【文献】
American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology,2008年,Vol.38,pp.423-434
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
治療有効量の小孔形成ポリエン・マクロライドを含む、対象においてイオンチャネルの発現の低下又は機能の低下によって特徴付けられる疾患又は状態を治療するための組成物であって、
前記小孔形成ポリエン・マクロライドは、アムホテリシンB(AmB)、ナイスタチン、ナタマイシン、カンジシジン、及びメパルトリシン、並びにそれらの任意の組合せからなる群より選択され、
前記疾患又は状態は、発作性運動失調症、脊髄小脳失調症13型、QT延長症候群、ブルガダ症候群、高カリウム血性周期性四肢麻痺、及びカリウム惹起性ミオトニーからなる群より選択される、組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
生体システムのスペクトル(spectrum)全体を通じて、ポンプ及びチャネルで構成される頑強なタンパク質ネットワークは、目的のイオンを目的の方向に駆動する。酵母において、液胞及び細胞膜におけるATP駆動V−ATPase及びPma1プロトンポンプは、それぞれ、細胞膜の受動的なTrkカリウムチャネルと協働して、細胞増殖に必要とされるカリウムの細胞内移動を達成する。同様に、ヒト肺上皮において、側底膜のNa
+/K
+−ATPaseポンプが塩化物イオンを上皮細胞内へと移動するための駆動力を生成し、頂端膜のCFTRが気道表面へのこれらのイオンの受動放出を媒介する。このステップによって、気道表面の水和状態が維持され、それによって、肺感染症から保護する粘膜繊毛の運動も維持される。Treacy, K. et al. Paediatr Child Health 21, 425-430(2011)。
【0017】
タンパク質イオンチャネルの欠損は、劇的な表現型を引き起こしうる。酵母においてTrkチャネルが喪失すると、周囲のカリウムの必要な取り込みが損なわれるため、細胞増殖が不可能になる。ヒトにおけるCFTRの喪失は、一般的な致死性の遺伝子疾患である嚢胞性線維症を生じる。嚢胞性線維症のリードモデルは、細胞内塩化物の頂端放出が損なわれ、気道表面の脱水、粘膜繊毛の運動の喪失、及び慢性的な感染症を生じることを想起させる。Treacy, K. et al. Paediatr Child Health 21, 425-430(2011)。重要なことには、これらの事例の両方において、イオン移動の主要な原動力である、対応するATP駆動ポンプは、なおも活発なままである。よって、我々は、カリウム及び塩化物の両方に対して透過性の小分子イオンチャネルが、生理機能を回復させるために、各系において、それぞれのタンパク質イオンポンプと協働可能であるという仮説を立てた。
【0018】
タンパク質イオンチャネル様活性を有する多くの小分子が知られており、以前の研究は、このような化合物が平面脂質二重膜、リポソーム、及び/又は細胞を透過性にすることができることを実証している。El-Etri, M. et al. Am. J. Physiol. 270, L386-392(1996);Jiang, C. et al. Am. J. Physiol. Lung Cell. Mol. Physiol. 281, L1164-L1172(2001);Koulov A.V et al. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 42, 4931-4933(2003);Shen, B. et al. PloS One 7, e34694(2012)。しかしながら、完全に分化した肺上皮の頂端膜は、小分子介在性の透過化を不可能にするかもしれない多くの固有の障壁(barriers)を有する。よって、リポソーム又は細胞のモデルにおける研究は、必ずしも、疾患に関連する系へと置き換えられない。さらに、小分子を用いたミッシングタンパク質イオンチャネルの不完全な模倣が、細胞の増殖又は上皮における正常な粘膜繊毛の運動などの、全体的な表現型の読み出しにより判定した場合に、生理機能の回復に十分となり得るか否かは、これまで特定されていない。
【0019】
しかしながら、ウッシングチャンバ実験において、我々は、分化したヒト肺上皮を透過化する能力について、リポソーム及び/又は細胞における塩化物輸送を可能にすることが以前に報告された幾つかの小分子(N
1,N
3−ビス(((R)−1−(イソブチルアミノ)−4−メチル−1−オキソペンタン−2−イル)オキシ)イソフタルアミド(2)、メチル3α−アセトキシ−7α,12α−ジ[(4−ニトロフェニルアミノカルボニル)アミノ]−5β−コラン−24−オアート(3)、及び、ヒドロキシビスノルコレン酸−スペルミン−スルホナート(4))について試験したが、これらの化合物は、以前の報告で使用した濃度より10倍高い濃度においてでさえも、そのような透過化を示さなかった。
【0020】
イオンチャネルを形成する天然物であるアムホテリシンB(AmB)を、我々の仮説を試験するための小分子プローブとして特定した。この物質は、酵母細胞及びヒト肺上皮の両方を透過化することができ、AmBに基づくチャネルは、カリウム及び塩化物イオンの両方を伝導することができる。Ermishkin, L.N. et al. Nature 262, 698-699(1976);Ermishkin, L.N. et al. Biochim. Biophys. Acta 470, 357-367(1977)。AmBは毒性も強く、この毒性はその膜透過化と密接不可分であると考えられていた。しかしながら、我々は、C35の位置で単一酸素原子を欠いたAmBの合成誘導体(C35deOAmB)(
図1)が、エルゴステロールに結合するが、イオンチャネルを形成せず、かつ、強力な抗真菌活性をまだなお維持することを見出した。Gray, K.C. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 109, 2234-2239(2012)。さらなる研究により、AmBが、主に、ステロールに結合して膜から抜き取ることにより酵母を死滅させること、及び、AmBの量がエルゴステロールの量を超えたときにのみ、細胞毒性であることが解明された。Gray, K.C. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 109, 2234-2239(2012);及び、erson, T.M. et al. Nat. Chem. Biol. 10, 400-4006(2014)。証拠は、コレステロールへの同様の結合が、ヒト細胞における毒性を主に生じるという見解を裏付けている。Wilcock, B.C et al. J. Am. Chem. Soc. 135, 8488-8491(2013)。
【0021】
したがって、我々はさらに、単にこの化合物を低濃度で添加することによって、AmBのチャネル活性を、AmBの殺細胞活性と分離できるかもしれないという仮説を立てた。この論理に導かれて、我々は、非毒性のナノモル濃度のAmBが、酵母細胞及び分化したヒト肺上皮の単層の両方を容易に透過化することを見出した。分化した肺上皮は小分子介在性の透過化に対して障壁を有することから、分化したヒト肺上皮の単層の透過化は特に注目に値する。
【0022】
重要なことには、C35deOAmBはこのような透過化を生じさせず、この単一原子が改変されたAmBの変異体は、酵母細胞及びヒト上皮の両方に対する、天然物AmBの観察された影響が、そのイオンチャネル活性によって特異的に媒介されるか否かを判定するための特異かつ重要なプローブとなる。
【0023】
本発明のある態様は、治療有効量の小孔形成ポリエン・マクロライド又はその小孔形成誘導体を、それを必要とする対象に投与し、それによって、イオンチャネルの発現の低下又は機能の低下によって特徴付けられる疾患又は状態を治療することを含む、イオンチャネルの発現の低下又は機能の低下によって特徴付けられる疾患又は状態を治療する方法である。小孔形成ポリエン・マクロライド又はその小孔形成誘導体は、本来ならばイオンチャネルによって調節される、イオンの膜透過輸送を可能にする。
【0024】
イオンチャネルの発現の低下又は機能の低下によって特徴付けられる疾患及び状態(チャネロパチーとも称されることがある)の例としては、限定はしないが、2型色覚不全(色覚異常)、3型色覚不全、不整脈源性右室異形成症2型、常染色体優性の(トムゼン病)ミオトニー、常染色体優性のQT延長症候群(ロマノ−ウォード症候群)、常染色体優性の夜間前頭葉てんかん、常染色体優性の腎多嚢胞病(ADPKD)、常染色体劣性(ベッカー病)ミオトニー、難聴を伴う常染色体劣性QT延長症候群(ジャーベル‐ランゲニールセン症候群)、常染色体劣性網膜色素変性、バーター症候群(腎臓の塩類喪失、低カリウム性アルカローシス)、バーター症候群III型、バーター症候群IV型(感音性難聴に関連)、BFNC(良性家族性新生児痙攣;てんかん)、筋波動症を伴うBFNC(てんかん)、ブルガダ症候群(特発性心室性不整脈)、カルシウモパチー(calciumopathy)、カテコールアミン誘発性多形性心室性頻拍、セントラルコア病、小児欠神てんかん、CMTX(X連鎖性シャルコー・マリー・トゥース神経障害)、精管の先天性両側性欠損、先天性高インスリン症、先天性無痛症、嚢胞性線維症、デント病(X連鎖性タンパク尿及び腎臓結石)、DFNA2(優性の聴力損失)、DFNA3(常染色体優性の聴力損失)、DFNB1(常染色体劣性の聴力損失)、てんかん、
発作性運動失調症、筋波動症を伴う
発作性運動失調症、紅痛症、家族性心房細動、家族性片麻痺性偏頭痛、巣状分節性糸球体硬化症、熱性痙攣を伴う/熱性痙攣を伴わない全身性てんかん、全身性てんかん−熱性痙攣プラス(GEFS+)、過剰驚愕症(びっくり病)、高カリウム血性周期性四肢麻痺、低カリウム血性周期性四肢麻痺、低カリウム血性感覚過剰刺激、二次性低カルシウム血症を伴う低マグネシウム血症、若年性ミオクロニーてんかん、リドル症候群、リドル症候群(優性の高血圧)、QT延長症候群、異形症を伴うQT延長症候群(アンダーソン症候群)、黄斑症、悪性高熱症、ムコリピドーシスIV型、先天性筋無力症、先天性ミオトニー、非症候性難聴、大理石骨病(劣性又は優性)、先天性
パラミオトニア、発作性激痛症、周期性麻痺、新生児持続性高インスリン性低血糖症(PHHI)、カリウム惹起性ミオトニー、進行性家族性心臓伝導障害I型、偽低アルドステロン症1型(PHA1)、網膜色素変性、ローランドてんかん、QT短縮症候群、脊髄小脳失調症6型、脊髄小脳失調症13型、チモシー症候群、及びX連鎖性先天性停止性夜盲症が挙げられる。
【0025】
ある特定の実施形態では、イオンチャネルの発現の低下又は機能の低下によって特徴付けられる疾患又は状態は、アンダーセン・タウィル症候群、常染色体優性の夜間前頭葉てんかん、常染色体優性の多発性嚢胞腎、バーター症候群、良性家族性新生児痙攣、ブルガダ症候群、カルシウモパチー、チャネローム(channelome)、小児欠神てんかん、先天性高インスリン症、先天性無痛症、嚢胞性線維症、デント病、
発作性運動失調症、紅痛症、家族性心房細動、家族性片麻痺性偏頭痛、巣状分節性糸球体硬化症、全身性てんかん−熱性痙攣プラス、高カリウム血性周期性四肢麻痺、低カリウム血性感覚過剰刺激、二次性低カルシウム血症を伴う低マグネシウム血症、若年性ミオクロニーてんかん、QT延長症候群、黄斑症、悪性高熱症、ムコリピドーシスIV型、先天性ミオトニー、非症候性難聴、先天性
パラミオトニア、発作性激痛症、周期性麻痺、カリウム惹起性ミオトニー、偽低アルドステロン症、網膜色素変性、ローランドてんかん、ロマノ−ウォード症候群、QT短縮症候群、脊髄小脳失調症6型、脊髄小脳失調症13型、テンプレート:チャネロパチー、チモシー症候群、及びX連鎖性先天性停止性夜盲症からなる群より選択される。
【0026】
ある特定の実施形態では、イオンチャネルの発現の低下又は機能の低下によって特徴付けられる疾患又は状態は、嚢胞性線維症(
cystic fibrosis)、高カリウム血性周期性四肢麻痺
(hyperkalemic periodic paralysis)、先天性
パラミオトニア(paramyotonia congenit)、カリウム惹起性ミオトニー
(potassium aggravated myotonia)、全身性てんかん−熱性痙攣プラス
(generalized epilepsy with febrile seizures plus)(GEFS+)、
発作性運動失調症
(episodic ataxia)、家族性片麻痺性偏頭痛
(familial hemiplegic migraine)、脊髄小脳失調症13型
(spinocerebellar ataxia type 13)、QT延長症候群(
long QT syndrome)、ブルガダ症候群(
Brugada syndrome)、及びムコリピドーシスIV型
(mucolipidosis type IV)からなる群より選択される。
【0027】
ある特定の実施形態では、イオンチャネルの発現の低下又は機能の低下によって特徴付けられる疾患又は状態は、嚢胞性線維症である。
【0028】
小孔形成ポリエン・マクロライドの例としては、限定はしないが、次の36種類の構造的に特徴付けられたマイコサミン含有ポリエン・マクロライドが挙げられる。
【化1-1】
【化1-2】
【化1-3】
【化1-4】
【化1-5】
【化1-6】
【化1-7】
【化1-8】
【0029】
以下のモチーフは、これらの化合物において100%保存される:
【化2】
これまでに収集した分光及び構造活性の証拠はすべて、上記の高度に保存されたモチーフが、アムホテリシンBのステロール結合ドメイン(すなわち、分子におけるエルゴステロール及びコレステロールに直接結合する部分)であるという結論を裏付けている。
【0030】
ある特定の実施形態では、ポリエン・マクロライドは、アムホテリシンB(AmB)、ナイスタチン(A1、A2、又はA3)、ナタマイシン(ピマリシンとしても知られる)、カンジシジン、及びメパルトリシン、並びに、それらの任意の組合せからなる群より選択される。
【0031】
ある特定の実施形態では、ポリエン・マクロライドは、アムホテリシンB(AmB)、ナイスタチン、ナタマイシン、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される。
【0032】
ある特定の実施形態では、ポリエン・マクロライドは、アムホテリシンB(AmB)である。
【0033】
ある特定の実施形態では、対象は、小孔形成ポリエン・マクロライド又はその小孔形成誘導体で治療可能な感染症を有しておらず、例えば、対象は、酵母又は真菌感染症を有する対象ではない。例えば、ある特定の実施形態では、対象は、AmBで治療可能な酵母又は真菌感染症を有していない。
【0034】
ある特定の実施形態では、対象は、感染症を治療するために、小孔形成ポリエン・マクロライド又はその小孔形成誘導体を投与されていない。例えば、ある特定の実施形態では、対象は、感染症を治療するために、AmBを投与されていない。
【0035】
ある特定の実施形態では、ポリエン・マクロライドは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の最小発育阻止濃度未満の用量で投与される。本明細書で用いられる場合、「サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度未満の用量」とは、サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度未満である、全身又は局所濃度を達成するのに十分な用量を指す。一実施形態では、「サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度未満の用量」は、サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度未満である全身濃度を達成するのに十分な用量を指す。一実施形態において、「サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度未満の用量」は、サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度未満である局所濃度を達成するのに十分な用量を指す。
【0036】
ある特定の実施形態では、「サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度未満の用量」は、サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度の90パーセント未満である全身又は局所濃度を達成するのに十分な用量を指す。ある特定の実施形態では、「サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度未満の用量」は、サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度の80パーセント未満である全身又は局所濃度を達成するのに十分な用量を指す。ある特定の実施形態では、「サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度未満の用量」は、サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度の70パーセント未満である全身又は局所濃度を達成するのに十分な用量を指す。ある特定の実施形態では、「サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度未満の用量」は、サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度の60パーセント未満である全身又は局所濃度を達成するのに十分な用量を指す。ある特定の実施形態では、「サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度未満の用量」は、サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度の50パーセント未満である全身又は局所濃度を達成するのに十分な用量を指す。ある特定の実施形態では、「サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度未満の用量」は、サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度の40パーセント未満である全身又は局所濃度を達成するのに十分な用量を指す。ある特定の実施形態では、「サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度未満の用量」は、サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度の30パーセント未満である全身又は局所濃度を達成するのに十分な用量を指す。ある特定の実施形態では、「サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度未満の用量」は、サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度の20パーセント未満である全身又は局所濃度を達成するのに十分な用量を指す。ある特定の実施形態では、「サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度未満の用量」は、サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度の10パーセント未満である全身又は局所濃度を達成するのに十分な用量を指す。
【0037】
ある特定の実施形態では、小孔形成ポリエン・マクロライド又はその小孔形成誘導体は、全身投与される。
【0038】
ある特定の実施形態では、小孔形成ポリエン・マクロライド又はその小孔形成誘導体は、局所的に投与される。
【0039】
ある特定の実施形態では、小孔形成ポリエン・マクロライド又はその小孔形成誘導体は、対象の気道に投与される。本明細書で用いられる場合、「気道」とは、呼吸器の誘導又は気道上皮を指す。よって、用語「気道」には、鼻道、副鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支、細気管支、肺胞管、肺胞嚢、及び肺胞を含む、上気道と下気道が含まれる。
【0040】
ある特定の実施形態では、小孔形成ポリエン・マクロライド又はその小孔形成誘導体は、対象の気道に、エアロゾルとして投与される。
【0041】
本明細書で用いられる場合、用語「治療する」及び「治療」とは、(a)状態又は疾患を発症する危険性がありうる又は状態又は疾患を有する傾向がありうるが、まだ状態又は疾患を有しているとは診断されていない対象において、状態又は疾患が生じることを予防する;(b)例えばその発症の遅延又は阻止など、状態又は疾患を抑止する;又は、(c)例えば状態又は疾患の退縮を生じるなど、状態又は疾患を軽減又は改善する、という結果を生じる介入を行うことを指す。一実施形態において、用語「治療する」及び「治療」は、(a)例えばその発現の遅延又は阻止など、状態又は疾患を抑止する;又は、(b)例えば状態又は疾患の退縮を生じるなど、状態又は疾患を軽減又は改善する、という結果を生じる介入を行うことを指す。
【0042】
本明細書で用いられる「酵母又は真菌感染(症)」は、本明細書に定められる酵母又は真菌類による感染(症)を指す。
【0043】
本明細書で用いられる場合、「対象」とは、生きている哺乳動物を指す。さまざまな実施形態において、対象は、限定はしないが、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ、ブタ、ウマ、ウシ、又は非ヒト霊長類を含む、非ヒト哺乳類である。
【0044】
ある特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0045】
ある特定の実施形態では、対象は12歳未満のヒトである。
【0046】
ある特定の実施形態では、対象は12歳以上のヒトである。
【0047】
本明細書で用いられる場合、「酵母又は真菌感染症を有する対象」とは、酵母又は真菌感染の少なくとも1つの客観的な兆候を示す対象を指す。一実施形態において、酵母又は真菌感染症を有する対象は、酵母又は真菌感染症を有すると診断されており、かつ、その治療を必要とする、対象である。酵母又は真菌感染症を診断する方法は、広く知られており、本明細書で詳細に説明する必要はない。
【0048】
本明細書で用いられる場合、「投与する」は、その通常の意味を有し、限定はしないが、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直接注入(例えば腫瘍内への)、粘膜、肺(例えば吸入又は点滴(洗浄)による)、経口、及び局所を含む、適切な投与経路による投与を包含する。
【0049】
一実施形態において、投与とは、全身投与することである。
【0050】
一実施形態において、投与とは、局所的に投与することである。
【0051】
本明細書で用いられる場合、「有効量」という句は、所望の生物学的効果を達成するのに十分な量を指す。「治療有効量」は、例えば、イオンチャネルの発現の低下又は機能の低下によって特徴付けられる疾患又は状態を治療するために、所望の治療効果を達成するのに十分な量である。
【0052】
本発明に従った医薬品有効成分(API)は、他の治療剤と併用されうる。API及び他の1種類以上の治療剤を同時に又は連続的に併用投与してもよい。他の1種類以上の治療剤が同時に投与される場合、それらを同一又は別々の調剤で投与してよいが、それらはAPIと実質的に同時に投与される。他の1種類以上の治療剤の投与がAPIの投与とは時間的に隔てられている場合には、他の1種類以上の治療剤は、互いに、及びAPIと、連続的に投与される。これらの化合物の投与時間間隔は、数分間であるか、あるいはそれより長くてもよい。
【0053】
他の治療剤の例としては、AmBを含む他の抗真菌剤、並びに、他の抗生物質、抗ウイルス薬、抗炎症薬、免疫抑制剤、及び抗がん剤が挙げられる。
【0054】
上記のように、「有効量」とは、所望の生物学的効果を達成するのに十分な量を指す。本明細書で提供される教示と併せて、さまざまな活性化合物の中から選択し、かつ、有効性、相対的バイオアベイラビリティ、患者の体重、有害な副作用の重症度、及び、好ましい投与方式などの因子に重み付けすることによって、有効な予防的又は治療的処方計画を、実質的に望ましくない毒性を生じさせず、かつ、なお特定の対象の治療に有効となるように、計画することができる。特定の用途のための有効量は、治療される疾患又は状態、投与される特定のAPI、対象のサイズ、又は、疾患又は状態の重症度などの因子に応じて変動しうる。当業者は、特定のAPI及び/又は他の1種類以上の治療剤の有効量を、過度の実験を必要とすることなく、経験的に決定することができる。一般的に、最大用量、すなわち、幾つかの医学的判断に従った最大安全用量が用いられることが好ましい。化合物の適切な全身濃度を実現するために、1日当たり複数回の投与が予定されてもよい。適切な全身濃度は、例えば、患者における薬物のピーク又は持続細胞質濃度の測定によって、決定されうる。「投与量」及び「用量」は、本明細書では同じ意味で用いられる。
【0055】
一般的に、例えばAmBなどのAPIの1日の静脈内投与量は、ヒト対象では、AmBの通常の1日の静脈内投与量と同様であるか、又はそれより少ないであろう。同様に、例えばAmBなどのAPIの毎日の他の非経口投与量は、ヒト対象では、AmBの通常の毎日の他の非経口投与量と同様であるか、又はそれより少ないであろう。
【0056】
一実施形態において、APIの静脈内投与は、典型的には、0.1mg/kg/日〜20mg/kg/日でありうる。一実施形態において、APIの静脈内投与は、典型的には、0.2mg/kg/日〜10mg/kg/日でありうる。一実施形態において、APIの静脈内投与は、典型的には、0.5mg/kg/日〜5mg/kg/日でありうる。一実施形態において、APIの静脈内投与は、典型的には、1mg/kg/日〜10mg/kg/日でありうる。よって、静脈内投与は、AmBの最大耐用量と同様であるか、又は有利には、AmBの最大耐用量未満でありうる。
【0057】
一般に、APIの1日の経口投与量は、ヒト対象では、1日当たり約0.01mg/kgから1日当たり1000mg/kgであろう。1日当たり1回以上の投与において、0.5〜50mg/kgの範囲の経口投与量が、治療結果を生じると予想される。用量は、投与形態に応じて、局所又は全身の所望の薬物濃度を達成するために適切に調節されうる。例えば、静脈内投与量は、1桁から数桁少ない1日当たりの投与量であろうと予想される。このような投与量で対象における応答が不十分な場合には、さらに高い投与量(又は、異なる、より局所的な送達経路による、効果的なより高い投与量)を、患者の耐容性が許容する程度まで用いてもよい。化合物の適切な全身濃度を達成するために、1日当たり複数回の投与が考えられる。
【0058】
本明細書に記載される化合物については、治療有効量は、初めに、動物モデルから決定されうる。治療に有効な投与量はまた、ヒトにおいて試験されている本発明の化合物について、及び、他の関連した活性薬剤(例えばAmB)などの同様の薬理学的活性を示すことが知られている化合物について、ヒトのデータから決定されてもよい。非経口の投与には、より高い投与量が必要とされうる。適用される投与量は、相対的バイオアベイラビリティ及び投与される化合物の有効性に基づいて調整されうる。上述の方法及び当技術分野で周知の他の方法に基づき、投与量を調整して、最大効果を達成することは、十分に当業者の能力でできる範囲内である。
【0059】
APIの調剤は、通常は、薬学的に許容される濃度の塩、バッファー、保存料、相容性の担体、アジュバント、及び必要に応じて他の治療成分を含みうる、薬学的に許容される溶液で投与される。
【0060】
治療での使用に関して、有効量のAPIは、所望の場所又は表面にAPIを送達する任意の用法で対象に投与されうる。APIの医薬組成物の投与は、当業者に知られた任意の手段によって達成されうる。投与経路としては、静脈内、筋肉内、腹腔内、膀胱内(膀胱)、経口、皮下、直接注入(例えば、腫瘍又は膿瘍内)、粘膜(例えば、目への局所適用)、肺(例えば、点滴又は吸入)、及び局所を含むがこれらに限られない。
【0061】
静脈内及び他の非経口の投与経路については、例えばAmBなどのAPIは、概して、AmBと同様に調合されうる。例えば、AmBは、デオキシコール酸とともに凍結乾燥された製剤として、リポソームに挿入された又は封入された活性化合物の凍結乾燥された製剤として、水性懸濁液中の脂質複合体として、又はコレステロール硫酸複合体として、調合されうる。凍結乾燥された調剤は、概して、投与の直前に、例えば、滅菌水又は生理食塩水などの適切な水溶液中で再構成される。
【0062】
経口投与では、化合物(すなわち、API及び他の1種類以上の治療剤)は、活性化合物を当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と合わせることによって、容易に調合されうる。このような担体は、本発明の化合物を、治療対象による経口摂取のために、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ剤、スラリー、懸濁液等として調合することを可能にする。経口用途の医薬製剤は、固体状の賦形剤として得ることができ、必要に応じて、得られた混合物を粉砕し、必要に応じて適切な助剤を加えた後、顆粒の混合物を加工し、錠剤又は糖衣錠のコアを得る。適切な賦形剤としては、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む、糖類などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物などがある。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、若しくは、アルギン酸又はその塩(例えばアルギン酸ナトリウム)などの崩壊剤を加えてもよい。必要に応じて、経口調剤はまた、生理食塩水又は、例えば、体内の酸性状態を中和するためのEDTAなどのバッファー中で調合されてよく、あるいは、担体を使用せずに投与してもよい。
【0063】
上記の1種類以上の成分の経口の投薬形態もまた、特に予定されている。1種類以上の成分は、誘導体の経口送達が有効になるように化学的に修飾されうる。一般に、予定される化学的修飾は、成分分子自体への少なくとも1つの部分の付加であり、その部分は、(a)酸加水分解の抑制;及び、(b)胃又は腸から血流への取り込みを可能にする。1種類以上の成分の全体的な安定性の向上、及び、体内における循環時間の増加もまた所望される。このような部分の例としては、次のものが挙げられる:ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリプロリン。Abuchowski and Davis, “Soluble Polymer-Enzyme Adducts”, In: Enzymes as Drugs, Hocenberg and Roberts, eds., Wiley-Interscience, New York, N.Y., pp. 367-383(1981);Newmark et al., J Appl Biochem 4:185-9(1982)。使用可能な他のポリマーは、ポリ−1,3−ジオキソラン及びポリ−1,3,6−チオキソカンである。医薬用途にとって好ましいものは、前述の通り、ポリエチレングリコール部分である。
【0064】
成分(又は誘導体)について、放出場所は、胃、小腸(十二指腸、空腸、又は回腸)、又は大腸でありうる。当業者は、胃内では溶解せず、十二指腸又は腸の他の場所において物質を放出する、利用可能な調剤を有する。好ましくは、放出は、APIの保護、又は、例えば腸など、胃内環境を過ぎてからの生物活性物質の放出のいずれかによって、胃内環境の有害な影響を回避する。
【0065】
十分な胃耐性を確実にするために、少なくともpH5.0に対して非浸透性のコーティングが望ましい。腸溶性コーティングとして用いられる、より一般的な不活性成分の例は、トリメリト酸酢酸セルロース(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、HPMCP 50、HPMCP 55、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、Eudragit L30D、Aquateric、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、Eudragit L、Eudragit S、及びシェラックである。これらのコーティングは、混合膜として使用してもよい。
【0066】
コーティング又はコーティング混合物は、胃に対する保護が意図されていない錠剤においても使用することができる。このコーティングには、糖衣、あるいは、錠剤をより飲み込み易くするコーティングが含まれうる。カプセルは、乾燥治療薬(例えば粉末)の送達用の硬質シェル(ゼラチンなど)で構成されうる;液体形態については、軟質ゼラチンシェルが使用されうる。カシェ剤のシェル材料は、濃デンプン又は他の食用紙でありうる。丸薬、トローチ剤、成形錠剤又は湿製錠剤については、湿式塊化法(moist massing techniques)が使用されうる。
【0067】
治療薬は、粒径約1mmの顆粒又はペレットの形態の細かい多微粒子として、調剤中に含まれうる。カプセル投与用の物質の調剤は、粉末、軽度に圧縮されたプラグ(lightly compressed plugs)、又は錠剤でさえありうる。治療薬は、圧縮によって調製されうる。
【0068】
着色剤及び香味剤は、すべて、含まれうる。例えば、治療薬(又は誘導体)は、調合されてよく(リポソーム又はマイクロスフィアのカプセル化などによる)、次いで、さらに、着色剤及び香味剤を含む冷蔵された飲料などの可食性の製品内に含まれてもよい。
【0069】
不活性な物質を用いて、治療薬を希釈し又はその容積を増加させてもよい。これらの希釈剤としては、特に、マンニトール、α−ラクトース、無水乳糖、セルロース、スクロース、改質デキストラン及びデンプンなどの炭水化物を挙げることができる。ある特定の無機塩を、充填剤として使用してもよく、例えば三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム及び塩化ナトリウムが挙げられる。幾つかの市販される希釈剤としては、ファスト−フロ(Fast-Fro)、エムデックス(Emdex)、STA−Rx 1500、エンコンプレス(Emcompress)及びアビセル(Avicell)がある。
【0070】
崩壊剤は、治療薬を固体剤形に処方する際に含まれうる。崩壊剤として使用される材料としては、限定はされないがデンプンが挙げられ、デンプンをベースとした市販の崩壊剤であるエキスプロタブを含む。デンプングリコール酸ナトリウム、アンバーライト、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ウルトラミロペクチン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸型カルボキシメチルセルロース、天然のスポンジ及びベントナイトは、すべて使用されうる。崩壊剤の別の形態は、不溶性の陽イオン交換樹脂である。粉末状ガムは、崩壊剤及び結合剤として使用してもよく、これらには、寒天、カラヤ又はトラガカントなどの粉末状ガムが含まれうる。アルギン酸及びそのナトリウム塩は、崩壊剤としても有用である。
【0071】
結合剤は、堅い錠剤を形成するために治療剤を結合させるのに使用してもよく、アカシア、トラガカント、デンプン及びゼラチンなどの天然物由来の材料を含む。他のものとしては、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。ポリビニルピロリドン(PVP)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、両方とも、治療薬を粒状にするためにアルコール溶液において使用することができる。
【0072】
抗摩擦剤(anti-frictional agent)は、調剤プロセスの間の接着を防止するために治療薬の調剤に含まれうる。潤滑剤は、治療薬とダイ壁との間の層として使用してもよく、これらには、ステアリン酸並びにそのマグネシウム及びカルシウム塩、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、液体パラフィン、植物油及びワックスが含まれうるが、これらに限られない。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、さまざまな分子量のポリエチレングリコール、Carbowax 4000及び6000などの可溶性の潤滑剤も使用されうる。
【0073】
調合の際の薬物の流動特性を改善し、圧縮の際の再配列を補助しうる滑剤を添加してもよい。滑剤としては、デンプン、タルク、焼成シリカ及び水化ケイ酸アルミニウム(hydrated silicoaluminate)が挙げられうる。
【0074】
水性環境内への治療薬の溶解を補助するために、サーファクタントを湿潤剤として添加してもよい。サーファクタントとしては、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム及びスルホン酸ジオクチルナトリウムなどのアニオン性洗浄剤が挙げられうる。使用可能なカチオン性洗浄剤としては、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムが挙げられうる。調剤にサーファクタントとして含まれる可能性のある非イオン性洗浄剤としては、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50及び60、モノステアリン酸グリセリル、ポリソルベート40、60、65及び80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、並びにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。これらのサーファクタントは、誘導体の調剤中に、単独で、又はさまざまな比率の混合物として、存在しうる。
【0075】
経口的に用いることができる医薬製剤は、ゼラチンで作られた押し込み式(push-fit)カプセル、並びに、ゼラチンで作られた軟質の密封カプセル、及び、グリセロール又はソルビトールなどの可塑剤を含む。押し込み式カプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/又は、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、並びに、必要に応じて安定剤と混合した、活性成分を含みうる。軟質カプセルでは、活性化合物は、脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁されうる。さらに、安定剤を添加してもよい。経口投与用に調合されたマイクロスフィアもまた、使用されうる。このようなマイクロスフィアは、当技術分野で十分に定義されている。経口投与用のすべての調剤は、このような投与に適した用量であろう。
【0076】
口腔内投与については、組成物は、通常の態様で調合された錠剤又はトローチ剤の形態をとりうる。
【0077】
吸入による投与については、APIは、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガスなどの適切な推進剤を使用して、加圧されたパック又は噴霧器から、エアロゾルスプレー形の形態で、便利に送達されうる。加圧されたエアロゾルの場合には、用量単位は、定量を送達するために、弁を設けることによって決定されうる。例えばゼラチンの、吸入器又は吹き付け器での使用のためのカプセル及びカートリッジは、APIと、ラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含むように調合されうる。
【0078】
APIの肺送達もまた、本明細書において予定されている。APIは、吸入する間に、哺乳動物の肺に送達され、肺上皮の内膜を横断して、例えば血流へと移動する。吸入された分子の他の報告としては、Adjei et al., Pharm Res 7:565-569(1990);Adjei et al., Int J Pharmaceutics 63:135-144(1990)(酢酸リュープロリド);Braquet et al., J Cardiovasc Pharmacol 13(suppl. 5):143-146(1989)(エンドセリン−1);Hubbard et al., Annal Int Med 3:206-212(1989)(α1−アンチトリプシン);Smith et al., 1989, J Clin Invest 84:1145-1146(a−1−プロテイナーゼ);Oswein et al., 1990, “Aerozolization of Proteins”, Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Derivery II, Keystone, Colorado, March(組換えヒト成長ホルモン);Debs et al., 1988, J Immunol 140:3482-3488(インターフェロン−γ及び腫瘍壊死因子α)、及び、Platzらの米国特許第5,284,656号明細書(顆粒球コロニー刺激因子)が挙げられる。全身的作用のための薬物の肺送達の方法及び組成物は、1995年9月19日にWongらに対して発行された米国特許第5,451,569号明細書(参照することにより取り込まれる)に記載されている。
【0079】
本発明の実施における使用が予定されているのは、そのすべてが当業者によく知られている、噴霧器、定量吸入器、及び、粉末吸入器を含むがそれらに限られない、治療薬品の肺送達用に設計された広範な機械装置である。
【0080】
本発明の実施に適した市販される装置の幾つかの具体例としては、米国ミズーリ州セントルイス所在のMallinckrodt, Inc.社製造のUltravent噴霧器;米国コロラド州エングルウッド所在のMarquest Medical Products社製のAcorn II噴霧器;米国ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク所在のGlaxo Inc.社製のベントリン定量吸入器;及び、米国マサチューセッツ州ベッドフォード所在のFisons Corp.社製のSpinhaler粉末吸入器がある。
【0081】
このような装置はすべて、APIの投薬に適した調剤の使用を必要とする。典型的には、各調剤は、用いられる装置の種類に特有であり、治療に有用な通常の希釈剤、アジュバント、及び/又は担体に加えて、適切な推進用物質の使用も含みうる。また、リポソーム、マイクロカプセル又はマイクロスフィア、包接複合体、又は他の種類の担体の使用も予定されている。化学的に修飾されたAPIもまた、化学的修飾の種類又は用いられる装置の種類に応じて、さまざまな処方において調製されうる。
【0082】
ジェット式又は超音波式の噴霧器とともに使用するのに適した調剤は、典型的には、溶液1mLあたり約0.1〜25mgの生物学的に活性なAPI濃度で水に溶解したAPIを含む。調剤はまた、バッファー及び単糖も含みうる(例えばAPIの安定化及び浸透圧の調節のため)。噴霧調剤はまた、エアロゾルの形成における溶液の微粒子化を原因とする、APIの表面誘起性の凝集を低減又は防ぐために、サーファクタントを含みうる。
【0083】
定量吸入デバイスとともに使用する調剤は、一般に、サーファクタントの助けを借りて推進剤に懸濁されたAPIを含む微細化された粉末を含む。推進剤は、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、若しくは、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタン、又はそれらの組合せを含む炭化水素など、この目的に用いられる通常の材料でありうる。適切なサーファクタントとしては、ソルビタントリオレエート及び大豆レシチンが挙げられる。オレイン酸もまた、サーファクタントとして有用である。
【0084】
粉末吸入デバイスから投薬するための調剤は、APIを含む微細化された乾燥粉末を含み、また、ラクトース、ソルビトール、スクロース、又はマンニトールなどの増量剤も、例えば調剤の50〜90質量%など、装置からの粉末の分散を促進する量で含みうる。APIは、有利には、肺深部への最も有効な送達のために、10マイクロメートル(μm)未満、最も好ましくは0.5〜5μmの平均粒径を有する微粒子の形態で調製されるであろう。
【0085】
APIの経鼻送達もまた予定されている。経鼻送達は、肺における薬品の堆積の必要なく、鼻への治療薬品の投与後すぐに、血流へのAPIの通過を可能にする。経鼻送達用の調剤としては、デキストラン又はシクロデキストランを用いたものが挙げられる。
【0086】
経鼻投与にとって有用な装置は、定量噴霧器が取り付けられた小さい硬質のボトルである。一実施形態では、溶液中のAPIを容積が画定されたチャンバ内へと引き込むことによって定量が送達され、このチャンバは、チャンバ内の液体が圧縮されたときに噴霧を形成することによってエアロゾル調剤をエアロゾル化するように寸法化された開口部を有する。チャンバは圧縮されてAPIを投与する。特定の実施形態では、チャンバはピストン構成である。このような装置は市販されている。
【0087】
あるいは、スクイズされたときに噴霧を形成することによってエアロゾル調剤をエアロゾル化するように寸法化された開口部又は開口を備えたプラスチックのスクイズボトルが用いられる。開口は、通常、ボトルの頂部に設けられ、この頂部は、概して、エアロゾル調剤の効率的な投与のために、鼻道に部分的に適合するようにテーパ状になっている。好ましくは、鼻吸入器は、薬物の定量投与のために、定量のエアロゾル調剤を供給する。
【0088】
APIは、その全身送達が望ましい場合には、例えばボーラス注入又は持続注入などの注入による非経口の投与用に調合されうる。注入用の調剤は、例えば、保存料が添加された、アンプル又は多回投与用容器などの単位投薬形態で存在しうる。APIは、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルションなどの形態をとってよく、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤などの製剤化剤(formulatory agents)を含みうる。
【0089】
非経口投与用の薬学的調剤には、水溶性の形態のAPIの水溶液が含まれる。加えて、APIの懸濁液は、適切な油性の懸濁注入液として調製されてもよい。適切な親油性溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、若しくは、オレイン酸エチル又はトリグリセリド、などの合成脂肪酸エステル、若しくは、リポソームが挙げられる。水性懸濁注入液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、又はデキストランなど、懸濁液の粘性を高める物質も含みうる。必要に応じて、懸濁液は、化合物の溶解性を高めて非常に濃い溶液の製剤を可能にする、適切な安定剤又は薬剤も含みうる。
【0090】
あるいは、APIは、使用前に、例えば、滅菌した発熱物質を含まない水などの適切なビヒクルで再構成するための粉末の形態でありうる。
【0091】
APIはまた、例えば、ココアバター又は他のグリセリドなどの通常の坐剤基剤を含む、坐剤又は停留浣腸などの直腸又は膣用組成物に調合されてもよい。
【0092】
上述の調剤に加えて、APIはまた、デポー製剤としても調合されうる。このような長時間作用型の調剤は、適切なポリマー性又は疎水性の材料(例えば許容される油中のエマルションとして)又はイオン交換樹脂を用いて、若しくは、例えば難溶性塩などの難溶性誘導体として、調合されうる。
【0093】
医薬組成物はまた、適切な固体又はゲル相担体又は賦形剤も含みうる。このような担体又は賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、さまざまな糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、及び、ポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられるが、これらに限られない。
【0094】
適切な液体又は固体の医薬製剤の形態は、例えば、吸入用の水溶液又は生理食塩水、マイクロカプセル化、渦巻形に内包化(encochleated)、微細な金粒子上のコーティング、リポソームに内包、ネブライザー投与、エアロゾル、皮膚への移植用ペレット、又は、皮膚を引っ掻くための鋭器上の乾燥形態などである。医薬組成物としては、顆粒、粉末、錠剤、コーティング錠、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ剤、エマルション、懸濁液、クリーム、点滴剤、又は、活性化合物が持続放出される製剤も挙げられ、該製剤において、賦形剤及び添加剤、及び/又は、例えば、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、潤滑剤、香味剤、甘味剤又は可溶化剤などの助剤が、上述のように慣用的に用いられる。医薬組成物は、さまざまな薬物送達システムにおける使用に適している。薬物送達のための方法の簡単な見直しについては、Langer R, Science 249:1527-33(1990)を参照されたい。
【0095】
API及び必要に応じて他の治療薬は、そのまま(ストレート)で、又は薬学的に許容される塩の形態で投与されうる。医薬に用いられる場合、塩は薬学的に許容されるべきであるが、薬学的に許容されない塩は、それらの薬学的に許容される塩の調製に便利に用いられうる。このような塩としては、次の酸から調製されるものが挙げられるが、それらに限られない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、及びベンゼンスルホン酸。また、このような塩は、カルボン酸基のナトリウム、カリウム又はカルシウム塩など、アルカリ金属又はアルカリ土類塩として調製されうる。
【0096】
適切なバッファーとしては、次のものが挙げられる:酢酸及び塩(1〜2%w/v);クエン酸及び塩(1〜3%w/v);ホウ酸及び塩(0.5〜2.5%w/v);並びに、リン酸及び塩(0.8〜2%w/v)。適切な保存料としては、塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03%w/v);クロロブタノール(0.3〜0.9%w/v);パラベン(0.01〜0.25%w/v)及びチメロサール(0.004〜0.02%w/v)が挙げられる。
【0097】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体中に含まれる、有効量のAPI、及び、必要に応じて他の1種類以上の治療剤を含む。用語「薬学的に許容される担体」とは、ヒト又は他の脊椎動物への投与に適した1種類以上の相容性の固体又は液体の充填剤、希釈剤又は内包用物質を意味する。用語「担体」は、適用を容易にするために活性成分と組み合わせる、天然又は合成の有機又は無機の成分を意味する。医薬組成物の成分はまた、実質的に所望の薬剤効率を損なうような相互作用が存在しない態様で、本発明の化合物と、及び、互いに、混合可能である。
【0098】
APIを特に含むがそれに限られない治療剤は、粒子内に提供されてもよい。本明細書で用いられる粒子は、ナノ粒子又はマイクロ粒子(又は、場合によっては、より大きい粒子)を意味し、該粒子は、本明細書に記載されるAPI又は他の治療剤の全部又は一部で構成することができる。粒子は、腸溶性コーティングを含むがそれに限られないコーティングによって取り囲まれたコア内に、治療剤を含みうる。治療剤はまた、粒子全体に分散されてもよい。治療剤はまた、粒子内に吸着されていてもよい。粒子は、ゼロ次放出、一次放出、二次放出、遅延放出、徐放、即時放出、及びそれらのいずれかの組合せ等を含む、任意の次数の放出速度論を示しうる。粒子は、治療剤に加えて、崩壊性(erodible)、非崩壊性、生分解性、又は非生分解性の物質又はそれらの組合せを含むがそれらに限られない薬学及び医学の分野で、日常的に使用される物質を含みうる。粒子は、溶液中又は半固体状態内にAPIを含む、マイクロカプセルでありうる。粒子は、事実上、どのような形状であってもよい。
【0099】
非生分解性及び生分解性の両方のポリマー物質を、治療剤の送達のための粒子の製造に使用することができる。このようなポリマーは、天然のポリマーであっても合成のポリマーであってもよい。ポリマーは、放出が望まれる期間に基づいて選択される。特に注目される生体接着性のポリマーとしては、その教示が本明細書に援用される、Sawhney H S et al. (1993) Macromolecules 26:581-7に記載される生体内分解性のハイドロゲルが挙げられる。これらには、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、及びポリ(アクリル酸オクタデシル)が含まれる。
【0100】
治療剤は、制御放出システム内に含まれうる。用語「制御放出」は、調剤からの薬物放出の態様及びプロファイルが制御された、いずれかの薬物含有調剤を指すことが意図されている。これは、即時放出性及び即時放出性ではない調剤のことを指し、即時放出性ではない調剤には、徐放性及び遅延放出性の調剤が含まれるがこれらに限られない。用語「徐放性」(「持続放出」とも称される)は、長期間にわたって薬物の逐次放出をもたらし、かつ、好ましくは、必ずというわけではないが、長期間にわたり薬物の実質的に一定の血中濃度を生じる、製剤のことを指す、通常の意味で用いられる。用語「遅延放出性」は、調剤の投与と、調剤からの薬物の放出との間に時間の遅延が存在する製剤のことを指す、通常の意味で用いられる。「遅延放出性」は、長期間にわたる薬物の逐次の放出を含んでも含まなくてもよく、したがって、「徐放性」であってもなくてもよい。
【0101】
長期徐放性インプラントの使用は、慢性的な状態の治療に特に適しうる。「長期」放出は、本明細書で用いられる場合、インプラントが、少なくとも7日間、好ましくは30〜60日間、治療レベルの活性成分を送達するように構成かつ配置されることを意味する。長期徐放性インプラントは、当業者に広く知られており、上述の放出システムの幾つかを含む。
【実施例】
【0102】
これまで本発明を詳細に説明してきたが、本発明は、単なる例証の目的で本明細書に含まれ、本発明の範囲を限定することは意図されていない、次の実施例を参照することによってさらに明確に理解されよう。
【0103】
一般的な材料及び方法
酵母細胞株及び成長条件。野生型サッカロミセス・セレビシエ(ATCC 9763)、及びtrk1Δtrk2Δサッカロミセス・セレビシエ(SGY 1528)を、10g/Lの酵母エキス、20g/Lのペプトン、20g/Lのデキストロース、0.015g/Lのアデニンヘミ硫酸塩からなる酵母ペプトン・アデニン・デキストロース(YPAD)成長培地(最終的なカリウム濃度=10mM)を用いて維持した。固体培地では、20g/Lの寒天を、この同じ混合物に加えた。trk1Δtrk2Δサッカロミセス・セレビシエを培養するため、追加のカリウムを、塩化カリウム(100mM KCl)として加えた。クエン酸を使用して培地をpH5.0に調整した。オートクレーブ滅菌の後、続いて、デキストロースを、滅菌した20%w/v水溶液として加えた(0.22μmのフィルタを使用してデキストロース溶液をフィルタ滅菌した)。液体培養物をロータリーシェーカー(200rpm)上、30℃でインキュベートした。固体培養物をインキュベータ内で30℃に維持した。AmB(AK Scientific社)を含む固体培地については、125nMの最終濃度でAmBを添加する前に、培地を15分間、放冷した。AmBを、DMSO中の溶液として培地に加えた。インキュベーションの24〜48時間後の増殖について、プレートを検査した。
【0104】
ディスク拡散アッセイ。アッセイを先に説明した通りに行った。National Committee for Clinical Laboratory Standards in Performance Standards for Antimicrobial Disk Susceptibility Tests;M2-A8 Approved Standard(NCCLS, Wayne)(2003)。
【0105】
ブロス微量希釈最小発育阻止濃度(MIC)アッセイ。MICブロス微量希釈アッセイのプロトコルは、米国臨床検査標準協議会の文書M27−A2を出典とし、先に説明した通りに行った。Gray, K.C. et. al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 109, 2234-2239 (2012);Palacios, D.S. et al. J. Am. Chem. Soc. 129, 13804-13805 (2007)。
【0106】
小分子アッセイを用いたタンパク質の機能相補。以下の条件を追加して、上記MICアッセイに記載されるように、レスキューブロス微量希釈アッセイのプロトコルを行った:trk1Δtrk2Δ酵母を高カリウム(100mM)YPAD液体培地内で一晩増殖させ、ビヒクル又は指定濃度のAmBを含む正常カリウムYPAD液体培地に移した。
【0107】
テトラエチルアンモニウムブロックアッセイ。指定濃度のテトラエチルアンモニウムを正常カリウムYPAD培地へ、及び、指定濃度のテトラエチルアンモニウムを高カリウム(100mM)YPAD培地へ、それぞれ125nMのAmBとともに追加的に添加して、上記機能相補アッセイに記載されるようにテトラエチルアンモニウムブロックアッセイのプロトコルを行った。
【0108】
86Rb
+取り込みアッセイ。
86Rb
+の取り込み手順は、Mulet, J.M. et al. Mol. Cell. Biol. 19, 3328-3337 (1999)を出典とした。一晩、酵母培養物を上述のように増殖させた。上清を捨て、細胞を滅菌水に懸濁した。この洗浄をさらに2回繰り返した。次に、細胞を、40mLのカリウム欠乏/アップテイクバッファー(50mMコハク酸、2%グルコース;Trisを用いてpH5.5に調整)に再懸濁した。カリウム欠乏バッファー中で3時間のインキュベーション後、細胞を遠心分離し、滅菌水で2回洗浄した。細胞を、1mLのカリウム欠乏/アップテイクバッファーに再懸濁した。INCYTO(登録商標)Neubauerディスポーザブル細胞計算盤を使用して細胞濃度を決定し、野生型サッカロミセス・セレビシエ及びtrk1Δtrk2Δ細胞を同一の細胞密度に希釈した。700μLの酵母懸濁液を1.5mLのエッペンドルフチューブに加えた。カリウム欠乏/アップテイク培地中での5分間のプレインキュベーション後、AmB又はC35deOAmBをDMSO溶液として加えた(最終濃度3μM)。次に、
86RbCl(1.1μCi)を反応混合物に加えた。均質な溶液を確実にするために、反応混合物をボルテックス攪拌した。指定された時点において、反応混合物から100μLのアリコートを採取し、10mLの氷冷した20mM MgCl
2で希釈することによって、取り込み反応を停止した。次に、細胞を、小孔径0.45μmのニトロセルロースフィルタ(Millipore HAWP)に通す減圧濾過によって回収した。細胞を、20mMの氷冷したMgCl
2の2つの15mLのアリコートを用いて洗浄した。放射能を測定するために、湿ったフィルタをプラスチックのバイアルに移した。Perkin Elmer Wizard自動ガンマカウンターを使用して、放射能をモニタリングした。結果は、3回の生物学的反復の平均として、1分間あたりのカウント数で報告される。
【0109】
細胞の生存率アッセイ。WT細胞及びtrk1Δtrk2Δ細胞を、高カリウム(100mM KCl)YPADに植菌した。種培養を、30℃で14〜15時間、増殖させた。次に、細胞を、高カリウムYPADにおいて30℃で2〜2.5時間、培養した。100μLの0.25mg/mLヨウ化プロピジウム(PI、Sigma−Aldrich P4864)溶液を調製した。2〜2.5時間後、細胞を800gで5分間、23℃において遠心分離した。上清をデカンテーションし、細胞を40mLの高カリウムYPAD中に再懸濁し、ボルテックス攪拌し、遠心分離した。洗浄工程を繰り返した。上清を捨てた後、細胞を15mLの高カリウムYPADに再懸濁し、ボルテックス攪拌し、0.5のOD
600まで希釈した。セット1(WT、WT+PI、trk1Δtrk2Δ、及びtrk1Δtrk2Δ+PI)及びセット2(WT+PI+AmB、trk1Δtrk2Δ+PI+AmB)に26.4μLのDMSOを加えて、WT及びtrk1Δtrk2Δの1mLのアリコートとし、30℃で30分間、インキュベートした。1%w/vの低ゲル化温度のアガロース(Sigma−Aldrich A9414)を、正常カリウム(10mM)YPADにおいて調製した。セット1のインキュベーションの完了後、細胞をパルス遠心分離にかけ、上清を取り除き、正常カリウムYPAD中に再懸濁して洗浄した。細胞を遠心分離し、250μLの正常カリウムYPAD中に再懸濁した。その後、1μLの0.25mg/mLのPI染料を適切な試料に添加し、250μLの1%アガロースを加えた。試料を、カバーガラスを有する顕微鏡スライド上に播種し、30℃で24時間、湿度チャンバ内でインキュベートした。セット2については、細胞を、125nMのAmBを代わりに含む正常カリウムYPAD中に再懸濁し、洗浄した。細胞を、0.250μMのAmBを含む250μLの正常カリウムYPAD中に再懸濁した後、1%アガロースを加えた(最終的に125nMのAmBが得られた)。共焦点顕微鏡(Zeiss LSM700)画像を40倍で撮像し、ここで、実験ごとの処理群ごとのスライドごとに、最大で15枚のランダム画像を撮像した。PIで染色された細胞の総数を、記録された全細胞数から除算し、全細胞数で割って、%生存率を得た。処理群ごとに少なくとも200細胞について記録され、4つの独立したデータセットが得られた。
【0110】
持続可能な細胞増殖回復アッセイ。野生型及びtrk1Δtrk2Δ酵母を上述の機能相補実験に記載されるように処理し、trk1Δtrk2Δ酵母を125nMのAmBで処理した。OD
600を、ゼロ時の時点の読み取りを含めて、毎時間、24時間にわたって測定した。次に、野生型酵母を正常カリウムYPAD寒天プレート上に画線塗抹し、AmBレスキューしたTrk1Δtrk2Δ酵母をAmB含有(0.125μM)正常カリウムYPAD寒天プレート上に画線塗抹した。次いで、これらの寒天プレートを、30℃で約48時間、インキュベートした。次に、42日間以上にわたり、同一の手順を繰り返し、3日に一度、最大OD
600及び倍加時間を測定した。次の方程式を使用して倍加時間を求めた:T
d=(t
2−t
1)×[log(2)/log(q
2/q
1)]、式中、t
2及びt
1は2つの時点における時間を表し、q
2及びq
1は、増殖の対数期におけるOD
600値(0.2〜0.6のOD
600)を表す。
【0111】
既知の化学阻害剤に対する感受性調査アッセイ。MICアッセイに記載されるように一夜培養した。細胞を採取する前に、小分子AmB、ナイスタチンA1(Riedel−de−Haen社)、カンジシジン(TOKU−E社)、又はメパルトリシン(Santa Cruz Biotechnology社)及び化学阻害剤ノコダゾール(Sigma−Aldrich社)、エブセレン(Cayman Chemical社)、又はバフィロマイシンB1(Santa Cruz Biotechnology社)を、DMSO中のストック溶液として調製した。飽和細胞培養物を、1000×gで5分間、遠心分離した。上清を捨て、細胞を、滅菌したMilliQ水に再懸濁した。細胞を再び遠心分離し、上清を捨てた。洗浄工程を繰り返した。上清を捨て、細胞を、正常カリウムYPAD中に再懸濁した。細胞を、正常カリウムYPADで0.01のOD
600まで希釈した。次に、適量のAmB、ナイスタチンA1、カンジシジン、又はメパルトリシンを加えて、それぞれ、125nM、1000nM、8nM、及び8nMの最終的なレスキュー濃度を得た。対応する量のDMSOをtrk1Δtrk2Δ細胞に加えることにより、対照を調製した。195μLのWT+小分子、195μLのtrk1Δtrk2Δ+小分子、及び195μLのtrk1Δtrk2Δ+DMSOを、96ウェルプレートに加えた。次に、5μLのDMSO又は化学阻害剤を各ウェルに加え、各濃度を、WT及びtrk1Δtrk2Δの両方について3連で試験した。プレートを覆い、30℃で24時間、インキュベートした。BioTek Synergy社のH1 Hybrid Readerを使用してOD
600を測定した。GraphPad PRISMを利用して、データを、非線形回帰、阻害用量応答、可変勾配(4つのパラメータ)に当てはめ、SEMとともにEC50値を得た。統計分析のため、2つの処理群から得たEC
50値を、対応のないt検定によって比較した。
【0112】
ヒト細胞株及び成長条件。NuLi及びCuFi−1細胞を、2%v/vのUltroser G(Crescent Chemical社)を補足したDMEM:HamのF−12の1:1混合物を使用して、先に説明したように気相液相界面で培養した。Zabner, J. et al. Am. J. Physiol. Lung Cell. Mol. Physiol. 284, L844-L854 (2003)。使用した膜担体は、ウッシングチャンバ実験についてはMillicell 0.4μmPCFインサート(Millipore PIHP01250)、回転粘液輸送実験についてはCorning Costar0.4μmトランズウェル・クリア・ポリエステル・メンブレン・インサート(Corning 3470)、及び、ASL実験についてはMillicell 1.0μmPCFインサート(Millipore PIRP15R48)であった。これらの膜を、完全な分化に達するように、最低でも14日間の間、気相液相界面で成熟させた。
【0113】
イオノフォアの合成及び特徴付け。化合物N
1,N
3−ビス(((R)−1−(イソブチルアミノ)−4−メチル−1−オキソペンタン−2−イル)オキシ)イソフタルアミド(2)、メチル3α−アセトキシ−7α,12α−ジ[(4−ニトロフェニルアミノカルボニル)アミノ]−5β−コラン−24−オアート(3)、及びヒドロキシビスノルコレン酸−スペルミン−スルホナート(4)を、先に記載したように合成し、分取HPLCによって精製した。Jiang, C. et. al. Am. J. Physiol. Lung Cell. Mol. Physiol. 281, L1164-L1172 (2001);Deng, G. et al. J. Am. Chem. Soc. 118, 8975-8976 (1996);Sadownik, A. et al. J. Am. Chem. Soc. 117, 6138-6139 (1995);Davis, A.P. et al. Synlett S1, 991-993 (1999);del Amo, V. et al. Org. Biomol. Chem. 2, 3320-3328(2004);Koulov, A.V. et al. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 42, 4931-4933 (2003);Li, X. et al. J. Am. Chem. Soc. 129, 7264-7265 (2007);Shen, B. et al. PloS One 7, e34694 (2012)。
【0114】
ウッシングチャンバ実験。実験は、Zabner, J. et al. Am. J. Physiol. Lung Cell. Mol. Physiol. 284, L844-L854 (2003)に記載される手順を出典とした。Millicell 0.4μmPCFインサート上で成長させた、成熟かつ分化したCuFi膜を、Millicellアダプタ、12mm(U9924M−12)用の培養カップインサートを使用して、デュアルチャネルのウッシングチャンバ(Warner U2500)に取り付けた。100mMのアミロライド及び4,4’−ジイソチオシアノ−2,2’−スチルベンジスルホン酸(DIDS)のストック溶液をDMSO中で調製した。DMSO中、AmB、C35deOAmB、及び1〜4の実験溶液のストックを、バッファー中の所望の最終濃度より1000倍高い濃度で調製した。3.5%の寒天及び3MのKClを用いて電極を調製した。5mLの37℃高塩化物バッファー(135mM NaCl、5mM HEPES、2.4mM K
2HPO
4、0.6mM KH
2PO
4、1.2mM CaCl
2、1.2mM MgCl
2、5mMデキストロース;10N NaOHを用いてpH7.4に調整)を、チャンバの両側に置き、37℃に保ち、圧縮空気を供給した。上皮のナトリウムチャネル(ENaC)及びカルシウム活性化塩化物チャネル(CaCC)を、それぞれ、5μLのアミロライド及びDIDSで抑制し、小分子介在性の透過化のベースラインを得た。側底(135mM)から頂端(4.9mM)に至る塩化物勾配を確立するため、膜の頂端側のバッファーを、5mLの低塩化物バッファー(135mM グルコン酸ナトリウム、5mM HEPES、2.4mM K
2HPO
4、0.6mM KH
2PO
4、1.2mM CaCl
2、1.2mM MgCl
2、5mM デキストロース;10N NaOHを用いてpH7.4に調整)に置き換えた。ベースラインの安定後、5μLの試験用の小分子を、頂端のバッファーに加え、次に、短絡電流を少なくとも10分間、モニタリングした。化合物の添加後のデータの15分間の短絡電流のトレースの曲線下の面積について報告した。三重反復試験にわたってこれらの値を平均化し、標準誤差とともに報告した。
【0115】
気道表面液(ASL)の高さ調査。確立された蛍光染料アッセイを使用して、ASLの高さを調べた。Worthington, E.N. et al. Methods Mol. Biol. 742, 77-92 (2011);Myerburg、M.M. et al. Am. J. Respir. Cell. Mol. Biol. 42, 676-684 (2010)。成熟かつ分化した膜を、Millicell 0.1μMポリエチレンテレフタラートハンギングセルカルチャーインサート上で成長させた。野生型(NuLi)肺上皮をパーフルオロカーボン(FC−72)ビヒクルで処理し、CuFi上皮をビヒクル又は500nMのAmBで処理し、37℃で24時間、インキュベートした。撮像日に、2.5μLの70kDaテキサスレッド−デキストラン複合体(Molecular Probes社)のPBS溶液を膜の頂端側に加え、続いて蒸発を防ぐために100μLのFC−770を加えた。これらを、撮像(World Precision Instruments社)のために10mmガラス底のFluorodish上の100μL PBS上に置いた。染料の添加直後と、今回も24時間の時点とで膜を撮像し、染料の吸収を調べた。生体膜数n=6で、1つの膜あたり3つのZスタック画像を、Zeiss社のLSM700共焦点顕微鏡上で40倍の油浸において撮影した。これらの画像を、ImageJを使用して分析し、各画像の左側の200μm幅の蛍光の面積を求めた。画像を8ビットに変換し、ガウシアンぼかしを適用し、2値化した。Analyze Particles(粒子解析)のためのパラメータは、1〜∞μm
2の大きさ及び0%〜100%の真円度の粒子であった。
【0116】
実施例1:AmBはカリウムチャネル欠損酵母の細胞増殖を回復させる
我々は、最初に、修正した機能相補実験を使用することにより、AmBによるカリウムチャネル欠損酵母の細胞増殖が回復可能であろうという仮説について試験を行った。Lee, M.G. et al. Nature 327, 31-35 (1987)。ヒト上皮と比較して、酵母は、単純で、明確に定義され、かつ、実験的に扱いやすい真核モデル生物の代表であり、膜透過イオン輸送を媒介する主要なものは知られており、比較的よく理解されている。我々は、正常な細胞外カリウム濃度(10mM)の存在下では成長できないTrkカリウムイオン輸送体を欠く酵母(trk1Δtrk2Δ)に特に着目した。Ko, C.H. et al. Mol. Cell. Biol. 11, 4266-4273 (1991)。Trkタンパク質は、カリウム選択性、内向き整流性、かつ、広範調節性であり、したがって、完全な機能複製にとって難易度の高い目標となる。しかしながら、酵母はまた、血漿及び液胞膜内に、それぞれ、生理学的膜透過カリウム移動のための電気化学的駆動力を生じることによってTrkイオンチャネルと協働するプロトンポンプであるPma1及びV−ATPaseを有する。酵母はまた、ナトリウムを選択的に排出する専用の排出ポンプなど、他のイオンについてのAmBの選択性の欠如に対処する多重機構も有している。よって、我々は、Trk欠損酵母において、Pma1及びV−ATPaseが、AmBに基づいたイオンチャネルと協働して生理学的膜透過カリウム輸送を集合的に回復させ、したがって、細胞増殖も回復させるかもしれないという仮説を立てた。
【0117】
以前の報告(Minor, D.L. et al. Cell 96, 879-891 (1999))と一致して、野生型サッカロミセス・セレビシエを、正常濃度のカリウムを含む寒天プレートに画線塗抹した場合には増殖が観察されたが(
図2B、左)、カリウムチャネル欠損株trk1Δtrk2Δについては増殖が観察されなかった(
図2B、中央)。寒天プレートへの低濃度のAmB(125nM)の添加は、驚くほどに、trk1Δtrk2Δ突然変異体の活発な増殖を回復させた(
図2B、右)。
【0118】
一連の追加実験により、観察された細胞増殖の回復が、小分子に基づいたイオンチャネル活性によって生じることが確認された。ディスク拡散アッセイにより、AmB濃度に対する、増殖レスキューの予測された依存性が視覚的に明らかになった(
図2C)。濃度依存性を定量化し及び潜在的に複雑にする平板効率の問題を排除するため、我々はまた、ブロス希釈法アッセイにおいても、trk1Δtrk2Δ酵母細胞の増殖を測定した(
図2D)。ディスク拡散法の結果と一致して、AmBの不存在下では細胞増殖は観察されず、中間濃度において用量依存的な増殖の増加が観察され、この抗真菌剤の最小発育阻止濃度又はそれ以上では増殖は観察されなかった。さらには、あらゆる種類の一般的なホルミシス効果を除外すると、野生型細胞をAmBで処理した場合には増殖刺激効果は観察されなかった。
【0119】
実施例2:チャネル不活性化変異体C35deOAmBはカリウムチャネル欠損酵母の細胞増殖を回復させない
AmBのイオンチャネル活性の重要性を直接的に調べるため、我々はまた、チャネル不活性化変異体C35deOAmBについても試験した(
図1)。この誘導体は、いずれの試験濃度においてもtrk1Δtrk2Δ細胞の増殖を回復させなかった(
図2D)。
【0120】
実施例3:立体的に嵩高いテトラエチルアンモニウムカチオンはAmBの使用によって観察される機能相補を阻止する
機能相補実験において、我々は、立体的に嵩高いテトラエチルアンモニウムカチオンを使用して、AmBに基づくイオンチャネルをブロックした。Borisova, M.P. et al. Biochim. Biophys. Acta 553, 450-459 (1979)。このカチオンは、一般的な毒性を生じることなく、用量依存的様式で、AmBを用いて観察される機能相補を阻害した(
図2E)。
【0121】
実施例4:カリウムチャネル欠損酵母における
86Rb
+の取り込みを、AmBは回復させるがチャネル不活性化変異体C35deOAmBは回復させない
我々はさらに、膜透過カリウム移動のレポーターとしての放射性
86Rb
+の取り込みをモニタリングした(
図2F)。
86Rb
+の取り込みは、野生型酵母では観察されたが、trk1Δtrk2Δ突然変異体では観察されず、trk1Δtrk2Δ突然変異体をチャネル不活性化誘導体C35deOAmBで処理した場合には、取り込みは観察されなかった。対照的に、trk1Δtrk2Δ細胞をAmBで処理した場合には、
86Rb
+の取り込みが回復した。
【0122】
実施例5:AmBイオンチャネル介在性の酵母細胞増殖回復の強さ(Vigor)及び持続可能性
我々はまた、このAmBイオンチャネル介在性の酵母細胞増殖回復の強さ及び持続可能性も定量化した。AmB処理したtrk1Δtrk2Δ細胞は、野生型の最大細胞密度と一致する最大細胞密度に達し(
図2G)、AmBレスキューしたtrk1Δtrk2Δ細胞の倍加時間は、僅かに1.7倍長いだけであった。野生型及びAmBレスキューしたtrk1Δtrk2Δ細胞における同等レベルの細胞生存率も観察された(
図2H)。このレスキュー効果の持続可能性を調べるため、我々は、最大細胞密度及び倍加時間の実験を1カ月以上にわたって繰り返した。細胞を、それぞれ125nMのAmBを含む固体培地と液体培地の間を3日おきに行き来させ、各液体植菌の24時間後の液体培養物の最大OD
600を求めた。野生型細胞と同様に、AmBレスキューしたtrk1Δtrk2Δ細胞は、この全期間を通じて、持続された活発な細胞増殖を示した(
図2I)。任意の時点で培地からAmBを除去することにより、trk1Δtrk2Δ細胞の増殖の急速な喪失が生じた。
【0123】
実施例6:他のポリエン・マクロライド抗生物質分子もカリウムチャネル欠損酵母の細胞増殖を回復させる
不完全な模倣に関する許容範囲及び限界を調べるため、一連の追加のイオン輸送天然物を評価した。ナイスタチン、カンジシジン、及びメパルトリシンを含む、カリウムを輸送する他のポリエン・マクロライド抗生物質分子を用いた場合には、trk1Δtrk2Δ細胞増殖の力強い回復が観察されたが、NH
4+(ノナクチン)、Cl
−(プロジギオシン;4−メトキシ−5−[(Z)−(5−メチル−4−ペンチル−2H−ピロール−2−イリデン)メチル]−1H,1’H−2,2’−ビピロール)、及びCa
2+(カルシマイシン;A23187;5−(メチルアミノ)−2−({(2R,3R,6S,8S,9R,11R)−3,9,11−トリメチル−8−[(1S)−1−メチル−2−オキソ−2−(1H−ピロール−2−イル)エチル]−1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカ−2−イル}メチル)−1,3−ベンゾオキサゾール−4−カルボン酸)を選択的に輸送する小分子を用いた場合には、そのような回復は観察されなかった(
図3A)。
【0124】
実施例7:カリウムチャネル欠損酵母のAmB介在レスキューにおけるプロトンポンプの協働性
我々は、次に、これらのカリウムチャネル形成小分子が、V−ATPase及びPma1プロトンポンプと協働することによって生理機能を回復させるという機構的仮説について調査した。このようなモデルは、これらのポンプの化学的阻害に対する、小分子レスキューした突然変異体の選択的感受性を予測するものである。陰性対照として、AmB処理した野生型及びAmBレスキューしたtrk1Δtrk2Δ細胞は、微小管運動の経路外阻害剤であるノコダゾールに対して同程度に感受性であった(
図3B)。対照的に、エブセレンを用いたPma1の阻害(
図3C)及びバフィロマイシンを用いたV−ATPaseの阻害(
図3D)に対して、AmBレスキューしたtrk1Δtrk2Δ細胞は際立って(exceptionally)感受性であった。同様の結果が、ナイスタチン、カンジシジン、及びメパルトリシンでレスキューしたtrk1Δtrk2Δ細胞において観察された(
図3E−G)。
【0125】
実施例8:AmBはCFTR欠損ヒト肺上皮における正常な頂端表面液(ASL)の容積を回復させる
我々はまた、共焦点蛍光顕微鏡検査によって、頂端表面液(ASL)の容積に対するAmBの影響についても試験した。Worthington, E.N. et al. Methods Mol. Biol. 742, 77-92 (2011);Myerburg, M.M. et al. Am. J. Respir. Cell. Mol. Biol. 42, 676-684 (2010)。CF肺上皮は、正常な上皮と比べて著しく脱水状態であった。AmB(500nM)でCF上皮を処理すると、正常なASL容積が回復した。
【0126】
実施例9:AmBはCFTR欠損ヒト肺上皮における正常な頂端表面液(ASL)の高さを回復させる
我々は、AmB介在性の透過化が、嚢胞性線維症細胞株の上皮単層における生理機能の重要なマーカーであるASLの高さも回復させ得るかについて、共焦点蛍光顕微鏡検査によって試験した。NuLi上皮単層(正常ヒト肺上皮由来の細胞株)をビヒクルで処理し、CuFi−1上皮単層(最も一般的なΔF508/ΔF508突然変異を有する患者に由来する細胞株)をビヒクル又はAmBで処理した。CuFi−1上皮は、NuLi上皮と比べて著しく脱水状態であり、これらの細胞株についてのASLの高さに関する以前の報告と一致した。CuFi−1上皮をAmB(500nM)で処理すると、正常なASLの高さが回復した(
図5A)。チャネル不活性化誘導体であるC35deOAmBでの処理、又は側底表面へのAmBの添加によっては、ASLの高さの増加は観察されず、この回復が頂端膜を透過化するAmBによって特異的に生じることを実証した。これらの結果は、ImageJ自動分析器を使用して定量的に確認された(
図5B)。AmBによるASLの回復は、用量依存的様式で観察され、AmBの最適用量は0.5μmであった(
図5C)。この回復効果は、正常な肺上皮においてASLを低下させることが既に示されているブメタニドの側底への添加によりNKCCを阻害することによって妨げられた(
図5D)。
【0127】
参照による取り込み
上記説明において言及されたすべての特許公報及び特許出願公開公報は、その全体が、ここに参照することによって本明細書に取り込まれる。
【0128】
等価物
これまで本発明を、明確な理解の目的で、例証及び実例として幾分詳細に説明してきたが、同じことが、本発明の範囲又はそのいずれかの特定の実施形態に影響を与えることなく、条件、配合及び他のパラメータの幅広い等価の範囲内において、本発明を修正または変更することによって行われうること、及び、このような修正及び変更が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることは、当業者にとって明白であろう。
他の実施形態
1.イオンチャネルの発現の低下又は機能の低下によって特徴付けられる疾患又は状態を治療する方法であって、治療有効量の小孔形成ポリエン・マクロライド又はその小孔形成誘導体を、それを必要とする対象に投与し、それによって、前記イオンチャネルの発現の低下又は機能の低下によって特徴付けられる前記疾患又は状態を治療することを含む、方法。
2.イオンチャネルの発現の低下又は機能の低下によって特徴付けられる前記疾患又は状態が、嚢胞性線維症、高カリウム血性周期性四肢麻痺、先天性異常筋強直症、カリウム惹起性ミオトニー、全身性てんかん−熱性痙攣プラス(GEFS+)、一過性運動失調症、家族性片麻痺性偏頭痛、脊髄小脳性運動失調症13型、QT延長症候群、ブルガダ症候群、及びムコリピドーシスIV型からなる群より選択される、実施形態1に記載の方法。
3.イオンチャネルの発現の低下又は機能の低下によって特徴付けられる前記疾患又は状態が嚢胞性線維症である、実施形態1に記載の方法。
4.前記対象が、感染症の治療のために前記小孔形成ポリエン・マクロライド又はその小孔形成誘導体を投与されていない、実施形態1〜3のいずれかに記載の方法。
5.前記ポリエン・マクロライドが、アムホテリシンB(AmB)、ナイスタチン、ナタマイシン、カンジシジン、及びメパルトリシン、並びにそれらの任意の組合せからなる群より選択される、実施形態1〜4のいずれかに記載の方法。
6.前記ポリエン・マクロライドがアムホテリシンB(AmB)であることを特徴とする、実施形態1〜4のいずれかに記載の方法。
7.前記ポリエン・マクロライドが、サッカロミセス・セレビシエの最小発育阻止濃度未満の用量で投与される、実施形態1〜5のいずれかに記載の方法。
8.前記小孔形成ポリエン・マクロライド又はその小孔形成誘導体が全身投与される、実施形態1〜7のいずれかに記載の方法。
9.前記小孔形成ポリエン・マクロライド又はその小孔形成誘導体が、前記対象の気道に投与される、実施形態1〜7のいずれかに記載の方法。
10.前記小孔形成ポリエン・マクロライド又はその小孔形成誘導体が、前記対象の気道にエアロゾルとして投与される、実施形態1〜7のいずれかに記載の方法。
11.前記対象がヒトである、実施形態1〜10のいずれかに記載の方法。
12.前記ヒトが12歳未満である、実施形態11に記載の方法。
13.前記ヒトが12歳以上である、実施形態11に記載の方法。