特許第6796284号(P6796284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796284
(24)【登録日】2020年11月18日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20201130BHJP
   F21V 9/00 20180101ALI20201130BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20201130BHJP
   G03H 1/22 20060101ALI20201130BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20201130BHJP
   F21Y 113/13 20160101ALN20201130BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20201130BHJP
【FI】
   F21S2/00 330
   F21V9/00 200
   F21V5/00 320
   F21V5/00 510
   G03H1/22
   G02B5/32
   F21Y113:13
   F21Y115:30
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-501764(P2018-501764)
(86)(22)【出願日】2017年2月23日
(86)【国際出願番号】JP2017006848
(87)【国際公開番号】WO2017146154
(87)【国際公開日】20170831
【審査請求日】2019年10月15日
(31)【優先権主張番号】特願2016-33207(P2016-33207)
(32)【優先日】2016年2月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】倉重 牧夫
(72)【発明者】
【氏名】西尾 俊平
【審査官】 野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/073798(WO,A1)
【文献】 特開2005−331906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
G03B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延在するとともに、前記第1方向に交差する第2方向に延在する被照明領域を照明する照明装置であって、
コヒーレント光を放射する光源と、
前記光源にて放射された前記コヒーレント光を回折させて、前記被照明領域の全域をそれぞれ照明する複数のホログラム素子と、を備え、
前記複数のホログラム素子のうち少なくとも一つは、前記被照明領域の第2方向における両端部の照度が中央部の照度よりも高くなるように、入射されたコヒーレント光を回折させ
前記複数のホログラム素子の少なくとも一つは、複数の要素ホログラム素子を有し、
前記要素ホログラム素子は、入射されたコヒーレント光を回折させて、前記被照明領域の全域を照明し、
前記複数の要素ホログラム素子のうち少なくとも一つは、前記被照明領域において、第2方向における両端部の照度が第2方向における中央部の照度よりも高くなるように、入射された前記コヒーレント光を回折させる照明装置。
【請求項2】
第1方向に延在するとともに、前記第1方向に交差する第2方向に延在する被照明領域を照明する照明装置であって、
それぞれ異なる波長域のコヒーレント光を放射する複数の光源と、
前記複数の光源のうち、対応する光源にて放射された前記コヒーレント光を回折させて、前記被照明領域の全域をそれぞれ異なる照明色で照明する複数のホログラム素子と、を備え、
前記複数のホログラム素子は、前記被照明領域の第2方向における両端部の放射照度が中央部の放射照度とは相違するように、入射されたコヒーレント光を回折させ
前記複数のホログラム素子のうち少なくとも一つは、複数の要素ホログラム素子を有し、
前記要素ホログラム素子は、入射されたコヒーレント光を回折させて、前記被照明領域の全域を照明し、
前記複数のホログラム素子のうち、少なくとも一つのホログラム素子は、前記被照明領域において、第2方向における両端部の照度が中央部の照度よりも高くなるように、入射された前記コヒーレント光を回折させる照明装置。
【請求項3】
前記複数の要素ホログラム素子のうち少なくとも一つは、前記被照明領域の第2方向における両端部の照度が中央部の照度よりも高くなるように、入射された前記コヒーレント光を回折させる請求項に記載の照明装置。
【請求項4】
第1方向に延在するとともに、前記第1方向に交差する第2方向に延在する被照明領域を照明する照明装置であって、
コヒーレント光を放射する光源と、
前記光源にて放射された前記コヒーレント光を回折させて、前記被照明領域の全域をそれぞれ照明する複数のホログラム素子と、を備え、
前記複数のホログラム素子の少なくとも一つは、複数の要素ホログラム素子を有し、
前記要素ホログラム素子は、入射されたコヒーレント光を回折させて、前記被照明領域の全域を照明し、
前記複数のホログラム素子のうち少なくとも一つは、前記被照明領域において、第2方向における両端部の色度と中央部の色度とが互いに相違するように、入射されたコヒーレント光を回折させる照明装置。
【請求項5】
前記複数のホログラム素子は、前記被照明領域の第2方向における両端部を通過して第1方向に延びる前記被照明領域の両エッジ位置が揃うように、入射された前記コヒーレント光を回折させる請求項1乃至のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記複数のホログラム素子は、前記被照明領域の第1方向における両端部を通過して第2方向に延びる両エッジ位置が揃うように、入射された前記コヒーレント光を回折させる請求項1乃至のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記被照明領域は、前記複数のホログラム素子による回折光が進行する角度空間内の所定の二次元平面上に配置され、
前記複数のホログラム素子は、前記二次元平面上の前記第2方向に沿って配置される請求項1乃至のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記被照明領域は、前記複数のホログラム素子からの回折光が進行する角度空間内の所定の二次元平面上に配置され、
前記複数のホログラム素子は、前記二次元平面上の法線方向に沿って配置される請求項1乃至のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項9】
前記光源が放射したコヒーレント光を整形および平行化して前記複数のホログラム素子に入射させる整形光学系を備える請求項1乃至のいずれか1項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、第1方向および第2方向に延在された被照明領域を照明する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源とホログラム素子を組み合わせて、路面を所望のパターンで照明する照明装置が提案されている(特開2015−132707号公報参照)。この公報に開示された照明装置では、単一光源で生成されたレーザ光を単一のホログラム素子で回折している。
【発明の開示】
【0003】
路面を所望の色で照明するには、複数のホログラム素子を設けて、各ホログラム素子からの回折光を路面上で重ね合わせる必要がある。
【0004】
しかしながら、路面上の被照明領域の位置を全てのホログラム素子で一致させるのは困難であり、被照明領域の少なくともエッジ付近では、色が分離してしまう。このため、被照明領域のエッジがぼやけたり、本来の色とは異なる色で視認されてしまう。このように、複数のホログラム素子を設けて被照明領域の全域を均一な明るさで、かつ所望の色で照明するのは技術的に難しかった。
【0005】
本開示は、被照明領域の全域を均一な明るさで、かつ所望の色で照明可能な照明装置を提供するものである。
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様は、第1方向に延在するとともに、前記第1方向に交差する第2方向に延在する被照明領域を照明する照明装置であって、
コヒーレント光を放射する光源と、
前記光源にて放射された前記コヒーレント光を回折させて、前記被照明領域の全域をそれぞれ照明する複数のホログラム素子と、を備え、
前記複数のホログラム素子のうち少なくとも一つは、前記被照明領域の第2方向における両端部の照度が中央部の照度よりも高くなるように、入射されたコヒーレント光を回折させる。
【0007】
前記複数のホログラム素子の少なくとも一つは、複数の要素ホログラム素子を有してもよく、
前記要素ホログラム素子は、入射されたコヒーレント光を回折させて、前記被照明領域の全域を照明してもよい。
【0008】
前記複数の要素ホログラム素子のうち少なくとも一つは、前記被照明領域の第2方向における両端部の照度が第2方向における中央部の照度よりも高くなるように、入射された前記コヒーレント光を回折させてもよい。
【0009】
本開示の一態様は、第1方向に延在するとともに、前記第1方向に交差する第2方向に延在する被照明領域を照明する照明装置であって、
それぞれ異なる波長域のコヒーレント光を放射する複数の光源と、
前記複数の光源のうち、対応する光源にて放射された前記コヒーレント光を回折させて、前記被照明領域の全域をそれぞれ異なる照明色で照明する複数のホログラム素子と、を備え、
前記複数のホログラム素子は、前記被照明領域の第2方向における両端部の放射照度が中央部の放射照度とは相違するように、入射されたコヒーレント光を回折させる。
【0010】
前記複数のホログラム素子のうち、少なくとも一つのホログラム素子は、前記被照明領域の第2方向における両端部の照度が中央部の照度よりも高くなるように、入射された前記コヒーレント光を回折させてもよい。
【0011】
前記複数のホログラム素子のうち少なくとも一つは、複数の要素ホログラム素子を有してもよく、
前記要素ホログラム素子は、入射されたコヒーレント光を回折させて、前記被照明領域の全域を照明してもよい。
【0012】
前記複数の要素ホログラム素子のうち少なくとも一つは、前記被照明領域の第2方向における両端部の照度が中央部の照度よりも高くなるように、入射された前記コヒーレント光を回折させてもよい。
【0013】
前記複数のホログラム素子は、前記被照明領域の第2方向における両端部を通過して第1方向に延びる前記被照明領域の両エッジ位置が揃うように、入射された前記コヒーレント光を回折させてもよい。
【0014】
また、本開示の一態様は、第1方向に延在するとともに、前記第1方向に交差する第2方向に延在する被照明領域を照明する照明装置であって、
コヒーレント光を放射する光源と、
前記光源にて放射された前記コヒーレント光を回折させて、前記被照明領域の全域をそれぞれ照明する複数のホログラム素子と、を備え、
前記複数のホログラム素子のうち少なくとも一つは、前記被照明領域の第2方向における両端部の色度と中央部の色度とが互いに相違するように、入射されたコヒーレント光を回折させる照明装置である。
【0015】
前記複数のホログラム素子は、前記被照明領域の第1方向における両端部を通過して第2方向に延びる両エッジ位置が揃うように、入射された前記コヒーレント光を回折させてもよい。
【0016】
前記被照明領域は、前記複数のホログラム素子による回折光が進行する角度空間内の所定の二次元平面上に配置され、
前記複数のホログラム素子は、前記二次元平面上の前記第2方向に沿って配置されてもよい。
【0017】
前記被照明領域は、前記複数のホログラム素子からの回折光が進行する角度空間内の所定の二次元平面上に配置され、
前記複数のホログラム素子は、前記二次元平面上の法線方向に沿って配置されてもよい。
【0018】
前記光源が放射したコヒーレント光を整形および平行化して前記複数のホログラム素子に入射させる整形光学系を備えてもよい。
【0019】
本開示によれば、被照明領域の全域を均一な明るさで、かつ所望の色で照明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の第1の実施形態に係る照明装置1の概略構成を示す斜視図。
図2図1を上方から見た模式的な平面図。
図3】第1ホログラム素子と第2ホログラム素子の回折特性の調整手法を説明する図。
図4】第2の実施形態によるホログラム素子の回折特性を示すグラフ。
図5】第2の実施形態による照明装置の要部を模式的に示す図。
図6】第3の実施形態によるホログラム素子の回折特性を示すグラフ。
図7】複数のホログラム素子を被照明領域のndに沿って配置した照明装置の概略構成を示す斜視図。
図8】第4の実施形態における照明範囲のずれを説明する図。
図9】縦置きされた複数のホログラム素子の回折特性の調整手法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0022】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や、長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は本開示の第1の実施形態に係る照明装置1の概略構成を示す斜視図である。図1の照明装置1は、光源2と、複数のホログラム素子3とを備えている。光源2は、コヒーレント光を放射する。図1の例では、複数のホログラム素子3と同じ数の複数の光源2を設けているが、光源2の数は任意である。以下では、各ホログラム素子3ごとに一つの光源2を設ける例を説明する。光源2は、典型的には、レーザ光を放射するレーザ光源2である。レーザ光源2には、半導体レーザなどの種々のタイプがあるが、いずれのタイプのレーザ光源2でもよい。
【0024】
複数の光源2から放射されるコヒーレント光の波長域は、同じでも異なっていてもよいが、以下では、複数の光源2がそれぞれ異なる波長域のコヒーレント光を放射する例を説明する。それぞれ異なる波長域のコヒーレント光とは、例えば、赤、緑、青の計3つのコヒーレント光である。もちろん、光源2は、赤緑青以外の色のコヒーレント光を放射してもよい。また、同じ波長域の光源2を複数設けて、被照明領域4の照明強度を向上させてもよい。
【0025】
図1の照明装置1は、複数の光源2と複数のホログラム素子3との間に配置される複数の整形光学系5を備えている。各整形光学系5は、対応する光源2から放射されたコヒーレント光を整形および平行化する。
【0026】
より具体的には、各整形光学系5は、光源2から放射されたコヒーレント光のビーム口径を広げる第1レンズ6と、第1レンズ6を通過したコヒーレント光を平行化する第2レンズ7とを有する。第2レンズ7で平行化されたコヒーレント光は、対応するホログラム素子3に入射される。なお、整形光学系5の光学構成は、図1に限定されるものではない。
【0027】
各ホログラム素子3には、対応する光源2にて放射されて、対応する整形光学系5で整形されたコヒーレント光が入射される。各ホログラム素子3は、入射されたコヒーレント光を回折させて、被照明領域4の全域を照明する。なお、本明細書において、「被照明領域4の全域」とは、各ホログラム素子3で回折された回折光の照明範囲が完全に一致する場合だけでなく、それぞれの照明範囲のずれが±20%以内であることを意味する。この数値範囲は、本発明者が作製した照明装置1のプロトタイプによる実験結果から導出されたものである。
【0028】
被照明領域4は、複数のホログラム素子3による回折光が進行する角度空間内の所定の二次元平面上に設けられる。本実施形態による被照明領域4は、第1方向に延在するとともに、この第1方向に交差する第2方向に延在する領域である。被照明領域4の形状およびサイズは任意であるが、典型的には、第1方向に対応する長手方向dlと、第2方向に対応する短手方向dwを有する。より具体的には、被照明領域4は、短手方向dwに所定の幅を有し、長手方向dlに延在するライン状の照明範囲である。短手方向dwの幅は有限であるが、長手方向dlの長さは、特に問わない。また、被照明領域4は必ずしも一つとは限らない。例えば、本実施形態による照明装置1を乗物に搭載する場合、乗物の前後方向を長手方向dlとするライン状の被照明領域4を、乗物の幅方向に沿って、例えば乗物の幅分の間隔を隔てて2つ配置してもよい。このように、乗物の幅分の間隔を隔てて2つの被照明領域4を配置する利点は、乗物の進行方向に何らかの障害物があった場合に、その障害物を避けて走行できるか否かを2つの被照明領域4によって容易に判断できることである。
【0029】
図1における複数のホログラム素子3は、被照明領域4の短手方向dwに沿って配置されており、各ホログラム素子3による回折光は、被照明領域4の長手方向dlに沿って進行し、被照明領域4を照明する。図1の例では、各ホログラム素子3に対応づけて、整形光学系5と光源2とを設けており、複数の整形光学系5と複数の光源2はいずれも、被照明領域4の短手方向dwに沿って配置されている。
【0030】
図2図1を上方から見た模式的な平面図である。図2では、簡略化のために、図1ではそれぞれ3つずつ設けられている光源2、整形光学系5およびホログラム素子3のうち、2つずつを図示している。
【0031】
複数のホログラム素子3が被照明領域4の短手方向dwに沿って配置されている場合、各ホログラム素子3の回折特性が同じであるとすると、図2に示すように、各ホログラム素子3の回折光による照明範囲にずれが生じてしまう。このずれは、被照明領域4の短手方向dwの両端部を通過して長手方向dlに延びる両エッジ部で生じる。このため、被照明領域4の両エッジ部がぼやけることが懸念される。
【0032】
そこで、望ましくは、複数のホログラム素子3の回折特性を個別に調節して、各ホログラム素子3の回折光による照明範囲が極力重なるようにする。すなわち、被照明領域4の短手方向dwの両端部を通過して長手方向dlに延びる両エッジ部の位置が各ホログラム素子3で同じになるように、各ホログラム素子3の回折特性を調整するのが望ましい。
【0033】
図3は被照明領域4の短手方向dwに沿って隣接する2つのホログラム素子3(以下、第1ホログラム素子3aと第2ホログラム素子3b)の回折特性の調整手法を説明する図である。図3の例では、被照明領域4の短手方向dwの幅をL、被照明領域4の短手方向dwの中央を通過して長手方向dlに延びる線上に第1ホログラム素子3aを配置し、第1ホログラム素子3から被照明領域4の短手方向dwに距離aだけ隔てて第2ホログラム素子3bを配置する例を示している。
【0034】
図3では、第1ホログラム素子3の回折光の角度範囲をθ1++θ1-、第2ホログラム素子3の回折光の角度範囲をθ2++θ2-としている。また、Rは第1ホログラム素子3および第2ホログラム素子3の位置から被照明領域4内の任意の位置までの最短距離である。
【0035】
図3の角度θ1+、θ1-はそれぞれ、以下の(1)式、(2)式で表される。
【0036】
tanθ1+=L/(2R) …(1)
tanθ1-=−L/(2R) …(2)
【0037】
また、図3の角度θ2+、θ2-はそれぞれ、以下の(3)式、(4)式で表される。
【0038】
tanθ2+=1/R×(L/2−a) …(3)
tanθ2-=1/R×(−L/2−a) …(4)
【0039】
このように、第1ホログラム素子3aから距離Rの位置において、被照明領域4の短手方向dwの幅分の照明を行うための条件は、第1ホログラム素子3aが、上記(1)式と(2)式を満たす回折角度θ1+、θ1-を有することである。同様に、第2ホログラム素子3bから距離Rの位置において、被照明領域4の短手方向dwの幅分の照明を行うための条件は、第2ホログラム素子3bが、上記(3)式と(4)式を満たす回折角度θ2+、θ2-を有することである。
【0040】
上記(1)式〜(4)式からわかるように、被照明領域4の短手方向dwの幅Lが一定であるとしても、距離Rが変化すると、角度θ1+、θ1-、θ2+、θ2-は変化する。すなわち、第1ホログラム素子3と第2ホログラム素子3の回折特性の調整は、距離Rごとに行う必要がある。
【0041】
このように、被照明領域4の長手方向dlにおける両エッジ部の位置を複数のホログラム素子3で一致させるには、上述した距離Rごとに(1)〜(4)式に基づいてホログラム素子3の回折特性を調整する必要がある。
【0042】
そこで、本実施形態では、複数のホログラム素子3として、計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)を用いることを想定している。CGHは、物体光を発光する光源2や、干渉縞を形成するための光学系や、干渉縞を形成するためのブランクのホログラム記録材料などが不要であり、干渉縞の記録工程をコンピュータ上で行えるため、任意の回折特性を持つ干渉縞を容易に生成できる。
【0043】
上記(1)〜(4)式によれば、複数のホログラム素子3の回折光による被照明領域4の長手方向dlにおける両エッジ部の位置を揃えることができるが、両エッジ部の位置を揃えたとしても、被照明領域4内の照明強度によっては、被照明領域4の視認性が悪くなったり、被照明領域4の両エッジ部がぼやけて視認されるおそれもある。
【0044】
各ホログラム素子3は、被照明領域4の全域を照明するように設計されているが、被照明領域4の全域について照度が均一になるとは限らず、短手方向dwの中央部の方が両端部よりも照度が高くなりやすい。これは、各ホログラム素子3の配置場所にも依存するが、被照明領域4の短手方向dwの両端部は、中央部よりも、各ホログラム素子3からの距離が平均的に長くなるためである。照度が低くなると、人間の目にはぼやけて視認されるため、折角、上述した(1)〜(4)式に基づいて各ホログラム素子3の回折光による被照明領域4のエッジ部を揃えても、エッジ部がぼやけて視認されてしまう。また、一般には、照明範囲のエッジ部の照度を照明範囲の中央部の照度よりも高くした方が、人間の目には照明範囲が鮮明に感じられる。
【0045】
そこで、本実施形態では、複数のホログラム素子3のうち少なくとも一つは、被照明領域4の短手方向dwの中央部の照度よりも両端部の照度が高くなるように回折特性が調整されている。
【0046】
図4は少なくとも一つのホログラム素子3の回折特性を示すグラフである。横軸は、被照明領域4の短手方向dwの位置座標、縦方向は照度である。照度とは、人間の目に感じられる被照明領域4の明るさを表す物理量であり、その単位はルクス[lx]である。
【0047】
図示のように、本実施形態では、被照明領域4の短手方向dwの両端部の照度を、中央部の照度よりも高くしている。これにより、被照明領域4の短手方向dwの両端部を通過して長手方向dlに延びる両エッジ部がより際立って視認され、被照明領域4の視認性がよくなる。
【0048】
後述する第3の実施形態で詳細に説明するように、複数のホログラム素子3が例えば赤、緑、青の照明を行う場合、すべてのホログラム素子3について、図4のような回折特性を持たせる必要はない。一部の色の照明を行うホログラム素子3のみについて、図4のような回折特性を持たせてもよい。
【0049】
これにより、被照明領域4の中央部とエッジ部で、若干色合いを変えることができ、視認性のよい照明を行うことができる。具体的な一例としては、被照明領域4の全体を基本的には白色で照明する場合であっても、中央部は若干青みがかった照明とし、エッジ部は若干黄色みがかった照明を行うことができ、よりエッジ部を強調させることが可能となる。
【0050】
このように、本実施形態では、被照明領域4の短手方向dwにおける両端部の照度が中央部の照度よりも高くなるように、少なくとも一つのホログラム素子3の回折特性を調整するため、被照明領域4の長手方向dlに延びる両エッジ部がくっきりと視認され、被照明領域4全体の視認性を向上させることができる。
【0051】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、各ホログラム素子3が複数の要素ホログラム素子3aを有するものである。第2の実施形態による照明装置1の全体構成は、図1と同様であるが、各ホログラム素子3の構造が異なっている。
【0052】
図5は第2の実施形態による照明装置1の要部を模式的に示す図である。第2の実施形態による各ホログラム素子3は、縦横に分割された複数の要素ホログラム素子3aを有する。各要素ホログラム素子3aは、被照明領域4の全域を照明することが可能な回折特性を有する。各要素ホログラム素子3aのサイズは必ずしも同一である必要はない。3つのホログラム素子3のうち、一部のホログラム素子3のみが複数の要素ホログラムを有し、残りのホログラム素子3は単一構造であってもよいが、以下では、説明の簡略化のために、各ホログラム素子3が複数の要素ホログラム素子3aを有する例を説明する。
【0053】
各ホログラム素子3が複数の要素ホログラム素子3aを有し、各要素ホログラム素子3aが被照明領域4の全域を照明するようにすることにより、被照明領域4でのレーザ強度を弱めてレーザ光(コヒーレント光)の安全性向上を図ることができる。各要素ホログラム素子3aは、入射面に入射されたコヒーレント光を被照明領域4の全域に拡散させるため、被照明領域4内の各点での光強度は、光源2から放射されるコヒーレント光の光強度よりもかなり小さい。よって、被照明領域4内の任意の点から光源2の方向に視線を向けたとしても、人間の目を痛める可能性が軽減される。また、被照明領域4内の各点には、複数の要素ホログラム素子3aのからのコヒーレント光がそれぞれ異なる入射角度で入射される。これにより、光の干渉パターンが無相関に重ねられて平均化され、結果として、被照明領域4内では人間の目に観察されるスペックルが目立たなくなる。
【0054】
第2の実施形態においても、ライン状の被照明領域4のエッジ部の位置が各ホログラム素子3ごとにずれないように、各ホログラム素子3内の複数の要素ホログラム素子3aの回折特性が調整される。また、第2の実施形態では、被照明領域4の短手方向dwにおける両端部の照度が中央部の照度よりも高くなるように、少なくとも一つのホログラム素子3内の複数の要素ホログラム素子3aの回折特性が調整される。
【0055】
このように、第2の実施形態では、各ホログラム素子3が複数の要素ホログラム素子3aを有するため、各要素ホログラム素子3aごとに回折特性の調整を行うことができる。これにより、被照明領域4の短手方向dwにおける両端部の照度が中央部の照度よりも高くなるような調整と、被照明領域4の短手方向dwの両端部を通過する長手方向dlに延びる両エッジ部の位置を揃える調整とを行うことができる。
【0056】
また、各ホログラム素子3を複数の要素ホログラム素子3aで構成して、各要素ホログラム素子3aが被照明領域4の全域を照明するようにすることで、被照明領域4における照明光の光強度を下げることができ、レーザ光の安全性を高めることができるとともに、スペックルも目立ちにくくなる。
【0057】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、被照明領域4の短手方向dwにおける両端部と中央部で、色ごとに放射強度を変えるものである。
【0058】
図6は少なくとも一つのホログラム素子3の回折特性を示すグラフである。横軸は、被照明領域4の短手方向dwの位置座標、縦方向は放射照度である。放射照度とは、被照明領域4における単位面積当たりの放射エネルギーを表す物理量である。図6のグラフgr1は赤色照明光、グラフgr2は緑色照明光、グラフgr3は青色照明光の特性をそれぞれ示している。
【0059】
図6に示すように、本実施形態では、照明光の色ごとに、放射照度が相違している。このように、照明光の色ごとに放射照度を相違させる理由は、被照明領域4の照明色によって、人間の目に感じられる被照明領域4の見やすさやボケ具合などが変わってくるためである。
【0060】
例えば、ライン状の被照明領域4を白色光で照明する場合、被照明領域4の短手方向dwの中央部は青みがかった白で照明し、短手方向dwの両端部は黄色みがかった白で照明した方が、被照明領域4が見やすく感じられて、かつ被照明領域4のエッジ部が鮮明に感じられる。
【0061】
そこで、本実施形態では、それぞれ異なる色で照明する各ホログラム素子3ごとに、被照明領域4の短手方向dwの中央部と両端部での放射照度の比を個別に調整可能とする。調整の度合は、被照明領域4の照明色や光源2の種類などによって決めればよい。すなわち、図6の放射照度は一例にすぎず、任意に設定して構わない。
【0062】
図6の例では、緑の照明色は、他の照明色よりも、短手方向dwの中央部と両端部での照射照度の比を小さくしている。その理由は、緑は輝度に影響を与えるため、比が大きいと、被照明領域4内の明るさが不均一になるためである。
【0063】
緑は、照度に大きな違いを持たせることができるため、短手方向dwの両端部の照度を高くすることで、被照明領域4の長手方向に沿ったエッジを視認しやすくなる。また、赤や青は、照度にはそれほど大きな違いを持たせることはできないが、色度が大きく変化するため、やはり、被照明領域4の長手方向に沿ったエッジを視認しやすくなる。このように、被照明領域4の照明色によって、被照明領域4の中央部とエッジとの照度(放射照度)または色度に違いを持たせることができ、これを利用して被照明領域4の視認性を向上できる。
【0064】
上述した説明では、各ホログラム素子3が複数の要素ホログラム素子3aに分割されているか否かを明示していなかったが、第3の実施形態における各ホログラム素子3は、複数の要素ホログラム素子3aに分割されていてもよいし、単一構造でもよい。
【0065】
各ホログラム素子3が複数の要素ホログラム素子3aに分割されている場合には、各要素ホログラム素子3aごとに、図6のような放射照度になるように、回折特性を調整すればよい。
【0066】
なお、図6は放射強度を示しているが、第1および第2の実施形態と同様に、被照明領域4の短手方向dwの両端部の照度が中央部の照度よりも高くなるように、各照明色に対応した各ホログラム素子3ごとに回折特性を調整してもよい。
【0067】
本実施形態によれば、被照明領域4の短手方向dwの中央部と両端部で、放射強度を相違させるような調整を行うことで、結果的に、短手方向dwの両端部の照度を中央部の照度よりも高くすることができる。
【0068】
このように、第3の実施形態では、照明色が異なる各ホログラム素子3ごとに、被照明領域4の短手方向dwにおける両端部と中央部で、放射照度を相違させるため、被照明領域4のエッジ部をより強調するような照明が可能となり、エッジ部を鮮明に照明することができる。
【0069】
(第4の実施形態)
上述した第1〜第3の実施形態では、図1および図2に示すように、複数のホログラム素子3が被照明領域4の短手方向dwに沿って配置されている例を示したが、複数のホログラム素子3は、被照明領域4の法線方向ndに沿って配置されていてもよい。すなわち、複数のホログラム素子3は、各ホログラム素子3による回折光が進行する角度空間内の所定の二次元平面上に配置される被照明領域4の短手方向dwに沿って配置してもよいし、この二次元平面の法線方向ndに配置してもよい。
【0070】
図7は複数のホログラム素子3を被照明領域4の法線方向ndに沿って配置した照明装置1の概略構成を示す斜視図である。図7の各ホログラム素子3が被照明領域4の全域を照明することは、図1と同様である。
【0071】
しかしながら、図7のように、複数のホログラム素子3を縦置きすると、各ホログラム素子3の回折光による照明範囲は、必ずしも一致せず、図8に示すように、被照明領域4の短手方向dwと長手方向dlの双方においてずれてしまうおそれがある。図8の実線の照明範囲4aが本来の被照明領域4であるのに対して、破線がずれた照明範囲4bである。
【0072】
そこで、図7のように、複数のホログラム素子3を縦置きした場合には、各ホログラム素子3ごとに、照明範囲が被照明領域4に一致するように、回折特性を調整する。より具体的には、各ホログラム素子3は、被照明領域4における短手方向dwの両端部を通過する長手方向dlに延びる両エッジ部の位置が一致し、かつ、被照明領域4における長手方向dlの両端部を通過する短手方向dwに延びる両エッジ部の位置が一致するように、回折特性を調整する。
【0073】
また、各ホログラム素子3が複数の要素ホログラム素子3aを有し、各要素ホログラム素子3aが被照明領域4の全域を照明する場合には、各要素ホログラム素子3aごとに、長手方向dlおよび短手方向dwに延びる計4つのエッジ部の位置が揃うように、回折特性を調整する。
【0074】
また、複数のホログラム素子3を縦置きした場合でも、第1〜第3の実施形態と同様に、被照明領域4内の短手方向dwの中央部と両端部で、照度または放射照度を相違させるような調整を行い、被照明領域4の視認性を向上させる。
【0075】
図9は縦置きされた複数のホログラム素子3の回折特性の調整手法を説明する図である。図9において、被照明領域4が存在する二次元平面から距離bだけ上方に第1ホログラム素子3が配置され、第1ホログラム素子3よりも距離aだけ上方に第2ホログラム素子3が配置されている。図9は、第1ホログラム素子3と第2ホログラム素子3から被照明領域4の長手方向dlに距離Rだけ離れた位置rでの照明範囲を一致させる例を示している。第1ホログラム素子3から位置rに向かう光線の方向と被照明領域4が存在する二次元平面との為す角度をθ1、第2ホログラム素子3から位置rに向かう交線の方向と二次元平面との為す角度をθ2としている。
【0076】
角度θ1、距離b、および距離Rの間には、以下の(5)式が成り立つ。
【0077】
tanθ1=b/R …(5)
【0078】
また、角度θ2、距離a、距離b、および距離Rの間には、以下の(6)式が成り立つ。
tanθ2=(b+a)/R …(6)
【0079】
距離Rごとに、上記(5)式と(6)式を満たすように、各ホログラム素子3の回折特性を調整すれば、被照明領域4の長手方向dlの両端部を通過して短手方向dwに延びる両エッジ部の位置を揃えることができる。なお、被照明領域4の短手方向dwの両端部を通過して長手方向dlに延びる両エッジ部の位置を揃えるには、上述した(3)式と(4)式を満たすように、各ホログラム素子3の回折特性を調整すればよい。
【0080】
このように、複数のホログラム素子3を縦置きした場合でも、横置きした場合と同様に、各ホログラム素子3の回折特性を調整することで、被照明領域4を人間の目に鮮明に照明させることができる。
【0081】
本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1 照明装置、2 光源、3 ホログラム素子、4 被照明領域、5 整形光学系、6
第1レンズ、7 第2レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9