【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、
空気を吸気し、圧縮し、蓄圧し、吐出する空気ラインと、
前記空気と熱交換する熱媒が循環する熱媒ラインと、
前記熱媒ラインの前記熱媒の流量を制御する制御装置と
を備える圧縮空気貯蔵発電装置であって、
前記空気ラインは、
入力電力によって駆動される電動機と、
前記電動機によって駆動されることで空気を吸気して圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機から吐出された圧縮空気を蓄える蓄圧部と、
前記蓄圧部内の前記圧縮空気の貯蔵量を測定するための空気量センサと、
前記蓄圧部から給気される圧縮空気によって駆動される膨張機と、
前記膨張機によって駆動されることで発電する発電機と
を備え、
前記熱媒ラインは、
前記圧縮機から前記蓄圧部に流動する前記圧縮空気と前記熱媒とで熱交換することで、前記圧縮空気を冷却し、前記熱媒を加熱する圧縮側熱交換器と、
前記圧縮側熱交換器で加熱された熱媒を蓄える高温蓄熱部と、
前記蓄圧部から前記膨張機に流動する前記圧縮空気と前記高温蓄熱部から供給された熱媒とで熱交換することで、前記圧縮空気を加熱し、前記熱媒を冷却する膨張側熱交換器と、
前記膨張側熱交換器で冷却された熱媒を蓄える低温蓄熱部と、
前記低温蓄熱部から前記圧縮側熱交換器に供給される前記熱媒の流量を制御する圧縮側熱媒流量調整部と、
前記高温蓄熱部から前記膨張側熱交換器に供給される前記熱媒の流量を制御する膨張側熱媒流量調整部と
を備え、
前記制御装置は、
前記空気量センサで測定した空気量に基づいて前記熱媒ラインの熱媒の過不足を抑制するように前記圧縮側熱媒流量調整部を制御する圧縮側熱媒流量制御部と、
前記空気量センサで測定した空気量に基づいて前記熱媒ラインの熱媒の過不足を抑制するように前記膨張側熱媒流量調整部を制御する膨張側熱媒流量制御部と
を備える、圧縮空気貯蔵発電装置を提供する。
【0009】
この構成によれば、蓄圧部の空気量に基づいて圧縮側熱媒流量調整部と膨張側熱媒流量調整部を制御し、熱媒ラインの熱媒の過不足を抑制するため、貯蔵している圧縮空気量と熱媒量のバランスを保つことができる。これにより、貯蔵している圧縮空気量に対して熱媒量が過不足となる状態を回避できる。具体的には、圧縮空気が蓄圧部に少量しか貯蔵されていないとき、膨張側熱交換器に供給される圧縮空気も少量に限定されるため、高温熱媒の必要量は少ない一方、圧縮空気が蓄圧部に大量に貯蔵されているとき、膨張側熱交換器に供給される圧縮空気も大量になり得るため、高温熱媒の必要量は多い。また、圧縮空気が蓄圧部に少量しか貯蔵されていないとき、圧縮機吐出温度は高くないため、低温熱媒流量の必要量は少ない。一方、圧縮空気が蓄圧部に大量に貯蔵されているとき、圧縮機を運転すると、圧縮機吐出温度が上昇傾向となるため、低温熱媒の必要量も多い。このように、高温熱媒および低温熱媒の必要量は蓄圧部の空気量に応じて変動するため、蓄圧部の空気量に応じて適切に必要な熱媒量を確保することによって、安定した運転がより長時間可能となる。圧縮空気貯蔵発電装置の運転を継続すると、理想的には貯蔵している圧縮空気量と熱媒量のバランスは崩れないが、現実的には貯蔵している圧縮空気量と熱媒量のバランスが崩れ、安定した運転ができなくなる。このようなアンバランスをできるだけ抑制することで、安定した運転がより長時間可能となるのである。
【0010】
前記圧縮空気貯蔵発電装置は、前記高温蓄熱部内の熱媒量を測定するための高温熱媒量センサをさらに備え、
前記制御装置は、
前記高温蓄熱部の許容貯蔵量に対する高温熱媒量センサで測定した熱媒量の充填割合である高温熱媒充填割合を算出する高温熱媒充填割合算出部と、
前記蓄圧部の許容貯蔵量に対する前記空気量センサで測定した空気量の充填割合である空気充填割合を算出する空気充填割合算出部と
をさらに備え、
前記圧縮側熱媒流量制御部は、前記空気充填割合と前記高温熱媒充填割合との差に基づいて前記圧縮側熱媒流量調整部を制御し、
前記膨張側熱媒流量制御部もまた、前記空気充填割合と前記高温熱媒充填割合との差に基づいて前記膨張側熱媒流量調整部を制御してもよい。
【0011】
この構成によれば、空気充填割合と高温熱媒充填割合とに基づいて圧縮側熱媒流量調整部と膨張側熱媒流量調整部とを制御し、熱媒ラインの熱媒流量の過不足を抑制するため、貯蔵している圧縮空気量と高温熱媒量のバランスを保つことができる。
【0012】
前記膨張側熱媒流量制御部は、前記空気充填割合が前記高温熱媒充填割合よりも所定以上大きいとき、前記膨張側熱媒流量調整部の流量を減らしてもよい。
【0013】
この構成によれば、高温蓄熱部に必要量の高温熱媒を確保できる。空気充填割合が高温熱媒充填割合よりも所定以上大きいときは、高温熱媒の必要量が多いときである。従って、このとき、膨張側熱媒流量調整部を制御して高温蓄熱部から膨張側熱交換器に供給される高温熱媒の量を減らすことによって、高温蓄熱部内の高温熱媒量の減少速度を低下させることができる。
【0014】
前記圧縮側熱媒流量制御部は、前記空気充填割合が前記高温熱媒充填割合よりも所定以上大きいとき、前記圧縮側熱媒流量調整部の流量を増やしてもよい。
【0015】
この構成によれば、高温蓄熱部に必要量の高温熱媒を確保できる。空気充填割合が高温熱媒充填割合よりも所定以上大きいときは、高温熱媒の必要量が多いときである。従って、このとき、圧縮側熱媒流量調整部を制御して圧縮側熱交換器から高温蓄熱部に供給される高温熱媒の量を増やすことによって、高温蓄熱部内の高温熱媒量の増加速度を上昇させることができる。
【0016】
前記膨張側熱媒流量制御部は、前記空気充填割合が前記高温熱媒充填割合よりも所定以上小さいとき、前記膨張側熱媒流量調整部の流量を増やしてもよい。
【0017】
この構成によれば、高温蓄熱部に余剰量の高温熱媒を貯蔵することを防止できる。空気充填割合が高温熱媒充填割合よりも所定以上小さいときは、高温熱媒の必要量が少ないときである。従って、このとき、膨張側熱媒流量調整部を制御して高温蓄熱部から膨張側熱交換器に供給される高温熱媒の量を増やすことによって、高温蓄熱部内の高温熱媒量の減少速度を上昇させることができる。これにより、熱媒ラインは循環構造を有するため、熱媒の余剰箇所を抑制することで、必要箇所に熱媒を供給し得る。
【0018】
前記圧縮側熱媒流量制御部は、前記空気充填割合が前記高温熱媒充填割合よりも所定以上小さいとき、前記圧縮側熱媒流量調整部の流量を減らしてもよい。
【0019】
この構成によれば、高温蓄熱部に余剰量の高温熱媒を貯蔵することを防止できる。空気充填割合が高温熱媒充填割合よりも所定以上小さいときは、高温熱媒の必要量が少ないときである。従って、このとき、圧縮側熱媒流量調整部を制御して圧縮側熱交換器から高温蓄熱部に供給される高温熱媒の量を減らすことによって、高温蓄熱部内の高温熱媒量の増加速度を低下させることができる。これにより、熱媒ラインは循環構造を有するため、熱媒の余剰箇所を抑制することで、必要箇所に熱媒を供給し得る。
【0020】
前記圧縮空気貯蔵発電装置は、前記低温蓄熱部内の熱媒量を測定するための低温熱媒量センサをさらに備え、
前記制御装置は、
前記低温蓄熱部の許容貯蔵量に対する低温熱媒量センサで測定した熱媒量の充填割合である低温熱媒充填割合を算出する低温熱媒充填割合算出部と、
前記蓄圧部の許容貯蔵量に対する前記空気量センサで測定した空気量の充填割合である空気充填割合を算出し、100%から前記空気充填割合を差し引いた空気余裕割合を算出する空気余裕割合算出部と
をさらに備え、
前記圧縮側熱媒流量制御部は、前記空気余裕割合と前記低温熱媒充填割合との差に基づいて前記圧縮側熱媒流量調整部を制御し、
前記膨張側熱媒流量制御部もまた、前記空気余裕割合と前記低温熱媒充填割合との差に基づいて前記膨張側熱媒流量調整部を制御してもよい。
【0021】
この構成によれば、空気余裕割合と低温熱媒充填割合とに基づいて圧縮側熱媒流量調整部と膨張側熱媒流量調整部とを制御し、熱媒ラインの熱媒流量の過不足を抑制するため、貯蔵している圧縮空気量と低温熱媒量のバランスを保つことができる。
【0022】
前記圧縮側熱媒流量制御部は、前記空気余裕割合が前記低温熱媒充填割合よりも所定以上大きいとき前記圧縮側熱媒流量調整部の流量を
減らしてもよい。
【0023】
この構成によれば、低温蓄熱部に必要量の
低温熱媒を確保できる。空気余裕割合が低温熱媒充填割合よりも所定以上大きいときは、低温熱媒の必要量が多いときである。従って、このとき、圧縮側熱媒流量調整部を制御して低温蓄熱部から圧縮側熱交換器に供給される低温熱媒の量を減らすことによって、低温蓄熱部内の低温熱媒量の減少速度を低下させることができる。
【0024】
前記膨張側熱媒流量制御部は、前記空気余裕割合が前記低温熱媒充填割合よりも所定以上大きいとき前記膨張側熱媒流量調整部の流量を
増やしてもよい。
【0025】
この構成によれば、低温蓄熱部に必要量の
低温熱媒を確保できる。空気余裕割合が低温熱媒充填割合よりも所定以上大きいときは、低温熱媒の必要量が多いときである。従って、このとき、膨張側熱媒流量調整部を制御して膨張側熱交換器から低温蓄熱部に供給される低温熱媒の量を増やすことによって、低温蓄熱部内の低温熱媒量の増加速度を上昇させることができる。
【0026】
前記圧縮側熱媒流量制御部は、前記空気余裕割合が前記低温熱媒充填割合よりも所定以上小さいとき前記圧縮側熱媒流量調整部の流量を
増やしてもよい。
【0027】
この構成によれば、低温蓄熱部に余剰量の低温熱媒を貯蔵することを防止できる。空気余裕割合が低温熱媒充填割合よりも所定以上小さいときは、低温熱媒の必要量が少ないときである。従って、このとき、圧縮側熱媒流量調整部を制御して低温蓄熱部から圧縮側熱交換器に供給される低温熱媒の量を増やすことによって、低温蓄熱部内の低温熱媒量の減少速度を上昇させることができる。これにより、熱媒ラインは循環構造を有するため、熱媒の余剰箇所を抑制することで、必要箇所に熱媒を供給し得る。
【0028】
前記膨張側熱媒流量制御部は、前記空気余裕割合が前記低温熱媒充填割合よりも所定以上小さいとき前記膨張側熱媒流量調整部の流量を
減らしてもよい。
【0029】
この構成によれば、低温蓄熱部に余剰量の
低温熱媒を貯蔵することを防止できる。空気余裕割合が低温熱媒充填割合よりも所定以上小さいときは、低温熱媒の必要量が少ないときである。従って、このとき、膨張側熱媒流量調整部を制御して膨張側熱交換器から低温蓄熱部に供給される低温熱媒の量を減らすことによって、低温蓄熱部内の低温熱媒量の増加速度を低下させることができる。これにより、熱媒ラインは循環構造を有するため、熱媒の余剰箇所を抑制することで、必要箇所に熱媒を供給し得る。
【0030】
前記圧縮空気貯蔵発電装置は、
前記低温蓄熱部と前記高温蓄熱部とを流体的に直接接続するバイパス配管と、
前記バイパス配管内の熱媒を流動させるバイパスポンプと、
前記バイパス配管内の熱媒の流動を許容または遮断するバイパス弁と
をさらに備え、
前記制御装置は、
前記空気充填割合が前記高温熱媒充填割合よりも所定以上大きいとき、前記バイパス弁を開き、前記バイパスポンプを駆動し、前記低温蓄熱部から前記高温蓄熱部に熱媒を供給する第1バイパス制御部をさらに備えてもよい。
【0031】
この構成によれば、高温蓄熱部に必要量の熱媒を確保できる。空気充填割合が高温熱媒充填割合よりも所定以上大きいときは、高温熱媒の必要量が多いときである。従って、このとき、バイパス弁およびバイパスポンプを制御して低温蓄熱部から高温蓄熱部に熱媒を供給することで、高温蓄熱部内の熱媒量を増加できる。
【0032】
前記圧縮空気貯蔵発電装置は、
前記低温蓄熱部と前記高温蓄熱部とを流体的に直接接続するバイパス配管と、
前記バイパス配管内の熱媒を流動させるバイパスポンプと、
前記バイパス配管内の熱媒の流動を許容または遮断するバイパス弁と
をさらに備え、
前記制御装置は、
前記空気余裕割合が前記低温熱媒充填割合よりも所定以上大きいとき、前記バイパス弁を開き、前記バイパスポンプを駆動し、前記高温蓄熱部から前記低温蓄熱部に熱媒を供給する第2バイパス制御部をさらに備えてもよい。
【0033】
この構成によれば、低温蓄熱部に必要量の熱媒を確保できる。空気余裕割合が低温熱媒充填割合よりも所定以上大きいときは、低温熱媒の必要量が多いときである。従って、このとき、バイパス弁およびバイパスポンプを制御して高温蓄熱部から低温蓄熱部に熱媒を供給することで、低温蓄熱部内の熱媒量を増加できる。
【0034】
本発明の第2の態様は、
空気を吸気し、圧縮し、蓄圧し、吐出する空気ラインと、
前記空気と熱交換する熱媒が循環する熱媒ラインと、
を備える圧縮空気貯蔵発電装置の圧縮空気貯蔵発電方法であって、
前記空気ラインは、
入力電力によって駆動される電動機と、
前記電動機によって駆動されることで空気を吸気して圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機から吐出された圧縮空気を蓄える蓄圧部と、
前記蓄圧部内の前記圧縮空気の貯蔵量を測定するための空気量センサと、
前記蓄圧部から給気される圧縮空気によって駆動される膨張機と、
前記膨張機によって駆動されることで発電する発電機と
を備え、
前記熱媒ラインは、
前記圧縮機から前記蓄圧部に流動する前記圧縮空気と前記熱媒とで熱交換することで、前記圧縮空気を冷却し、前記熱媒を加熱する圧縮側熱交換器と、
前記圧縮側熱交換器で加熱された熱媒を蓄える高温蓄熱部と、
前記蓄圧部から前記膨張機に流動する前記圧縮空気と前記高温蓄熱部から供給された熱媒とで熱交換することで、前記圧縮空気を加熱し、前記熱媒を冷却する膨張側熱交換器と、
前記膨張側熱交換器で冷却された熱媒を蓄える低温蓄熱部と、
前記低温蓄熱部から前記圧縮側熱交換器に供給される前記熱媒の流量を制御する圧縮側熱媒流量調整部と、
前記高温蓄熱部から前記膨張側熱交換器に供給される前記熱媒の流量を制御する膨張側熱媒流量調整部と
を備え、
前記空気量センサで測定した空気量に基づいて前記熱媒ラインの熱媒の過不足を抑制し、
前記空気量センサで測定した空気量に基づいて前記熱媒ラインの熱媒の過不足を抑制する、圧縮空気貯蔵発電方法を供する。
【0035】
この方法によれば、前述のように、貯蔵している圧縮空気量と熱媒量のバランスを好適に維持できるため、圧縮空気貯蔵発電装置を安定して運転させることができる。