との間に流れ込んだ場合に、その漏水がトンネル11の内方に達することを抑える。特に、実施例1の被覆壁部分33では、被覆壁部分33の内縁部に水漏防止突起39が設けられているので、被覆壁部分33に達した漏水が被覆壁部分33の内縁部よりもさらに内側に流れ込むことを抑えることができる。この被覆壁部分33および水漏防止突起39は、特にトンネル11の上部近傍における被覆壁部分33が対向壁部20の下方に位置する箇所において、漏水が対向壁部20と側壁部分32との間に流れ込む可能性が高いので、漏水がトンネル11内に流れ出すことを抑える観点から効果的である。
【0027】
次に、対向壁部20の構成について詳細に説明する。対向壁部20は、
図1から
図3に示すように、一対の側壁部30の側壁部分32に挟まれて設けられ、基本的に上側軸21と下側軸22とにベルト23が巻き掛けられて構成される。上側軸21は、両側壁部分32の最も上側に設けられた軸穴38を架け渡して設けられ、下側軸22は、両側壁部分32の最も下側に設けられた軸穴38を架け渡して設けられる。この上側軸21および下側軸22は、軸穴38に対してまたは自身の軸部に対して回転可能とされている。
【0028】
ベルト23は、上側軸21と下側軸22とに巻き掛けることのできる柔軟性を有しつつ、水を通すことなく漏水による圧力に耐えることのできる材料で形成され、上側軸21と下側軸22とに巻き掛けられてループを形成する帯状とされている。
【0029】
実施例1のベルト23は、ゴム材料で形成されている。ベルト23は、上側軸21と下側軸22とに巻き掛けられることで、壁面12に沿って上下方向に伸びて設けられている。実施例1の対向壁部20では、上側軸21と下側軸22との間に複数の中間軸24を設けることで、ベルト23をより適切に壁面12に沿うものとしている。この各中間軸24は、上側軸21および下側軸22と同様に、それらの間で両側壁部分32に設けられた各軸穴38を架け渡して設けられ、軸穴38に対してまたは自身の軸部に対して回転可能とされている(
図2、
図3参照)。これにより、ベルト23は、上側軸21と下側軸22との間で壁面12に沿うように周回可能とされている。このため、ベルト23は、対向壁部20における壁面12と対向する壁側面20c側で、導水樋10が設けられた略全域に亘り壁面12に沿って上下方向に移動することが可能とされている。
【0030】
このベルト23には、複数の取付部25が設けられている。各取付部25は、後述する清掃器具40や把持器具60のベルト23への着脱を可能とするために設けられるもので、互いに等しい構成とされ、ベルト23の周回方向で所定の間隔をおいて設けられている。
【0031】
実施例1の各取付部25は、
図4に示すように、全体にトンネル11の延伸方向に長尺な直方体形状とされ、その長尺方向に沿って設けられた取付溝26を有する。取付溝26は、取付部25において壁面12と対向される取付面25aを切り欠いて形成されている。
【0032】
取付溝26は、中央部の断面となる
図5に示すように、断面矩形状の溝本体箇所26aと、その奥側(取付面25aとは反対側)で溝本体箇所26aと連続する抜止溝箇所26bと、を有する。
【0033】
溝本体箇所26aは、取付面25aを切り欠きつつ取付部25の奥側へ向けて取付部25を穿ち形成されている。抜止溝箇所26bは、取付溝26の幅寸法を部分的に拡大している。実施例1の抜止溝箇所26bは、溝本体箇所26a側の端部が溝本体箇所26aの側面に直交する平面とされるとともに、奥側に向かうに連れて幅寸法を小さくするテーパ状に形成されている。
【0034】
この取付溝26は、全体に取付部25の長尺方向に延伸され、その延伸方向の両端近傍が湾曲されて、両端が取付面25aと交わるように伸びるものとされている(
図4、
図8参照)。すなわち、取付溝26は、全体に取付部25の長尺方向に沿う軸線を有し、両端近傍で取付面25a側に軸線が湾曲されている。このため、取付溝26は、取付面25a側から見ると、両端のみで抜止溝箇所26bが露見するものとされ、それ以外の箇所では溝本体箇所26aのみが露見するものとされている(
図4、
図8参照)。このような構成であるので、取付溝26は、両端に近付くにつれて、溝本体箇所26aおよび抜止溝箇所26bが長尺方向に徐々に拡がるものとされている。
【0035】
この各取付部25は、樹脂材料や金属材料や木材等で形成されて、ベルト23に固定される。各取付部25は、対向壁部20の壁側面20c側に位置された際、対向する壁面12に接触しない大きさ、すなわち壁面12との間に形成される導水路37を塞ぐことのない大きさとされている。
【0036】
また、実施例1の各取付部25は、対向壁部20の外表面20a側に位置された際、両側壁部30の被覆壁部分33と略同一平面となる寸法とされている(
図2、
図3参照)。
【0037】
清掃器具40は、対向壁部20に対向された壁面12を清掃するために、ベルト23に取り付けられる。実施例1では、清掃器具40として、壁面12を掃く清掃刷毛器具41(
図6等参照)と、壁面12に付着した物体を剥がし落とす清掃ヘラ器具42(
図9参照)と、の2種類が用いられる。
【0038】
清掃刷毛器具41は、
図6に示すように、刷毛部43と取付突部44とを有する構成とされる。清掃刷毛器具41は、湾曲可能な材料で形成され、実施例1ではゴム材料で形成されている。なお、清掃刷毛器具41は、後述するように取付部25の取付溝26の一端から取付突部44を取付溝26内に挿入できるように取付突部44を湾曲可能とするものであれば、樹脂材料や他の材料で構成してもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0039】
刷毛部43は、
図7に示すように、長尺な直方体形状の棒状とされた土台箇所45の壁側面45aに刷毛箇所46が設けられて構成されている。実施例1では、基本的に等しい構成の3種類の清掃刷毛器具41が用意されている。この3種類の清掃刷毛器具41は、壁側面45aにおける刷毛箇所46が設けられる箇所が互いに異なることを除くと、他の構成は互いに等しいものとされている。すなわち、3種類の清掃刷毛器具41は、それぞれの刷毛部43における刷毛箇所46が、取付溝26の延伸方向で間隔を置いて設けられている。
【0040】
刷毛箇所46は、獣毛や植物繊維や合成樹脂等で形成された毛の束とされている。刷毛箇所46は、金属材料で形成された毛の束としてもよいが、この場合には壁面12を傷付けることを最小限にできるものとすることが好ましい。刷毛箇所46は、後述するように清掃刷毛器具41が取付部25に取り付けられて壁面12側に位置されると、先端が壁面12に接触する長さ寸法とされている(
図2、
図3等参照)。この刷毛部43は、清掃刷毛器具41において壁面12に接触して壁面12を清掃する清掃部として機能し、刷毛箇所46が壁面12に接触する清掃箇所として機能する。
【0041】
3種類の清掃刷毛器具41は、1種類目の刷毛箇所46が設けられた位置と、2種類目の刷毛箇所46が設けられた位置と、3種類目の刷毛箇所46が設けられた位置と、を投影して重ねると土台箇所45の長尺方向すなわちトンネル11および取付溝26の延伸方向に連続するものとなるように、それぞれの設ける位置が設定されている。すなわち、清掃刷毛器具41は、3種類の全てを用いることで、長尺方向の所定の範囲で壁面12を隙間なく清掃することが可能とされている。
【0042】
この所定の範囲とは、トンネル11の延伸方向での壁面12において、導水路37の詰まりを防止するために析出物を除去する必要がある範囲に設定する。なお、刷毛箇所46を延伸方向の所定の範囲の全域に亘り設けた単一の清掃刷毛器具41を用いるものとしてもよく、刷毛箇所46を設ける位置を互い違いとした2種類の清掃刷毛器具41を用いるものとしてもよく、刷毛箇所46を互いに異なるものとした4種類以上の清掃刷毛器具41を用いるものとしてもよい。
【0043】
また、取付溝26の延伸方向の中央位置に関して非対称であって、その中央位置を中心に反転させると刷毛箇所46とそれが設けられていない箇所とが入れ替わる位置関係とされた一種類の清掃刷毛器具41を用いるものとしてもよい。この場合、隣接する2つの取付部25に対して、清掃刷毛器具41をそれぞれ表裏逆転させて取り付けることにより、隙間なく刷毛箇所46を位置させることができ、壁面12を隙間なく清掃することができる。さらに、刷毛箇所46が、それが設けられていない箇所に位置するように、清掃刷毛器具41の取付溝26への取付位置を延伸方向でずらして用いるものとしてもよい。この場合も同様に、壁面12を隙間なく清掃することができる。
【0044】
取付突部44は、清掃刷毛器具41を取付部25に対して着脱自在とするものであり、
図6に示すように、刷毛部43の土台箇所45において壁側面45aとは反対側のベルト側面45bに設けられている。
【0045】
取付突部44は、ベルト側面45bから突出する突起本体箇所47と、突起本体箇所47の先端に設けられた抜止突起箇所48と、を有する。突起本体箇所47は、長尺な直方体形状の棒状とされ、土台箇所45よりも小さな寸法とされており、取付溝26の溝本体箇所26aに嵌め入れることが可能とされている。
【0046】
抜止突起箇所48は、取付突部44の幅寸法を部分的に拡大しており、取付溝26の抜止溝箇所26bに嵌め入れることが可能とされている。実施例1の抜止突起箇所48は、突起本体箇所47側の端部が突起本体箇所47の側面に直交する平面とされるとともに、突出端側に向かうに連れて幅寸法を小さくするテーパ状に形成されている。
【0047】
この清掃刷毛器具41は、種類に拘わらず、
図8に示すように、取付部25に取り付けることができる。先ず、
図8の上方に示すように、取付部25の取付溝26の一端から、清掃刷毛器具41の取付突部44を挿入する(矢印A1参照)。このとき、取付溝26の溝本体箇所26aに取付突部44の突起本体箇所47が嵌められるとともに、取付溝26の抜止溝箇所26bに取付突部44の抜止突起箇所48が嵌められる。その後、
図8の中央に示すように、取付突部44を取付溝26に押し込むと、取付突部44が取付溝26に沿って湾曲して取付溝26に進入(矢印A2参照)する。このように、取付部25の中央付近まで清掃刷毛器具41を移動させることで、
図8の下方に示すように、清掃刷毛器具41を取付部25に取り付けることができる。この清掃刷毛器具41は、抜止突起箇所48が抜止溝箇所26bに嵌められているので、取付溝26の延伸方向以外の方向では取付溝26から抜け落ちることが防止されている。
【0048】
清掃ヘラ器具42は、
図9に示すように、清掃刷毛器具41と共通の取付突部44にヘラ部49が設けられて構成される。清掃ヘラ器具42は、湾曲可能な材料で形成され、実施例1ではゴム材料で形成されている。なお、清掃ヘラ器具42は、清掃刷毛器具41と同様に、取付部25の取付溝26の一端から取付突部44を取付溝26内に挿入できるように取付突部44を湾曲可能とするものであれば、樹脂材料や他の材料で構成してもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0049】
ヘラ部49は、清掃刷毛器具41と共通の土台箇所45の壁側面45aにヘラ箇所51が設けられて構成されている。ヘラ箇所51は、ゴム材料や合成樹脂等で形成された板状とされている。ヘラ箇所51は、金属材料で形成された板状としてもよいが、この場合には壁面12を傷付けることを最小限にできるものとすることが好ましい。ヘラ箇所51は、後述するように清掃ヘラ器具42が取付部25に取り付けられて壁面12側に位置されると、先端が壁面12に接触する長さ寸法とされている。このヘラ部49は、清掃刷毛器具41において壁面12に接触して壁面12を清掃する清掃部として機能し、ヘラ箇所51が壁面12に接触する清掃箇所として機能する。
【0050】
実施例1では、清掃ヘラ器具42は、清掃刷毛器具41と同様に、土台箇所45の壁側面45aにおけるヘラ箇所51が設けられる箇所が互いに異なるものとされた3種類が用いられる。すなわち、清掃ヘラ器具42は、3種類の全てを用いることで、土台箇所45の長尺方向すなわちトンネル11および取付溝26の延伸方向の所定の範囲を隙間なく清掃することが可能とされている。なお、ヘラ箇所51をトンネル11の延伸方向の所定の範囲の全域に亘り設けた単一の清掃ヘラ器具42を用いるものとしてもよく、ヘラ箇所51を設ける位置を互い違いとした2種類の清掃ヘラ器具42を用いるものとしてもよく、ヘラ箇所51を互いに異なるものとした4種類以上の清掃ヘラ器具42を用いるものとしてもよい。この各清掃ヘラ器具42は、各清掃刷毛器具41と同様に、取付部25に取り付けることができる。
【0051】
把持器具60は、
図10に示すように、清掃刷毛器具41と共通の取付突部44に把持部61が設けられて構成される。把持器具60は、湾曲可能な材料で形成され、実施例1ではゴム材料で形成されている。なお、把持器具60は、清掃刷毛器具41と同様に、取付部25の取付溝26の一端から取付突部44を取付溝26内に挿入できるように取付突部44を湾曲可能とするものであれば、把持部61と取付突部44とで異なる材料で構成してもよく、樹脂材料や他の材料で構成してもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0052】
把持部61は、清掃刷毛器具41や清掃ヘラ器具42と共通の土台箇所45の壁側面45aに把持箇所62が設けられて構成されている。把持箇所62は、ゴム材料や木材や金属材料や合成樹脂等で形成された環状とされて、掴みやすい形状とされている。なお、把持箇所62は、掴みやすい形状とされていれば、形状は適宜設定することができ、実施例1の構成に限定されない。この把持器具60は、各清掃刷毛器具41および各清掃ヘラ器具42(清掃器具40)と同様に、取付部25に取り付けることができる。
【0053】
この清掃器具40や把持器具60が取り付けられる取付部25の取付溝26を清掃するために、掃除道具70が用いられる。掃除道具70は、
図11に示すように、把持器具60と共通の把持部61に掃除部71が設けられて構成される。掃除道具70は、湾曲可能な材料で形成され、実施例1ではゴム材料で形成されている。なお、掃除部71は、取付部25の取付溝26の一端から掃除部71を取付溝26内に挿入できるように掃除部71を湾曲可能とするものであれば、樹脂材料や他の材料で構成してもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0054】
掃除部71は、清掃器具40の取付突部44と共通の突起本体箇所47の突出端にブラシ箇所72が設けられて構成されている。ブラシ箇所72は、突起本体箇所47の突出面およびその両側面に、獣毛や植物繊維や合成樹脂や金属材料等で形成された無数の毛が植えつけられて構成されている。無数の毛は、少なくとも突起本体箇所47の突出方向およびその幅方向の両側に伸びるものとされている。
【0055】
掃除道具70は、取付部25の取付溝26の一端から掃除部71を取付溝26に挿入すると、その掃除部71が取付溝26に沿って湾曲して取付溝26に進入させることができ、取付部25に対して移動させることができる。このとき、掃除部71の突起本体箇所47が取付溝26の溝本体箇所26aに嵌められているので、取付部25に対する掃除道具70の移動を安定させることができる。これにより、掃除部71のブラシ箇所72で、取付溝26の抜止突起箇所48を擦ることができるので、抜止突起箇所48を全長に亘り清掃することができる。
【0056】
なお、掃除部71の突起本体箇所47を取付溝26の溝本体箇所26aよりも小さくして、取付溝26の溝本体箇所26aも併せて全長に亘り清掃するものとしてもよい。また、掃除道具70は、取付部25の取付溝26を全長に亘り清掃できるものであればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0057】
次に、導水樋10の通常時の作用について説明する。導水樋10は、上記したように、対向壁部20と両側壁部分32とで壁面12の漏水箇所を覆って設けられ、その壁面12と対向壁部20と両側壁部分32との間に排水路13の近傍まで伸びる導水路37を形成する。このため、導水樋10は、漏水箇所からの漏水を、トンネル11内に流出させることなく排水路13へと導くことができる。このとき、一部の漏水は壁面12を伝い、他の漏水は対向壁部20や両側壁部分32を伝い、それぞれ排水路13へと導かれる。
【0058】
導水樋10では、導水路37により導かれる漏水が対向壁部20と側壁部分32との間に流れ込んだ場合でも、被覆壁部分33により漏水がトンネル11の内方に漏れ出すことを抑えることができる。特に、実施例1の被覆壁部分33では、被覆壁部分33の内縁部に水漏防止突起39が設けられているので、被覆壁部分33に達した漏水が被覆壁部分33の内縁部よりもさらに内側に流れ込むことを抑えることができ、漏水がトンネル11の内方に漏れ出すことをより確実に抑えることができる。
【0059】
次に、導水樋10の清掃時の作用について説明する。先ず、漏水には、石灰分やその他の固形成分が溶解していることが多く、それらが析出して析出物となり導水路37に堆積する。この析出物を除去するために、導水樋10では、対向壁部20の壁側面20c側でベルト23を壁面12に沿って上下方向に移動することを可能としつつ、ベルト23の各取付部25に適宜清掃器具40や把持器具60を取り付けることを可能としている。
【0060】
ここで、各取付部25は、対向壁部20において壁面12に対向されるベルト23に設けられているため、取付面25aを切り欠いて設けられた取付溝26にも析出物が堆積している可能性がある。このため、先ず、用いる取付部25の取付溝26を、掃除道具70を用いて清掃する。
【0061】
その後、清掃した各取付部25に、清掃器具40や把持器具60を取り付ける。これにより、導水樋10では、取り付けた把持器具60を上方へと持ち上げることで、ベルト23を周回させることができ、他の取付部25に取り付けた清掃器具40で壁面12を清掃することができる。
【0062】
ここで、清掃器具40としては、清掃刷毛器具41と清掃ヘラ器具42とが用意されていることから、析出物の状況に応じて壁面12を適切に清掃することができる。
【0063】
これにより、導水樋10では、導水路37を構成する壁面12に析出物が堆積した場合でも、容易に除去することができる。また、導水樋10では、導水路37を構成する対向壁部20に析出物が堆積した場合でも、ベルト23を周回させてトンネル11の内方に位置させることで、容易に対向壁部20の析出物を除去することができる。
【0064】
ここで、導水樋10では、下方に位置する取付部25に把持器具60を適宜取り付けることで、作業員が低い場所に居てもベルト23を周回させることができる。そして、導水樋10では、略全域に亘り壁面12に沿って上下方向に移動することが可能とされたベルト23に各取付部25が設けられているので、ベルト23を周回させることで導水路37の略全長に亘り壁面12を清掃器具40で清掃することができる。
【0065】
このため、導水樋10は、トンネル11の高所に位置する壁面12であっても、高所作業足場等を用いることなく清掃器具40で清掃することができ、析出物を簡単な作業で除去することができる。なお、導水樋10では、高所作業足場等を用いて清掃してもよいことは言うまでもない。
【0066】
また、導水樋10は、清掃の度に高圧の洗浄水を吐出させることなく、各取付部25に着脱可能とされて使い回すことのできる清掃器具40や把持器具60を用いれば析出物を除去できる。
【0067】
さらに、導水樋10は、上記したように対向壁部20と一対の側壁部30とで構成されたものを、漏水箇所を覆うように壁面12に取り付けるだけでよいので、ストレーナ状パイプ等の別の部材を壁面12に取り付ける必要はなく、簡易に設置できる。これらのことから、導水樋10は、簡易に設置できるとともに簡易な清掃作業で析出物を除去することができ、コストを抑制できる。
【0068】
本発明に係る導水樋の一実施例の導水樋10は、以下の各作用効果を得ることができる。
【0069】
導水樋10は、一対の側壁部30に支持されて壁面12と間隔を置いて対向しつつ上下方向に伸びる対向壁部20を上側軸21と下側軸22とベルト23を周回可能に巻き掛けて構成し、そのベルト23に清掃器具40を着脱可能としている。
【0070】
このため、導水樋10は、通常時には、対向壁部20と両側壁部30と壁面12とで構成した導水路37で、漏水箇所からの漏水を排水路13へと導くことができる。また、導水樋10は、清掃時には、ベルト23に適宜清掃器具40を取り付けてベルト23を周回させることで、排水路13を構成する壁面12を略全長に亘り清掃して析出物を除去できる。これらのことから、導水樋10は、簡易に設置できるとともに、簡易に析出物を除去することができる。
【0071】
また、導水樋10は、ベルト23に清掃器具40の着脱を可能とする取付部25を設けている。このため、導水樋10は、ベルト23に清掃器具40を簡易に着脱することができるとともに、各取付部25間や他の導水樋10との間で清掃器具40を共通化することができ、清掃作業やそのコストを抑制できる。
【0072】
さらに、導水樋10は、把持器具60の各取付部25への着脱を可能としている。このため、導水樋10は、取付部25に取り付けた把持器具60(その把持部61)を引っ張ることで、ベルト23を容易に周回させることができ、析出物の除去をより簡易なものにできる。
【0073】
導水樋10は、ベルト23に設けた取付部25の取付溝26に、取付突部44を嵌め入れて清掃器具40を取り付けることで、その清掃器具40の清掃部(実施例1では刷毛部43やヘラ部49)が壁面12に接触して壁面12を清掃できる。このため、導水樋10は、簡易な構成でベルト23に清掃器具40を着脱可能とすることができるとともに、各取付部25間や他の導水樋10との間で清掃器具40を共通化することができ、清掃作業やそのコストを抑制できる。特に、実施例1の導水樋10は、清掃器具40として清掃刷毛器具41と清掃ヘラ器具42とを用いるものとしているので、析出物の堆積量や硬さに適したものを選択することができ、より適切に析出物を除去できる。
【0074】
取付部25は、取付溝26を設けることで清掃器具40の着脱を可能としているので、トンネル11の内方側に突出する箇所を設けることのない構成とすることができる。ここで、導水樋10は、各取付部25を、対向壁部20の壁側面20c側に位置された際に対向する壁面12に接触しない大きさとしているので、ベルト23に各取付部25を設けても壁面12との間に導水路37を構成することができる。
【0075】
導水樋10は、各取付部25の取付溝26が、延伸方向の両端を湾曲させることで取付面25aのみを切り欠くものとしている。このため、導水樋10は、取付面25aのみを露出させれば、清掃器具40を着脱することができる。これにより、導水樋10は、各取付部25を、対向壁部20の外表面20a側に位置した際に両側壁部30の被覆壁部分33と略同一平面となる寸法とすることができ、対向壁部20において両側壁部30よりもトンネル11の内方側に突出する箇所をなくすことができる。
【0076】
導水樋10は、各清掃器具40の清掃部の清掃箇所(実施例1では刷毛箇所46やヘラ箇所51)が、取付溝26の延伸方向で間隔を置いて設けられている。このため、導水樋10は、各清掃器具40と壁面12との間に作用する摩擦を低減しつつ導水路37を構成する所定の範囲内の壁面12を清掃して析出物を除去できる。これにより、導水樋10は、ベルト23に対する各取付部25の固定箇所や、各取付部25に対する各清掃器具40の固定箇所に作用する負荷の増加を抑制することができ、耐久性を高めることができる。特に、実施例1の導水樋10は、間隔を置いて設けられた清掃箇所が延伸方向で互いに異なる清掃器具40を複数用意しており、全てを用いることで延伸方向の所定の範囲に隙間なく清掃箇所を位置させることができる。この結果、導水樋10は、各清掃器具40と壁面12との間に作用する摩擦を低減しつつ導水路37を構成する所定の範囲内の壁面12を隙間なく清掃して析出物を除去できる。
【0077】
導水樋10は、両側壁部30に対向壁部20における外表面20a側の両側箇所20bを覆う被覆壁部分33を設け、その両被覆壁部分33に対向壁部20へ向けて突出しつつ上下方向に伸びる水漏防止突起39を設けている。このため、導水樋10は、被覆壁部分33に達した漏水が、被覆壁部分33の内縁部よりもさらに内側に流れ込もうとしても、その流れ込みを水漏防止突起39で抑えることができる。
【0078】
したがって、本発明に係る導水樋としての実施例1の導水樋10では、簡易に設置できるとともに、簡易に析出物を除去することができる。
【0079】
以上、本発明の導水樋10を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0080】
例えば、実施例1では、地中構造物の一例としてのトンネル11の壁面12(内壁面)に導水樋10を設けた例を示している。しかしながら、導水樋10は、壁面12に生じる漏水を排水路13に導くために設けるものであれば、ボックスカルバート、地下構造物、橋台および土留め擁壁等の構造物や岩山の壁面に設けてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0081】
また、ベルト23に設けた各取付部25に対して清掃器具40を着脱可能な構成としている。しかしながら、清掃器具40は、ベルト23に着脱可能とされていれば、例えば、磁石を用いるものでもよく、他の構成を用いてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0082】
さらに、実施例1では、各取付部25の取付溝26を、軸線を湾曲させて取付面25aのみを切り欠くものとしている。しかしながら、取付溝26は、清掃器具40や把持器具60の取付突部44を嵌め入れることと抜き出すこととを可能とするものであれば、例えば、各取付部25における取付面25aに加えて両端面を開放するものでもよく、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0083】
実施例1では、清掃器具40として、清掃刷毛器具41と清掃ヘラ器具42との2種類を用いている。しかしながら、清掃器具40は、ベルト23に着脱可能とされて壁面12への接触により壁面12を清掃するものであれば、単一の種類のみを用いるものでも、3種類以上を用いるものでもよく、実施例1の構成に限定されない。