特許第6796434号(P6796434)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796434
(24)【登録日】2020年11月18日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】焼結金属板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/14 20060101AFI20201130BHJP
   B22F 7/04 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   B22F3/14 101C
   B22F3/14 101A
   B22F7/04 H
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-166732(P2016-166732)
(22)【出願日】2016年8月29日
(65)【公開番号】特開2018-35378(P2018-35378A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151194
【弁理士】
【氏名又は名称】尾澤 俊之
(72)【発明者】
【氏名】大山 弘義
【審査官】 河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−122710(JP,A)
【文献】 特開2015−199975(JP,A)
【文献】 特開昭52−120346(JP,A)
【文献】 特開平03−285002(JP,A)
【文献】 特開2014−001427(JP,A)
【文献】 特開2004−315884(JP,A)
【文献】 特開2003−342617(JP,A)
【文献】 特開昭58−073707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00−8/00
C22C 1/04−1/05,33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する金属板に導電性を有する粉体を積層し、
前記金属板に積層された前記粉体を一次焼結し、
一次焼結された前記粉体を前記金属板に向けて加圧して成形し、
電極をヒータによって加温しつつ、少なくとも前記金属板を前記電極で加圧しながら直接通電加熱して、一次焼結された前記粉体を二次焼結する焼結金属板の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の焼結金属板の製造方法であって、
少なくとも前記金属板に対して前記電極で加圧しながら直接通電加熱を行って、前記粉体を一次焼結する焼結金属板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の焼結金属板の製造方法であって、
不活性又は還元性雰囲気中で前記粉体を一次焼結する焼結金属板の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項記載の焼結金属板の製造方法であって、
一次焼結された前記粉体を不活性又は還元性雰囲気中で二次焼結する焼結金属板の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1項記載の焼結金属板の製造方法であって、
前記粉体を二次焼結した後、前記金属板を前記電極で加圧しながら直接通電加熱する際の前記電極との接触部、及び当該接触部に積層された前記粉体を切除する焼結金属板の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1項記載の焼結金属板の製造方法であって、
前記金属板を前記電極で加圧しながら直接通電加熱する際の前記電極との接触部を除いて前記金属板に前記粉体を積層し、
前記粉体を二次焼結した後、前記接触部を切除する焼結金属板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結金属板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、実質的に鋼からなる薄板状の裏金とこの裏金に接合された軸受合金焼結層とを含むバイメタル状焼結軸受合金が知られており、特許文献1には、このバイメタル状焼結軸受合金の製造方法が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたバイメタル状焼結軸受合金の製造方法は、軸受合金焼結層を形成する粉末を裏金に積層しソレノイドコイル及びトランスバースコイルの2種類の加熱コイルを用いて裏金を誘導加熱し、裏金からの熱伝導及び輻射によって粉末を昇温して焼結させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3932159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ソレノイドコイルを用いた薄板の誘導加熱では誘導電流が板の断面の周囲を一巡するように流れるが、誘導電流の浸透深さとの関係で板の表面と裏面とで誘導電流の相殺が生じ、加熱効率が低下する虞がある。特許文献1に開示されたバイメタル状焼結軸受合金の製造方法では、トランスバースコイルを併用してソレノイドコイルの加熱効率の低下を補償して処理時間を短縮し、バイメタル状焼結軸受合金の生産効率を高めているが、2種類の加熱コイルを用いることから加熱設備が複雑となる。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、その目的は、生産効率を改善でき、加熱設備の簡素化も図ることができる焼結金属板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の焼結金属板の製造方法は、導電性を有する金属板に導電性を有する粉体を積層し、前記金属板に積層された前記粉体を一次焼結し、一次焼結された前記粉体を前記金属板に向けて加圧して成形し、少なくとも前記金属板を直接通電加熱して、一次焼結された前記粉体を二次焼結する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生産効率を改善でき、加熱設備の簡素化も図ることができる焼結金属板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(A)〜(F)は本発明の焼結金属板の製造方法の実施形態を説明するための工程図である。
図2】本発明の焼結金属板の製造方法の実施形態の変形例を示す図1(B)相当の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0011】
図1(A)〜図1(F)は、本発明の実施形態を説明するための、焼結金属板の製造方法の各工程を示す。焼結鋼板は、例えば建機用のブッシュやライナー等の摺動部材に用いることができる。
【0012】
図1(A)〜図1(F)に示すように、焼結鋼板(焼結金属板)10は、主材である鋼板(金属板)11と、鋼板11の表面に形成された摺動層12を有する。摺動層12は、銅粉体(粉体)13を焼結して形成する。
【0013】
焼結鋼板10の製造方法について説明する。
まず、図1(A)に示すように、導電性を有する鋼板11に対して導電性を有する銅粉体13を一定厚みに積層して焼結前体14を形成する。なお、後述する二次焼結が完了して焼結鋼板10が形成されるまでを、便宜上、「焼結前体14」として表示することとする。
【0014】
鋼板11は、例えば2mmの厚さを有する矩形の平板を用いることができる。銅粉体13は、バインダとして錫を含んでもよい。鋼板11の上面に一定厚みで平坦に積層された銅粉体13は、外周部が上方に向かって内側に傾斜したテーパ部15を有しており、焼結前体14は、全体として台形状に形成される。
【0015】
次に、図1(B)に示すように、不活性又は還元性のガス23が充填されたケーシング20の内部に焼結前体14をセットして、焼結前体14に電極21を接触させる。電極21は、例えば棒状の電極であって、焼結前体14の長手方向の両端部の下面及び上面を焼結前体14の幅方向に横断し、焼結前体14の下面側の鋼板11及び上面側の銅粉体13に接触して配置される。そして、電極21を介して焼結前体14の長手方向の両端部間に通電して鋼板11及び銅粉体13を直接通電加熱(Direct Resistance Heating)し、銅粉体13を一次焼結する。これにより、銅粉体13は一次焼結銅16となる。
【0016】
次いで、図1(C)に示すように、焼結前体14をケーシング20から取り出して、回転するローラ24により一次焼結銅16を鋼板11に向けて加圧して圧延成形する。一次焼結銅16は、飛散することはないがまだ軟らかい状態であり、ローラ24により容易に圧延成形される。なお、ローラ24以外(例えば、コテ)のものを用いて加圧成形することもできる。
【0017】
その後、図1(D)に示すように、再び焼結前体14を不活性又は還元性のガス23が充填されたケーシング20に収容し、焼結前体14に電極21を接触させ、電極21を介して焼結前体14の長手方向の両端部間に通電して鋼板11及び一次焼結銅16を直接通電加熱し、一次焼結銅16の二次焼結を行う。これにより、一次焼結銅16は二次焼結銅17となり、摺動層12を形成する。二次焼結は、一次焼結よりも高い焼結温度まで一次焼結銅16を昇温し、例えば一次焼結銅16を焼結温度に5分間保持し、その後降温して行う。
【0018】
二次焼結の完了により、銅の鋼板11への拡散によって二次焼結銅17からなる摺動層12が鋼板11に強固に接合された焼結鋼板10が形成される。ただし、直接通電加熱の際に電極21と接触していた焼結前体14の長手方向の両端部では電極21を通じて熱が逃げ、両端部の銅粉体13及び一次焼結銅16の焼結が不十分となる場合がある。そこで、図1(E)に示すように、焼結鋼板10の長手方向の両端部を切除する。これにより、焼結鋼板10は、鋼板11及び摺動層12の端面19が焼結鋼板10の表面及び裏面と直交して揃えられた矩形に成形される。
【0019】
好ましくは、加温用のヒータ22を電極21に設け、直接通電加熱の際にヒータ22によって電極21を加温する。これにより、焼結前体14の長手方向の両端部の電極21との接触部位から電極21を通じて熱が逃げるのを抑制でき、焼結鋼板10の長手方向の両端部の切除長を短縮して材料の利用効率を高めることができる。
【0020】
焼結鋼板10が建機用のブッシュやライナー等の摺動部材に適用される場合に、図1(F)に示すように、焼結鋼板10は、摺動層12を内側にして、揃えられた端面19を合わせて円筒状に加工される。
【0021】
以上説明した焼結鋼板10の製造方法では、鋼板11に銅粉体13を積層し、銅粉体13を一次焼結して一次焼結銅16とし、一次焼結銅16を鋼板11に向けて加圧して成形し、鋼板11及び一次焼結銅16に対して直接通電加熱を行って一次焼結銅16を二次焼結する。直接通電加熱は、導電性の被加熱物に直接電流を流し、被加熱物の内部抵抗によって生じるジュール熱で加熱する抵抗加熱の一種であり、被加熱物が比較的薄い板材であっても加熱効率に優れる。このため、鋼板11や一次焼結銅16を高効率且つ短時間で加熱でき、焼結鋼板10の生産効率を高めることができ、さらに、ソレノイドコイル及びトランスバースコイルの2種類のコイルを用いて鋼板11を誘導加熱する場合に比べて加熱設備を簡素化することもできる。なお、銅粉体13の一次焼結も直接通電加熱によって行うものとして説明したが、相対的に低温にて行われる一次焼結では、例えば炉加熱などによって銅粉体13を昇温させるようにしてもよい。
【0022】
図2には、本発明の実施形態の変形例を示す工程が示されている。なお、前述した実施形態と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0023】
図1(A)〜図1(F)に示した焼結鋼板10の製造方法では、焼結前体14の長手方向の全長に亘って鋼板11に銅粉体13を積層したのに対し、図2に示す焼結鋼板10の製造方法では、電極21が配置される焼結前体14の長手方向の両端部においては鋼板11に銅粉体13を積層せずに鋼板11を露出させ、両端部を除く焼結前体14の長手方向の中間部においてのみ鋼板11に銅粉体13を積層している。
【0024】
そして、焼結前体14の長手方向の両端部に露出した鋼板11に電極21を接触させて鋼板11のみ直接通電加熱し、鋼板11からの熱伝導及び輻射により、銅粉体13を昇温して一次焼結し、また、銅粉体13が一次焼結されてなる一次焼結銅16を昇温して二次焼結する。その他の工程は、図1(A)〜図1(F)に示した焼結鋼板10の製造方法と同様である。
【0025】
前述したとおり、直接通電加熱の際に電極21と接触していた焼結前体14の長手方向の両端部では電極21を通じて熱が逃げ、両端部の銅粉体13及び一次焼結銅16の焼結が不十分となる場合があり、二次焼結の完了後に焼結鋼板10の長手方向の両端部を切除するが、本例では両端部に銅粉体13を積層せず、これにより、銅粉体13の利用効率を高めることができる。
【0026】
本発明の焼結金属板の製造方法は、前述した実施形態及び変形例に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。例えば、前述した実施形態及び変形例においては、粉体として銅粉体を用いたが、これに限るものではない。また、前述した実施形態においては、金属板として鋼板を用いたが、本発明における金属板は鋼板に限定されない。
【0027】
以上、説明したとおり、本明細書に開示された焼結金属板の製造方法は、導電性を有する金属板に導電性を有する粉体を積層し、前記金属板に積層された前記粉体を一次焼結し、一次焼結された前記粉体を前記金属板に向けて加圧して成形し、少なくとも前記金属板を直接通電加熱して、一次焼結された前記粉体を二次焼結する。
【0028】
また、本明細書に開示された焼結金属板の製造方法は、少なくとも前記金属板に対して直接通電加熱を行って、前記粉体を一次焼結する。
【0029】
また、本明細書に開示された焼結金属板の製造方法は、不活性又は還元性雰囲気中で前記粉体を一次焼結する。
【0030】
また、本明細書に開示された焼結金属板の製造方法は、一次焼結された前記粉体を不活性又は還元性雰囲気中で二次焼結する。
【0031】
また、本明細書に開示された焼結金属板の製造方法は、前記粉体を二次焼結した後、前記金属板を直接通電加熱する際の前記金属板の電極との接触部、及び当該接触部に積層された前記粉体を切除する。
【0032】
また、本明細書に開示された焼結金属板の製造方法は、前記金属板を直接通電加熱する際、前記電極をヒータによって加温する。
【0033】
また、本明細書に開示された焼結金属板の製造方法は、前記接触部を除いて前記金属板に前記粉体を積層する。
【符号の説明】
【0034】
10 焼結鋼板(焼結金属板)
11 鋼板(金属板)
13 銅粉体(粉体)
20 ケーシング
21 電極
22 ヒータ
図1
図2