(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0025】
以下では、
図1から
図3までを用いて、本発明の第一実施形態に係るワッシャ1の構成について説明する。
【0026】
ワッシャ1は、適宜荷重を受けるための部材である。ワッシャ1は、正面視円環状に形成される。ワッシャ1は、適宜の部材(例えば、軸部材を支持するハウジング等)に設けられる。ワッシャ1は荷重(例えば、前記軸部材からの軸方向の荷重)を受けることができる。ワッシャ1は、複数(本実施形態においては、4つ)のワッシャ片10により構成される。ワッシャ1は、4つのワッシャ片10がそれぞれ接続され、全体として円環状に形成される。本実施形態において、4つのワッシャ片10は、互いに同一形状に形成される。
【0027】
なお、以下では説明の便宜上、ワッシャ1の周方向を単に「周方向」(円弧方向)、ワッシャ1の径方向を単に「径方向」とそれぞれ称する。また、4つのワッシャ片10のうち、
図1における右上部に配置されたワッシャ片10を「第一ワッシャ片11」、右下部に配置されたワッシャ片10を「第二ワッシャ片12」、左下部に配置されたワッシャ片10を「第三ワッシャ片13」、左上部に配置されたワッシャ片10を「第四ワッシャ片14」とそれぞれ称する。
【0028】
また、これらのワッシャ片10は、上述の如く互いに同一形状に形成されるため、以下では、主として第一ワッシャ片11について詳細に説明し、その他のワッシャ片10の詳細な説明は適宜省略するものとする。
【0029】
第一ワッシャ片11は、その板面を前後方向に向けた板状に形成される。第一ワッシャ片11は、適宜の金属材料(例えば、表面に耐摩耗性等が高い金属を焼結させたバイメタル材や鉄系材料等)によって形成される。第一ワッシャ片11は、主として本体部20、第一嵌合部30及び第二嵌合部40を具備する。
【0030】
図1から
図3までに示す本体部20は、第一ワッシャ片11の主たる部分(両端部を除く部分)を形成する部分である。本体部20は、正面視において、中心角が約90度の円弧状に形成される。なお以下では、本体部20の、周方向における上側の端部を「上側端部」、周方向における下側の端部を「下側端部」とそれぞれ称する。
【0031】
図1から
図3までに示す第一嵌合部30は、本体部20の上側端部から周方向(円弧方向)に凸となる部分である。第一嵌合部30は、第一ワッシャ片11の周方向左隣の第四ワッシャ片14の第二嵌合部40と嵌合される。第一嵌合部30は、本体部20の上側端部から周方向外側に延びるように形成される。第一嵌合部30は、主として第一基端部31及び第一先端部32を具備する。
【0032】
図2及び
図3に示す第一基端部31は、周方向に延びるように形成された第一嵌合部30のうち、本体部20側(右側)に配置された部分である。第一基端部31は、正面視で僅かに丸みを帯びた略矩形状に形成される。第一基端部31は、本体部20の上側端部の径方向中央部から周方向外側へ突出するように形成される。
【0033】
図2及び
図3に示す第一先端部32は、周方向に延びるように形成された第一嵌合部30のうち、第四ワッシャ片14側(左側)に配置された部分である。第一先端部32は、正面視略真円状に形成される。第一先端部32は、第一基端部31を介して本体部20の上側端部から周方向外側に離間した位置に配置される。第一先端部32の径方向外側端部は、第一基端部31の径方向外側端部よりも外側に位置するように形成される。また、第一先端部32の径方向内側端部は、第一基端部31の径方向内側端部よりも内側に位置するように形成される。こうして、第一先端部32は、全体として第一基端部31よりも径方向に幅広く形成される。
【0034】
このように構成された第一基端部31及び第一先端部32により、第一嵌合部30は、全体として正面視において丸みを帯びた形状(角が無い形状)に形成される。すなわち、後述するように、第一嵌合部30は、素材Mからプレス加工により打ち抜き易い形状に形成される。
【0035】
第一先端部32には、油溜まり部35及びかしめ部36が形成される。
【0036】
図2及び
図3に示す油溜まり部35は、第一先端部32の前側面が後方(板厚方向)へ凹んだ部分である。油溜まり部35は、ワッシャ1が前記軸部材と摺動される際、摺動面(ワッシャ1の前側面)に供給する潤滑油を溜めておくことができる。油溜まり部35は、第一先端部32と略同一形状(正面視真円状)であって、当該第一先端部32よりも一回り小さく形成される。正面視において油溜まり部35の中心点は、第一先端部32の中心点と重複するように形成される。
【0037】
図2及び
図3に示すかしめ部36は、第一先端部32において、第四ワッシャ片14の第二嵌合部40の側面に押し込まれた部分(具体的には、第一先端部32の側面)である。かしめ部36により、互いに嵌合された状態の第一嵌合部30と(第四ワッシャ片14の)第二嵌合部40とが固定され、ひいては第一ワッシャ片11と第四ワッシャ片14とが固定される。
なお、かしめ部36の構成についての詳細な説明は後述する。
【0038】
図1から
図3までに示す第二嵌合部40は、本体部20の下側端部から周方向(円弧方向)に凹となる部分(切り欠いた部分)である。なお、説明の便宜上、
図3においては、第一ワッシャ片11の第二嵌合部40ではなく、第四ワッシャ片14の第二嵌合部40を図示している。第二嵌合部40は、第一嵌合部30と正面視で略同一の外形を有する。第二嵌合部40は、第一ワッシャ片11の周方向下隣の第二ワッシャ片12の第一嵌合部30と嵌合される。第二嵌合部40は、本体部20の下側端部から周方向内側に延びるように形成される。第二嵌合部40は、主として第二基端部41及び第二先端部42を具備する。
【0039】
図2及び
図3に示す第二基端部41は、周方向に延びるように形成された第二嵌合部40のうち、第二ワッシャ片12側(下側)に配置された部分である。第二基端部41は、正面視で僅かに丸みを帯びた略矩形状に形成される。第二基端部41は、本体部20の下側端部の径方向中央部から周方向内側へ凹む(切り欠いた)ように形成される。
【0040】
図2及び
図3に示す第二先端部42は、周方向に延びるように形成された第二嵌合部40のうち、本体部20側(上側)に配置された部分である。第二先端部42は、正面視略真円状に形成される。第二先端部42は、第二基端部41を介して本体部20の下側端部から周方向内側に離間した位置に配置される。第二先端部42の径方向外側端部は、第二基端部41の径方向外側端部よりも外側に位置するように形成される。また、第二先端部42の径方向内側端部は、第二基端部41の径方向内側端部よりも内側に位置するように形成される。こうして、第二先端部42は、全体として第二基端部41よりも径方向に幅広く形成される。
【0041】
上述の如き構成により、第一嵌合部30及び第二嵌合部40は、互いにジグソーパズル状に形成される。具体的には、
図3(a)に示すように、第二嵌合部40の第二基端部41の内側に、第一嵌合部30の第一基端部31がほとんど隙間なく配置される。また、第二嵌合部40の第二先端部42の内側に、第一嵌合部30の第一先端部32がほとんど隙間なく配置される。こうして、第一嵌合部30及び第二嵌合部40は、互いにかみ合った状態で嵌合される。換言すると、第一嵌合部30及び第二嵌合部40は、当該第二嵌合部40の内側に第一嵌合部30が配置されると、(仮にかしめ部36が無くとも)周方向への互いの近接離間が規制された状態で嵌合される。
【0042】
なお、上記においては、4つのワッシャ片10のうち、第一ワッシャ片11について説明したが、他の3つのワッシャ片10(第二ワッシャ片12、第三ワッシャ片13及び第四ワッシャ片14)も同様に構成される。そして、4つのワッシャ片10は、それぞれ周方向に隣り合うワッシャ片10と第一嵌合部30及び第二嵌合部40により互いに固定され、1つのワッシャとして構成される。
【0043】
以下では、
図4から
図9までを用いて、上述の如く構成されるワッシャ1の製造方法について説明する。
【0044】
図4に示すように、ワッシャ1の製造方法は、主として準備工程S1、抜き取り工程S2、嵌合工程S3、かしめ工程S4を具備する。
【0045】
準備工程S1は、素材Mを準備する工程である。
図5に示すように、素材Mは、矩形板状の部材である。素材Mは、適宜の材料(例えば、単一種類の材料により形成された鋼板や、複数種類の材料により形成されたバイメタル等)により形成される。素材Mは、長手方向を上下方向に向けた状態で配置される。
準備工程S1が行われた後、抜き取り工程S2が行われる。
【0046】
抜き取り工程S2は、準備工程S1において準備された素材Mから、ワッシャ片10を抜き取る工程である。抜き取り工程S2では、ワッシャ片10の形状に形成された所定の金型を用いて、素材Mのうち、ワッシャ片10の形状に対応した部分が抜き取られる(プレス加工により打ち抜かれる)。これによって、
図5(a)に示すように、素材Mから1つのワッシャ片10を得ることができる。また、抜き取り工程S2においては、
図5(b)に示すように、素材Mの長手方向に沿うように、複数のワッシャ片10が打ち抜かれる。これによって、素材Mから複数のワッシャ片10を得ることができる。
抜き取り工程S2が行われた後、嵌合工程S3が行われる。
【0047】
嵌合工程S3は、抜き取り工程S2において抜き取られた複数のワッシャ片10をそれぞれ嵌合させる工程である。なお、本実施形態においては、1つのワッシャ1を形成するために、上述の如く4つのワッシャ片10がそれぞれ嵌合される。
【0048】
具体的には、一つのワッシャ片10の第一嵌合部30に、周方向一側(正面視で反時計回り方向)に隣り合うワッシャ片10の第二嵌合部40が嵌合される。また、前記一つのワッシャ片10の第二嵌合部40に、周方向他側(正面視で時計回り方向)に隣り合うワッシャ片10の第一嵌合部30が嵌合される。こうして、4つのワッシャ片10がそれぞれ嵌合されると、円環状の部材が形成される。
【0049】
なお、第一嵌合部30と第二嵌合部40とが嵌合される場合、まず
図6(a)に示すように、当該第一嵌合部30と第二嵌合部40とが前後方向に互いに対向するように配置される。その後、
図6(a)及び(b)に示すように、第一嵌合部30及び第二嵌合部40が互いに近接する方向に移動し、当該第二嵌合部40の内側に当該第一嵌合部30が入り込む。こうして、第一嵌合部30と第二嵌合部40とが、互いに嵌合される。
嵌合工程S3が行われた後、かしめ工程S4が行われる。
【0050】
かしめ工程S4は、第一嵌合部30(より詳細には、第一嵌合部30の第一先端部32の側面)に、かしめ部36を形成する工程である。かしめ工程S4では、
図7及び
図8に示すように、かしめ装置50を用いて、プレス加工が行われる。なお、
図7及び
図8は、かしめ工程でかしめ部36が形成される様子を示した模式図である。
図7及び
図8において、ワッシャ片10は、板面を上下方向へ向けて配置されるものとする。
【0051】
かしめ装置50は、
図7及び
図8に示すように、一対の金型である上型51及び下型52を具備する。上型51と下型52との間には、ワッシャ片10(互いに嵌合された第一嵌合部30及び第二嵌合部40)が配置される。上型51には、ポンチ53が設けられる。ポンチ53は、昇降可能に構成され、第一嵌合部30の第一先端部32を上方から下方へと押圧するものである。ポンチ53は、軸心方向を上下方向へ向けた略円柱状に形成される。ポンチ53の下側面(押圧面)は、第一嵌合部30の第一先端部32と略同一形状(真円状)であって、当該第一先端部32よりも一回り小さく形成される。
【0052】
かしめ工程S4では、まず
図7(a)に示すように、ポンチ53の下方に(第二嵌合部40と嵌合された状態の)第一嵌合部30の第一先端部32が配置される。第一嵌合部30の第一先端部32は、当該第一先端部32の中心点がポンチ53の下側面の中心点と上下方向に重複するように配置される。次に、
図7(b)に示すように、ポンチ53が下降される。
【0053】
こうして、ポンチ53が下降されると、当該ポンチ53の下側面が第一先端部32の上側面と当接すると共に、当該上側面を下方へ向けて押し込む。第一先端部32の上側面が押し込まれると、
図7(b)及び
図9に示すように、第一先端部32はポンチ53から押し込まれた分だけ、外方へ向けて押し拡げられる。こうして、第一先端部32が外方へ向けて押し拡げられると、第一先端部32の側面が第二先端部42の側面に押し込まれ、当該第一先端部32と第二先端部42とが互いに固定される。このように、ポンチ53により第一先端部32が押し拡げられることにより、第一先端部32の側面にかしめ部36が形成される。
【0054】
かしめ部36が形成された後(ポンチ53の下降が終了した後)、
図8に示すように、ポンチ53が上昇される。ポンチ53が上昇すると、第一先端部32の上側面には下方へ凹んだ凹部(すなわち、油溜まり部35)が形成される。このように、かしめ装置50においては、ポンチ53の昇降という一つの動作を行うことにより、第一先端部32にかしめ部36及び油溜まり部35を同時に形成することができる。
【0055】
以下では、
図3、
図7から
図9までを用いて、上述の如き方法により形成されたかしめ部36の構成(特徴)について詳細に説明する。
【0056】
上述の如く、かしめ部36は、第一先端部32の側面に形成されるため、ワッシャ1の摺動面(
図1に示すワッシャ1の前側面)上に飛び出したりしていない。これにより、ワッシャ1は、前記軸部材を円滑に摺動させることができる。
【0057】
なお、かしめ工程S4において、かしめ部36は、上述の如くかしめ装置50を用いて形成される。ここで、かしめ装置50においては、第一先端部32にポンチ53が押圧される際、ワッシャ片10は上型51と下型52との間に配置される。すなわち、かしめ部36を形成するために第一先端部32が押し拡げられた場合であっても、当該第一先端部32の一部分が、
図7及び
図8に示す当該第一先端部32の上側面より上方へ飛び出たり、下側面よりも下方へ飛び出たりするのが抑制されている。このように、かしめ部36が形成された場合、かしめ工程S4が終了した後、ワッシャ1の摺動面に対する研磨加工等の手間を極力省略することができる。
【0058】
なお、
図9は、かしめ工程S4で第一先端部32にポンチ53が押圧される様子を示した模式図である。
図9において、第一先端部32に記載した斜線部分は、ポンチ53の下側面、すなわちポンチ53において第一先端部32の上側面と当接している部分を示している。ここで、ポンチ53の下側面(押圧面)は、上述の如く、第一嵌合部30の第一先端部32と略同一形状(真円状)であって、当該第一先端部32よりも一回り小さく形成される。また、ポンチ53が第一先端部32を押圧する際、当該第一先端部32の中心点がポンチ53の下側面の中心点と上下方向に重複するように配置される。
【0059】
このような構成によって、第一先端部32にポンチ53が押圧された場合、
図9に示すように、当該第一先端部32は、第二先端部42側へ向けて四方に満遍なく(バランスよく)押し拡げられる。こうして、第一先端部32においては、かしめ部36が四方へ向けてバランスよく第二先端部42を押し込まれて形成されるため、当該第一先端部32と第二先端部42とを(ひいては、第一嵌合部30と第二嵌合部40とを)強固に固定することができる。
【0060】
なお、また、本体部20の上側端部は径方向中央部が周方向内側に凹んでいるため、径方向外側及び内側に比較的広がり易い構成となっているが、本実施形態においては、上述の如く、第二先端部42が、第二基端部41を介して本体部20の下側端部から周方向内側に離間した位置に配置される。このような構成により、、当該第二先端部42と嵌合された第一先端部32にポンチ53が押圧された際に、本体部20の上側端部が径方向外側及び内側に広がるのを防止することができる。
【0061】
また、第一先端部32にポンチ53が押圧された場合、
図9に示すように、当該第一先端部32は、第二先端部42側へ向けて四方に満遍なく(バランスよく)押し拡げられることにより、かしめ部36は、第一先端部32の側面全体に亘って形成される(
図3(a)等参照)。こうして、かしめ部36は、第一先端部32の側面全体を覆った円筒状となるように形成される。これにより、第一先端部32においては、例えば第一先端部32の側面の一部だけに形成されたような場合と比べて、当該第一先端部32と第二先端部42とを(ひいては、第一嵌合部30と第二嵌合部40とを)強固に固定することができる。
【0062】
以上のように、本発明の第一実施形態に係るワッシャ1においては、
円弧状に形成されると共に、一端部から円弧方向に凸となる第一嵌合部30(第一の嵌合部)が形成された第一ワッシャ片11(第一の部材)と、
円弧状に形成されると共に、一端部から前記円弧方向に凹となり、前記第一嵌合部30(第一の嵌合部)と嵌合される第二嵌合部40(第二の嵌合部)が形成された第四ワッシャ片14(第二の部材)と、を具備し、
前記第一嵌合部30(第一の嵌合部)及び前記第二嵌合部40(第二の嵌合部)は、前記円弧方向への互いの近接離間が規制された状態に嵌合され、
前記第一嵌合部30(第一の嵌合部)及び前記第二嵌合部40(第二の嵌合部)のうち一方の嵌合部は、当該一方の嵌合部の側面が他方の嵌合部の側面に押し込まれた状態に形成されたかしめ部36(固定部)を具備し、当該かしめ部36(固定部)によって当該他方の嵌合部と固定されるものである。
【0063】
このような構成により、素材Mから、隣り合うワッシャ片10の間を比較的小さくして複数のワッシャ片10を得ることができる。そして、複数のワッシャ片10においてそれぞれの第一嵌合部30及び第二嵌合部40を嵌合させると共に、かしめ部36で固定することにより1つのワッシャ1を得ることができる。こうして、素材Mから得られるワッシャ1の個数を増やすことができ、材料歩留まりを向上させることができる。
【0064】
また、かしめ部36は、第一先端部32の側面に形成されるため、ワッシャ1の摺動面(
図1に示すワッシャ1の前側面)上に飛び出したりしていない。これにより、ワッシャ1は、前記軸部材を円滑に摺動させることができる。
【0065】
また、ワッシャ1においては、
前記第一嵌合部30(第一の嵌合部)は、
前記第一ワッシャ片11(第一の部材)の一端部から第一基端部31を介して配置された第一先端部32を有し、
前記かしめ部36は、前記第一先端部32の側面全体に亘って形成されたものである。
【0066】
また、ワッシャ1においては、
前記第一嵌合部30(第一の嵌合部)の前記第一先端部32は、円形状に形成されたものである。
【0067】
このような構成により、第一嵌合部30と第二嵌合部40とを強固に固定し、ひいては複数のワッシャ片10同士(例えば第一ワッシャ片11と第四ワッシャ片14と)を強固に固定することができる。
【0068】
また、ワッシャ1においては、
前記第一嵌合部30(第一の嵌合部)の前記第一先端部32には、内側に凹んだ油溜まり部35が形成されたものである。
【0069】
このような構成により、ワッシャ1が前記軸部材と摺動される際、摺動面(ワッシャ1の前側面)に供給する潤滑油を溜めておくことができる。
【0070】
また、以上のように、本発明の一実施形態に係るワッシャ1の製造方法においては、
板状の素材Mを準備する準備工程S1と、
前記素材Mから、円弧状に形成されると共に一端部から円弧方向に凸となる第一嵌合部30(第一の嵌合部)が形成された第一ワッシャ片11(第一の部材)と、円弧状に形成されると共に一端部から前記円弧方向に凹となる第二嵌合部40(第二の嵌合部)が形成された第四ワッシャ片14(第二の部材)と、を抜き取る抜き取り工程と、
前記第一ワッシャ片11(第一の部材)の前記第一嵌合部30(第一の嵌合部)と前記第四ワッシャ片14(第二の部材)の前記第二嵌合部40(第二の嵌合部)とを嵌合させる嵌合工程と、
前記第一嵌合部30(第一の嵌合部)及び前記第二嵌合部40(第二の嵌合部)のうち一方の嵌合部の側面を、他方の嵌合部の側面に押し込んでかしめ部36を形成するかしめ工程S4と、
を具備するものである。
【0071】
このような構成により、素材Mから、隣り合うワッシャ片10の間を比較的小さくして複数のワッシャ片10を得ることができる。そして、複数のワッシャ片10においてそれぞれの第一嵌合部30及び第二嵌合部40を嵌合させると共に、かしめ部36で固定することにより1つのワッシャ1を得ることができる。こうして、素材Mから得られるワッシャ1の個数を増やすことができ、材料歩留まりを向上させることができる。
【0072】
また、ワッシャ1の製造方法においては、
前記第一嵌合部30(第一の嵌合部)は、
前記第一ワッシャ片11(第一の部材)の一端部から第一基端部31を介して配置された第一先端部32を有し、
前記かしめ工程S4において、
前記かしめ部36を、前記第一嵌合部30(第一の嵌合部)の前記第一先端部32に形成するものである。
【0073】
このような構成により、第一嵌合部30と第二嵌合部40とを強固に固定し、ひいては複数のワッシャ片10同士(例えば第一ワッシャ片11と第四ワッシャ片14と)を強固に固定することができる。
【0074】
また、ワッシャ1の製造方法においては、
前記かしめ工程S4において、
前記第一嵌合部30(第一の嵌合部)の前記第一先端部32がプレスされることにより、前記かしめ部36と共に内側に凹んだ油溜まり部35を形成するものである。
【0075】
このような構成により、ワッシャ1が前記軸部材と摺動される際、摺動面(ワッシャ1の前側面)に供給する潤滑油を溜めておくことができる。
また、ポンチ53の昇降という一つの動作を行うことにより、第一先端部32にかしめ部36及び油溜まり部35を同時に形成することができるため、かしめ部36及び油溜まり部35を簡易に形成することができる。
【0076】
なお、第一ワッシャ片11は、第一の部材の実施の一形態である。
また、第四ワッシャ片14は、第二の部材の実施の一形態である。
また、かしめ部36は、固定部の実施の一形態である。
【0077】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0078】
例えば、ワッシャ1はスラスト方向の荷重を受ける用途(スラストワッシャ)に限らず、任意の用途に使用することができる。
【0079】
また、ワッシャ1は円環状のものに限らず、半円状(中心角が180度の円弧状)に形成されるものや、その他の円弧状(例えば、中心角が90度の円弧状、中心角が60度の円弧状等)に形成されるものであっても良い。
【0080】
また、ワッシャ片10は中心角が90度の円弧状のものに限らず、半円状(中心角が180度の円弧状)に形成されるものや、その他の円弧状(例えば、中心角が60度の円弧状等)に形成されるものであっても良い。
【0081】
また、かしめ部36は、第一嵌合部30の第一先端部32の側面に形成されるものに限定されず、第二嵌合部40の第二先端部42の側面に形成されるものであってもよい。また、かしめ部36は、第一嵌合部30の第一先端部32の側面及び第二嵌合部40の第二先端部42の側面の両方に形成されるものであってもよい。
【0082】
また、本実施形態において、かしめ部36は、ポンチ53により第一先端部32が押し拡げられることにより形成されたものであったが、これに限定するものではない。すなわち、かしめ部36は、第一嵌合部30の側面が第二嵌合部40の側面に押し込まれた状態に形成することができる種々の方法を採用して形成することができる。
【0083】
また、素材Mからワッシャ片10を抜き取る方法は、プレス加工に限定するものではなく、例えばレーザ切断装置を用いるものであってもよい。このように、レーザ切断装置を用いることにより、第一嵌合部30及び第二嵌合部40の形状の設計自由度を向上させることができる。
【0084】
以下では、
図10及び
図11を用いて、別実施形態に係るワッシャの構成について説明する。
【0085】
図10(a)は、第二実施形態に係るワッシャ2の構成の一部を示した正面図である。
図10(a)に示すように、ワッシャ2においては、第一嵌合部30のうち、第一基端部31が略矩形状に形成されると共に、第一先端部32が略四角形状に形成される。また、第二嵌合部40のうち、第二基端部41が略矩形状に形成されると共に、第二先端部42が略四角形状に形成される。このように、第一嵌合部及び第二嵌合部は、丸みを帯びた形状に限定されず、角を有する形状であってもよい。
【0086】
図10(b)は、第三実施形態に係るワッシャ3の構成の一部を示した正面図である。
図10(b)に示すように、ワッシャ3においては、ワッシャ片10のそれぞれの端部に第一嵌合部30及び第二嵌合部40の両方が形成される。このような構成により、複数のワッシャ片10同士をより強固に固定することができる。
【0087】
図11は、第四実施形態に係るワッシャ4の構成を示した正面図である。
図11に示すように、ワッシャ4においては、4つのワッシャ片10のうち、第一ワッシャ片11及び第三ワッシャ片13だけに第二嵌合部40が形成される。また、4つのワッシャ片10のうち、第二ワッシャ片12及び第四ワッシャ片14だけに第一嵌合部30が形成される。このように、ワッシャ4においては、2種類のワッシャ片10を用いて、当該1つのワッシャを形成することができる。