【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酵素β−ガラクトシダーゼは、食品および酪農産業において様々な用途があるものの、酵素の安定性がほどほどであることが、生体触媒が工業的規模で広く実施されるのを妨げる制限のうちの一つとなっている。触媒としてのそれらの能力を全面的に探求する研究の結果、酵素安定化の適切な戦略が種々得られた。例えば、酵素は種々の方法、例えば物理吸着、封入、種々の支持体上への共有結合法により固定化される。固定化がβ−ガラクトシダーゼの産生阻害を低減するのによい効果を有することが示されている。さらに、酵素を固定化すると、酵素の再使用とGOS合成方法の連続操作が容易になる。
【0007】
周知のように、β−ガラクトシダーゼに触媒される合成は動的に制御される[2]。すなわち、ある時点で形成されたガラクト−オリゴサッカライドの実際の量が、ラクトースおよび/またはGOSの所望の合成反応対不所望の加水分解反応の相対速度に大きく依存する。この相対速度は、今度は、ラクトース濃度だけでなく形成されるGOS種に依存するとともに、さらに酵素と合成および加水分解の結果物との相互作用に依存する。
【0008】
このように、種々のGOS種はさらなるGOS合成に対する受容体としてだけでなく、加水分解の基質としても用いることができる。加水分解反応は、普通、GOS濃度のピークが過ぎ、反応混合物中の主基質であるラクトースの濃度が低下して低い値となる反応後期に優勢になる。一方、製品が蓄積するにつれて製造阻害が生じ、その結果、GOS合成の阻害か、GOSの加水分解のいずれかが起きることがある。
【0009】
β−ガラクトシダーゼを用いたラクトースからのGOS合成の収量を増加するさまざまな要因が当技術において知られている。GOSの製造、性質および応用についての報告は、Torres et al.を参照のこと。トランスガラクトシル化の反応条件としては、ラクトース濃度が高く、温度が高く、かつ反応媒体中の水の活動度(water activity)が低いことが必要である。温度、基質濃度および酵素の起源はオリゴサッカライドの酵素合成に重要な役割を果たしている。しかしながら、当初ラクトース濃度の影響がはるかに大きいことがあり得る。出発物質の高濃縮ラクトース溶液の使用に関しては、最大GOS収量は、濃度範囲が30%〜40%(w/v)までは、主に当初ラクトース濃度によって大きく影響されることが示されている。一般に、より多く、より大きなガラクトオリゴサッカライド(GOS)を製造することができるのは、当初ラクトース濃度をより高くして用いた場合である。ラクトースの溶解度は室温では比較的に低いが、温度が上昇すると顕著に増加するので、高温がほとんどの場合に望ましい。
【0010】
温度は高い方がオリゴサッカライドの収量を高くするのに好適である。温度を高くすると収量が高くなることは、当初ラクトース濃度を高くして操作し、その結果として昇温した場合に得られる追加の利点である。一方、GOSの合成に対する固定化β−ガラクトシダーゼの能力、例えばリサイクルを効率化することによるコスト負担の低減、操作およびプロセス制御の容易化、並びにプロセスの連続化が広く認識されている。しかしながら、GOSの製造のために固定化β−ガラクトシダーゼを工業的に使用することは報告されていない。Urretia et al.の研究の例では、固定化されたB.circulansのβ−ガラクトシダーゼがリサイクル可能であることが示されたが、この場合、反応は、60℃において、酵素用量を高く(ラクトースの〜18%(重量/重量))した50%(重量/重量)ラクトース溶液中で、バッチ操作を繰り返すことにより行われた。
【0011】
従って、GOS合成は、一般的に、固定化酵素を用いて、高い当初ラクトース濃度を用いる条件下で行い、高いGOS収量を得るとともに加水分解副反応を低減するようにすることが好ましい[3,4,5]。
【0012】
しかしながら、本発明の発明者らが見出したところによると、研究の設定で行われた最適化研究から得られる結果が常に工業的規模におけるGOS合成−例えば、食品産業では、通常、経済的理由から、比較的低い酵素濃度(および/または小体積の固定化酵素)と長時間(>20時間)のインキュベーション期間を用いて高い生産性と高い空時収量とを実現するようにしている−の良い指針を与える訳ではない。特に、本発明の発明者らの見出したところでは、濃縮度の高い(55%、重量/重量)ラクトース溶液をGOS合成のためのラクトース供給源として用い、60℃でバッチ操作を繰り返すと、第2サイクルの操作の後に固定化酵素の当初活性LUの約95%が失われてしまう。
【0013】
従って、本発明の発明者らは、工業的規模にもかかわらず、固定化酵素の反復再使用を可能にし、酵素活性を実質的に維持するとともに、高いGOS収量および費用効率の高い操作を犠牲とすることのない、GOS合成のための改善された反応条件を開発することに着手した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
意外にも、上述の目的の成就が、ラクトース供給源として、溶解ラクトースの高濃縮溶液の替わりに結晶性ラクトースのスラリを用いることにより、達成されることが見出された。さらに詳しくは、55%(重量/重量)のラクトーススラリを固定化酵素を用いて58℃で24時間インキュベートした際に、当初LU酵素活性(以下に定義されるLUとして測定された)の20%が第3反応サイクルの後に維持された。最終GOS含有量は、当初6回のバッチの間、60%(乾物(dm))を上回った。いかなる理論にも拘泥するつもりはないが、以下のように推測される。すなわち、高温下の完全溶解により調製された従来の高濃縮ラクトース溶液は、インキュベーション期間を長くするとより低い反応温度において再結晶する「準安定」溶液であると考えるべきであり、これにより酵素担体の表面上または細孔中のラクトースの結晶形成を引き起こし、おそらくは、溶媒露出度(accessibility)が低下するだけでなく、固定化酵素の失活(変性)をもたらすことになる。意外にも、このことは「事前に結晶化された」ラクトースのサスペンジションを使用することで回避できる。この場合、ラクトースの結晶は基質プールとして機能し、溶解されたラクトースは自由に酵素担体の細孔に接触することができる。このように、「事前に結晶化された」ラクトースを使用することで、結晶化されたラクトースをより高い温度に予め加熱することにっよてラクトースを完全に溶解させることを必要とせず、酵素の変性を遅らせることが可能であり、その結果、持続可能な工業的プロセスが実現される。
【0015】
従って、本発明が提供するのは、ラクトースからガラクト−オリゴサッカライド(GOS)を調製する方法であって、ラクトース供給源を、好ましくは、固体担体上に固定化されたβ−ガラクトシダーゼと接触させること、およびGOS合成をさせることとを含み、前記ラクトース供給源は、結晶性ラクトースの水系スラリーである方法である。
【0016】
本明細書において用いられているように、「水系スラリー」という用語は、未溶(溶けていない)ラクトース結晶の水系混合物(サスペンジョン)であって、すべてのラクトースが溶解されている訳ではなく、既溶(溶けている)ラクトースの濃度が所与の反応温度におけるラクトースの溶解度に等しいものをいう。上述のように、ラクトースの溶解度は温度に強く依存する。
図1は、中性pHにおける水中ラクトースの溶解度−温度の関係を示す。
【0017】
典型的に、本発明において使用する水系ラクトーススラリは17%〜75%(重量/重量)のラクトースを含有している。実地では、スラリ中のラクトース含有量が高いと、反応炉中で濃縮された製品を得ることができ、このものは、さらに濃縮して最終製品の75%(重量/重量)GOSシロップを得るのにさほどエネルギーを必要としない。従って、経済的理由と非常に良好なGOS収量とから、ラクトーススラリは、総量で50〜70%(重量/重量)のラクトースを含有しているのが好ましい。例えば、水系ラクトーススラリは少なくとも53%(重量/重量)、好ましくは、少なくとも55%(重量/重量)のラクトースを含有する。酵素の安定性を犠牲にせずに反応混合物の全乾物含有量を増加させることにより、本発明の方法は、非常に高い生産性と反応炉の体積(reactor volume)当たりのGOS生産量を提供する。
【0018】
本発明に使用するスラリは、結晶性ラクトース(一水和物)を水性液体に添加することにより容易に調製される。当業者はスラリを得るのに必要とされる所与の温度におけるラクトース濃度を、ラクトース溶解度曲線に基づいて計算することができる。例えば、下記の経験式を用いて所与の反応温度(T)における既溶ラクトースの溶解度を計算することができる。
ラクトースの溶解度=0.003*T^2+0.2713*T+9.778
【0019】
そこで、58℃におけるラクトースの溶解度を計算すると、35.6%(重量/重量)であった。従って、%未溶ラクトース結晶は、ラクトース濃度から58℃におけるラクトースの溶解度を減じたものとなる。このようにして、反応系中に存在する未溶ラクトース結晶の百分率(%)は19.4%(55%引く35.6%)(重量/重量)と計算される。
【0020】
典型的には、適切な量のラクトースをバッファ溶液に室温で直接添加し、次いで所望の反応温度に加熱する。ラクトースを水に添加し、次いでラクトーススラリのpHを、例えば苛性(NaOH)溶液またはバッファ溶液を添加することにより、酵素活性の範囲内である、作業pH範囲のpH約3.5〜約7.5に調整することが可能である。
【0021】
当業者の認識によれば、個々の固定化β−ガラクトシダーゼの至適pHはその起源および固定化方法のタイプによって決まり、酵素的転換の間に低下する。従って、pHを酵素的転換の間、苛性溶液を段階的に添加することにより、またはpHスタット・モードにより調整することが必要になることがある。
【0022】
上述のように、高濃縮ラクトース溶液を用いる従来法とは対照的に、本発明の方法はラクトースを完全に溶解させるためにラクトースをそれほど加熱する必要がない。これにより、エネルギー消費、従って加熱工程に関連する操業コストが低減されるだけでなく、ラクトース溶液がより黄味を帯びるといった不所望の色の変化を受けることが回避される。
【0023】
しかしながら、実地では、ラクトースを完全に溶解して、ラクトース結晶中に存在していることがある不溶性のタンパク質凝集体または不溶性無機塩、例えばリン酸カルシウムまたはクエン酸カルシウムを除去するようにすることも場合によっては望まれる。従って、ラクトーススラリの調製は、ラクトース供給源を高い温度(T1)に加熱してラクトースを溶解し、上述の不溶性粒子を除去し、次いで所望の反応温度(T2)になるまで冷却して溶解されたラクトースを晶出させることにより実現することも、もちろん可能である。以下に示すように、>58%(重量/重量)の完全に溶解されたラクトース溶液を加熱し、次いで約60℃の温度に冷却するとラクトースの自発的な結晶が得られた。
【0024】
良好な結晶の形成と結晶成長はラクトースの抽出と精製に決定的に重要である。α−ラクトースは93.5℃を下回る温度で過飽和溶液から晶出し、さまざまな形状の結晶を生成する。通常得られるものは、プリズム形状とトマホーク形状の結晶であり、硬く、ごくわずかしか溶けない。93.5℃を上回ると、β−ラクトースが、通常、不等辺ダイアモンドとして晶出する。水の分子がラクトースの結晶性α形と関係づけられており、そのため、このものは一水和物と呼ばれる。しかしながら、120℃を超える温度および真空下では、この水は失われ、吸湿性の高いα−ラクトース無水塩が形成される。ラクトースが水に溶解すると、変旋光が起きる。すなわち、α−アノマーとβ−アノマーが相互転換して、20℃において62.7%β−ラクトース溶液を生成する。α−ラクトースははるかに溶けにくい種であるため、その溶液を濃縮するとα−ラクトースが沈殿し、さらに変旋光が起きて同じ平衡位置を維持する。
【0025】
本発明の方法は、好ましくは、食品等級または医薬品等級のラクトース、あるいは食品等級と医薬品等級の間の精製ラクトースの使用を含む。食品等級のラクトースは、乳清または透過物(乳清タンパク質濃縮物の製造の副産物)を濃縮して過飽和溶液としてラクトースを晶出し、次いで、得られたラクトース結晶を取り出し乾燥することによって製造される。結晶化並びに粉砕および分画選別の特定の過程を実行することにより、粒径分布の異なる複数のタイプのラクトースが生成される。今日、産業界はあらゆる用途に向けて、超微細結晶から極粗大結晶にわたるいくつかのタイプのラクトースを提供している。ラクトース含有量は99%以上であり、硫酸塩灰分の含有量は0.3%以下である。これらの含有量はいずれも乾燥重量に基づいている。10%溶液のpHは4.5以上または7.5以下である。
【0026】
精製されたラクトースまたは医薬品等級のラクトースを得るには、精製過程が必要である。この精製過程は、ラクトース結晶を再溶解し、得られた溶液を未使用の活性炭を用いて処理することを含み、活性炭は、リボフラビンと種々のタンパク質をはじめとする多数の溶質を吸着する。また、プロテオースペプトンとして知られる一群のポリペプチドがβ−カゼインから導かれ、これもまた吸着される。これらのペプトンはプラスミンの作用により精製される。プラスミンは血流からウシの乳房中のミルクに移動するタンパク質分解酵素である。さらに、タンパク質は、液のpHを一時的に調整することにより、活性炭上に吸着させてもよい。この活性炭は凝集と、ろ過とにより取り出され、廃棄される。結晶化の後、遠心分離により結晶を分別し、冷水を用いて洗浄し、乾燥して、高純度白色の医薬品等級のラクトースが得られる。結晶を製粉し、または篩い分けして特定の粒径分布を持つ製品を生成する。
【0027】
ラクトーススラリを固定化β−ガラクトシダーゼからなる調整物と接触させ、得られた反応混合物を、GOS合成を促進する条件下でインキュベートする。当業者が了解するように、選別された反応温度はGOS合成と酵素安定性とに適しているべきである。従って、至適温度は、固定化酵素が経済的に至適な態様で、例えば、個々の選別された固定化β−ガラクトシダーゼにおいて固定化酵素の半減期に達したときに固定化酵素を取り除くことによって、再使用できる温度である。典型的には、GOS合成は、約20℃と約60℃の間の反応温度において実行される。一実施の形態において、反応は40〜60℃、好ましくは、45〜55℃、例えば、約50℃で行われる。
【0028】
反応混合物は、所望の量のGOSが得られるまでインキュベートされる。インキュベーション条件と使用した固定化酵素の量とによって、本発明のGOS合成は、一般に、0.5時間〜100時間進行可能である。しかしながら、GOSの工業的製造は、一般に、関与している他の操作ユニット、例えば精製、脱塩、脱色等との合理的な統合を必要とする。このように、工業的規模のGOS合成は、実際上および経済的理由から、好ましくは、少なくとも6時間または10時間、好ましくは、12時間〜36時間の反応期間の間に実行される。例えば、高いGOS収量と向上された酵素安定性とにより、本発明の方法は、約18時間〜24時間のインキュベーション時間を用いて好適に実施される。これにより、従業員の作業日に柔軟に調整することが可能となり、それと同時に多量の酵素が不必要になる。その理由は反応炉中に大量の固定化酵素が存在すると生産性と空時収量とが低減するからである。
【0029】
例えば、固定化β−ガラクトシダーゼの用量は、30LU/グラム(当初ラクトース)以下、好ましくは、25LU/グラム以下、より好ましくは、約10〜20LU/グラムである。本明細書において用いられているように、1ラクターゼ単位(LU)は、40℃およびpH6.0における反応の初期段階において毎分1μモルのグルコースを放出する酵素の量であると定義される。ラクトースがラクターゼにより加水分解されると、ラクトースはグルコースとガラクトースとに転換される。ラクターゼ活性は、放出されたグルコースの量を測定することにより決定される。
【0030】
本発明において開示されたラクトース「スラリ」反応を用いてGOS合成を行ういくつかの方法がある。第1の実施の形態では、スラリは個別の反応器中に置かれ、未溶ラクトース結晶は、マイクロフィルターにより保持される。次いで、既溶ラクトースは、固定化β−ガラクトシダーゼが配置されている充填層反応器(Packed Bed Reactor;PBR)にポンプを用いて送給される。PBRの生産物は反応器に戻される。このようにして、一定の時間の後、ラクトースは完全に溶解し、高いGOS濃度を得ることができる。
【0031】
第2の実施の形態では、ラクトース結晶はGOS溶液に徐々に添加される。ラクトースは溶解されPBRにポンプを用いて送給され、この溶解されたラクトースはGOSに変換される。
【0032】
第3の実施の形態では、反応混合物の撹拌が困難にならないように、不溶性ラクトース結晶のすべてを一度に添加することはない。例えば、ラクトース結晶は、現存する反応混合物に直接添加して、当初に存在していたラクトース結晶が溶解されて完全にGOSに転換された分を補給する。反応が進行するにつれてラクトース結晶の消失/溶解が目視で検出されると、さらにラクトース結晶を添加して、高濃度、例えば75%のGOS溶液が得られるまで、反応を継続することが可能である。
【0033】
了解されるように、本発明の方法は、広範囲の供給源、例えば微生物、植物および動物に由来するβ−ガラクトシダーゼを用いて実施することが可能である。バクテリア、真菌および酵母といった微生物が、工業的応用のためのβ−ガラクトシダーゼの好ましい供給源であると考えられる。適切な微生物源の概説はPanesar 2010を参照のこと。好ましくは、β−ガラクトシダーゼは、A.oryzae、A.niger、B.circulans、S.singularis、T.aquaticus、K.lactis、K.marxianusおよびE.coliからなる群より選択された微生物から単離される。いくつかの酵素は、特定の鎖長と結合の向きとを有するオリゴサッカライドの合成に対する高い特異性を有する。例えば、B.circulansに由来するガラクトシダーゼは、β−1,4結合に対して高い特異性を有し、トランスグルコシル化により、順に、主としてβ−1,4結合されたガラクトシルオリゴサッカライド(GOS)を生成する。一方、Aspergillus oryzaeに由来するβ−ガラクトシダーゼは、主としてβ−1,6GOSを与える。非常に良好な結果がB.circulansのβ−ガラクトシダーゼを用いて得られた。このものは大和化成、天野社(Daiwa Kasei、Amano、Japan)から市販の酵素標品Biolacta(登録商標)N5の形で入手できる。
【0034】
本発明の方法は、固定化β−ガラクトシダーゼと一緒にラクトーススラリをインキュベートすることを特徴とする。さまざまな酵素固定化方法が当技術において知られている。それらの方法は、典型的には、β−ガラクトシダーゼが共有結合、物理吸着(電荷−電荷またはファン・デル・ワールス相互作用)、ゲルカプセル化、またはこれらの組合せにより多孔質担体に固定化されたものを用いる。Panesar 2010の表2は、β−ガラクトシダーゼの種々の供給源と固定化方法の概説を提供している。そのほかに、無担体の固定化酵素、例えばCLEC(架橋された酵素結晶)またはCLEA(架橋された酵素凝集体)も利用してもよい[6,7]。
【0035】
本発明は、いずれかのタイプの酵素固定化に限定されない。しかしながら、酵素の直接共有結合を促進する担体が、操作が容易である点、および酵素分子が反応混合物中に漏れ出さない点で好ましい。
【0036】
以下に示すように、固体担体に共有結合により固定化されたβ−ガラクトシダーゼを用いて良好な結果が得られた。好ましくは、固体担体は、活性化されたアクリルポリマー、好ましくは、機能化(functionalized)ポリメタクリレートマトリックスである。例えば、ヘキサメチレンアミノ−機能化ポリメタクリレートマトリックス(セパビーズ(Sepabeads))またはマクロ多孔質アクリルエポキシ−活性化樹脂、例えばEupergit C 250Lを用いることができる。
【0037】
反応が所望のレベルに達した後、当技術において知られた方法によりGOS合成を停止することができる。例えば、固定化β−ガラクトシダーゼは残余の反応混合物から、ろ過または、固定化酵素の粒子の反応器の底部に設けられた篩での保持により、物理的に分離される。
【0038】
上記の説明のように、本発明の方法は、GOS合成のいくつかの連続するバッチ(「サイクル」)を含む反復バッチ操作系に有利に用いられる。さらに、本発明の方法は、いくつかのバッチの間で固定化酵素の再利用が可能である。これは、GOS合成反応の際のラクトース結晶化の有害作用がラクトーススラリをラクトース供給源として用いることにより回避されるからである。これにより、酵素の半連続操作および多数回再使用が可能となる。
【0039】
そこで、一実施の形態では、本発明の方法は、さらに、GOS合成の第1サイクルに続いて、(a)前記固定化β−ガラクトシダーゼを洗浄する工程と、(b)任意に、前記洗浄された固定化β−ガラクトシダーゼをさらなる使用まで貯蔵する工程と、(c)前記工程(a)の前記洗浄された固定化β−ガラクトシダーゼを、前記酵素が再使用されるように、ラクトーススラリに接触させることにより、1つ以上のGOS合成後続サイクルを実行する工程とを備える。
【0040】
酵素洗浄に先だって、典型的には、酵素は、GOS−含有反応混合物から物理的に分離される。例えば、GOS合成に用いられる酵素が「ティーバッグ」状の小袋に入れて用いられる場合、このティーバッグは反応混合物から単に取り出すだけでよい。あるいはまた、GOSを、洗浄中に固定化酵素が反応器内に残っている間に反応器から取り出してもよい。
【0041】
例えば、酵素は脱塩水および/またはGOS合成反応において用いられたものと同じバッファを用いて数回洗浄される。pH約4.5の酢酸溶液を用いて洗浄することにより固定化酵素を消毒して、例えば微生物カウントを低下させることが可能である。酵素は、バッファ中で10℃を下回る温度、好ましくは約4℃において貯蔵してもよい。適切なバッファとしては、pH5.5〜7.5の範囲内のバッファが挙げられる。例えば、酵素は、再使用に先立って、0.1M K
2HPO
4/KH
2PO
4バッファ、pH6.0〜7.0、中、4℃において貯蔵される。一実施の形態では、本発明の方法は、再使用される固定化β−ガラクトシダーゼを用いてGOS合成を少なくとも5サイクル、好ましくは、少なくとも8サイクル、より好ましくは、少なくとも10サイクル実行する。
【0042】
さらなる態様では、固定化酵素は、結晶性ラクトースの水系スラリーと固体担体上に固定化されたβ−ガラクトシダーゼとからなる組成物を提供する。好ましいラクトース濃度、酵素供給源、および酵素濃度は上述の通りである。