特許第6796099号(P6796099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6796099光ケーブルの偏波変動特性の検査システム及び検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796099
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】光ケーブルの偏波変動特性の検査システム及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/24 20060101AFI20201119BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20201119BHJP
   G01M 11/02 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   G01L1/24 A
   G01M11/00 Q
   G01M11/02 F
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-43178(P2018-43178)
(22)【出願日】2018年3月9日
(65)【公開番号】特開2019-158468(P2019-158468A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2019年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英憲
(72)【発明者】
【氏名】別府 翔平
(72)【発明者】
【氏名】釣谷 剛宏
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5242098(JP,B2)
【文献】 特表2002−540420(JP,A)
【文献】 特開平5−142096(JP,A)
【文献】 実開昭52−99384(JP,U)
【文献】 米国特許第9791333(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/24
G01M 11/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ケーブルに加わる力と、前記光ケーブル内の光ファイバを伝搬する光の偏波状態の変化との関係を検査する検査システムであって、
前記光ケーブルがその上に配置される緩衝材と、
前記光ケーブル内の光ファイバの一端に光を入射し、当該光ファイバの他端から射出される前記光を受光して前記光の偏波状態の変動を測定する測定手段と、
前記光ケーブルに衝撃を与える衝撃付加手段と、
を備えていることを特徴とする検査システム。
【請求項2】
前記衝撃付加手段は、回転軸を中心に回転する剛板であることを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記回転軸は、前記剛板の底面の前記光ケーブル側のエッジであることを特徴とする請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記回転軸の高さは前記緩衝材の高さと同じであることを特徴とする請求項2又は3に記載の検査システム。
【請求項5】
前記衝撃付加手段は、
剛板と、
前記剛板を吊り上げて前記光ケーブルに落下させる昇降手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
【請求項6】
光ケーブルに加わる力と、前記光ケーブル内の光ファイバを伝搬する光の偏波状態の変化との関係を検査する検査方法であって、
前記光ケーブルを緩衝材の上に配置し、
前記光ケーブル内の光ファイバの一端に光を入射し、当該光ファイバの他端から射出される前記光を受光して前記光の偏波状態の変動を測定している間に、前記光ケーブルに衝撃を与えることを特徴とする検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ケーブルに加わる力と、当該光ケーブル内の光ファイバを伝搬する光の偏波状態の変化との関係を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び非特許文献1に開示されている様に、光ファイバに衝撃が加わると、内在する光ファイバを通過する光の偏波状態が変動する。この様な偏波状態の変動は、光通信に影響を及ぼし得る。実際に敷設されている光ケーブルにおいても、光ケーブルに加わる衝撃による偏波変動が生じると考えられ、光ケーブルに加わる力と、この力により生じる偏波変動との関係を評価・検査することが求められている。
【0003】
非特許文献2は、光ケーブルの検査方法を開示している。検査項目の1つとして衝撃に関する規定があり、非特許文献2は、光ケーブルに対して物体を落下させることにより衝撃を与える方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−203239号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】P.M.Krummrich and K.Kotteo,"Extremely fast (microsecond timescale) polarization changes in high speed long haul WDM transmission systems",Optical Fiber Communication Conference(OFC2004),FI3
【非特許文献2】JIS C 6851:2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、図1に示す様に、光ケーブルの内部にスロット50を設け、スロット内に複数のテープ心線を格納する、所謂、スロットケーブルに対して非特許文献2の検査方法を適用しても、スロット50が衝撃を吸収して、テープ心線、すなわち光ファイバには力が加わらず、偏波変動が生じない。つまり、非特許文献2は、衝撃に対する光ケーブルそのものの物理的な耐性を検査するための構成であり、非特許文献2の構成では、実際に敷設された光ケーブルに加わる衝撃を模擬することで、光ケーブルに加わる力と、この力により生じる偏波変動との関係を評価・検査することはできない。
【0007】
本発明は、光ケーブルに加わる力と偏波変動との関係を検査する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によると、光ケーブルに加わる力と、前記光ケーブル内の光ファイバを伝搬する光の偏波状態の変化との関係を検査する検査システムは、前記光ケーブルがその上に配置される緩衝材と、前記光ケーブル内の光ファイバの一端に光を入射させ、当該光ファイバの他端から射出される前記光を受光して前記光の偏波状態の変動を測定する測定手段と、前記光ケーブルに衝撃を与える衝撃付加手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、光ケーブルに加わる力と偏波変動との関係を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】スロットケーブルの断面図。
図2】一実施形態による検査システムの構成図。
図3】一実施形態による検査システムの動作説明図。
図4】一実施形態による検査システムの動作説明図。
図5】一実施形態による検査システムの動作説明図。
図6】一実施形態による検査システムの動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明を実施形態の内容に限定するものではない。また、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0012】
<第一実施形態>
図2は、本実施形態による検査システムの構成図である。例えば、金属等の硬い面(以下、ベースと呼ぶ)に緩衝材30を配置する。そして、検査対象の光ケーブル10を、緩衝材30の上に配置する。偏波測定装置20は、光ケーブル10内の光ファイバの一端から当該光ファイバに光を入射する。偏波測定装置20は、当該光ファイバを伝搬し、当該光ファイバの他端から射出される光を受光することで、光ファイバ中を伝搬する光の偏波状態の時間変動を測定する。直方体形状の剛板40は、例えば、金属製であり、光ケーブル10から所定の位置に緩衝材30と同じベース上に立てられる。なお、図2に示す様に、剛板40の厚みは、その高さ及び幅よりも小さくし、幅と厚みで定義される面を底面としてベース上に立てられる。なお、剛板40の幅方向は、緩衝材30上の光ケーブルの敷設方向と平行にする。剛板40を緩衝材30側に押すことで、剛板40は、図3に示す様に自重によりベースとの接地面の干渉材30側のエッジを回転軸として倒れこみ、これにより、緩衝材30の上に置かれた光ケーブル10の部分に剛板40を衝突させ、緩衝材30の上に置かれた光ケーブル10の部分に衝撃を与える。
【0013】
緩衝材30の反発力は弱いため、この衝突は、ほぼ弾性衝突に近い状況となる。本発明では、光ケーブル10を緩衝材30の上に置いているため、この衝突により光ケーブル10は、緩衝材30に沈み込む形となる。光ケーブル10の緩衝材30側への沈み込みにより、光ケーブル10がスロットケーブルである場合、スロット内部でテープ心線が移動し、よって、テープ心線、つまり、光ケーブル10内部の光ファイバも圧力を受け、光ファイバを伝搬している偏波状態が変動する。この状態は、敷設されている光ファイバに衝撃が加わる状態に近く、よって、図2及び図3に示す構成により、光ケーブル10に加わる衝撃と、この衝撃により生じる偏波変動との関係を評価・検査することができる。なお、光ケーブル10に加える衝撃の強さ(力の強さ)は、例えば、剛板40の重さ、及び/又は、剛板40の回転軸と光ケーブル10との距離により調整することができる。
【0014】
また、光ケーブル10に衝撃を与える範囲は、剛板40の光ケーブル10に沿った長さ(図2の幅)により調整することができる。これにより、衝撃を与える光ケーブル10の長さを調整することで、衝撃を受ける範囲と偏波変動との関係を調査・評価することもできる。
【0015】
なお、非特許文献2の構成では、検査対象の光ケーブルを鋼製のベースに固定して衝撃を与えるため、光ケーブルの沈み込みが生じない。したがって、光ケーブルがスロットケーブルである場合、光ケーブルに与えた衝撃はスロットで吸収され、スロット内部のテープ心線は影響を受けなかった。本実施形態では、光ケーブル10を緩衝材30上に設置するため、光ケーブル10の種類によらず、衝撃と、偏波変動との関係を評価・検査することができる。なお、剛板40を単にベースに立てるものとしたが、剛板40に回転軸を設けて、当該回転軸を中心に回動する様に構成することもできる。
【0016】
最後に緩衝材30について説明する。例えば、緩衝材30としては、反発弾性率が50%以下のものを使用し、例えば、ウレタン/スポンジを使用できる。また、緩衝材30の高さは、光ケーブル10の直径以上とし、光ケーブル10の長手方向の長さは、衝撃を与える光ケーブル10の長手方向の長さの最大値以上とする。さらに、光ケーブル10の長手方向と直交する方向の緩衝材30の長さは、光ケーブルの直径の3倍以上とすることが望ましい。さらに、緩衝材30の上に光ケーブル10を配置した際、光ケーブル10の重みにより沈み込む深さが光ケーブル10の半径未満となる様にすることが望ましい。
【0017】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。第一実施形態では、図3に示す様に、剛板40を立てるベースは、緩衝材30を配置するベースと同じであった。本実施形態では、図4に示す様に床面に、緩衝材30と同じ高さの剛板31を置いて、剛板31の上に剛板40を立てる。この構成により、剛板40は、第一実施形態と比較して、より水平に近い状態で光ケーブル10に衝撃を与えることになり、第一実施形態と比較して、より確実に、かつ、より強い衝撃を光ケーブル10に与えることができる。例えば、第一実施形態の構成では、剛板40と光ケーブル10との位置関係と、緩衝材30の高さとにより、剛板40が先に緩衝材30の剛板40側のエッジに当たり得る。この場合、剛板40が光ケーブル10に与える力が変化し得る。また、本実施形態では、より水平に近い状態で光ケーブル10に衝撃を与えるため、光ケーブル10に与える衝撃力の計算も容易になる。
【0018】
<第三実施形態>
続いて、第三実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。第一実施形態では、剛板40を、そのベースと接する面の光ケーブル10側のエッジを回転軸として回転させて光ケーブル10に衝撃を与えていた。本実施形態では、図5に示す様に、剛板40を光ケーブル10の上に吊り上げ、剛板40を落下させることで光ケーブル10に衝撃を与える。剛板40を吊り上げる昇降機構は任意であるが、剛板40が金属性であると、例えば、電磁石により剛板40を吸着させて吊り上げ、電磁石をオフとすることで、剛板40を落下させることができる。
【0019】
本実施形態では、剛板40の高さにより光ケーブル10に与える衝撃の強さを調整することができ、第一実施形態より、与える衝撃の調整範囲が大きくなる。図6は、光ケーブル10の長手方向を見た図であり、衝撃を与える光ケーブル10の範囲は、剛板40の光ケーブル10の長手方向の長さにより調整することができる。
【符号の説明】
【0020】
10:光ケーブル、30:緩衝材、20:偏波測定装置、40:剛板
図1
図2
図3
図4
図5
図6