特許第6796460号(P6796460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796460
(24)【登録日】2020年11月18日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】透明導電性フィルムおよびタッチパネル
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20201130BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20201130BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20201130BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20201130BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   H01B5/14 A
   B32B27/38
   B32B7/025
   G02F1/1333
   G06F3/041 400
   G06F3/041 495
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-221744(P2016-221744)
(22)【出願日】2016年11月14日
(65)【公開番号】特開2018-79584(P2018-79584A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久登
(72)【発明者】
【氏名】松本 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】岩松 祥平
【審査官】 橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−229392(JP,A)
【文献】 特開2010−269504(JP,A)
【文献】 特開2016−112704(JP,A)
【文献】 特開2015−103480(JP,A)
【文献】 特開平09−039151(JP,A)
【文献】 特開平09−123333(JP,A)
【文献】 特開平04−099620(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/059925(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B5/00−5/16
B32B1/00−43/00
G02F1/1333
G06F3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂フィルム、硬化樹脂層および透明導電層をこの順に備え、
前記硬化樹脂層は、重量平均分子量が3000以上のゴム変性エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物を硬化してなる硬化物膜であり、
前記樹脂組成物における前記ゴム変性エポキシ樹脂の含有量は、20重量%以上であり、
前記硬化樹脂層は、20nm以上の厚さを有することを特徴とする、透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記硬化樹脂層の厚みが、150nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、硬化促進剤を含有し、前記硬化促進剤が、アンチモンを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記透明樹脂フィルムに対する前記硬化樹脂層の密着力が、50N/25mm以上であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
前記透明導電層を温度85℃、湿度85%の雰囲気下に240時間置いた前後での表面抵抗値の変化率が1.5以下であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の透明導電性フィルムを備えることを特徴とする、タッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルム、および、それを備えるタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像表示装置は、インジウムスズ複合酸化物(ITO)などからなる透明配線層が形成されたタッチパネル用フィルムを備えることが知られている。タッチパネル用フィルムは、一般的に、ITO層を透明基材に積層した透明導電性フィルムにおいて、ITO層を配線パターンにパターン加工することにより製造される。また、スマートフォンやタブレットなどの携帯端末用途では、薄さや重量の観点から、透明基材としてプラスチックフィルムなどの透明樹脂フィルムが用いられている。
【0003】
このような透明導電性フィルムとしては、透明樹脂フィルムの一方の面に、少なくとも1層の硬化樹脂層を介してパターン化(パターニング)された透明導電層(ITO層)を有する透明導電性フィルムが提案されている。特許文献1には、そのような透明導電性フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−76432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、透明導電性フィルムは、搬送やパターン加工などの際に、透明導電性フィルムの表面にクラックが発生し、そのクラックが白く視認される不具合が生じている。
【0006】
この原因を本願発明者らが検討したところ、透明樹脂フィルムと硬化樹脂層との界面が剥離してしまい、硬化樹脂層が、透明樹脂フィルムに対して歪んだり、盛り上がるように変形し、そのような変形に透明導電層が追従でしきれなくってクラックが発生しているという知見を見出した。
【0007】
また、透明導電性フィルムは、その端部に、フレキシブル配線回路基板を接続するが、その接続部では力学的な負荷がかかる。そのため、透明樹脂フィルムと、硬化樹脂層や透明導電層との界面に剥離が生じるおそれもある。
【0008】
したがって、透明樹脂フィルムと硬化樹脂層との密着性が良好な透明導電フィルムが要望されている。
【0009】
本発明は、透明樹脂フィルムと硬化樹脂層との間の密着性が優れた透明導電性フィルムおよびその透明導電性フィルムを備えるタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明[1]は、透明樹脂フィルム、硬化樹脂層および透明導電層をこの順に備え、前記硬化樹脂層は、重量平均分子量が3000以上のエポキシ樹脂を含有する樹脂組成物を硬化してなる硬化物膜である、透明導電性フィルムを含んでいる。
【0011】
本発明[2]は、前記硬化樹脂層の厚みが、150nm以下である、[1]に記載の透明導電性フィルムを含んでいる。
【0012】
本発明[3]は、前記エポキシ樹脂が、ゴム変性エポキシ樹脂である、[1]または[2]に記載の透明導電性フィルムを含んでいる。
【0013】
本発明[4]は、前記樹脂組成物が、硬化促進剤を含有し、前記硬化促進剤が、アンチモンを含有する、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の透明導電性フィルムを含んでいる。
【0014】
本発明[5]は、前記透明樹脂フィルムに対する前記硬化樹脂層の密着力が、50N/25mm以上である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の透明導電性フィルムを含んでいる。
【0015】
本発明[6]は、前記透明導電層を温度85℃、湿度85%の雰囲気下に240時間置いた前後での表面抵抗値の変化率が1.5以下である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の透明導電性フィルムを含んでいる。
【0016】
本発明[7]は、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の透明導電性フィルムを備える、タッチパネルを含んでいる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の透明導電性フィルムは、透明樹脂フィルム、硬化樹脂層および透明導電層をこの順に備え、硬化樹脂層は、重量平均分子量が3000以上のエポキシ樹脂を含有する樹脂組成物を硬化してなる硬化物膜である。このため、透明樹脂フィルムと硬化樹脂層との密着性に優れる。よって、搬送やパターン加工などの際に、透明樹脂フィルムの表面にクラックが発生することを抑制することができ、また、フレキシブル配線回路基板と接続した際に、接合部での剥離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の透明導電性フィルムの第1実施形態の断面図を示す。
図2図2は、本発明の透明導電性フィルムの第1実施形態の変形例(透明導電層がパターニングされている形態)の断面図を示す。
図3図3は、本発明の透明導電性フィルムの第1実施形態の変形例(透明樹脂フィルムに透明基体が貼り合わされている形態)の断面図を示す。
図4図4は、本発明の透明導電性フィルムの第2実施形態の断面図を示す。
図5図5は、本発明の透明導電性フィルムの第3実施形態の断面図を示す。
図6図6は、樹脂硬化層の密着力を測定する試験の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について、図を参照しながら以下に説明する。図1において、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向、第1方向)であって、紙面上側が、上側(厚み方向一方側、第1方向一方側)、紙面下側が、下側(厚み方向他方側、第1方向他方側)である。また、紙面左右方向および奥行き方向は、上下方向に直交する面方向である。他の図も、図1と同様である。
【0020】
<第1実施形態>
(透明導電性フィルム)
図1は、本発明の透明導電性フィルムの第一実施形態である透明導電性フィルム10を示す。図1に示す透明導電性フィルム10は、透明樹脂フィルム1、硬化樹脂層2および透明導電層3をこの順に備える。具体的には、透明導電性フィルム10は、透明樹脂フィルム1と、透明樹脂フィルム1の上面(厚み方向一方面)に配置される硬化樹脂層2と、硬化樹脂層2の上面に配置される透明導電層3とを備える。透明導電性フィルム10は、好ましくは、透明樹脂フィルム1と、硬化樹脂層2と、透明導電層3とからなる。
【0021】
(透明樹脂フィルム)
透明樹脂フィルム1としては特に制限されないが、透明性および可撓性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。例えば、その材料として、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレートなど)、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリシクロオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。好ましくは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が挙げられ、より好ましくは、ポリエステル系樹脂が挙げられる。
【0022】
透明樹脂フィルム1の厚みは特に限定されないが、例えば、5μm以上、好ましくは、20μm以上、より好ましくは、40μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、130μm以下である。
【0023】
透明樹脂フィルム1には、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、この上に設けられる硬化樹脂層2の透明樹脂フィルム1に対する密着性をさらに向上させるようにしてもよい。また、硬化樹脂層2を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化してもよい。
【0024】
(硬化樹脂層)
硬化樹脂層2は、重量平均分子量が3000以上のエポキシ樹脂(以下、「高分子量エポキシ樹脂」ともいう。)を含有する樹脂組成物が硬化した硬化物膜である。高分子量エポキシ樹脂は、樹脂組成物の主成分であることが好ましい。主成分とは、樹脂組成物に含まれる成分のうち含有量が最大の成分のことをいい、その含有量は樹脂組成物の合計量に対して20重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましく、60重量%以上が特に好ましい。
【0025】
高分子量エポキシ樹脂としては、広く一般的に用いられているものを使用することができ、グリシジル基、脂環式エポキシ基、脂肪族エポキシ基などのエポキシ基を分子中に1つ以上、好ましくは2つ以上有するエポキシ基含有化合物を使用することができる。具体的には、例えば、エピクロルヒドリン−ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリン−ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、p−オキシ安息香酸−グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、III−アミノフェノール系エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、多価アルコール(グリセリンなど)のグリシジルエーテル、ヒダントイン型エポキシ樹脂、エポキシ基含有ポリシロキサン、不飽和重合体(石油樹脂など)のエポキシ化物等から構成されるエポキシ樹脂うち重量平均分子量が3000以上のエポキシ樹脂が挙げられる。高分子量エポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
高分子量エポキシ樹脂の重量平均分子量は3000以上であればよく、3300以上が好ましい。なお、上記重量平均分子量の上限は、得られる硬化樹脂層の過度の硬化による脆化抑制の観点から、5000が好ましく、4000がより好ましい。エポキシ樹脂の重量平均分子量を上記範囲とすることで、透明樹脂フィルム1との密着力が高い硬化樹脂層2を形成することができる。
【0027】
なお、本明細書において、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ、TOSOH製、HLC−8320GPC)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値である。測定の条件は以下の通りである。カラム:SHODEXGPC KF−802.5(内径8.0mm×長さ300mm)/GPC KF−G(内径4.6mm×長さ10mm)、溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、注入濃度:0.05重量%、流量:1mL/min、検出器:示差屈折計(RI)、カラム温度:40℃、注入量:2mL
【0028】
高分子量エポキシ樹脂は、ゴム変性エポキシ樹脂であることが好ましい。これにより、硬化樹脂層2において、透明樹脂フィルム1との密着性を向上させつつ、耐湿熱性、耐薬品性およびオリゴマー滲出抑制性を好適に付与することができる。エポキシ樹脂を変性するためのゴム成分としては特に限定されず、例えば、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム等の共役ジエン系ゴム;エチレン−プロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム等が挙げられる。中でも、上記観点から、共役ジエン系ゴム変性が好ましく、ブタジエンゴム変性、ブチルゴム変性、アクリロニトリルブタジエンゴム変性がより好ましい。ゴム変性エポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
ゴム変性エポキシ樹脂の調製方法は従来公知の方法を採用することができ、例えば、ゴム成分のポリマー主鎖の末端にカルボキシル基を導入し、このカルボキシル基とエポキシ樹脂のエポキシ基とをリン系触媒やアミン系触媒等の触媒存在下にて反応させる方法等が挙げられる。
【0030】
高分子量エポキシ樹脂とともに、上記列挙したエポキシ樹脂のうち重量平均分子量が3000未満のエポキシ樹脂(以下、「低分子量エポキシ樹脂」ともいう。)を用いることができる。低分子量エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂が好ましい。脂環式エポキシ樹脂としては、公知のものを好適に採用することができ、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリル、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。低分子量エポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記樹脂組成物は、硬化促進剤を含有することが好ましい。これによりエポキシ樹脂の硬化反応を迅速かつ十分に進行させることができ、密着性、耐湿性および膜強度の高い硬化物膜を形成することができる。硬化促進剤としては特に限定されず、例えば、オクタン酸、ステアリン酸、アセチルアセトネート、ナフテン酸、サリチル酸等の有機酸と、亜鉛、銅、鉄、アンチモン等の金属とによる有機金属塩;金属キレート等が挙げられる。中でも、硬化促進剤はアンチモンを含有することが好ましい。アンチモン含有硬化促進剤は、樹脂組成物の硬化反応を迅速かつ十分に進行させることができ、より密着性および耐湿性が高く、より強固な硬化物膜を効率的に形成することができる。硬化促進剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
硬化促進剤の含有量は特に限定されないが、樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、例えば、0.01重量部以上、好ましくは、0.05重量部以上、より好ましくは、0.1重量部以上であり、また、例えば、5重量部以下、好ましくは、4重量部以下、より好ましくは、1重量部以下である。硬化促進剤の含有量が上記下限を下回ると、硬化促進効果が不十分となる場合がある。一方、硬化促進剤の含有量が上記上限を上回ると、硬化物が着色して色相が悪化する場合がある。
【0033】
樹脂組成物には、エポキシ樹脂のほか、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、シリコーン樹脂等を適宜配合してもよい。また、樹脂組成物には、各種の添加剤を加えることもできる。添加剤としては、例えば、レベリング剤、顔料、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、酸化防止剤、チクソトロピー化剤等が挙げられる。
【0034】
(硬化樹脂層の物性)
透明樹脂フィルム1に対する硬化樹脂層2の密着力は、50N/25mm以上である。上限は限定的でないが、例えば、100N/25mmである。硬化樹脂層2の密着力が、50N/25mm未満であると、密着力が不十分となり、透明導電性フィルム10の搬送や加工時において、透明樹脂フィルム1と硬化樹脂層2との間に剥離が生じて、硬化樹脂層2が変形し、透明導電層3にクラックが発生するおそれが生じる。
【0035】
密着力の測定方法は、例えば、透明導電性フィルム10を幅25mm×長さ70mmに切断し、続いて、切断した透明導電性フィルム10の透明導電層3を接着剤を介して基板に固定し、続いて、剥離試験機を用いて0.3mm/minの速度で180度の角度で透明導電性フィルム10を長さ方向に沿って引っ張ることにより、測定することができる。
【0036】
硬化樹脂層2は、透明樹脂フィルム1と透明導電層3の間に設けられるものであり、導電体層としての機能を有しないものである。即ち、硬化樹脂層2は、透明樹脂フィルム1と透明導電層3の間で絶縁できるように誘電体層として設けられる。従って、硬化樹脂層2は、通常、表面抵抗が、1×10Ω/□以上であり、好ましくは、1×10Ω/□以上、さらに好ましくは、1×10Ω/□以上である。なお、硬化樹脂層2の表面抵抗の上限は特にない。一般的には、硬化樹脂層2の表面抵抗の上限は、測定限界である1×1013Ω/□程度であるが、1×1013Ω/□を超えるものであってもよい。
【0037】
硬化樹脂層2の厚みは特に制限されるものではないが、密着性、耐湿熱性、透明樹脂フィルム1からのオリゴマー滲出抑制、光学特性の点から、例えば、150nm以下、好ましくは、100nm以下、より好ましくは、50nm以下であり、また、例えば、20nm以上、好ましくは、30nm以上である。
【0038】
なお、硬化樹脂層2は、2層以上から構成されていてもよく、その場合、各硬化樹脂層の厚みは、例えば、20nm以上、好ましくは、25nm以上であり、また、例えば、60nm以下、好ましくは、55nm以下である。
【0039】
本実施形態では、透明導電層3と硬化樹脂層2とを有することで、表示素子として見栄えが良好なものが得られる。かかる観点から、硬化樹脂層2の屈折率は、透明導電層3の屈折率と硬化樹脂層2の屈折率の差が、0.1以上を有するものが好ましい。透明導電層3の屈折率と硬化樹脂層2の屈折率の差は、0.1以上0.9以下、さらには、0.1以上0.6以下であるのが好ましい。なお、硬化樹脂層2の屈折率は、例えば、1.30以上、好ましくは、1.38以上、より好ましくは、1.40以上であり、また、例えば、2.50以下、好ましくは、2.30以下である。屈折率は、アッベ屈折率計により測定される。
【0040】
硬化樹脂層2の形成方法は特に限定されないが、コーティングによることが好ましい。まず、上記成分を配合した樹脂組成物を溶媒に均一に溶解または分散して、コーティング溶液を調製する。溶媒としては特に限定されず、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;などが挙げられる。溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
コーティング溶液の固形分濃度は、例えば、0.5重量%以上、好ましくは、1.0重量%以上、より好ましくは、1.5重量%以上であり、また、例えば、2.5重量%以下、好ましくは、2.0重量%以下、より好ましくは、1.9重量%以下である。
【0042】
硬化樹脂層2は、透明樹脂フィルム1上に、上記のコーティング溶液を塗布し、硬化させることにより形成される。
【0043】
コーティング溶液の塗布方法は、コーティング溶液及び塗装工程の状況に応じて適時選択することができ、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法やエクストルージョンコート法などが挙げられる。
【0044】
最後に、得られた塗膜を加熱硬化させることによって、硬化樹脂層2を形成することができる。加熱方法としては、例えば、熱風乾燥機、赤外線乾燥機、真空乾燥機、マイクロ波加熱乾燥機等による加熱を採用することができる。加熱温度としては、例えば、100℃以上、好ましくは、120℃以上であり、また、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。加熱時間としては、例えば、0.5分間以上、好ましくは、1分間以上であり、また、例えば、10分間以下、好ましくは、5分間以下である。
【0045】
(透明導電層)
透明導電層3の構成材料としては特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が挙げられる。金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。好ましくは、酸化スズを含有する酸化インジウム(インジウム−スズ複合酸化物:ITO)、アンチモンを含有する酸化スズなどが挙げられる。
【0046】
透明導電層3の厚みは特に制限されないが、その表面抵抗を1×10Ω/□以下の良好な導電性を有する連続被膜とするには、厚み10nm以上が好ましい。より好ましくは、15nm以上であり、さらに好ましくは、20nm以上であり、また、より好ましくは、35nm以下であり、さらに好ましくは、30nm以下である。厚みが15nm未満であると表面電気抵抗が高くなり、また、連続被膜になり難くなるおそれが生じる。また、35nmを超えると透明性が低下するおそれが生じる。
【0047】
透明導電層3は、上記の通り、硬化樹脂層2との屈折率の差が0.1以上であるものが好適である。透明導電層3の屈折率は、例えば、1.95以上、2.05以下である。
【0048】
透明導電層3の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法が挙げられる。また、必要とする層厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。
【0049】
透明導電層3を形成した後、必要に応じて、例えば、100〜150℃の範囲内で加熱処理を施して結晶化することができる。透明導電層3は、良好な電気特性の観点から、結晶質膜であることが好ましい。
【0050】
なお、透明導電層3が結晶質膜であることは、例えば、透明導電層3がITO層である場合は、20℃の塩酸(濃度5重量%)に15分間浸漬した後、水洗・乾燥し、15mm程度の間の端子間抵抗を測定することで判断できる。本明細書においては、透明導電性フィルム10を塩酸(20℃、濃度:5重量%)に浸漬・水洗・乾燥した後に、透明導電層3における15mm間の端子間抵抗が10kΩ未満である場合、透明導電層3が結晶質であるものとする。
【0051】
透明導電層3を温度85℃、湿度85%の雰囲気下で240時間置いた前後での透明導電層3の表面抵抗値の変化率は、1.5以下であることが好ましく、1.3以下であることがより好ましい。これにより、透明導電性フィルム10が過酷な環境下に置かれた場合であっても良好な電気特性を発揮することができ、これにより多様な用途展開を図ることができる。
【0052】
この透明導電性フィルム10によれば、透明樹脂フィルム1と硬化樹脂層2との密着性に優れる。そのため、搬送時やパターン加工時において、硬化樹脂層2と透明樹脂フィルム1との剥離を防止して、硬化樹脂層2の歪みや盛り上がりを抑制できる。その結果、硬化樹脂層2の上面にある透明導電層3のクラックの発生を抑制して、白化を防止することができる。また、配線回路基板と接合した場合であっても、接合部における剥離を抑制することができる。
【0053】
さらには、この透明導電性フィルム10は、耐湿熱性に優れる。すなわち、高温高湿環境下においても、抵抗率変化を抑制することができる。また、耐薬品性に優れる。すなわち、イソプロパノールやアルカリ溶液に対する硬化樹脂層2の膨潤や変形を抑制することができる。また、高温下における硬化樹脂層2のオリゴマー滲出も抑制することができる。
【0054】
(変形例)
図示しないが、透明樹脂フィルム1の透明導電層3が形成されている面と反対側の面には、必要に応じてハードコート層や易接着層、ブロッキング防止層等が設けられていてもよい。
【0055】
また、図2に示すように、透明導電層3は、パターニング(パターン加工)されていてもよい。パターニングは、各種態様を、透明導電性フィルム10が適用される用途に応じて、各種のパターンとして形成することができる。パターンの形状としては、例えば、ストライプ状等が挙げられる。
【0056】
パターニングでは、例えば、パターンを形成するためのマスクによって透明導電層3を被覆して、エッチング液により透明導電層3をエッチングする。エッチング液としては、酸が好適に用いられる。酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、およびこれらの混合物、ならびにそれらの水溶液が挙げられる。
【0057】
また、図3に示すように、本実施形態の透明導電性フィルム10の片面には、透明な粘着剤層4を介して透明基体5を貼り合わせることができる。すなわち、図3に示す透明導電性フィルム10は、図1に示す透明導電性フィルムの透明樹脂フィルム1(透明導電層3が設けられていない面)に透明な粘着剤層4を介して透明基体5が貼り合わされた構造の透明導電性フィルムである。透明基体5は、少なくとも2枚の透明な基体フィルムを透明な粘着剤層4により貼り合わせた複合構造であってもよい。なお、透明導電層3のパターニングは、かかる構造とした透明導電性フィルム10に対して実施することもできる。
【0058】
透明基体5の厚みは、例えば、90μm以上、好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、300μm以下、好ましくは、250μm以下である。また、透明基体5を形成する複数の基体フィルムにより形成する場合、各基体フィルムの厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、150μm以下であり、これら基体フィルムに透明な粘着剤層を含めた透明基体5としての総厚みが前記範囲に入るように制御される。基体フィルムとしては、前記した透明樹脂フィルム1と同様のものが挙げられる。
【0059】
粘着剤層4としては、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性及び接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0060】
この様な粘着剤層4を介して貼り合わされる透明基体5は、透明樹脂フィルム1に対して良好な機械的強度を付与し、ペン入力耐久性および面圧耐久性の他に、特に、カールなどの発生防止に寄与する。
【0061】
また、図3の仮想線に示すように、 また必要に応じて、透明基体5の外表面(粘着剤層4とは反対側の面)に、外表面の保護を目的としたハードコート層(樹脂層)6を設けてもよい。ハードコート層6としては、例えば、メラニン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬化型樹脂からなる硬化被膜が挙げられる。ハードコート層6の厚さとしては、0.1μm以上30μm以下が好ましい。厚さが0.1μm未満であると、硬度が不足する場合がある。また、厚さが30μmを超えると、ハードコート層6にクラックが発生したり、透明基体5全体にカールが発生する場合がある。
【0062】
(タッチパネル)
本実施形態の透明導電性フィルム10は、例えば、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネルに好適に適用できる。特に、静電容量方式のタッチパネルに好適である。具体的には、例えば、図2に示すパターニングした透明導電性フィルム10を保護ガラスなどの保護基材に配置することにより、タッチパネルとして用いる。また、本実施形態の透明導電性フィルムは、例えば、電気泳動方式、ツイストボール方式、サーマル・リライタブル方式、光書き込み液晶方式、高分子分散型液晶方式、ゲスト・ホスト液晶方式、トナー表示方式、クロミズム方式、電界析出方式などのフレキシブル表示素子に好適に利用できる。
【0063】
<第2実施形態>
第1実施形態では、透明樹脂フィルム1と透明導電層3の間に1層の硬化樹脂層2が設けられているのに対し、第2実施形態では、図4に示すように、硬化樹脂層2に加えて、その上側に無機物層9が設けられている。すなわち、第2実施形態では、透明樹脂フィルム1の側から硬化樹脂層2および無機物層9がこの順で設けられている。図4では、透明導電層3は、パターニングされていないが、パターニングされていてもよい。また、無機物層9は、パターニングされていてもよく、パターニングされていなくてもよい。
【0064】
上側の無機物層9の材料として、NaF(1.3)、NaAlF(1.35)、LiF(1.36)、MgF(1.38)、CaF(1.4)、BaF(1.3)、SiO(1.46)、LaF(1.55)、CeF(1.63)、Al(1.63)などの無機物〔上記各材料の括弧内の数値は光の屈折率である〕が挙げられる。これらのなかでも、好ましくは、SiO、MgF、A1などが挙げられ、特に好ましくは、SiOが挙げられる。上記の他、酸化インジウム100重量部に対して、酸化セリウムを10〜40重量部程度、酸化錫を0〜20重量部程度含む複合酸化物を用いることができる。
【0065】
無機物層9は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスとして、または、ウェット法(塗工法)などにより形成できる。ウェット法では、シリカゾル等を塗工することによりSiO膜を好適に形成することができる。
【0066】
図4では、硬化樹脂層2が2層からなる場合を例示しているが、例えば、図示しないが、硬化樹脂層2は3層以上であってもよい。
【0067】
<第3実施形態>
第3実施形態では、図5に示すように、透明樹脂フィルム1の両面に、硬化樹脂層2を介して、透明導電層3を有する。なお、図5に示す透明導電性フィルムは、両側の透明導電層3は、パターニングされていないが、パターニングされていてもよい。また、片側の透明導電層3のみがパターニングされていてもよい。
【実施例】
【0068】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0069】
実施例1
(硬化樹脂層の形成)
ゴム変性エポキシ樹脂(エポキシ樹脂骨格部分の重量平均分子量:3500)を主成分とするアデカフィルテラCRX−49を100重量部、アンチモン系硬化促進剤であるアデカフィルテラBUR−4Bを0.1重量部混合し、この混合物に対してメチルイソブチルケトンを5000重量部添加してコーティング溶液を調製した。厚みが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)からなる透明樹脂フィルムの一方の面に前記コーティング溶液を塗布し、塗膜を195℃で1分間で乾燥させることにより、厚みが30nmの硬化樹脂層(光の屈折率1.51)を形成した。
【0070】
(透明導電層の形成)
次に、硬化樹脂層上に、アルゴンガス98%と酸素ガス2%とからなる0.4Paの雰囲気中で、酸化インジウム90重量%、酸化スズ10重量%の焼結体材料を用いた反応性スパッタリング法により、厚み20nmのITO層(光の屈折率2.00)を形成して、透明導電性フィルムを得た。
【0071】
(ITO膜の結晶化)
140℃で90分間の加熱処理を実施してITO層を結晶化させ、実施例の透明導電性フィルムを作製した(図1参照)。
【0072】
比較例1
ゴム変性エポキシ樹脂(エポキシ樹脂骨格部分の重量平均分子量:2000)を主成分とするアデカフィルテラBUR−12Aを10重量部、アンチモン系硬化促進剤であるアデカフィルテラBUR−12Bを0.001重量部混合し、この混合物に対してメチルイソブチルケトンを5000重量部添加してコーティング溶液を調製した以外は、実施例1と同様にして、比較例の透明導電性フィルムを作製した。
【0073】
比較例2
アクリル変性エポキシ樹脂(エポキシ樹脂骨格部分の重量平均分子量:500)を主成分とするアデカフィルテラCRX−5を10重量部、亜鉛系硬化促進剤(アデカスタブ)を0.5重量部混合し、この混合物に対してメチルイソブチルケトンを5000重量部添加してコーティング溶液を調製した以外は、実施例1と同様にして、比較例の透明導電性フィルムを作製した。
【0074】
比較例3
変性処理をしていないエポキシ樹脂(重量平均分子量:500)を主成分とするアデカフィルテラCRX−3を10重量部、亜鉛系硬化促進剤(アデカスタブ)を0.5重量部混合し、この混合物に対してメチルイソブチルケトンを5000重量部添加してコーティング溶液を調製した以外は、実施例1と同様にして透明導電性フィルムを作製した。
【0075】
実施例および比較例の透明導電性フィルムについて、下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
(1)PETと硬化樹脂層との密着力
丸本ストルアス社製のエポフィックスキット(主剤・硬化剤)を使用し、主剤と硬化剤を重量比15:2で混合して、混合樹脂を得た。SUS基板に混合樹脂を滴下して、続いて、25mm×70mmにカットした実施例および比較例の透明導電性フィルムのITO面を混合樹脂と貼り合せた。その後、混合樹脂を硬化させるため、60℃で150分加熱した。これにより、図6に示すように、SUS基板7の上に接着剤(混合樹脂)8を介して透明導電性フィルム10が固定された密着力測定サンプルを得た。
【0077】
サンプルの透明導電性フィルム10を、剥離試験機(卓上型3連オートグラフ AG−50KNXD、島津製作所社製)を用いて、0.3m/minの速度で180°の角度で剥離した(図6参照)。剥離の際に発生する力を密着力として測定した。
【0078】
なお、装置の測定上限密着力値は50Nとなっているため、透明導電性フィルムが途中で破断して測定値が上限値を超えて測定不可となった場合は、「50N/25mm以上」とした。
【0079】
また、上記測定後において、SUS基板上のフィルムの残片形を確認した。残片形が、貼り合せた際の25mm×70mmのサイズの形状を維持していた場合は、「残片形維持」と評価し、そのサイズの形状を維持せずに、断片のみが残っていた場合は、「破断」と評価した。なお、「破断」では、透明導電性フィルムが界面剥離ではなく凝集破壊されており、PET層−硬化樹脂層間の密着力が良好であることが分かる。
【0080】
(2)耐湿熱性
ITO層の表面抵抗値(Ω/□)をJIS K7194(1994年)に準じて四端子法により測定し、これを初期の表面抵抗値Rとした。次いで、85℃、85%RHに設定した恒温恒湿機(エスペック社製、LHL−113)に240時間放置した際の表面抵抗値R240を測定した。これらより、抵抗変化率としてR240/Rを求めた。抵抗変化率が1.5以下であった場合を「○」、1.5を越えた場合を「×」として評価した。
【0081】
(3)耐溶剤性
ITO層がストライプ状にパターニングされた実施例および比較例の透明導電性フィルムを用いた(図2参照)。このパターニングされた透明導電フィルムを、イソプロパノールに25℃で10分間浸漬した後に取り出し、純水にて洗浄し、乾燥した。そのときの硬化樹脂層の表面を目視にて観察した。外観に変化がなかった場合を「○」、粗化ないし変色等の外観の変化がわずかに観察された場合を「△」、粗化ないし変色等の外観の変化が広範囲にわたって観察された場合を「×」として評価した。
【0082】
(4)アルカリ耐久性
パターニングされた透明導電性フィルムを、アルカリ溶液(5wt%)に50℃で5分間浸漬した後に取り出し、純水にて洗浄し、乾燥した。そのときの硬化樹脂層の表面を目視にて観察した。外観に変化がなかった場合を「○」、粗化ないし変色等の外観の変化がわずかに観察された場合を「△」、粗化ないし変色等の外観の変化が広範囲にわたって観察された場合を「×」として評価した。
【0083】
(5)オリゴマーの滲出の有無
パターニングされた透明導電性フィルムに対し160℃で2時間加熱処理を実施した。そのときの硬化樹脂層からのオリゴマーの滲出を目視にて確認した。オリゴマーの滲出が観察されなかった場合を「○」、オリゴマーの滲出がわずかに観察された場合を「△」、オリゴマーの滲出が広範囲にわたって観察された場合を「×」として評価した。
【0084】
【表1】
【0085】
表1から、実施例の透明導電性フィルムは、優れた耐湿熱性を有しつつ、かつ、硬化樹脂層とPETとの密着力が高いことが認められる。また、実施例の透明導電性フィルムは、耐薬品性にも優れ、また、硬化樹脂層からのオリゴマーの滲出も抑制できることが認められる。
【符号の説明】
【0086】
1 透明樹脂フィルム
2 硬化樹脂層
3 透明導電層
4 粘着剤層
5 透明基体
6 ハードコート層
7 SUS基板
8 接着剤
9 無機物層
10 透明導電性フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6