特許第6796592号(P6796592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日精エー・エス・ビー機械株式会社の特許一覧

特許6796592金型、ブロー成形装置、およびブロー成形方法
<>
  • 特許6796592-金型、ブロー成形装置、およびブロー成形方法 図000002
  • 特許6796592-金型、ブロー成形装置、およびブロー成形方法 図000003
  • 特許6796592-金型、ブロー成形装置、およびブロー成形方法 図000004
  • 特許6796592-金型、ブロー成形装置、およびブロー成形方法 図000005
  • 特許6796592-金型、ブロー成形装置、およびブロー成形方法 図000006
  • 特許6796592-金型、ブロー成形装置、およびブロー成形方法 図000007
  • 特許6796592-金型、ブロー成形装置、およびブロー成形方法 図000008
  • 特許6796592-金型、ブロー成形装置、およびブロー成形方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796592
(24)【登録日】2020年11月18日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】金型、ブロー成形装置、およびブロー成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/48 20060101AFI20201130BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   B29C49/48
   B29C49/06
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-547870(P2017-547870)
(86)(22)【出願日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】JP2016081968
(87)【国際公開番号】WO2017073699
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2019年9月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-211770(P2015-211770)
(32)【優先日】2015年10月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 暢之
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−314268(JP,A)
【文献】 特開2000−246790(JP,A)
【文献】 特開2007−153366(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/015219(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00−49/80
B29C 33/00−33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティ内に有底筒状のプリフォームを挿入してブロー成形することにより、グリップ部付きの樹脂製の容器を製造するための金型であって、
軸部を中心に回動可能に構成され、ブロー成形の際に膨らむ前記プリフォームの一部を加圧することで前記容器の一部に前記グリップ部を形成するための突状のグリップ形成部を有するリンク部材と、
前記キャビティに対して前進移動することで前記リンク部材を押圧し回動させて、前記グリップ形成部を待機位置から加圧位置へ移動させるピストン部材と、
を備え、
前記リンク部材のグリップ形成部は、
ブロー成形の際に膨らむ前記プリフォームの一部を加圧する加圧面と、
前記ピストン部材と接触可能な接触面と、
を有し、
前記ピストン部材は、前記グリップ形成部の前記加圧面を前記待機位置から前記加圧位置まで移動させるとき、前記接触面と接触して前記グリップ形成部を前記キャビティ内に向けて押圧する押圧面を有し、
前記加圧面は、前記ピストン部材の移動方向において、前記グリップ形成部における前記接触面と反対側に配置されており
前記ピストン部材の前記押圧面は、前記グリップ形成部の前記加圧面を前記待機位置から前記加圧位置まで移動させるとき、前記接触面に対して滑りながら前記グリップ形成部を前記キャビティ内に向けて押圧する、
金型。
【請求項2】
キャビティ内に有底筒状のプリフォームを挿入してブロー成形することにより、グリップ部付きの樹脂製の容器を製造するための金型であって、
軸部を中心に回動可能に構成され、ブロー成形の際に膨らむ前記プリフォームの一部を加圧することで前記容器の一部に前記グリップ部を形成するための突状のグリップ形成部を有するリンク部材と、
前記キャビティに対して前進移動することで前記リンク部材を押圧し回動させて、前記グリップ形成部を待機位置から加圧位置へ移動させるピストン部材と、
を備え、
前記リンク部材のグリップ形成部は、
ブロー成形の際に膨らむ前記プリフォームの一部を加圧する加圧面と、
前記ピストン部材と接触可能な接触面と、
を有し、
前記ピストン部材は、前記グリップ形成部の前記加圧面を前記待機位置から前記加圧位置まで移動させるとき、前記接触面と接触して前記グリップ形成部を前記キャビティ内に向けて押圧する押圧面を有し、
前記加圧面は、前記ピストン部材の移動方向において、前記グリップ形成部における前記接触面と反対側に配置されており、
前記リンク部材とキャビティ型の間には弾性部材が設けられ、
ブロー成形が実行されていないとき、前記リンク部材は、前記弾性部材により前記待機位置に配置されている、
型。
【請求項3】
請求項1または2に記載の金型と、
前記金型を用いてグリップ部付きの容器を製造するためのブロー装置と、
を備える、
ブロー成形装置。
【請求項4】
プリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームを請求項1または2に記載の金型のキャビティ内に配置する工程と、
前記金型内に配置された前記プリフォームをブローして、グリップ部付きの容器を製造するブロー工程と、
を有する、ブロー成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器の金型、ブロー成形装置、およびブロー成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
調味料、飲料、酒類等を収容し運搬するため、樹脂製の容器が用いられることがある。容量が大きい容器は胴径が大きくなり、片手での把持が困難となる。そのため、ブロー成形の際に容器の胴部にグリップ部を形成する場合がある。
【0003】
特許文献1には、リンク部材の一端にグリップ部を形成するための突起部を設け、軸部を挟んでリンク部材の他端側にリンク部材を回動させるための駆動機構を設けたブロー成形用の金型が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/015219号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、ブロー成形の際に、リンク部材の一端側の突起部にはプリフォームを膨らませるブローエアーの力が作用する一方で、軸部を挟んでリンク部材の他端側にはリンク部材を回動させるための力が作用する。この構成は、ブロー成形の際にリンク部材やその軸部に破損や故障等の不具合が発生しやすいものであった。
【0006】
そこで、本発明は、破損や故障が発生しにくい金型、ブロー成形装置、およびブロー成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の金型は、
キャビティ内に有底筒状のプリフォームを挿入してブロー成形することにより、グリップ部付きの樹脂製の容器を製造するための金型であって、
軸部を中心に回動可能に構成され、ブロー成形の際に膨らむ前記プリフォームの一部を加圧することで前記容器の一部に前記グリップ部を形成するための突状のグリップ形成部を有するリンク部材と、
前記キャビティに対して前進移動することで前記リンク部材を押圧し回動させて、前記グリップ形成部を待機位置から加圧位置へ移動させるピストン部材と、
を備え、
前記リンク部材のグリップ形成部は、
ブロー成形の際に膨らむ前記プリフォームの一部を加圧する加圧面と、
前記ピストン部材と接触可能な接触面と、
を有し、
前記ピストン部材は、前記グリップ形成部の前記加圧面を前記待機位置から前記加圧位置まで移動させるとき、前記接触面と接触して前記グリップ形成部を前記キャビティ内に向けて押圧する押圧面を有し、
前記加圧面は、前記ピストン部材の移動方向において、前記グリップ形成部における前記接触面と反対側に配置されている。
【0008】
この構成によれば、ピストン部材の移動方向において、加圧面は接触面の反対側に配置されている。このため、ブロー成形の際にリンク部材に作用する力の場所は、プリフォームを膨らませるブローエアーの力が作用する加圧面と、リンク部材を回動させる力が作用する接触面とになる。したがって、ブロー成形の際にリンク部材に作用する力はグリップ形成部に集約され、リンク部材の長尺状の部位や軸部にかかる負荷を小さくすることができ、リンク部材や軸部が破損したり故障することを抑制することができる。
【0009】
また、本発明の金型において、
前記ピストン部材の前記押圧面は、前記グリップ形成部の前記加圧面を前記待機位置から前記加圧位置まで移動させるとき、前記接触面に対して滑りながら前記グリップ形成部を前記キャビティ内に向けて押圧しても良い。
【0010】
この構成によれば、ブロー成形の際に、ピストン部材の押圧面は、グリップ形成部の接触面に対して滑りながらグリップ形成部を待機位置から加圧位置まで移動させる。つまり、グリップ成形部を有するリンク部材とピストン部材との間に連結部材を配置しなくても、グリップ成形部(リンク部材)を必要なストローク分、移動させることができる。よって、連結部材の破損や故障に関わるリスクやメンテナンス作業を完全に無くすことができ、また、部品点数も減少することから、金型(ブロー型)に掛かるコストも低減することができる。
【0011】
また、本発明の金型において、
前記リンク部材と当該金型との間に弾性部材が設けられ、
ブロー成形が実行されていないとき、前記リンク部材は、前記弾性部材により前記待機位置に配置されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、ブロー成形が実行されていないとき、リンク部材は、弾性部材により待機位置に配置され、グリップ形成部が金型のキャビティ内に不要に飛び出すことが抑制される。また、ブロー成形の際には、ブローエアーによってリンク部材に作用する不規則な方向の力を、弾性部材により緩衝させることができる。
【0013】
また、本発明のブロー成形装置は、
上記金型と、
前記金型を用いてグリップ部付きの容器を製造するためのブロー装置と、
を備える。
【0014】
この構成によれば、破損や故障が発生しにくいブロー成形装置を提供することができる。
【0015】
また、本発明のブロー成形方法は、
プリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームを上記金型のキャビティ内に配置する工程と、
前記金型内に配置された前記プリフォームをブローして、グリップ部付きの容器を製造するブロー工程と、
を有する。
【0016】
この方法によれば、金型や装置に破損や故障が発生しにくいブロー成形方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、破損や故障が発生しにくい金型、ブロー成形装置、およびブロー成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)はブロー成形により形成された樹脂製容器の側面図、(b)は樹脂製容器の正面図、(c)は樹脂製容器の背面図、(d)は(a)のA−A線における断面図である。
図2】本発明に係るブロー成形装置のブロック図である。
図3】ブロー成形装置におけるブロー成形金型の横断面図であり、ブロー成形の一工程を示す。
図4】ブロー成形装置におけるブロー成形金型の横断面図であり、ブロー成形の他の一工程を示す。
図5】ブロー成形部のリンク部材を示す図である。
図6】樹脂製容器の製造手順を示すフローチャートである。
図7】(a),(b)は参考例のリンク部材の一例を示す図である。
図8】変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
図1(a)〜(d)は、本発明に係るブロー成形装置及びブロー成形方法によって製造された樹脂製容器1を示す。樹脂製容器1は、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂材料で形成されており、例えば調味料、飲料、酒類等を収容あるいは運搬するための容器などとして使用される。樹脂製容器1は、上端側の開口した口部を含むネック部11と、筒状の胴部12と、ネック部11と胴部12とを拡径して接続する肩部13と、下端側の底部14と、底部14と胴部12とを拡径して接続するヒール部15とを有している。樹脂製容器1の胴部12には、グリップ部20が設けられている。なお、図1(a)〜(c)の点線は、樹脂製容器1の製造で用いられるプリフォームPを示している。プリフォームPは、樹脂製容器1と同じ形状のネック部と略円筒状の胴部および略半球状の底部とを有し、有底筒状の形状になっている。
【0020】
グリップ部20は、樹脂製容器1の背面側において、肩部13から胴部12の下方に向けて樹脂製容器1の高さ方向へ形成されている。グリップ部20は、樹脂製容器1の外周面と連続して形成されている。グリップ部20は、胴部12の背面側においてはグリップ部20の上下側に形成されている胴部12の外周面と略同じ外径の外周面を有するように形成されている。グリップ部20は、胴部12の左右側面側においては胴部12の外周面よりも樹脂製容器1の内側に窪んだ外周面を有するように形成されている。
【0021】
グリップ部20の前方側(樹脂製容器1の中心軸O側)には、樹脂製容器1の内側に陥没する左側面の第一凹部22と右側面の第二凹部23とが対向して形成されている。第一凹部22と第二凹部23は、グリップ部20を把持する際の把持用の凹部として設けられており、グリップ部20と略同じ高さの位置に形成されている。
【0022】
第一凹部22は、樹脂製容器1の一方の側面から樹脂製容器1の内側へ向かって傾斜して形成された前側面部22a及び後側面部22bと、前側面部22aと後側面部22bとの間に形成された底部22cとを有する。第二凹部23は、樹脂製容器1の上記一方の側面とは反対側の側面から樹脂製容器1の内側へ向かって傾斜して形成された前側面部23a及び,後側面部23bと、前側面部23aと後側面部23bとの間に形成された底部23cとを有する。第一凹部22と第二凹部23とは、底部22cと底部23cとが対向するように形成されている。第一凹部22の後側面部22bと第二凹部23の後側面部23bとは、グリップ部20における前方側の外周面を規定している。なお、図1(d)において、底部22cと底部23cとがその対向面(点線部)で溶着した構造になっているが、底部22cと底部23とがその対向面で離接していても構わない。
【0023】
次に、図2図5を参照して、樹脂製容器1を製造するためのブロー成形装置について説明する。
図2に示すように、ブロー成形装置30は、プリフォームを製造するための射出成形部40と、製造されたプリフォームの温度を調整するための温調部45とを備えている。射出成形部40には、原材料である樹脂材料を供給する射出装置42が接続されている。また、ブロー成形装置30は、プリフォームをブローしてグリップ部20付きの樹脂製容器1を製造するためのブロー成形部(ブロー装置の一例)50と、製造された樹脂製容器1を取り出すための取り出し部55とを備えている。
【0024】
射出成形部40と温調部45とブロー成形部50と取り出し部55とは、搬送手段60を中心として所定角度(本例では90度)ずつ回転した位置に設けられている。搬送手段60は回転板等で構成されており、回転板に取付けられているネック型によりネック部11が支持された状態の成形品が、回転板の回転に伴って各部に搬送されるように構成されている。
【0025】
射出成形部40は、図示を省略する射出キャビティ型、射出コア型、ネック型等を備えている。これらの型が型締めされることで形成されるプリフォーム形状の空間内に、射出装置42から樹脂材料を流し込むことにより、有底筒状のプリフォームが製造されるように構成されている。
【0026】
温調部45は、射出成形部40で製造されたプリフォームPの温度を、延伸ブローするための適した温度に加熱して調整するように構成されている。また、温調部45の構成は、温調ポット式、赤外線ヒーター式、RED式、電磁波加熱式の何れの様式でも良い。
【0027】
取り出し部55は、ブロー成形部50で製造された樹脂製容器1のネック部11をネック型から開放して樹脂製容器1を取り出すように構成されている。
【0028】
ブロー成形部50は、図3図4に示すように、二つの割型71からなるブローキャビティ型70と、グリップ部20を形成するためのリンク部材80と、リンク部材80を押圧するピストン部材90とを備えている。割型71はピストン部材90が設けられる面でブローベース73に固定され、そのブローベース73が型締め装置51に対して開閉可能に連結されている。図示は省略するが、ブローキャビティ型70の下部には底型が、またブローキャビティ型70の上部にはブローコア型が、それぞれ昇降可能に設けられている。なお、ブローキャビティ型70の略中心位置にある点線は、ブロー成形される前のプリフォームPを示している。
【0029】
ブローキャビティ型70は、射出成形されたプリフォームPを収容し、ブロー成形されるプリフォームP(樹脂製容器1)の外周面を規定する。
【0030】
リンク部材80は、ブローキャビティ型70の割型71の各々に、軸部81を中心に回動可能に構成されている。具体的には、パーティングライン(PL)と直交する割型71の側面に窪み部(凹部)72が形成され、その窪み部72の中心よりもパーティングラインに近づいた部位に、リンク部材80を軸支した軸部81が設けられている。リンク部材80は、プリフォームPがブロー成形される際に、図3に示されるようなブローキャビティ型70のキャビティ(空間)70aの中心に対して遠ざかった状態の待機位置から、図4に示すようなキャビティ70aの中心に対して近づいた状態の加圧位置へと回動しうる。リンク部材80とブローキャビティ型の割型71との間には弾性部材(例えば引張りばね等のコイルバネ)87が設けられており、ブロー成形が実行されていないとき、リンク部材80は、弾性部材87の弾性力により待機位置に配置されている。
【0031】
リンク部材80は、図5に示すように、長尺状で略L字状のリンク本体部82と、リンク本体部82の一方の端部(リンク端部)83に固定された入れ子型84とを有する。リンク部材80は、入れ子型84が固定されているリンク端部83とは反対側の端部が軸部81とされている。本例ではリンク端部83と入れ子型84とを合わせた部分を、リンク部材80のグリップ形成部85という。リンク部材80は、ブロー成形の際に膨らむプリフォームPの一部を、突状のグリップ形成部85で加圧することにより、樹脂製容器1の一部にグリップ部20を形成する。また、本例では、ブローキャビティ型70の省スペース化のため、入れ子型84は、略L字状のリンク部材80の長辺部82aの側に設けられ、軸部81は、短辺部82bの側に設けられている。
【0032】
グリップ形成部85は、プリフォームPを加圧する加圧面85aと、ピストン部材90によって押圧される際にピストン部材90と接触可能な接触面85bとを有する。グリップ形成部85の加圧面85aは、ピストン部材90の移動方向において、グリップ形成部85における接触面85bと反対側に配置されている。加圧面85aは、リンク部材80が待機位置にあるとき、キャビティ70aの内壁面と略同じ面に配置され(図3参照)、加圧位置にあるとき、キャビティ70a内に入り込んで配置される(図4参照)。
【0033】
ピストン部材90は、図3図4に示すように、ブローキャビティ型70に取り付けられた筒状のシリンダ95内に配置されており、ブローキャビティ型70のキャビティ70aに対して進退可能に構成されている。ピストン部材90は、シリンダ95内を摺動してキャビティ70aに向かう方向へ進退するピストン台91と、ピストン台91からキャビティ70aに向かって延びるピストンロッド92とを有する。
【0034】
ピストンロッド92の先端面は、グリップ形成部85の接触面85bと接触してグリップ形成部85を押圧する押圧面92aとされている。つまり、ピストンロッド92とグリップ成形部85とは何らかの連結部材を介して繋がっているのではなく、弾性部材87の弾性力によりキャビティ70aの中心に対して遠ざかる方向に回動させられたグリップ成形部85の接触面85bに対して、ピストンロッド92の先端面で非連結状態にて支持するだけの構成になっている。押圧面92aは、グリップ形成部85を押圧してグリップ形成部85の加圧面85aを待機位置から加圧位置まで移動させるとき、グリップ形成部85の接触面85bに対して滑りながら接触位置を変化させてグリップ形成部85をキャビティ70a内に向けて押圧する。
【0035】
なお、上記ブロー成形部50では、ブローキャビティ型70の一方側の半割りの割型71についてのみ説明したが、他方側の割型71においても同様の構成を有する。
【0036】
次に、図6に基づいて、ブロー成形装置30を用いた樹脂製容器1のブロー成形方法について説明する。
まず、射出成形部40において、ネック型に対して射出コア型及び射出キャビティ型を型締めし、射出装置42から樹脂材料を型内に射出して有底筒状のプリフォームPを製造する(ステップS101)。
【0037】
続いて、射出コア型を退避させ、射出キャビティ型を型開きし、ネック型にプリフォームPのネック部を保持した状態で温調部45へ搬送する(ステップS102)。
【0038】
温調部45において、例えば温調ポット内にプリフォームPを挿入し、プリフォームPの温度を延伸に適した温度に調整する(ステップS103)。
【0039】
続いて、プリフォームPを温調ポットから取り出し、ブロー成形部50へ搬送する(ステップS104)。
【0040】
ブロー成形部50において、ネック型に保持されたプリフォームPにブローコア型を挿入し、ブローキャビティ型70を型締めするとともに、底型を組み付けることにより、プリフォームPをキャビティ70a内に配置する(ステップS105)。
【0041】
ブローコア型からプリフォームP内にブローエアーを導入し、プリフォームPをキャビティ70aの形状にブロー成形していく。この場合、ブローエアーの導入によりプリフォームPがある程度膨らんだ状態で、割型71に設けられたピストン部材90のピストン台91をキャビティ70aに対して前進移動させる。ピストン台91の前進により、ピストンロッド92の押圧面92aがグリップ形成部85の接触面85bと接触し、グリップ形成部85をキャビティ70a内に向けて押圧する。これにより、リンク部材80が回動し、グリップ形成部85の加圧面85aが待機位置(図3参照)から加圧位置(図4参照)へ移動する。なお、ブロー成形部50における他方側の割型71においても同様の動作が行われる。
【0042】
ブローキャビティ型70からグリップ形成部85を互いに近接する方向へ移動させることにより、ブローされたプリフォームP(樹脂製容器1)の胴部12に第一凹部22と第二凹部23が形成される。第一凹部22と第二凹部23が形成されることで、第一凹部22の後側面部22bと第二凹部23の後側面部23bとによって前方側の外周面が規定されたグリップ部20が形成される(ステップS106)。
【0043】
続いて、ブローキャビティ型70、ブローコア型、及び底型を型開きし、ブロー成形された樹脂製容器1をネック型で保持したまま取り出し部55へ搬送する(ステップS107)。
【0044】
最後に、取り出し部55において、ネック型から樹脂製容器1のネック部11を離型し、グリップ部20が形成された樹脂製容器1をブロー成形装置30から取り出して、樹脂製容器1の製造が完了する(ステップS108)。
【0045】
なお、樹脂製容器1を成形する上記工程において、プリフォームPを製造する工程(ステップS101)は、ブロー成形するためのプリフォームPを準備できる工程であればよく、例えば別の場所で製造したプリフォームPを搬送する工程としても良い。
【0046】
ところで、近年、グリップ部を有した樹脂製容器は大型化しており、大型の樹脂製容器の胴部にグリップ部を形成する場合、そのグリップ性を高めるため、胴部に指掛用の凹部を大きく且つ深く形成することが必要となる。この場合、樹脂製容器を形成するブロー成形型において、指掛け凹部を形成するために可動式の入れ子型を搭載することが多い。
【0047】
例えば、図7(a)に示すブロー成形型の構成(国際公開第2013/099753号)では、リンク部材110の一端側にグリップ部を形成するための入れ子型111が設けられ、軸部112を挟んでリンク部材110の他端側にリンク部材110を回動させるための油圧シリンダ113が設けられている。この場合、ブロー成形の際に、一端側の入れ子型111にはプリフォーム100を膨らませるブローエアーの力(矢印A)が作用する一方で、他端側にはリンク部材110を回動させるための油圧シリンダの力(矢印B)が作用する。この構成では、ブローエアーの力と油圧シリンダの力が、軸部112を挟んだリンク部材110の両側に同方向の力で別々に作用するため、入れ子型111や軸部112を含むリンク部材110の各部に破損や故障等の不具合が発生しやすい。
【0048】
また、例えば、図7(b)に示すブロー成形型の構成(特開2007−153366号公報)では、入れ子型121が油圧シリンダ123と同軸上に一体的に連結して設けられている。この場合、ブロー成形の際に、プリフォーム101を膨らませるブローエアーの力の影響が入れ子型121に対して矢印C1,C2,・・・,C5等で示すような不規則な方向の力となって発現する。このため、ブローエアーの力が油圧シリンダ123の前進運動を上下方向や左右方向へずらすように(揺動させるように)作用する場合もあり、油圧シリンダ123が周辺の部位と摩擦したりして、破損や故障等の不具合が発生することもある。
【0049】
これに対し、本実施形態の金型を備えるブロー成形装置30及びブロー成形方法によれば、リンク部材80におけるグリップ形成部85の加圧面85aは、ピストン部材90の移動方向において、グリップ形成部85の接触面85bの反対側に配置されている。このため、ブロー成形の際にリンク部材80に作用する力の場所は、プリフォームPを膨らませるためのブローエアーの力が作用するキャビティ70a側の加圧面85aと、リンク部材80を回動させる力(ピストン部材90からの力)が作用するピストン部材90側の接触面85bとになる。したがって、ブロー成形の際にリンク部材80に作用する力の多くはグリップ形成部85に集約され、リンク部材80のリンク本体部82や軸部81にかかる負荷を小さくすることができ、リンク部材80が破損したり故障することを抑制することができる。
【0050】
また、リンク部材80のグリップ形成部85とピストン部材90とはそれぞれ独立した部材であり連結していない。このため、ブロー成形の際に、ピストン部材90の押圧面92aは、グリップ形成部85の接触面85bに対して滑りながら接触位置をずらしつつ押圧し、グリップ形成部85を待機位置から加圧位置まで移動させる。つまり、グリップ成形部を有するリンク部材80とピストン部材90との間に連結部材を配置しなくても、グリップ成形部(リンク部材)を必要なストロークに合わせて移動させることができる。よって、連結部材の破損や故障に関わるリスクやメンテナンス作業を完全に無くすことができ、また、部品点数も減少することから、金型(ブロー型)に掛かるコストも低減することができる。
【0051】
また、リンク部材80は、ブロー成形が実行されていないとき、弾性部材87により待機位置に配置されている。このため、グリップを形成するとき以外には、グリップ形成部85がブローキャビティ型70のキャビティ70a内に不要に飛び出すことが抑制される。また、ブロー成形の際には、ブローエアーによってリンク部材80のグリップ形成部85に作用する不規則な方向の力を、軸部81に設けられた弾性部材87の弾性により吸収して緩衝させ、リンク部材80のガタツキを抑えることができる。
【0052】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0053】
上述の本実施形態では、搬送手段が回転板で構成されている例を説明したがこの例に限られない。例えば、図8に示すように、ブロー成形装置30Aは、射出成形部40と、ブロー成形部50とを、搬送レールを用いて接続した構成であっても良い。搬送レールは、プリフォームPを支持した搬送用の治具をループ状に連続搬送できる構成となっており、その経路の途中には温調部45A(加熱部)が設置されていても良い(なお、ブロー成形装置30Aの構成は本件出願人による国際公開第2012/057016号公報等で公知のものであるため、本件では簡単な説明にとどめる)。また、ブロー成形部50において、複数個のブローキャビティ型70を、型締め装置51の長さの範囲内で、パーティングラインに沿った方向に並べた構成にしても良い。
【0054】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2015年10月28日出願の日本特許出願・出願番号2015-211770に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0055】
1:樹脂製容器、11:ネック部、12:胴部12、20:グリップ部、22:第一凹部、23:第二凹部、30:ブロー成形装置、40:射出成形部、50:ブロー成形部(ブロー装置の一例)、70:ブローキャビティ型、70a:キャビティ、80:リンク部材、81:軸部、82:リンク本体部、83:リンク端部、84:入れ子型、85:グリップ形成部、85a:加圧面、85b:接触面、87:弾性部材、90:ピストン部材、91:ピストン、92:ピストンロッド、92a:押圧面92a、95:シリンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8