特許第6796539号(P6796539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796539
(24)【登録日】2020年11月18日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】ブッシング
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/08 20060101AFI20201130BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20201130BHJP
   H02G 15/013 20060101ALI20201130BHJP
   H01B 17/26 20060101ALI20201130BHJP
   H05K 7/00 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   H02G3/08 080
   H02G3/22
   H02G15/013
   H01B17/26 A
   H05K7/00 M
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-83251(P2017-83251)
(22)【出願日】2017年4月19日
(65)【公開番号】特開2018-182986(P2018-182986A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121429
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 亮博
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−341653(JP,A)
【文献】 特開2014−143889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/08
H02G 3/22
H02G 15/013
H01B 17/26
H05K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部の端縁に隣接して形成され環状の一側が開放する通孔に取着される取着部と、
前記通孔の内面側を基端として該内面に沿って複数が並ぶようにして該通孔内に張り出す可撓性を有する閉塞片と、を有し、
前記複数の閉塞片は、互いに隣合う該閉塞片とは、切り割り可能な連設部により連設され、
前記複数の閉塞片のうち、前記通孔の開放した箇所に位置する閉塞片には、前記通孔により途切れた前記端縁を繋ぐように、自身の前記閉塞片における別の個所及び他の前記閉塞片よりも肉厚の肉厚部が設けられていることを特徴とするブッシング。
【請求項2】
前記肉厚部には、前記連設部を切り割って形成される複数のスリットのうちの一つに連続するようにして、該肉厚部より薄肉で分断可能な溝部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のブッシング。
【請求項3】
前記肉厚部に設けられた溝部は、前記連設部より肉厚であることを特徴とする請求項2に記載のブッシング。
【請求項4】
前記複数の閉塞片は、隣合う該閉塞片との境界が、全ての前記閉塞片の中心部から放射状に延びて形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のブッシング。
【請求項5】
板状部に形成された通孔に取着される取着部と、
前記通孔の内面側を基端として該内面に沿って複数が並ぶようにして該通孔内に張り出す可撓性を有する閉塞片と、を有し、
前記各閉塞片は、前記基端から張り出し方向の途中までの箇所に、前記閉塞片における前記途中箇所から先端までの部分より肉厚である肉厚部が設けられていることを特徴とするブッシング。
【請求項6】
前記各閉塞片の肉厚部は、隣合う閉塞片とは、該肉厚部より薄肉で切り割り可能な基端側連設部により連設されていることを特徴とする請求項5に記載のブッシング。
【請求項7】
前記各閉塞片は、前記張り出し方向の途中箇所から先端までの部分は、互いに隣合う前記閉塞片とは、切り割り可能な先端側連設部により連設され、該先端側連設部は、前記基端側連設部より薄肉であることを特徴とする請求項6に記載のブッシング。
【請求項8】
板状部に形成された通孔に取着される取着部と、
前記通孔の内面側を基端として該内面に沿って複数が並ぶようにして該通孔内に張り出す可撓性を有する閉塞片と、を有し、
前記各閉塞片は、互いに隣合う該閉塞片とは、該閉塞片より薄肉の切り割り可能な連設部により連設されており、
前記連設部は、前記基端とは反対側の先端から離間した箇所に、該離間箇所から先端までの部分よりも肉厚である肉厚部が設けられていることを特徴とするブッシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線ボックス、電力量計ボックス等の壁面の板状部に形成された通孔に取着されるブッシングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブル、通信ケーブル等の配線材を配線するときや、ケーブル保護管、吸排気ダクト等の配管材を配管するときに、配線ボックス、電力量計ボックス等の配線器具、配管器具が用いられており、これらの配線器具、配管器具の壁面の板状部には、導入される配管材の管径やダクト形状等に合致した通孔が形成され、この通孔に各種配線材、配管材が挿通され接続されている。通孔は、例えば特許文献1、特許文献2に記載のように、通常は着脱自在な閉塞板で閉塞され、使用時に閉塞板が取り外されて、内部に配線材、配管材が挿通されるものがある。また、通孔は、特許文献3に記載のように、板状部にU字状に切欠された切欠きとケーブルとの隙間を閉塞し、消火活動時の放水により前記隙間から水が電線分岐箱内に侵入するのを防止するものがある。
【0003】
更に、配線ボックスの壁面の板状部に形成された通孔に挿通されるケーブルの保護層が通孔の周縁部で傷付くのを防止したり、通孔とケーブル等との隙間内に塵埃、虫類が侵入するのを防止するために、図13に示すように、通孔にブッシング60が取り付けられるものがある。図13のブッシング60は、ゴムや軟質樹脂等の軟質材からなり薄肉の連設部30によって区画された複数の閉塞片20で形成され、板状部に形成されたU字状の切欠からなる通孔に取り付けられる。このブッシング60は通常は通孔を閉塞するが、使用時には中央部分が突き破られあるいは開放側の閉塞片20a,20a間の連設部30が切り割られてケーブル等を挿通できるようになっている。
【0004】
このブッシング60を用いれば、特許文献1、2に記載のような閉塞板を通孔から取り外すことなく、また、特許文献3の係合子などの部材を取り付けることなく、ブッシング60を通孔に取り付けたままの状態でケーブル等を挿通することができ、導入されるケーブルの本数やケーブルあるいは電線管等の径に対応しながら通孔とケーブル等との隙間を閉塞し、これにより、ケーブルの保護層等が通孔の周縁部で傷付くのを防止できるとともに、通孔とケーブル等との隙間から塵埃や虫類が侵入するのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−183597号公報
【特許文献2】特開2001−275228号公報
【特許文献3】実開昭58−112014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図13に示したブッシング60は、ゴムや軟質樹脂等の軟質材からなる複数の閉塞片20で形成されている。このため、ブッシング60が、環状の一側が開放した通孔に取り付けられた状態において、開放側の閉塞片20a,20a間の連設部30を切り割ってケーブルをブッシング60の中心部に向けてスライド移動させて挿通したとき、通孔の前記開放した箇所に位置する閉塞片20aは、剛性に乏しくいわゆる腰がないことから、通孔の開放側に位置する端部などがふわふわとびらついたりして見栄えが良くない。また、通孔の開放側に位置する一対の閉塞片20a,20aはケーブルを挟持し保持する力が弱いため、例えば、通孔が縦壁からなる板状部に形成されている場合は、ケーブルの荷重や外力によってケーブルが、開放側に位置する一対の閉塞片20a,20aの間の連設部30に沿って徐々に移動し垂れ下がってくるなどの不具合を生じた。
【0007】
そこで、本発明は、複数の閉塞片からなるものであって、配線材や配管材を挿通し閉塞片の間を切り割った状態において、各閉塞片がいわゆる腰がなくびらつくのを防止できるブッシングの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のブッシングは、
板状部の端縁に隣接して形成され環状の一側が開放する通孔に取着される取着部と、
前記通孔の内面側を基端とし該内面に沿って複数が並ぶようにして該通孔内に張り出す可撓性を有する閉塞片と、を有し、
前記複数の閉塞片は、互いに隣合う該閉塞片とは、切り割り可能な連設部により連設され、
前記複数の閉塞片のうち、前記通孔の開放した箇所に位置する閉塞片には、前記通孔により途切れた前記端縁を繋ぐように、自身の前記閉塞片における別の個所及び他の前記閉塞片よりも肉厚の肉厚部が設けられたものである。
ここで、板状部の端縁に隣接して形成され環状の一側が開放した通孔は、U字状等に切欠された切欠孔である。
【0009】
これにより、通孔の開放した箇所に位置する閉塞片がいわゆる腰がなくびらつくのを防止できる。その結果、閉塞片がびらついて見栄えが低下するのを防止できる。また、ブッシングに挿通されたケーブルの保持力を高めることができ、例えば、通孔が縦壁からなる板状部に形成されている場合は、ケーブルの荷重や外力によってケーブルが、開放側に位置する一対の閉塞片の間の連設部に沿って徐々に移動し垂れ下がってくるのを防止できる。
【0010】
なお、「複数の閉塞片のうち、通孔の開放した箇所に位置する閉塞片は、肉厚部が設けられている」構成は、別言すれば、「開放する箇所に隣接した閉塞片には、該閉塞片の前記開放側の端縁に沿って肉厚部が設けられている」と表記することもでき、更に別言すれば、「開放した箇所に位置する閉塞片は、通孔の開放側の端縁が、他の箇所及び他の閉塞片に比して変形しにくくなるように、肉厚に形成されている」と表記することもできる。
【0011】
更に、請求項1のブッシングは、互いに隣合う閉塞片、切り割り可能な連設部により連設されているから、連設部を切り割るまでは、通孔を完全に閉塞して塵埃等の侵入を防止できるとともに、複数の閉塞片全体の強度、剛性を保持することができる。
【0012】
また、請求項1のブッシングは、肉厚部に、前記連設部を切り割って形成される複数のスリットのうちの一つに連続するようにして、該肉厚部より薄肉で分断可能な溝部が設けられたものとすることもできる。
これによれば、通孔の開放した箇所に位置する閉塞片の肉厚部の溝部と、連設部を切り割って形成される複数のスリットのうちの一つと、が連通し、通孔の開放側から配線材、配管材をブッシングの内部に挿入することができるので、配線材、配管材を布設路の途中から通孔のブッシング内に挿入することができる。
【0013】
更に、請求項1のブッシングは、肉厚部に設けられた溝部が、連設部より肉厚とすることもできる。
これによれば、肉厚部の溝部は、各閉塞片間の連設部より肉厚であるから、配線材、配管材を途中からブッシング内に挿通した後、通孔の開放した箇所に位置する閉塞片がいわゆる腰がなくびらつくのを防止することができる他、配線材等を先端側から突き刺してブッシング内に挿入した場合には、連設部が所定位置を超えて更に自然に切り割られていくのを肉厚部によって抑えることができる。
そして、請求項1のブッシングは、複数の閉塞片は、隣合う該閉塞片との境界が、全ての前記閉塞片の中心部から放射状に延びて形成されたものとすることもできる。
【0014】
請求項5のブッシングは、
板状部に形成された通孔に取着される取着部と、
前記通孔の内面側を基端とし該内面に沿って複数が並ぶようにして該通孔内に張り出す可撓性を有する閉塞片と、を有し、
前記各閉塞片は、前記基端から張り出し方向の途中までの間に、該途中箇所から前記閉塞片の先端までの部分よりも肉厚である肉厚部が設けられたものである。
ここで、「基端」とは、閉塞片における通孔の内面側を意味し、「閉塞片の先端」とは、閉塞片において前記「基端」とは反対側である、ブッシングの中心部側の部分を意味する。
【0015】
これにより、閉塞片における基端から張り出し方向の途中箇所までの間は、剛性があり撓んでも復元力があるので、閉塞片がいわゆる腰がなくびらつくのを抑えることができる。
【0016】
また、請求項5のブッシングは、各閉塞片の肉厚部は、隣合う閉塞片とは、該肉厚部よりも薄肉で切り割り可能な基端側連設部により連設されたものとすることもできる。
これによれば、閉塞片の肉厚部が隣合う閉塞片とは基端側連設部により連設されている分、各閉塞片は剛性が大きくなりびらつきをより抑えることができる。
【0017】
更に、請求項5のブッシングは、各閉塞片は、前記張り出し方向の途中箇所から先端までの部分は、互いに隣合う前記閉塞片とは、切り割り可能な先端側連設部により連設され、該先端側連設部は、前記基端側連設部より薄肉とすることもできる。
【0018】
請求項8のブッシングは、
板状部に形成された通孔に取着される取着部と、
前記通孔の内面側を基端とし該内面に沿って複数が並ぶようにして該通孔内に張り出す可撓性を有する閉塞片と、を有し、
前記各閉塞片は、互いに隣合う該閉塞片とは、該閉塞片より薄肉の切り割り可能な連設部により連設されており、
前記連設部は、前記基端とは反対側の先端から離間した箇所に、該離間箇所から先端までの部分よりも肉厚である肉厚部が形成されたものである。
【0019】
これにより、連設部は、その先端から離間した箇所に形成された肉厚部により該離間箇所からは切り割り難くなっているから、意図することなく連設部の途中箇所を超えて更に切り割われるのを抑えることができ、ひいては、閉塞片の剛性が低下しびらつくのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、ブッシングの所定箇所に肉厚部が設けられているから、配線材や配管材を挿通し各閉塞片の間を切り割った状態において、閉塞片がいわゆる腰がなくびらつくのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一実施形態のブッシングを示す斜視図である。
図2図1のブッシングを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は背面図、(e)は(b)のA−A切断線による断面図である。
図3図1のブッシングが取り付けられる電力量計ボックスを示す斜視図である。
図4図1のブッシングを図3の電力量計ボックスの通孔に取り付けた状態を示す断面図である。
図5】(a)は図1のブッシングにケーブルを挿通する状態を示す斜視図、(b)は挿通後の状態を示す断面図である。
図6】(a)は図1のブッシングにケーブルを先端側から挿通する状態を示す斜視図、(b)は挿通後の状態を示す断面図である。
図7】本発明の第二実施形態のブッシングを示し、(a)は斜視図、(b)は(a)の閉塞片の拡大斜視図、(c)は正面図、(d)は(c)のC−C切断線による断面図である。
図8】本発明の第二実施形態の別のブッシングを示し、(a)は斜視図、(b)は(a)の閉塞片の拡大斜視図、(c)は正面図、(d)は(c)のD−D切断線による断面図である。
図9】本発明の第三実施形態のブッシングを示し、(a)は斜視図、(b)は(a)の閉塞片の拡大斜視図、(c)は正面図、(d)は(c)のE−E切断線による断面図である。
図10】本発明の第三実施形態の別のブッシングを示す斜視図である。
図11】本発明の第三実施形態の更に別のブッシングを示す斜視図である。
図12】本発明の第三実施形態の更に別のブッシングを示す斜視図である。
図13】従来のブッシングを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〈第一実施形態〉
まず、本発明の第一実施形態のブッシングを図1乃至図6に基づいて説明する。
本発明のブッシングは、配線ボックス、電力量計ボックス等の壁面の板状部に形成された通孔に取着されるものである。本実施形態では、電力量計ボックスの底壁面に形成された略U字状、馬蹄形の通孔に取り付けられるものを説明する。また、通孔に挿通される配線材、配管材として、ケーブルを例示する。
【0023】
図3において、電力量計ボックス40の底壁面41の板状部42には、その端縁43に隣接して通孔44が形成されており、通孔44は端縁43をU字状に切り欠いて環状の一側が開放した形状に形成されている。図1及び図2において、ブッシング1は、通孔44に取着される取着部10と、通孔44の内面45側を基端21とし内面45に沿って複数、本実施形態では6枚が並ぶようにして通孔44内に張り出す可撓性を有する閉塞片20と、を有している。そして、複数の閉塞片20のうち、通孔44の開放した箇所に位置する閉塞片20aは、板状部42において通孔44により途切れた端縁43を繋ぐように、自身の閉塞片20aにおける他の個所及び他の閉塞片20よりも肉厚の、請求項の肉厚部としての端縁側肉厚部23が設けられている。
【0024】
更に詳細には、取着部10は、通孔44の形状に対応して所定厚さのU字板状に形成され、外周側面11にはこれに沿って断面略コ字状の凹溝12が形成されており、6枚の閉塞片20をU字状に囲っている。凹溝12は、電力量計ボックス40の板状部42の端縁43の板厚より僅かに小さい溝幅に形成され、取着部10は、凹溝12が通孔44の内面45に沿って板状部42に外嵌されこれを上下で挟圧して通孔44に取り付けられるようになっている。ブッシング1は、ゴム、軟質樹脂等により、取着部10と閉塞片20とは一体に形成されている。
【0025】
閉塞片20は、薄肉に形成されて可撓性を有し、通孔44の開放した箇所に位置する閉塞片20aを除いて扇板状に形成され、通孔44の内面45側を基端21として通孔44内に張り出している。各閉塞片20の隣合う閉塞片20との境界は、全閉塞片20の中心部Oから放射状に延び、基端21とは反対側である先端22側の二辺は60度の角度で交差してブッシング1の中心部Oに集束し、通孔44を閉塞するようになっている。各閉塞片20は、互いに隣合う閉塞片20とは、切り割り可能な連設部30により連設されており、連設部30で切り割ったときは、基端21を軸に独立して閉塞片20の平面と直交する方向に撓む。連設部30は、各閉塞片20の間を断面V字状の溝に切欠することにより薄肉に形成されている。
【0026】
更に、複数の閉塞片20のうち通孔44の開放した箇所に位置する閉塞片20aに設けられた端縁側肉厚部23には、連設部30を切り割って形成される複数のスリットのうちの一つである、一対の閉塞片20a,20a間のスリットに連続するようにして、この端縁側肉厚部23よりも薄肉で分断可能な溝部24が設けられている。溝部24は、具体的には、端縁側肉厚部23の長さ方向の中間位置で断面V字状に切欠することにより形成され、連設部30よりは肉厚に形成されている。これにより、端縁側肉厚部23の溝部24を分断すれば、連設部30を切り割った一つのスリットとが連通し、通孔44の開放側からケーブル50をブッシング1の内部に挿入することができ、ケーブル50を布設路の途中から通孔44内に挿入し、結線等を行なうことができる。
【0027】
このように構成されたブッシング1は、図1に表れている面が電力量計ボックス40の内部側を向くようにして、図3に示すように、電力量計ボックス40の底壁面41の通孔44に対して、通孔44の開放側からスライド移動させて取着部10の凹溝12を通孔44の内面45に沿って板状部42に外嵌させるだけで通孔44に取り付けることができる。ブッシング1を取り付けた後の状態を図4に示す。ここで、図4のブッシング1は図2(b)のB−B切断線による断面を示す。なお、取り付け後は、図2(c)に表されている面が電力量計ボックス40の外側から見える外観面となる。
【0028】
ブッシング1を取り付けた後、ケーブル50を途中から電力量計ボックス40の通孔44内に挿通するときは、図5(a)に示すように、端縁側肉厚部23の溝部24を分断し、一対の閉塞片20a,20a間の連設部30を切り割って、形成された溝部24のスリットと連設部30のスリットとを連通状態とした後、ケーブル50を端縁側肉厚部23側からブッシング1の内部に押し込めばよい。ケーブル50を挿入後、閉塞片20は、図5(b)に示すように、先端22側がケーブル50に押圧されて基端21を軸に撓んでケーブル50の外面に密接し、ケーブル50と閉塞片20との間は封止される。これにより、ケーブル50は保護層が通孔44の周縁部で傷付くのが防止され、通孔44とケーブル50との隙間内に塵埃、虫類が侵入するのが防止される。なお、図5(b)において、閉塞片20は左方向に撓んでいるが、右側に撓むこともある。
【0029】
一方、ケーブル50の先端を閉塞片20の平面と直交する方向から近接させて電力量計ボックス40の通孔44内に挿通するには、図6(a)に示すように、ブッシング1の中心部Oから閉塞片20を突き破りながら挿入すればよい。ケーブル50を挿入後、閉塞片20は、図6(b)に示すように、先端22側がケーブル50に押圧されて基端21を軸に左側に撓んでケーブル50の外面に密接し、ケーブル50と閉塞片20との間は封止される。これにより、図5の挿通の場合と同じく、ケーブル50の保護層が傷付くのが防止され、塵埃、虫類が侵入するのが防止される他、通孔44の開放した箇所に位置する閉塞片20aに端縁側肉厚部23が設けられていることにより、全ての閉塞片20の周囲全体が環状に厚く強度の大きいものとなっているから、ケーブル50を挿通するときに閉塞片20を突き破り易い。
【0030】
次に上記ブッシング1の作用を説明する。
ブッシング1の複数の閉塞片20のうち、通孔44の開放した箇所に位置する閉塞片20aは、板状部42において通孔44により途切れた端縁43を繋ぐように端縁側肉厚部23が設けられているから、この閉塞片20aは補強され剛性が大きくなって、閉塞片20aの端縁側肉厚部23及び連設部30を切り割ってケーブル50を途中から挿入した後でも、一対の閉塞片20a,20aにおいて通孔44の開放側の箇所に位置する端部がいわゆる腰がなくふわふわとびらついたりするのを防止することができる。
【0031】
また、閉塞片20の端縁側肉厚部23及び連設部30を切り割らずケーブル50を先端側からブッシング1に挿通したときでも、複数の閉塞片20は全体として外周側全体が環状に厚く補強された状態にあるから、同様に通孔44の開放した箇所に位置する閉塞片20aがびらつくのを防止することができる他、ケーブル50を挿通する際に連設部30のみでなく端縁側肉厚部23まで分断されてしまうのを回避し得る。
【0032】
〈第二実施形態〉
次に、本発明の第二実施形態のブッシングを図7及び図8に基づいて説明する。
第二実施形態のブッシングが取り付けられる板状部42の通孔44は、板状部42の端縁43に隣接して形成され環状の一側が開放したものではなく、板状部42の端縁43から離間して独立して設けられたものであり、円形状に形成されている。
【0033】
図7に示すブッシング2Aは、全体が略円盤状に形成され、板状部42に形成された通孔44に取着される取着部10と、通孔44の内面45側を基端21とし内面45に沿って複数、第二実施形態では6枚が並ぶようにして通孔44内に張り出した可撓性を有する閉塞片20と、を有して成り、ゴム、軟質樹脂等により一体に形成されている。
【0034】
取着部10は、所定厚さの円環板状に形成され、外周側面11には断面略コ字状の凹溝12が形成されており、6枚の閉塞片20の外周部全体を囲っている。凹溝12は、第一実施形態の取着部10と同様に、電力量計ボックス40の板状部42の板厚より僅かに小さい幅に形成され、取着部10は凹溝12が通孔44の内面45に沿って通孔44の周縁の板状部42に外嵌され取り付けられるようになっている。
【0035】
6枚の閉塞片20は、全て同大で、扇状の同形状に形成され、隣合う閉塞片20との境界は全閉塞片20の中心部Oから放射状に延びている。各閉塞片20は、取着部10の内面45を基端21とし、この基端21とブッシング2Aの中心部Oに向けた張り出し方向の途中までの間に、その途中箇所25から閉塞片20の先端22までの部分よりも肉厚である、請求項の肉厚部としての閉塞片肉厚部26が設けられている。閉塞片20の一部である閉塞片肉厚部26は、その全面に至って一定厚に形成され、隣合う閉塞片肉厚部26とは、閉塞片肉厚部26よりも薄肉で切り割り可能な基端側連設部31により連設されている。基端側連設部31は、各閉塞片肉厚部26の間を断面V字状の溝に切欠することにより薄肉に形成されている。
【0036】
更に、各閉塞片20は、張り出し方向の途中箇所25から先端22までの部分は、互いに隣合う閉塞片20とは、切り割り可能な先端側連設部32により連設されている。先端側連設部32は、基端側連設部31の延長線上にあり、各閉塞片20の間を断面V字状の溝に切欠することにより切り割り可能となっており、基端側連設部31よりも薄肉に形成されている。
【0037】
このように構成された第二実施形態のブッシング2Aは、閉塞片20の基端21から張り出し方向の途中箇所25までの間に、閉塞片肉厚部26が設けられており、閉塞片20の基端21から張り出し方向の途中箇所25までの間は、閉塞片肉厚部26によって補強され、撓んでも復元力があるので、全体として剛性は大きく、閉塞片20がいわゆる腰がなくふわふわとびらつくのを抑えることができる。
また、閉塞片肉厚部26が隣合う閉塞片肉厚部26とは基端側連設部31により連設されている分、各閉塞片20の剛性はより大きくびらつきを更に抑えることができる。
更に、このブッシング2Aにケーブル50を挿通するときは、第一実施形態の図6に示したものと同様に、ブッシング2Aの中心部Oにおいて閉塞片20の平面と直交する方向からケーブル50の先端で閉塞片20を突き破ることになるが、このとき、第一実施形態のブッシング1と同様に、全ての閉塞片20の周囲全体が閉塞片肉厚部26により環状に厚く強度の大きいものになっているから、ケーブル50を挿通するときに閉塞片20を突き破り易い。
【0038】
ところで、図7に示すブッシング2Aは、各閉塞片20における張り出し方向の途中箇所25から先端22までの部分は、隣合う閉塞片20とは、先端側連設部32により連設されているが、これに限定されるものではなく、図8に示すブッシング2Bのように、各閉塞片20における張り出し方向の途中箇所25から先端22までの部分の、隣合う閉塞片20との間は、先端側連設部32により連設されておらず、打ち抜きの貫通した状態に分断したものとしてもよい。但し、閉塞片20のいわゆる腰の強さの点からは図7に示すブッシング2Aが望ましい。
【0039】
〈第三実施形態〉
次に、本発明の第三実施形態のブッシングを図9乃至図12に基づいて説明する。
図9に示すブッシング3Aは、第二実施形態のブッシングと同様に、全体が略円盤状に形成され、第二実施形態の板状部42に形成されたものと同様の円形状の通孔44に取着される。このブッシング3Aは、第二実施形態のものと同様の形状の取着部10と、通孔44の内面45側を基端21とし内面45に沿って複数、第三実施形態では6枚が並ぶようにして該通孔44内に張り出す可撓性を有する閉塞片20と、を有して成り、ゴム、軟質樹脂等により一体に形成されている。
【0040】
更に、各閉塞片20は、互いに隣合う閉塞片20とは、閉塞片20より薄肉の切り割り可能な、断面V字状の溝の切欠により形成された連設部30により連設されており、その連設部30は、その先端22から離間した箇所33に、連設部30における前記離間箇所33から先端22までの部分よりも肉厚である、請求項の肉厚部としての連設部肉厚部34が設けられている。
【0041】
閉塞片20及び連設部30において、各閉塞片20の先端22側である全閉塞片20の中心部Oから所定距離離間した箇所には、一定高さの突片35が中心部Oを中心とするリング状に突設されている。突片35の高さは閉塞片20の外面より僅かに大きく形成されている。このリング状の突片35により、連設部30における先端22から離間した箇所33に前記連設部肉厚部34が形成されている。すなわち、連設部30について言えば、その溝内に三角形状の突片35が立設されたことにより、一部箇所がスポット的に肉厚となっている。
【0042】
このように形成された第三実施形態のブッシング3Aは、連設部30が、その先端22から離間した箇所33に形成された連設部肉厚部34によって前記離間箇所33からは切り割り難くなっているから、連設部30の先端側が切り割られていった後、更に、意図することなく連設部30の前記離間箇所33を超えて取着部10側に向かって切り割われるのを抑えることができ、ひいては、離間箇所33以降まで切り割われることによって閉塞片20の剛性が低下し、ふわふわとびらつくのを抑えることができる。
【0043】
なお、リング状の突片35は、閉塞片20にも立設されているが、この部分での立設は省いて連設部30のみに立設してもよい。但し、突片35を閉塞片20にも立設すれば、閉塞片20の強度、剛性も向上する。
【0044】
ところで、図9に示すブッシング3Aは、全体が略円盤状に形成され、板状部42の円形状の通孔44に取り付けられるものであるが、第三実施形態のブッシングは、第一実施形態と同様に、取着部10がU字板状に形成され、略U字状の通孔44に取り付けられるものにも適用することができる。
【0045】
図10に示すブッシング3Bは、第一実施形態のブッシング1の連設部30及び閉塞片20に、図9に示すブッシング3Aと同様の突片35がリング状に配置されて立設されている。したがって、このブッシング3Bは、第一実施形態のブッシング1と同様に作用するとともに、連設部30における先端22から離間した箇所33を超えて更に取着部10側に向かって切り割われるのを抑えることができ、ひいては、離間した箇所33以降まで切り割われることによって閉塞片20の剛性が低下しびらつくのを抑えることができる。
【0046】
なお、図11に示すブッシング3Cのように、図10に示すブッシング3Bの端縁側肉厚部23がないものとすることもできる。この場合、図10に示すブッシング3Bよりは一対の閉塞片20a,20aの剛性は低下するものの、連設部30における先端22から離間した箇所33を超えて更に取着部10側に向かって切り割われるのを抑えることができ、ひいては、先端22から離間した箇所33以降まで切り割われることによって閉塞片20の剛性が低下しびらつくのを抑えることができる。
【0047】
また、図12に示すブッシング3Dのように、図13に示す従来のブッシング60に対して、連設部30において、全閉塞片20の中心部Oから所定距離離間した箇所33に、三角形状、楔形状等の突片36がスポット的に突設されたものとすることもできる。
【0048】
〈その他〉
ところで、上記各実施形態のブッシングは、取着部10が略U字状あるいは円環板状に形成されているが、これらの形状に限られるものではない。
【0049】
また、上記各実施形態の複数の閉塞片20は、6枚からなり、各閉塞片20の先端22側の開き角度はいずれも60度に形成されているが、これらに限定されるものではなく、4〜8枚の閉塞片20などで構成してもよい。
【0050】
更に、複数の閉塞片20は、隣合う該閉塞片20との境界が、前記全閉塞片20の中心部Oから放射状に延びて形成されているが、放射状に延びたものでなくてもよい。
【0051】
そして、上記各実施形態の連設部30及び第一実施形態の肉厚部の溝部24は、断面V字状の溝に切欠することにより薄肉に形成されているが、これと異なる断面U字状の溝等に切欠して形成してもよく、また、これらの溝をブッシングの表裏両面に形成してもよい。
【0052】
上記第一、三実施形態において、複数の閉塞片20は、互いに隣合う該閉塞片20とは、切り割り可能な連設部30により連設されているが、各閉塞片20は、互いに連設されておらず、最初から分断されたものであってもよい。
【0053】
上記第一実施形態において、通孔44の開放した箇所に位置する閉塞片20a,20aの端縁側肉厚部23に設けられた溝部24は、連設部30より肉厚に形成されているが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0054】
更に、上記第二実施形態のブッシングは、略円盤状に形成されているが、各閉塞片20の基端21から張り出し方向の途中箇所25までの間に閉塞片肉厚部26が設けられている構成は、図示しないが、取着部10が略U字状に形成されたブッシングにも適用することができる。
また、各実施形態における扇板状の各閉塞片20は、全て同大、同形状に形成されているが、互いに大きさ、形状が異なるものとしてもよい。
【0055】
加えて、上記第三実施形態の閉塞片20間に設けられた連設部30は、先端22から離間した箇所33に、突片35を、閉塞片20を含めてリング状に配置して立設したり、連設部30の溝内に三角形の突片36を立設することにより、離間箇所33から先端22までの部分よりも肉厚である連設部肉厚部34がスポット的に形成されているが、これに限定されるものではなく、連設部30に設ける連設部肉厚部34は、例えば、先端22から離間した箇所33から、連設部30の長さ方向に沿って基端21に向かうに従って段階的あるいは連続的に厚肉となるように形成してもよい。
【0056】
なお、上記各実施形態のブッシングは、電力量計ボックス40の底壁面41の板状部42に形成された通孔44に取り付けられるものを例示しているが、本発明は、他の配線ボックス等の板状部42に形成された通孔44に取り付けられるものにも同様に適用することができる。
そして、板状部42の通孔44は、U字状、馬蹄形、円形に限られるものではない。
更に、上記実施形態では、板状部42の通孔44にケーブル50が挿通されるものを例示したが、本発明は、他の通信線等の配線材や電線管等の配管材などが挿通される場合にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1、2A、2B、3A〜3D ブッシング 31 基端側連設部
10 取着部 32 先端側連設部
20、20a 閉塞片 33 先端から離間した箇所
21 基端 34 連設部肉厚部
22 先端 42 板状部
23 端縁側肉厚部 43 端縁
24 溝部 44 通孔
25 途中箇所 45 内面
26 閉塞片肉厚部 O 全閉塞片の中心部
30 連設部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13