特許第6796255号(P6796255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧
<>
  • 特許6796255-ステアリング装置 図000002
  • 特許6796255-ステアリング装置 図000003
  • 特許6796255-ステアリング装置 図000004
  • 特許6796255-ステアリング装置 図000005
  • 特許6796255-ステアリング装置 図000006
  • 特許6796255-ステアリング装置 図000007
  • 特許6796255-ステアリング装置 図000008
  • 特許6796255-ステアリング装置 図000009
  • 特許6796255-ステアリング装置 図000010
  • 特許6796255-ステアリング装置 図000011
  • 特許6796255-ステアリング装置 図000012
  • 特許6796255-ステアリング装置 図000013
  • 特許6796255-ステアリング装置 図000014
  • 特許6796255-ステアリング装置 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796255
(24)【登録日】2020年11月18日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/19 20060101AFI20201130BHJP
   B62D 1/185 20060101ALI20201130BHJP
   B62D 1/184 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   B62D1/19
   B62D1/185
   B62D1/184
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-23119(P2017-23119)
(22)【出願日】2017年2月10日
(65)【公開番号】特開2018-127160(P2018-127160A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2020年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】作田 雅芳
(72)【発明者】
【氏名】長谷 篤宗
(72)【発明者】
【氏名】山岡 道明
(72)【発明者】
【氏名】吉原 愛仁
(72)【発明者】
【氏名】吉村 知記
(72)【発明者】
【氏名】明法寺 祐
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−034883(JP,A)
【文献】 特開2016−188070(JP,A)
【文献】 特開2004−082758(JP,A)
【文献】 特開2009−298324(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/035891(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00 − 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラム軸方向の一端に操舵部材が接続されるアッパジャケットと、
前記コラム軸方向における前記アッパジャケットの他端に対して摺動可能に外嵌されたロアジャケットと、
車体に固定され、前記ロアジャケットを支持する支持部材と、
前記ロアジャケットを前記アッパジャケットに締め付けることにより前記ロアジャケットに対する前記アッパジャケットの位置を保持する締付機構と、
前記アッパジャケットに保持された保持部材と、
前記コラム軸方向に前記保持部材とともに移動し、二次衝突時に前記ロアジャケットに対して前記アッパジャケットが移動する際には、前記支持部材および前記ロアジャケットのうちの少なくとも一方と相対摺動することによって前記アッパジャケットの移動に対する抵抗力を発生させる抵抗力発生手段と、を備え、
前記抵抗力発生手段は、前記保持部材に固定された固定部と、前記コラム軸方向に延び前記コラム軸方向の一部が前記固定部と連結された延設部と、を含み、
前記締付機構は、前記支持部材および前記延設部を介して前記ロアジャケットを前記アッパジャケットに締め付け、
前記抵抗力発生手段は、前記締付機構による締付時に前記コラム軸方向から見て前記固定部に対して前記延設部の前記一部が左右方向に撓み易くなるように前記固定部と前記延設部の前記一部との連結剛性を低減する連結剛性低減手段を含むことを特徴とする、ステアリング装置。
【請求項2】
前記連結剛性低減手段は、前記延設部に対して上下方向に隣接または離隔して配置され、前記コラム軸方向に延びるスリットまたは凹溝を含む、請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記連結剛性低減手段は、前記固定部と前記延設部の一部とを連結し、上下方向から見て前記左右方向に起伏する弾性変形可能な屈曲部または湾曲部を含む、請求項1または2に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記抵抗力発生手段は、二次衝突時に、前記屈曲部または前記湾曲部の前記コラム軸方向の変形量を規制量に規制する規制部を含む、請求項3に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記保持部材が、二次衝突時に、前記アッパジャケットと第1相対摺動することによって前記アッパジャケットの移動に対する第1抵抗力を発生させる第1抵抗力発生手段を構成し、
前記延設部を含む前記抵抗力発生手段が、二次衝突時に、前記支持部材および前記ロアジャケットのうちの少なくとも一方と第2相対摺動することによって前記アッパジャケットの移動に対する第2抵抗力を発生させる第2抵抗力発生手段を構成している、請求項1〜4の何れか一項に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車体に二次衝突時に離脱可能に連結された固定側ブラケットと、ロアジャケットに対してコラム軸方向に摺動するアッパジャケットに固定された可動側ブラケットとが、締付機構によって締め付けられて、テレスコ位置やチルト位置のロックが達成されるステアリング装置がある。
この種のステアリング装置において、可動側ブラケットに一端が固定されてコラム軸方向に延びるテレスコ摩擦板と、固定側ブラケットに固定されたチルト摩擦板とを締付機構による締付時に締め付けて、前記ロックの保持力を向上させるステアリング装置が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1では、二次衝突時に、車体から離脱される固定側ブラケット、アッパジャケット、可動側ブラケットおよび両摩擦板は、コラム軸方向に一体移動するため、テレスコ摩擦板はチルト摩擦板に対して摺動による衝撃吸収荷重を発生しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−29224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、二次衝突時の衝撃吸収荷重を増大させることが要望されている。そこで、アッパジャケットと一体移動しコラム軸方向に延びる延設部材であって締付機構により締め付けられる延設部材を二次衝突時にコラム軸方向に移動しない相手部材に対して相対摺動させて、衝撃吸収荷重を発生させる場合を想定した場合、下記の新たな問題の発生が予想される。
【0006】
テレスコ調整位置によって、延設部材が締付機構によって締め付けられる締付位置が延設部材の長手方向(コラム軸方向に相当)に変位する。一方、前記延設部材は、アッパジャケット側の部材に連結される長手方向の一部(例えば一端)では、左右方向(車幅方向)に撓み難く、前記一部から前記長手方向に離隔する部分では、左右方向に撓み易い。
このため、テレスコ調整位置によって、二次衝突時に延設部材が相手部材に対して相対摺動するときに発生する衝撃吸収荷重がばらつくおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、テレスコ調整位置による衝撃吸収荷重のばらつきを抑制するステアリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、コラム軸方向(X)の一端に操舵部材(2)が接続されるアッパジャケット(7)と、前記コラム軸方向における前記アッパジャケットの他端に対して摺動可能に外嵌されたロアジャケット(8)と、車体(13)に固定され、前記ロアジャケットを支持する支持部材(17)と、前記ロアジャケットを前記アッパジャケットに締め付けることにより前記ロアジャケットに対する前記アッパジャケットの位置を保持する締付機構(18)と、前記アッパジャケットに保持された保持部材(40)と、前記コラム軸方向に前記保持部材とともに移動し、二次衝突時に前記ロアジャケットに対して前記アッパジャケットが移動する際には、前記支持部材および前記ロアジャケットのうちの少なくとも一方と相対摺動することによって前記アッパジャケットの移動に対する抵抗力を発生させる抵抗力発生手段(50;50Q)と、を備え、前記抵抗力発生手段は、前記保持部材に固定された固定部(51)と、前記コラム軸方向に延び前記コラム軸方向の一部(52P)が前記固定部と連結された延設部(52)と、を含み、前記締付機構は、前記支持部材および前記延設部を介して前記ロアジャケットを前記アッパジャケットに締め付け、前記抵抗力発生手段は、前記締付機構による締付時に前記コラム軸方向から見て前記固定部に対して前記延設部の前記一部が左右方向(Z)に撓み易くなるように前記固定部と前記延設部の前記一部との連結剛性を低減する連結剛性低減手段(54;57;57V;57W;57U)を含むことを特徴とする、ステアリング装置(1)を提供する。
【0009】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
請求項2のように、前記連結剛性低減手段は、前記延設部に対して上下方向に隣接または離隔して配置され、前記コラム軸方向に延びるスリット(54)または凹溝を含んでいてもよい。
【0010】
請求項3のように、前記連結剛性低減手段は、前記固定部と前記延設部の一部とを連結し、上下方向から見て前記左右方向に起伏する弾性変形可能な屈曲部(57;57V;57W)または湾曲部(57U)を含んでいてもよい。
請求項4のように、前記抵抗力発生手段は、二次衝突時に、前記屈曲部または前記湾曲部の前記コラム軸方向の変形量を規制量に規制する規制部(74)を含んでいてもよい。
【0011】
請求項5のように、前記保持部材が、二次衝突時に、前記アッパジャケットと第1相対摺動することによって前記アッパジャケットの移動に対する第1抵抗力を発生させる第1抵抗力発生手段を構成し、前記延設部を含む前記抵抗力発生手段が、二次衝突時に、前記支持部材および前記ロアジャケットのうちの少なくとも一方と第2相対摺動することによって前記アッパジャケットの移動に対する第2抵抗力を発生させる第2抵抗力発生手段(50;50Q;50R;50V;50W;50U)を構成していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、抵抗力発生手段において、連結剛性低減手段によって固定部と延設部のコラム軸方向の一部との連結剛性が低減されるため、締付機構によって延設部の前記一部を含む領域が締め付けられるときに、延設部の前記一部がコラム軸方向から見て左右方向に撓み易くなる。このため、延設部において前記一部を含む領域が主に締め付けられる場合と、延設部において前記一部からコラム軸方向に離隔する領域が主に締め付けられる場合とで、左右方向の撓み剛性の差が低減される。したがって、テレスコ調整後に延設部に対する締付位置が変化しても、延設部の左右方向の撓み剛性が変化し難い。このため、二次衝突時に抵抗力発生手段が前記支持部材および前記ロアジャケットの少なくとも一方と相対摺動するときに発生する抵抗力が、相対摺動の摺動位置の変化に拘らず、変化し難くなる。これにより、テレスコ調整位置による衝撃吸収荷重のばらつきを抑制することができる。
【0013】
請求項2の発明では、コラム軸方向に延びるスリットまたは凹溝を用いる簡単な構造で前記連結剛性を低減することができる。
請求項3の発明では、締付機構の締付時に弾性変形可能な屈曲部または湾曲部を用いる簡単な構造で、前記連結剛性を低減することができる。
請求項4の発明では、二次衝突時に、規制部によって、屈曲部または湾曲部のコラム軸方向の変形量が規制量に規制される。二次衝突時において、規制部による規制前には、屈曲部または湾曲部を変形させる変形荷重が衝撃吸収荷重として用いられ、規制部による規制後には、前記相対摺動による摺動荷重が衝撃吸収荷重として用いられる。前記規制量を所望の量に設定することで、ロアジャケットに対するアッパジャケットの軸方向変位に応じて、衝撃吸収特性を適切に設定することができる。
【0014】
請求項5の発明では、二次衝突時に、ロアジャケットに対するアッパジャケットの軸方向位置によって、ロアジャケットに対するアッパジャケットの摩擦摺動の際の抵抗力に第1抵抗力または第2抵抗力の何れか一方が付加される段階と、ロアジャケットに対するアッパジャケットの摩擦摺動の際の抵抗力に第1抵抗力または第2抵抗力の何れか他方が付加される段階とで、衝撃吸収荷重を得ることができる。このため、第1抵抗力および第2抵抗力の大きさの設定により、適切に衝撃吸収荷重の特性を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、図1におけるII−II線に沿った断面の模式図である。
図3図3は、ステアリング装置に備えられた第1摺動部材および第2摺動部材の斜視図である。
図4図4(a)は、図1におけるIV−IV線に沿った断面の模式図であり、図4(b)は、図4(a)の一部を破断した模式図である。
図5図5は、第1摺動部材および第2摺動部材の周辺の模式的な底面図である。
図6図6(a)および(b)は、二次衝突が発生したときの摺動部材の周辺の様子を示す模式図である。
図7図7は、二次衝突が発生したときのアッパジャケットの軸方向変位と、衝撃吸収荷重との関係を示したグラフ図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係るステアリング装置に備えられる第1摺動部材および第2摺動部材の側面図である。
図9図9(a)は、本発明の第3実施形態に係るステアリング装置に備えられる第1摺動部材および第2摺動部材の概略側面図であり、図9(b)は第1摺動部材および第2摺動部材の概略平面図であり、図9(c)は第1摺動部材および第2摺動部材の要部と締付機構の要部との概略平面図である。
図10図10は、第3実施形態において、二次衝突が発生したときのアッパジャケットの軸方向変位と、衝撃吸収荷重との関係を示したグラフ図である。
図11図11(a)および(b)は、本発明の第4実施形態に係るステアリング装置に備えられる屈曲部の周辺の構造の概略図である。
図12図12は、本発明の第5実施形態に係るステアリング装置に備えられる第1摺動部材および第2摺動部材の概略側面図である。
図13図13(a)、(b)、(c)は、それぞれ、本発明の第6、第7、第8実施形態に係るステアリング装置に備えられる第1摺動部材および第2摺動部材の要部と締付機構の要部との概略平面図である。
図14】本発明の第9実施形態において、二次衝突が発生したときのアッパジャケットの軸方向変位と、衝撃吸収荷重との関係を示したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、ステアリング装置1は、ステアリングシャフト3と、コラムジャケット6と、インターミディエイトシャフト4と、転舵機構5とを備える。ステアリングシャフト3の一端(軸方向上端)には、ステアリングホイール等の操舵部材2が連結されている。ステアリング装置1は、操舵部材2の操舵に連動して、転舵輪(図示せず)を転舵する。転舵機構5は、例えばラックアンドピニオン機構であるが、これに限られない。
【0017】
以下では、ステアリングシャフト3の軸方向であるコラム軸方向Xの上方を軸方向上方XUといい、コラム軸方向Xの下方を軸方向下方XLという。
ステアリングシャフト3は、筒状のアッパシャフト3Uおよびロアシャフト3Lを有している。アッパシャフト3Uとロアシャフト3Lとは、例えばスプライン嵌合やセレーション嵌合によって相対移動可能に嵌合されている。操舵部材2は、アッパシャフト3Uの軸方向上方XUの一端に連結されている。
【0018】
コラムジャケット6は、アッパシャフト3Uを介して操舵部材2が一端に接続されたアッパジャケット7と、アッパジャケット7の他端に摺動可能に外嵌されたロアジャケット8とを含む。アッパジャケット7は、インナジャケットでもあり、ロアジャケット8は、アウタジャケットでもある。アッパジャケット7の一端には、アッパシャフト3Uを介して操舵部材2が接続されている。コラム軸方向Xは、アッパジャケット7の軸方向でもあり、ロアジャケット8の軸方向でもある。軸方向上方XUは、アッパジャケット7の一端側でもあり、軸方向下方XLは、アッパジャケット7の他端側でもある。
【0019】
ステアリングシャフト3は、コラムジャケット6内に挿通されている。アッパシャフト3Uは、軸受9を介してアッパジャケット7に回転可能に支持されている。ロアシャフト3Lは、軸受10を介してロアジャケット8に回転可能に支持されている。アッパシャフト3Uがロアシャフト3Lに対してコラム軸方向Xに移動することによって、アッパジャケット7がロアジャケット8に対してコラム軸方向Xに移動する。コラムジャケット6は、ステアリングシャフト3とともにコラム軸方向Xに伸縮可能である。
【0020】
ステアリングシャフト3およびコラムジャケット6をコラム軸方向Xに伸縮させることで、操舵部材2の位置を車両の前後方向に調整することができる。このように、ステアリング装置1はテレスコ調整機能を有する。
テレスコ調整は、所定のテレスコ調整範囲内でアッパジャケット7を摺動させることで行われる。テレスコ調整範囲とは、コラム軸方向Xにおけるアッパジャケット7の調整上限位置と、コラム軸方向Xにおけるアッパジャケット7の調整下限位置との間の範囲である。コラムジャケット6は、アッパジャケット7が調整上限位置にあるときに最も伸びた状態になり、アッパジャケット7が調整下限位置にあるときに最も縮んだ状態になる。
【0021】
図2は、図1におけるII−II線に沿った断面の模式図である。アッパジャケット7には、コラム軸方向Xに長手の案内溝27が形成されている。ロアジャケット8には、案内溝27に嵌合され、案内溝27に対してコラム軸方向Xに相対移動可能な被案内突起28が固定されている。ロアジャケット8には、被案内突起28が挿通された挿通孔8bが形成されている。被案内突起28は、ロアジャケット8の外周面において挿通孔8bの周りの部分に当接する頭部28aと、挿通孔8bに挿通された軸部28bとを含む。頭部28aおよび軸部28bは、一体に形成されている。軸部28bの先端は、案内溝27に嵌合している。
【0022】
テレスコ調整時、案内溝27の軸方向下方端が被案内突起28と当接することで、アッパジャケット7は、テレスコ調整範囲の調整上限位置に規制される。これにより、ロアジャケット8からのアッパジャケット7の抜け防止が達成される。また、テレスコ調整時、案内溝27の軸方向上方端が被案内突起28と当接することで、アッパジャケット7は、テレスコ調整範囲の調整下限位置に規制される。
【0023】
図1を参照して、ステアリング装置1は、車体13に固定された固定ブラケット14と、固定ブラケット14によって支持されたチルト中心軸15と、ロアジャケット8の外周に固定され、チルト中心軸15によって回転可能に支持されたコラムブラケット16とを含む。ステアリングシャフト3およびコラムジャケット6は、チルト中心軸15の中心軸線であるチルト中心CCを支点にしてチルト方向Y(略上下方向)に回動可能である。
【0024】
ステアリングシャフト3およびコラムジャケット6をチルト中心CC回りに回動させることで、操舵部材2の位置をチルト方向Yに調整することができる。このように、ステアリング装置1はチルト調整機能を有する。
図2を参照して、ステアリング装置1は、車体13に固定され、ロアジャケット8を支持するブラケットなどの支持部材17と、チルト調整およびテレスコ調整後のアッパジャケット7の位置をロックする締付機構18とを含む。締付機構18は、ロアジャケット8のコラム軸方向Xの上部に一体に設けられた一対の被締付部19を、支持部材17を介して締め付ける。
【0025】
ロアジャケット8は、ロアジャケット8の軸方向上端8aから軸方向下方XLに延びるスリット26を有する。一対の被締付部19は、スリット26の両側に配置されている。締付機構18は、一対の被締付部19に取り付けられている。締付機構18が一対の被締付部19を締め付けることにより、ロアジャケット8は、弾性的に縮径し、アッパジャケット7を締め付ける。
【0026】
支持部材17は、車体13に取り付けられた取付板24と、取付板24の両端からチルト方向Yの下方に延びる一対の側板22とを含む。各側板22には、チルト方向Yに延びるチルト用長孔23が形成されている。
ロアジャケット8の一対の被締付部19は、一対の側板22間に配置され、対応する側板22の内側面22aにそれぞれ沿う板状をなしている。各被締付部19には、円孔からなる軸挿通孔29が形成されている。
【0027】
締付機構18は、締付軸21(挿通軸)と、締付軸21を回転操作する操作レバー20とを含む。締付軸21の中心軸線C1が、操作レバー20の回転中心に相当する。
締付軸21は、例えば、ボルトである。締付軸21は、支持部材17の両側板22のチルト用長孔23とロアジャケット8の両被締付部19の軸挿通孔29とに挿通される。締付軸21およびロアジャケット8は、チルト調整時に、支持部材17に対し相対移動する。その際、締付軸21は、チルト用長孔23内でチルト方向Yに移動する。
【0028】
締付軸21の一端に設けられた頭部21aは、操作レバー20と一体回転可能に固定されている。締付機構18は、締付軸21の頭部21aと一方の側板22(図2で左側の側板22)との間に介在し、操作レバー20の操作トルクを締付軸21の軸力(一対の側板22を締め付けるための締付力)に変換する力変換機構30をさらに含む。
力変換機構30は、操作レバー20と一体回転可能に連結され、締付軸21に対して中心軸線C1が延びる方向である締付軸方向Jの移動が規制された回転カム31と、回転カム31に対してカム係合し、一方の側板22を締め付ける一方の締付部材32とを含む。締付部材32は、回転が規制された非回転カムである。一方の締付部材32は、ロアジャケット8の一方の被締付部19(図2で左側の被締付部19)に締付軸方向Jから対向している。
【0029】
締付機構18は、他方の側板22(図2で右側の側板22)を締め付ける他方の締付部材33と、他方の締付部材33と他方の側板22との間に介在する針状ころ軸受37とをさらに含む。他方の締付部材33は、締付軸21の他端に設けられたねじ部21bに螺合したナットである。他方の締付部材33は、針状ころ軸受37を介して他方の側板22を締め付ける。他方の締付部材33は、ロアジャケット8の他方の被締付部19(図2で右側の被締付部19)に締付軸方向Jから対向している。
【0030】
回転カム31と、一方の締付部材32と、針状ころ軸受37とは、締付軸21の外周によって支持されている。締付部材32は、一方の側板22に形成されたチルト用長孔23との嵌合によって、その回転が規制されている。
操作レバー20のロック方向への回転に伴って、回転カム31が締付部材32に対して回転すると、締付部材32は、締付軸方向Jに沿って回転カム31から離れる方向に移動する。これにより、一対の締付部材32,33によって、支持部材17の一対の側板22がクランプされて締め付けられる。
【0031】
このとき、支持部材17の各側板22が、ロアジャケット8の対応する被締付部19を締め付けることから、ロアジャケット8のチルト方向Yの移動が規制されて、チルトロックが達成される。また、両被締付部19が締め付けられることで、ロアジャケット8は、弾性的に縮径してアッパジャケット7を締め付ける。その結果、アッパジャケット7がテレスコ調整範囲内の所定のテレスコ位置にロック(保持)され、テレスコロックが達成される。
【0032】
以上のように、締付機構18は、支持部材17を介してロアジャケット8をアッパジャケット7に締め付けることによって、ロアジャケット8に対するアッパジャケットの位置を保持する。
一方、操作レバー20がロック解除方向へ回転すると、回転カム31の回転に伴い、締付部材32は、締付軸方向Jに沿って回転カム31に近づく方向に移動する。これにより、一対の締付部材32,33による一対の側板22の締め付けが解除され、チルト調整およびテレスコ調整が可能となる。
【0033】
図3を参照して、ステアリング装置1は、第1摺動部材40および一対の第2摺動部材50をさらに含む。図4(a)は、図1におけるIV−IV線に沿った断面の模式図である。図4(b)は、図4(a)の一部を破断した模式図である。図5は、第1摺動部材40および第2摺動部材50の周辺の模式的な底面図である。
図4(a)を参照して、第1摺動部材40は、アッパジャケット7に対して摩擦摺動可能にアッパジャケット7に取り付けられている。第1摺動部材40は、アッパジャケット7に、圧入により保持された保持部材であって、第2摺動部材50をアッパジャケット7に保持する機能を有する。第1摺動部材40とアッパジャケット7との摩擦摺動を第1相対摺動という。第1相対摺動によって発生する、アッパジャケット7の移動に対する抵抗力を第1抵抗力G1という。第1摺動部材40によって第1抵抗力発生手段が構成されている。
【0034】
第1摺動部材40は、アッパジャケット7の外周面に外嵌された筒状の嵌合部41と、嵌合部41の一端からアッパジャケット7の径方向に張り出した円環状のフランジ部42と、嵌合部41の内周面からアッパジャケット7の外周面に向けて突出し、アッパジャケット7の外周面と接触する複数(本実施形態では8つ)の突部43とを含む。
複数の突部43とアッパジャケット7の外周面との摩擦力や突部43の強度を調整することによって、第1相対摺動によって発生する第1抵抗力G1を調整することができる。複数の突部43は、アッパジャケット7の外周面の周方向Cに沿って等間隔に配置されているため、第1抵抗力G1が安定し易い。
【0035】
第1摺動部材40は、第2摺動部材50を固定する一対の固定部44をさらに含む。一対の固定部44のぞれぞれは、径方向Rにおけるフランジ部42の外方端から径方向外方へ延びている。径方向Rとは、アッパジャケット7の中心軸線C2を中心とする半径方向である。径方向外方とは、径方向Rにおいて中心軸線C2から離れる方向のことである。一対の固定部44は、アッパジャケット7を挟むように周方向Cにおいて互いに180°離間した位置に配置されている。
【0036】
図5を参照して、アッパジャケット7には、コンビスイッチやキーロックなどの取付部品100が取り付けられている。取付部品100は、アッパジャケット7において第1摺動部材40が取り付けられている部分よりも軸方向上方XUに取り付けられている。また、ステアリング装置1は、アッパジャケット7に固定され、コラム軸方向Xにおける操舵部材2側(軸方向上方XU)から第1摺動部材40に対向する対向部材101をさらに含んでいる。対向部材101の軸方向下端は、アッパジャケット7において取付部品100と第1摺動部材40との間に位置している。対向部材101は、たとえば、取付部品100をアッパジャケット7に取り付けるためのブラケットなどである。当該ブラケットは、溶接、かしめまたは圧入などによってアッパジャケット7に固定されている。対向部材101は、取付部品100をアッパジャケット7に取り付けるためのブラケットに限られず、取付部品100以外の車両用部品(たとえば、コラムカバー、ワイヤーハーネス、ニーエアバッグなど)をアッパジャケット7に取り付けるためのブラケットであってもよい。
【0037】
図3を参照して、第2摺動部材50は、第1摺動部材40から軸方向下方XLに延びる板状の部材である。一対の第2摺動部材50は、第1摺動部材40とは別に形成された後、溶接等により第1摺動部材40に固定されている。そのため、一対の第2摺動部材50は、コラム軸方向Xに第1摺動部材40と一体移動する。第2摺動部材50は、第1摺動部材40の固定部44の軸方向下端面に接続されている。第2摺動部材50は、テレスコ調整の際、第1摺動部材40とともにアッパジャケット7と一体移動する。
【0038】
図5を参照して、一対の第2摺動部材50は、アッパジャケット7を挟んで締付軸方向Jに離間しており、締付軸方向Jに互いに対向している。一方の第2摺動部材50は、一方の締付部材32と一方の被締付部19(図5で上側の被締付部19)との間に配置されている。一方の第2摺動部材50は、一方の側板22(図5で上側の側板22)と、一方の被締付部19との間に配置されている。他方の第2摺動部材50は、他方の締付部材33と他方の被締付部19との間に配置されている(図5で下側の被締付部19)。他方の第2摺動部材50は、他方の側板22(図5で下側の側板22)と、他方の被締付部19との間に配置されている。
【0039】
各第2摺動部材50は、締付機構18による締付状態(ロアジャケット8がアッパジャケット7を締め付けた状態)では、対応する締付部材32,33によって、対応する被締付部19に押し付けられている。
締付機構18が各第2摺動部材50を対応する被締付部19に押し付ける押付方向Pは、締付軸方向Jと一致している。各押付方向Pにおいて対応する被締付部19に向かう方向を押付方向Pの下流側という。
【0040】
各第2摺動部材50は、対応する締付部材32,33によって対応する被締付部19に押し付けられることによって、対応する側板22および被締付部19によって挟持される。この状態で、各第2摺動部材50は、対応する側板22と被締付部19とに対して摩擦摺動可能である。
締付機構18がロアジャケット8をアッパジャケット7に締め付けた状態における一対の第2摺動部材50と、一対の側板22および一対の被締付部19との摩擦摺動を第2相対摺動という。第2相対摺動によって発生する、アッパジャケット7の移動に対する抵抗力を第2抵抗力G2という。第2摺動部材50によって第2抵抗力発生手段が構成されている。第2摺動部材50と側板22および被締付部19との摩擦力を調整することによって第2抵抗力G2を調整することができる。第1実施形態では、第1相対摺動によって発生する第1抵抗力G1は、第2相対摺動によって発生する第2抵抗力G2よりも大きい(G1>G2)。
【0041】
図1および図3を参照して、第2摺動部材50は、第1摺動部材40に例えば溶接により固定された固定部51と、コラム軸方向Xと平行に延びる延設部52と、延設部52のコラム軸方向Xの一部52Pと固定部51とを連結する連結部53と、固定部51と延設部52の一部52Pとの連結剛性を低減する連結剛性低減手段としてのスリット54とを含む。
【0042】
図3に示すように、延設部52は、コラム軸方向Xに長い略矩形板に形成されている。延設部52は、コラム軸方向Xに延びる軸方向長孔55を有する。延設部52の軸方向長孔55に、締付軸21が挿通されている。
延設部52の軸方向長孔55は、第1区画部61と、第2区画部62と、第3区画部63と、第4区画部64とにより区画されている。第1区画部61は、軸方向長孔55を軸方向上方XUから区画する。第2区画部62は、軸方向長孔55を軸方向下方XLから区画する。第3区画部63および第4区画部64は、コラム軸方向Xに平行に延びており、上下方向Vの上下から軸方向長孔55を区画する。連結部53を介して固定部51と連結される、延設部52の一部52Pは、第3区画部63のコラム軸方向Xの一部に配置されている。
【0043】
連結部53は、軸方向下方XLから固定部51に連結される第1連結部531と、第1連結部531と延設部52との間に介在し延設部52の一部52Pに上下方向Vの上方から連結される第2連結部532とを含む。
スリット54は、図4(b)に示すように、コラム軸方向Xから見て、固定部51に対して延設部52の一部52Pが左右方向Zに撓み易くなるように、固定部51と延設部52の一部52Pとの連結剛性を低減する。具体的には、スリット54は、延設部52の一部52Pの上下方向Vの上方に隣接して配置され、コラム軸方向X(図3参照)に延びている。
【0044】
図3に示すように、スリット54は、連結部53の第1連結部531と延設部52との間に介在し、第1連結部531と延設部52とを分離する。また、スリット54の一端が、軸方向上方XUに開放している。スリット54の他端が、連結部53の第2連結部532側に延びており、スリット54の形成によって、連結部53の第2連結部532と延設部52が連結されるコラム軸方向Xに関する連結幅が小さくされる。
【0045】
図5を参照して、テレスコ調整の際には、第2摺動部材50がアッパジャケット7とともにコラム軸方向Xに移動する。テレスコ調整の際に、締付軸21は、軸方向長孔55内でコラム軸方向Xに沿って第2摺動部材50に対して相対移動する。
アッパジャケット7がテレスコ調整範囲内の任意の位置に位置する状態で、締付軸21と軸方向長孔55の第1区画部61および第2区画部62との間には間隔が設けられている。詳しくは、テレスコ調整時にアッパジャケット7が調整下限位置にある状態であっても、締付軸21と軸方向長孔55の第1区画部61とは接触していない。テレスコ調整時にアッパジャケット7が調整上限位置にある状態であっても、締付軸21と軸方向長孔55の第2区画部62とは接触していない。
【0046】
第2摺動部材50では、延設部52において一対の締付部材32,33に対向する部分(軸方向長孔55の周辺の部分)が側板22と被締付部19との間で特に強固に挟持される。そのため、第2相対摺動時には、延設部52において軸方向長孔55の上下方向Vの上下の第3区画部63および第4区画部64と、側板22および被締付部19とが主に摩擦摺動する。延設部52の第3区画部63および第4区画部64によって、側板22および被締付部19と主に摩擦摺動する摺動部56が構成されている。
【0047】
次に、車両衝突の二次衝突が発生したときのステアリング装置1の動作について説明する。二次衝突とは、車両衝突時に車両の運転者が操舵部材2に衝突することである。以下では、特に説明がある場合を除いて、アッパジャケット7が調整上限位置にある状態で二次衝突が発生した場合を想定している。
締付機構18による締付状態で二次衝突が発生すると、操舵部材2を介してアッパジャケット7に衝撃が伝達される。ロアジャケット8は、車体13に固定された支持部材17の一対の側板22によって支持されている。そのため、二次衝突時には、アッパジャケット7が支持部材17およびロアジャケット8に対して軸方向下方XLに移動する。これにより、ロアジャケット8に対してアッパジャケット7を摩擦摺動させながらコラムジャケット6が収縮する。締付機構18による締め付けが達成された状態でロアジャケット8に対してアッパジャケット7が摩擦摺動する際の抵抗力をコラム抵抗力Fとする。
【0048】
図6は、二次衝突が発生したときの第1摺動部材40および第2摺動部材50の周辺の様子を示す模式図である。図6(b)は、図6(a)に示す状態よりも後の状態を示している。図7は、二次衝突が発生したときのアッパジャケット7の軸方向変位と、衝撃荷重との関係を示したグラフ図である。
図7では、横軸がアッパジャケット7の軸方向変位を示しており、縦軸が衝撃荷重を示している。横軸では、コラムジャケット6が最も伸びた状態(アッパジャケット7が調整上限位置に位置する状態)のアッパジャケット7のコラム軸方向Xにおける位置を原点としている。
【0049】
第1実施形態では、図8に示すように、第1相対摺動によって発生する第1抵抗力G1が、第2相対摺動によって発生する第2抵抗力G2よりも大きくされている(G1<G2)ので、まず、第2相対摺動が開始される。摺動部56は、支持部材17およびロアジャケット8に対して第2摺動部材50が移動することによって変化する。具体的には、摺動部56は、二次衝突の開始後、時間の経過とともに第1摺動部材40側(軸方向上方XU)に移動する。
【0050】
二次衝突の初期段階(図7における第2相対摺動区間に相当)における衝撃吸収荷重は、第2相対摺動によって発生する第2抵抗力G2と、ロアジャケット8に対してアッパジャケット7が摩擦摺動する際のコラム抵抗力Fとの和(F+G2)に相当する(図7参照)。第2相対摺動区間の途中で、案内溝27の軸方向下端と被案内突起28とが当接し、被案内突起28が破断する。被案内突起28が破断された後も第2相対摺動は継続される。そのため、二次衝突の発生直後には、テレスコ調整後のアッパジャケット7の位置に関係なく、第2相対摺動が開始される。
【0051】
そして、図6(a)に示すように、第1摺動部材40とロアジャケット8の軸方向上端8aとが当接する。これにより、ロアジャケット8および支持部材17に対する第1摺動部材40および第2摺動部材50の軸方向下方XLへの移動が規制される。これにより、支持部材17およびロアジャケット8に対する第2摺動部材50の移動が終了し、第2相対摺動が停止する。このとき、ロアジャケット8の軸方向上端8aは、第2相対摺動を停止させる第2ストッパとして機能する。一方、アッパジャケット7は、ロアジャケット8に対して軸方向下方XLへ移動し続ける。そのため、アッパジャケット7と第1摺動部材40との相対移動(第1相対摺動)が開始される。
【0052】
第1相対摺動が開始された後の段階(すなわち第1相対摺動区間に相当)の衝撃吸収荷重は、第1相対摺動によって発生する第1抵抗力G1と、ロアジャケット8に対してアッパジャケット7が摩擦摺動する際のコラム抵抗力Fとの和(F+G1)に相当する(図7参照)。第1相対摺動は、対向部材101が軸方向上方XUから第1摺動部材40に当接することによって停止する(図6(b)参照)。
【0053】
第1実施形態によれば、第2摺動部材50は、第1摺動部材40(保持部材)に一体移動可能に取り付けられている。このため、二次衝突時に、ロアジャケット8に対しアッパジャケット7が移動するときに、アッパジャケット7と第1摺動部材40との相対摺動(第1相対摺動)が発生するか、第2摺動部材50とロアジャケット8および支持部材17との相対摺動(第2相対摺動)の何れか一方が発生する。
【0054】
第2実施形態では、第1相対摺動により発生する第1抵抗力G1が、第2相対摺動により発生する第2抵抗力G2よりも大きい。このため、図7に示すように、二次衝突時に、ロアジャケット8に対するアッパジャケット7の軸方向位置によって、ロアジャケット8に対するアッパジャケット7の摩擦摺動の際のコラム抵抗力Fに第2抵抗力G2が付加された衝撃吸収荷重(F+G2)を発生する第2相対摺動区間と、第2相対摺動区間の後で、コラム抵抗力Fに第1抵抗力G1が付加された衝撃吸収荷重を発生する第1相対摺動区間とを得ることができる。第1抵抗力G1および第2抵抗力G2の大きさの設定により、適切に衝撃吸収荷重の特性を設定することができる。
【0055】
また、第1実施形態では、下記のようにして、テレスコ調整位置の相違によって第2相対摺動のときの衝撃吸収荷重がばらつくことを抑制することができる。
すなわち、テレスコ調整後に、図3に示すように、締付軸21が軸方向長孔55において延設部52の一部52Pの近傍の位置に配置されているときは、締付機構18によって、延設部52において一部52Pとその周辺部分を含む第1領域A1が主に締め付けられる。
【0056】
一方、締付軸21が軸方向長孔55において一部52Pの近傍の位置から最も離れた位置(すなわち第2区画部62に近接する位置)に配置されているときは、締付機構18によって、延設部52において第2区画部62とその周辺部分を含む第2領域A2が主に締め付けられる。
仮に、スリット54が形成されていない場合を想定すると、締付機構18によって第1領域A1が主に締め付けられるときの第1領域A1の左右方向Zの撓み量が、締付機構18によって第2領域A2が主に締め付けられるときの第2領域A2の左右方向Zの撓み量よりも相当量大きくなる。
【0057】
これに対して、第1実施形態では、連結剛性低減手段としてのスリット54の働きで、コラム軸方向Xから見たときに固定部51に対して延設部52の一部52P(一部52Pを含む第1領域A1)が左右方向Zに撓み易くなっている。
したがって、テレスコ調整後に延設部52に対する締付位置が変化しても、延設部52の締付位置における左右方向Zの撓み剛性が変化し難い。このため、二次衝突時に第2摺動部材50の第2抵抗力G2が、相対摺動の摺動位置の変化に拘らず、変化し難くなる。このため、テレスコ調整位置による衝撃吸収荷重のばらつきを抑制することができる。
【0058】
また、テレスコ調整後に延設部52に対する締付位置が変化しても、延設部52の締付位置における左右方向Zの撓み剛性が変化し難いため、締付位置の変化に対して、締付機構18の操作レバー20の操作荷重のばらつきを少なくすることができる。
また、連結剛性低減手段として、コラム軸方向Xに延びるスリット54を用いる簡単な構造で固定部51と延設部52の一部52Pとの連結剛性を低減することができる。
【0059】
また、各第2摺動部材50は、締付機構18によって締め付けられる支持部材17の対応する側板22とロアジャケット8の対応する被締付部19との間に挟持されている。そのため、第2摺動部材50と一体移動する第1摺動部材40が、第1相対摺動時に、第1相対摺動の方向と直交する方向にがたつくことを抑制される。したがって、二次衝突時の衝撃荷重を安定させることができる。
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態に係るステアリング装置に備えられる第1摺動部材40および第2摺動部材50Qの側面図である。
【0060】
図8の第2実施形態の第2摺動部材50Qが、図3の第1実施形態の第2摺動部材50と主に異なるのは下記である。すなわち、第2摺動部材50Qでは、連結剛性低減手段としてのスリット54が、延設部52から上下方向Vの上方向に離隔するように配置されている。スリット54は、連結部53の第2連結部532に設けられている。
第2実施形態では、上下方向Vに関して、スリット54と締付軸21との距離が大きくなるので、テレスコ調整後に延設部52の一部52Pを含む第1領域A1が締め付けられるときに、スリット54付近を支点とする曲げモーメントの腕の長さ(前記距離に相当)が長くなる。これにより、第1領域A1の左右方向の撓み量を大きくすることができる。このため、テレスコ調整後の締付位置の変化に対して、延設部52の左右方向Zの撓み剛性の変化をより小さくすることができる。このため、二次衝突時に第2摺動部材50の第2抵抗力G2が、相対摺動の摺動位置の変化に拘らず、変化し難くなる。このため、テレスコ調整位置による衝撃吸収荷重のばらつきを一層、抑制することができる。
【0061】
なお、図示していないが、図3の第1実施形態や図8の第2実施形態のスリット54に代えて、第2摺動部材50(50Q)を左右方向Zに貫通しないでコラム軸方向Xに延びる凹溝を用いてもよい。
(第3〜第5実施形態)
図9(a)は、本発明の第3実施形態に係るステアリング装置に備えられる第1摺動部材40および第2摺動部材50Rの概略側面図であり、図9(b)は第1摺動部材40および第2摺動部材50Rの概略平面図であり、図9(c)は第1摺動部材40および第2摺動部材50Rの要部と締付機構18の要部との概略平面図である。
【0062】
図9(a)および(b)の第3実施形態の第2摺動部材50Rが、図3の第1実施形態の第2摺動部材50と主に異なるのは、下記である。すなわち、第2摺動部材50Rでは、固定部51と延設部52の一部52Pと連結する連結部53Rが、軸方向下方XLから固定部51に連結される第1連結部531と、第1連結部531と延設部52との間に介在し延設部52の一部52Pに上下方向Vの上方から連結される第2連結部532とを含む。
【0063】
第2摺動部材50Rは、連結剛性低減手段として、固定部51と延設部52の一部52Pとを連結し、図9(b)に示すように上下方向から見て左右方向Zに起伏する弾性変形可能な屈曲部57を含む。具体的には、第1連結部531が、左右方向Zの外側へ突出するコ字形状をなし弾性変形可能な屈曲部57を含む。
屈曲部57は、板状の第1部分71と、板状の第2部分72と、板状の第3部分73とを含む。上下方向から見た図である図9(b)に示すように、第1部分71は、上下方向から見て、固定部51から左右方向Zの外側へ延びる。第2部分72は、上下方向から見て、第2連結部532から左右方向Zの外側へ延びる。第3部分73は、第1部分71および第2部分72の左右方向Zの外側の端部どうしを連結する。第1部分71と第2部分72とは、左右方向Zと平行に配置され、第3部分573は、第1部分71および第2部分72と直交している。
【0064】
また、第2摺動部材50Rは、屈曲部57の第1部分71からコラム軸方向Xの下方に延びる板状の規制部74を含む。図9(d)は、屈曲部57の周辺の構造の拡大断面図である。図9(d)に示すように、規制部74は、第1部分71に設けられた開口76の一縁部76a(固定部51側の縁部)に連結された第1端部741と、第2部分72に対して隙間S1を介して近接する第2端部742とを含む。規制部74は、第1部分71によって片持ち状に支持される。規制部74は、切り起こし板であってもよい。規制部74は、第3部分73と平行に配置され、規制部74と第3部分73との間には、左右方向Zに関して隙間S2が設けられている。
【0065】
図9(c)に示すように、延設部52の一部52Pを含む第1領域A1が、締付機構18によって締め付けられるときに、屈曲部57(連結剛性低減手段)において、第1部分71と第3部分73との交差角度や、第3部分73と第2部分72との交差角度が所要に変更される。このため、第2連結部532および第2連結部532に連なる延設部52の一部52Pが、左右方向Zに一層、撓み易くなる。
【0066】
規制部74と屈曲部57の第2部分72との間に隙間S1が設けられ、規制部74と屈曲部57の第3部分73との間に隙間S2が設けられているため、屈曲部57の左右方向Zの締付け側への弾性変形を、規制部74が妨げることがない。
また、図示していないが、二次衝突時には、屈曲部57の第1部分71と第2部分72とが、隙間S1の分だけ近づくことにより、規制部74の第2端部742が、屈曲部57の第2部分72に当接する。これにより、屈曲部57のコラム軸方向Xの変形が規制される。すなわち、規制部74は、二次衝突時に、屈曲部57のコラム軸方向Xの変形量を規制量(隙間S1に相当する量)に規制する。
【0067】
第3実施形態では、締付機構18の締付時に左右方向Zに弾性変形可能な屈曲部57を用いる簡単な構造で、延設部52の一部52Pと固定部51との連結剛性を低減することができる。これにより、第1実施形態と同じく、テレスコ調整位置による衝撃吸収荷重のばらつきを抑制することができる。
また、二次衝突時に、規制部74によって、屈曲部57のコラム軸方向Xの変形量が規制される。二次衝突時において、規制部74による規制前(図10における第2相対摺動区間の開始前の段階)には、ロアジャケット8に対してアッパジャケット7が摩擦摺動するコラム抵抗力Fと、屈曲部57のコラム軸方向Xの変形荷重Hとの和(F+H)が、衝撃吸収荷重として用いられる。
【0068】
二次衝突時において、規制部74による規制後(第2相対摺動区間の開始後)には、第2摺動部材50Rの延設部52が、支持部材17およびロアジャケット8と第2相対摺動することにより発生する第2抵抗力G2とコラム抵抗力Fとの和(F+G2)が衝撃吸収荷重として用いられる。前記規制量を所望の量に設定することで、ロアジャケット8に対するアッパジャケット7の軸方向変位に応じて、衝撃吸収特性を適切に設定することができる。
【0069】
次いで、第4実施形態について説明する。図11(a)および(b)は、第4実施形態において、屈曲部57の周辺の構造の概略図であり、図11(b)は、テレスコ調整時の状態を示し、図11(b)は、二次衝突時において屈曲部57のコラム軸方向Xの変形が規制量で規制された状態を示している。
第4実施形態が第3実施形態と主に異なるのは、二次衝突時に、第1部分71の基端部711と第2部分72の基端部72aどうしが互いに当接して、屈曲部57のコラム軸方向Xの変形量が規制量(第1部分71と第2部分72とのコラム軸方向Xの隙間S3の量に相当)に規制される点である。
【0070】
すなわち、第4実施形態では、第1部分71の基端部711と第2部分72の基端部72aによって、二次衝突時に、屈曲部57のコラム軸方向Xの変形量を規制量に規制する規制部が構成されている。第4実施形態では、構造を簡素化することができる。
図9(a)の第3実施形態のように、連結剛性低減手段としてのスリット54と連結剛性低減手段としての屈曲部57とが併用されてもよいし、図12に示される第5実施形態のように、連結剛性低減手段として、屈曲部57のみが用いられてもよい。
(第6〜第8実施形態)
図13(a)、(b)、(c)は、それぞれ、本発明の第6、第7、第8実施形態に係るステアリング装置に備えられる第1摺動部材および第2摺動部材の要部と締付機構の要部との概略平面図であり、屈曲部の変更例を示している。
【0071】
図13(a)の第6実施形態の第2摺動部材50Vでは、連結部53Vの第1連結部531が、上下方向から見たときに左右方向Zの外側へ突出するV字形状の弾性変形可能な屈曲部57Vを含む。屈曲部57Vは、上下方向から見たときに左右方向Zに対して互いに逆向きに傾斜し所定の交差角度で交差する一対の板状の部分81,82を含むことで、左右方向Zに起伏している。
【0072】
図13(b)の第7実施形態の第2摺動部材50Wでは、連結部53Wの第1連結部531が、上下方向から見たときに左右方向Zの外側へ突出するW字形状の弾性変形可能な屈曲部57Wを含む。屈曲部57Wは、上下方向から見たときに左右方向Zに対して逆向きに傾斜し所定の交差角度で交差する2対の板状の部分83,84を含むことで、左右方向Zに起伏している。
【0073】
図13(c)の第8実施形態の第2摺動部材50Uでは、連結部53Uの第1連結部531が、上下方向から見たときに左右方向Zの外側へ突出するU字形状の弾性変形可能な湾曲部57Uを含む。湾曲部57Uは左右方向Zに平行に延び、コラム軸方向Xに離隔する一対の部分91,92と、一対の部分91,92どうしを接続する湾曲状部93とを含む。
【0074】
第6、第7実施形態では、締付機構18の締付時に左右方向Zに弾性変形可能な屈曲部57V,57Wを用いる簡単な構造で、第8実施形態では、締付機構18の締付時に左右方向Zに弾性変形可能な湾曲部57Uを用いる簡単な構造で、延設部52の一部52Pと固定部51との連結剛性を低減することができる。これにより、第1実施形態と同じく、テレスコ調整位置による衝撃吸収荷重のばらつきを抑制することができる。
【0075】
また、図示していないが、二次衝突時に、第6実施形態の屈曲部57Vでは、一対の部分81,82の少なくとも基端部81a,82aを含む部分(当該部分により規制部が構成される)どうしが当接することで、屈曲部57Vのコラム軸方向Xの変形量が規制量に規制される。
また、図示していないが、二次衝突時に、第7実施形態の屈曲部57Wでは、2対の部分83,84の少なくとも基端部83a,84aを含む部分(当該部分により規制部を構成される)どうしが当接することで、屈曲部57Wのコラム軸方向Xの変形量が規制量に規制される。
【0076】
また、図示していないが、二次衝突時に、第8実施形態の湾曲部57Uでは、一対の部分91,92の少なくとも基端部91a,92aを含む部分(当該部分により規制部を構成が構成される)どうしが当接することで、湾曲部57Uのコラム軸方向Xの変形量が規制される。
第6〜第8の各実施形態において、二次衝突時において、前記規制部による規制前には、屈曲部57V,57Wおよび湾曲部57Uの変形荷重が衝撃吸収荷重として用いられる。また、二次衝突時において前記規制部による規制後には、第2摺動部材50V,50W,50Uの延設部52が、支持部材17およびロアジャケット8と相対摺動することにより発生する摺動荷重が衝撃吸収荷重として用いられる。
【0077】
図示していないが、第6〜第8の各実施形態において、図9(d)の第3実施形態と同じ構成の規制部74を一対の部分81,82;83,84;91,92の何れか一方に設けてもよい。
本発明は各前記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の第9実施形態として、下記の例を挙げることができる。第9実施形態では、図14に示すように、第2抵抗力G2が第1抵抗力G1よりも大きくされている(G1<G2)。二次衝突時に第1相対摺動が開始された後、ストッパとしての対向部材101が第1摺動部材40と当接すると、アッパジャケット7に対する第1摺動部材40および第2摺動部材50の軸方向下方XLへの移動が規制される。これにより、第1相対摺動が停止され、この停止に伴って第2相対摺動が開始される。第9実施形態における、第2抵抗力G2を第1抵抗力G1よりも大きくする構成(G1<G2)は、第1〜第8実施形態のそれぞれと組み合わせて実施が可能である。
【0078】
また、図9の第3実施形態及び図11(a)の第4実施形態の屈曲部57、図11(a)の第4実施形態のコ字形状の屈曲部57、図13(a)の第6実施形態のV字形状の屈曲部57V、図13(b)の第7実施形態のW字形状の屈曲部57W、および図13(c)のU字形状の第8実施形態の湾曲部57Uは、対応する第2摺動部材50R;50V;50W;50Uにおいて、当該屈曲部57;57V;57Wおよび当該湾曲部57Uを除く残りの部分とは別の材料(例えば、前記残りの部分よりも弾性変形し易い材料)で形成されていてもよい。
【0079】
また、図11(a)の第4実施形態のコ字形状の屈曲部57、図13(a)の第6実施形態のV字形状の屈曲部57V、図13(b)の第7実施形態のW字形状の屈曲部57W、および図13(c)のU字形状の第8実施形態の湾曲部57Uの少なくとも2つをコラム軸方向Xに並べて用いてもよい。
また、図示していないが、第2摺動部材50が、各締付部材32,33と支持部材17の対応する側板22との間に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…ステアリング装置、2…操舵部材、7…アッパジャケット、8…ロアジャケット、17…支持部材、18…締付機構、40…第1摺動部材(保持部材。第1抵抗力発生手段)、50;50Q;50R;50V;50W;50U…第2摺動部材(第2抵抗力発生手段)、51…固定部、52…延設部、52P…一部、54…スリット(連結剛性低減手段)、57;57V;57W…屈曲部(連結剛性低減手段)、57U…屈曲部(連結剛性低減手段)、74…規制部、V…上下方向、X…コラム軸方向、Z…左右方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14