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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796516
(24)【登録日】2020年11月18日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】電子顕微鏡および試料高さの調整方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20201130BHJP
【FI】
   H01J37/20 C
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-36765(P2017-36765)
(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公開番号】特開2018-142481(P2018-142481A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2019年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 仁嗣
【審査官】 中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−281446(JP,A)
【文献】 特開平03−152846(JP,A)
【文献】 特開平04−092348(JP,A)
【文献】 特開平06−096710(JP,A)
【文献】 特開2000−331637(JP,A)
【文献】 米国特許第05300776(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
H01J 37/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線源と、
前記電子線源から放出された電子線を試料に照射する照射レンズと、
前記試料を透過した電子線で電子顕微鏡像を結像する対物レンズと、
前記試料を光軸に沿ったZ方向に移動させるZ移動機構を備えている試料ステージと、
前記対物レンズのレンズ電流が基準電流のときにジャストフォーカスとなるように前記試料ステージを制御して前記試料のZ位置の調整を行うZ位置調整部と、
を含み、
前記Z位置調整部は、
前記試料のZ位置が第1位置のときにジャストフォーカスとなる前記対物レンズのレンズ電流である第1フォーカス電流を求める第1処理と、
前記第1フォーカス電流と前記基準電流との差から、当該差に対応するZ位置の変化量を求める第2処理と、
前記試料のZ位置が、前記第1位置から前記第2処理で求めた変化量だけ移動した第2位置となるように前記試料ステージを制御する第3処理と、
前記試料のZ位置が前記第2位置のときにジャストフォーカスとなる前記対物レンズのレンズ電流である第2フォーカス電流を求める第4処理と、
前記第1フォーカス電流および前記第2フォーカス電流に基づいて、前記基準電流のときにジャストフォーカスとなる前記試料のZ位置を求める第5処理と、
前記第5処理で求めたZ位置に前記試料が位置するように前記試料ステージを制御する第6処理と、
を行う、電子顕微鏡。
【請求項2】
請求項1において、
前記Z位置調整部は、前記第1処理において、
前記対物レンズのレンズ電流を求めた前記第1フォーカス電流に設定する処理と、
前記対物レンズのレンズ電流が求めた前記第1フォーカス電流に設定された状態で、再び、前記第1フォーカス電流を求める処理と、
を、n回目に求めた前記第1フォーカス電流とn+1回目に求めた前記第1フォーカス電流との差が所定値以下となるまで、繰り返し行う、電子顕微鏡。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記Z位置調整部は、前記第4処理において、
前記対物レンズのレンズ電流を求めた前記第2フォーカス電流に設定する処理と、
前記対物レンズのレンズ電流が求めた前記第2フォーカス電流に設定された状態で、再び、前記第2フォーカス電流を求める処理と、
を、n回目に求めた前記第2フォーカス電流とn+1回目に求めた前記第2フォーカス電流との差が所定値以下となるまで、繰り返し行う、電子顕微鏡。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記電子線源から放出された電子線を偏向して、前記試料に対する電子線の入射角度を変えるための偏向部を含み、
前記Z位置調整部は、前記第1処理において、
前記試料に対する電子線の入射角度を所定角度だけ変化させる前後での像のシフトを表す像シフトベクトルを、前記対物レンズのレンズ電流を変化させて、複数取得する処理と、
複数の前記像シフトベクトルに基づいて、前記試料に対する電子線の入射角度を前記所定角度だけ変化させる前後での像のシフト量が最も小さくなる最小像シフトベクトルを算出する処理と、
前記最小像シフトベクトルに基づいて、前記第1フォーカス電流を求める処理と、
を行う、電子顕微鏡。
【請求項5】
透過電子顕微鏡において、対物レンズのレンズ電流が基準電流のときにジャストフォーカスとなるように、試料の光軸に沿ったZ方向の位置であるZ位置を調整する試料高さの調整方法であって、
前記試料のZ位置が第1位置のときにジャストフォーカスとなる前記対物レンズのレンズ電流である第1フォーカス電流を求める第1工程と、
前記第1フォーカス電流と前記基準電流との差から、当該差に対応するZ位置の変化量を求める第2工程と、
前記試料のZ位置を、前記第1位置から前記第2工程で求めた変化量だけ移動した第2位置に移動させる第3工程と、
前記試料のZ位置が前記第2位置のときにジャストフォーカスとなる前記対物レンズのレンズ電流である第2フォーカス電流を求める第4工程と、
前記第1フォーカス電流および前記第2フォーカス電流に基づいて、前記基準電流のときにジャストフォーカスとなる前記試料のZ位置を求める第5工程と、
前記第5工程で求めたZ位置に前記試料を移動させる第6工程と、
を含む、試料高さの調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡および試料高さの調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)は、試料に電子線を照射し、試料を透過した電子線を対物レンズで結像させて像を得、その像を中間レンズおよび投影レンズで拡大して、試料拡大像を観察する装置である。
【0003】
透過電子顕微鏡の試料ステージは、試料をX方向に移動させるためのX移動機構、試料をY方向に移動させるためのY移動機構、および試料をZ方向に移動させるためのZ移動機構を備えている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
透過電子顕微鏡では、観察や分析を行う前に、試料の高さ(Z位置)を調整しなければならない。具体的には、透過電子顕微鏡では、対物レンズのレンズ電流をある決まった電流(基準電流)としたときにジャストフォーカスとなるように、試料のZ位置を調整する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−212067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8は、試料のZ位置の調整方法の一例(参考例)を示すフローチャートである。
【0007】
まず、試料が初期位置であるZ位置Z0に位置し、対物レンズのレンズ電流が基準電流Isである状態において、ジャストフォーカスとなる対物レンズのレンズ電流(以下「フォーカス電流I」ともいう)を算出する(ステップS2)。
【0008】
次に、対物レンズのレンズ電流の変化に対する試料のZ位置の変化を表す係数D(μm/A)と、対物レンズの基準電流Isを用いて、Z位置の変化量ΔZを次式(a)で計算する(ステップS4)。
【0009】
ΔZ=D×(I−Is) ・・・(a)
【0010】
次に、算出された変化量ΔZだけ試料を移動させる(ステップS6)。基準電流IsのときにジャストフォーカスとなるZ位置をZsとすると、Z位置Zsは次式(b)で表される。
【0011】
Zs=Z0+ΔZ ・・・(b)
【0012】
以上の工程により、試料のZ位置の調整を行うことができる。
【0013】
図8に示す試料のZ位置の調整方法では、上記式(a)に示すように、Z位置の変化量ΔZを算出するために係数Dを用いている。ここでは、係数Dを定数として用いているが、実際の対物レンズのレンズ電流の変化に対する試料のZ位置の変化は、Z位置によって
異なる。そのため、図8に示す係数Dを用いた試料のZ位置の調整方法では、Z位置Zsを正確に求めることができない場合がある。
【0014】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、試料のZ位置の調整を正確に行うことができる電子顕微鏡を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、試料のZ位置の調整を正確に行うことができる試料高さの調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明に係る電子顕微鏡は、
電子線源と、
前記電子線源から放出された電子線を試料に照射する照射レンズと、
前記試料を透過した電子線で電子顕微鏡像を結像する対物レンズと、
前記試料を光軸に沿ったZ方向に移動させるZ移動機構を備えている試料ステージと、
前記対物レンズのレンズ電流が基準電流のときにジャストフォーカスとなるように前記試料ステージを制御して前記試料のZ位置の調整を行うZ位置調整部と、
を含み、
前記Z位置調整部は、
前記試料のZ位置が第1位置のときにジャストフォーカスとなる前記対物レンズのレンズ電流である第1フォーカス電流を求める第1処理と、
前記第1フォーカス電流と前記基準電流との差から、当該差に対応するZ位置の変化量を求める第2処理と、
前記試料のZ位置が、前記第1位置から前記第2処理で求めた変化量だけ移動した第2位置となるように前記試料ステージを制御する第3処理と、
前記試料のZ位置が前記第2位置のときにジャストフォーカスとなる前記対物レンズのレンズ電流である第2フォーカス電流を求める第4処理と、
前記第1フォーカス電流および前記第2フォーカス電流に基づいて、前記基準電流のときにジャストフォーカスとなる前記試料のZ位置を求める第5処理と、
前記第5処理で求めたZ位置に前記試料が位置するように前記試料ステージを制御する第6処理と、
を行う。
【0016】
このような電子顕微鏡では、試料のZ位置と、そのZ位置におけるフォーカス電流の組み合わせから、対物レンズのレンズ電流が基準電流のときにジャストフォーカスとなるZ位置を算出して試料のZ位置を調整するため、例えば図8に示すように係数Dを用いて基準電流のときにジャストフォーカスとなるZ位置を算出する場合と比べて、正確に、基準電流のときにジャストフォーカスとなるZ位置を算出することができる。したがって、このような電子顕微鏡では、正確に試料のZ位置の調整を行うことができる。
【0017】
(2)本発明に係る電子顕微鏡において、
前記Z位置調整部は、前記第1処理において、
前記対物レンズのレンズ電流を求めた前記第1フォーカス電流に設定する処理と、
前記対物レンズのレンズ電流が求めた前記第1フォーカス電流に設定された状態で、再び、前記第1フォーカス電流を求める処理と、
を、n回目に求めた前記第1フォーカス電流とn+1回目に求めた前記第1フォーカス電流との差が所定値以下となるまで、繰り返し行ってもよい。
【0018】
このような電子顕微鏡では、第1フォーカス電流を正確に求めることができる。
【0019】
(3)本発明に係る電子顕微鏡において、
前記Z位置調整部は、前記第4処理において、
前記対物レンズのレンズ電流を求めた前記第2フォーカス電流に設定する処理と、
前記対物レンズのレンズ電流が求めた前記第2フォーカス電流に設定された状態で、再び、前記第2フォーカス電流を求める処理と、
を、n回目に求めた前記第2フォーカス電流とn+1回目に求めた前記第2フォーカス電流との差が所定値以下となるまで、繰り返し行ってもよい。
【0020】
このような電子顕微鏡では、第2フォーカス電流を正確に求めることができる。
【0021】
(4)本発明に係る電子顕微鏡において、
前記電子線源から放出された電子線を偏向して、前記試料に対する電子線の入射角度を変えるための偏向部を含み、
前記Z位置調整部は、前記第1処理において、
前記試料に対する電子線の入射角度を所定角度だけ変化させる前後での像のシフトを表す像シフトベクトルを、前記対物レンズのレンズ電流を変化させて、複数取得する処理と、
複数の前記像シフトベクトルに基づいて、前記試料に対する電子線の入射角度を前記所定角度だけ変化させる前後での像のシフト量が最も小さくなる最小像シフトベクトルを算出する処理と、
前記最小像シフトベクトルに基づいて、前記第1フォーカス電流を求める処理と、
を行ってもよい。
【0022】
このような電子顕微鏡では、試料に対する電子線の入射角度を所定角度だけ変化させる前後での像のシフト量が最も小さくなる最小像シフトベクトルに基づいて第1フォーカス電流を求めるため、第1フォーカス電流を正確に求めることができる。
【0023】
(5)本発明に係る試料高さの調整方法は、
透過電子顕微鏡において、対物レンズのレンズ電流が基準電流のときにジャストフォーカスとなるように、試料の光軸に沿ったZ方向の位置であるZ位置を調整する試料高さの調整方法であって、
前記試料のZ位置が第1位置のときにジャストフォーカスとなる前記対物レンズのレンズ電流である第1フォーカス電流を求める第1工程と、
前記第1フォーカス電流と前記基準電流との差から、当該差に対応するZ位置の変化量を求める第2工程と、
前記試料のZ位置を、前記第1位置から前記第2工程で求めた変化量だけ移動した第2位置に移動させる第3工程と、
前記試料のZ位置が前記第2位置のときにジャストフォーカスとなる前記対物レンズのレンズ電流である第2フォーカス電流を求める第4工程と、
前記第1フォーカス電流および前記第2フォーカス電流に基づいて、前記基準電流のときにジャストフォーカスとなる前記試料のZ位置を求める第5工程と、
前記第5工程で求めたZ位置に前記試料を移動させる第6工程と、
を含む。
【0024】
このような試料高さの調整方法では、試料のZ位置と、そのZ位置におけるフォーカス電流の組み合わせから、対物レンズのレンズ電流が基準電流のときにジャストフォーカスとなるZ位置を算出して試料のZ位置を調整するため、例えば図8に示すように係数Dを用いて基準電流のときにジャストフォーカスとなるZ位置を算出する場合と比べて、正確に、基準電流のときにジャストフォーカスとなるZ位置を算出することができる。したがって、このような試料高さの調整方法では、正確に試料のZ位置の調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る電子顕微鏡を模式的に示す図。
図2】本実施形態に係る電子顕微鏡の制御処理部における試料のZ位置を調整する処理の一例を示すフローチャート。
図3】Z位置を求める手法を説明するためのグラフ。
図4】本実施形態に係る電子顕微鏡の制御処理部におけるフォーカス電流を算出する処理の一例を示すフローチャート。
図5】第1傾斜像および第2傾斜像を模式的に示す図。
図6】像シフトベクトル(xi,yi)を説明するための図。
図7】像シフトベクトル(x0,y0),(x1,y1),(x2,y2)を近似する式y=ax+bを表すグラフ。
図8】試料のZ位置の調整方法の一例(参考例)を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0027】
1. 電子顕微鏡
まず、本実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る電子顕微鏡100を模式的に示す図である。なお、図1には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、Z軸を図示している。なお、Z軸は、電子顕微鏡100の光学系(例えば対物レンズ16)の光軸に沿った軸(平行な軸)である。
【0028】
電子顕微鏡100は、電子線EBを用いて試料Sを観察する装置である。電子顕微鏡100は、透過電子顕微鏡(TEM)である。
【0029】
電子顕微鏡100は、図1に示すように、電子線源10と、照射レンズ12と、偏向コイル14(偏向部の一例)と、対物レンズ16と、試料ステージ18と、試料ホルダー19と、撮像装置20と、電子線源制御部22と、レンズ制御部24と、偏向制御部26と、撮像制御部28と、試料ステージ制御部30と、制御処理部32(Z位置調整部の一例)と、表示部34と、を含んで構成されている。
【0030】
電子線源10は、電子線EBを発生させる。電子線源10は、例えば、公知の電子銃である。
【0031】
照射レンズ12は、電子線源10から放出された電子線EBを集束して試料Sに照射する。照射レンズ12は、複数(図示の例では3つ)のコンデンサーレンズで構成されている。
【0032】
偏向コイル14は、照射レンズ12で集束された電子線EBを偏向させる。偏向コイル14が電子線EBを偏向させることにより、試料Sに対する電子線EBの入射角度(電子線EBの傾斜角度(Tilt))を変えることができる。また、偏向コイル14は、電子線EBを偏向させることにより、電子線EBをシフトさせることもできる。偏向コイル14は、例えば、照射レンズ12と対物レンズ16との間に配置される。
【0033】
対物レンズ16は、試料Sを透過した電子線EBで透過電子顕微鏡像(以下「TEM像」ともいう)を結像するための初段のレンズである。対物レンズ16は、供給されるレンズ電流(励磁電流)に応じてレンズ作用(レンズの焦点距離や倍率)が変化する。
【0034】
試料ステージ18は、試料Sを保持する。図示の例では、試料ステージ18は、試料ホルダー19を介して、試料Sを保持している。試料ステージ18によって、試料Sの位置決めを行うことができる。図示の例では、試料ステージ18は、対物レンズ16のポールピースに対して水平方向(横)から試料ホルダー19を挿入するサイドエントリー方式の試料ステージである。なお、試料ステージ18は、対物レンズ16のポールピースの上方から試料Sを挿入するトップエントリー方式の試料ステージであってもよい。
【0035】
試料ステージ18は、試料SをX方向に移動させるX移動機構、試料SをY方向に移動させるY移動機構、および試料SをZ方向に移動させるZ移動機構を備えている。試料ステージ18のZ移動機構によって、試料Sの高さ(すなわちZ位置)を変えることができる。ここで、試料Sの高さとは、試料Sそのものの高さ(試料Sの垂直方向の大きさ)ではなく、試料Sの電子顕微鏡の高さ方向の位置、すなわち電子顕微鏡における試料SのZ軸に沿った方向の位置(Z位置)である。
【0036】
電子顕微鏡100は、図示はしないが、中間レンズおよび投影レンズを備えていてもよい。中間レンズおよび投影レンズは、対物レンズ16によって結像された像を拡大し、撮像装置20上に結像させる。対物レンズ16、中間レンズ、および投影レンズは、電子顕微鏡100の結像系を構成している。
【0037】
撮像装置20は、結像系によって結像されたTEM像を撮影する。撮像装置20は、例えば、CCDカメラ等のデジタルカメラである。撮像装置20で撮影されたTEM像の画像データは、撮像制御部28を介して制御処理部32に出力される。撮像装置20で撮影されたTEM像は、制御処理部32によって画像ファイルとして記憶装置(図示せず)に記憶されるとともに、表示部34に表示される。
【0038】
表示部34は、制御処理部32によって生成された画像を表示するものであり、その機能は、LCD、CRTなどにより実現できる。表示部34には、電子線源制御部22、レンズ制御部24、偏向制御部26、撮像制御部28、および試料ステージ制御部30を操作するためのGUI(Graphical User Interface)が表示される。また、表示部34には、撮像装置20で撮影されたTEM像が表示される。
【0039】
制御処理部32は、電子線源制御部22、レンズ制御部24、偏向制御部26、撮像制御部28、および試料ステージ制御部30を制御する。制御処理部32は、例えば、GUIの操作等に基づいて、電子線源制御部22、レンズ制御部24、偏向制御部26、撮像制御部28、および試料ステージ制御部30を制御するための制御信号を生成し、これらの制御部を制御する。
【0040】
制御処理部32は、後述するように、試料SのZ位置を調整する処理を行う。
【0041】
制御処理部32の機能は、各種プロセッサ(CPU等)でプログラムを実行することにより実現してもよいし、ASIC(ゲートアレイ等)などの専用回路により実現してもよい。
【0042】
なお、電子顕微鏡100はユーザーによる操作に応じた操作信号を取得する操作部を備えており、制御処理部32は、当該操作部からの操作信号に基づいて、電子線源制御部22、レンズ制御部24、偏向制御部26、撮像制御部28、および試料ステージ制御部30を制御してもよい。当該操作部は、例えば、ボタン、キー、タッチパネル型ディスプレイ、マイクなどであってもよい。
【0043】
電子線源制御部22は、制御処理部32で生成された制御信号に基づいて、電子線源10を制御する。また、レンズ制御部24は、制御処理部32で生成された制御信号に基づいて、照射レンズ12および対物レンズ16を制御する。レンズ制御部24は、さらに、制御処理部32で生成された制御信号に基づいて、中間レンズおよび投影レンズを制御してもよい。また、偏向制御部26は、制御処理部32で生成された制御信号に基づいて、偏向コイル14を制御する。また、撮像制御部28は、制御処理部32で生成された制御信号に基づいて、撮像装置20を制御する。また、試料ステージ制御部30は、制御処理部32で生成された制御信号に基づいて、試料ステージ18を制御する。
【0044】
2. 電子顕微鏡の動作
2.1. Z位置の調整方法
次に、本実施形態に係る電子顕微鏡100の動作について説明する。ここでは、電子顕微鏡100の制御処理部32における試料SのZ位置(試料Sの高さ)を調整する処理について説明する。試料SのZ位置の調整とは、対物レンズ16のレンズ電流を基準電流Isとしたときにジャストフォーカスとなるように、試料SのZ位置を調整することをいう。
【0045】
なお、基準電流Isは、対物レンズ16の性能を最も発揮できる最適な電流値であり、対物レンズ16に固有の電流値である。また、ジャストフォーカスとは、試料Sに焦点があった状態をいう。
【0046】
図2は、本実施形態に係る電子顕微鏡100の制御処理部32における試料SのZ位置を調整する処理の一例を示すフローチャートである。
【0047】
制御処理部32は、例えば、GUIの操作に基づいてユーザーが開始指示を行ったか否かを判定し、開始指示が行われたと判定した場合に、Z位置調整処理を開始する。なお、処理が開始されたときの試料SのZ位置をZ位置Z0とし、処理が開始されたときの対物レンズ16のレンズ電流は基準電流Isであるものとする。
【0048】
制御処理部32は、まず、試料SのZ位置がZ位置Z0であるときのフォーカス電流If1を算出する(ステップS10)。なお、フォーカス電流Iとは、試料Sに焦点があった状態(ジャストフォーカス)となる対物レンズ16のレンズ電流をいう。例えば、試料SのZ位置がZ位置Z0であるときのフォーカス電流とは、試料SがZ位置Z0にあるときにジャストフォーカスとなる対物レンズ16のレンズ電流である。なお、フォーカス電流Iの算出方法については後述する。
【0049】
次に、制御処理部32は、対物レンズ16のレンズ電流を、ステップS10の処理で求めたフォーカス電流If1に設定する(ステップS12)。この結果、対物レンズ16のレンズ電流がステップS10の処理で求めたフォーカス電流If1となる。なお、試料SのZ位置は、Z位置Z0のままである。
【0050】
次に、制御処理部32は、試料SのZ位置がZ位置Z0であるときのフォーカス電流If2を算出する(ステップS14)。すなわち、制御処理部32は、対物レンズ16のレンズ電流がステップS10の処理で求められたフォーカス電流If1に設定された状態で、再び、試料SのZ位置がZ位置Z0であるときのフォーカス電流If2を算出する。
【0051】
次に、制御処理部32は、ステップS10で算出されたフォーカス電流If1とステップS14で算出されたフォーカス電流If2との差ΔI=If2−If1を算出する(ステップS16)。
【0052】
次に、制御処理部32は、差ΔIが所定値Ia以下であるか否かの判定を行う(ステップS18)。ここで、所定値Iaは、要求される試料SのZ位置の精度に応じて適宜設定可能である。
【0053】
制御処理部32は、差ΔIが所定値Ia以下ではないと判定した場合(ステップS18のNO)、再び、ステップS12に戻って、対物レンズ16のレンズ電流を求めたフォーカス電流If2に設定し(ステップS12)、フォーカス電流If3を算出して(ステップS14)、差ΔI=If3−If2を算出する(ステップS16)。
【0054】
制御処理部32は、差ΔIが所定値Ia以下と判定されるまで、対物レンズ16のレンズ電流を求めたフォーカス電流Ifnに設定する処理(ステップS12)、フォーカス電流Ifn+1を算出する処理(ステップS14)、差ΔI=Ifn+1−Ifnを算出する処理(ステップS16)を繰り返し行う。
【0055】
なお、ここでは、差ΔIfが所定値Ia以下となるまで、フォーカス電流を算出する場合について説明したが、例えば、あらかじめ繰り返し回数(例えばn=2で繰り返しを終わる等)を設定しておいてもよい。
【0056】
制御処理部32は、差ΔIが所定値Ia以下と判定した場合(ステップS18のYES)、求めたフォーカス電流Ifn+1を試料SがZ位置Z0であるときのフォーカス電流とする。次に、制御処理部32は、フォーカス電流を求める処理を行った回数mが2回(m=2)であるか否かを判定し(ステップS20)、m=2ではないと判定した場合(すなわちm=1の場合)(ステップS20のNO)、求めたフォーカス電流Ifn+1と基準電流Isとの差から、当該差に対応するZ位置の変化量ΔZを求める(ステップS22)。
【0057】
具体的には、変化量ΔZは、次式(1)で求めることができる。
【0058】
ΔZ=D×(Ifn+1−Is) ・・・(1)
【0059】
ここで、係数Dは、対物レンズ16のレンズ電流の変化に対する試料SのZ位置の変化を表す係数(μm/A)である。なお、ここでは、係数Dを用いたが、係数Dは最終的に求められるZ位置Zsに影響しないため、係数Dのかわりに任意の値を設定することもできる。
【0060】
次に、制御処理部32は、試料SのZ位置が、現在の試料SのZ位置Z0からステップS22で求めた変化量ΔZだけ移動したZ位置Z1(=Z0+ΔZ)となるように試料ステージ18(Z移動機構)を制御する(ステップS24)。この結果、試料Sは、Z位置Z0からZ位置Z1(=Z0+ΔZ)に移動する。
【0061】
制御処理部32は、上述した試料SのZ位置がZ位置Z0であるときのフォーカス電流I(Z0)を求めてZ位置をZ1に設定する処理(ステップS10〜ステップS24、ただしm=1(ステップS20のNO))を行うと、再び、ステップS10に戻って(m=m+1)、試料SのZ位置がZ位置Z1であるときのフォーカス電流I(Z1)を求める処理(ステップS10〜ステップS18、ただしm=2)を行う。
【0062】
具体的には、試料SのZ位置がZ位置Z1であるときのフォーカス電流Ifn+1を求める処理(ステップS10〜ステップS18、ただしm=2)では、制御処理部32は、まず、試料SのZ位置がZ位置Z1であるときのフォーカス電流If1を算出し(ステップS10)、対物レンズ16のレンズ電流を求めたフォーカス電流If1に設定する(ス
テップS12)。
【0063】
次に、制御処理部32は、対物レンズ16のレンズ電流がフォーカス電流If1に設定された状態で、試料SのZ位置がZ位置Z1であるときのフォーカス電流If2を算出し(ステップS14)、ステップS10の処理で算出されたフォーカス電流If1とステップS14の処理で算出されたフォーカス電流If2との差ΔI=If2−If1を算出する(ステップS16)。
【0064】
次に、制御処理部32は、差ΔIが所定値Ia以下となるか否かの判定を行い(ステップS18)、差ΔIが所定値Ia以下ではないと判定した場合(ステップS18のNO)、再び、ステップS12に戻って、対物レンズ16のレンズ電流を求めたフォーカス電流If2に設定し(ステップS12)、フォーカス電流If3を算出して(ステップS14)、差ΔI=If3−If2を算出する(ステップS16)。
【0065】
制御処理部32は、差ΔIが所定値Ia以下と判定されるまで、対物レンズ16のレンズ電流を求めたフォーカス電流Ifnに設定する処理(ステップS12)、フォーカス電流Ifn+1を算出する処理(ステップS14)、差ΔI=Ifn+1−Ifnを算出する処理(ステップS16)を繰り返し行う。
【0066】
制御処理部32は、差ΔIが所定値Ia以下と判定した場合(ステップS18のYES)、求めたフォーカス電流Ifn+1を試料SがZ位置Z1であるときのフォーカス電流とする。
【0067】
次に、制御処理部32は、m=2であるか否かを判定し(ステップS20)、m=2であると判定された場合(ステップS20のYES)、基準電流IsのときにジャストフォーカスとなるZ位置であるZ位置Zsを算出する(ステップS26)。
【0068】
具体的には、制御処理部32は、Z位置Z0におけるフォーカス電流I(Z0)、およびZ位置Z1におけるフォーカス電流I(Z1)に基づいて、Z位置Zsを算出する。なお、Z位置Zsを算出する方法については後述する。
【0069】
次に、制御処理部32は、試料SのZ位置が、ステップS26の処理で算出されたZ位置Zsとなるように試料ステージ18(Z移動機構)を制御する(ステップS28)。また、制御処理部32は、対物レンズ16のレンズ電流を基準電流Isに設定する。この結果、試料SのZ位置がZ位置Zsとなり、対物レンズ16のレンズ電流が基準電流Isとなる。
【0070】
以上の処理により、試料SのZ位置を調整することができる。
【0071】
なお、上記の例では、m=2の場合、すなわちZ位置と、その位置におけるフォーカス電流の組み合わせを2つ求めたが、Z位置と、その位置におけるフォーカス電流の組み合わせを3つ以上求めてもよい(すなわちmは3以上であってもよい)。この場合、2次以上の曲線(関数)を用いて、Z位置Zsを算出することができる。
【0072】
次に、Z位置Zsを求める手法について説明する。図3は、Z位置Zsを求める手法を説明するためのグラフである。
【0073】
対物レンズ16のレンズ電流を基準電流IsとしたときにジャストフォーカスとなるZ位置Zsは、Z位置Z0、Z位置Z0におけるフォーカス電流I(Z0)、Z位置Z1、Z位置Z1におけるフォーカス電流I(Z1)から、Z位置とフォーカス電流I
の関係を表す式を求めて、当該式からZ位置Zsを求める。
【0074】
Z位置とフォーカス電流Iとの関係を表す式は、例えばy=ex+fで表すことができる。そのため、(x,y)=(Z0,I(Z0))と(x,y)=(Z1,I(Z1))から、この式の「
」と「f」とを求める。「e」および「f」は、それぞれ次式で求めることができる。
【0075】
【数1】
【0076】
このようにして、Z位置とフォーカス電流Iとの関係を表す式が求められると、基準電流Isから、次式を用いてZ位置Zsを求めることができる。
【0077】
【数2】
【0078】
2.2. フォーカス電流の算出方法
次に、フォーカス電流Iの算出方法について説明する。上述した図2に示す試料SのZ位置を調整する処理では、ステップS10の処理およびステップS14の処理でフォーカス電流Iを算出する。
【0079】
図4は、本実施形態に係る電子顕微鏡100の制御処理部32におけるフォーカス電流を算出する処理の一例を示すフローチャートである。
【0080】
制御処理部32は、まず、現在の倍率における対物レンズ16のレンズ電流IOLの変更ステップΔIOLと偏向コイル14のコイル電流ITILTの変更ステップΔITILTを算出する(ステップS100)。例えば、変更ステップΔIOLは、あらかじめ設定された値を電子顕微鏡の倍率で除算することで算出され、変更ステップΔITILTは、あらかじめ設定された値がそのまま使用される。
【0081】
次に、制御処理部32は、対物レンズ16のレンズ電流をIN=IOL−(N−1)ΔIOL(ただし、Nは2以上の整数)に設定し、偏向コイル14のコイル電流をITILT+ΔITILT、ITILT−ΔITILTに設定して、像を取得する(ステップS102〜ステップS116)。すなわち、対物レンズ16のレンズ電流I0,I1,・・・,INの各々について、偏向コイル14のコイル電流をITILT+ΔITILTとした第1傾斜像、偏向コイル14のコイル電流をITILT−ΔITILTとした第2傾斜像を取得する。なお、以下では、N=2の場合について説明する。
【0082】
具体的には、制御処理部32は、まず、対物レンズ16のレンズ電流をI0=IOL−(0−1)ΔIOL=IOL+ΔIOL(N=0)に設定する(ステップS104)。そ
して、偏向コイル14のコイル電流をITILT+ΔITILTに設定して(ステップS106)、第1傾斜像を撮影する(ステップS108)。次に、制御処理部32は、偏向コイル14のコイル電流をITILT−ΔITILTに設定して(ステップS110)、第2傾斜像を撮影する(ステップS112)。撮影された第1傾斜像および第2傾斜像は、記憶装置(図示せず)に記憶される。
【0083】
図5は、第1傾斜像1、および第2傾斜像2を模式的に示す図である。偏向コイル14によって試料Sに対する電子線EBの入射角度を変化させることで、図5に示すように、像がシフトする。第1傾斜像1および第2傾斜像2は、電子線EBの入射角度を所定角度だけ変化させる前後の像といえる。
【0084】
次に、制御処理部32は、N=2になったか否かを判定し(ステップS114)、N≠2と判定された場合(ステップS114でNoの場合)には、Nに1を加算して(ステップS116)、対物レンズ16のレンズ電流をI1=IOL−(1−1)ΔIOL=IOL(N=1)に設定する(ステップS104)。そして、ステップS106〜ステップS112の処理を行い、対物レンズ16のレンズ電流がI1のときの、第1傾斜像1および第2傾斜像2を取得する。制御処理部32は、あらかじめ設定されたNの数に応じて、ステップS104〜ステップS116の処理を繰り返し行う。
【0085】
N=2と判定された場合(ステップS114でYesの場合)には、制御処理部32は、対物レンズ16のレンズ電流I0,I1,I2において、それぞれ観察された第1傾斜像1と第2傾斜像2との間での像のシフトを表す像シフトベクトル(xi,yi)(i=0,1,2)を算出する(ステップS118)。なお、(xi,yi)の単位はピクセルである。
【0086】
図6は、像シフトベクトル(xi,yi)を説明するための図である。像シフトベクトルは、第1傾斜像1と第2傾斜像2との間での像のシフト(位置ずれ)を表すベクトルである。像シフトベクトル(xi,yi)は、例えば、相互相関関数を用いて算出することができる。
【0087】
次に、制御処理部32は、算出された像シフトベクトル(x0,y0),(x1,y1),(x2,y2)を式y=ax+bで直線近似する(ステップS120)。すなわち、制御処理部32は、像シフトベクトル(x0,y0),(x1,y1),(x2,y2)から、「a」の値および「b」の値を計算し、近似式を求める。
【0088】
図7は、像シフトベクトル(x0,y0),(x1,y1),(x2,y2)を近似する式y=ax+bを表すグラフである。図7では、像シフトベクトルを近似する近似式を実線で表している。
【0089】
制御処理部32は、算出された近似式y=ax+bと、図7に示す像シフトベクトルを表すグラフの原点(0,0)と、の間の距離Lが最短となる座標(xmin,ymin)のxminの値を算出する(ステップS122)。
【0090】
座標(xmin,ymin)のxminの値は、下記式から求めることができる。
【0091】
【数3】
【0092】
近似式y=ax+bと原点(0,0)との間の距離Lが最短となる座標(xmin,ymin)は、第1傾斜像1と第2傾斜像2との間での像のシフト量(位置ずれ量)が最も小さくなる像シフトベクトル(以下「最小像シフトベクトル」ともいう)に相当する。
【0093】
次に、制御処理部32は、最小像シフトベクトルに基づいて、対物レンズ16のフォーカス電流Iを算出する(ステップS124)。
【0094】
具体的には、制御処理部32は、像シフトベクトルのxiの値と対物レンズ16のレンズ電流との関係を表すベクトル(x0,I0)、(x1,I1)、(x2,I2)を式I=cx+dで直線近似する(すなわち、「c」と「d」の値を求める)。次に、算出されたI=cx+dに、x=xminを代入する(次式参照)。
【0095】
=cxmin+d
【0096】
以上の処理により、対物レンズ16のフォーカス電流Iを求めることができる。
【0097】
なお、上記の例では、N=2の場合、すなわちNの総数が3である場合について説明したが、Nの値は2以上であれば特に限定されない。Nの値は、任意に設定することができる。
【0098】
また、上記の例では、制御処理部32が、像シフトベクトル(x0,y0),(x1,y1),(x2,y2)を式y=ax+bで直線近似する例について説明したが、像シフトベクトル(x0,y0),(x1,y1),(x2,y2)を、任意の関数で近似してもよい。例えば、像シフトベクトルを2次曲線で近似してもよいし、3次以上の曲線で近似してもよい。上記の例では、Nの総数が3であったが、Nの総数を増やした場合には、像シフトベクトル(x0,y0),(x1,y1),・・・,(xn,yn)を、その場合に適用な任意の関数y=f(x)で近似することができる。
【0099】
また、上記の例では、制御処理部32が、(x0,I0),(x1,I1),(x2,I2)を式I=cx+dで直線近似する例について説明したが、(x0,I0),(x1,I1),(x2,I2)を、任意の関数で近似してもよい。例えば、(x0,I0),(x1,I1),(x2,I2)を2次曲線で近似してもよいし、3次以上の曲線で近似してもよい。上記の例では、Nの総数が3であったが、Nの総数を増やした場合には、(x0,I0),(x1,I1),・・・,(xn,In)を、その場合に適用な任意の関数I=f(x)で近似することができる。
【0100】
電子顕微鏡100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0101】
電子顕微鏡100では、制御処理部32は、試料SのZ位置がZ位置Zm−1(第1位置)のときにジャストフォーカスとなる対物レンズ16のレンズ電流である第1フォーカス電流I(Zm−1)を求める第1処理(ステップS10〜ステップS18)と、第1フォーカス電流I(Zm−1)と基準電流Isとの差ΔIから当該差ΔIに対応するZ位置の変化量ΔZを求める第2処理(ステップS22)と、試料SのZ位置がZ位置Zm−1(第1位置)から第2処理(ステップS22)で求めた変化量ΔZだけ移動したZ位置Zm(第2位置)となるように試料ステージ18を制御する第3処理(ステップS24)と、試料SのZ位置がZ位置Zm(第2位置)のときにジャストフォーカスとなる対物レンズ16のレンズ電流である第2フォーカス電流I(Zm)を求める第4処理(ステップS10〜ステップS18)と、第1フォーカス電流I(Zm−1)および第2フォーカス電流I(Zm)に基づいて、基準電流Isのときにジャストフォーカスとな
る試料SのZ位置Zsを求める第5処理(ステップS26)と、第5処理(ステップS26)で求めたZ位置Zsに試料Sが位置するように試料ステージ18を制御する第6処理(ステップS28)と、を行う。
【0102】
このように電子顕微鏡100では、Z位置と、そのZ位置におけるフォーカス電流の組み合わせから、対物レンズ16のレンズ電流が基準電流IsのときにジャストフォーカスとなるZ位置Zsを算出してZ位置を調整する。そのため、電子顕微鏡100では、例えば図8に示す係数Dを用いてZ位置Zsを算出する場合と比べて、求めたZ位置Zsと実際に基準電流IsのときにジャストフォーカスとなるZ位置との差を小さくすることができる。すなわち、電子顕微鏡100では、正確にZ位置Zsを算出することができ、正確に試料SのZ位置の調整を行うことができる。
【0103】
なお、本実施形態でもステップS22の処理において係数Dを用いているが、係数Dは最終的に求められたZ位置Zsに影響しない。また、電子顕微鏡100では、係数Dにかえて任意の定数を用いて(すなわち係数Dを用いずに)、Z位置Zsを算出することも可能である。
【0104】
電子顕微鏡100では、制御処理部32は、第1処理(ステップS10〜ステップS18、例えばm=1)において、対物レンズ16のレンズ電流を求めた第1フォーカス電流Ifnに設定する処理(ステップS12)と、対物レンズ16のレンズ電流が求めた第1フォーカス電流Ifnに設定された状態で、再び、第1フォーカス電流Ifn+1を求める処理(ステップS14)と、を、n回目に求めた第1フォーカス電流Ifnとn+1回目に求めた第1フォーカス電流Ifn+1との差が所定値Ia以下となるまで、繰り返し行う。そのため、電子顕微鏡100では、第1フォーカス電流If(Zm−1)=Ifn+1を正確に求めることができる。
【0105】
例えば、現在の試料SのZ位置がZ位置Zsから大きく(例えば100μm以上)ずれている場合など、現在の対物レンズのレンズ電流がフォーカス電流Iから大きくずれている場合には、フォーカス電流Iを正確に求めることができないことがある。電子顕微鏡100では、上述したように、n回目に求めた第1フォーカス電流Ifnとn+1回目に求めた第1フォーカス電流Ifn+1との差が所定値Ia以下となるまで、繰り返し行う。したがって、上記のような問題が生じず、第1フォーカス電流を正確に求めることができる。
【0106】
電子顕微鏡100では、制御処理部32は、第4処理(ステップS10〜ステップS18、例えばm=2)において、対物レンズ16のレンズ電流を求めた第2フォーカス電流Ifnに設定する処理(ステップS12)と、対物レンズ16のレンズ電流が求めた第2フォーカス電流Ifnに設定された状態で、第2フォーカス電流Ifn+1を求める処理(ステップS14)と、を、n回目に求めた第2フォーカス電流Ifnとn+1回目に求めた第2フォーカス電流Ifn+1との差が所定値Ia以下となるまで、繰り返し行う。そのため、電子顕微鏡100では、第2フォーカス電流If(Zm)=Ifn+1を正確に求めることができる。
【0107】
電子顕微鏡100では、制御処理部32は、試料Sに対する電子線EBの入射角度を所定角度だけ変化させる前後での像のシフトを表す像シフトベクトルを、対物レンズ16のレンズ電流を変化させて複数取得する処理と、複数の像シフトベクトルに基づいて電子線EBの入射角度を前記所定角度だけ変化させる前後での像のシフト量が最も小さくなる最小像シフトベクトルを算出する処理と、最小像シフトベクトルに基づいて、対物レンズ16のフォーカス電流Iを求める処理と、を行う。
【0108】
このように電子顕微鏡100では、制御処理部32が試料Sに対する電子線EBの入射角度を所定角度だけ変化させる前後での像のシフト量が最も小さくなる最小像シフトベクトルに基づいてフォーカス電流Iを求めるため、フォーカス電流Iを正確に求めることができる。
【0109】
例えば、第1傾斜像と第2傾斜像との間での像のシフトを表す像シフトベクトルの向きを内積を用いて決定した場合、算出されたフォーカス電流Iと、実際に試料Sに焦点があった状態での対物レンズ16のレンズ電流との差が大きい場合があった。これに対して、電子顕微鏡100では、上述したように、最小像シフトベクトルに基づいてフォーカス電流Iを求める。そのため、像シフトベクトルの向きを内積を用いて決定する場合と比べて、算出されたフォーカス電流Iと、実際に試料Sに焦点があった状態での対物レンズ16のレンズ電流との差を小さくすることができ、フォーカス電流Iを正確に求めることができる。
【0110】
電子顕微鏡100では、制御処理部32は、最小像シフトベクトルを算出する処理において、像シフトベクトル(x,y),(x,y),・・・,(x,y)を、所定の関数y=f(x)で近似し、当該所定の関数y=f(x)と原点(0,0)との間の距離が最小となる最小像シフトベクトル(xmin,ymin)を算出する。また、制御処理部32は、対物レンズ16のレンズ電流を求める処理において、(x,I),(x,I),・・・,(x,I)を、所定の関数I=f(x)で近似し、当該所定の関数I=f(x)にxminを代入して、対物レンズ16のフォーカス電流Iを求める。そのため、電子顕微鏡100によれば、フォーカス電流Iを正確に求めることができる。
【0111】
本実施形態に係る試料SのZ位置の調整方法は、試料SのZ位置がZ位置Zm−1(第1位置)のときにジャストフォーカスとなる対物レンズ16のレンズ電流である第1フォーカス電流I(Zm−1)を求める第1工程(ステップS10〜ステップS18)と、第1フォーカス電流I(Zm−1)と基準電流Isとの差ΔIから当該差ΔIに対応するZ位置の変化量ΔZを求める第2工程(ステップS22)と、試料SのZ位置を、Z位置Zm−1(第1位置)から第2工程で求めた変化量ΔZだけ移動したZ位置Zm(第2位置)に移動させる第3工程(ステップS24)と、試料SのZ位置がZ位置Zm(第2位置)のときにジャストフォーカスとなる対物レンズ16のレンズ電流である第2フォーカス電流I(Zm)を求める第4工程(ステップS10〜ステップS18)と、第1フォーカス電流I(Zm−1)および第2フォーカス電流I(Zm)に基づいて、基準電流Isのときにジャストフォーカスとなる試料SのZ位置を求める第5工程(ステップS26)と、第5工程で求めたZ位置Zsに試料Sを移動させる第6工程(ステップS28)と、を含む。
【0112】
本実施形態に係る試料高さの調整方法では、試料SのZ位置と、そのZ位置におけるフォーカス電流の組み合わせから、対物レンズ16のレンズ電流が基準電流IsのときにジャストフォーカスとなるZ位置Zsを算出して試料SのZ位置を調整するため、例えば図8に示すように係数Dを用いて基準電流のときにジャストフォーカスとなるZ位置を算出する場合と比べて、正確に、基準電流IsのときにジャストフォーカスとなるZ位置を算出することができる。したがって、このような試料高さの調整方法では、正確に試料SのZ位置の調整を行うことができる。
【0113】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成すること
ができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0114】
10…電子線源、12…照射レンズ、14…偏向コイル、16…対物レンズ、18…試料ステージ、19…試料ホルダー、20…撮像装置、22…電子線源制御部、24…レンズ制御部、26…偏向制御部、28…撮像制御部、30…試料ステージ制御部、32…制御処理部、34…表示部、100…電子顕微鏡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8