特許第6796095号(P6796095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796095
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】回転電機の冷却構造、および回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20201119BHJP
   H02K 1/32 20060101ALI20201119BHJP
   H02K 1/20 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   H02K9/19 AZHV
   H02K1/32 Z
   H02K1/20 Z
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-29154(P2018-29154)
(22)【出願日】2018年2月21日
(65)【公開番号】特開2019-146388(P2019-146388A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2018年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅志
【審査官】 島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−049509(JP,A)
【文献】 特開平06−159825(JP,A)
【文献】 特開2017−099147(JP,A)
【文献】 特開2014−176106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 1/20
H02K 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータおよびステータを備える発電用の回転電機の冷却構造であって、
前記ロータを囲うように環状に形成され、周方向に並ぶとともに中心軸線方向の一端から他端に延びる複数のスロットが形成されたステータコアと、
前記スロットに配置された導体と、
前記導体を冷却する冷却手段と、
を備え、
前記ステータコアは、周方向で互いに隣り合う前記スロットの間に形成されたティースを備え、
前記ステータコアの内周面には、前記スロットの開口部が形成され、
前記開口部は、周方向で互いに隣り合う前記ティースの先端にそれぞれ設けられた突起同士の間に、前記中心軸線方向の全長にわたって形成され、前記中心軸線方向における両端部から中間部に向かうに従い、前記ロータの回生時における回転方向の下流側に向かって延び、
前記開口部の前記中間部は、前記開口部の前記両端部よりも前記ロータの回生時における回転方向の下流側に位置し、
前記冷却手段は、前記導体のうち前記開口部の前記中間部と前記中心軸線方向で同じ位置の箇所を冷却する、
ことを特徴とする回転電機の冷却構造。
【請求項2】
前記開口部の前記中間部は、前記開口部における前記中心軸線方向の少なくとも一端部よりも前記ロータの回生時における回転方向で、前記ティースの先端に前記突起を形成させる所定角度下流側に位置している、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機の冷却構造。
【請求項3】
ロータおよびステータを備える駆動用の回転電機の冷却構造であって、
前記ロータを囲うように環状に形成され、周方向に並ぶとともに中心軸線方向の一端から他端に延びる複数のスロットが形成されたステータコアと、
前記スロットに配置された導体と、
前記導体を冷却する冷却手段と、
を備え、
前記ステータコアは、周方向で互いに隣り合う前記スロットの間に形成されたティースを備え、
前記ステータコアの内周面には、前記スロットの開口部が形成され、
前記開口部は、周方向で互いに隣り合う前記ティースの先端にそれぞれ設けられた突起同士の間に、前記中心軸線方向の全長にわたって形成され、前記中心軸線方向における両端部から中間部に向かうに従い、前記ロータの力行時における回転方向の上流側に向かって延び、
前記開口部の前記中間部は、前記開口部の前記両端部よりも前記ロータの力行時における回転方向の上流側に位置し、
前記冷却手段は、前記導体のうち前記開口部の前記中間部と前記中心軸線方向で同じ位置の箇所を冷却する、
ことを特徴とする回転電機の冷却構造。
【請求項4】
前記開口部の前記中間部は、前記開口部における前記中心軸線方向の少なくとも一端部よりも前記ロータの力行時における回転方向で、前記ティースの先端に前記突起を形成させる所定角度上流側に位置している、
ことを特徴とする請求項3に記載の回転電機の冷却構造。
【請求項5】
前記所定角度は、2.5°である、
ことを特徴とする請求項2または請求項4に記載の回転電機の冷却構造。
【請求項6】
前記冷却手段は、前記ステータコアの外周面のうち少なくとも前記開口部の前記中間部と前記中心軸線方向で同じ位置の箇所に接触し、内部を冷媒が流通する、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の回転電機の冷却構造。
【請求項7】
前記冷却手段は、前記ステータコアに形成され、冷媒が流通し、少なくとも前記開口部の前記中間部と前記中心軸線方向で同じ位置を通るステータコア流路を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の回転電機の冷却構造。
【請求項8】
前記ロータは、
中空に形成され、内部に冷媒が流通する回転軸と、
前記回転軸に貫通され、前記ステータコアの内側に配置されたロータコアと、
前記ロータコアを前記中心軸線方向の両側から挟む一対の端面板と、
を有し、
前記冷却手段は、
前記回転軸の内部に冷媒を供給する冷媒供給手段と、
前記回転軸の外周面に開口する貫通孔と、
前記ロータコアに形成され、前記貫通孔を介して前記回転軸の内部に連通するとともに、前記開口部の前記中間部と前記中心軸線方向で同じ位置において径方向の外側に向けて開口するロータコア流路と、
を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の回転電機の冷却構造。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の回転電機の冷却構造を備えることを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の冷却構造、および回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動機等の回転電機は、ステータおよびロータを備える。ステータは、円環状のヨーク、およびヨークから径方向の内側に延びるティースを有するステータコアと、周方向で隣り合うティース間のスロットに配置される導体(コイル)と、を備える。この種のステータを備えた回転電機では、トルクリップルを抑制するために、周方向で隣り合うティースの先端同士の間のスロット開口部を軸方向に対して傾斜させるようにスキューさせたものがある(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、複数のヨーク部と、各ヨーク部からそれぞれ突出し、先端の両側に積層方向に順次互いに突出長さが同じ長さだけ増減するように磁極部が突出して形成される磁極ティース部とでなる複数の板状磁性部材を、順次積層することにより相隣なる磁極部間の隙間が積層方向にスキューされるように形成されるコア部材を備えるステータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−18802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したように、スロット開口部がスキューされたステータコアは、軸方向に直交する断面形状が軸方向の位置に応じて相違する。このため、ロータからの漏れ磁束の導体への鎖交量が軸方向の位置によって変化するので、導体に生じる渦電流の大きさも軸方向の位置によって変化する。特に、各相の導体が複数の部材を互いに連結することで形成された、いわゆるセグメントコイルを備えた回転電機では、スロット内における導体の占積率を高めることができる一方で、漏れ磁束による過大な渦電流損が生じる場合がある。これにより、導体における発熱の度合いが軸方向の位置に応じて相違する。このため、導体の各部を発熱の度合いに応じて適切に冷却することが望まれる。しかしながら、上記特許文献1には、導体の冷却に関して記載されていない。
【0005】
そこで本発明は、導体を適切に冷却できる回転電機の冷却構造および回転電機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回転電機の冷却構造は、ロータ(例えば、実施形態におけるロータ3)およびステータ(例えば、実施形態におけるステータ5)を備える発電用の回転電機(例えば、実施形態における回転電機1)の冷却構造であって、前記ロータを囲うように環状に形成され、周方向に並ぶとともに中心軸線(例えば、実施形態における回転軸線O)方向の一端から他端に延びる複数のスロット(例えば、実施形態におけるスロット36)が形成されたステータコア(例えば、実施形態におけるステータコア30,130)と、前記スロットに配置された導体(例えば、実施形態におけるコイル40)と、前記導体を冷却する冷却手段(例えば、実施形態におけるステータ冷却手段60,160、冷却手段207)と、を備え、前記ステータコアは、周方向で互いに隣り合う前記スロットの間に形成されたティース(例えば、実施形態におけるティース32)を備え、前記ステータコアの内周面には、前記スロットの開口部(例えば、実施形態におけるスロット開口部37)が形成され、前記開口部は、周方向で互いに隣り合う前記ティースの先端にそれぞれ設けられた突起(例えば、実施形態における鍔部34)同士の間に、前記中心軸線方向の全長にわたって形成され、前記中心軸線方向における両端部(例えば、実施形態における第1端部37b、第2端部37c)から中間部(例えば、実施形態における中間部37a)に向かうに従い、前記ロータの回生時における回転方向の下流側に向かって延び、前記開口部の前記中間部は、前記開口部の前記両端部よりも前記ロータの回生時における回転方向の下流側に位置し、前記冷却手段は、前記導体のうち前記開口部の前記中間部と前記中心軸線方向で同じ位置の箇所を冷却する、ことを特徴とする。
【0007】
本発明では、スロットの開口部は、中心軸線方向における少なくとも一端部から中間部に向かうに従い、ロータの回生時における回転方向の下流側に向かって延びている。このため、スロットに配置された導体には、スロットの開口部の中間部と中心軸線方向で同じ位置において、スロットの開口部の一端部と中心軸線方向で同じ位置よりも大きな渦電流損が生じる。これにより、導体の温度は、スロットの開口部の中間部と中心軸線方向で同じ位置において、スロットの開口部の一端部と中心軸線方向で同じ位置よりも高くなる。
本発明によれば、冷却手段は導体のうちスロットの開口部の中間部と中心軸線方向で同じ位置の箇所を冷却するので、導体のうちスロットの開口部の少なくとも一端部と中心軸線方向で同じ位置の箇所よりも温度が高くなる箇所を効率よく冷却することができる。したがって、導体を適切に冷却できる。
【0009】
さらに、導体は、中心軸線方向におけるスロットの開口部の中間部と同じ位置の箇所において、スロットの開口部の両端部と中心軸線方向で同じ位置の箇所よりも高温となる。本発明によれば、冷却手段は、導体のうちスロットの開口部の中間部と中心軸線方向で同じ位置の箇所を冷却するので、導体のうちスロットの開口部の両端部と中心軸線方向で同じ位置の箇所よりも温度が高くなる箇所を効率よく冷却することができる。
【0010】
上記の回転電機の冷却構造において、前記開口部の前記中間部は、前記開口部における前記中心軸線方向の少なくとも一端部よりも前記ロータの回生時における回転方向で、前記ティースの先端に前記起を形成させる所定角度下流側に位置している、ことが望ましい。
【0011】
本発明によれば、ティースの先端には中心軸線方向における位置によらず必ず突起が形成されるので、ステータコアをプレス加工によって打ち抜く際にティース先端の細リブのみを打ち抜くため、より容易に製造することができる。
【0012】
本発明の回転電機の冷却構造は、ロータ(例えば、実施形態におけるロータ3)およびステータ(例えば、実施形態におけるステータ5)を備える駆動用の回転電機(例えば、実施形態における回転電機1A)の冷却構造であって、前記ロータを囲うように環状に形成され、周方向に並ぶとともに中心軸線(例えば、実施形態における回転軸線O)方向の一端から他端に延びる複数のスロット(例えば、実施形態におけるスロット36)が形成されたステータコア(例えば、実施形態におけるステータコア30,130)と、前記スロットに配置された導体(例えば、実施形態におけるコイル40)と、前記導体を冷却する冷却手段(例えば、実施形態におけるステータ冷却手段60,160、冷却手段207)と、を備え、前記ステータコアは、周方向で互いに隣り合う前記スロットの間に形成されたティース(例えば、実施形態におけるティース32)を備え、前記ステータコアの内周面には、前記スロットの開口部(例えば、実施形態におけるスロット開口部37)が形成され、前記開口部は、周方向で互いに隣り合う前記ティースの先端にそれぞれ設けられた突起(例えば、実施形態における鍔部34)同士の間に、前記中心軸線方向の全長にわたって形成され、前記中心軸線方向における両端部(例えば、実施形態における第1端部37b、第2端部37c)から中間部(例えば、実施形態における中間部37a)に向かうに従い、前記ロータの力行時における回転方向の上流側に向かって延び、前記開口部の前記中間部は、前記開口部の前記両端部よりも前記ロータの力行時における回転方向の上流側に位置し、前記冷却手段は、前記導体のうち前記開口部の前記中間部と前記中心軸線方向で同じ位置の箇所を冷却する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明では、スロットの開口部は、中心軸線方向における少なくとも一端部から中間部に向かうに従い、ロータの力行時における回転方向の上流側に向かって延びている。このため、スロットに配置された導体には、スロットの開口部の中間部と中心軸線方向で同じ位置において、スロットの開口部の一端部と中心軸線方向で同じ位置よりも大きな渦電流損が生じる。これにより、導体の温度は、スロットの開口部の中間部と中心軸線方向で同じ位置において、スロットの開口部の一端部と中心軸線方向で同じ位置よりも高くなる。
本発明によれば、冷却手段は導体のうちスロットの開口部の中間部と中心軸線方向で同じ位置の箇所を冷却するので、導体のうちスロットの開口部の少なくとも一端部と中心軸線方向で同じ位置の箇所よりも温度が高くなる箇所を効率よく冷却することができる。したがって、導体を適切に冷却できる。
【0015】
さらに、導体は、中心軸線方向におけるスロットの開口部の中間部と同じ位置の箇所において、スロットの開口部の両端部と中心軸線方向で同じ位置の箇所よりも高温となる。本発明によれば、冷却手段は、導体のうちスロットの開口部の中間部と中心軸線方向で同じ位置の箇所を冷却するので、導体のうちスロットの開口部の両端部と中心軸線方向で同じ位置の箇所よりも温度が高くなる箇所を効率よく冷却することができる。
【0016】
上記の回転電機の冷却構造において、前記開口部の前記中間部は、前記開口部における前記中心軸線方向の少なくとも一端部よりも前記ロータの力行時における回転方向で、前記ティースの先端に前記起を形成させる所定角度上流側に位置している、ことが望ましい。
【0017】
本発明によれば、ティースの先端には中心軸線方向における位置によらず必ず突起が形成されるので、ステータコアをプレス加工によって打ち抜く際にティース先端の細リブのみを打ち抜くため、より容易に製造することができる。
【0018】
上記の回転電機の冷却構造において、前記所定角度は、2.5°である、ことが望ましい。
【0019】
本発明によれば、導体における渦電流損は、スロットの開口部の両端部と中心軸線方向で同じ位置よりも、スロットの開口部の中間部と中心軸線方向で同じ位置において大きくなる。よって、冷却手段により、導体のうちスロットの開口部の中間部と中心軸線方向で同じ位置の箇所を冷却することで、導体のうちスロットの開口部の両端部と中心軸線方向で同じ位置の箇所よりも温度が高くなる箇所を効率よく冷却することができる。
【0020】
上記の回転電機の冷却構造において、前記冷却手段は、前記ステータコアの外周面のうち少なくとも前記開口部の前記中間部と前記中心軸線方向で同じ位置の箇所に接触し、内部を冷媒が流通する、ことが望ましい。
【0021】
本発明によれば、ステータコアのうちスロットの開口部の中間部と軸方向で同じ位置の箇所を直接冷却できる。このため、冷却手段は、ステータコアにおける、導体のうちスロットの開口部の中間部と軸方向で同じ位置の箇所に最も近い部分を冷却できる。したがって、冷却手段は、ステータコアを介して、導体のうちスロットの開口部の中間部と軸方向で同じ位置の箇所を冷却できる。
【0022】
上記の回転電機の冷却構造において、前記冷却手段は、前記ステータコアに形成され、冷媒が流通し、少なくとも前記開口部の前記中間部と前記中心軸線方向で同じ位置を通るステータコア流路(例えば、実施形態におけるステータコア流路138)を備える、ことが望ましい。
【0023】
本発明によれば、ステータコアのうちスロットの開口部の中間部と軸方向で同じ位置の箇所を直接冷却できる。このため、冷却手段は、ステータコアにおける、導体のうちスロットの開口部の中間部と軸方向で同じ位置の箇所に最も近い部分を冷却できる。したがって、冷却手段は、ステータコアを介して、導体のうちスロットの開口部の中間部と軸方向で同じ位置の箇所を冷却できる。
【0024】
上記の回転電機の冷却構造において、前記ロータは、中空に形成され、内部に冷媒が流通する回転軸(例えば、実施形態における回転軸10)と、前記回転軸に貫通され、前記ステータコアの内側に配置されたロータコア(例えば、実施形態におけるロータコア215)と、前記ロータコアを前記中心軸線方向の両側から挟む一対の端面板(例えば、実施形態における端面板21)と、を有し、前記冷却手段は、前記回転軸の内部に冷媒を供給する冷媒供給手段(例えば、実施形態におけるオイルポンプ51)と、前記回転軸の外周面に開口する貫通孔(例えば、実施形態における吐出孔13)と、前記ロータコアに形成され、前記貫通孔を介して前記回転軸の内部に連通するとともに、前記開口部の前記中間部と前記中心軸線方向で同じ位置において径方向の外側に向けて開口するロータコア流路(例えば、実施形態におけるロータコア流路217)と、を備える、ことが望ましい。
【0025】
本発明によれば、冷媒を回転軸の内部およびコア流路に流通させることによりロータを冷却できる。さらに、遠心力によりロータコア流路から冷媒が径方向外側に向けて排出されるので、スロットの開口部の中間部を通じて、導体に冷媒を当てることができる。これにより、冷却手段は、導体のうちスロットの開口部の中間部と軸方向で同じ位置の箇所を冷却することができる。よって、ロータを冷却する手段と、導体を冷却する手段と、を兼ねることができる。したがって、回転電機の構成を簡素化することができる。
【0026】
本発明の回転電機は、上記の回転電機の冷却構造を備えることを特徴とする。
【0027】
本発明によれば、導体を適切に冷却して、温度上昇による性能低下が抑制された回転電機を提供できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、導体を適切に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態に係る回転電機の概略構成を模式的に示す断面図である。
図2】第1実施形態に係るステータの一部を示す斜視図である。
図3図2のIII−III線における断面図である。
図4図2のIV矢視図である。
図5】周方向におけるスロットの開口部の位置と、回生時の漏れ磁束によるコイルの渦電流損と、の関係を示すグラフである。
図6】第2実施形態に係るステータの一部を示す斜視図である。
図7】周方向におけるスロットの開口部の位置と、力行時の漏れ磁束によるコイルの渦電流損と、の関係を示すグラフである。
図8】第2実施形態に係る回転電機の概略構成を模式的に示す断面図である。
図9】第3実施形態に係る回転電機の概略構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0031】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る回転電機の概略構成を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、回転電機1は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車のような車両に搭載される発電用のモータである。なお、以下の説明では、回転電機1の回転軸線O方向を「軸方向」といい、回転軸線O回りの周方向を単に「周方向」といい、軸方向に直交して回転軸線Oから放射状に延びる方向を「径方向」という。回転電機1は、ロータ3と、ステータ5と、冷却手段7と、を備えている。
【0032】
ロータ3は、ステータ5に対して回転軸線O回りに回転可能に設けられている。ロータ3は、回転軸10と、ロータコア15と、マグネット19と、端面板21と、カラー26と、を備えている。
【0033】
回転軸10は、回転軸線Oを中心軸線とする中空の円筒状の部材である。回転軸10は、ステンレスや鉄等の金属材料により形成されている。回転軸10の内部は空洞となっており、後述する冷媒が流通する軸流路11となっている。回転軸10には、拡径部12と、吐出孔13(貫通孔)と、が形成されている。拡径部12は、回転軸10の外周面から径方向外側に突出している。吐出孔13は、回転軸10の外周面に開口し、軸流路11と回転軸10の外側とを連通している。
【0034】
ロータコア15は、回転軸線Oを中心軸線とする円環状に形成され、回転軸10に外嵌されている。ロータコア15は、電磁鋼により形成されている。ロータコア15の周縁部には、軸方向に貫通する複数のマグネットスロット16が形成されている。複数のマグネットスロット16は、周方向に沿って並んで配置されている。また、ロータコア15には、冷媒が流通可能なロータコア流路17が形成されている。ロータコア流路17は、マグネットスロット16よりも径方向の内側に形成され、ロータコア15を軸方向に貫通している。
【0035】
マグネット19は、ロータコア15のマグネットスロット16に収容されている。マグネット19は、例えばネオジム磁石等である。マグネット19は、径方向に磁化され、ロータコア15の外周部分に複数の磁極部を形成している。複数の磁極部は、周方向に沿って交互に磁化方向が反転するように形成されている。
【0036】
端面板21は、ロータコア15を軸方向両側から挟む第1端面板21Aおよび第2端面板21Bを有する。第1端面板21Aは、ロータコア15における軸方向一方側を向く第1端面に対向配置されている。第2端面板21Bは、ロータコア15における軸方向他方側を向く第2端面に対向配置されている。端面板21は、非磁性体の金属材料、例えばSUS304やアルミニウム、銅等により円環状に形成され、回転軸10と同軸に配置されている。端面板21の内径は、回転軸10の外径と同等になっている。第1端面板21Aは、ロータコア15と回転軸10の拡径部12とに挟まれ、軸方向への移動が規制されている。第2端面板21Bは、ロータコア15とカラー26とに挟まれ、軸方向への移動が規制されている。
【0037】
ロータコア15と端面板21との間には、冷媒が流通可能な端面流路23A,23Bが形成されている。端面流路23A,23Bは、例えば端面板21に溝を設けることによって形成されている。端面流路23A,23Bは、内周側端面流路23Aと、外周側端面流路23Bと、である。内周側端面流路23Aは、ロータコア15と、第2端面板21Bと、の間に形成されている。内周側端面流路23Aは、軸方向に直交する方向に沿って延在している。内周側端面流路23Aの径方向外側の端部は、ロータコア流路17の軸方向他方側の端部と連通している。内周側端面流路23Aの径方向内側の端部は、回転軸10の吐出孔13を介して軸流路11に連通している。外周側端面流路23Bは、ロータコア15と、第1端面板21Aと、の間に形成されている。外周側端面流路23Bは、軸方向に直交する方向に沿って延在している。外周側端面流路23Bの径方向内側の端部は、ロータコア流路17の軸方向一方側の端部と連通している。外周側端面流路23Bの径方向外側の端部は、ロータ3の外周面に開口している。
【0038】
カラー26は、例えば鉄等により円板形状に形成され、回転軸10と同軸に配置されている。カラー26の径方向中央部には、軸方向に貫通する圧入孔27が形成されている。圧入孔27の内径は、回転軸10の外径より小さく形成されており、回転軸10との間に締め代を有している。カラー26は、第2端面板21Bと当接し、ロータコア15および端面板21を回転軸10の拡径部12に向かって押圧した状態で、回転軸10に圧入固定されている。
【0039】
図2は、第1実施形態に係るステータの一部を示す斜視図である。
図2に示すように、ステータ5は、ステータコア30と、ステータコア30に装着された複数相(例えば、U相、V相、W相)のコイル40(導体)と、を備えている。
【0040】
ステータコア30は、ロータ3を径方向の外側から囲むように、ロータコア15と同軸の円筒状に形成されている(図1参照)。ステータコア30は、円筒状のバックヨーク31と、バックヨーク31の内周面から径方向内側に突出する複数(本実施形態では48個)のティース32と、を備えている。
【0041】
複数のティース32は、周方向に等角度間隔で並んでいる。ティース32は、径方向に沿って延在しコイル40が巻回される巻胴部33と、巻胴部33の径方向内側の先端から周方向に沿って両側に延出する鍔部34と、を備えている。周方向で互いに隣り合うティース32の間には、溝状のスロット36が形成されている。すなわち、周方向で互いに隣り合うスロット36の間には、ティース32が設けられている。ステータコア30には、巻胴部33およびスロット36が周方向に交互に並んでいる。本実施形態では、ティース32が48個設けられているので、スロット36は、周方向に7.5°毎に並んでいる。スロット36は、ステータコア30における軸方向の一端から他端に延び、軸方向両側に開口している。スロット36は、回転軸線O(図1参照)と平行に延在している。
【0042】
ステータコア30の内周面には、スロット36の開口部37が形成されている。以下、スロット36の開口部37をスロット開口部37と称する。スロット開口部37は、周方向で隣り合うティース32の先端の間に形成されている。具体的に、スロット開口部37は、周方向で互いに対向する一対の鍔部34の端面の間に形成されている。スロット開口部37は、ステータコア30における軸方向の一端から他端に延びている。
【0043】
スロット開口部37は、軸方向一方側の第1端部37bから中間部37aに向かうに従い、ロータ3の回生時における回転方向の下流側に向かって延びている。また、スロット開口部37は、軸方向他方側の第2端部37cから中間部37aに向かうに従い、ロータ3の回生時における回転方向の下流側に向かって延びている。なお、各図中において、ロータ3の回生時における回転方向を矢印Drで示す。スロット開口部37の中間部37aは、軸方向においてスロット開口部37の両端部37b,37cからそれぞれ同じ距離離れている。スロット開口部37の両端部37b,37cは、互いに周方向における同じ位置に設けられている。スロット開口部37は、中間部37aを中心として、軸方向両側に向かって、軸方向に対して一定の角度で傾斜して延びている。
【0044】
スロット開口部37の中間部37aは、両端部37b,37cよりも、ロータ3の回生時における回転方向で所定角度上流側に位置している。所定角度は、スロット開口部37の中間部37aにおいて、ティース32の先端に、ロータ3の回生時における回転方向の下流側に突出する微小な突起(鍔部34)を形成させることが可能な角度である。すなわち、ティース32の鍔部34は、スロット開口部37の中間部37aを画成する位置において、ロータ3の回生時における回転方向の下流側に突出している(図3参照)。本実施形態では、所定角度は、2.5°である。
【0045】
図3は、図2のIII−III線における断面図である。
図3に示すように、スロット開口部37の中間部37aは、スロット36におけるロータ3の回生時の回転方向下流側の端部近傍を開口している。ここで、第1実施形態において、スロット開口部37の開口角度θを以下のように定義する。スロット開口部37の開口角度θは、ステータコア30の軸方向断面視において、スロット開口部37の中心線と、ロータ3の回生時の回転方向下流側からスロット開口部37を画成するティース32における巻胴部33の中心線と、の間の中心角である。スロット開口部37の中心線とは、軸方向から見て回転軸線Oからスロット開口部37における周方向の中央部に向かって延びる半直線である。巻胴部33の中心線とは、軸方向から見て回転軸線Oから巻胴部33における周方向の中央部に向かって延びる半直線である。スロット開口部37の中間部37aにおける開口角度θは、5°である。ロータ3の回生時の回転方向下流側からスロット開口部37を画成する鍔部34は、スロット開口部37の中間部37aを画成する位置において、巻胴部33からわずかに突出している。これにより、ロータ3の回生時の回転方向下流側からスロット開口部37を画成する鍔部34は、軸方向の全域において巻胴部33から突出している。
【0046】
図4は、図2のIV矢視図である。なお、図4では、スロット開口部37のうち第1端部37bを通る断面を示しているが、第2端部37c(図2参照)を通る断面構造も同様である。
図4に示すように、スロット開口部37の両端部37b,37cは、それぞれスロット36におけるロータ3の回生時の回転方向上流側の端部近傍を開口している。スロット開口部37の両端部37b,37cにおける開口角度θは、2.5°である。つまり、スロット開口部37の中間部37a(図3参照)は、スロット開口部37の両端部37b,37cよりも、ロータ3の回生時の回転方向で2.5°下流側に位置している。ロータ3の回生時の回転方向上流側からスロット開口部37を画成する鍔部34は、スロット開口部37の両端部37b,37cを画成する位置において、巻胴部33からわずかに突出している。これにより、ロータ3の回生時の回転方向上流側からスロット開口部37を画成する鍔部34は、軸方向の全域において巻胴部33から突出している。
【0047】
図2に示すように、コイル40は、セグメント化された複数相のコイルである。すなわち、コイル40は、各相のコイルが複数の部材に分割されるとともに、前記複数の部材が互いに連結されることで形成されている。コイル40は、スロット36から軸方向に突出したコイルエンド41を有する。コイルエンド41は、ステータコア30から軸方向一方側に突出した第1コイルエンド41Aと、ステータコア30から軸方向他方側に突出した第2コイルエンド41Bと、を備える。
【0048】
コイル40は、断面矩形状の平角線により形成された複数のコイルバー42を有する。複数のコイルバー42は、所定本数(本実施形態では6本)毎に径方向に並べられ、スロット36に挿入されている。各コイルバー42は、ステータコア30から軸方向の両側に突出するように設けられている。各コイルバー42のうちステータコア30から突出した部分は、コイルエンド41を形成している。各コイルバー42の端部は、図示しないが、例えば同相の他のコイルバー42の端部に近接するように周方向に曲げられる。近接したコイルバー42の端部同士は、TIG溶接やレーザ溶接等により接合される。
【0049】
図1に示すように、冷却手段7は、ロータ3を冷却するロータ冷却手段50と、ステータ5を冷却するステータ冷却手段60と、を備える。
ロータ冷却手段50は、ロータ3に冷媒を供給する。冷媒の一例は、例えばトランスミッションの潤滑および動力伝達等に用いられるオートマチックトランスミッションフルードである。ロータ冷却手段50は、上述した軸流路11、吐出孔13、内周側端面流路23A、ロータコア流路17、および外周側端面流路23Bと、オイルポンプ51と、を備える。オイルポンプ51は、軸流路11に冷媒を供給する。軸流路11に供給された冷媒は、ロータ3が回転することにより発生する遠心力によって、吐出孔13から吐出される。吐出孔13から吐出された冷媒は、内周側端面流路23A、ロータコア流路17、外周側端面流路23Bを順に通って、ロータ3の外側に排出される。このように、ロータ冷却手段50は、ロータ3の内部に冷媒を流通させることでロータ3を冷却する。
【0050】
ステータ冷却手段60は、コイル40のうち少なくともスロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置の箇所を冷却する。以下、コイル40のうち少なくともスロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置の箇所を、コイル40の冷却対象箇所という場合がある。ステータ冷却手段60は、ステータコア30の外周面のうち少なくともコイル40の冷却対象箇所に最も近い箇所を冷却することによって、コイル40のうち少なくとも冷却対象箇所を冷却する。
【0051】
ステータ冷却手段60は、ウォータージャケットであって、ステータコア30の外周面に接触している。本実施形態では、ステータ冷却手段60は、ステータコア30の全周を覆うように設けられ、ステータコア30の外周面全体に接触している。ステータ冷却手段60の内部には、冷媒流路61が形成されている。冷媒流路61には、ウォーターポンプ62から供給された冷却水(冷媒)が流通する。冷媒流路61は、ステータコア30の周囲においてステータコア30を軸方向に跨ぐように延びている。
【0052】
続いて、本実施形態の回転電機1の作用について説明する。
図5は、周方向におけるスロット開口部の位置と、回生時の漏れ磁束によるコイルの渦電流損と、の関係を示すグラフである。図5において、横軸は、スロット開口部37の開口角度θを示している。縦軸は、コイル40のうち軸方向においてスロット開口部37と同じ位置に位置する箇所における渦電流損を示している。
【0053】
図5に示すように、コイル40における回生時の渦電流損は、開口角度θが5°の位置において、開口角度θが2.5°の位置よりも大きくなっている。また、コイル40における回生時の渦電流損は、開口角度θが5°の位置において最も大きくなっている。すなわち、コイル40における回生時の渦電流損は、スロット開口部37の両端部37b,37cと同じ位置よりも、軸方向におけるスロット開口部37の中間部37aと同じ位置において大きくなっている。これにより、コイル40の温度は、スロット開口部37の両端部37b,37cと同じ位置よりも、スロット開口部37の中間部37aと同じ位置において大きくなる。
【0054】
本実施形態では、スロット開口部37は、軸方向における端部37b,37cから中間部37aに向かうに従い、ロータ3の回生時における回転方向の下流側に向かって延びている。このため、スロット36に配置されたコイル40には、スロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置において、スロット開口部37の端部37b,37cと軸方向で同じ位置よりも大きな渦電流損が生じる。これにより、コイル40の温度は、スロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置において、スロット開口部37の端部37b,37cと軸方向で同じ位置よりも高くなる。
本実施形態の回転電機の冷却構造によれば、ステータ冷却手段60はコイル40のうちスロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置の箇所を冷却するので、コイル40のうちスロット開口部37の端部37b,37cと軸方向で同じ位置の箇所よりも温度が高くなる箇所を効率よく冷却することができる。したがって、コイル40を適切に冷却できる。
【0055】
また、スロット開口部37における軸方向の中間部37aは、スロット開口部37における軸方向の両端部37b,37cよりもロータ3の回生時における回転方向の下流側に位置している。このため、コイル40は、軸方向におけるスロット開口部37の中間部37aと同じ位置の箇所において、スロット開口部37の両端部37b,37cと軸方向で同じ位置の箇所よりも高温となる。本実施形態によれば、ステータ冷却手段60は、コイル40のうちスロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置の箇所を冷却するので、コイル40のうちスロット開口部37の両端部37b,37cと軸方向で同じ位置の箇所よりも温度が高くなる箇所を効率よく冷却することができる。
【0056】
また、スロット開口部37の中間部37aは、スロット開口部37の両端部37b,37cよりもロータ3の回生時における回転方向で、ティース32の先端に突起(鍔部34)を形成させる所定角度下流側に位置している。この構成によれば、ティース32の先端には軸方向における位置によらず必ず鍔部34が形成されるので、ステータコア30をプレス加工によって打ち抜く際にティース32の先端の細リブのみを打ち抜くため、より容易に製造することができる。
【0057】
また、前記所定角度は、2.5°である。このため、上述したようにコイル40における渦電流損は、スロット開口部37の両端部37b,37cと軸方向で同じ位置よりも、スロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置において大きくなる。よって、ステータ冷却手段60により、コイル40のうちスロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置の箇所を冷却することで、コイル40のうちスロット開口部37の両端部37b,37cと軸方向で同じ位置の箇所よりも温度が高くなる箇所を効率よく冷却することができる。
【0058】
また、ステータ冷却手段60は、ステータコア30の外周面のうち少なくともスロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置の箇所に接触し、内部を冷却水が流通する。この構成によれば、ステータコア30のうちスロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置の箇所を直接冷却できる。このため、ステータ冷却手段60は、ステータコア30における、コイル40のうちスロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置の箇所に最も近い部分を冷却できる。したがって、ステータ冷却手段60は、ステータコア30を介して、コイル40のうちスロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置の箇所を冷却できる。
【0059】
また、鍔部34は、スロット開口部37の中間部37aを画成する位置において、巻胴部33からロータ3の回生時の回転方向上流側に突出している。また、鍔部34は、スロット開口部37の両端部37b,37cを画成するそれぞれの位置において、巻胴部33からロータ3の回生時の回転方向下流側に突出している。この構成によれば、ステータ5における磁路を確保して、トルクを低下させることなくトルクリップルを低減することができる。
【0060】
(第2実施形態)
続いて、回転電機が駆動用のモータである場合について説明する。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0061】
第2実施形態の回転電機1Aは、駆動用のモータであって、例えばハイブリッド自動車や電気自動車のような車両に搭載される走行用モータとして用いられる。回転電機1Aは、ロータ3と、ステータ5と、冷却手段7と、を備えている。
【0062】
図6は、第2実施形態に係るステータの一部を示す斜視図である。
図6に示すように、第2実施形態において、スロット開口部37は、軸方向一方側の第1端部37bから中間部37aに向かうに従い、ロータ3の力行時における回転方向の上流側に向かって延びている。また、スロット開口部37は、軸方向他方側の第2端部37cから中間部37aに向かうに従い、ロータ3の力行時における回転方向の上流側に向かって延びている。なお、各図中において、ロータ3の力行時における回転方向を矢印Dpで示す。ロータ3の力行時における回転方向とは、回転電機1Aが使用される際のロータ3の主要な回転方向である。例えば、回転電機1Aが車両に搭載される走行用モータである場合、ロータ3の力行時における回転方向は、車両を前進させる際にロータ3が回転する方向である。
【0063】
ここで、第2実施形態において、スロット開口部37の開口角度θを以下のように定義する。スロット開口部37の開口角度θは、ステータコア30の軸方向断面視において、スロット開口部37の中心線と、ロータ3の力行時の回転方向上流側からスロット開口部37を画成するティース32における巻胴部33の中心線と、の間の中心角である。この場合、スロット開口部37の中間部37aにおける開口角度θは、2.5°である。また、スロット開口部37の両端部37b,37cにおける開口角度θは、5°である。つまり、スロット開口部37の中間部37aは、スロット開口部37の両端部37b,37cよりも、ロータ3の力行時の回転方向で2.5°下流側に位置している。
【0064】
続いて、本実施形態の回転電機1Aの作用について説明する。
図7は、周方向におけるスロット開口部の位置と、力行時の漏れ磁束によるコイルの渦電流損と、の関係を示すグラフである。図7において、横軸は、スロット開口部37の開口角度θを示している。縦軸は、コイル40のうち軸方向においてスロット開口部37と同じ位置に位置する箇所における渦電流損を示している。
図7に示すように、コイル40における力行時の渦電流損は、開口角度θが2.5°の位置において、開口角度θが5°の位置よりも大きくなっている。また、コイル40における力行時の渦電流損は、開口角度θが2.5°の位置において最も大きくなっている。すなわち、コイル40における力行時の渦電流損は、軸方向におけるスロット開口部37の中間部37aと同じ位置よりも、スロット開口部37の両端部37b,37cと同じ位置において大きくなっている。これにより、コイル40の温度は、スロット開口部37の両端部37b,37cと同じ位置よりも、スロット開口部37の中間部37aと同じ位置において大きくなる。
【0065】
本実施形態では、スロット開口部37は、軸方向における端部37b,37cから中間部37aに向かうに従い、ロータ3の力行時における回転方向の上流側に向かって延びている。このため、スロット36に配置されたコイル40には、スロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置において、スロット開口部37の端部37b,37cと軸方向で同じ位置よりも大きな渦電流損が生じる。これにより、コイル40の温度は、スロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置において、スロット開口部37の端部37b,37cと軸方向で同じ位置よりも高くなる。
本実施形態の回転電機の冷却構造によれば、ステータ冷却手段60はコイル40のうちスロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置の箇所を冷却するので、第1実施形態と同様に、コイル40を適切に冷却できる。
【0066】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係る回転電機の概略構成を模式的に示す断面図である。
図1に示す第1実施形態では、ステータ冷却手段60をステータコア30の外周面に接触させることでコイル40を冷却している。これに対して図8に示す第3実施形態では、ステータコア130の内部に冷媒を流通させることでコイル40を冷却している点で、第1実施形態と異なっている。なお、図8では、発電用のモータである回転電機1に冷却手段107を適用した場合を図示しているが、駆動用の回転電機1Aに冷却手段107を適用してもよい。
【0067】
図8に示すように、ステータコア130には、冷媒が流通可能なステータコア流路138が形成されている。ステータコア流路138は、ステータコア130を貫通している。例えば、ステータコア流路138は、周方向におけるコイル40と同じ位置において、少なくともスロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置を通っている。本実施形態では、ステータコア流路138は、スロット36よりも径方向の外側に形成され、ステータコア130を軸方向に貫通している。
【0068】
冷却手段107は、ロータ3を冷却するロータ冷却手段50と、ステータ5を冷却するステータ冷却手段160と、を備える。ステータ冷却手段160は、ステータ5に冷媒を供給する。冷媒の一例は、例えばオートマチックトランスミッションフルードであって、ロータ冷却手段50で用いる冷媒と共用される。ステータ冷却手段160は、上述したステータコア流路138と、オイルポンプ64と、を備える。オイルポンプ64は、ステータコア流路138に冷媒を供給する。オイルポンプ64は、ロータ冷却手段50のオイルポンプ51と共用されてもよい。このように、ステータ冷却手段160は、ステータコア130における、スロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置の箇所に冷媒を流通させることで、コイル40のうち少なくとも上述した冷却対象箇所を冷却する。
【0069】
このように、本実施形態によれば、ステータ冷却手段160によって、コイル40のうちスロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置の箇所を冷却するので、第1実施形態と同様に、コイル40を適切に冷却することができる。
【0070】
また、ステータ冷却手段160は、ステータコア130に形成され、スロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置を通るステータコア流路138を備える。この構成によれば、ステータコア130のうちスロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置の箇所を直接冷却できる。このため、ステータ冷却手段160は、ステータコア130における、コイル40のうちスロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置の箇所に最も近い部分を冷却できる。したがって、ステータ冷却手段160は、ステータコア130を介して、コイル40のうちスロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置の箇所を冷却できる。
【0071】
(第4実施形態)
図9は、第4実施形態に係る回転電機の概略構成を模式的に示す断面図である。
図1に示す第1実施形態では、ステータ冷却手段60をステータコア30の外周面に接触させることでコイル40を冷却している。これに対して図9に示す第4実施形態では、ステータ5にロータ3から排出された冷媒を当てることでコイル40を冷却している点で、第1実施形態と異なっている。なお、図9では、発電用のモータである回転電機1に冷却手段107を適用した場合を図示しているが、駆動用の回転電機1Aに冷却手段107を適用してもよい。
【0072】
図9に示すように、ロータコア215には、冷媒が流通可能なロータコア流路217が形成されている。ロータコア流路217は、軸方向に交差する方向に沿って延在している。図示の例では、ロータコア流路217は、軸方向に直交する面方向に沿うとともに、マグネット19を避けるように延在している。ロータコア流路217の径方向外側の端部は、スロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置において、ロータ3の外周面に開口している。ロータコア流路217の径方向内側の端部は、回転軸10の吐出孔13を介して軸流路11に連通している。
【0073】
冷却手段207は、ロータ3およびステータ5に冷媒を供給して冷却する。冷媒の一例は、例えばオートマチックトランスミッションフルードである。冷却手段207は、上述した軸流路11、吐出孔13、およびロータコア流路217と、オイルポンプ51(冷媒供給手段)と、を備える。オイルポンプ51は、軸流路11に冷媒を供給する。軸流路11に供給された冷媒は、ロータ3が回転することにより発生する遠心力によって、吐出孔13から吐出される。吐出孔13から吐出された冷媒は、ロータコア流路217を通って、ロータ3の外側に排出される。ロータコア流路217から排出された冷媒は、遠心力により径方向外側に向かって飛び、ステータ5に当たる。ロータコア流路217から排出された冷媒の一部は、スロット開口部37の中間部37aを通じて、コイル40に直接当たる。このように、冷却手段207は、ロータコア215の内部に冷媒を流通させることでロータ3を冷却するとともに、ロータ3の内部を流通した冷媒をコイル40の上述した冷却対象箇所に直接当てることで、コイル40のうち少なくとも冷却対象箇所を冷却する。
【0074】
このように、本実施形態によれば、冷却手段207によって、コイル40のうちスロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置の箇所を冷却するので、第1実施形態と同様に、コイル40を適切に冷却することができる。
【0075】
また、冷却手段207は、軸流路11に冷媒を供給するオイルポンプ51と、回転軸10の外周面に開口する吐出孔13と、ロータコア215に形成され吐出孔13を介して軸流路11に連通するとともに、スロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置において径方向の外側に向けて開口するロータコア流路217と、を備える。この構成によれば、冷媒を軸流路11およびロータコア流路217に流通させることによりロータ3を冷却できる。さらに、遠心力によりロータコア流路217から冷媒が径方向外側に向けて排出されるので、スロット開口部37の中間部37aを通じて、コイル40に冷媒を当てることができる。これにより、冷却手段207は、コイル40のうちスロット開口部37の中間部37aと軸方向で同じ位置の箇所を冷却することができる。よって、ロータ3を冷却する手段と、コイル40を冷却する手段と、を兼ねることができる。したがって、回転電機1の構成を簡素化することができる。
【0076】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記各実施形態において、スロット開口部37の中間部37aは、軸方向においてスロット開口部37の両端部37b,37cからそれぞれ同じ距離離れているが、これに限定されない。スロット開口部の中間部は、軸方向においてスロット開口部37の両端部37b,37cからそれぞれ同じ距離離れた位置に対してずれていてもよい。すなわち、スロット開口部のうちロータ3の回生時の回転方向における最も下流側に位置する箇所は、必ずしも軸方向においてスロット開口部37の両端部37b,37cからそれぞれ同じ距離離れた位置に設ける必要はない。
【0077】
また、上記各実施形態において、スロット開口部37の両端部37b,37cは、互いに周方向における同じ位置に設けられているが、周方向において互いにずれた位置に設けられていてもよい。
【0078】
また、上記各実施形態において、スロット開口部37は、中間部37aを中心として、軸方向両側に向かって、軸方向に対して一定の角度で傾斜して延びているが、これに限定されない。スロット開口部は、軸方向に対する傾斜角度が変化するように延びていてもよい。
【0079】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1,1A…回転電機 3…ロータ 5…ステータ 10…回転軸 13…吐出孔(貫通孔) 21…端面板 30,130…ステータコア 32…ティース 34…鍔部(突起) 36…スロット 37…スロット開口部(開口部) 37a…中間部 37b…第1端部(端部) 37c…第2端部(端部) 40…コイル(導体) 51…オイルポンプ(冷媒供給手段) 60,160…ステータ冷却手段(冷却手段) 138…ステータコア流路 207…冷却手段 215…ロータコア 217…ロータコア流路 223A…第1端面流路(端面流路) 223B…第2端面流路(端面流路) O…回転軸線(中心軸線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9