【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、長さが70m以上の鋼材(以下、長尺鋼材という)の製造に対応するため、長尺鋼材の工場内に広大な鋼材置場を確保することが必要となっている。そこで、鋼材置場では、長尺鋼材の段積みの段数を多くする(長尺鋼材を高く積み上げる)ことにより、限られた鋼材置場での保管効率の向上を図っている。そして、長尺鋼材を高く積み上げると、下段側に配置される荷敷き材には上段側に配置される長尺鋼材の総重量が負荷されるので、荷敷き材を、例えば、鋼材を用いて作製し、荷敷き材に変形等が発生するのを防止している。このため、長尺鋼材の段積みに使用する荷敷き材は重くなるため、荷敷き材の移動には、長尺鋼材の鋼材置場への搬入や、長尺鋼材の鋼材置場からの搬出に使用するクレーンが使用されている。
【0005】
ここで、長尺鋼材の場合、荷敷き材の設置位置が長尺鋼材の長さ方向に沿って多数存在することになって、多数の荷敷き材を移動させる必要が生じる。更に、鋼材置場での長尺鋼材の保管効率向上及び鋼材置場からの長尺鋼材の搬出効率向上を図るため、荷敷き材を長尺鋼材の長手方向に沿って一定間隔で、かつ、長尺鋼材に対する方向を揃えて配置することが求められる。そこで、クレーンを用いて荷敷き材を1つずつ設置位置に移動して配置すると、荷敷き材を長尺鋼材に対して整然と配置することが可能となるが、全ての荷敷き材の配置が完了するまでに長時間を要することになって、長尺鋼材の段積み作業効率が低下するという問題がある。
【0006】
また、格納庫における荷敷き材の保管効率向上及び格納庫からの荷敷き材の搬出効率向上には、荷敷き材を格納庫の決められた位置に整然と配置することが求められる。そこで、クレーンを用いて荷敷き材を1つずつ戻すようにすると、荷敷き材を格納庫の決められた位置に整然と配置することが可能になるが、長尺鋼材の上に配置された全ての荷敷き材が格納庫に戻されるまでには長時間を要することになって、長尺鋼材の搬出作業効率が低下するという問題がある。
【0007】
なお、クレーンを使用する代わりにロボットを用いて荷敷き材の設置(格納庫から鋼材置場の長尺鋼材の上への移動)や回収(長尺鋼材の上に配置された荷敷き材の格納庫への移動)を効率的に行うことも考えられるが、ロボットを用いても荷敷き材は1つずつ移動させるため、全ての荷敷き材の設置や回収には長時間を要することになって、長尺鋼材の段積み作業効率の低下や長尺鋼材の搬出作業効率の低下という問題が生じる。
また、荷敷き材を長くして、一つの荷敷き材で対応可能な長尺鋼材の本数を多くして、長尺鋼材の段積み作業効率及び搬出作業効率の向上を図ることもできるが、長い荷敷き材は取り扱いが困難になると共に、広大な格納庫を確保する必要が生じるため好ましくない。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、荷敷き材に対する玉掛け作業が不要で、長尺鋼材を移動するクレーンの運転席からの遠隔操作により格納庫内の荷敷き材を鋼材置場の長尺鋼材の上に配置し、あるいは鋼材置場の長尺鋼材の上に配置された荷敷き材を格納庫に戻すことが可能な荷敷き材吊具装置を備えた荷敷き材設置設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的に沿う本発明に係る荷敷き材設置設備は、鋼材置場に配置されて長尺鋼材の移動に用いるクレーンに取り付けられ、前記鋼材置場に隣接する格納庫に載置された荷敷き材を把持して前記鋼材置場内に設置し、あるいは前記鋼材置場内に設置された前記荷敷き材を把持して前記格納庫に載置する荷敷き材吊具装置を備えた荷敷き材設置設備であって
前記荷敷き材吊具装置は、前記荷敷き材を挟持する対となる挟持腕を備えた荷敷き材把持手段と、
前記荷敷き材把持手段を保持する、平面視して矩形又は正方形の支持フレームと、
前記支持フレームに設けられ、前記荷敷き材把持手段を前記格納庫内の予め決められた位置まで案内する格納庫内案内手段と、
前記支持フレームに設けられ、前記荷敷き材把持手段を前記鋼材置場内の予め決められた位置まで案内する鋼材置場内案内手段と、
前記支持フレームに設けられ、前記荷敷き材把持手段を前記荷敷き材の挟持位置に案内する挟持位置案内手段と、
前記支持フレームに設けられ、前記荷敷き材把持手段による前記荷敷き材の挟持位置を確認する挟持位置確認手段と、
前記クレーンに吊り下げられ、前記支持フレームを水平面内で回動可能に保持する支持フレーム回動手段を備えた懸吊部とを有する。
【0010】
本発明に係る荷敷き材設置設備において、前記格納庫内には、該格納庫内に載置された前記荷敷き材の重心部を両側から挟む対となる格納庫重心部側柱部材と、該格納庫内に載置された前記荷敷き材の両側の端部をそれぞれ該端部の幅方向両側から挟む対となる格納庫端部側柱部材が立設され、前記格納庫内案内手段は、前記支持フレームの一方の対向側面にそれぞれ設けられ、前記対となる格納庫重心部側柱部材の間に挿入された前記支持フレームを該対となる格納庫重心部側柱部材の中央に位置させる格納庫内位置決め板材を有する構成とすることができる。
【0011】
これによって、荷敷き材吊具装置で把持した荷敷き材を格納庫に戻す際、荷敷き材を格納庫の決められた位置に整然と配置される(荷敷き材の重心部を対となる格納庫重心部側柱部材の間に、荷敷き材の両端部をそれぞれ対となる格納庫端部側柱部材の間に配置される)ことになって、格納庫における荷敷き材の保管効率を向上させることができる。
また、格納庫内に載置された荷敷き材を取り出す際、荷敷き材吊具装置の支持フレームが格納庫重心部側柱部材に対して位置決めされるため、支持フレームに保持された荷敷き材把持手段を荷敷き材の重心部に対して位置合わせすることができ、格納庫からの荷敷き材の搬出効率を向上させることができる。
ここで、重心部とは、荷敷き材の重心を中央にして荷敷き材の長手方向両側に広がる範囲(例えば、荷敷き材把持手段による把持範囲)のことをさす。
【0012】
本発明に係る荷敷き材設置設備において、前記対となる格納庫重心部側柱部材及び前記対となる格納庫端部側柱部材の中で、一方側にある該格納庫重心部側柱部材及び該格納庫端部側柱部材の頂部の高さ位置は、他方側にある該格納庫重心部側柱部材及び該格納庫端部側柱部材の頂部の高さ位置より高いことが好ましい。
これにより、一方側にある格納庫重心部側柱部材及び格納庫端部側柱部材に対して、荷敷き材又は荷敷き材吊具装置を横行きで接近させることができる。
【0013】
本発明に係る荷敷き材設置設備において、前記鋼材置場内には、該鋼材置場内に設置された前記荷敷き材の前記重心部に隣接する領域を該荷敷き材の幅方向両側から挟む対となる鋼材置場柱部材が立設され、前記鋼材置場内案内手段は、前記支持フレームの他方の対向側面にそれぞれ設けられ、該支持フレームに対向する前記対となる鋼材置場柱部材の側面に当接して、前記支持フレームと該鋼材置場柱部材との距離を予め決められた値に保持する鋼材置場側位置決め板材を有する構成とすることができる。
【0014】
これによって、荷敷き材吊具装置で把持された荷敷き材を、鋼材置場柱部材に対して(鋼材置場内で)位置決めして設置することができる。
また、鋼材置場に荷敷き材が設置されている場合、支持フレームを鋼材置場の鋼材置場柱部材に対して位置決めすることができ、支持フレームに保持された荷敷き材把持手段を荷敷き材に対して位置合わせすることができる。
【0015】
本発明に係る荷敷き材設置設備において、前記挟持位置案内手段は、前記荷敷き材の前記重心部を中央にして対向する両側部の長手方向に沿った対称位置にそれぞれ外側に向けて突設して設けられ、前記荷敷き材に上方から接近する前記支持フレームの中央部を前記重心部に誘導すると共に、該支持フレームの該荷敷き材に対する高さ位置を決める荷敷き材側ガイド部材と、前記支持フレームの下部に設けられ、前記荷敷き材側ガイド部材に係合して該支持フレームの下降方向を修正する支持フレーム側ガイド部材とを有する構成とすることができる。
これにより、荷敷き材の重心部に対して支持フレームを位置決めすることができ、支持フレームに保持された荷敷き材把持手段で荷敷き材の重心部を挟持することができる。
【0016】
本発明に係る荷敷き材設置設備において、前記挟持位置確認手段は、前記荷敷き材の前記重心部から、該荷敷き材の頭部の高さ位置と同一高さを有して該荷敷き材の幅方向の一側に突出して設けられた検知板材と、前記支持フレームの下部に取り付けられて、前記検知板材までの接近距離の変化を求める距離センサと、前記接近距離が予め設定した範囲に到達したことを検知して表示器に表示させる検出器とを有する構成とすることができる。
これにより、支持フレーム(荷敷き材把持手段)が荷敷き材に対して位置合わせされていること、及び支持フレーム(荷敷き材把持手段)が荷敷き材に対して挟持可能な距離まで接近したことを遠隔の地点において確認することができる。
【0017】
本発明に係る荷敷き材設置設備において、前記検出器は、前記接近距離の変動を継続して検知し、該接近距離が予め設定した範囲にあることを検知すると前記表示器に表示させることが好ましい。
これにより、荷敷き材把持手段により荷敷き材が安定して挟持されていることを遠隔の地点において確認することができる。
【0018】
本発明に係る荷敷き材設置設備において、前記クレーンには長尺吊りビームを介して前記荷敷き材吊具装置が予め決められた間隔で複数吊り下げられ、該荷敷き材吊具装置の間に前記長尺鋼材の吊り具が吊り下げられていることが好ましい。
これにより、一度に複数の荷敷き材を移動させることができ、鋼材置場では同時に複数の荷敷き材を設置することが可能になり、複数の格納庫で同時に荷敷き材を格納することが可能になる。
また、長尺吊りビームに長尺鋼材の吊り具を複数吊り下げることで、一つのクレーンを用いて、長尺鋼材の移動と荷敷き材の移動を切り替えて行うことができる。
【0019】
本発明に係る荷敷き材設置設備において、前記荷敷き材吊具装置の下端の吊り下げ位置は前記長尺鋼材の吊り具の下端の吊り下げ位置より高く、該荷敷き材吊具装置の下降距離は、前記長尺鋼材の吊り具が前記長尺鋼材に当接した後は、予め決められた値に制限されることが好ましい。
これにより、長尺鋼材を吊り具と連結する際、支持フレームが長尺鋼材の上面に接触して、長尺鋼材の上面に疵が生じるのを防止することができる。
また、長尺鋼材の吊り具が長尺鋼材の上面に当接した後では、長尺吊りビーム(荷敷き材吊具装置)の下降距離を制限することで、長尺鋼材の上面に当接した吊り具が長尺吊りビームにより押しつぶされるのを防止できる。
【0020】
本発明に係る荷敷き材設置設備において、前記支持フレームの下端には樹脂板が取付けられていることが好ましい。
これにより、長尺鋼材に対して支持フレームが下降した際、支持フレームは樹脂板を介して長尺鋼材の上面と当接するため、長尺鋼材の上面に疵が生じるのを防止できる。