(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の光選択吸収樹脂積層体は、近赤外線吸収色素を含有する第1の樹脂層と、前記第1の樹脂層と同一または異なる樹脂から構成された第2の樹脂層とを、積層構造として少なくとも有するものである。本発明の光選択吸収樹脂積層体は、近赤外線吸収色素を含有する第1の樹脂層によって、近赤外領域(例えば、600〜1100nmの波長範囲の少なくとも一部)の光を選択的に吸収することができる。一方、近赤外線吸収色素は酸素によって分解が促進される傾向があることから、第1の樹脂層に酸素透過率の低い第2の樹脂層を積層することにより、第1の樹脂層に含まれる近赤外線吸収色素の分解を抑えることができる。そのため、本発明の光選択吸収樹脂積層体は耐光性に優れたものとなる。以下、本発明の光選択吸収樹脂積層体について、詳しく説明する。
【0008】
光選択吸収樹脂積層体に含まれる第1の樹脂層と第2の樹脂層を構成する樹脂は、公知の樹脂を用いることができる。第1の樹脂層を構成する樹脂と第2の樹脂層を構成する樹脂は、互いに同一であっても異なっていてもよい。これらの樹脂層を構成する樹脂としては、透明性が高い樹脂であることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂)、シクロオレフィン系樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、スチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキド樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスルホン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂(例えば、(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、アルキルポリシロキサン系樹脂、シリコーンウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル樹脂等)、フッ素系樹脂(例えば、フッ素化芳香族ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、フッ素化ポリアリールエーテルケトン(FPEK)、フッ素化ポリイミド(FPI)、フッ素化ポリアミド酸(FPAA)、フッ素化ポリエーテルニトリル(FPEN)等)等が挙げられる。これらの中でも、透明性、汎用性に優れる点から、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フッ素化芳香族ポリマーが好ましい。
【0009】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸またはその誘導体由来の繰り返し単位を有する重合体であり、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂等の(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を有する樹脂が好ましく用いられる。(メタ)アクリル系樹脂は主鎖に環構造を有するものも好ましく、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、無水マレイン酸構造、マレイミド環構造等のカルボニル基含有環構造;オキセタン環構造、アゼチジン環構造、テトラヒドロフラン環構造、ピロリジン環構造、テトラヒドロピラン環構造、ピペリジン環構造等のカルボニル基非含有環構造が挙げられる。なお、カルボニル基含有環構造には、イミド基などのカルボニル基誘導体基を含有する構造も含む。カルボニル基含有環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開2004−168882号公報、特開2008−179677号公報、国際公開第2005/54311号、特開2007−31537号公報等に記載されたものを用いることができる。
【0010】
ポリ塩化ビニル樹脂は、[−CH
2−CHCl−]を繰り返し単位に有する重合体であり、ポリ塩化ビニリデン樹脂は、[−CH
2−CCl
2−]を繰り返し単位に有する重合体である。ポリオレフィン樹脂は、アルケンをモノマーとして重合することにより得られる重合体であり、ポリエチレンやポリプロピレン等が挙げられる。
【0011】
シクロオレフィン系樹脂は、モノマー成分の少なくとも一部としてシクロオレフィンを用い、これを重合して得られる重合体であり、主鎖の一部に脂環構造を有するものであれば特に限定されない。シクロオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプラスチック社製のトパス(登録商標)、三井化学社製のアペル(登録商標)、日本ゼオン社製のゼオネックス(登録商標)およびゼオノア(登録商標)、JSR社製のアートン(登録商標)等を用いることができる。
【0012】
ポリイミド樹脂は、主鎖の繰り返し単位にイミド結合を含む重合体であり、例えば、テトラカルボン酸2無水物とジアミンとを重合させてポリアミド酸を得て、これを脱水・環化(イミド化)させることにより製造することができる。ポリイミド樹脂としては、芳香族環がイミド結合で連結された芳香族ポリイミドを用いることが好ましい。ポリイミド樹脂は、例えば、デュポン社製のカプトン(登録商標)、三井化学社製のオーラム(登録商標)、サンゴバン社製のメルディン(登録商標)、東レプラスチック精工社製のTPS(登録商標)TI3000シリーズ等を用いることができる。
【0013】
ポリアミドイミド樹脂は、主鎖の繰り返し単位にアミド結合とイミド結合を含む重合体である。ポリアミドイミド樹脂は、例えば、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のトーロン(登録商標)、東洋紡社製のバイロマックス(登録商標)、東レプラスチック精工社製のTPS(登録商標)TI5000シリーズ等を用いることができる。
【0014】
エポキシ樹脂は、エポキシ化合物(プレポリマー)を硬化剤や硬化触媒の存在下で架橋することで硬化可能な樹脂である。エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物等が挙げられ、例えば、大阪ガスケミカル社製のフルオレンエポキシ(オグソール(登録商標)PG−100)、三菱化学社製のビスフェノールA型エポキシ化合物(JER(登録商標)828EL)や水添ビスフェノールA型エポキシ化合物(JER(登録商標)YX8000)、ダイセル社製の脂環式液状エポキシ化合物(セロキサイド(登録商標)2021P)等を用いることができる。
【0015】
ポリエステル樹脂は、主鎖の繰り返し単位にエステル結合を含む重合体であり、多価カルボン酸(ジカルボン酸)とポリアルコール(ジオール)とを重縮合させることにより得られる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、例えば、帝人社製のTRNシリーズ、テオネックス(登録商標)、デュポン社製のライナイト(登録商標)、三菱化学社製のノバペックス(登録商標)、三菱エンジニアリングプラスチックス社製のノバデュラン(登録商標)、東レ社製のルミラー(登録商標)、トレコン(登録商標)等を用いることができる。
【0016】
ポリカーボネート樹脂は、主鎖の繰り返し単位にカーボネート基(−O−(C=O)−O−)を含む重合体である。ポリカーボネート樹脂としては、帝人社製のパンライト(登録商標)、三菱エンジニアリングプラスチック社製のユーピロン(登録商標)、ノバレックス(登録商標)、ザンター(登録商標)、住化スタイロンポリカーボネート社製のSDポリカ(登録商標)等を用いることができる。
【0017】
ポリスルホン樹脂は、芳香族環とスルホニル基(−SO
2−)と酸素原子とを含む繰り返し単位を有する重合体である。ポリスルホン樹脂は、例えば、住友化学社製のスミカエクセル(登録商標)PES3600PやPES4100P、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のUDEL(登録商標)P−1700等を用いることができる。
【0018】
フッ素化芳香族ポリマーは、1以上のフッ素原子を有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合およびエステル結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つの結合とを含む繰り返し単位を有する重合体であり、これらの中でも、1以上のフッ素原子を有する芳香族環とエーテル結合とを含む繰り返し単位を必須的に含む重合体であることが好ましい。フッ素化芳香族ポリマーは、例えば、特開2008−181121号公報に記載されたものを用いることができる。
【0019】
第1の樹脂層は近赤外線吸収色素を含有する。第1の樹脂層に含まれる近赤外線吸収色素は、有機色素であっても、無機色素であっても、有機無機複合色素(例えば、金属原子またはイオンが配位した有機化合物)であってもよく、特にその種類は限定されない。近赤外線吸収色素は波長650nm〜1100nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましく、これにより、光選択吸収樹脂積層体を近赤外線カットフィルター等に好適に適用することができる。近赤外線吸収色素の極大吸収波長の波長範囲は、好ましくは680nm以上であり、700nm以上がより好ましく、また1090nm以下が好ましく、1070nm以下がより好ましい。
【0020】
近赤外線吸収色素としては、例えば、中心金属イオンとして銅(例えば、Cu(II))や亜鉛(例えば、Zn(II))等を有していてもよい環状テトラピロール系色素(ポルフィリン類、クロリン類、フタロシアニン類、コリン類等)、オキソカーボン系色素、シアニン系色素、クアテリレン系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素、ジインモニウム系色素、サブフタロシアニン系色素、キサンテン系色素、アゾ系色素、ジピロメテン系色素等が挙げられる。第1の樹脂層には、近赤外線吸収色素が1種のみ含まれていても、2種以上含まれていてもよい。なお、所望の光学特性が発揮されるように分子設計することが容易な点から、近赤外線吸収色素としては有機色素または有機無機複合色素を用いることが好ましく、中でも、近赤外領域の光を効果的に吸収し、可視光透過率を高めることが容易な点から、近赤外線吸収色素としてはオキソカーボン系化合物を用いることが好ましい。オキソカーボン系化合物はまた、酸素の存在下で比較的分解しやすいため、第1の樹脂層に含まれる近赤外線吸収色素としてオキソカーボン系化合物を用いることにより、第2の樹脂層による近赤外線吸収色素の分解抑制効果がより奏されやすくなる。
【0021】
オキソカーボン系化合物は、炭素酸化物を基本骨格として含む化合物であれば特に限定されないが、近赤外領域に吸収波長を有する化合物として広く知られているスクアリリウム化合物またはクロコニウム化合物を用いることが好ましい。スクアリリウム化合物としては、下記式(1)で表されるスクアリリウム骨格を有する化合物が具体的に示され、クロコニウム化合物としては、下記式(2)で表されるクロコニウム骨格を有する化合物が具体的に示される。下記式(1)および式(2)において、R
1〜R
4はそれぞれ独立して有機基を表す。
【0023】
第1の樹脂層に含まれるオキソカーボン系化合物は、スクアリリウム化合物であってもよいし、クロコニウム化合物であってもよいし、両者が含まれていてもよい。第1の樹脂層に含まれるオキソカーボン系化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0024】
スクアリリウム化合物は、上記式(1)において、R
1とR
2の少なくとも一方が、スクアリリウム骨格とπ共役系で繋がった、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表すものが好ましい。クロコニウム化合物は、上記式(2)において、R
3とR
4の少なくとも一方が、クロコニウム骨格とπ共役系で繋がった、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表すものが好ましい。このようなスクアリリウム化合物またはクロコニウム化合物を用いることにより、π共役系がスクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格から芳香族炭化水素環や芳香族複素環にかけて広がって、近赤外領域の光を選択的に吸収しやすくなる。より好ましくは、上記式(1)において、R
1とR
2の両方が、スクアリリウム骨格とπ共役系で繋がった、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表し、上記式(2)において、R
3とR
4の両方が、クロコニウム骨格とπ共役系で繋がった、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表す。
【0025】
芳香族炭化水素環としては、炭素数6〜20のものが挙げられ、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、フルオランテン環、シクロテトラデカヘプタエン環等が挙げられる。中でも、置換基を有していてもよい5員または6員の芳香族炭化水素環が好ましい。
【0026】
芳香族複素環としては、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性芳香族複素環、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性芳香族複素環等が挙げられ、具体的には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、プリン環、プテリジン環等が挙げられる。中でも、置換基を有していてもよい5員または6員の芳香族複素環が好ましい。
【0027】
芳香族炭化水素環と芳香族複素環を含む縮合環としては、例えば、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、ベンゾピラン環、アクリジン環、キサンテン環、カルバゾール環等が挙げられる。
【0028】
芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環は、スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格と直接結合していてもよく、π共役系を有する連結基を介してスクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格と結合していてもよい。いずれの場合も、スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格からこれらの環構造にかけてπ共役系が広がるように構成されていればよい。π共役を有する連結基としては、例えば、−CR
a1=、−(CR
a2=CR
a3)
h−、−N=CR
a1−、−NR
a1−(CR
a2=CR
a3)
h−、−O−(CR
a2=CR
a3)
h−、−S−(CR
a2=CR
a3)
h−(式中、R
a1〜R
a3は、水素原子、有機基またはハロゲン原子を表し、R
a2とR
a3は互いに繋がって環を形成していてもよく、hは1以上の整数を表す)で表される基が示される。R
a1〜R
a3の有機基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
【0029】
芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環が有していてもよい置換基の種類は特に限定されず、例えば、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリール基、アラルキル基、アミド基、スルホンアミド基、シアノ基、ハロゲノ基等が挙げられる。当該置換基としては、好ましくは水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子であり、置換基の数は1〜5個が好ましく、1〜3個がより好ましい。
【0030】
オキソカーボン系化合物は、上記式(1)および式(2)において、R
1〜R
4がそれぞれ独立して、下記式(3)または式(4)で示される基であるものが好ましい。式(3)中、R
5〜R
9はそれぞれ独立して、水素原子、有機基または極性官能基を表し、R
5とR
6、R
6とR
7、R
7とR
8、R
8とR
9はそれぞれ、互いに結合して環を形成していてもよい。式(4)中、R
10〜R
14はそれぞれ独立して、水素原子、有機基または極性官能基を表し、R
10とR
11、R
11とR
12、R
12とR
13、R
13とR
14はそれぞれ、互いに結合して環を形成していてもよい。*は、式(1)中の4員環または式(2)中の5員環との結合部位を表す。
【0032】
式(3)および式(4)中、R
5〜R
14の有機基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオオキシ基(アルキルチオ基)、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオオキシ基(アリールチオ基)、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールスルフィニル基、ヘテロアリール基、アミド基、スルホンアミド基、カルボキシ基(カルボン酸基)、シアノ基、エチレン含有基、イミン含有基等が挙げられる。R
5〜R
14の極性官能基としては、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基(スルホン酸基)等が挙げられる。
【0033】
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の直鎖状または分岐状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の脂環式アルキル基等が挙げられる。アルキル基の炭素数は1〜20が好ましく、具体的には、直鎖状または分岐状のアルキル基であれば炭素数1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜5であり、脂環式のアルキル基であれば炭素数4〜10が好ましく、5〜8がより好ましい。前記アルキル基は置換基を有していてもよく、アルキル基が有する置換基としては、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲノ基、水酸基、カルボキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基等が挙げられる。ハロゲノ基を有するアルキル基としては、モノハロゲノアルキル基、ジハロゲノアルキル基、トリハロメチル単位を有するアルキル基、パーハロゲノアルキル基等が挙げられる。ハロゲノ基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。
【0034】
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、イコシルオキシ基等が挙げられる。アルコキシ基の炭素数は、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜5である。前記アルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状であってもよく分岐状であってもよい。
【0035】
前記アルキルチオオキシ基(アルキルチオ基)としては、例えば、メチルチオオキシ基(メチルチオ基)、エチルチオオキシ基(エチルチオ基)、プロピルチオオキシ基(プロピルチオ基)、ブチルチオオキシ基(ブチルチオ基)、ペンチルチオオキシ基(ペンチルチオ基)、ヘキシルチオオキシ基(ヘキシルチオ基)、ヘプチルチオオキシ基(ヘプチルチオ基)、オクチルチオオキシ基(オクチルチオ基)、ノニルチオオキシ基(ノニルチオ基)、デシルチオオキシ基(デシルチオ基)、ウンデシルチオオキシ基(ウンデシルチオ基)、ドデシルチオオキシ基(ドデシルチオ基)、トリデシルチオオキシ基(トリデシルチオ基)、テトラデシルチオオキシ基(テトラデシルチオ基)、ペンタデシルチオオキシ基(ペンタデシルチオ基)、ヘキサデシルチオオキシ基(ヘキサデシルチオ基)、ヘプタデシルチオオキシ基(ヘプタデシルチオ基)、オクタデシルチオオキシ基(オクタデシルチオ基)、ノナデシルチオオキシ基(ノナデシルチオ基)、イコシルチオオキシ基(イコシルチオ基)等が挙げられる。アルキルチオオキシ基の炭素数は、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜5である。前記アルキルチオオキシ基中のアルキル基は、直鎖状であってもよいし分岐状であってもよい。
【0036】
前記アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基等の無置換アルコキシカルボニル基の他、トリフルオロメチルオキシカルボニル基等の置換アルコキシカルボニル基が挙げられる。ここで置換基としては、ハロゲノ基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基の炭素数は、2〜20が好ましく、より好ましくは2〜10であり、さらに好ましくは2〜5である。前記アルコキシカルボニル基中のアルキル基は、直鎖状であってもよく分岐状であってもよい。
【0037】
前記アルキルスルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、メトキシメチルスルホニル基、シアノメチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基の置換または無置換のアルキルスルホニル基等が挙げられる。アルキルスルホニル基の炭素数は、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜5である。前記アルキルスルホニル基中のアルキル基は、直鎖状であってもよく分岐状であってもよい。
【0038】
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、インデニル基、アズレニル基、フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、ペンタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6〜20が好ましく、より好ましくは6〜15である。前記アリール基は置換基を有していてもよく、アリール基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、ハロゲノ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、チオシアネート基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。前記アリール基は、ヘテロアリール基と縮環していてもよい。
【0039】
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基等が挙げられる。前記アラルキル基は置換基を有していてもよく、アラルキル基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、シアノ基、ニトロ基、チオシアネート基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素数は、7〜25が好ましく、より好ましくは7〜15である。
【0040】
前記アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、ビフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、ピレニルオキシ基、インデニルオキシ基、アズレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、ターフェニルオキシ基、クオーターフェニルオキシ基、ペンタレニルオキシ基、ヘプタレニルオキシ基、ビフェニレニルオキシ基、インダセニルオキシ基、アセナフチレニルオキシ基、フェナレニルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
【0041】
前記アリールチオオキシ基(アリールチオ基)としては、例えば、フェニルチオオキシ基、ビフェニルチオオキシ基、ナフチルチオオキシ基、アントリルチオオキシ基、フェナントリルチオオキシ基、ピレニルチオオキシ基、インデニルチオオキシ基、アズレニルチオオキシ基、フルオレニルチオオキシ基、ターフェニルチオオキシ基、クオーターフェニルチオオキシ基、ペンタレニルチオオキシ基、ヘプタレニルチオオキシ基、ビフェニレニルチオオキシ基、インダセニルチオオキシ基、アセナフチレニルチオオキシ基、フェナレニルチオオキシ基等が挙げられる。アリールチオオキシ基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
【0042】
前記アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルオキシカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルオキシカルボニル基、2−クロロフェニルオキシカルボニル基、2−メチルフェニルオキシカルボニル基、2−メトキシフェニルオキシカルボニル基、2−ブトキシフェニルオキシカルボニル基、3−クロロフェニルオキシカルボニル基、3−トリフルオロメチルフェニルオキシカルボニル基、3−シアノフェニルオキシカルボニル基、3−ニトロフェニルオキシカルボニル基、4−フルオロフェニルオキシカルボニル基、4−シアノフェニルオキシカルボニル基、4−メトキシフェニルオキシカルボニル基等の置換または無置換のフェニルオキシカルボニル基;1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基等の置換または無置換のナフチルオキシカルボニル基;等が挙げられる。アリールオキシカルボニル基の炭素数は、7〜25が好ましく、より好ましくは7〜15である。
【0043】
前記アリールスルホニル基としては、例えば、フェニルスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基、2−ナフチルスルホニル基、2−クロロフェニルスルホニル基、2−メチルフェニルスルホニル基、2−メトキシフェニルスルホニル基、2−ブトキシフェニルスルホニル基、2−フルオロフェニルスルホニル基、3−メチルフェニルスルホニル基、3−クロロフェニルスルホニル基、3−トリフルオロメチルフェニルスルホニル基、3−シアノフェニルスルホニル基、3−ニトロフェニルスルホニル基、3−フルオロフェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基、4−フルオロフェニルスルホニル基、4−シアノフェニルスルホニル基、4−メトキシフェニルスルホニル基、4−ジメチルアミノフェニルスルホニル基等の置換または無置換のフェニルスルホニル基;1−ナフチルスルホニル基、2−ナフチルスルホニル基等の置換または無置換のナフチルスルホニル基等が挙げられる。アリールスルホニル基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
【0044】
前記アリールスルフィニル基としては、例えば、フェニルスルフィニル基、2−クロロフェニルスルフィニル基、2−メチルフェニルスルフィニル基、2−メトキシフェニルスルフィニル基、2−ブトキシフェニルスルフィニル基、2−フルオロフェニルスルフィニル基、3−メチルフェニルスルフィニル基、3−クロロフェニルスルフィニル基、3−トリフルオロメチルフェニルスルフィニル基、3−シアノフェニルスルフィニル基、3−ニトロフェニルスルフィニル基、4−メチルフェニルスルフィニル基、4−フルオロフェニルスルフィニル基、4−シアノフェニルスルフィニル基、4−メトキシフェニルスルフィニル基、4−ジメチルアミノフェニルスルフィニル基等の置換または無置換のフェニルスルフィニル基;1−ナフチルスルフィニル基、2−ナフチルスルフィニル基等の置換または無置換のナフチルスルフィニル基等が挙げられる。アリールスルフィニル基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
【0045】
前記ヘテロアリール基としては、例えば、チエニル基、チオピラニル基、イソチオクロメニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラニル基、ピラニル基等が挙げられる。ヘテロアリール基の炭素数は、2〜20が好ましく、より好ましくは3〜15である。前記ヘテロアリール基は置換基を有していてもよく、ヘテロアリール基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲノ基、水酸基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、チオシアネート基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。前記ヘテロアリール基は、アリール基と縮環していてもよい。
【0046】
前記アミド基としては、式:−NHCOR
b1で表され、R
b1がアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基であるもの等が挙げられる。アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基としては上記に例示した置換基が具体的に挙げられ、水素原子の一部がハロゲン原子によって置換されていてもよい。
【0047】
前記スルホンアミド基としては、式:−NHSO
2R
b2で表され、R
b2がアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基であるもの等が挙げられる。アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基としては上記に例示した置換基が具体的に挙げられ、水素原子の一部がハロゲン原子によって置換されていてもよい。
【0048】
前記エチレン含有基としては、式:−CH=CH−R
b3で表され、R
b3が脂肪族炭化水素基、アリール基またはヘテロアリール基であるもの等が挙げられる。R
b3の脂肪族炭化水素基は、飽和または不飽和のいずれであってもよいが、好ましくは不飽和である。このような脂肪族炭化水素基としては、−(CH=CH)
k−(kは1〜10の整数であり、好ましくは1〜5の整数である)で表される繰り返し単位を有する基が好ましく、例えばビニル基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜20のものが好ましく、より好ましくは1〜10のものが挙げられる。R
b3のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、ヘテロアリール基としては、チエニル基、チオピラニル基、イソチオクロメニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラニル基、ピラニル基等が挙げられる。
【0049】
前記イミン含有基としては、式:−CH=N−R
b4で表され、R
b4が置換基を有していてもよいアミノ基であるもの等が挙げられる。R
b4のアミノ基は、置換または無置換のいずれであってもよい。置換基を有するアミノ基としては、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基等が挙げられる。R
b4のアミノ基に結合するアルキル基やアリール基としては、上記に例示したアルキル基やアリール基が具体的に挙げられる。
【0050】
前記ハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。
【0051】
前記アミノ基としては、式:−NR
b5R
b6で表され、R
b5およびR
b6がそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基であるもの等が挙げられる。アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基としては上記に例示した置換基が具体的に挙げられ、アルケニル基とアルキニル基としては、上記に例示したアルキル基の炭素−炭素単結合の一部が二重結合または三重結合に置き換わった置換基が挙げられ、これらの置換基は水素原子の一部がハロゲン原子によって置換されていてもよい。また、R
b5とR
b6は互いに連結して環形成していてもよい。
【0052】
R
5〜R
14から形成される各環構造としては、炭化水素環や複素環が挙げられ、これらの環構造は芳香族性を有していても有していなくてもよい。芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、フルオランテン環、シクロテトラデカヘプタエン環等の炭素数6〜20の芳香族環が挙げられる。脂環式炭化水素環としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の炭素数3〜10の単環のシクロアルカン;シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(例えば、1,3−シクロヘキサジエン)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、等の炭素数3〜10の単環のシクロアルケン;ビシクロ[2.2.1]ペンタン、ビシクロ[2.2.1]ペンタ−2−エン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2−エン等の橋架けを有する環式アルカン等が挙げられる。中でも、炭素数6〜10の芳香族環、炭素数5〜7の単環のシクロアルカン、炭素数5〜7の単環のシクロアルケン、橋架けを有する炭素数5〜9の環式アルカンが好ましい。複素環は、前記に説明した芳香族炭化水素環または脂環式炭化水素環の環を構成する炭素原子の1個以上が、N(窒素原子)、S(硫黄原子)およびO(酸素原子)から選ばれる少なくとも1種以上の原子に置き換わった環構造であり、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、プリン環、プテリジン環等が挙げられる。これらの芳香族炭化水素環、脂環式炭化水素環、複素環は、他の環と縮環していてもよく、そのような環構造としては、例えば、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、ベンゾピラン環、アクリジン環、キサンテン環、カルバゾール環等が挙げられる。他の環が縮環することで、得られるオキソカーボン系化合物を長波長化できるため、化合物の色調に応じた分子設計を行いやすくなる。R
5〜R
14から形成される各環構造は、上記に説明した有機基や極性官能基を置換基として有するものであってもよい。
【0053】
前記式(3)の有機基としては、下記式(3−1)で示される基であることが、好ましい実施態様の一つである。式(3−1)中、環Aは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表す。R
7〜R
9は上記に説明した通りである。スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格に式(3−1)で示される基が結合したオキソカーボン系化合物であれば、環Aのπ共役系を適宜設定することにより、オキソカーボン系化合物の吸収波長を容易に調整することができる。式(3−1)で示される基が結合したオキソカーボン系化合物は、短波長域では、極大吸収波長を例えば650nm程度に調整することができ、環Aのπ電子数を増加させる(π共役系を広げる)ことにより最大吸収波長を長波長シフトさせて、例えば極大吸収波長を1100nm程度まで調整することが可能である。
【0055】
環Aの置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環の具体例は、上記のR
5〜R
14から形成される環構造で説明した通りである。環Aに結合する置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状アルキル基)、アリール基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜2)、ヘテロアリール基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基、水酸基、チオール基、ベンゾチアゾール基、上記のエチレン含有基、上記のイミン含有基等の電子供与性基や;ハロゲノ基(好ましくは、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基)、ハロゲノアルキル基(好ましくは炭素数1〜3のパーハロゲノアルキル基)、シアノ基、アルコキシカルボニル基(エステル基)、カルボキシ基(カルボン酸基)、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、スルホ基(スルホン酸基)、ニトロ基等の電子吸引性基が好ましい。これらの中でも、電子吸引性基がより好ましく、ハロゲノ基が特に好ましい。環Aが置換基を有する場合、その数は1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、さらに好ましくは1である。環Aが複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよい。なお、環Aは置換基を有しなくてもよい。
【0056】
式(3−1)のR
7〜R
9としては、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、または置換基を有していてもよいアリール基であることが好ましく、これにより、オキソカーボン系化合物の溶剤溶解性を高めたり、最大吸収波長を所望の波長域へより細かく制御することが容易になる。さらに、オキソカーボン系化合物の製造が容易になるといった効果も得られる。R
5〜R
7の置換基を有していてもよいアルキル基としては、上記に例示したアルキル基が挙げられ、その炭素数は、直鎖状または分岐状のアルキル基であれば1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4であり、脂環式のアルキル基であれば4〜7が好ましく、より好ましくは5〜6である。R
5〜R
7の置換基を有していてもよいアリール基としては、上記に例示したアリール基が挙げられ、その炭素数は6〜10が好ましく、より好ましくは6〜9である。これらのアルキル基およびアリール基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が好ましく挙げられる。
【0057】
式(3)の有機基は、下記式(3−2)で示される基であることも好ましい。式(3−2)中、環Bは、置換基を有していてもよい4〜9員の不飽和炭化水素環を表す。環AとR
7は上記に説明した通りである。
【0059】
環Bは、スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格に結合する炭素原子とピロール環のα位の炭素原子との間に二重結合を有するとともに、ピロール環のα位の炭素とβ位の炭素を含んで構成される。環Bは、前記二重結合以外にも不飽和結合(好ましくは二重結合)を有していてもよく、好ましくは不飽和結合(二重結合)を1個のみ有する。環Bは、好ましくは5〜8員環であり、より好ましくは6〜8員環である。環AおよびR
7は上記に説明した通りである。オキソカーボン系化合物が環Bを有していれば、吸収波形のショルダーピークを大幅に低減することが可能となり、可視光領域での光学特性を改善することができる。さらに、環Bを有することによる分子歪みによってπ−π
*遷移のバンドギャップが狭くなり、かつ環Aによってπ電子系が広範囲に広がることによって、吸収波長の長波長化を容易に達成することができる。
【0060】
環Bの構造としては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロヘプタトリエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロノネン、シクロノナジエン、シクロノナトリエン、シクロノナテトラエン等のシクロアルケン構造が挙げられる。中でも、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のシクロアルカンモノエンが好ましい。
【0061】
環Bは置換基を有していてもよく、そのような置換基としては上記に説明した有機基や極性官能基が挙げられる。中でも、環Bに結合する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、アリール基、アルコキシカルボニル基(エステル基)、アミド基、スルホンアミド基、水酸基が好ましく、アルキル基または水酸基がより好ましく、これにより、オキソカーボン系化合物の有機溶媒への溶解性を高めやすくなる。この場合、アルキル基の炭素数は1〜5が好ましく、より好ましくは1〜3であり、さらに好ましくは1〜2である。環Bが置換基を有する場合、その数は1〜6が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2がさらに好ましい。ただし、環Bの置換基の数は、環Bの構成員数から3を引いた値以下であることが好ましい。環Bが複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数の置換基は各々別の炭素原子に結合していてもよく、1つの炭素原子に結合していてもよい。環Bは置換基を有しなくてもよい。
【0062】
式(3−2)のR
7は上記に説明した通りであり、中でも、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリール基が好ましく、アルキル基またはアリール基がより好ましく、これにより、オキソカーボン系化合物の有機溶媒への溶解性を高めやすくなる。この場合、アルキル基の炭素数は、直鎖状または分岐状のアルキル基であれば1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4であり、脂環式のアルキル基であれば4〜7が好ましく、より好ましくは5〜6である。アリール基の炭素数は6〜12が好ましく、より好ましくは6〜10である。R
7がアルキル基またはアリール基である場合、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が好ましく挙げられる。
【0063】
前記式(4)の有機基は、R
11〜R
13がそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリール基、アミノ基またはヒドロキシ基であるか、R
11とR
12が互いに結合して環を形成しているか、R
12とR
13が互いに結合して環を形成していることが好ましく、R
10およびR
14がそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリール基、アミド基またはヒドロキシ基であるものが好ましい。このようなスクアリリウム化合物は製造が比較的容易であり、置換基R
10〜R
14を適宜選択することで、最大吸収波長を所望の波長域に制御したり、溶媒への溶解性を高めることができる。中でも、スクアリリウム化合物のπ共役系を安定的に広範囲に広げることができる点から、R
12はアミノ基であることが好ましい。
【0064】
前記式(4)の有機基としては、下記式(4−1)で示される基であることが、好ましい実施態様の一つである。式(4−1)中、R
10〜R
11およびR
13〜R
14は上記に説明した通りであり、スクアリリウム化合物の安定性や製造容易性の点から、それぞれ独立して水素原子、アルキル基またはアリール基であることが好ましい。式(4−1)のR
15およびR
16はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、R
11とR
15、R
16とR
13、R
15とR
16はそれぞれ、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0066】
式(4−1)のR
11とR
15、R
16とR
13が互いに連結した環構造としては、炭素数2〜8の直鎖状アルキレン基の一方の末端が式(4−1)の窒素原子に結合し、他方の末端が式(4−1)のベンゼン環の炭素原子に結合した構造や、当該アルキレン基に含まれる−CH
2−の一部が−O−、−CO−、−S−、−NH−で置換された構造が挙げられる。式(4−1)のR
15とR
16が互いに連結した環構造としては、炭素数2〜8の直鎖状アルキレン基の両末端が式(4−1)の窒素原子に結合した構造や、当該アルキレン基に含まれる−CH
2−の一部が−O−、−CO−、−S−、−NH−で置換された構造が挙げられる。これらの環構造は、水素原子の一部が、例えばアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲノ基、水酸基、カルボキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基等によって置換されていてもよい。
【0067】
式(4)の有機基は、下記式(4−2)で示される基であることも好ましい。式(4−2)中、R
10〜R
11およびR
14〜R
15は上記に説明した通りである。式(4−2)のR
17〜R
20はそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲノ基、水酸基、カルボキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基またはスルホ基を表し、好ましくは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状アルキル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜10のアリール基)、ハロゲノ基、カルボキシ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)または水酸基である。オキソカーボン系化合物が式(4−2)で示される基を有していれば、アミノ基がベンゼン環と縮環した構造のため分子の平面性が高く、分子どうしが集合したときに規則的に集まった結晶性の高い集合体構造を取りやすくなる。
【0069】
式(3)または式(4)の有機基を有するオキソカーボン系化合物は、ピロール環含有化合物やベンゼン環含有化合物を、スクアリン酸またはクロコン酸と反応させる公知の合成手法を適宜採用することによって合成できる。スクアリリウム化合物であれば、例えば、次の論文に記載の合成法によって合成することができる:Serguei Miltsov et al., “New Cyanine Dyes:Norindosquarocyanines”, Tetrahedron Letters, Vol.40, Issue 21, p.4067-4068 (1999)。クロコニウム化合物であれば、例えば、特開2002−286931号公報、特開2007−31644号公報、特開2007−31645号公報、特開2007−169315号公報に記載されている方法によって合成することができる。
【0070】
上記の反応により得られたオキソカーボン系化合物は、必要に応じて、ろ過、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、アルミナカラムクロマトグラフィー、昇華、再結晶、晶析など公知の精製手段によって適宜精製することができる。得られたオキソカーボン系化合物の化学構造は、質量分析法、単結晶X線構造解析法、フーリエ変換赤外分光法、核磁気共鳴分光法などの公知の分析方法により解析することができる。
【0071】
第1の樹脂層に含まれる近赤外線吸収色素の量は、所望の光学性能に応じて適宜調整すればよいが、例えば、第1の樹脂層100質量%中、近赤外線吸収色素の含有量は0.01質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.8質量%以上がさらに好ましく、また25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。第1の樹脂層中に近赤外線吸収色素としてオキソカーボン系化合物が含まれる場合は、オキソカーボン系化合物の含有量が上記範囲にあることが好ましい。また、第1の樹脂層中にオキソカーボン系化合物と他の近赤外線吸収色素が含まれる場合は、オキソカーボン系化合物と他の近赤外線吸収色素との合計含有量が上記範囲にあることが好ましい。
【0072】
第1の樹脂層中にオキソカーボン系化合物と他の近赤外線吸収色素が含まれる場合、他の近赤外線吸収色素の含有量は、オキソカーボン系化合物と他の近赤外線吸収色素の合計100質量%に対し、60質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは、他の近赤外線吸収色素を実質的に含まないことである。
【0073】
第2の樹脂層は、少なくとも樹脂を含有していればよい。第2の樹脂層は、第1の樹脂層に含まれる近赤外線吸収色素の分解を抑制するために設けられ、そのために、第2の樹脂層は酸素透過率が低く設定されている。具体的には、第2の樹脂層は、JIS K 7126−2法に従って測定した23℃、ドライ条件での酸素透過率が100cc/m
2/day以下となっている。酸素透過率の低い第2の樹脂層を第1の樹脂層に積層することにより、第1の樹脂層に含まれる近赤外線吸収色素が酸素と接する機会が減少し、第1の樹脂層に含まれる近赤外線吸収色素の分解を抑えることができる。第2の樹脂層の酸素透過率は、70cc/m
2/day以下が好ましく、50cc/m
2/day以下がより好ましく、35cc/m
2/day以下がさらに好ましい。第2の樹脂層の酸素透過率の下限は特に限定されず、0cc/m
2/dayであってもよい。なお、酸素透過率の測定は、試験片を挟んだ一方側のチャンバに酸素ガスを導入し、他方側のチャンバに窒素ガスを導入して行う。
【0074】
第2の樹脂層の酸素透過率は、第2の樹脂層を構成する樹脂の種類を適切に選択したり、第2の樹脂層の厚みを厚くすることにより、低減することができる。また第2の樹脂層として、無機蒸着樹脂層(無機蒸着フィルム)を用いても、酸素透過率を下げることができる。例えば、樹脂層に酸化アルミニウムや酸化ケイ素等の金属酸化物や炭素(アモルファスカーボン等)の蒸着膜を形成したものを用いることにより、第2の樹脂層の酸素透過率を下げることができる。第2の樹脂層が無機蒸着樹脂層である場合は、第2の樹脂層の酸素透過率を低く抑えつつ、厚みを薄く形成することが可能となる。
【0075】
第2の樹脂層は、上記に説明したような近赤外線吸収色素も含有していてもよいが、第2の樹脂層の設置目的に鑑みれば、第2の樹脂層には近赤外線吸収色素が多く含まれないことが好ましく、特に酸素の存在下で分解しやすいオキソカーボン系化合物は多く含まれないことが好ましい。例えば、第2の樹脂層の近赤外線吸収色素の濃度は第1の樹脂層の近赤外線吸収色素の濃度の50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、第2の樹脂層が実質的に近赤外線吸収色素を含有しないことが特に好ましい。また、第2の樹脂層のオキソカーボン系化合物の濃度は第1の樹脂層のオキソカーボン系化合物の濃度の50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、第2の樹脂層が実質的にオキソカーボン系化合物を含有しないことが特に好ましい。
【0076】
第1および第2の樹脂層は、任意の有機微粒子または無機微粒子を含有してもよい。有機微粒子または無機微粒子は、例えば、樹脂層に、屈折率や導電性等に関する機能を付与するために用いられる。樹脂層の高屈折率化や導電性付与に有用な微粒子の具体例として、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、インジウムドープ酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。一方、樹脂層の低屈折率化に有用な微粒子の具体例として、フッ化マグネシウム、シリカ、中空シリカ等が挙げられる。防眩性付与に有用な微粒子の具体例としては、上記の微粒子に加え、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン等の無機微粒子:シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアミン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂及びこれらの共重合樹脂等の有機微粒子が挙げられる。樹脂層は、これらの微粒子を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
【0077】
樹脂層には、必要に応じて、可塑剤、界面活性剤、分散剤、表面張力調整剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、比抵抗調整剤、pH調整剤、密着性向上剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。また、樹脂層には、樹脂層を構成する樹脂を硬化させるための硬化触媒や硬化速度調整剤が含まれていてもよい。
【0078】
樹脂層は、少なくとも樹脂成分を含有する樹脂組成物から形成することができる。第1の樹脂層は、さらに近赤外線吸収色素を含有する樹脂組成物から形成することができる。樹脂組成物は、射出成形等の成形に用いることのできる熱可塑性樹脂組成物であってもよく、スピンコート法や溶媒キャスト法等により塗工できるよう塗料化された樹脂組成物であってもよい。樹脂成分としては、重合が完結した樹脂のみならず、樹脂原料(樹脂の前駆体、当該前駆体の原料、樹脂を構成する単量体等を含む)であって、樹脂組成物を成形する際に重合反応または架橋反応して樹脂に組み込まれるものも用いることができる。
【0079】
樹脂組成物が熱可塑性樹脂組成物である場合は、当該樹脂組成物を、射出成形、押出成形、真空成形、圧縮成形、ブロー成形等をすることにより樹脂層を形成することができる。この方法では、樹脂成分として熱可塑性樹脂を用い、必要に応じて当該熱可塑性樹脂に近赤外線吸収色素を配合し、加熱成形することにより、樹脂層を形成することができる。例えば、ベース樹脂の粉体またはペレットに必要に応じて近赤外線吸収色素を添加し、150℃〜350℃程度に加熱し、溶解させた後、成形するとよい。また樹脂を混練する際に、必要に応じて各種添加剤を加えてもよい。第1の樹脂層と第2の樹脂層を同時に加熱成形する場合は、第1の樹脂層を与える樹脂組成物と第2の樹脂層を与える樹脂組成物とを共押出成形してもよい。
【0080】
樹脂組成物が塗料化された樹脂組成物である場合は、液状またはペースト状の樹脂組成物を基板(例えば、第1または第2の樹脂層、その他の樹脂板、ガラス板等)上に塗工することで、基板上に樹脂層を形成することができる。近赤外線吸収色素を含有する塗料化された樹脂組成物としては、例えば、樹脂を含む溶媒(溶剤)に近赤外線吸収色素を溶解させたものや、近赤外線吸収色素を数μm以下に微粒化して樹脂のエマルジョン中に分散したもの等が挙げられる。塗料化された樹脂組成物の塗工方法としては、スピンコート法、溶媒キャスト法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法等が好適に用いられる。
【0081】
樹脂組成物は、溶媒(溶剤)を含有するものであってもよく、例えば、樹脂組成物が塗料化された樹脂組成物である場合は、溶媒を含むことにより樹脂組成物の塗工が容易になる。溶媒としては、有機溶剤を用いることが好ましく、例えば、メチルエチルケトン(2−ブタノン)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、シクロヘキサノン等のケトン類;PGMEA(2−アセトキシ−1−メトキシプロパン)、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体(エーテル化合物、エステル化合物、エーテルエステル化合物等);N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;N−メチル−ピロリドン(具体的には、1−メチル−2−ピロリドン等)等のピロリドン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;等が挙げられる。
【0082】
溶媒の含有量としては、樹脂組成物100質量%中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、また100質量%未満が好ましく、95質量%以下がより好ましい。溶媒の含有量をこのような範囲内に調整することにより、近赤外線吸収色素濃度の高い樹脂組成物を得ることが容易になる。
【0083】
第1の樹脂層と第2の樹脂層のそれぞれの厚みは特に限定されず、各樹脂層の所望の性能や強度に応じて適宜調整すればよい。各樹脂層の厚みは、例えば、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上がさらに好ましく、また500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。基板上に塗料化された樹脂組成物を塗工するなどして樹脂層を形成する場合は、基板によって光選択吸収樹脂積層体の強度を確保することができるため、樹脂層の厚みをさらに薄くすることができる。基板上に樹脂層を形成する場合の樹脂層の厚みは、例えば100μm以下であってもよく、50μm以下であってもよく、30μm以下であってもよい。第1の樹脂層は、所望の光選択吸収性能を発揮させることが可能であれば、比較的厚みを薄く形成することができ、その厚みは0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、また30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。第2の樹脂層の厚みは、酸素透過率を低く抑えることが容易な点から、6μm以上が好ましく、8μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。
【0084】
第1の樹脂層と第2の樹脂層は、これらの間に接着層を設けることによって密着性を高めてもよい。接着層は公知の接着剤から形成することができ、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、およびこれらの複合樹脂を用いて形成することができる。これらの樹脂は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。例えば接着層をウレタン樹脂から形成する場合は、ウレタン樹脂を形成するポリイソシアネートとポリオールの種類は特に限定されず、ポリオールは、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等のいずれを用いてもよい。
【0085】
接着層の厚みは特に限定されず、例えば、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましく、また50μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。
【0086】
接着層の形成方法は限定されず、公知の方法に従えばよい。接着層は、例えば、接着性を有する樹脂を含有する接着剤組成物を第1の樹脂層および/または第2の樹脂層に塗布して、当該組成物の塗布膜を形成した後、形成した塗布膜を乾燥させることにより形成することができる。その後、第1の樹脂層と第2の樹脂層を接着層を介して貼り合わせることで、第1の樹脂層と接着層と第2の樹脂層とを有する積層構造を形成することができる。
【0087】
光選択吸収樹脂積層体は、第2の樹脂層が第1の樹脂層よりも受光側に位置するように形成することが好ましい。すなわち、第2の樹脂層の透過光が第1の樹脂層を透過するように各層が配置されることが好ましい。
【0088】
第1の樹脂層は、一方側の面と他方側の面の両方が酸素透過率の低い層によって覆われていることが好ましい。例えば、光選択吸収樹脂積層体は、第1の樹脂層の両側面に第2の樹脂層が設けられた積層構造や、第1の樹脂層の一方側の面に第2の樹脂層が設けられ、他方側の面にガラス基板が設けられた積層構造を有することが好ましい。
【0089】
第1の樹脂層に含まれる近赤外線吸収色素の分解を抑える観点からは、光選択吸収樹脂積層体を構成する少なくとも1つの層に紫外線吸収剤が含まれていることが好ましい。より好ましくは第1の樹脂層以外の層に紫外線吸収剤が含まれる。紫外線吸収剤は、例えば、第2の樹脂層や、光選択吸収樹脂積層体が接着層を有する場合は接着層に含まれることが好ましい。
【0090】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、サリシケート系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、4−n−オクチルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。サリシケート系化合物としては、例えば、フェニルサリチレート、p−t−ブチルフェニルサリシケート等が挙げられる。ベンゾエート系化合物としては、例えば、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
【0091】
トリアゾール系化合物としては、例えば、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(t−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0092】
トリアジン系化合物は、例えば、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0093】
紫外線吸収剤は、市販の物質を用いてもよく、例えば、ADEKA社製のアデカスタブ(登録商標)シリーズや、BASF社製のチヌビン(登録商標)シリーズ等を用いることができる。
【0094】
紫外線吸収剤の含有量は所望する性能に応じて適宜調整すればよいが、紫外線吸収剤を含有する層100質量%中、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、また30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0095】
本発明の光選択吸収樹脂積層体は、第1の樹脂層、第2の樹脂層、接着層、ガラス基板以外に、他の層(膜)を有していてもよい。他の層(膜)としては、誘電体多層膜、防眩性を有する層、傷付き防止性能を有する層、金属膜、その他の機能を有する透明基材等が挙げられる。
【0096】
本発明の光選択吸収樹脂積層体は、高い耐光性を有するため、近赤外線を選択的に吸収する樹脂積層体として様々な用途に用いることができる。例えば、近赤外線を吸収・カットする機能を有する半導体受光素子用の光学フィルター、省エネルギー用に熱線を遮断する近赤外線吸収フィルムや近赤外線吸収板、セキュリティーインクや不可視バーコードインクとしての情報表示材料、可視光および近赤外光を利用した太陽電池用材料、プラズマディスプレイパネル(PDP)やCCD用の特定波長吸収フィルター;レーザー溶着用の光熱変換材料、加圧や加熱による不具合の生じにくい光を利用した光定着法用材料(フラッシュ定着法用の静電荷現像用トナー)等に用いることができる。
【0097】
光選択吸収樹脂積層体の厚みは、例えば、1mm以下であることが好ましい。これにより、光選択吸収樹脂積層体を撮像素子に適用した場合などに、撮像素子の小型化への要請に十分に応えることができる。光選択吸収樹脂積層体の厚みは、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは300μm以下、さらにより好ましくは150μm以下であり、また30μm以上が好ましく、50μm以上がさらに好ましい。
【実施例】
【0098】
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0099】
(1)近赤外線吸収色素の合成
(1−1)クロコニウムAの合成
特願2016−034756号に記載の合成例2に従い、近赤外線吸収色素として、下記の表1に示すクロコニウムAを合成した。
【0100】
(1−2)スクアリリウムAの合成
特開2016−74649号公報に記載の実施例1−18に従い、近赤外線吸収色素として、下記の表1に示すスクアリリウムAを合成した。
【0101】
(1−3)スクアリリウムBの合成
特開2016−74649号公報に記載の実施例1−10に従い、近赤外線吸収色素として、下記の表1に示すスクアリリウムBを合成した。
【0102】
(1−4)スクアリリウムCの合成
特願2016−176990号に記載の調製例4に従い、近赤外線吸収色素として、下記の表1に示すスクアリリウムCを合成した。
【0103】
【表1】
【0104】
(2)樹脂積層体の作製
(2−1)製造例1
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ユーピロン(登録商標)E−2000)を2質量部、クロコニウムAを0.02質量部、クロロホルム18質量部を混合して、色素含有樹脂組成物を得た。この色素含有樹脂組成物を、ガラス基板上に300μmのアプリケーターを用いて塗布後、50℃で乾燥し、約20μm膜厚の第1の樹脂層を形成した。ガラス基板上に形成した第1の樹脂層の上に、エステルウレタン樹脂溶液系接着剤(大日精化工業社製、セイカボンド(登録商標)A−601E)1.8質量部、イソシアネート系硬化剤(大日精化工業社製、セイカボンド(登録商標)C−84)0.3質量部、酢酸エチル8.4質量部からなる接着剤組成物をスピンコーターにて塗布後、90℃で乾燥し、約1μmの接着層を形成した。このように形成した接着層の上に、第2の樹脂層として、厚み50μm、酸素透過率27cc/m
2/dayのPETフィルム(東レ社製、ルミラーS10)を載せて、ニップロール温度70℃でラミネートすることにより、樹脂積層体1を作製した。
【0105】
(2−2)製造例2
製造例1において、第2の樹脂層として、厚み100μm、酸素透過率15cc/m
2/dayのPETフィルム(東レ社製、ルミラーT60)を用いた以外は、製造例1と同様にして樹脂積層体2を作製した。
【0106】
(2−3)製造例3
製造例1において、第2の樹脂層として、厚み12μm、酸素透過率2.1cc/m
2/dayの酸化アルミニウム蒸着PETフィルム(東レ社製、バリアロックス1011HG;表2では「Al蒸着PET」と表記)を用いた以外は、製造例1と同様にして樹脂積層体3を作製した。
【0107】
(2−4)製造例4
製造例1において、接着剤組成物として、エステルウレタン樹脂溶液系接着剤(大日精化工業社製、セイカボンド(登録商標)A−601E)1.8質量部、イソシアネート系硬化剤(大日精化工業社製、セイカボンド(登録商標)C−84)0.3質量部、酢酸エチル8.4質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF社製、チヌビンP)0.25質量部からなる接着剤組成物を用いた以外は、製造例1と同様にして樹脂積層体4を作製した。
【0108】
(2−5)製造例5
製造例4において、第2の樹脂層として、厚み100μm、酸素透過率15cc/m
2/dayのPETフィルム(東レ社製、ルミラーT60)を用いた以外は、製造例4と同様にして樹脂積層体5を作製した。
【0109】
(2−6)製造例6
製造例4において、第2の樹脂層として、厚み12μm、酸素透過率2.1cc/m
2/dayの酸化アルミニウム蒸着PETフィルム(東レ社製、バリアロックス1011HG;表2では「Al蒸着PET」と表記)を用いた以外は、製造例4と同様にして樹脂積層体6を作製した。
【0110】
(2−7)製造例7
製造例2において、色素含有樹脂組成物として、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ユーピロン(登録商標)E−2000)を2質量部、クロコニウムAを0.02質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF社製、チヌビンP)0.02質量部、クロロホルム18質量部を混合して得られたものを用いた以外は、製造例2と同様にして樹脂積層体7を作製した。
【0111】
(2−8)製造例8
製造例7で調製した色素含有樹脂溶液を、ガラス基板上に300μmのアプリケーターを用いて塗布後、50℃で乾燥し、約20μm膜厚の樹脂層を形成し、これを樹脂積層体8とした。
【0112】
(2−9)製造例9
製造例1で調製した色素含有樹脂溶液を、ガラス基板上に300μmのアプリケーターを用いて塗布後、50℃で乾燥し、約20μm膜厚の樹脂層を形成し、これを樹脂積層体9とした。
【0113】
(2−10)製造例10
製造例5において、クロコニウムAの代わりにスクアリリウムAを用いた以外は、製造例5と同様にして樹脂積層体10を得た。
【0114】
(2−11)製造例11
製造例9において、クロコニウムAの代わりにスクアリリウムAを用いた以外は、製造例9と同様にして樹脂積層体11を得た。
【0115】
(2−12)製造例12
製造例5において、クロコニウムAの代わりにスクアリリウムBを用いた以外は、製造例5と同様にして樹脂積層体12を得た。
【0116】
(2−13)製造例13
製造例9において、クロコニウムAの代わりにスクアリリウムBを用いた以外は、製造例9と同様にして樹脂積層体13を得た。
【0117】
(2−14)製造例14
製造例5において、クロコニウムAの代わりにスクアリリウムCを用いた以外は、製造例5と同様にして樹脂積層体14を得た。
【0118】
(2−15)製造例15
製造例9において、クロコニウムAの代わりにスクアリリウムCを用いた以外は、製造例9と同様にして樹脂積層体15を得た。
【0119】
(2−16)製造例16
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ユーピロン(登録商標)E−2000)を2質量部、クロコニウムAを0.02質量部、光安定化剤(ADEKA社製、アデカスタブ(登録商標)LA−57)を0.02質量部、クロロホルム18質量部を混合して、色素含有樹脂組成物を得た。この色素含有樹脂組成物を、ガラス基板上に300μmのアプリケーターを用いて塗布後、50℃で乾燥し、約20μm膜厚の樹脂層を形成し、これを樹脂積層体16とした。
【0120】
(2−17)製造例17
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ユーピロン(登録商標)E−2000)を2質量部、クロコニウムAを0.02質量部、酸化防止剤としてADEKA社製のアデカスタブ(登録商標)PEP−36とアデカスタブ(登録商標)AO−412Sと住友化学社製のスミライザー(登録商標)GA−80をそれぞれ0.01質量部、クロロホルム18質量部を混合して、色素含有樹脂組成物を得た。この色素含有樹脂組成物を、ガラス基板上に300μmのアプリケーターを用いて塗布後、50℃で乾燥し、約20μm膜厚の樹脂層を形成し、これを樹脂積層体17とした。
【0121】
(2−18)製造例18
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ユーピロン(登録商標)E−2000)を2質量部、クロコニウムAを0.02質量部、光安定化剤としてビス(ジチオベンジル)ニッケル(II)を0.02質量部、クロロホルム18質量部を混合して、色素含有樹脂組成物を得た。この色素含有樹脂組成物を、ガラス基板上に300μmのアプリケーターを用いて塗布後、50℃で乾燥し、約20μm膜厚の樹脂層を形成し、これを樹脂積層体18とした。
【0122】
(2−19)製造例19
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ユーピロン(登録商標)E−2000)を2質量部、クロコニウムAを0.02質量部、酸化防止剤としてβ−カロテンを0.02質量部、クロロホルム18質量部を混合して、色素含有樹脂組成物を得た。この色素含有樹脂組成物を、ガラス基板上に300μmのアプリケーターを用いて塗布後、50℃で乾燥し、約20μm膜厚の樹脂層を形成し、これを樹脂積層体19とした。
【0123】
(2−20)製造例20
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ユーピロン(登録商標)E−2000)を2質量部、クロコニウムAを0.02質量部、光安定化剤として7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンを0.02質量部、クロロホルム18質量部を混合して、色素含有樹脂組成物を得た。この色素含有樹脂組成物を、ガラス基板上に300μmのアプリケーターを用いて塗布後、50℃で乾燥し、約20μm膜厚の樹脂層を形成し、これを樹脂積層体20とした。
【0124】
(3)分析・試験方法
(3−1)酸素透過率
酸素透過率測定装置(イリノイ社製、Model8001)を用いて、JIS K 7126−2法に従い、23℃、ドライ条件で、第2の樹脂層に用いたPETフィルムと酸化アルミニウム蒸着PETフィルムの酸素透過率をそれぞれ測定した。酸素透過率の測定は、各フィルムを挟んだ一方側のチャンバに酸素ガスを導入し、他方側のチャンバに窒素ガスを導入して行った。
【0125】
(3−2)耐光性試験
キセノンウェザーメーター(スガ試験機社製、X75SC)を用いて、60W/m
2、53℃60%RHの条件で各樹脂積層体に24時間光照射し、耐光性試験を行った。各樹脂積層体の試験前後の吸光度を分光光度計(島津製作所社製、UV−1800)にて計測し、波長400nm〜1100nmの範囲における最大吸収波長の吸光度を求め、試験前後での吸光度保持率を算出した。
【0126】
(4)結果
製造例1〜20で作製した樹脂積層体1〜20の耐光性試験の結果を表2に示す。近赤外線吸収色素としていずれの色素を用いた場合も、酸素透過率が100cc/m
2/day以下の第2の樹脂層を設けることにより、第2の樹脂層を設けない場合よりも耐光性試験24時間後の吸光度保持率が向上した(樹脂積層体1〜3、9〜15)。その上でさらに紫外線吸収剤を接着層または第1の樹脂層に添加することで、吸光度保持率はさらに高くなった(樹脂積層体4〜7)。一方、第2の樹脂層を設けない場合は、耐光性添加剤として紫外線吸収剤、光安定化剤または酸化防止剤を第1の樹脂層に添加しても、第2の樹脂層を設けた場合と比べて、吸光度保持率の大きな改善は見られなかった(樹脂積層体8、16〜20)。
【0127】
【表2】