(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
画像診断または画像化を利用する応用が、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影法(CT)、単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、陽電子放射断層撮影法(PET)、MRI支援の応用、CT支援の応用、SPECT支援の応用、またはPET支援の応用である、請求項4に記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0024】
概して、本開示は、造影剤であって、ヒドラジド官能基を含むターゲティング部分、金属錯形成可能部分に結合した金属イオン、および該造影剤のターゲティング部分と金属錯形成可能部分とを連結するリンカーを含む、造影剤を提供する。ターゲティング部分は、壊死組織に局在する。
【0025】
従来の造影剤は、Magnevist(登録商標)(Gd−DTPA)、Dotarem(登録商標)(Gd−DOTA)、Omniscan(登録商標)(Gd−DTPA−BMA)、およびProHance(登録商標)(Gd−HPDO3A)などのように、単一のキレート剤が金属イオンに結合して錯体を形成する化学構造を有している。これらの従来の薬剤のうち、問題とする特定の臓器または組織を標的とするものは何もなく、しかも、これらは好ましくない薬物動態を伴うことが多い。これらのタイプの従来の非特異的な薬剤は、典型的には、血漿中半減期が極めて短く、コントラスト増強撮像の時間域が短いために、最適な撮像タイミングを推定することが困難である。
【0026】
本明細書において、「対象」という用語は、動物、例えば、鳥類または哺乳類を指す。具体的な動物として、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、または霊長類が挙げられる。対象は、さらに、代替的に患者と呼ばれるヒトであってもよい。対象は、さらに遺伝子導入動物であってもよい。対象は、さらに齧歯類、例えば、マウスまたはラットであってもよい。
【0027】
キレート化は、多くの分野、例えば、金属錯体化学、有機および無機化学、ならびに生化学に一般に適用されている。キレート剤は、水性系において金属イオンを制御するために使用されるので、造影剤の分野において、それらは画像診断に使用する金属イオンと結合させるのに好まれて使用されている。キレート剤は、多価金属イオンと安定な水溶性錯体を形成し、金属イオンの通常の反応性を遮断することによって、望ましくない相互作用を防止する。本開示の造影剤は、結合されてキレート錯体となっている金属イオンを含む、T1緩和剤である。MRI信号の強度は、組織の緩和速度の値と関連している。
【0028】
一般に、T1造影剤の緩和効率は、金属イオンの性質、ならびに金属−キレート錯体の大きさおよび構造を含む、いくつかの要因に依存する。T1緩和剤は、水のプロトンの緩和シンク(relaxation sink)として作用する。常磁性金属キレート、例えば、Gd(III)、Fe(III)、およびMn(II)錯体は、周囲の水のプロトンの緩和速度を改変させて、MRIコントラスト増強の有効性を上げることができる。キレート分子は、比較的大きく、金属イオンとの多数の結合を有する。金属イオンを取り囲む原子の層内には、配位圏として知られる、限られた量の自由空間しかない。このように自由空間が足りないと、一般に、より大きいキレート分子のプロトンは、効率的なエネルギー移動のために金属イオンに十分接近することができない。その結果、組織水が、金属イオンの配位圏の中に拡散してそのエネルギーを手放すことができ、次に、組織水が今度は交換することによって、さらなる水分子が配位圏に入ることが可能になる。この拡散交換は極めて迅速に起こり、その結果、造影剤付近の組織水は隣接する組織中の水より大きい巨視的磁化を有することになり、それによってT1強調画像における強い信号に寄与する。
【0029】
ヒドラジド官能基を含むターゲティング部分が、壊死組織を標的とし、そこに局在する能力を有するという驚くべき発見によって、本明細書に開示する造影剤が開発されるに至った。
【0030】
これらの造影剤は、ヒドラジド官能基を含むターゲティング部分、金属錯形成可能部分に結合した金属イオン、およびターゲティング部分と金属錯形成可能部分とを連結するリンカーを含む。当業者であれば、金属錯形成可能部分に結合した金属イオンが金属キレートとも呼ばれることがあることを理解するであろう。ターゲティング部分は、対象への造影剤の投与後に、造影剤を壊死組織に局在させる。
【0031】
ある実施形態では、造影剤は、式:X−L−Y
*Mによって表されてもよく、式中、Xはターゲティング部分、Lはリンカー、Y
*Mは金属錯形成可能部分(Y)に結合した金属イオン(M)である。ターゲティング部分Xは、ヒドラジド官能基を含む。
【0032】
ある実施形態では、造影剤は、式:X−L−(Y
*M)
2によって表されてもよく、式中、Xは、ターゲティング部分であり、ヒドラジド官能基を含み、Lはリンカーであり、(Y
*M)
2は、2つの金属錯形成可能部分(Y)に結合した2つの金属イオン(M)を表す。この式によって示されるように、造影剤に結合した2つの金属イオンが存在し、金属イオンおよび造影剤は2:1のモル比である。(Y
*M)
n(式中、nは、2、3、4、または5)を有する造影剤も企図され、この場合、ターゲティング部分は、造影剤を対象に投与した後、造影剤を壊死組織に自由に局在させることができる。
【0033】
ある実施形態では、ターゲティング部分は、複数のヒドラジド官能基を含んでもよい。例えば、ターゲティング部分は、2、3、4、5、6、または7個のヒドラジド官能基を含んでもよい。ヒドラジド官能基は、造影剤の共通部分に直接結合されている必要はない。むしろ、造影剤は、複数のリンカーに結合された単一の金属錯形成可能部分を含んでもよく、この場合、各リンカーは、ヒドラジド官能基を含む化学基に結合される。かかる造影剤では、ターゲティング部分は、ヒドラジド官能基を含む複数の化学基を含むことが理解されよう。
【0034】
ある実施形態では、金属錯形成可能部分は、アミノカルボキシレート官能基であってもよい。一態様では、アミノカルボキシレート官能基は、ポリアミノカルボキシレート官能基であってもよい。
【0035】
定義
「リンカー」という用語は、本明細書において、2つ以上の他の化学基を連結する結合または化学基を意味する。例えば、化学基RとR’との連結において、リンカーは、RとR’とを直接結び付ける結合であってもよいし、例えば、アミド、エステル、エーテル、ヒドラジド、窒素、またはイオウ官能基を介してRとR’とを結び付ける化学基であってもよい。
【0036】
リンカーは、アルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アシル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキルチオ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、またはヘテロアルコキシであってもよい。好ましくは、リンカーは、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、またはヘテロアリールリンカーである。
【0037】
リンカー基となる化合物の2つの末端は、好ましくはヒドラジドである。これによって、ジヒドラジド化合物を金属錯形成可能な化合物の酸またはエステルと反応させ、それによって金属錯形成可能部分と結び付いたヒドラジドを含むターゲティング部分を有する造影剤を生成することが可能となる。
【0038】
リンカー基の例として、これらに限定されないが、R−R’、R−C
6H
4−R’、およびR−CH
2CH
2−R’が挙げられる。ここで、式中、RおよびR’は、互いに結び付けられた2つの化学基を表す。
【0039】
リンカー基の他の例として、以下が挙げられる:
【化1】
【0040】
例えば、化合物X−L−Y
*Mは、Lが結合であるとき、オキサリルジヒドラジドと、金属錯形成可能な化合物、例えば1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)とのエステルである縮合生成物であってもよい。
【0041】
「金属錯形成可能部分」という用語は、本明細書において、中心の金属原子と結合してキレート錯体を形成することができるリガンドを有する化学基を意味する。磁気共鳴画像法(MRI)の造影剤として作用するとき、キレート錯体は、水分子を配位するための配位部位を有する金属を与える。錯形成された水分子の緩和時間が改変し、MRI画像においてより容易に識別することができる。金属錯形成可能部分の具体例として、以下が挙げられる:
【化2】
【0042】
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)およびジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)は、特に好ましい金属錯形成可能部分の例である。
【0043】
「アルキル」という用語は、本明細書において、1〜20個の炭素原子を含有する、非分枝または分枝鎖の飽和炭化水素残基を意味する。「低級アルキル」という用語は、1〜10個の炭素原子を含有する、直鎖または分枝鎖の炭化水素残基を意味する。「C
1−10アルキル」は、本明細書において、1〜10個の炭素から構成されるアルキルを指す。アルキル基の例として、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、またはペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、およびオクチルを含む低級アルキル基が挙げられる。
【0044】
「アルキル」という用語が、「フェニルアルキル」または「ヒドロキシアルキル」中のように、別の用語に続く接尾語として使用されるとき、これは、他方の具体的に名前を挙げた基から選択される1〜2個の置換基で置換されている、上記で定義した通りのアルキル基を指すことを意図している。よって、例えば、「フェニルアルキル」は、R’R”−基であって、式中、R’がフェニル基であり、R”が本明細書で定義する通りのアルキレン基である基を意味しており、フェニルアルキル部分の結合点はアルキレン基上となることが理解される。アリールアルキル基の例として、これらに限定されないが、ベンジル、フェニルエチル、3−フェニルプロピルが挙げられる。「アリールアルキル」または「アラルキル」という用語は、R’がアリール基であることを除いて、同様に解釈される。「(ヘタ)アリールアルキル」または「(ヘタ)アラルキル」という用語は、R’が場合によってアリールまたはヘテロアリール基であることを除いて、同様に解釈される。
【0045】
「ヘテロアルキル」は、分枝アルキルを含む、本明細書で定義する通りのアルキル部分であって、1個または複数のヘテロ原子を含むアルキル部分を意味する。代表的なヘテロアルキル部分は、1個、2個、または3個の水素原子が、−OR
a、−NR
bR
c、および−S(O)
nR
d(式中、nは、0〜2の整数である)からなる群から独立に選択される置換基で置き換えられてもよく、式中、R
aは、水素、アシル、アルキル、シクロアルキル、またはシクロアルキルアルキルであり;R
bおよびR
cは互いに独立に、水素、アシル、アルキル、シクロアルキル、またはシクロアルキルアルキルであり;nが0のとき、R
dは、水素、アルキル、シクロアルキル、またはシクロアルキルアルキルであり;nが1のとき、R
dは、アルキル、シクロアルキル、またはシクロアルキルアルキルであり;nが2のとき、R
dは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ、またはジアルキルアミノである。他のヘテロアルキル部分は、炭素原子の間に挿入された1個または複数のヘテロ原子を有することができる。代表的な例として、これらに限定されないが、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシ−メチルエチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシ−メチルエチル、3−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、2−メチルスルホニルエチル、アミノスルホニルメチル、アミノスルホニルエチル、アミノスルホニルプロピル、メチルアミノスルホニルメチル、メチルアミノスルホニルエチル、メチルアミノスルホニルプロピル、メチルエチルエーテル、ジメチルアミン、アジピン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
【0046】
「アルキレン」という用語は、本明細書において、他に示さない限り、炭素原子1〜20個の二価の飽和直鎖状炭化水素基(例えば、(CH
2)
n)、または炭素原子2〜20個の二価の分枝飽和炭化水素基(例えば、−CHMe−または−CH
2CH(i−Pr)CH
2−)を意味する。メチレンの場合を除き、アルキレン基の開いた原子価は、同じ原子に結合しない。アルキレン基の例として、これらに限定されないが、メチレン、エチレン、プロピレン、2−メチル−プロピレン、1,1−ジメチル−エチレン、ブチレン、2−エチルブチレンが挙げられる。
【0047】
「アルコキシ」という用語は、本明細書において、−O−アルキル基を意味し、ここで、アルキルは上で定義した通りであり、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、i−プロピルオキシ、n−ブチルオキシ、i−ブチルオキシ、t−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシであり、それらの異性体が含まれる。「低級アルコキシ」は、本明細書において、前に定義した通りの「低級アルキル」基を有するアルコキシ基を意味する。「C
1−
10アルコキシ」は、本明細書において、アルキルがC
1−10である−O−アルキルを指す。
【0048】
「アルコキシアルキル」という用語は、本明細書において、R’R”−基であって、式中、R’が本明細書で定義する通りのアルコキシ基であり、R”が本明細書で定義する通りのアルキレン基を指しており、アルコキシアルキル部分の結合点はアルキレン基上となることが理解される。C
1−6アルコキシアルキルは、アルキル部分が、その基のアルコキシ部分にある炭素原子を除いて、1〜6個の炭素原子から構成される基を意味する。C
1−3アルコキシ−C
1−6アルキルは、アルキル部分が1〜6個の炭素原子から構成され、アルコキシ基が1〜3個の炭素から構成される基を意味する。例は、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、プロピルオキシプロピル、メトキシブチル、エトキシブチル、プロピルオキシブチル、ブチルオキシブチル、t−ブチルオキシブチル、メトキシペンチル、エトキシペンチル、プロピルオキシペンチルであり、それらの異性体が含まれる。
【0049】
「アシル」という用語は、本明細書において、式−C(=O)Rの基であって、Rが水素または本明細書で定義する通りの低級アルキルである基を意味する。この用語または「アルキルカルボニル」は、本明細書において、式C(=O)Rの基であって、Rが本明細書で定義する通りのアルキルである基を意味する。C
1−6アシルという用語は、6個の炭素原子を含有する−C(=O)R基を指す。「アリールカルボニル」という用語は、本明細書において、式C(=O)Rの基であって、Rがアリール基である基を意味し;「ベンゾイル」という用語は、本明細書において、Rがフェニルである「アリールカルボニル」基を意味する。
【0050】
「シクロアルキル」は、単環式または二環式環から構成される飽和炭素環式部分を意味する。シクロアルキルは、場合によって、1個または複数の置換基で置換することができ、ここで、各置換基は独立に、他に特に示さない限り、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、またはジアルキルアミノである。シクロアルキル部分の例として、これらに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられ、これらの部分的に不飽和な誘導体も含まれる。
【0051】
「シクロアルキルアルキル」は、式−R
a−R
bの部分であって、R
aが、本明細書で定義した通りのアルキレンであり、R
bが、本明細書で定義した通りのシクロアルキルである部分を意味する。
【0052】
「アリール」は、単環式、二環式、または三環式芳香族環から構成される環式芳香族炭化水素部分を意味する。アリール基は、場合によって、本明細書に定義する通りに置換されている。アリール部分の例として、これらに限定されないが、場合によって置換されている、フェニル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、インデニル、ペンタレニル、アズレニル、オキシジフェニル、ビフェニル、メチレンジフェニル、アミノジフェニル、ジフェニルスルフィジル、ジフェニルスルホニル、ジフェニルイソプロピリデニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフラニル、ベンゾジオキシリル、ベンゾピラニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾオキサジノニル、ベンゾピペラジニル(benzopiperadinyl)、ベンゾピペラジニル(benzopiperazinyl)、ベンゾピロリジニル、ベンゾモルホリニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニルなどが挙げられ、それらの部分的に水素化された誘導体も含まれる。
【0053】
「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」という用語は、本明細書において、少なくとも1個の芳香族環を有する、単環式、二環式、または三環式の基であって、この芳香族環が、環当たりに4〜8個の原子を含有し、1個または複数のN、O、またはSヘテロ原子を組み込んでおり、残りの環原子が炭素である基を意味しており、ヘテロアリール基の結合点は、芳香族環上となることが理解される。当業者には周知のように、ヘテロアリール環の芳香族性は、それらに相当する全て炭素のものよりも小さい。よって、本願において、ヘテロアリール基は、ある程度の芳香族性を有していれば十分である。ヘテロアリール部分の例として、5〜6個の環原子および1〜3個のヘテロ原子を有する単環式芳香族ヘテロ環が挙げられ、これらに限定されないが、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、トリアゾリン、チアジアゾール、およびオキサジアキソリン(oxadiaxoline)が挙げられ、これらは、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、アルコキシ、チオ、低級ハロアルコキシ、アルキルチオ、ハロ、ハロアルキル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、およびジアルキルアミノアルキル、ニトロ、アルコキシカルボニルおよびカルバモイル、アルキルカルバモイル、ジアルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、アルキルカルボニルアミノおよびアリールカルボニルアミノから選択される、1個または複数の、好ましくは1個または2個の置換基で場合によって置換されていてもよい。二環式部分の例として、これらに限定されないが、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、およびベンズイソチアゾールが挙げられる。二環式部分は、いずれかの環上で場合によって置換されていてもよいが、結合点は、ヘテロ原子を含有する環上にある。
【0054】
「ヘテロシクリル」、「ヘテロ環」、または「ヘテロシクロアルキル」という用語は、本明細書において、1個または複数の環、好ましくは1〜2個の環から構成される飽和環式基であって、この環が、環当たり3〜8個の原子を有し、1個または複数の環ヘテロ原子(N、O、またはS(O)
0−2から選択される)を組み込んでいる基を意味しており、これは、他に示さない限り、ヒドロキシ、オキソ、シアノ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級ハロアルコキシ、アルキルチオ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ニトロ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アリールアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノから選択される1個または複数の、好ましくは1個または2個の置換基で独立に、場合によって置換されていてもよい。ヘテロ環式基の例として、これらに限定されないが、アゼチジニル、ピロリジニル、ヘキサヒドロアゼピニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、キヌクリジニル、およびイミダゾリニルが挙げられる。好ましくは、「ヘテロシクリル」、「ヘテロ環」、または「ヘテロシクロアルキル」は、モルホリニル、ピロリジニル、ピペリジニル、またはテトラヒドロフラニルである。
【0055】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、本明細書において、異なる炭素原子上の1〜3個の水素原子がヒドロキシル基によって置き換えられている、本明細書で定義する通りのアルキル基を意味する。
【0056】
「アルキルチオ」または「アルキルスルファニル」という用語は、アルキルが上で定義した通りである−S−アルキル基を指し、例えば、メチチオ(meththio)、エチルチオ、n−プロピルチオ、i−プロピルチオ、n−ブチルチオ、ヘキシルチオであり、それらの異性体が含まれる。「低級アルキルチオ」は、本明細書において、前に定義した通りの「低級アルキル」基を有するアルキルチオ基を意味する。「C
1−10アルキルチオ」は、本明細書において、アルキルがC
1−10である−S−アルキルを指す。「フェニルチオ」は、アリールがフェニルである「アリールチオ」部分である。
【0057】
「アルキルカルボニルアミノ」および「アリールカルボニルアミノ」という用語は、本明細書において、式−NC(=O)Rの基であって、式中、Rがそれぞれアルキルまたはアリールであり、アルキルおよびアリールが本明細書で定義する通りである基を指す。
【0058】
「アルキルスルフィニル」および「アリールスルフィニル」という用語は、本明細書において、式−S(=O)Rの基であって、式中、Rがそれぞれアルキルまたはアリールであり、アルキルおよびアリールが本明細書で定義する通りである基を指す。
【0059】
「アルキルスルホニル」および「アリールスルホニル」という用語は、本明細書において、式−S(=O)
2Rの基であって、式中、Rがそれぞれアルキルまたはアリールであり、アルキルおよびアリールが本明細書で定義する通りである基を指す。「ヘテロアルキルスルホニル」という用語は、本明細書において、式−S(=O)
2Rの基であって、式中、Rが本明細書で定義する通りの「ヘテロアルキル」である基を指す。
【0060】
「アルキルスルホニルアミノ」および「アリールスルホニルアミノ」という用語は、本明細書において、式−NR’S(=O)
2Rの基であって、式中、Rがそれぞれアルキルまたはアリールであり、R’が水素またはC
1−3アルキルであり、アルキルおよびアリールが本明細書で定義する通りである基を指す。
【0061】
「ヘテロアルコキシ」という用語は、本明細書において、ヘテロアルキルが本明細書で定義する通りである−O−(ヘテロアルキル)基を意味する。「C
1−10ヘテロアルコキシ」は、本明細書において、アルキルがC
1−10である−O−(ヘテロアルキル)を指す。代表的な例として、これらに限定されないが、2−ジメチルアミノエトキシおよび3−スルホンアミド−1−プロポキシが挙げられる。
【0062】
「ハロ」、「ハロゲン」、および「ハロゲン化物」という用語は、本明細書では互換的に使用され、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを指す。「ハロアルキル」は、1個または複数の水素が同じまたは異なるハロゲンで置き換えられている、本明細書で定義される通りのアルキルを意味する。代表的なハロアルキルとして、−CH
2Cl、−CH
2CF
3、−CH
2CCl
3、−CF
2CF
3、−CF
3などが挙げられる。
【0063】
「場合によって置換されている」とは、低級アルキル、ハロ、OH、シアノ、アミノ、ニトロ、低級アルコキシ、またはハロ−低級アルキルから選択される0〜3個の置換基で独立に置換されている置換基を意味する。
【0064】
本明細書に記載する定義は、「ヘテロアルキルアリール」、「ハロアルキルヘテロアリール」、「アリールアルキルヘテロシクリル」、「アルキルカルボニル」、「アルコキシアルキル」など、付け加えて化学的に妥当な組合せを形成してもよい。「アルキル」という用語が、「フェニルアルキル」または「ヒドロキシアルキル」中のように、別の用語に続いて接尾語として使用されるとき、これは、他方の具体的に名前を挙げた基から選択される1〜2個の置換基で置換されている、上で定義した通りのアルキル基を指すことを意図している。よって、例えば、「フェニルアルキル」は、1〜2個のフェニル置換基を有するアルキル基を指し、よって、ベンジル、フェニルエチル、およびビフェニルを含む。「アルキルアミノアルキル」は、1〜2個のアルキルアミノ置換基を有するアルキル基である。「ヒドロキシアルキル」として、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、1−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピル、2−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシブチル、2−(ヒドロキシメチル)、3−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。したがって、本明細書において、「ヒドロキシアルキル」という用語は、以下に定義するヘテロアルキル基のサブセットを定義するために使用される。−(アラ)アルキルという用語は、非置換のアルキル基またはアラルキル基のいずれかを指す。(ヘテロ)アリールまたは(ヘタ)アリールという用語は、アリール基またはヘテロアリール基のいずれかを指す。
【0065】
一般に使用される略語を以下に挙げる:アセチル(Ac)、アゾ−ビス−イソブチリルニトリル(AIBN)、気圧(Atm)、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9−BBNまたはBBN)、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、ジ−tert−ブチルピロカルボネートまたはboc無水物(BOC
2O)、ベンジル(Bn)、ブチル(Bu)、ケミカルアブストラクツ登録番号(CASRN)、ベンジルオキシカルボニル(CBZまたはZ)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、三フッ化ジエチルアミノ硫黄(DAST)、ジベンジリデンアセトン(dba)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,2−ジクロロエタン(DCE)、ジクロロメタン(DCM)、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)、ジ−イソ−プロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)、ジ−イソ−ブチル水素化アルミニウム(DIBALまたはDIBAL−H)、ジ−イソ−プロピルエチルアミン(DIPEA)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,1’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,1’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)、エチル(Et)、酢酸エチル(EtOAc)、エタノール(EtOH)、2−エトキシ−2H−キノリン−1−カルボン酸エチルエステル(EEDQ)、ジエチルエーテル(Et
2O)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート酢酸(HATU)、酢酸(HOAc)、1−N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、イソ−プロパノール(IPA)、リチウムヘキサメチルジシラザン(LiHMDS)、メタノール(MeOH)、融点(mp)、MeSO
2−(メシルまたはMs)、メチル(Me)、アセトニトリル(MeCN)、m−クロロ過安息香酸(MCPBA)、質量スペクトル(ms)、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、N−カルボキシ無水物(NCA)、N−クロロスクシンイミド(NCS)、N−メチルモルホリン(NMM)、N−メチルピロリドン(NMP)、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)、重クロム酸ピリジニウム(PDC)、フェニル(Ph)、プロピル(Pr)、イソ−プロピル(i−Pr)、ポンド/平方インチ(psi)、ピリジン(pyr)、室温(rtまたはRT)、tert−ブチルジメチルシリルまたはt−BuMe
2Si(TBDMS)、トリエチルアミン(TEAまたはEt
3N)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)、トリフレートまたはCF
3SO
2−(Tf)、トリフルオロ酢酸(TFA)、1,1’−ビス−2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−2,6−ジオン(TMHD)、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、テトラヒドロフラン(THF)、トリメチルシリルまたはMe
3Si(TMS)、p−トルエンスルホン酸一水和物(TsOHまたはpTsOH)、4−Me−C
6H
4SO
2−またはトシル(Ts)、N−ウレタン−N−カルボキシ無水物(UNCA)。接頭語であるノルマル(n)、イソ(i−)、第二級(sec−)、第三級(tert−)およびネオを含む従来の命名法は、アルキル部分と共に使用されるとき、それらの通例の意味を有する。(J.RigaudyおよびD.P.Klesney、Nomenclature in Organic Chemistry、IUPAC 1979年 Pergamon Press、オックスフォード)。
【0066】
本開示の金属イオン(複数可)は、造影剤に結合される。ある実施形態では、金属イオンはガドリニウム(GdIII)である。ある実施形態では、金属イオンはテクネチウムである。ある実施形態では、金属イオンはインジウムである。当業者であれば、造影剤における使用に適した他の金属イオン、例えば、マンガン、銅、銅64および鉄も、本開示の化合物に使用できることが理解されよう。
【0067】
造影剤の金属錯形成可能部分は、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン四酢酸(DOTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、またはそれらの多形であってもよい。金属キレートは当技術分野で周知であり、これらの化合物は、キーランツ(chelants)、キレーター(cheltor)、およびキレート剤と呼ばれることが多い。キレート剤の構造は、金属イオンと可溶性の錯体分子を形成し、金属イオンが他の元素またはイオンと反応して沈殿物を生成しないように金属イオンを不活性させるような構造である。当業者であれば、ヒトに投与するのに適していればどんなキレート剤であっても本開示による造影剤の調製に適するものとなることが理解されよう。一実施形態では、金属錯形成可能部分はDOTAである。別の実施形態では、金属錯形成可能部分はDTPAである。
【0068】
本開示の造影剤化合物の具体例として、以下が挙げられる:
【化3】
【0069】
本開示の造影剤化合物は、任意の従来の手段によって調製されてもよい。
【0070】
造影剤は、医療用途におけるそれらの特性に関して幾らか定量的相違を呈することがあり、それには、血中クリアランス(比較的高速から比較的低速に及ぶ)、身体からの排出(主として腎臓によって、または肝胆道分泌に移されて)、および血漿タンパク結合(低から高まで)などがある。造影剤の標識化/錯形成は、当技術分野で周知の方法を使用して、放射性または非放射性金属イオン、好ましくは、21〜32、37〜39、42〜44、49、50、または57〜83から選択される原子番号を有する元素、例えば:−Mn、Fe、またはGd(非放射性金属に関して)、ならびに−99mTc、111in、64Cu、67Ga、90Y、188Re、186Re、および163Dy(放射性金属に関して)などのイオンとのキレート化によって、遂行されてもよい。
【0071】
金属イオンとのキレート化は、文献に十分に文書化された方法によって、造影剤の生成の任意の段階で行われてもよいが、ほとんどの場合、最終工程で行われる。化合物の金属錯形成可能部分に保護された官能基が存在するとき、それらは、金属キレート化の前に部分的にまたは完全に脱保護されてもよい。金属錯形成に関与しないイオン性基は、酸性もしくは塩基性の対イオンによって、またはイオン性の酸性および/もしくは塩基性基を有する(無機および/または有機)化合物によって、場合によって中和されてもよい。残った酸性プロトン、例えば、金属イオンによって置換されなかったものは、無機もしくは有機塩基、塩基性アミノ酸、またはアミノ酸アミドの陽イオンによって、場合によって完全にまたは部分的に置き換えることができる。適切な無機対イオンは、例えば、アンモニウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンであり、より好ましくはナトリウムイオンである。適切な有機塩基の陽イオンは、中でも、第一級、第二級、または第三級アミン、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、モルホリン、グルカミン、N,N−ジメチルグルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなど、とりわけN−メチルグルカミンのものである。適切なアミノ酸の陽イオンは、例えば、リジン、アルギニン、およびオルニチン、ならびに任意の他の酸性または中性のアミノ酸のアミド、例えば、リジンメチルアミド、グリシンエチルアミド、またはセリンメチルアミドなどのものである。
【0072】
本開示の造影剤は、死組織とも呼ばれる、壊死組織に局在する。造影剤を、例えば静脈注射によって投与すると、造影剤は、血液プール剤(血管内造影剤とも呼ばれる)と同様に作用する。投与した後、投与した造影剤の一部分は壊死組織に局在し、投与した造影剤の一部分は血漿中に残留する。血漿中の造影剤の部分の方が、壊死組織に局在する部分よりはるかに多い。よって、造影剤は、血漿中の滞留時間、すなわち半減期と、壊死組織における滞留時間、すなわち半減期とを有する。本開示による造影剤は、従来の造影剤と比較して、同様の血漿中滞留時間を示す。例えば、従来の造影剤は、約30〜約90分の半減期を有し、これらの薬剤は24約時間以内に事実上完全に排出される。本開示の造影剤は、約30分〜120分、好ましくは30〜60分の血漿中半減期を有する。血漿中に残留する造影剤は、尿を介して排出される。壊死組織に局在する造影剤の部分は、最長約72時間まで壊死組織に結合したままである。従来の非標的型造影剤は、90分間にわたって対象から実質的に除去され、24時間後にはほぼ完全に排除される。比較すると、本開示の造影剤は、約48〜約72時間の間という長期間、壊死組織に存在することが示される。壊死組織に局在する造影剤は、存在する壊死組織を強調表示し、その視認性を向上する。
【0073】
一実施形態では、本開示における造影剤が壊死組織に存在することによって、壊死組織の大きさおよび位置の両方を観察し、特定することが可能となる。
【0074】
虚血性障害を被った組織および癌組織は、健常組織と同様に見えるため、従来のMRI技術を使用して特定することができない。本開示の造影剤を用いれば、梗塞組織および/または癌組織の大きさおよび/または位置を観察するおよび/または特定することが可能となる。一態様では、該造影剤によって、癌組織の死滅の経時的なモニタリングが容易になる。別の態様では、該造影剤によって、向上した患者ケアが容易になり、より正確な医療診断が可能となる。
【0075】
ある実施形態では、本開示の造影剤は、in vitro、in vivoおよび/またはex vivoで使用されてもよく、診断薬および/または治療薬として、直接投与されても、造影剤を少なくとも1種の薬学的に許容される担体と組み合わせて含む薬学的組成物の形態で投与されてもよい。一態様では、本開示の造影剤は、例えば、MRI、CT、SPECT、PET、MRI支援の応用、CT支援の応用、SPECT支援の応用、またはPET支援の応用を含めた、画像診断または画像化支援の応用での使用に適した組成物および/または医薬品の製造に有用である。別の態様では、本開示の造影剤は、上述の画像診断用途で使用するための画像診断用薬剤または画像化支援の薬剤(imaging−aided agent)の製造に有用である。さらなる態様では、造影剤は、臓器、臓器の部分、組織、組織の部分、例えば壊死組織を可視化するおよび/または特定するために、ならびに疾患および病態を可視化するおよび/または特定するために、in vivoで使用されてもよい。本開示の造影剤は、壊死組織の存在に関連する疾患の診断に有用であり得る。特定することができるかかる疾患として、虚血侵襲、例えば、心筋梗塞または脳梗塞、および占拠性病変、例えば、固形臓器、例えば、肝臓、腎臓、脾臓、および副腎に存在し得る腫瘍または炎症性病変が挙げられる。本開示の造影剤は、良性、前癌性、または悪性腫瘍を区別するのに有用であり得る。これらの造影剤は、例えば壊死の進行またはさらなる進行を示すことにおいて、特定の医療処置の有効性の評価における診断ツールとしても有用であり得る。
【0076】
ある実施形態では、本開示の造影剤は、壊死および壊死に関連する病態、例えば、治療切除、放射線療法および/もしくは化学療法、心筋梗塞および脳梗塞を含む、病的なもしくは治療的に誘発された虚血によって引き起こされた、または、外傷、放射線、および/もしくは化学物質に起因する、病理上のまたは治療上の壊死に関与する医療用途に有用であり得る。この場合、造影剤は一般に、静脈内に、経腸的に、または非経口的に、治療薬および/または診断薬として対象に投与される。一態様では、造影剤は、腫瘍切除療法の用途に、例えば、虚血性障害(すなわち、肺塞栓症、虚血性脳卒中、肝障害、腎障害)に使用して、患部組織に生じた損傷の程度を検出するために投与されてもよい。造影剤は、腫瘍の壊死組織に局在し、医師に腫瘍の大きさおよび位置を示し、次に継続的にモニタリングして腫瘍の大きさを追跡することを可能にし、医療的処置方法の有効性を示す。進行中の治療的処置の有効性をモニタリングできることから、対象が無効な医療処置を受けることを回避することが可能となり、結果的に、患者に特化した療法を開発する助けになる。これは、多様な有力な治療法が利用可能な分野において、例えば、豊富な数の化学療法剤が利用可能な癌治療において、特に価値がある。造影剤の使用を通して腫瘍の大きさを継続的にモニタリングすれば、特定の化学療法の有効性をより早く評価することが可能となり、その結果、対象が無効な治療方針に長期間従うことを回避することができる。造影剤は医療処置の無効性を示すことができるので、医師は、医療処置のコースを改変するまたは変更することができる。かかる診断ツールを用いれば、時間を節約する措置が可能となり、患者の総合的治療成績を向上させることができる。
【0077】
本開示の造影剤と混合して使用するための薬学的に許容される担体は、当技術分野で周知であり、造影剤を対象に投与する様式に基づいて選択される。一態様では、適切な製剤は生理学的に許容される液体製剤であり、好ましくは、ポリエチレングリコールなどの従来の界面活性剤を含む、水溶液または乳濁液もしくは懸濁液である。
【0078】
ある実施形態では、本開示の造影剤は、有効量の本発明の造影剤を対象に全身的にまたは局所的に投与した後に、対象の身体の少なくとも一部の診断画像を生成するための方法を提供する。好ましくは、本開示の造影剤は、静脈注射を含む非経口投与によって、低用量で、診断薬として全身的に使用される。例えば、造影剤の金属イオンがガドリニウムのとき、投薬量範囲は、治療しようとする対象の体重1kg当たりガドリニウム約10〜約500μモル、好ましくは体重1kg当たりガドリニウム約10〜約200μモル、より好ましくは体重1kg当たりガドリニウム約10〜約100μモル、さらにより好ましくは体重1kg当たりガドリニウム約10〜約50μモルであり、ここで、ガドリニウムは、造影剤の金属錯形成可能部分に結合しており、ターゲティング部分は、造影剤を対象に投与した後、造影剤を壊死組織に局在させることができるように開放されている。一態様では、用量は、約5μモル/kg〜約1000μモル/kg(対象の重量に基づいて)、例えば、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、120、140、160 180、200、250、300、350、400、450、500、750、1000μモル/kg、もしくはその間の任意の量;または、約1μモル/kg〜約500μモル/kgもしくはその間の任意の量、例えば、1.0、2.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、30.0、35.0、40.0、45、50.0、55、60.0、65、70.0、75、80.0、85、90.0、95、100、120、140、160 180、200、250、300、350、400、450 500μモル/kg、もしくはその間の任意の量;または、約10μモル/kg〜約1000ug/kg、もしくはその間の任意の量、例えば、10.0、11.0、12.0 13.0、14.0、15.0、20.0、25.0、30.0、35.0、40.0、45、50.0、55、60.0、65、70.0、75、80.0、85、90.0、95、100、120、140、160 180、200、250、300、350、400、450、500、750、1000μモル/kg、もしくはその間の任意の量;または、約20μモル/kg〜約1000μモル/kg、もしくはその間の任意の量、例えば、20.0、25.0、30.0、35.0、40.0、45、50.0、55、60.0、65、70.0、75、80.0、85、90.0、95、100、120、140、160 180、200、250、300、350、400、450、500、750、1000μモル/kgを含んでもよい。
【0079】
代替的に、本開示の造影剤は、局所投与にも有用であり得、例えば、心筋梗塞を有する対象の場合は冠状動脈内投与にも有用であり得る。具体的な症例に依存して、本開示の造影剤の有効な局所用量は、体重1kg当たりガドリニウム約0.1〜約10μモル、好ましくは対象の体重1kg当たりガドリニウム約0.5〜約7.5μモル、より好ましくは治療しようとする体重1kg当たりガドリニウム約1〜約5μモルであってもよく、ここで、ガドリニウムは、造影剤の金属錯形成可能部分に結合しており、ターゲティング部分は、造影剤を対象に投与した後、造影剤を壊死組織に局在させることができるように開放されている。一態様では、用量は、約0.1μモル/kg〜約10μモル/kg(対象の重量に基づいて)、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0μモル/kg、もしくはその間の任意の量;または約0.5μモル/kg〜約7.5μモル/kg、もしくはその間の任意の量、例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5μモル/kg、もしくはその間の任意の量;または約1μモル/kg〜約5ug/kg、もしくはその間の任意の量、例えば、.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0μモル/kg、もしくはその間の任意の量を含んでもよい。
【0080】
当業者であれば、対象の重量、薬学的組成物の濃度、個々の成分もしくはそれらの組合せ、または薬学的組成物、個々の成分、もしくはそれらの組合せの量を考慮して、その単位を必要に応じて所望の用途に適した形式に容易に相互変換できるであろう。
【0081】
本発明の薬学的組成物は、「有効量」、「治療的有効量」または「予防的有効量」の本発明の造影剤を含んでもよい。「治療的有効量」は、必要な用量で、必要な期間、所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。造影剤の治療的有効量は、当業者によって決定されてもよく、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を引き出す造影剤の能力などの要因に従って変動し得る。治療的有効量はまた、造影剤のいずれの毒性または有害作用にも、治療的に有益な効果が勝るものである。「予防的有効量」は、必要な用量で、必要な期間、所望の予防結果を達成するのに有効な量を指す。典型的には、予防用量は疾患の前または初期段階に対象に使用されるために、予防的有効量は治療的有効量より少なくなるであろう。
【0082】
ある実施形態では、インジウム−111などの放射性錯形成金属が使用されるとき、造影剤は、約20〜200MBq(メガベクレル)の範囲内の放射能で投与されてもよい。テクネチウム−99などの放射性錯形成金属が使用されるとき、造影剤は、約350〜1,000MBqの範囲内の放射能で投与されてもよい。
【0083】
本発明のさらなる態様は、本開示の実施形態についての以下の発明の詳細な説明を検討すれば明らかとなろう。当業者であれば、本発明の他の実施形態が可能であり、本発明の細部は、全て本発明の概念から逸脱することなく幾つもの点で修正できることが分かるであろう。よって、図面、発明の詳細な説明、および実施例は、本質的に例示的とみなすべきであり、限定的とみなすべきではない。
【実施例】
【0084】
本開示の化合物は、任意の従来の手段によって調製することができる。これらの化合物を合成するのに適したプロセスを、以下の実施例に提供する。
【0085】
試薬は、Sigma Aldrichまたは以下に示す他の供給業者から購入した。しかし、試薬は、他の供給業者から購入することもできる。反応は、以下に詳述する装置を使用して実施した。化合物の精製は、シリカゲルカラムの溶出など、当業者に公知の方法によって実施した。しかし、他の方法も使用してもよい。化合物の同一性を質量分析によって確認した。
【0086】
実施例1
RF1311の調製:この調製はスキーム1における工程を含む。
【化4】
【0087】
化合物2。インドール−2−カルボン酸エチル(18.9g、100mmol)を、窒素雰囲気下で200mlのエタノールに溶解させ、ベンズアルデヒド(5.3g、50mmol)を添加し、混合物を還流温度に加熱した。濃HCl(3.7ml)を添加し、そのまま2時間反応させた。冷却後、白色の生成物をろ別し、冷エタノールで十分に洗浄した。反応は、TLC(CHCl
3:ヘキサン=1:1)で追跡できる。収率は90%であった。
【0088】
化合物3。化合物3を、修正したCresens、Erwinら(PCT/BE01/00192)の手順に従って調製した。5.0g(10.7mmol)の化合物2および10gのヒドラジン一水和物を、60mlのピリジンと30mlのメタノールとの混合物に溶解させた。混合物を48時間還流させた後、溶媒を減圧下で除去した。残留物を、H
2O、H
2O/メタノール、次いでアセトニトリルを添加することによって処理し、それぞれを添加した後、溶媒を減圧下で除去した。最後に、ヒドラジドをアセトニトリルで洗浄し、沈殿物をろ過によって収集し、P
2O
5上で乾燥して、3.4gの所望の生成物3が生じた。その同定を1H−NMR分光法によって確認した。1H−NMR (DMSO): 4.51 (br s, NHNH
2, 4H), 6.57−6.68 (m, ArH3, ArH4, 4H), 6.99−7.11 (m, ArH2, ArH, 4H), 7.21 (m, ArH, 3H), 7.27 (s, CH, 1H), 7.40 (d, ArH1, 2H), 9.62 (s, CONH, 2H), 11.40.
【0089】
化合物4。化合物4を、修正したPlatzek、JohannesおよびNiedballa、Ulrich(PCT国際出願第2002059076号)の手順に従って調製した。3.57g(10mmol)のDTPA二無水物を、2.6g(30mmol)の臭化リチウムを添加しながら(穏やかな加熱下で)、35mlのジメチルスルホキシドに溶解させた。混合物を40℃に放冷し、0.18g(10mmol)の水を添加し、混合物を10分間撹拌した。この溶液を、4.38g(10mmol)の化合物3と2.02g(20mmol)のトリエチルアミンとの混合物に、30分以内で滴下して添加した。反応混合物を40℃で8時間撹拌した。それを室温に冷却した。この溶液に、20mlのアセトン/180mlのメチルtert−ブチルエーテル(MTB)の混合物を滴下して添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。析出した沈殿物をろ過し、わずかなアセトンで2回洗浄し、乾燥させた(真空中/50℃)。精製するために、それをシリカゲルのクロマトグラフィーにかけた(溶出液:メタノール/クロロホルム/ギ酸=20:10:1)。それをイソプロパノール/ギ酸(20:1)と共に撹拌し、沈殿物を抽出し、真空中/60℃で乾燥させた。収量:1.65g(理論値の20%)の無色固体。その同定を1H−NMR分光法によって確認した。1H−NMR (D2O): 2.7 −3.4 メチレン水素 18H; 6.6−7.5 芳香族水素および−CH, 14H.
【0090】
RF1311:化合物4(1.0mmol)を水(60ml)に溶解させ、酢酸ガドリウム(Gadolium)(III)(1.0mmol)をゆっくり添加した。添加する間、pHを水酸化ナトリウムで7.4に維持した。添加した後、混合物を室温で一晩撹拌した。脱塩のために、混合物をC18−シリカゲルゲルカラムにかけ、それを蒸留水ですすいだ。溶媒を真空中で除去し、生成物を白色固体として得た。生成物の同一性を質量分析によって確認した。
【0091】
実施例2
RF1401の調製:この調製はスキーム2における工程を含む。
【化5】
【0092】
化合物2:化合物1(0.876g、2mmol)、DOTA−NHS−エステル(1.0g、2mmol、(Li,C.;WongおよびW.−T.Tetrahedron、2004年、60、5595〜5560の手順に従って作製)、およびDIPEA(0.284g、2.2mmol)を乾燥DMF(40mL)に溶解させ、得られた混合物を室温で24時間撹拌した。水を添加した後、溶媒を減圧下で除去し、得られた白色粉末をアセトニトリル/H2O(1:1、v/v)の混合物に溶解させ、分取RP−HPLCによって精製した。収量:0.59gの白色固体(0.72mmol;36%)。1H NMR (D2O) d 7.6−6.6, 14H, 芳香族水素および−CH; 3.7−3.0, 24H, メチレン水素.
【0093】
RF1401:化合物2(0.5mmol)を水(30ml)に溶解させ、酢酸ガドリウム(III)(0.5mmol)をゆっくり添加した。添加する間、pHを水酸化ナトリウムで7.4に維持した。添加した後、混合物を一晩還流させた。脱塩のために、混合物をC18−シリカゲルゲルカラムにかけ、それを蒸留水ですすいだ。溶媒を真空中で除去し、生成物を白色固体として得た。生成物の同一性を質量分析によって確認した。
【0094】
実施例3
RF1402を対照化合物として調製した。
【0095】
RF1402の調製:この調製はスキーム3における工程を含む。
【化6】
【0096】
化合物2:DOTA(2.2g、5mmol)を100mlの蒸留水に溶解させ、NaOHを使用してpHを4.8に調整した。この溶液を4℃に冷却し、撹拌した。N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI、1.92g 10mmol)を添加し、続いてp−アミノアニリン(7mmol)を添加した。混合物を4℃で1時間、次いで室温で24時間撹拌した。精製を、分取C18カラム(200g)にかけることによって実施した。カラムを水中10%メタノールで溶出した。純粋な画分を合わせ、蒸発乾固させると、所望の生成物が白色固体として生じた。
【0097】
RF1402:化合物2(1.0mmol)を水(60ml)に溶解させ、酢酸ガドリウム(III)(1.0mmol)をゆっくり添加した。添加する間、pHを水酸化ナトリウムで7.4に維持した。添加した後、混合物を一晩還流させた。脱塩のために、混合物をC18−シリカゲルゲルカラムにかけ、それを蒸留水ですすいだ。溶媒を真空中で除去し、生成物を白色固体として得た。生成物の同一性を質量分析によって確認した。
【0098】
実施例4
RF1403を対照化合物として調製した。
【0099】
RF1403の調製:この調製はスキーム4における工程を含む。
【化7】
【0100】
DTPA−ジ−アンハイドレード(anhydrade):ジエチレントリアミン五酢酸(39.3g、0.1モル)をピリジン(50g)に懸濁させ、無水酢酸(40.8g、0.4モル)を添加した。混合物を65℃で24時間加熱した。生成物をろ過し、無水酢酸およびエーテルで洗浄し、乾燥させた。
【0101】
化合物2:DTPA二無水物(3.57g、10mmol)およびトリエチルアミン(5ml)を含む40mlのジメチルホルムアミド(DMF)の溶液に、0.18gの水(10mmol)を含む10mlの乾燥DMFを、2時間にわたってゆっくり添加した。p−アミノアニリン(10mmol)を添加し、反応混合物を一晩撹拌した。蒸発乾固させた後、残留物を蒸発乾固させた。得られた白色粉末をアセトニトリル/H2O(1:1、v/v)の混合物に溶解させ、分取RP−HPLCによって精製した。収量:0.59gの白色固体(0.72mmol;36%)。
【0102】
RF1403:化合物2(1.0mmol)を水(60ml)に溶解させ、酢酸ガドリウム(III)(1.0mmol)をゆっくり添加した。添加する間、pHを水酸化ナトリウムで7.4に維持した。添加した後、混合物を一晩還流させた。脱塩のために、混合物をC18−シリカゲルゲルカラムにかけ、それを蒸留水ですすいだ。溶媒を真空中で除去し、生成物を白色固体として得た。生成物の同一性を質量分析によって確認した。
【0103】
実施例5
RF1404の調製:この調製はスキーム5における工程を含む。
【化8】
【0104】
化合物2:4.44g(20mmol)のテレフタル酸ジエチルおよび10gのヒドラジン一水和物を、80mlのピリジンと40mlのメタノールとの混合物に溶解させた。混合物を48時間還流させた後、溶媒を減圧下で除去した。残留物を、H
2O、H
2O/メタノール、次いでアセトニトリルを添加することによって処理し、それぞれを添加した後で、溶媒を減圧下で除去した。最後に、ヒドラジドをアセトニトリルで洗浄し、沈殿物をろ過によって収集し、P
2O
5上で脱水して、2.62gの所望の生成物2が生じた。(10.16mmol、50%)。
【0105】
化合物3:DTPA二無水物(3.57g、10mmol)およびトリエチルアミン(5ml)を含む40mlのジメチルホルムアミド(DMF)の溶液に、0.18gの水(10mmol)を含む10mlの乾燥DMFを、2時間にわたってゆっくり添加した。化合物2(10mmol)を添加し、反応混合物を一晩撹拌した。蒸発乾固させた後、残留物を蒸発乾固させた。得られた白色粉末をアセトニトリル/H2O(1:1、v/v)の混合物に溶解させ、分取RP−HPLCによって精製した。収量:0.68gの白色固体(1.1mmol;11%)。
【0106】
RF1404:化合物3(1.0mmol)を水(60ml)に溶解させ、酢酸ガドリウム(III)(1.0mmol)をゆっくり添加した。添加する間、pHを水酸化ナトリウムで7.4に維持した。添加した後、混合物を室温で一晩撹拌した。脱塩のために、混合物をC18−シリカゲルゲルカラムにかけ、それを蒸留水ですすいだ。溶媒を真空中で除去し、生成物を白色固体として得た。生成物の同一性を質量分析によって確認した。
【0107】
実施例6
RF1211の調製:この調製はスキーム6における工程を含む。
【化9】
【0108】
1,5−ジフタルイミド−3−アザペンタン(2)。化合物2を、以前に公表された手順(J.AM.CHEM.SOC.2004年、126、823〜833)によって調製した。すなわち、1,5−ジアミノ−3−アザペンタン(10.3g、0.10モル)および無水フタル酸(33.2g、0.20モル)を含む160mLの氷酢酸の混合物を4時間還流させた。溶媒を減圧下で除去し、次いで160mLの熱エタノールを添加し、固体が出現するまで撹拌した。生成物を収集し、冷エタノールで洗浄した。収量23.9g(81%)、融点181〜183 C、1H NMR (DMSO−d6, 300 MHz): 7.79 (m, 4H, H3’, 6’), 7.74 (m, 4H, H4’, 5’), 3.59 (t, J ) 6.3 Hz, 4H, H1,5), 2.76 (t, 4H, H2,4). 13C NMR (75 MHz, DMSO−d6): 167.85 (CO), 134.10 (C4’, 5’), 131.63 (C1’, 2’), 122.74 (C3’, 6’), 46.16 (C2,4), 37.18 (C1,5). MS (ES+, MeOH): m/z 364 (MH
+).
【0109】
t−ブチル1,7−ジナフトイル−4−ジエチレントリアミンアセテート(3) 化合物3を、以前に公表された手順(J.Peptide Sci.8:663〜670、2002年)によって調製した。すなわち、トリアミン誘導体(2)(13.3mmol、4.8g)、2−ブロモ酢酸t−ブチル(21.8mmol、3.5ml)、およびDIPEA(13.3mmol、2.3ml)を含むジクロロメタン(100ml)の混合物を、窒素下で36時間還流させた。次いでそれを、10%クエン酸(50ml)、炭酸水素ナトリウム(1M、50ml)および蒸留水(50ml)で洗浄した。有機層をMgSO4で脱水し、ろ過し、蒸発乾固させた。得られた油状の生成物をエタノールから再結晶化させ、ろ過し、氷冷エタノールで洗浄して、t−ブチル1,7−ジナフトイル−4−ジエチレントリアミンアセテート(3)を白色固体として得た(収率51%)、融点119℃〜121℃。1H−NMR: CDCl3 1.42 (9H, s, C(CH3)3), 3.01−3.04 (4H, t, J 6.5, 2 × CH2), 3.45 (2H, s, CH2), 3.70−3.74 (4H, t, J 6.5, 2 × CH2NPht), 7.64−7.72 (8H, m, 2 × Pht); 13C−NMR: CDCl3 21.2 (But CH3), 36.0, 51.6 (CH2), 81.0 (But C), 123.0 (芳香環 CH), 132.1 (芳香環 C), 133.7 (芳香環 CH), 168.2, 170.5 (CO); FAB−m/z [M + H]
+ = 478, [M + Na]
+ = 500; C26H27N3O6は478.1978であることを要する。
【0110】
t−ブチル−4−ジエチレントリアミンアセテート(4) t−ブチル1,7−ジナフトイル−4−ジエチレントリアミンアセテート(3)(4.19mmol)を含む95%アセトニトリル/水(40ml)の溶液に、4mmol当量のヒドラジン水和物を添加し、反応混合物を室温で、HPLC分析によって出発物質が存在しないことが示されるまで撹拌した(40時間)。得られた白色の沈殿物をろ過し、アセトニトリルで洗浄し、合わせたろ液を、ロータリーエバポレーターを使用して、25℃、高真空下で蒸発させて、t−ブチル−4−ジエチレントリアミンアセテート(4)を無色固体として得た(収率87%);1H−NMR, d6DMSO, 1.10 (9H, s, C (CH3)3), 2.59−2,71 (4H, m, 2 × CH2), 2.91 (2H, s, NCH2CO2), 3.26−3.47 (4H, m, 2 × CH2NH2), 4.20−4.70 (4H, br s, 2 × NH2); 13C−NMR d6 DMSO 27.8 (But CH3), 37.3, 48.7 (CH2), 80.4 (But C), 167.8 (CO); CI−m/z [M+ H]
+ =218.
【0111】
[ビス[2−ビス(エトキシカルボニルメチルアミノ)エチル]アミノ]酢酸tert−ブチルエステル(5) 化合物5を、以前に公表された手順(Synthesis 2004年、第11号、1835〜1843)によって調製した。すなわち、化合物4(1.1g、5.0mmol)およびブロモ酢酸エチル(3.9g、25mmol)を含む無水MeCN(30mL)の氷冷溶液に、反応温度を0℃未満に維持しながら、i−Pr2NEt(1.29g、10.0mmol)を添加した。混合物を室温で一晩撹拌した後、溶液を減圧で濃縮した。残留物をEtOAc(50mL)に溶解させ、飽和NaHCO3水溶液(2×25mL)および塩水(25mL)で洗浄した。有機相を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、蒸発させた。生成物を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2−MeOH、98:2)の後に、無色油状物として回収した(1.50g、51%)。IR (CHCl3): 1734, 1372, 1205 cm−1. 1H NMR (CDCl3): d = 1.24 (t, 12 H, J = 7.5 Hz, 4 × OCH2CH3), 1.42 [s, 9 H, (CH3)3C], 2.85 (s, 8 H, 2 × NCH2CH2N), 3.30 (s, 2 H, CH2CO2Bu−t), 3.50 (s, 8 H, 4 × CH2CO2Et), 4.16 (q, 8 H, J = 7.5 Hz, OCH2CH3). 元素分析 C26H47N3O10での計算値: C, 55.60; H, 8.43; N, 7.48. 実測値: C, 55.82; H, 8.59; N, 7.76.
【0112】
[ビス[2−ビス(エトキシカルボニルメチルアミノ)エチル]アミノ]酢酸(6) 5(1.46g、2.60mmol)を含むTFA(2.0mL)の溶液を、室温で2時間放置した。TFAを減圧で蒸発させた後、残留物を無水Et
2Oと繰り返し共蒸発させ、次いでシリカゲル(CHCl3−i−PrOH、80:20)で精製した。生成物を無色油状物として回収した(600mg、46%)。IR (CHCl
3): 2958, 1737, 1380, 1211 cm
−1. 1H NMR (CDCl3): d = 1.21 (t, 12 H, J = 7.5 Hz, 4 × OCH
2CH
3), 3.10 (s, 8 H, 2 × NCH
2CH
2N), 3.55 (s, 8 H, 4 × CH
2CO
2Et), 3.62 (s, 2 H, CH
2CO
2H), 4.12 (q, 8 H, J = 7.5 Hz, OCH
2CH
3), 11.20 (s, 1 H, CO
2H).
【0113】
化合物7:DMF(50mL)とトリエチルアミン(5mmol)との混合物にビス−ヒドラジド1(3.3g、7.5mmol)を含む分散液を15分間超音波処理した。TBTU(1.9g、6mmol)を添加し、混合物を再び15分間超音波処理した。生成物6(3.5g、6.9mmol)を添加し、混合物を3時間撹拌した。溶媒を除去した後、残留物を濃NaHCO
3溶液に溶解させた。pHを5N NaOHで12に調整し、2時間撹拌した。得られた混合物を蒸発させ、C18逆相カラムに入れ、次いでそれを、3%メタノールを含有する酢酸アンモニウム蒸留水溶液(0.1m)0.2L、5%メタノールを含有する溶液0.2L、最後に10%メタノールを含有する溶液0.5Lで連続的に溶出した。生成物を50mLの画分で収集し、HPLCを実施し、11分で溶出するピークをモニタリングして、純度を調べた。収量:0.82gの黄色固体;1H NMR (500 MHz, D2O): d=3.04 (m, 4H), 3.30 (m, 6H), 3.55 (s, 4H), 3.70 (s, 4H), 6.68 (s, 2H), 6.82 (m, 2H), 7.21 (m, 4H), 7.32 (m, 4H), 7.56 ppm (m, 2H)
【0114】
RF1211:化合物7(0.5mmol)を水(30ml)に溶解させ、酢酸ガドリウム(III)(0.5mmol)をゆっくり添加した。添加する間、pHを水酸化ナトリウムで7.4に維持した。添加した後、混合物を一晩還流させた。脱塩のために、混合物をC18−シリカゲルゲルカラムにかけ、それを蒸留水ですすいだ。溶媒を真空中で除去し、生成物を白色固体として得た。生成物の同一性を質量分析によって確認した。
【0115】
実施例7
RF1221の調製:この調製はスキーム7における工程を含む。
【化10】
【0116】
1H−1,2,3−トリアゾール−4,5−ジヒドラジド(2)。メチル1H−1,2,3−トリアゾール−4,5−ジカルボキセート(dicarboxate)(3.7g、20mmol)および15gのヒドラジン一水和物を、60mlのピリジンと30mlのメタノールとの混合物に溶解させた。混合物を48時間還流させた後、溶媒を減圧下で除去した。残留物を、H
2O、H
2O/メタノール、次いでアセトニトリルを添加することによって処理し、それぞれを添加した後、溶媒を減圧下で除去した。最後に、ヒドラジドをアセトニトリルで洗浄し、沈殿物をろ過によって収集し、P
2O
5上で乾燥して、2.4gの所望の生成物2を与えた。その同定を1H−NMR分光法によって確認した。
【0117】
化合物3 化合物2(1.4g、7.5mmol)を含むDMF(50mL)とトリエチルアミン(5mmol)との混合物を、15分間超音波処理した。TBTU(1.9g、6mmol)を添加し、混合物を再び15分間超音波処理した。DTPA−テトラエステル(3.5g、6.9mmol、実施例6からのもの)を添加し、混合物を3時間撹拌した。溶媒を除去した後、残留物を濃NaHCO
3溶液に溶解させた。pHを5N NaOHで12に調整し、2時間撹拌した。得られた混合物を蒸発させ、C18逆相カラムに入れ、次いでそれを、3%メタノールを含有する酢酸アンモニウム蒸留水溶液(0.1m)0.2L、5%メタノールを含有する溶液0.2L、最後に10%メタノールを含有する溶液0.5Lで連続的に溶出した。生成物を50mLの画分で収集し、HPLCを実施することによって純度を調べた。収量:1.05gの黄色固体(25%)。その同定を1H−NMR分光法によって確認した。
【0118】
RF1221:化合物3(0.5mmol)を水(30ml)に溶解させ、酢酸ガドリウム(III)(0.5mmol)をゆっくり添加した。添加する間、pHを水酸化ナトリウムで7.4に維持した。添加した後、混合物を一晩還流させた。脱塩のために、混合物をC18−シリカゲルゲルカラムにかけ、それを蒸留水ですすいだ。溶媒を真空中で除去し、生成物を白色固体として得た。生成物の同一性を質量分析によって確認した。
【0119】
実施例8
RF1231の調製:この調製はスキーム8における工程を含む。
【化11】
【0120】
化合物2:化合物2を、修正したPlatzek,JohannesおよびNiedballa,Ulrich(PCT国際出願第2002059076号)の手順に従って調製した。3.57g(10mmol)のDTPA二無水物を、2.6g(30mmol)の臭化リチウムを添加しながら(穏やかな加熱下で)、35mlのジメチルスルホキシドに溶解させた。それを40℃に冷却し、0.18g(10mmol)の水を添加し、混合物を10分間撹拌した。この溶液を、1H−1,2,3−トリアゾール−4,5−ジヒドラジド(1.85g、10mmol)と2.02g(20mmol)のトリエチルアミンとの混合物に滴下して添加した。反応混合物を40℃で8時間撹拌した。この溶液に、20mlのアセトン/180mlのメチルtert−ブチルエーテル(MTB)の混合物を滴下して添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。析出した沈殿物をろ過し、少量のアセトンで2回洗浄し、乾燥させた(真空中/50℃)。精製するために、それをシリカゲルのクロマトグラフィーにかけた(溶出液:メタノール/クロロホルム/ギ酸=20:10:1)。それをイソプロパノール/ギ酸(20:1)と共に撹拌し、沈殿物を抽出し、真空中/60℃で乾燥させた。収量:1.01g(理論値の18%)の無色固体。その同定を1H−NMR分光法によって確認した。
【0121】
RF1231:化合物2(0.5mmol)を水(30ml)に溶解させ、酢酸ガドリウム(III)(0.5mmol)をゆっくり添加した。添加する間、pHを水酸化ナトリウムで7.4に維持した。添加した後、混合物を一晩還流させた。脱塩のために、混合物をC18−シリカゲルゲルカラムにかけ、それを蒸留水ですすいだ。溶媒を真空中で除去し、生成物を白色固体として得た。生成物の同一性を質量分析によって確認した。
【0122】
実施例9
RF1241の調製:この調製はスキーム9における工程を含む。
【化12】
【0123】
化合物2:1H−1,2,3−トリアゾール−4,5−ジヒドラジド(1.11g、6mmol)、DOTA−NHS−エステル(3.0g、6mmol、Li,C.;WongおよびW.−T.Tetrahedron、2004年、60、5595〜5560の手順に従って作製)およびDIPEA(0.852g、6.6mmol)を乾燥DMF(100mL)に溶解させ、得られた混合物を室温で24時間撹拌した。水を添加した後、溶媒を減圧下で除去し、得られた白色粉末をアセトニトリル/H2O(1:1、v/v)の混合物に溶解させ、分取RP−HPLCによって精製した。収量:1.13gの白色固体(33%)。
【0124】
RF1241:化合物2(0.5mmol)を水(30ml)に溶解させ、酢酸ガドリウム(III)(0.5mmol)をゆっくり添加した。添加する間、pHを水酸化ナトリウムで7.4に維持した。添加した後、混合物を一晩還流させた。脱塩のために、混合物をC18−シリカゲルゲルカラムにかけ、それを蒸留水ですすいだ。溶媒を真空中で除去し、生成物を白色固体として得た。生成物の同一性を質量分析によって確認した。
【0125】
実施例10−in vivoでの造影剤のMRI分析
方法および材料
【0126】
上記実施例1で概説した方法に従って造影剤を調製した。ラット(250〜300g)を、以下に詳述する以降の研究に使用した。
【0127】
全ての処置および試験は、日中に行った。動物は、動物保護に対する欧州ガイドライン(European Guidelines for Animal Welfare)に記載されるガイドラインに準拠して飼育し、試験した。全ての実験は、ルーバン大学によって指導され、承認された。
【0128】
ラットでのMRI
【0129】
ラットを、イソフルラン(導入5%、維持1〜2%)の投与によって麻酔し、動物保持具に配置した。ラットの血圧および心拍数を結紮前にモニタリングして、基準状態を得た。ラットを、無菌状態下で肝動脈の結紮に2時間供した。次いで結紮糸を除去して、梗塞を起こした肝組織に再灌流させた。結紮術に続いて、ブピバカインおよびCicatrinを切開部に施した。切開部を層状に閉じ、ケトプロフェン(5mg/kg)を皮下注射して炎症を処置した。
【0130】
加えて、筋壊死を、背部の側筋にエタノールを瞬時投与することによって誘発した。これを、肝壊死と同時にモニタリングした。
【0131】
造影剤を、再灌流の開始から4時間後に静脈注射した。血圧および心拍数を結紮術の間および造影剤を投与する間、モニタリングした。ラットの体温は直腸プローブでモニタリングし、温水を循環させることによって生理的レベルに維持した。ラットは、麻酔から回復した後、個々に飼育した。
【0132】
造影剤の投与後約4〜36時間の間に、ラットをチオブタバルビタール(100mg/kg)の筋肉内注射によって麻酔し、ルーバン大学のMRI施設に移した。
【0133】
総撮像時間は、およそ60分であった。
【0134】
次いで、ラットを、ペントバルビタールの過量投与(>120mg/kg)によって直ちに安楽死させた。
【0135】
結果
【0136】
RF1311の結果
【0137】
造影剤RF1311を、上の実施例1で概説した方法に従って調製した。上記述べた手順に従って、2つの群のラットに造影剤RF1311を40mg/kgの用量で投与した。得られたMR画像および対応する組織試料を
図1、2、および3に示す。時間に対するコントラスト比の要約を
図4に示す。これによって、健常組織から壊死組織を区別するRF1311の明白な効果が実証される。
【0138】
結果は、MR画像中で壊死組織が可視であることを示している。これらの結果から、造影剤が組織試料の壊死組織部分に局在することが示される。
【0139】
実施例11−薬物動態および毒性
造影剤RF1311を、上記実施例1で概説した方法に従って調製した。ラットに造影剤RF1311を30mg/kgの用量で静脈内投与した。RF1311の血漿濃度を経時的に計測した。それを
図5に示す。各点は、異なる3回の判定からの結果の平均+/−SEである。
【0140】
30mg/kgの用量レベルでRF1311を静脈内に単回投与をした後に、異常な観察は認められなかった。ラットの血漿からRF1311が排出される半減期は1.38時間であった。定常状態では、RF1311は、ラットの体重の1.54倍の分布を有した。
【0141】
30mg/kgの単回投与で静脈内投与した造影剤RF1311に関する薬物動態パラメータを、下の表1に示す。
【表1】
【0142】
30、60、120、および300mg/kgのレベルでRF1311を静脈内に単回投与した後に、異常な観察は認められなかった。臨床所見、体重および解剖検査の結果に基づくと、単回静脈内投与後の最大耐用量は、300mg/kgを上回っていた。
【0143】
実施例12−RF1311で処置したラットにおける、異なる3種MRI条件下での梗塞組織および正常組織との間のコントラスト比の24時間にわたる経時的変化
体重300〜400グラムのラットを、ペントバルビタール(ネンブタール;Sanofi Sante Animale、ブリュッセル、ベルギー)を40mg/kgの用量で腹腔内注射して麻酔した。開腹術の下で、右肝葉の門部を3時間一時的にクランプすることによって、再灌流による部分的な肝梗塞(RPLI)を誘発した。クランプ解除による再灌流の後、腹腔を二層縫合で閉じ、ラットを外科手術後6時間放置して回復させ、続いてMRI研究を行った。各ラットは、梗塞肝組織および正常肝組織の両方が同じ動物内に共存していることから、個体内比較するためのそれ自体の対照として使用した。
【0144】
MRI研究のために、RF1311を40mg/kgの用量で尾動脈を介する単回瞬時投与によって投与した。3種の異なるMRI条件下、すなわち、ターボスピンエコー(TSE)、スピンエコー(SE)、および反復回転(IR)で、コントラスト比を24時間にわたって計測した。
図6に示す結果から分かるように、24時間後のコントラスト比は1.2〜1.4の間であることから、正常組織に対して死滅組織を区別する化合物RF1311の能力が実証される。
【0145】
実施例13−心筋梗塞
ウサギにおいて心筋梗塞(MI)を、開胸冠状動脈(CA)手術および閉胸CA再灌流によって誘発した。簡単に述べると、鎮静または麻酔から手技を開始し、気管内挿管および機械呼吸を行い、続いて左の第4−第5肋間開胸術を行った。心膜を開いた後、心臓をわずかに逆時計周りに回転させて、左回旋(LCx)CAを露出させた。2−0絹縫合糸を左心耳の端部の下3mmのレベルでLCxの下に入れ、縫合糸を単結紮で結ぶことによってMIを誘発し、取り外し可能な縫合糸の結び目からの端部を、閉じた傷口を通して胸部の外に出したままとした。CA閉塞から90分後、閉胸状態で露出した縫合糸の端部を引き、それによって取り外し可能な結び目を再び開放することによって、再灌流MIを誘発した。
【0146】
心筋虚血後の組織成分の死後の測定をさらに容易にするために、一針の縫合であるが2本の縫合糸を用いる手法を考案した。簡単に述べると、端部に2つのバネ穴を有する強弯の鋭利な三角針(Sutura,Inc.ファウンテンバレー、CA、米国)を使用した。2本の絹縫合糸は、別々の目に容易に通すことができた。すなわち、太い方の2−0縫合糸は、再灌流させる場合に除去できるCA結紮に使用し、細い方の5−0のものは、死後の多機能分析を行うために、後でex vivoでCA再閉塞を行うための予備とした。
【0147】
化合物RF1311を、40mg/kgで、瞬時投与によって5分間にわたって投与した。下に説明するような心臓組織のMRI画像(in vivoおよびex vivo)および写真を得た。
【0148】
化合物RF1311の試験の結果を
図7〜10に示す。
図7は、RF1311を注射してから24時間後にin vivoで撮った心臓のスライスを示すMRI画像である。心臓を取り出し、解剖して、
図7の画像に対応する心臓組織のスライスを得た。
図8は、ex vivoで撮った心臓組織のMRI画像である。
図9は、
図8のMRIに使用された心臓組織の写真である。
図10は、組織を塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)で染色して、壊死組織を白色の領域として示すようにした後の、
図8および9に使用された心臓組織の写真である。壊死組織は矢印によって特定され、
図7〜9の矢印は同じ位置を指し示す。
図9に示す染色されていない組織では明白な心臓の損傷が分からないが、
図7および8に示すように、壊死組織はRF1311によって染色される。
【0149】
上述の実施形態は例に過ぎないことを意図している。当業者であれば、以下に添付の特許請求の範囲によってのみ定義される範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に、改変、修正、および変形を行うことができる。