【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる固体電解質センサは、
「筒状のホルダの一端を、固体電解質のセンサ素子が封止層を介して閉塞することにより有底筒状を呈しており、
前記封止層は、
前記ホルダと前記センサ素子とを接合している第一のガラスの第一封止層と、
前記有底筒状の外部空間側で、前記ホルダと前記センサ素子とを接合していると共に前記第一封止層を被覆している、前記第一のガラスより軟化点が低い第二のガラスの第二封止層と、
前記有底筒状の外部空間側で、前記ホルダと前記センサ素子とを接合していると共に前記第二封止層を被覆しているセラミックスの第三封止層と、を具備する」ものである。
【0008】
本構成では、センサ素子が封止層を介して筒状のホルダの一端を閉塞することにより、全体として有底筒状を呈しており、封止層は第一封止層と第二封止層と第三封止層とを備えている。第一封止層及び第二封止層は共にガラスの層であり、有底筒状の外部空間側の第二封止層を形成している第二のガラスの方が、その内側の第一封止層を形成している第一のガラスより、軟化点が低い。
【0009】
固体電解質センサの使用時または製造時に、第二のガラスの軟化点以上の温度まで加熱されると、第一封止層とセンサ素子の表面との間にごく小さな空隙が存在していたとしても、軟化した第二のガラスはセンサ素子の表面とも第一のガラスともよく馴染んで密着し、空隙を埋める。同時に、第一封止層とホルダの表面との間にごく小さな空隙が存在していたとしても、軟化した第二のガラスはホルダの表面とも第一のガラスともよく馴染んで密着し、空隙を埋める。これにより、筒状のホルダの一端がセンサ素子によって気密に閉塞され、有底筒状の内部空間と外部空間との間でのガスの混合が効果的に抑止される。
【0010】
ここで、軟化点が低い第二のガラスは、万一、固体電解質センサの使用時または製造時に過度に軟化すると、センサ素子の表面に沿って流動して電極を被覆してしまったり、垂れ落ちて失われてしまったりするおそれがある。これに対し、本構成では、第二のガラスの第二封止層を外側(有底筒状の外部空間側)から被覆しつつ、ホルダとセンサ素子とを接合しているセラミックスの第三封止層を具備している。セラミックスは耐熱性が高く、ガラスが軟化する温度で軟化することはない。従って、仮に第二のガラスが過度に軟化したとしても、その流動や垂れ落ちをセラミックスの第三封止層によって防止することができる。
【0011】
一方、第一のガラスは、第二のガラスが軟化する温度では軟化することはない。これにより、第一封止層に、ホルダの一端をセンサ素子によって閉塞させるための“封止”の作用と、ホルダにセンサ素子を支持させるための“固定”の作用とを、兼ねさせることができる。つまり、本構成の固体電解質センサは、第一封止層に“封止”及び“固定”の作用を奏させ、第二封止層の“軟化し易さ”で第一封止層の“封止”作用を高めると共に、第二封止層の“軟化し易さ”ゆえの短所(流動や垂れ落ち)を第三封止層で補う、という構成である。なお、セラミックスの第三封止層も、ホルダにセンサ素子を支持させる“固定”の作用を有している。そのため、接着性が高いガラスの層による“固定”作用を、耐熱性の高いセラミックス層で更に補強している本構成では、センサ素子が強固にホルダに支持されているという利点も有している。
【0012】
本発明において、セラミックスに対する要請は耐熱性のみであるため、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コーディエライトに例示されるセラミックスを、特に限定なく使用することができる。また、ホルダは、セラミックス製であっても、ステンレス鋼などの金属製であっても良い。
【0013】
次に、本発明にかかる固体電解質センサの製造方法(以下、単に「製造方法」と称することがある)は、
「筒状のホルダの一端を、固体電解質のセンサ素子が封止層を介して閉塞することにより有底筒状を呈している固体電解質センサの製造方法であり、
前記ホルダと前記センサ素子とを、前記固体電解質センサの使用温度範囲の上限値より軟化点が高い第一のガラスで接合して第一封止層とし、
前記有底筒状の外部空間側で、前記ホルダと前記センサ素子とを、前記使用温度範囲の下限値より軟化点が低い第二のガラスで接合すると共に、前記第一封止層を被覆して第二封止層とし、
前記有底筒状の外部空間側で、前記ホルダと前記センサ素子とを、セラミックス及び結合剤を含有する無機接着剤で接合すると共に、前記第二封止層を被覆して第三封止層とする、ことにより前記封止層を形成する」ものである。
【0014】
これは、上記構成の固体電解質センサの製造方法であって、且つ、第一のガラス及び第二のガラスそれぞれの軟化点と、固体電解質センサの使用温度範囲との関係を特定したものである。ここで、「固体電解質センサの使用温度範囲」とは、固体電解質がイオン伝導性を示し、検出対象のガスの濃度(分圧)と起電力とがネルンストの式の関係を満たしている温度範囲であり、固体電解質の組成等によって相違する。
【0015】
本構成の製造方法では、第二のガラスとして固体電解質センサの使用温度範囲の下限値より軟化点が低いガラスを使用するため、製造された固体電解質センサを使用する際に、第二のガラスが軟化する。そのため、第一封止層とセンサ素子の表面との間、或いは、第一封止層とホルダの表面との間に、ごく小さな空隙が存在していたとしても、軟化した第二のガラスが空隙を埋め、筒状のホルダの一端がセンサ素子によって気密に閉塞される。
【0016】
一方、第一のガラスとしては、固体電解質センサの使用温度範囲の上限値より軟化点が高いガラスを使用するため、製造された固体電解質センサを使用する際に、第一のガラスが軟化することはない。そのため、固体電解質センサを使用している間、第一封止層がホルダの一端をセンサ素子によって閉塞させている状態が維持される。
【0017】
そして、本構成の製造方法では、接着性が高いガラスの層による“固定”を補強するためのセラミックスの第三封止層は、「セラミックス及び結合剤を含有する無機接着剤」によって形成する。従って、第三封止層によるホルダとセンサ素子との接着性を高めることができると共に、高い作業効率で第三封止層を形成することができる。
【0018】
ここで、「無機接着剤」に含有させる「セラミックス」は、上記のセラミックスである。また、「無機接着剤」に含有させる「結合剤」としては、コロイダルシリカ、アルカリ金属のケイ酸塩、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の金属のリン酸塩、を例示することができる。このような「無機接着剤」は、加熱・乾燥によって硬化する。
【0019】
なお、「無機接着剤」には、セラミックス及び結合剤に加えて、「硬化剤」を含有させることができる。硬化剤によって、「無機接着剤」により形成される第三封止層の強度や耐水性を高めることができる。結合剤としてアルカリ金属のケイ酸塩を使用する場合、硬化剤としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の酸化物や水酸化物、カルシウム、バリウム、マグネシウム等のホウ酸塩を使用可能である。結合剤として金属のリン酸塩を使用する場合、硬化剤としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム等の酸化物や水酸化物、カルシウムやマグネシウム等のケイ酸塩を使用可能である。一方、結合剤としてコロイダルシリカを使用する場合、そのゲル化によって硬化するため、硬化剤は特に必要とされない。