【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自動車内の環境を再現する環境試験装置は、直射日光を再現するためのランプが必須である。また自動車内の環境を再現する環境試験装置は、高温環境を作る必要がある。
ここで高温環境下にランプを置いて発光させると、ランプの寿命が短くなる傾向がある。例えばフィラメントを赤熱させる構造のランプにおいては、寿命は、一般にフィラメントの寿命で決まると言われている。
即ちフィラメントが赤熱することによって、フィラメントが昇華し、細くなって行く。そして遂にはフィラメントが断線し、寿命に至る。
ランプが高温にさらされるとフィラメントの昇華が進み、寿命が短くなる。
【0008】
特許文献1に開示された環境試験装置は、棒状のランプを使用するものであり、フィラメントを有するか否かは定かではないが、ランプの寿命を伸ばす効果があると予想される。
しかしながら、特許文献1に開示された環境試験装置は、試験室から隔離されたランプ室内に、ランプの全体が収容されているものであるから、ランプが切れた際の交換が困難である。
また特許文献1に開示された環境試験装置では、ランプを全体的に冷却するので、ランプの発熱量に相当する熱を奪う必要がある。そのため特許文献1に開示された環境試験装置では、冷却装置として相当に大きな容量を持ったものを採用する必要がある。
【0009】
これに対して特許文献2に開示された環境試験装置は、試験室の中にランプがある。そして冷気の一部は、ランプの部分を通過して被試験物側に流れる。
ここで自動車の車内の環境を再現するためには、試験室内を摂氏80度程度に維持する必要がある。特許文献2に開示された環境試験装置では、冷却装置は、試験室内の温度が過度に上昇してしまうことを防ぐことを主たる目的とするものであり、その冷気の一部をランプ側に流すものに過ぎない。
そのため特許文献2の構成によると、ランプを効果的に冷却できるのか疑問である。またランプを十分に冷却するためには、相当量の冷気をランプに供給する必要があり、そうすると試験室内の温度を高温に維持することができなくなってしまう可能性がある。
さらに特許文献2に開示された環境試験装置では、特許文献1と同様に、冷却装置として相当に大きな容量を持ったものを採用する必要がある。
【0010】
本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、被試験物に光を照射するランプを備えた環境試験装置を改良し、ランプが故障しにくい環境試験装置を提供することを課題とするものである。
また本発明は、同様の課題を解決することができるランプユニットを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人は、自動車内の環境を再現する環境試験装置を試作した。試作した環境試験装置では、ランプ全体を試験室の中に設置した。試作した環境試験装置は、試験条件によっては、ランプが早期に故障する場合があり、頻繁に取り替える必要があった。
【0012】
本発明者らは、ランプの温度が昇降する際に、バルブと導電線との熱膨張率の相違からバルブの電線導入部に微細な隙間が生じ、微細な隙間から試験室の空気が侵入し、ランプの故障につながる場合があると考えた。
【0013】
上記した知見に基づいて開発された発明は、内部に所望の環境を創出可能であり被試験物が載置される試験室と、被試験物に光を照射するランプを有し、被試験物を所望の環境下において被試験物の表面に光を照射する機能を備えた環境試験装置において、試験室から隔離された冷却室があり、前記ランプは、給電部と、バルブを有し、給電部からバルブ内に給電して発光させ、少なくともバルブの先端面から光を放出するものであり、前記ランプの少なくとも給電部が冷却室内に配置され、前記ランプの少なくともバルブの先端面は冷却室外にあって試験室内に露出していることを特徴とする環境試験装置である。
請求項1に記載の発明は、内部に所望の環境を創出可能であり被試験物が載置される試験室と、前記被試験物に光を照射するランプを有し、前記被試験物を所望の環境下において前記被試験物の表面に光を照射する機能を備えた環境試験装置において、前記試験室内を空調する空調部と、前記試験室及び前記空調部から
空間的に区切られた冷却室があり、前記ランプは、給電部と、バルブを有し、当該給電部から当該バルブ内に給電して発光させ、少なくとも前記バルブの先端面から光を放出するものであり、
前記冷却室の前記試験室側には前記ランプを挿入する開口があり、前記冷却室内であって前記開口の奥には前記給電部と嵌合するソケットが設けられており、前記開口には前記バルブの側面と接する封止部材があり、前記ランプが取り付けられた状態においては、前記バルブの側面が前記封止部材と接して前記バルブと前記開口の隙間が封鎖され、かつ、少なくとも前記給電部が前記冷却室内に配置され、少なくとも前記バルブの先端面が前記冷却室外であって前記試験室内に露出していることを特徴とする環境試験装置である。
請求項2に記載の発明は、
内部に所望の環境を創出可能であり被試験物が載置される試験室と、前記被試験物に光を照射するランプを有し、前記被試験物を所望の環境下において前記被試験物の表面に光を照射する機能を備えた環境試験装置において、前記試験室内を空調する空調部と、前記試験室及び前記空調部から空間的に区切られた冷却室があり、前記ランプは、給電部と、バルブを有し、当該給電部から当該バルブ内に給電して発光させ、少なくとも前記バルブの先端面から光を放出するものであり、前記冷却室の前記試験室側には前記ランプを挿入する開口があり、前記冷却室内であって前記開口の奥には前記給電部と嵌合するソケットが設けられており、前記ランプが取り付けられた状態において、前記冷却室内の圧力が前記試験室内の圧力に比べて高くなるように調整され、かつ、少なくとも前記給電部が前記冷却室内に配置され、少なくとも前記バルブの先端面が前記冷却室外であって前記試験室内に露出していることを特徴とする環境試験装置である。
請求項3に記載の発明は、内部に所望の環境を創出可能であり被試験物が載置される試験室と、前記被試験物に光を照射するランプを有し、前記被試験物を所望の環境下において前記被試験物の表面に光を照射する機能を備えた環境試験装置において、前記試験室から
空間的に区切られた冷却室があり、前記ランプは、給電部と、バルブを有し、当該給電部から当該バルブ内に給電して発光させ、少なくとも前記バルブの先端面から光を放出するものであり、前記冷却室の前記試験室側には前記ランプを
挿入する開口があり、前記冷却室内であって前記開口の奥には前記給電部と嵌合するソケットが設けられており、
前記開口には前記バルブの側面と接する封止部材があり、前記給電部を前記試験室側から前記開口に挿入して前記ソケットに前記給電部を嵌合して前記ランプを前記冷却室に取り付け可能であり、
前記ランプが取り付けられた状態においては、前記バルブの側面が前記封止部材と接して前記バルブと前記開口の隙間が封鎖され、かつ少なくとも前記給電部が前記冷却室内に配置され、少なくとも前記バルブの先端面が前記冷却室外であって前記試験室内に露出していることを特徴とする環境試験装置である。
請求項
4に記載の発明は、
内部に所望の環境を創出可能であり被試験物が載置される試験室と、前記被試験物に光を照射するランプを有し、前記被試験物を所望の環境下において前記被試験物の表面に光を照射する機能を備えた環境試験装置において、前記試験室から空間的に区切られた冷却室があり、前記ランプは、給電部と、バルブを有し、当該給電部から当該バルブ内に給電して発光させ、少なくとも前記バルブの先端面から光を放出するものであり、前記冷却室の前記試験室側には前記ランプを挿入する開口があり、前記冷却室内であって前記開口の奥には前記給電部と嵌合するソケットが設けられており、前記給電部を前記試験室側から前記開口に挿入し、前記ソケットに前記給電部を嵌合して前記ランプを前記冷却室に取り付け可能であり、前記ランプが取り付けられた状態において、前記冷却室内の圧力が前記試験室内の圧力に比べて高くなるように調整され、かつ、少なくとも前記給電部が前記冷却室内に配置され、少なくとも前記バルブの先端面が前記冷却室外であって前記試験室内に露出していることを特徴とする環境試験装置である。
前記開口には前記バルブの側面と接する封止部材があり、前記ランプが取り付けられた状態においては、前記バルブの側面が前記封止部材と密接して前記バルブと前記開口の隙間が封鎖されること
が望ましい。
【0014】
ここで「光」とは赤外光、可視光、紫外光を含む概念である。
ランプは、赤外線ランプの様に、フィラメントが封入されたバルブを有し、給電部からフィラメントに給電してフィラメントを発光させるものであることが望ましいが、放電を利用するものであってもよい。
本発明の環境試験装置では、冷却室があり、冷却室は試験室から隔離されている。「試験室から隔離」とは、試験室内で冷却室が試験エリアから隔離されるものでもよい。
本発明の環境試験装置では、ランプの少なくとも給電部が冷却室内に配置されていて、バルブの電線導入部は、冷却室内にあり、試験室の温度の影響を受けにくい。そのため電線導入部に隙間は生じにくく、ランプが故障しにくくなる。
【0015】
請求項
5に記載の発明は、前記ランプは赤外線ランプであり、前記被試験物の表面に赤外光を照射して被試験物表面の温度を上昇させる機能を備えた環境試験装置であって、前記ランプは前記給電部が形成された口金部を有し、少なくとも前記口金部が前記冷却室内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0016】
本発明の環境試験装置で採用するランプは赤外線ランプであり、発する光は赤外光である。そのため被試験物表面の温度を上昇させることができる。
本発明の環境試験装置では、ランプの少なくとも口金部が冷却室内に配置されている。そのためバルブの電線導入部は、試験室の温度の影響を受けにくい。
【0017】
請求項
6に記載の発明は、冷却手段を有し、前記冷却室が前記冷却手段によって冷却されることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0018】
冷却手段は、冷凍機を備えるものであることが望ましいが、外気を導入することによって冷却室内の温度を常温に維持するものであってもよい。
本発明の環境試験装置では、冷却室の温度上昇が冷却手段によって抑制されるので、バルブの電線導入部の温度変化が比較的小さく、ランプの故障が少ない。
【0019】
請求項
7に記載の発明は、前記冷却手段は換気手段を有し、当該換気手段によって前記冷却室内の空気が置換されて前記冷却室内が冷却されることを特徴とする請求項
6に記載の環境試験装置である。
【0020】
本発明の環境試験装置では、冷却手段によって冷却室内の空気が入れ代わるので、冷却室内に熱がこもりにくい。
【0021】
請求項
8に記載の発明は、前記冷却室外に前記冷却手段があり、前記冷却室と前記冷却手段が環状に連結され、前記冷却室と前記冷却手段の間で空気が循環することを特徴とする請求項6
又は7に記載の環境試験装置である。
【0022】
本発明によると、冷却室内を効率良く冷却することができる。
【0023】
請求項
9に記載の発明は、前記ランプの点灯時に前記冷却室内が前記冷却手段によって冷却されることを特徴とする請求項
6乃至
8のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0024】
本発明によると、冷却室内が無駄に冷却されることがないので、効率がよい。
【0025】
前記冷却室内の圧力は、前記試験室内の圧力に対して正圧であること
が望ましい。
【0026】
本発明によると、試験室内の高温の空気が冷却室側に侵入しにくい。そのため冷却室内の温度を一定以下に維持することができる。
【0027】
ランプは給電部に口金部があり、バルブの形状は、口金部の径が小さく、先端側がしだいに拡径して膨出部を構成し、バルブの先端面が発光面となっており、冷却室の試験室側にはランプを装着する開口があり、当該開口にはランプのバルブの側面と接する封止部材があり、冷却室内であって前記開口の奥には口金部と嵌合するソケットが設けられており、ランプの口金部側を試験室側から前記開口に挿入してソケットに口金部を嵌合してランプを冷却室に取り付け可能であり、ランプが取り付けられた状態においては、ランプのバルブの側面が封止部材と密接してバルブと開口の隙間が封鎖されること
が望ましい。
【0028】
本発明の環境試験装置では、ランプは、口金部分が細く、正面の発光部の面積が広い。 本発明では、冷却室の試験室側にランプを装着する開口があり、開口の奥には口金と嵌合するソケットが設けられている。そのため試験室側から開口にランプの口金を挿入し、ランプを装着することができる。
また冷却室の開口にはランプのバルブの側面と接する封止部材があり、ランプが取り付けられた状態においては、ランプのバルブの側面が封止部材と密接してバルブと開口の隙間が封鎖される。本発明の環境試験装置では、冷却室と試験室との間の気密性が確保される。そのため冷却室内の冷気が試験室側に漏れて、試験室の温度を低下させたり、試験室内に温度ばらつきを生じさせる懸念が少ない。
また試験室内の高温の空気が冷却室側に流れ込むことも防ぐことができる。
【0029】
前記試験室に対して独立した筐体を有し、前記筐体内に前記冷却室が設けられており、前記筐体が
前記試験室内に配置されているものであってもよい(請求項
10)。
【0030】
ランプユニットに関する発明は、環境試験装置の試験室内に配され、試験室内の被試験物に光を照射するランプユニットであって、筐体と、ランプを有し、前記筐体内に冷却室があり、前記ランプは、給電部と、バルブを有し、給電部からバルブ内に給電して発光させ、少なくともバルブの先端面から光を放出するものであり、前記ランプの少なくとも給電部が冷却室内に配置され、前記ランプの少なくともバルブの先端面は冷却室外に露出していることを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、環境試験装置の試験室内に配され、前記試験室内の被試験物に光を照射するランプユニットであって、筐体と、ランプを有し、前記筐体内に冷却室があり、前記ランプは、給電部と、バルブを有し、前記給電部から前記バルブ内に給電して発光させ、少なくとも前記バルブの先端面から光を放出するものであり、前記筐体には前記ランプを
挿入する開口があり、前記冷却室内であって前記開口の奥には前記給電部と嵌合するソケットが設けられており、
前記開口には前記バルブの側面と接する封止部材があり、前記給電部を前記試験室側から前記開口に挿入して前記ソケットに前記給電部を嵌合して前記ランプを前記冷却室に取り付け可能であり、
前記ランプが取り付けられた状態においては、前記バルブの側面が前記封止部材と接して前記バルブと前記開口の隙間が封鎖され、かつ、少なくとも前記給電部が前記冷却室内に配置され、少なくとも前記バルブの先端面は前記冷却室外に露出していることを特徴とするランプユニットである。
前記開口には前記バルブの側面と接する封止部材があり、前記ランプが取り付けられた状態においては、前記バルブの側面が前記封止部材と密接して前記バルブと前記開口の隙間が封鎖されること
が望ましい。
請求項12に記載の発明は、環境試験装置の試験室内に配され、前記試験室内の被試験物に光を照射するランプユニットであって、筐体と、ランプを有し、前記筐体内に冷却室があり、前記ランプは、給電部と、バルブを有し、前記給電部から前記バルブ内に給電して発光させ、少なくとも前記バルブの先端面から光を放出するものであり、前記筐体には前記ランプを挿入する開口があり、前記冷却室内であって前記開口の奥には前記給電部と嵌合するソケットが設けられており、前記給電部を前記試験室側から前記開口に挿入し、前記ソケットに前記給電部を嵌合して前記ランプを前記冷却室に取り付け可能であり、前記ランプが取り付けられた状態において、前記冷却室内の圧力が前記冷却室外の圧力に比べて高くなるように調整され、かつ、少なくとも前記給電部が前記冷却室内に配置され、少なくとも前記バルブの先端面は前記冷却室外に露出していることを特徴とするランプユニットである。
【0031】
既存の環境試験装置や、既存設計の環境試験装置の試験室に、本発明のランプユニットを設置することにより、所望の環境下で被試験物に光を照射することができる。
また本発明によると、ランプが故障しにくい。