(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記充放電実施部は、前記計画充放電量が前記蓄電池の放電のための制御量である場合、前記充電率と予め定められた放電可能な最低の充電率である放電可能充電率とを比較し、比較結果に基づいて前記充放電量及び前記制御値を設定する、
請求項3に記載の電源システム。
前記充放電実施部は、前記計画充放電量が前記蓄電池の充電のための制御量である場合、前記充電率と予め定められた充電可能な最高の充電率である充電可能充電率とを比較し、比較結果に基づいて前記充放電量及び前記制御値を設定する、
請求項3又は4に記載の電源システム。
【背景技術】
【0002】
一般的に電力コストは基本料金と電力量料金とからなる。このうち電力量料金は、使用電力量によって計算されるため、例えば、通信設備の電源システムが備える蓄電池を消費電力のピーク時に放電する制御はピーク時の消費電力カット(いわゆるピークカット)に有効であると考えられる(下記の特許文献1参照)。一方の基本料金は、契約電力に応じて定まる料金であり、契約電力は、過去1年間の各月の最大需要電力のうち最も大きい値とされる。この最大需要電力は、30分毎の平均使用電力(以下「デマンド値」という)のうち、月間で最も大きい値とされるので、上記デマンド値を抑制することで、基本料金を削減することができる。
【0003】
無線基地局等の通信設備において、消費電力の変動要因は、主にトラフィックに依存する無線機と主に外気温に依存する空調機とにあり、消費電力のピークは突発的に発生する可能性があるため、実際に予測することは困難である。また、通信設備に設けられる太陽光発電装置の出力も、天候に大きく依存し不安定であるため、同様に予測が困難である。
【0004】
以上のような事情から、近年普及しているスマートメータを活用して式(1)のように蓄電池のフィードバック制御を定めることで、デマンド値を抑制する手法が検討されている。
x’(t)=x(t-1)+P(t)-Pth(t-1) (1)
ここで、Pはスマートメータが取得する瞬時電力値であり、xは充放電量(放電:正、充電:負)であり、Pthは交流電力の平均使用電力の目標値である制御値である。式(1)の通り、計画充放電量x’(t)は、瞬時電力値P(t)と制御値Pth(t-1)と蓄電池の前回の充放電量である前回充放電量x(t-1)とに基づいて決定される。無線基地局等の通信設備において蓄電池のバックアップ容量の確保は停電などの災害対策の観点から重要であるため、放電可能な充電率(State of Charge:以下「SOC」と称する)の範囲を定める。また、電池保護の観点から過充電とならないように同じく充電可能なSOCの範囲を定める。その上で、当該時点のSOCが放電可能SOCの範囲であれば放電し、当該時点のSOCが充電可能SOCの範囲であれば充電する制御を実施する。このように当該時点のSOCが放電可能SOCの範囲又は充電可能SOCの範囲にある場合は、x(t)=x’(t)が成り立つ。
【0005】
また、デマンド値dと通信装置の消費電力qと太陽光発電装置の発電量Pg、及び蓄電池の充放電量xには、以下の式(2)で示される関係が成立する。
d(t)=q(t)-x(t)-Pg(t) (2)
【0006】
また、瞬時電力値P、消費電力q、発電量Pg、及び充放電量xには、以下の式(3)で示される関係が成立する。
P(t)=q(t)-x(t-1)-Pg(t) (3)
【0007】
式(1)〜式(3)によれば、当該時点のSOCが放電可能SOCの範囲又は充電可能SOCの範囲にある場合、即ち、x(t)=x’(t)が成り立つ場合には、式(4)に示されるように、デマンド値d(t)は、制御値Pth(t-1)と等しくなる。
d(t)=Pth(t-1) (4)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施形態を説明する。
図1には、発明の実施形態における電源システム1の構成図を示す。この
図1に示すように、電源システム1は、例えば無線基地局等の通信設備内に設けられ、スマートメータ10、整流装置20、蓄電池30、太陽光発電装置40および電力消費装置50を備える。以下、各装置を概説する。
【0016】
スマートメータ10は、例えば無線基地局等の通信設備に既存の装置であり、商用電源から供給される交流電力の瞬時電力値を測定する。整流装置20は、交流電力を直流電力に変換し、直流電力を電力消費装置へ供給する。この整流装置20は、交流電力を直流電力に変換する整流部21と、蓄電池30を制御する制御部22と、制御部22による制御によって動作するスイッチ23とを含んで構成される。蓄電池30は、後述する制御部22の制御により、整流装置20にて変換された直流電力の充電、および電力消費装置50への直流電力の放電を行う。太陽光発電装置40は、太陽光を受けることにより直流電力を発電し、該直流電力を電力消費装置50又は蓄電池30に供給する。電力消費装置50は、電気的な負荷であり、例えば電源システム1が無線基地局に設置された場合は当該無線基地局における通信設備等が該当する。
【0017】
本発明に係る充放電の制御は制御部22によって実施される。そこで、制御部22の構成を以下で説明する。
図2に示すように、制御部22は、機能ブロックとして、パラメータ入力部22A、電力値取得部22B、判定部22C、データ記憶部22D、計算部22E、充電率取得部22F、および充放電実施部22Gを備える。以下、各部を説明する。
【0018】
パラメータ入力部22Aは、予め定められた各種のパラメータとして、交流電力の平均使用電力の目標値である制御値Pthの初期値Pth(0)、瞬時電力値の閾値範囲に関する閾値上限Pu、閾値下限Pl、放電可能な最低の充電率である放電可能充電率(以下「放電可能SOC」と称する)、および、充電可能な最高の充電率である充電可能充電率(以下「充電可能SOC」と称する)を記憶している。
【0019】
電力値取得部22Bは、商用電源から供給された交流電力の瞬時電力値P(t)をスマートメータ10から取得する。なお、瞬時電力値の取得元はスマートメータ10に限定されるものではないが、例えば無線基地局等の通信設備に既存のスマートメータ10から瞬時電力値を取得することで、クランプメータ、電力センサなどの電力測定装置の追加設置を必要としないため、装置コストを低く抑えることが可能となる。
【0020】
判定部22Cは、パラメータ入力部22Aから入力された閾値上限Pu、閾値下限Plを用いて、電力値取得部22Bによって取得された瞬時電力値P(t)が予め定められた閾値範囲内であるか否かを判定し、判定結果を示すフラグ(
図2ではFLAGと表記)および瞬時電力値P(t)を計算部22Eへ送付する。ここでは一例として、上記フラグは、瞬時電力値P(t)が閾値範囲内である場合に「0」に、瞬時電力値P(t)が閾値範囲内でない場合に「1」に設定される。
【0021】
データ記憶部22Dは、後述する充放電実施部22Gにより算出された実施時点での充放電量x(t)および制御値Pth(t)を記憶する。これら充放電量x(t)および制御値Pth(t)は、次の処理タイミングでは、それぞれ充放電量x(t-1)、制御値Pth(t-1)として計算部22Eにより参照され、計算に用いられる。
【0022】
計算部22Eは、判定部22Cからのフラグが「1」の場合、即ち、瞬時電力値P(t)が閾値範囲内でない場合に、瞬時電力値P(t)と制御値Pth(t-1)と蓄電池30の前回の充放電量である前回充放電量x(t-1)とに基づいて、前にも述べた以下の式(1)
x’(t)=x(t-1)+P(t)-Pth(t-1) (1)
により、蓄電池30の充放電量である計画充放電量x’(t)を計算し、得られた計画充放電量x’(t)を、前回充放電量x(t-1)および制御値Pth(t-1)とともに充放電実施部22Gへ送付する。一方、判定部22Cからのフラグが「0」の場合、即ち、瞬時電力値P(t)が閾値範囲内である場合は、計算部22Eは、計画充放電量x’(t)の計算を回避し、前回充放電量x(t-1)および制御値Pth(t-1)とともに充放電実施部22Gへ送付する。この例では、後述の充放電実施部22Gは、計算部22Eからの計画充放電量x’(t)を受信したことをもって、瞬時電力値P(t)が閾値範囲内でないと判断でき、計画充放電量x’(t)を受信しなかったことをもって、瞬時電力値P(t)が閾値範囲内であると判断できる。これに代わり、判定部22Cからのフラグを計算部22Eから充放電実施部22Gへ送付することで、充放電実施部22Gが上記フラグに応じて、瞬時電力値P(t)が閾値範囲内であるか否かを判断できるよう構成してもよい。
【0023】
充電率取得部22Fは、蓄電池30のSOC(充電率:State of Charge)を取得し、充放電実施部22Gへ送付する。
【0024】
充放電実施部22Gは、瞬時電力値P(t)が閾値範囲内でない場合に、計算部22Eによって計算された計画充放電量x’(t)および蓄電池30のSOCに基づいて蓄電池30の充放電量を設定し、設定された充放電量に基づいて蓄電池30の充放電を実施する。一方、瞬時電力値P(t)が閾値範囲内である場合、充放電実施部22Gは、前回充放電量x(t-1)および蓄電池30のSOCに基づいて蓄電池30の充放電量を設定し、設定された充放電量に基づいて蓄電池30の充放電を実施する。充放電に関する処理は、後に詳述する。前述したように、充放電実施部22Gは、瞬時電力値P(t)が閾値範囲内であるか否かを、計算部22Eからの計画充放電量x’(t)の受信有無に応じて判断してもよいし、判定部22Cからのフラグに応じて判断してもよい。
【0025】
以下、
図3〜
図5を参照しながら、制御部22により実行される処理を説明する。
図3に示すように、まず、初期設定として、予め定められた各種のパラメータの入力が行われる(ステップS1)。具体的には、瞬時電力値の閾値範囲に関する閾値上限Puおよび閾値下限Plがパラメータ入力部22Aから判定部22Cへ入力され、交流電力の平均使用電力の目標値である制御値Pthの初期値Pth(0)がパラメータ入力部22Aから計算部22Eへ入力され、放電可能SOCおよび充電可能SOCがパラメータ入力部22Aから充放電実施部22Gへ入力される。
【0026】
次に、電力値取得部22Bが、商用電源から供給された交流電力の瞬時電力値P(t)をスマートメータ10から取得し、瞬時電力値P(t)を判定部22Cへ入力する(ステップS2)。また、充電率取得部22Fが、当該時点の蓄電池30のSOC(SOC(t))を取得し、SOC(t)を充放電実施部22Gへ入力する(ステップS3)。なお、上記ステップS2、S3の処理は、同時並行で実施してもよいし、逆の順番で実施してもよい。
【0027】
次に、判定部22Cは、瞬時電力値P(t)が予め定められた閾値範囲内であるか否かを判定し(ステップS4)、判定結果を示すフラグ(
図2ではFLAGと表記)および瞬時電力値P(t)を計算部22Eへ送付する。ここでは一例として、(瞬時電力値P(t)≧閾値上限Pu又は瞬時電力値P(t)≦閾値下限Pl)であるか否かを判定しており、ステップS4の肯定判定は閾値範囲外であることを意味し、ステップS4の否定判定は閾値範囲内であることを意味する。
【0028】
ステップS4で肯定判定された場合(閾値範囲外の場合)は、後述する
図4の充放電量更新処理が実施され(ステップS5)、一方、ステップS4で否定判定された場合(閾値範囲内の場合)は、後述する
図5の充放電量維持処理が実施される(ステップS6)。そして、充放電実施部22Gが、
図4又は
図5の処理により設定された充放電量を用いて充放電指示を行う(ステップS7)。その後は、ステップS2へ戻り、ステップS2〜S7の処理が繰り返される。
【0029】
ここで、
図4を参照して、瞬時電力値P(t)が閾値範囲内でない場合に実施される充放電量更新処理を説明する。まず、判定部22Cからのフラグにより瞬時電力値P(t)が閾値範囲内でないと認識した計算部22Eは、瞬時電力値P(t)と、前回の制御値Pth(t-1)と、蓄電池30の前回の充放電量である前回充放電量x(t-1)とに基づいて、前述した式(1)により、蓄電池30の充放電量である計画充放電量x’(t)を計算し(ステップS5A)、計画充放電量x’(t)、前回充放電量x(t-1)および前回の制御値Pth(t-1)を充放電実施部22Gへ送付する。
【0030】
次に、充放電実施部22Gは、計画充放電量x’(t)が正の値であるか否かを判断する(ステップS5B)。ここで、計画充放電量x’(t)が正の値であれば、蓄電池30からの放電に関する制御を意味し、計画充放電量x’(t)が負の値であれば、蓄電池30への充電に関する制御を意味する。
【0031】
ステップS5Bで計画充放電量x’(t)が正の値であれば、以下のステップS5C〜S5Fの放電に関する制御が実施される。ステップS5Cでは、充放電実施部22Gは、当該時点の蓄電池30のSOC(SOC(t))が放電可能SOC以上であるか否かを判断する。ここで、SOC(t)が放電可能SOC以上であれば、放電可能と判断できるため、充放電実施部22Gは、計画充放電量x’(t)を蓄電池30の充放電量x(t)として設定する(ステップS5D)。ここで、前回の制御値Pth(t-1)はそのまま今回の制御値Pth(t)とされ、上記設定後の充放電量x(t)および今回の制御値Pth(t)はデータ記憶部22Dに出力され、次回の処理のために記憶される。一方、ステップS5CでSOC(t)が放電可能SOC以上でなければ、蓄電池30のバックアップ容量を確保するため、充放電実施部22Gは、蓄電池30の充放電量x(t)を0に設定して放電を回避し(ステップS5E)、前回の制御値Pth(t-1)を微少量(ΔPth)だけ増加させて今回の制御値Pth(t)を設定する(ステップS5F)。ここで、上記同様、充放電量x(t)および今回の制御値Pth(t)はデータ記憶部22Dに出力され、次回の処理のために記憶される。
【0032】
また、ステップS5Bで計画充放電量x’(t)が正の値でなければ、以下のステップS5G〜S5Jの充電に関する制御が実施される。ステップS5Gでは、充放電実施部22Gは、当該時点の蓄電池30のSOC(SOC(t))が充電可能SOC以下であるか否かを判断する。ここで、SOC(t)が充電可能SOC以下であれば、充電可能と判断できるため、充放電実施部22Gは、計画充放電量x’(t)を蓄電池30の充放電量x(t)として設定する(ステップS5H)。ここで、前回の制御値Pth(t-1)はそのまま今回の制御値Pth(t)とされ、上記設定後の充放電量x(t)および今回の制御値Pth(t)はデータ記憶部22Dに出力され、次回の処理のために記憶される。一方、ステップS5GでSOC(t)が充電可能SOC以下でなければ、蓄電池30を保護するため、充放電実施部22Gは、蓄電池30の充放電量x(t)を0に設定して充電を回避し(ステップS5I)、前回の制御値Pth(t-1)を微少量(ΔPth)だけ減少させて今回の制御値Pth(t)を設定する(ステップS5J)。ここで、上記同様、充放電量x(t)および今回の制御値Pth(t)はデータ記憶部22Dに出力され、次回の処理のために記憶される。
【0033】
以上のような
図4の処理により、ステップS5C〜S5Fの放電に関する制御において、当該時点の蓄電池30のSOC(SOC(t))が放電可能SOC以上でなければ、放電を回避して蓄電池30のバックアップ容量を確保することができるとともに、制御値Pth(t-1)を微少量(ΔPth)だけ増加させることで放電過多による制御不能状態を回避することができる。同様に、ステップS5G〜S5Jの充電に関する制御において、当該時点の蓄電池30のSOC(SOC(t))が充電可能SOC以下でなければ、充電を回避して蓄電池30を保護することができるとともに、制御値Pth(t-1)を微少量(ΔPth)だけ減少させることで充電過多による制御不能状態を回避することができる。上記のように放電・充電のいずれの場合も制御不能状態を回避することで、デマンド値を極力抑制することが可能となる。
【0034】
次に、
図5を参照して、瞬時電力値P(t)が閾値範囲内である場合に実施される充放電量維持処理を説明する。充放電実施部22Gは、例えば、計算部22Eから計画充放電量x’(t)を受信しない点、又は、判定部22Cから計算部22E経由で受信したフラグが「0」である点によって、瞬時電力値P(t)が閾値範囲内であると認識し、以下の充放電量維持処理を実施する。まず、充放電実施部22Gは、当該時点の状態が放電中であるか否かを判断し(ステップS6A)、当該時点の状態が充電中であるか否かを判断する(ステップS6B)。ステップS6A、S6Bにて、当該時点の状態が放電中と判断されれば、後述するステップS6D〜S6Gの放電に関する制御が実施され、当該時点の状態が充電中と判断されれば、後述するステップS6H〜S6Kの充電に関する制御が実施される。さらに、当該時点の状態が放電中でも充電中でもないと判断されれば、充放電実施部22Gは、制御値Pth(t-1)の調整を行わず、蓄電池30の前回充放電量x(t-1)を今回の充放電量x(t)として設定する(ステップS6C)。ステップS6Cの後、今回の制御値Pth(t)は前回の制御値Pth(t-1)のまま維持され、上記設定後の充放電量x(t)および今回の制御値Pth(t)はデータ記憶部22Dに出力され、次回の処理のために記憶される。
【0035】
ステップS6Aで当該時点の状態が放電中と判断されれば、ステップS6Dにおいて、充放電実施部22Gは、当該時点の蓄電池30のSOC(SOC(t))が放電可能SOC以上であるか否かを判断する。ここで、SOC(t)が放電可能SOC以上であれば、放電を維持可能と判断できるため、充放電実施部22Gは、制御値Pth(t-1)の調整を行うことなく、蓄電池30の前回充放電量x(t-1)を今回の充放電量x(t)として設定する(ステップS6E)。ここで、前回の制御値Pth(t-1)はそのまま今回の制御値Pth(t)とされ、上記設定後の充放電量x(t)および今回の制御値Pth(t)はデータ記憶部22Dに出力され、次回の処理のために記憶される。一方、ステップS6DでSOC(t)が放電可能SOC以上でなければ、蓄電池30のバックアップ容量を確保するため、充放電実施部22Gは、蓄電池30の充放電量x(t)を0に設定して放電を回避し(ステップS6F)、前回の制御値Pth(t-1)を微少量(ΔPth)だけ増加させて今回の制御値Pth(t)を設定する(ステップS6G)。ここで、上記同様、充放電量x(t)および今回の制御値Pth(t)はデータ記憶部22Dに出力され、次回の処理のために記憶される。
【0036】
また、ステップS6Bで当該時点の状態が充電中と判断されれば、ステップS6Hにおいて、充放電実施部22Gは、当該時点の蓄電池30のSOC(SOC(t))が充電可能SOC以下であるか否かを判断する。ここで、SOC(t)が充電可能SOC以下であれば、充電を維持可能と判断できるため、充放電実施部22Gは、制御値Pth(t-1)の調整を行うことなく、蓄電池30の前回充放電量x(t-1)を今回の充放電量x(t)として設定する(ステップS6I)。ここで、前回の制御値Pth(t-1)はそのまま今回の制御値Pth(t)とされ、上記設定後の充放電量x(t)および今回の制御値Pth(t)はデータ記憶部22Dに出力され、次回の処理のために記憶される。一方、ステップS6HでSOC(t)が充電可能SOC以下でなければ、蓄電池30のバックアップ容量を確保するため、充放電実施部22Gは、蓄電池30の充放電量x(t)を0に設定して充電を回避し(ステップS6J)、前回の制御値Pth(t-1)を微少量(ΔPth)だけ減少させて今回の制御値Pth(t)を設定する(ステップS6K)。ここで、上記同様、充放電量x(t)および今回の制御値Pth(t)はデータ記憶部22Dに出力され、次回の処理のために記憶される。
【0037】
以上のような
図5の処理により、ステップS6D〜S6Gの放電に関する制御において、当該時点の蓄電池30のSOC(SOC(t))が放電可能SOC以上でなければ、放電を回避して蓄電池30のバックアップ容量を確保することができるとともに、制御値Pth(t-1)を微少量(ΔPth)だけ増加させることで放電過多による制御不能状態を回避することができる。同様に、ステップS6H〜S6Kの充電に関する制御において、当該時点の蓄電池30のSOC(SOC(t))が充電可能SOC以下でなければ、充電を回避して蓄電池30を保護することができるとともに、制御値Pth(t-1)を微少量(ΔPth)だけ減少させることで充電過多による制御不能状態を回避することができる。上記のように放電・充電のいずれの場合も制御不能状態を回避することで、デマンド値を極力抑制することが可能となる。
【0038】
次に、
図6を用いて、さまざまな数値の一例を参照しながら制御処理を説明する。ここでは、説明を簡易化するため、閾値下限と閾値上限をそれぞれ制御値と同じ値とし、充電可能SOCを100%、放電可能SOCを90%、ΔPthを2、充放電量が−1の場合(即ち、充電量1だけ充電する場合)にSOCが1%増加し、充放電量が+1の場合(即ち、放電量1だけ放電する場合)にSOCが1%減少すると仮定する。例えば、
図6のように消費電力が推移し、発電している状況において、充放電量は式(1)、デマンド値は式(2)、瞬時電力値は式(3)により、それぞれ求められる。なお、
図6に示すように理解を容易にするため、数値例には整数を用いているが、SOC以外の数値例は特定の単位を有するものではない。
【0039】
図6の時刻t=2において、式(1)によると充放電量は-3と求められるが、当該時点のSOCが充電可能SOC(100%)以上であると判断されるため、充放電量は0に設定され、充電は実施されない。ここで、制御値をΔPth分(即ち、2だけ)減少させることで、充電過多による制御不能状態を解消する。
【0040】
同様に、時刻t=9において、式(1)によると充放電量は2と求められるが、当該時点のSOCが放電可能SOC(90%)以下であると判断されるため、充放電量は0に設定され、放電は実施されない。ここで、制御値をΔPth分(即ち、2だけ)増加させることで、放電過多による制御不能状態を解消する。
【0041】
以上のような
図6の例でも、放電・充電のいずれの場合も制御不能状態を回避することで、デマンド値を極力抑制することが可能となる。
【0042】
続いて、本実施形態にかかる変形例について説明する。
【0043】
上記実施形態では、蓄電池30を直接制御することで蓄電池30の充放電制御を行う例について述べたが、整流部21が電圧可変機能を備える場合には、整流部21の電圧調整によって蓄電池30の充放電制御を行ってもよい。例えば、目標とするデマンド値を上回る場合には、蓄電池30に対し整流部21の電圧を相対的に低くすることで蓄電池30から放電させ、一方、目標とするデマンド値を下回る場合には蓄電池30に対し整流部21の電圧を相対的に高くすることで蓄電池30へ充電させる、といった制御を実施してもよい。蓄電池30の充電量および放電量については、整流部21と蓄電池30との電位差に依存することから、上記のように整流部21の電圧調整によって蓄電池30の充放電制御が可能である。
【0044】
また、上記実施形態では、制御部22を整流装置20の内部に設けた例を説明したが、制御部22は整流装置20の外部に設けてもよい。また、電源システムが、無線基地局等の通信設備内に設けられた例を示したが、無線基地局等の通信設備内に設けられることは必須ではない。
【0045】
また、上記実施形態では、商用電源から供給された交流電力の瞬時電力値を、無線基地局等の通信設備に既存のスマートメータから取得する例を示したが、既存のスマートメータから取得する点は必須ではない。ただ、既存のスマートメータから瞬時電力値を取得することで、クランプメータ、電力センサなどの電力測定装置の追加設置を必要としないため、装置コストを低く抑えることができる、という利点がある。
【0046】
また、上記実施形態では、電源システムが太陽光発電装置を備えた例を示したが、本発明では電源システムが太陽光発電装置を備える点は必須ではない。
【0047】
また、上記実施形態では、制御部22が充電率取得部22Fを備え、充放電実施部22Gが、充電率取得部22Fによって取得されたSOC(蓄電池30の充電率)にさらに基づいて充放電量を設定する例を示した。具体的には、充放電実施部22Gが、計画充放電量が放電のための制御量である場合に、SOCと予め定められた放電可能SOCとの比較結果に基づいて充放電量及び制御値を設定し、計画充放電量が充電のための制御量である場合に、SOCと予め定められた充電可能SOCとの比較結果に基づいて充放電量及び制御値を設定する例を示した。しかし、本発明では、制御部22が充電率取得部22Fを備える点、および、充放電実施部22Gが充電率取得部22Fによって取得されたSOCにさらに基づいて、例えば上記のように充放電量を設定する点は、必須要件ではなく、これらの要件を備えなくてもよい。
【0048】
なお、上記の実施形態の説明で用いたブロック図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロック(構成部)は、ハードウェア及び/又はソフトウェアの任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックの実現手段は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的及び/又は論理的に結合した1つの装置により実現されてもよいし、物理的及び/又は論理的に分離した2つ以上の装置を直接的及び/又は間接的に(例えば、有線及び/又は無線)で接続し、これら複数の装置により実現されてもよい。
【0049】
例えば、上記の実施形態における制御部22は、上述した制御部22の処理を行うコンピュータとして機能してもよい。
図7は、制御部22のハードウェア構成の一例を示す図である。上述の制御部22は、物理的には、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006、バス1007などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。
【0050】
なお、以下の説明では、「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。制御部22のハードウェア構成は、図に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
【0051】
制御部22における各機能は、プロセッサ1001、メモリ1002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることで、プロセッサ1001が演算を行い、通信装置1004による通信や、メモリ1002及びストレージ1003におけるデータの読み出し及び/又は書き込みを制御することで実現される。
【0052】
プロセッサ1001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1001は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)で構成されてもよい。例えば、制御部22の各機能部は、プロセッサ1001を含んで実現されてもよい。
【0053】
また、プロセッサ1001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールやデータを、ストレージ1003及び/又は通信装置1004からメモリ1002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、上述の実施形態で説明した動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。例えば、制御部22の各機能部は、メモリ1002に格納され、プロセッサ1001で動作する制御プログラムによって実現されてもよく、他の機能ブロックについても同様に実現されてもよい。上述の各種処理は、1つのプロセッサ1001で実行される旨を説明してきたが、2以上のプロセッサ1001により同時又は逐次に実行されてもよい。プロセッサ1001は、1以上のチップで実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介してネットワークから送信されても良い。
【0054】
メモリ1002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つで構成されてもよい。メモリ1002は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1002は、本発明の一実施形態に係る方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0055】
ストレージ1003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD−ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu−ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つで構成されてもよい。ストレージ1003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記憶媒体は、例えば、メモリ1002及び/又はストレージ1003を含むデータベース、サーバその他の適切な媒体であってもよい。
【0056】
通信装置1004は、有線及び/又は無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。例えば、上述の制御部22の各機能部は、通信装置1004を含んで実現されてもよい。
【0057】
入力装置1005は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサなど)である。出力装置1006は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)である。なお、入力装置1005及び出力装置1006は、一体となった構成(例えば、タッチパネル)であってもよい。
【0058】
また、プロセッサ1001やメモリ1002などの各装置は、情報を通信するためのバス1007で接続される。バス1007は、単一のバスで構成されてもよいし、装置間で異なるバスで構成されてもよい。
【0059】
また、制御部22は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部又は全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサ1001は、これらのハードウェアの少なくとも1つで実装されてもよい。
【0060】
以上、本実施形態について詳細に説明したが、当業者にとっては、本実施形態が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本実施形態は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本実施形態に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0061】
本明細書で説明した各態様/実施形態の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本明細書で説明した方法については、例示的な順序で様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
【0062】
入出力された情報などは特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルで管理してもよい。入出力される情報などは、上書き、更新、または追記され得る。出力された情報などは削除されてもよい。入力された情報などは他の装置へ送信されてもよい。
【0063】
判定は、1ビットで表される値(0か1か)によって行われてもよいし、真偽値(Boolean:trueまたはfalse)によって行われてもよいし、数値の比較(例えば、所定の値との比較)によって行われてもよい。
【0064】
本明細書で説明した各態様/実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。また、所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的に行うものに限られず、暗黙的(例えば、当該所定の情報の通知を行わない)ことによって行われてもよい。
【0065】
ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。
【0066】
また、ソフトウェア、命令などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア及びデジタル加入者回線(DSL)などの有線技術及び/又は赤外線、無線及びマイクロ波などの無線技術を使用してウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術及び/又は無線技術は、伝送媒体の定義内に含まれる。
【0067】
本明細書で説明した情報、信号などは、様々な異なる技術のいずれかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、チップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、又はこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
【0068】
また、本明細書で説明した情報、パラメータなどは、絶対値で表されてもよいし、所定の値からの相対値で表されてもよいし、対応する別の情報で表されてもよい。
【0069】
通信端末は、当業者によって、加入者局、モバイルユニット、加入者ユニット、ワイヤレスユニット、リモートユニット、モバイルデバイス、ワイヤレスデバイス、ワイヤレス通信デバイス、リモートデバイス、モバイル加入者局、アクセス端末、モバイル端末、ワイヤレス端末、リモート端末、ハンドセット、ユーザエージェント、モバイルクライアント、クライアント、またはいくつかの他の適切な用語で呼ばれる場合もある。
【0070】
本明細書で使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0071】
「含む(include)」、「含んでいる(including)」、およびそれらの変形が、本明細書あるいは特許請求の範囲で使用されている限り、これら用語は、用語「備える(comprising)」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本明細書あるいは特許請求の範囲において使用されている用語「または(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0072】
本明細書において、文脈または技術的に明らかに1つのみしか存在しない装置である場合以外は、複数の装置をも含むものとする。本開示の全体において、文脈から明らかに単数を示したものではなければ、複数のものを含むものとする。