(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円筒状本体と該円筒状本体の下部に一体に連なった容器接合用筒とを含み、該円筒状本体及び容器接合用筒の内部空間が内容物の排出用流路となっているスパウトと、該スパウトの円筒状本体に螺子係合により着脱自在に装着されているキャップとからなる注出具において、
前記スパウトの容器接合用筒は、前記円筒状本体の下端部での外径よりも小径の外面を有する筒状基部と、該筒状基部の外面から径方向外方に張り出している張出片を有しており、
前記キャップは、栓体と、該栓体の上端に連なり且つ該栓体の外面を取り囲むように延びている筒状外側壁とを有しており、
前記スパウトの円筒状本体は、前記栓体外面と筒状外側壁との間の空間に挿入されて螺子固定されており、該栓体の底面は、前記スパウトの容器接合用筒で囲まれた領域に位置しているとともに、該栓体の外面には、前記容器接合用筒の筒状基部の内面に密着している部位を含んでいることを特徴とする注出具。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムやアルミ箔などから形成された袋状容器は、古くから各種用途に使用されている。このような袋状容器は、従来は、袋の端部を引き裂くことにより開口を形成し、この開口を通して内容物を取り出すように構成されていることが多かったが、最近では、このような袋状容器には、スパウトと呼ばれるプラスチック製の排出用部材が設けられて使用されるようになってきた。同様に、紙容器においても、このような排出用部材が使用されている。
【0003】
スパウトは、全体として両端開口の筒状形状を有するものであり、円筒状本体と、該円筒状本体の下部に一体に連なった容器接合用筒とから形成されており、円筒状本体と容器接合用筒の内部空間は、容器内容液を注ぎ出す際の排出用貫通路となっている。この容器接合用筒には、例えば袋状容器(パウチ)の開口部がヒートシールによる接合固定され、円筒状本体には、キャップが被せられて着脱自在に装着されて、注出具として使用される(特許文献1参照)。
【0004】
上記のようなスパウトとキャップとからなる注出具は、各種飲料、ペースト状の食品類、液状医薬品などが収容されている容器に装着にされて広く使用されているが、上記のような従来公知の注出具は、酸素バリア性に難があるため、酸素バリア性を向上させ、容器内容物の酸化劣化を防止することが求められている。
【0005】
酸素バリア性を高め、容器内容物の酸化劣化を防止するための手段としては、スパウトの内面に、エチレンビニルアルコール共重合体などのガスバリア樹脂の層を備えたバリア性スリーブをインサート成形により埋め込んでおく手段が提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、かかる手段は、高価なガスバリア性樹脂を使用することが必要であり、しかも、インサート成形という特殊な成形手段によりスパウトを成形しなければならず、製造コストが著しく高くなってしまうという問題がある。
【0006】
上記のようなバリア性スリーブを使用せずに、酸素バリア性を向上させた注出具としては、キャップのスカート壁とは間隔を置いて下方に延びており且つい下端が閉じられた中空の筒状凹部がキャップに形成されている構造のものが提案されている(特許文献3,4参照)。
このような構造の注出具では、キャップをスパウトに装着したとき、スパウトの内部に上記の筒状凹部が侵入し、キャップのスカート壁と該筒状凹部の上部壁との間の空間にスパウトの上方部分(円筒状本体)が嵌め込まれることにより、キャップが安定に保持される構造となっている。
即ち、スパウトの内部に上記筒状凹部が侵入し、該筒状凹部の外面がスパウトの内面に密着することにより形成される二重壁構造によって酸素バリア性が高められるというものである。また、かかる注出具では、容器内容物が容器に充填されているとき、所謂ヘッドスペースとなるスパウト内空間が上記の筒状凹部によって閉じられるため、ヘッドスペースの容積を小さくすることができ、これにより、ヘッドスペースに存在する酸素による容器内容物の酸化劣化を防止できるという利点もある。
【0007】
しかしながら、上記のような筒状凹部がキャップに設けられている形態の注出具においても、酸素バリア性は十分でなく、さらなる酸素バリア性の向上が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、酸素バリア性が高められ、容器の内容物の酸化劣化が有効に防止された注出具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、円筒状本体と該円筒状本体の下部に一体に連なった容器接合用筒とを含み、該円筒状本体及び容器接合用筒の内部空間が内容物の排出用流路となっているスパウトと、該スパウトの円筒状本体に螺子係合により着脱自在に装着されているキャップとからなる注出具において、
前記スパウトの容器接合用筒は、前記円筒状本体の下端部での外径よりも小径の外面を有する筒状基部と、該筒状基部の外面から径方向外方に張り出している張出片を有しており、
前記キャップは、栓体と、該栓体の上端に連なり且つ該栓体の外面を取り囲むように延びている筒状外側壁とを有しており、
前記スパウトの円筒状本体は、前記栓体外面と筒状外側壁との間の空間に挿入されて螺子固定されており、該栓体の底面は、前記スパウトの容器接合用筒で囲まれた領域に位置しているとともに、該栓体の外面には、前記容器接合用筒の筒状基部の内面に密着している部位を含んでいることを特徴とする注出具が提供される。
【0011】
本発明の注出具においては、
(1)前記栓体が、肉抜きされた有底筒状形状を有しており、該栓体の底面から前記容器接合用筒の下端面にかけて面一となっていること、
(2)前記キャップの筒状外側壁の内面に前記スパウトとの螺子係合用螺条が形成されていること、
が好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の注出具は、容器、特に袋状容器の開口部に装着されるスパウトと、これに装着されるキャップとからなるものであるが、スパウトの一部の壁の厚みを薄肉とした点に顕著な特徴を有している。
即ち、スパウトは、円筒状本体と該円筒状本体の下部に一体に連なった容器接合用筒とを有しており、この容器接合用筒は、円筒状本体の下端に連なっている筒状基部と、該筒状基部の外面に設けられている張出片とから形成されている。このような容器接合用筒の外面に、フィルム状の袋容器の開口部がヒートシールにより接合され、特に張出片の存在により、高圧力でのヒートシールが可能となっており、高い接合強度でスパウトを袋状容器に密着固定することができる。
本発明では、上記のようなスパウトの容器接合用筒において、その筒状基部の外面の径を、円筒状本体の下端部での外径よりも小径としている。即ち、円筒状本体及び容器接合用筒(筒状基部)の内部空間は、容器内容物の排出路となるため、これらの内面は面一の滑らかな面となっており、従って、筒状基部の外面の径が円筒状本体の下端部の外径よりも小さいということは、筒状基部が、円筒状本体よりも薄肉となっており、両者の間に段差が存在していることを意味する。
【0013】
本発明によれば、上記のように、スパウトの一部である容器接合用筒(筒状基部)の厚みを円筒状本体よりも薄肉とすることすることにより、より高い酸素バリア性を発現させたものである。
即ち、スパウトの内部には、キャップの栓体が挿入されて密着されており、しかも、スパウトの容器接合用筒の外面には、例えばフィルム形態の容器が接合されており、これらに、容器内への酸素の侵入が有効に防止されるのであるが、この場合、容器接合用筒の上部、即ち、円筒状本体の外面は、容器で覆われておらず、外面に露出している。従って、円筒状本体の外面から該本体の壁部を透過する酸素は、キャップの栓体によって容器内への侵入が抑制されたとしても、円筒状本体壁部内を軸方向に流れ、さらに、容器接合用筒の壁部内を軸方向に流れ、その下端部から容器内に流れ込んでしまうこととなる。
このように、容器接合用筒の壁部内を軸方向に流れて容器内に侵入する酸素の量は微量であるが、特に粘稠な内容物を酸化劣化させるには無視し得ないレベルとなる。粘稠な内容物、例えばペースト状の内容物は流動性に乏しいため、酸素が流れ出す容器接合用筒の下端部に付着していたり、或いはその近傍の容器内の液面部分に滞留していたりするため、容器内に流れ込んだ酸素により酸化され易いからである。
しかるに、本発明の注出具では、スパウトの容器接合用筒の厚みが薄肉化されているため、容器接合用筒の壁部を軸方向に通って流れる酸素の量が有効に抑制され、より優れた酸素バリア性が発現し、例えば、粘稠なペースト状内容物の酸化劣化も有効に防止することができる。
【0014】
本発明の注出具は、高価なガスバリア性樹脂を使用せず、しかもインサート成形のような格別の成形手段を用いることなく成形することができるため、その製造コストが極めて安価である。
かかる注出具は、粘稠な内容物についての酸化劣化を有効に抑制することができ、例えば、粘稠なペースト状物質、特にとろみをつけた介護食などが収容された容器に装着されて効果的に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して、本発明の注出具は、袋状容器(図示せず)の開口部に取り付けられて容器内容物の注ぎ出しに使用されるものであり、全体として1で示され且つ袋状容器の開口部にヒートシールにより接着固定されるスパウト1と、このスパウト1に被せての螺子係合により装着されて密封構造を形成するキャップ3とから構成されている。
【0017】
スパウト1及びキャップ3は、何れも熱可塑性樹脂、例えば、例えば低−、中−、或いは高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)などを用いての射出成形により成形される。
【0018】
先ず、
図1と共に、キャップ3の構造を示す
図2を参照して、このキャップ3は、中央部分に下方に延びている筒状形状の栓体5を有しており、この栓体5により、後述するスパウト1に形成されている内容物の排出用貫通路(後述する
図3において100で示されている)が閉じられるようになっている。
図1及び
図2(b)に示されているように、この栓体5は、肉抜きされた中空筒状形状を有しており、底面5aによって排出用貫通路100(
図3参照)が閉じられる構造となっている限り、肉抜きされていない中実形状を有するものであってよい。但し、樹脂量低減の観点からは、
図1及び
図2(a)に示されているように、中空筒状形状を有していることが好ましい。
尚、栓体5の外面5bは、若干、テーパー面となっており、下方にいくにしたがい、外径が小さくなっている。これは、キャップ3をスパウト1に装着したとき、栓体5がスパウト1の中空空間(排出用流路100)内にスムーズに入り込むようにするためである。また、キャップ3をスパウト1に装着したとき、栓体5の下端での側面(底面5aの側面)でスパウト1の内面に密着し、シール部を形成するようになっている。
【0019】
また、上記栓体5の上端部は、外方に延びている周状フランジ7が形成されており、この周状フランジ7からは、栓体5の外面5bとは間隔を空けて下方に延びている筒状外側壁9が形成されている。この筒状外側壁9の内面には、スパウト1と螺子係合するための螺条11が形成されている。
即ち、キャップ3をスパウト1に被せて螺子係合により固定したとき、スパウト1の上方部分が栓体5の外面5bと筒状外側壁9との間の空間に入り込み、これにより、キャップ3がスパウト1に固定されるようになっている。
【0020】
尚、上記の筒状外側側壁9の内面上端部分には、スパウト1の上端部分をしっかりと保持するための係合突起13aが周状に設けられている。また、筒状外側壁9の内面上端からフランジ7の下面周縁部にかけて微細な周状凸部13bが形成され、さらに、フランジ7の下面には、やはり微細な環状突起13cが形成されていると共に、筒状外側壁9の内面上端部分から下方に延びている細長い軸方向リブ15が、一定間隔で全周にわたって形成されている。
【0021】
即ち、螺子係合により、スパウト1の上方部分が形状により、栓体5の外面5bと筒状外側壁9との間の空間に入り込んだとき、
図1に示されているように、上記の軸方向リブ15がガイドとなって、この空間の奥までスパウト1の上端がガタツキなく侵入し、さらに、スパウト1の上方部分の外側面が係合突起13aと当接し、周状凸部13bがスパウト1の上端のコーナー部に当接し、加えて、環状突起cがスパウト1の上端面に当接し、これにより、キャップ3がガタツキなく安定に保持される。
【0022】
さらに、スパウト1とキャップ3とのシール性をより向上させるために、栓体5の外面5bの上端部には、若干、大径のボス17が形成されている。このボス17が、栓体5の外面5bの上端部に密着し、この部分でもシール部が形成されるようになっており、スパウト1とキャップ3とのシール性が確保される。
【0023】
キャップ3の筒状外側壁9には、
図2(a)及び(b)に示されているように、ローレット19が形成されており、これが滑り止めとなって、開封のためのキャップ3の旋回操作を容易に行うことが可能となっている。
【0024】
上記の筒状外側壁9の下端は、若干外広がりとなっており、その幅が比較的大きくなっている。
このような筒状外側壁9の下端には、キャップ3の開封履歴を証明する公知のタンパーエビデントバンド(TEバンド)21が連結されている。
【0025】
このTEバンド21は、特に
図2(c)に示されているように、細長く且つ屈曲したストリップ23により、上記の筒状外側壁9の下端に連結されている。
また、TEバンド21は、縦方向スリット25により分断されており、この分断部分は、縦方向スリット25を跨ぐ破断可能な周方向ブリッジ27により連結されている。この分断部分に対してキャップ3の閉栓方向Y側の近傍に、上記のストリップ23が連結されている。
【0026】
一方、筒状外側壁9の下端面には、間隔調整用突部29が形成されている。この間隔調整用突部29は、破断可能な軸方向ブリッジ30によりTEバンド21の上端に連結されている。この間隔調整用突部29により、TEバンド21と筒状外側壁9との間に必要以上に大きな空間が形成されず、しかも、キャップ3をスパウト1に装着したときに、TEバンド21と筒状側壁9との間に発生する応力が緩和され、周方向ブリッジ27や軸方向ブリッジ30の破断を有効に防止することができる。
【0027】
さらに、筒状外側壁9の下端面及びTEバンド21の上端面には、上記の縦方向スリット25の閉栓方向Y側近傍に、キャップ3の開栓時に、傾斜面で互いに当接する開栓促進突起31a,31bが設けられている。
また、TEバンド21の内面には、スパウト1の外面に係合してTEバンド21の開栓方向への回転を制限する突起33が、適宜の位置に適宜の数で設けられている。
【0028】
上述したTEバンド21の構造は公知であり、例えば、TEバンド21は、1本の縦方向スリット25により分断されていてもよいし、この縦方向スリット25を適当な間隔で複数本形成し、TEバンド21を該スリット25の数に対応して分割されていてもよい。この場合、各スリット25にはそれぞれ周方向ブリッジ27が設けられ、TEバンド21の分割片は、この周方向ブリッジ27により互いに連結された構造となる。また、TEバンド21の分割片ごとに、前述した位置関係でストリップ23が設けられ、何れの分割片もストリップ23により、筒状外側壁9の下端に連結されるものとなる。
【0029】
上述したTEバンド21の機能については、後述する。
尚、
図1、
図2(b)及び(c)から理解されるように、前述した栓体5は、TEバンド21の下端から大きく突出したものとなっている。
【0030】
次にスパウト1の形態について説明する。
図1と共に、
図3及び
図4を参照して、スパウト1は、全体として中空筒状形状を有しており、この内部空間が、容器内に収容されている内容物の排出用流路100となっている。このため、スパウト1の内面は、特に
図1及び
図3(b)に示されているように、スパウト1の内面には溝や凹部が形成されておらず、全体として滑らかなストレートな面となっている。即ち、この流路100内での内容物の滞留や付着を防止するためである。
【0031】
このようなスパウト1は、円筒状本体41と、円筒状本体41の下部に一体に連なった容器接合用筒と43とから構成されている。
【0032】
円筒状本体41は、前述したキャップ3が被せられて固定される部分である。このため、上部の外面には、キャップ3を螺子固定するための螺条45が形成されており、その下方には、間にサポートリング47を挟んで、複数のラチェット49が設けられている。
即ち、上記の螺条45と、キャップ3の筒状外側壁9の内面に形成されている螺条11との螺子係合により、キャップ3がスパウト1に螺子固定され、安定に保持されることとなる。キャップ3を螺子係合により固定した状態では、キャップ3の栓体5が上記排出用流路100内に侵入し、これにより、排出用流路100が閉じられ、この流路100からの内容物の排出が防止される。また、
図1に示されているように、このスパウト1の円筒状本体41が、キャップ3の栓体5の外面5bと筒状外側壁9の内面との間に侵入し、軸方向リブ15により、この空間の奥までガタツキなくスムーズに案内され、突起13a、周状凸部13b、環状突起13cと当接して密着し、さらには、ボス17とも当接して密着することにより、キャップ3とスパウト1との間のシール性が確保される。
【0033】
また、上記のサポートリング47は、成形されたスパウト1の支持搬送等に利用される。
【0034】
さらに、サポートリング47の下方に設けられているラチェット49は、
図4に示されているように、上記のようにスパウト1(円筒状本体41)に螺子固定されたキャップ3を開栓方向Xに回転させてキャップ3を取り外す際に、前述したTEバンド21の開栓方向Xへの回転を抑止するが、閉栓方向Yへの回転は許容し得るような形態に形成されている。
【0035】
即ち、このラチェット49は、開栓方向Xに対して上流側(即ち、閉栓方向Y側)の面が切り立った直立面49aとなっており、開栓方向X側(即ち、閉栓方向Yに対して上流側)の面がなだらかな傾斜面49bとなっている。かかるラチェット49は、キャップ3を螺子固定した状態において、前述したTEバンド21の内面に設けられている突起33の開栓方向X側に、ある程度間隔をおいて位置するように配置されている。
従って、キャップ3を開栓方向Xに回転させてキャップ3を取り外そうとしたとき、キャップ3の筒状外側壁9及び栓体5は、開栓方向に回転してスパウト1(円筒状本体41)上を上昇すると共に、スリット25に対してTEバンド21の開栓方向X側は、ある程度開栓方向に開栓し、ストリップ23が伸びきった状態で、ストリップ25により開栓方向X側に引っ張られる。一方、スリット25に対してTEバンド21の閉栓方向Y側は、ある程度開栓方向Xに回転すると、内面に設けられている突起33がラチェット49の直立面49aに当接し、その開栓方向X側の回転が制限される。この結果、スリット25を跨いで形成されている周方向ブリッジ27が破断し、さらに、TEバンド21と筒状外側壁9とを連結している軸方向ブリッジ30も破断することとなる。
【0036】
また、上記のようにキャップ3を開栓方向Xに回転させ、筒状外側壁9が開栓方向Xに移動すると、筒状外側壁9とTEバンド21に設けられている開栓促進突起31a,31bの傾斜面同士が係合し、この結果、TEバンド21のスリット25に対して閉栓方向Y側が押し下げられ、これにより、スリット25を跨いでいる周方向ブリッジ27の破断が促進され、キャップ3の開栓が促進されるようになっている。
【0037】
従って、キャップ3がスパウト1から取り外し、スパウト1の排出用流路100が開放された状態では、上述したスリット25の部分でTEバンド25が分断され、分断されたTEバンド25は、ストリップ23により筒状外側壁9の下端から垂れ下がった状態となっている。一般の消費者等は、このようなTEバンド21の状態を見て、このキャップ3が開封されたものであることを認識し、いたずらなどによる注出具の不正使用を防止することができるのである。
【0038】
尚、キャップ3をスパウト1(円筒状本体41)に被せて閉じる場合、前述したラチェット49は、このキャップ3(突起33)の閉栓方向Yへの回転を許容するように傾斜面49bが形成されているため、この閉栓方向Yへの回転は制限されず、キャップ3をスムーズにスパウト1(円筒状本体41)に螺子固定により装着することができる。
【0039】
上記のような円筒状本体41を有するスパウト1において、円筒状本体41の下端に連なる容器接合用筒43は、その側面にフィルムからなる袋状容器(図示せず)の開口部分がヒートシールにより接合される部分である。
【0040】
この容器接合用筒43は、
図3(b)〜(d)及び
図4の底面図に示されているように、円柱形状の筒状基部43aと、筒状基部43aの外面に形成されている張出片43bとから構成されている。この筒状基部43aの外面及び張出片43bの外面には袋状容器の開口部がヒートシールされる部分であるため、何れも滑らかな面となっており、且つ張出片43bの外面は、筒状基部43aの外面に滑らかに連なっている。
上記のようにして袋状容器の開口部をスパウト1(容器接合用筒43)にヒートシールによる接合する場合、張出片43bの形成によりヒートシール面積が増大し且つヒートシールに際しての圧着も容易に行うことができるため、良好な密封性を確保することができる。
尚、
図3(b)に示されているように、容器接合用筒43の内面は、前述した円筒状本体41の内面に面一となるように滑らかに連続した面となっているが、その下端部分43’は、下方に行くほど小径となるようなテーパー面となっている。これにより、スパウト1にキャップ3を装着した時、栓体5の底面5aの側面部分が、容器接合用筒43の下端部分43’に密着し、良好なシール部が確保されるようになっている。
【0041】
このような注出具においては、キャップ3を閉じたとき、栓体5の外側面5bの下端部(底面5aの周縁部)がスパウト1(容器接合用筒43の筒状基部43aの内面下端部分)に密着し、且つ容器接合用筒43の外面に袋状容器がヒートシールによりしっかりと密着固定するため、高い酸素バリア性が確保され、さらに、栓体5がスパウト1の内容物排出用流路100内に深く侵入し、この結果、袋状容器のヘッドスペースの容積も小さく制限されている。このため、内容物の酸化劣化を効果的に防止できる構造となっている。
【0042】
しかるに、本発明の注出具は、さらに酸素バリア性が向上し、内容物の酸化劣化をより有効に防止し得る構造となっている。
【0043】
即ち、
図4と共に、円筒状本体41と容器接合用筒43との境界部でのそれぞれの平断面を示す
図5を参照して(
図5(a)が円筒状本体41の下端での平断面であり、(b)が容器接合用筒43の上端での平断面である)、本発明の注出具では、スパウト1の円筒状本体41と容器接合用筒43との間に段差51が形成されており、円筒状本体41の外径Dに比して、容器接合用筒43における筒状基部43の外径dが小さく設定されている。このことは、スパウト1内の空間が内容物排出用流路100となっており、全体として凹部や溝などが存在しない滑らかな面となっていることから理解されるように、上記のような外径Dとdとの差は、容器接合用筒43の筒状基部43aの厚みtが、上部の円筒状本体41の厚みTよりも薄く設定されていること(即ち、t<T)を意味している。本発明では、このような容器接合用筒43(筒状基部43a)の薄肉化によって酸素バリア性のさらなる向上がもたらされ、容器内容物の酸化劣化をより一層効果的に防止することができる。
【0044】
このような薄肉化による酸素バリア性の向上は、容器接合用筒43(筒状基部43a)を厚み方向に透過する酸素が抑制されていることにより達成されるものである。
【0045】
例えば、
図6の要部拡大図に示されているように、スパウト1の円筒状本体41の下端に連なっている容器接合用筒43(筒状基部43a)の側面には、フィルム状の袋状容器110がヒートシールにより接合している。従って、容器接合用筒43の側面からの酸素の侵入は、袋状容器110によって有効に遮断されている。しかしながら、容器接合用筒43の上部に存在している円筒状本体41の外面は、袋状容器110が接合されておらず、大気に露出している状態にある。筒状円筒体41は、その外面に、キャップ3との係合機構(例えば螺条45やラチェット49など)やサポートリング47などの剛性を必要とする部材が設けられているため、この厚みTは、ある程度厚いことが必要であり、一般に、1.5mm以上、特に1.5〜5.0mmとかなり厚い。
このため、円筒状本体41の外面から、Zで示すように、酸素が流入することとなり、その厚みTがかなり厚いため、この円筒状本体41の壁部内には、多くの酸素が流入し得る。
【0046】
このようにして流入した酸素の容器110内への侵入は、栓体50によって制限されているのであるが、この栓体50によっては、容器接合用筒43の厚み方向を通って流れる酸素を遮断することができず、従って、
図6に示されている流路Zにそって袋状容器110内に侵入し、内容物の酸化劣化を生じることとなる。
このように、容器接合用筒43の厚み方向を通って容器110内に侵入する酸素の量はそれほど多くないのであるが、容器内容物が流動性の低い粘稠な物質であるときには、無視し得ないレベルで酸化劣化を生じてしまう。
【0047】
しかるに、本発明では、容器接合用筒43(筒状基部43a)の厚みを、円筒状本体41に比して薄肉とされているため、この部分を流れる酸素の量が制限され、酸素バリア性のさらなる向上が達成されているわけである。
【0048】
上述した説明から理解されるように、容器接合用筒43(筒状基部43a)の厚みtが薄い程、この部分を通過し得る酸素の量が少なくなり、酸素バリア性をさらに高めることができるが、過度に薄くすると、形態保持性が損なわれ、容易に変形するようになってしまい、この結果、スパウト1の支持搬送性が損なわれたり、スパウト1へのキャッピング作業性や、ヒートシール作業性も損なわれてしまう。
従って、本発明においては、容器接合用筒43(筒状基部43a)の厚みtと筒状円筒体41の厚みTとの比(t/T)が0.1〜0.6の範囲となるように、容器接合用筒43における筒状基部43の外径d及び円筒状本体41の外径Dを設定することが好ましい。これにより、スパウト1の強度や形態保持性を保持しつつ、酸素バリア性を効果的に高めることができる。
【0049】
このような本発明の注出具は、酸素バリア性が極めて高いため、粘稠な流動性の乏しい内容物についての酸化劣化も有効に抑制することができる。即ち、粘稠な内容物は、流動性に乏しいため、容器接合用筒43の下端部に付着していたり、或いは袋状容器110内の液面に存在しているものは、その移動がほとんど生じないため、常に、酸素と接触する状態にあるため、極めて酸化劣化を生じ易い状態にある。しかるに、本発明の注出具では、上記のように、容器接合用筒43の壁部を通る酸素の量が著しく抑制されるため、このような部分に存在する粘稠な内容物の酸化劣化さえも有効に抑制することができる。
例えば、粘稠なペースト状物質、特にとろみをつけた介護食などであっても、その酸化劣化を有効に防止することができ、長期にわたって、その品質を保持することができる。
【0050】
また、本発明の注出具においては、例えば、
図1に示されているように、栓体5の底面5aと容器接合用筒43の下端面にかけて面一となっていることが好適である。
即ち、先にも述べたように、栓体5の底面5aの側面部分が、容器接合用筒43の下端部分43’に密着し、良好なシール部が確保されるようになっているが、同時に、栓体5の底面5aの下端面が容器接合用筒43の下端面にぴったりと密着し、両者の間に溝、凹部或いは段差が形成されていないことが望ましい。即ち、上記のような粘稠な流動性の乏しい物質は、溝や凹部或いは段差部分に滞留してしまうことが多く、このような物質は、酸化劣化を受けやすい状態に保持されてしまう。従って、このような溝、凹部或いは段差が形成されないような形態とすることにより、より一層、内容物の酸化劣化を有効に防止することができる。
【0051】
例えば、円筒状本体41と容器接合用筒43(筒状基部43a)の厚みが同一となっている従来公知の形態を有している注出具(T=t=2.0mm)について、袋状容器110を装着した状態で容器内部に透過した総酸素透過量が0.0197cc/dayであったとき、容器接合用筒43の厚みが1.6mm薄く設計された本発明の注出具(T=2.0mm、t=0.4mm)について、同様にして総酸素透過量を測定すると、0.0009cc/dayとなり、酸素バリア性がより向上していることが判る。
【0052】
ところで、スパウト1の容器接合用筒43(筒状基部43a)を薄肉に形成されている場合、袋状容器110をヒートシールにより貼り付けたとき、この容器接合用筒43がヒートシール圧により変形するという問題が懸念される。しかしながら、本発明の注出具では、キャップ3をスパウト1に装着したとき、栓体5の底面5aの側面が容器接合用筒43の内面下端部に密着している。従って、キャップ3が装着された状態で袋状容器110をヒートシールを行うことにより、栓体5の底面5aによる補強効果によって、容器接合用筒43の変形を有効に防止することができ、これも本発明の注出具の大きな利点である。