(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記キメラMHC IIαポリペプチドの前記ヒト細胞外部分が、HLA−DR、HLA−DQ及びHLA−DPの任意のα鎖遺伝子からなる群から選択されるヒト白血球抗原(HLA)クラスII遺伝子にコードされ、
前記キメラMHC IIβポリペプチドの前記ヒト細胞外部分が、HLA−DR、HLA−DQ及びHLA−DPの任意のβ鎖遺伝子からなる群から選択されるHLAクラスII遺伝子にコードされ、
前記キメラMHC Iポリペプチドの前記細胞外部分が、ヒトHLA−A遺伝子、ヒトHLA−B遺伝子またはヒトHLA−C遺伝子にコードされる、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の遺伝子改変マウス。
前記非再配列TCRα可変領域配列が、ヒトVα遺伝子セグメントの完全なレパートリ及びヒトJα遺伝子セグメントの完全なレパートリを含み、かつ/又は前記非再配列TCRβ可変領域配列が、ヒトVβ遺伝子セグメントの完全なレパートリ、ヒトDβ遺伝子セグメントの完全なレパートリ、及びヒトJβ遺伝子セグメントの完全なレパートリを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の遺伝子改変マウス。
前記キメラヒト/マウスMHC IIαポリペプチドが、キメラHLA−DR/H−2Eαポリペプチドであり、前記キメラMHC IIβポリペプチドが、キメラヒト/マウスHLA−DR/H−2Eβポリペプチドであり、前記キメラMHC Iポリペプチドが、キメラヒト/マウスHLA−A/H−2Kポリペプチドであり、前記マウスが、HLA−A/H−2K及びHLA−DR/H−2Eタンパク質を発現する、請求項20に記載の遺伝子改変マウス。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】ヒト化TCRアルファ及びベータタンパク質、ヒト化β2ミクログロブリンと複合体化したヒト化MHCクラスI、並びにヒト化CD8ヘテロ二量体を含むヒト化T細胞受容体複合体(左パネル)と、ヒト化TCRアルファ及びベータタンパク質、ヒト化MHCクラスIIヘテロ二量体、並びにヒト化CD4を含むT細胞受容体複合体(右パネル)との模式図(ノンスケール)である。ヒト化MHCにより提示された抗原は、円として示される。マウス領域は、塗りつぶした形状として示され、一方、ヒト領域は、縞状の形状として示される。
【0038】
【
図2A】例示的なキメラMHC I及びMHC II座、例えば、キメラHLA−A2/H−2K座(
図2A)、キメラHLA−DR2/H−2E座(
図2B)、及びヒト化β2M座(
図2C)の模式図(ノンスケール)である。特に断らない限り、ヒト配列は、塗りつぶしていない形状として示され、マウス配列は、塗りつぶした形状として示される。縞状の形状は、内在性座ではないマウス系統から得られたH−2Eのエキソン1を表わす(実施例1.3及び
図3Bを参照のこと)。loxPが導入されたネオマイシンホスホトランスフェラーゼカセットは、矢印の標識で示される。
【
図2B】例示的なキメラMHC I及びMHC II座、例えば、キメラHLA−A2/H−2K座(
図2A)、キメラHLA−DR2/H−2E座(
図2B)、及びヒト化β2M座(
図2C)の模式図(ノンスケール)である。特に断らない限り、ヒト配列は、塗りつぶしていない形状として示され、マウス配列は、塗りつぶした形状として示される。縞状の形状は、内在性座ではないマウス系統から得られたH−2Eのエキソン1を表わす(実施例1.3及び
図3Bを参照のこと)。loxPが導入されたネオマイシンホスホトランスフェラーゼカセットは、矢印の標識で示される。
【
図2C】例示的なキメラMHC I及びMHC II座、例えば、キメラHLA−A2/H−2K座(
図2A)、キメラHLA−DR2/H−2E座(
図2B)、及びヒト化β2M座(
図2C)の模式図(ノンスケール)である。特に断らない限り、ヒト配列は、塗りつぶしていない形状として示され、マウス配列は、塗りつぶした形状として示される。縞状の形状は、内在性座ではないマウス系統から得られたH−2Eのエキソン1を表わす(実施例1.3及び
図3Bを参照のこと)。loxPが導入されたネオマイシンホスホトランスフェラーゼカセットは、矢印の標識で示される。
【0039】
【
図3A】ヒト化MHC I及びMHC II遺伝子を含むヒト化MHC座を生じさせる戦略を示す図である。
図3Aに示された特定の実施形態では、生じたマウスのMHC座は、キメラHLA−A2/H−2K及びHLA−DR2/H−2E配列(H2−K
+/1666 MHC−II
+/6112)を含み、H2−D配列(H2−D
+/delete)及びH−2A配列を欠いている(遺伝子操作スキームにより、H−2Aの欠失ももたらされる。実施例1.2を参照のこと)。ヒト化の各段階においてES細胞に導入された大型標的化ベクター(LTVEC)又はCreリコンビナーゼ構築物は、矢印の右側に示される。MAID又は4桁の数字は、改変されたアレルIDナンバーを意味する。
図3Bは、例示的なHLA−DR2/H−2E大型標的化ベクターの模式図(ノンスケール)である。特に断らない限り、ヒト配列は、塗りつぶしていない形状として示され、マウス配列は、塗りつぶした形状として示される。縞状の形状は、内在性座ではないマウス系統から得られたH−2Eのエキソン1を表わす(実施例1.3を参照のこと)。loxPが導入されたヒグロマイシンカセットは、矢印の標識として示される。
図3Cは、キメラヒト/マウスMHC座の例示的な遺伝子型の模式図(ノンスケール)である(
**は、全てのマウス系統に存在しない、例えば、C57BL/6又は129マウス系統に存在しないH−2L遺伝子を表わす)。この場合、内在性マウスH−2K及びH−2E座はそれぞれ、キメラヒト/マウスHLA−A2/H−2K及びHLA−DR2/H−2E座(縞状の形状)により置き換えられ、H−2A及びH−2D座は欠失され(破線で囲われた塗りつぶしていない形状)、残りの座は、内在性マウス遺伝子である(実線で囲われた濃い形状)。
【
図3B】ヒト化MHC I及びMHC II遺伝子を含むヒト化MHC座を生じさせる戦略を示す図である。
図3Aに示された特定の実施形態では、生じたマウスのMHC座は、キメラHLA−A2/H−2K及びHLA−DR2/H−2E配列(H2−K
+/1666 MHC−II
+/6112)を含み、H2−D配列(H2−D
+/delete)及びH−2A配列を欠いている(遺伝子操作スキームにより、H−2Aの欠失ももたらされる。実施例1.2を参照のこと)。ヒト化の各段階においてES細胞に導入された大型標的化ベクター(LTVEC)又はCreリコンビナーゼ構築物は、矢印の右側に示される。MAID又は4桁の数字は、改変されたアレルIDナンバーを意味する。
図3Bは、例示的なHLA−DR2/H−2E大型標的化ベクターの模式図(ノンスケール)である。特に断らない限り、ヒト配列は、塗りつぶしていない形状として示され、マウス配列は、塗りつぶした形状として示される。縞状の形状は、内在性座ではないマウス系統から得られたH−2Eのエキソン1を表わす(実施例1.3を参照のこと)。loxPが導入されたヒグロマイシンカセットは、矢印の標識として示される。
図3Cは、キメラヒト/マウスMHC座の例示的な遺伝子型の模式図(ノンスケール)である(
**は、全てのマウス系統に存在しない、例えば、C57BL/6又は129マウス系統に存在しないH−2L遺伝子を表わす)。この場合、内在性マウスH−2K及びH−2E座はそれぞれ、キメラヒト/マウスHLA−A2/H−2K及びHLA−DR2/H−2E座(縞状の形状)により置き換えられ、H−2A及びH−2D座は欠失され(破線で囲われた塗りつぶしていない形状)、残りの座は、内在性マウス遺伝子である(実線で囲われた濃い形状)。
【
図3C】ヒト化MHC I及びMHC II遺伝子を含むヒト化MHC座を生じさせる戦略を示す図である。
図3Aに示された特定の実施形態では、生じたマウスのMHC座は、キメラHLA−A2/H−2K及びHLA−DR2/H−2E配列(H2−K
+/1666 MHC−II
+/6112)を含み、H2−D配列(H2−D
+/delete)及びH−2A配列を欠いている(遺伝子操作スキームにより、H−2Aの欠失ももたらされる。実施例1.2を参照のこと)。ヒト化の各段階においてES細胞に導入された大型標的化ベクター(LTVEC)又はCreリコンビナーゼ構築物は、矢印の右側に示される。MAID又は4桁の数字は、改変されたアレルIDナンバーを意味する。
図3Bは、例示的なHLA−DR2/H−2E大型標的化ベクターの模式図(ノンスケール)である。特に断らない限り、ヒト配列は、塗りつぶしていない形状として示され、マウス配列は、塗りつぶした形状として示される。縞状の形状は、内在性座ではないマウス系統から得られたH−2Eのエキソン1を表わす(実施例1.3を参照のこと)。loxPが導入されたヒグロマイシンカセットは、矢印の標識として示される。
図3Cは、キメラヒト/マウスMHC座の例示的な遺伝子型の模式図(ノンスケール)である(
**は、全てのマウス系統に存在しない、例えば、C57BL/6又は129マウス系統に存在しないH−2L遺伝子を表わす)。この場合、内在性マウスH−2K及びH−2E座はそれぞれ、キメラヒト/マウスHLA−A2/H−2K及びHLA−DR2/H−2E座(縞状の形状)により置き換えられ、H−2A及びH−2D座は欠失され(破線で囲われた塗りつぶしていない形状)、残りの座は、内在性マウス遺伝子である(実線で囲われた濃い形状)。
【0040】
【
図4A】マウスTCRα座のヒト化についての、漸進的な戦略を示す図である(ノンスケール)。この場合、TCRα可変領域遺伝子セグメントは、欠失したマウス座(MAID1540)の最初のヒト化の上流で連続的に付加される。マウス配列は、塗りつぶした形状により示される。ヒト配列は、塗りつぶしていない形状により示される。MAIDは、改変されたアレルIDナンバーを意味する。TRAV=TCR Vαセグメント、TRAJ=TCR Jαセグメント(hTRAJ=ヒトTRAJ)、TRAC=TCR Cαドメイン、TCRD=TCRδ。
【
図4B】マウスTCRβ座のヒト化についての、漸進的な戦略を示す図である(ノンスケール)。この場合、TCRβ可変領域遺伝子セグメントは、欠失したマウスTCRβ可変座に連続的に付加される。マウス配列は、塗りつぶした形状により示される。ヒト配列は、塗りつぶしていない形状により示される。MAIDは、改変されたアレルIDナンバーを意味する。TRBV又はTCRBV=TCRβVセグメント。
【0041】
【
図5A】キメラCD4座の模式図(ノンスケール)を示す図である。ヒトコードエキソンは、縞状の形状により表される。マウスコードエキソンは、塗りつぶした形状により表される。非コードエキソンは、塗りつぶしていない形状により表される。免疫グロブリン様ドメイン(Ig)、膜貫通(TM)、細胞質(CYT)、及びシグナルペプチド(シグナル)コードエキソン、並びに、3’非翻訳領域(UTR)が示される。loxPが導入された(loxP)ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(Pgk−neo)カセットは、矢印の標識で示される。
【
図5B】キメラCD8a及びCD8b座の模式図(ノンスケール)を示す図である。ヒトコードエキソンは、縞状の形状により表される。マウスコードエキソンは、塗りつぶした形状により表される。非コードエキソンは、塗りつぶしていない形状により表される。免疫グロブリン様ドメイン(IgV)、膜貫通(TM)、細胞質(CYT)、及びシグナルペプチド(シグナル)コードエキソン、並びに3’非翻訳領域(UTR)が示される。loxPが導入された(loxP)ヒグロマイシン(Hyg)及びネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(Pgk−neo)カセットは、矢印の標識で示される。
【0042】
【
図6A】コントロールマウス又は、ヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された胸腺細胞の、シングレットでゲーティングされ、(
図6A)抗マウスCD19抗体及び抗マウスCD3抗体、(
図6B)抗マウスCD19抗体及び抗マウスF4/80抗体、又は(
図6C)抗マウスCD8α抗体及び抗マウスCD4抗体(左パネル)若しくは抗ヒトCD8α抗体及び抗ヒトCD4抗体(右パネル)により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【
図6B】コントロールマウス又は、ヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された胸腺細胞の、シングレットでゲーティングされ、(
図6A)抗マウスCD19抗体及び抗マウスCD3抗体、(
図6B)抗マウスCD19抗体及び抗マウスF4/80抗体、又は(
図6C)抗マウスCD8α抗体及び抗マウスCD4抗体(左パネル)若しくは抗ヒトCD8α抗体及び抗ヒトCD4抗体(右パネル)により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【
図6C】コントロールマウス又は、ヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された胸腺細胞の、シングレットでゲーティングされ、(
図6A)抗マウスCD19抗体及び抗マウスCD3抗体、(
図6B)抗マウスCD19抗体及び抗マウスF4/80抗体、又は(
図6C)抗マウスCD8α抗体及び抗マウスCD4抗体(左パネル)若しくは抗ヒトCD8α抗体及び抗ヒトCD4抗体(右パネル)により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【0043】
【
図7A】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された胸腺細胞の、CD19+細胞、F4/80+細胞、又はCD3+細胞でゲーティングされ、(
図7A、7B)抗ヒトB2M抗体又は抗マウスH−2D抗体、(
図7C、
図7D)抗HLA−A2抗体又は抗HLA−DR抗体、(
図7E、
図7F)抗H−2D抗体及び抗I
AI
E抗体、又は、(
図7G)抗マウスCD4抗体及び抗ヒトCD4抗体(上側)、抗マウスCD8α抗体及び抗ヒトCD8α抗体(中央)、並びに抗マウスCD8β抗体及び抗ヒトCD8β抗体(下側)により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【
図7B】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された胸腺細胞の、CD19+細胞、F4/80+細胞、又はCD3+細胞でゲーティングされ、(
図7A、7B)抗ヒトB2M抗体又は抗マウスH−2D抗体、(
図7C、
図7D)抗HLA−A2抗体又は抗HLA−DR抗体、(
図7E、
図7F)抗H−2D抗体及び抗I
AI
E抗体、又は、(
図7G)抗マウスCD4抗体及び抗ヒトCD4抗体(上側)、抗マウスCD8α抗体及び抗ヒトCD8α抗体(中央)、並びに抗マウスCD8β抗体及び抗ヒトCD8β抗体(下側)により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【
図7C】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された胸腺細胞の、CD19+細胞、F4/80+細胞、又はCD3+細胞でゲーティングされ、(
図7A、7B)抗ヒトB2M抗体又は抗マウスH−2D抗体、(
図7C、
図7D)抗HLA−A2抗体又は抗HLA−DR抗体、(
図7E、
図7F)抗H−2D抗体及び抗I
AI
E抗体、又は、(
図7G)抗マウスCD4抗体及び抗ヒトCD4抗体(上側)、抗マウスCD8α抗体及び抗ヒトCD8α抗体(中央)、並びに抗マウスCD8β抗体及び抗ヒトCD8β抗体(下側)により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【
図7D】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された胸腺細胞の、CD19+細胞、F4/80+細胞、又はCD3+細胞でゲーティングされ、(
図7A、7B)抗ヒトB2M抗体又は抗マウスH−2D抗体、(
図7C、
図7D)抗HLA−A2抗体又は抗HLA−DR抗体、(
図7E、
図7F)抗H−2D抗体及び抗I
AI
E抗体、又は、(
図7G)抗マウスCD4抗体及び抗ヒトCD4抗体(上側)、抗マウスCD8α抗体及び抗ヒトCD8α抗体(中央)、並びに抗マウスCD8β抗体及び抗ヒトCD8β抗体(下側)により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【
図7E】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された胸腺細胞の、CD19+細胞、F4/80+細胞、又はCD3+細胞でゲーティングされ、(
図7A、7B)抗ヒトB2M抗体又は抗マウスH−2D抗体、(
図7C、
図7D)抗HLA−A2抗体又は抗HLA−DR抗体、(
図7E、
図7F)抗H−2D抗体及び抗I
AI
E抗体、又は、(
図7G)抗マウスCD4抗体及び抗ヒトCD4抗体(上側)、抗マウスCD8α抗体及び抗ヒトCD8α抗体(中央)、並びに抗マウスCD8β抗体及び抗ヒトCD8β抗体(下側)により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【
図7F】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された胸腺細胞の、CD19+細胞、F4/80+細胞、又はCD3+細胞でゲーティングされ、(
図7A、7B)抗ヒトB2M抗体又は抗マウスH−2D抗体、(
図7C、
図7D)抗HLA−A2抗体又は抗HLA−DR抗体、(
図7E、
図7F)抗H−2D抗体及び抗I
AI
E抗体、又は、(
図7G)抗マウスCD4抗体及び抗ヒトCD4抗体(上側)、抗マウスCD8α抗体及び抗ヒトCD8α抗体(中央)、並びに抗マウスCD8β抗体及び抗ヒトCD8β抗体(下側)により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【
図7G】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された胸腺細胞の、CD19+細胞、F4/80+細胞、又はCD3+細胞でゲーティングされ、(
図7A、7B)抗ヒトB2M抗体又は抗マウスH−2D抗体、(
図7C、
図7D)抗HLA−A2抗体又は抗HLA−DR抗体、(
図7E、
図7F)抗H−2D抗体及び抗I
AI
E抗体、又は、(
図7G)抗マウスCD4抗体及び抗ヒトCD4抗体(上側)、抗マウスCD8α抗体及び抗ヒトCD8α抗体(中央)、並びに抗マウスCD8β抗体及び抗ヒトCD8β抗体(下側)により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【0044】
【
図8】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)を含むマウスから単離された胸腺細胞の、CD3
+CD4
+細胞でゲーティングされ、抗マウスFoxP3抗体及び抗マウスCD25抗体により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【0045】
【
図9A】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された脾細胞の、シングレットにCD3+細胞、CD4+ T細胞、又はCD8+ T細胞でゲーティングされ、(
図9A)抗マウスCD19及び抗マウスCD3抗体、(
図9B)抗マウスCD19及び抗マウスF4/80抗体、又は(
図9C)抗マウスCD4及び抗マウスCD8α抗体(左)若しくは抗ヒトCD4及び抗ヒトCD8α抗体(右)、又は(
図9D、
図9E)抗マウスCD44及び抗マウスCD62L抗体により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【
図9B】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された脾細胞の、シングレットにCD3+細胞、CD4+ T細胞、又はCD8+ T細胞でゲーティングされ、(
図9A)抗マウスCD19及び抗マウスCD3抗体、(
図9B)抗マウスCD19及び抗マウスF4/80抗体、又は(
図9C)抗マウスCD4及び抗マウスCD8α抗体(左)若しくは抗ヒトCD4及び抗ヒトCD8α抗体(右)、又は(
図9D、
図9E)抗マウスCD44及び抗マウスCD62L抗体により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【
図9C】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された脾細胞の、シングレットにCD3+細胞、CD4+ T細胞、又はCD8+ T細胞でゲーティングされ、(
図9A)抗マウスCD19及び抗マウスCD3抗体、(
図9B)抗マウスCD19及び抗マウスF4/80抗体、又は(
図9C)抗マウスCD4及び抗マウスCD8α抗体(左)若しくは抗ヒトCD4及び抗ヒトCD8α抗体(右)、又は(
図9D、
図9E)抗マウスCD44及び抗マウスCD62L抗体により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【
図9D】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された脾細胞の、シングレットにCD3+細胞、CD4+ T細胞、又はCD8+ T細胞でゲーティングされ、(
図9A)抗マウスCD19及び抗マウスCD3抗体、(
図9B)抗マウスCD19及び抗マウスF4/80抗体、又は(
図9C)抗マウスCD4及び抗マウスCD8α抗体(左)若しくは抗ヒトCD4及び抗ヒトCD8α抗体(右)、又は(
図9D、
図9E)抗マウスCD44及び抗マウスCD62L抗体により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【
図9E】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された脾細胞の、シングレットにCD3+細胞、CD4+ T細胞、又はCD8+ T細胞でゲーティングされ、(
図9A)抗マウスCD19及び抗マウスCD3抗体、(
図9B)抗マウスCD19及び抗マウスF4/80抗体、又は(
図9C)抗マウスCD4及び抗マウスCD8α抗体(左)若しくは抗ヒトCD4及び抗ヒトCD8α抗体(右)、又は(
図9D、
図9E)抗マウスCD44及び抗マウスCD62L抗体により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【0046】
【
図10A】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された脾細胞の、CD19+細胞、F4/80+細胞、又はCD3+細胞でゲーティングされ、(
図10A、10B)抗ヒトB2M又は抗マウスH−2D抗体、(
図10C、
図10D)抗HLA−2A又は抗HLA−DR抗体、(
図10E、
図10F)抗H−2D及びI
AI
E抗体、又は(
図10G)抗マウスCD4及び抗ヒトCD4抗体(上側)、抗マウスCD8α及び抗ヒトCD8β抗体(中央)、並びに抗マウスCD8β及び抗ヒトCD8β抗体(下側)により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【
図10B】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された脾細胞の、CD19+細胞、F4/80+細胞、又はCD3+細胞でゲーティングされ、(
図10A、10B)抗ヒトB2M又は抗マウスH−2D抗体、(
図10C、
図10D)抗HLA−2A又は抗HLA−DR抗体、(
図10E、
図10F)抗H−2D及びI
AI
E抗体、又は(
図10G)抗マウスCD4及び抗ヒトCD4抗体(上側)、抗マウスCD8α及び抗ヒトCD8β抗体(中央)、並びに抗マウスCD8β及び抗ヒトCD8β抗体(下側)により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【
図10C】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された脾細胞の、CD19+細胞、F4/80+細胞、又はCD3+細胞でゲーティングされ、(
図10A、10B)抗ヒトB2M又は抗マウスH−2D抗体、(
図10C、
図10D)抗HLA−2A又は抗HLA−DR抗体、(
図10E、
図10F)抗H−2D及びI
AI
E抗体、又は(
図10G)抗マウスCD4及び抗ヒトCD4抗体(上側)、抗マウスCD8α及び抗ヒトCD8β抗体(中央)、並びに抗マウスCD8β及び抗ヒトCD8β抗体(下側)により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【
図10D】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された脾細胞の、CD19+細胞、F4/80+細胞、又はCD3+細胞でゲーティングされ、(
図10A、10B)抗ヒトB2M又は抗マウスH−2D抗体、(
図10C、
図10D)抗HLA−2A又は抗HLA−DR抗体、(
図10E、
図10F)抗H−2D及びI
AI
E抗体、又は(
図10G)抗マウスCD4及び抗ヒトCD4抗体(上側)、抗マウスCD8α及び抗ヒトCD8β抗体(中央)、並びに抗マウスCD8β及び抗ヒトCD8β抗体(下側)により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【
図10E】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された脾細胞の、CD19+細胞、F4/80+細胞、又はCD3+細胞でゲーティングされ、(
図10A、10B)抗ヒトB2M又は抗マウスH−2D抗体、(
図10C、
図10D)抗HLA−2A又は抗HLA−DR抗体、(
図10E、
図10F)抗H−2D及びI
AI
E抗体、又は(
図10G)抗マウスCD4及び抗ヒトCD4抗体(上側)、抗マウスCD8α及び抗ヒトCD8β抗体(中央)、並びに抗マウスCD8β及び抗ヒトCD8β抗体(下側)により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【
図10F】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された脾細胞の、CD19+細胞、F4/80+細胞、又はCD3+細胞でゲーティングされ、(
図10A、10B)抗ヒトB2M又は抗マウスH−2D抗体、(
図10C、
図10D)抗HLA−2A又は抗HLA−DR抗体、(
図10E、
図10F)抗H−2D及びI
AI
E抗体、又は(
図10G)抗マウスCD4及び抗ヒトCD4抗体(上側)、抗マウスCD8α及び抗ヒトCD8β抗体(中央)、並びに抗マウスCD8β及び抗ヒトCD8β抗体(下側)により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【
図10G】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスから単離された脾細胞の、CD19+細胞、F4/80+細胞、又はCD3+細胞でゲーティングされ、(
図10A、10B)抗ヒトB2M又は抗マウスH−2D抗体、(
図10C、
図10D)抗HLA−2A又は抗HLA−DR抗体、(
図10E、
図10F)抗H−2D及びI
AI
E抗体、又は(
図10G)抗マウスCD4及び抗ヒトCD4抗体(上側)、抗マウスCD8α及び抗ヒトCD8β抗体(中央)、並びに抗マウスCD8β及び抗ヒトCD8β抗体(下側)により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【0047】
【
図11】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)を含むマウスから単離された脾細胞の、CD3
+CD4
+細胞でゲーティングされ、抗マウスFoxP3及び抗マウスCD25抗体により染色された、FACSコンタープロットを示す図である。
【0048】
【
図12】コントロールマウス、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスからの単離、並びにペプチドの不存在下(200kの細胞のみ;x軸)又は10μg/mL若しくは1μg/mL MAGE−A3ペプチドの存在下(x軸)でのインキュベーション後での、酵素結合免疫吸着スポットアッセイにおける、IFN−γを生成する脾細胞数(ウェルあたりのスポット(平均+SD);y軸)を示す図である。
【0049】
【
図13A】コントロール、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスのいずれかにおける、急性アームストロング株のウイルス感染の進行を示す図である。実験のタイムラインは、図の上側に示され、両マウス系統についての感染後の種々の日数でのウイルス力価の測定は、下側のグラフに示される。
【
図13B】コントロール、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスのいずれかにおける、慢性クローン13系統のウイルス感染の進行を示す図である。実験のタイムラインは、図の上側に示され、両マウス系統についての感染後21日目でのウイルス力価の測定は、下側のグラフに示される。未感染若しくは慢性感染TM I/II B C4/8又はコントロールB6マウスからのT細胞を、抗PD1抗体、抗Lag3抗体、及び抗Tim3抗体(
図13C;x軸)により染色した。この図は、陽性染色細胞の定量を示す図である(陽性細胞(%);y軸)。
【
図13C】コントロール、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウスのいずれかにおける、慢性クローン13系統のウイルス感染の進行を示す図である。実験のタイムラインは、図の上側に示され、両マウス系統についての感染後21日目でのウイルス力価の測定は、下側のグラフに示される。未感染若しくは慢性感染TM I/II B C4/8又はコントロールB6マウスからのT細胞を、抗PD1抗体、抗Lag3抗体、及び抗Tim3抗体(
図13C;x軸)により染色した。この図は、陽性染色細胞の定量を示す図である(陽性細胞(%);y軸)。
【0050】
【
図14】先の急性アームストロング株感染後の、コントロール又はTM I/II B C4/8マウスのいずれかにおける、慢性クローン13系統ウイルス感染の進行を示す図である。実験のタイムラインは、図の上側に示され、感染後31日目でのウイルス力価の測定は、下側のグラフに示される。モック感染マウスを、更なるコントロールとして、実験に含めた。
【0051】
【
図15A】HLA−A2限定(GPC10−18;N69−77;Z49−58)、H2D
b限定(GP33−41)、オボアルブミン、又はインキュベーションのみのLCMVペプチドに対する応答においてIFN−γを生成し、コントロール動物(
図15A)、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウス(
図15B)のいずれかから単離された、CD8
+細胞数を示す図である(y軸;IFN−γ陽性細胞)。各マウスを、モック感染させ(mock;各群n=1)、又は急性アームストロング株感染(Arm;各群n=3)させた。ヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウス又はコントロールB6動物における、感染のタイムコース(感染後日数;x軸)中に、示されたペプチド(OVA、GP33、NP69、GPC10、GPC447、又はZ49)での刺激後のIFNγ+CD8+リンパ球の割合(%)(y軸)は、
図15C及び
図15Dにそれぞれ示される。
【
図15B】HLA−A2限定(GPC10−18;N69−77;Z49−58)、H2D
b限定(GP33−41)、オボアルブミン、又はインキュベーションのみのLCMVペプチドに対する応答においてIFN−γを生成し、コントロール動物(
図15A)、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウス(
図15B)のいずれかから単離された、CD8
+細胞数を示す図である(y軸;IFN−γ陽性細胞)。各マウスを、モック感染させ(mock;各群n=1)、又は急性アームストロング株感染(Arm;各群n=3)させた。ヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウス又はコントロールB6動物における、感染のタイムコース(感染後日数;x軸)中に、示されたペプチド(OVA、GP33、NP69、GPC10、GPC447、又はZ49)での刺激後のIFNγ+CD8+リンパ球の割合(%)(y軸)は、
図15C及び
図15Dにそれぞれ示される。
【
図15C】HLA−A2限定(GPC10−18;N69−77;Z49−58)、H2D
b限定(GP33−41)、オボアルブミン、又はインキュベーションのみのLCMVペプチドに対する応答においてIFN−γを生成し、コントロール動物(
図15A)、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウス(
図15B)のいずれかから単離された、CD8
+細胞数を示す図である(y軸;IFN−γ陽性細胞)。各マウスを、モック感染させ(mock;各群n=1)、又は急性アームストロング株感染(Arm;各群n=3)させた。ヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウス又はコントロールB6動物における、感染のタイムコース(感染後日数;x軸)中に、示されたペプチド(OVA、GP33、NP69、GPC10、GPC447、又はZ49)での刺激後のIFNγ+CD8+リンパ球の割合(%)(y軸)は、
図15C及び
図15Dにそれぞれ示される。
【
図15D】HLA−A2限定(GPC10−18;N69−77;Z49−58)、H2D
b限定(GP33−41)、オボアルブミン、又はインキュベーションのみのLCMVペプチドに対する応答においてIFN−γを生成し、コントロール動物(
図15A)、又はヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウス(
図15B)のいずれかから単離された、CD8
+細胞数を示す図である(y軸;IFN−γ陽性細胞)。各マウスを、モック感染させ(mock;各群n=1)、又は急性アームストロング株感染(Arm;各群n=3)させた。ヒト化MHC I、MHC IIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2M(TM I/II B C4/8)座を含むマウス又はコントロールB6動物における、感染のタイムコース(感染後日数;x軸)中に、示されたペプチド(OVA、GP33、NP69、GPC10、GPC447、又はZ49)での刺激後のIFNγ+CD8+リンパ球の割合(%)(y軸)は、
図15C及び
図15Dにそれぞれ示される。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本明細書において、ヒト化T細胞共受容体(例えば、ヒト化CD4及び/又はCD8(例えば、CD8α及び/又はCD8β))、ヒト化T細胞共受容体に結合するヒト若しくはヒト化主要組織適合複合体(例えば、ヒト又はヒト化MHC II(例えば、MHC IIα及び/又はMHC IIβ鎖)及び/又はMHC I(例えば、MHC Iα)、及び場合により、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリン)を発現するように遺伝子操作された非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)、並びに胚、組織、及びそれらを発現する細胞が開示される。本明細書で開示された非ヒト動物の免疫系の細胞アームの発達は、コントロール動物と同等である。例えば、胸腺及び脾臓は、同様の絶対数の胸腺細胞及びCD3+細胞を含む。このことは、ヒトTCR(α及びβ)とキメラヒト/マウスMHC I分子との両方を含むように改変された他の非ヒト動物とは全く対照的である。例えば、Li(2010)Nature Medicine 16:1029〜1035及び補足資料を参照のこと。このような動物は、野生型コントロール動物だけでなく、ヒトTCRのみで改変された動物、及びキメラヒト/マウスMHC I分子のみで改変された動物と比較して、T細胞集団の減少を示した(上記文献)。したがって、本明細書において、ヒト化CD4共受容体及びヒト化MHC II及び/又はヒト化CD8共受容体及びヒト化MHC I、並びに場合により、ヒト化TCRを共発現するように操作された非ヒト動物が提供される。少なくとも1つのヒト化T細胞共受容体(例えば、ヒト化CD4及び/又はCD8)、ヒト化T細胞共受容体と会合する少なくとも1つのヒト化MHC(例えば、ヒト化CD4及び/又はCD8とそれぞれ会合するヒト化MHC II及び/又はMHC I)、及び/又はヒト化TCRを発現する遺伝子操作動物を生産するための方法も提供される。ヒトの治療剤を開発するために、実質的にヒト化されたT細胞免疫応答を開始する遺伝子操作動物を使用するための方法も提供される。
実質的にヒト化されたT細胞免疫応答
【0053】
本明細書において、実質的にヒト化されたT細胞免疫応答を開始するように遺伝子改変された非ヒト動物が開示される。本明細書で開示されたマウスは、少なくとも1つのヒト若しくはヒト化T細胞共受容体、少なくとも1つのヒト若しくはヒト化T細胞共受容体と会合することができる少なくとも1つのヒト若しくはヒト化主要組織適合複合体(MHC)、及び/又はヒト若しくはヒト化T細胞受容体(TCR)を発現し、そのヒト又はヒト化T細胞受容体は、好ましくは、ヒト又はヒト化T細胞共受容体と会合しているヒト又はヒト化MHCに関して提示された抗原を認識することができ、ヒト又はヒト化TCRを発現する非ヒト細胞、例えば、非ヒトT細胞に活性化シグナルを提供することができる。ヒト又はヒト化T細胞共受容体、ヒト若しくはヒト化TCR、及び/又はヒト若しくはヒト化MHCは、非ヒト動物のゲノムによりコードされてもよい。好ましい実施形態では、抗原による免疫化に基づいて、非ヒト動物は、抗原のHLA限定エピトープを、ヒトTCR遺伝子セグメント、例えば、ヒトTCRαVセグメント、ヒトTCRαJセグメント、ヒトTCRβVセグメント、ヒトTCRβDセグメント、及び/又はヒトTCRβJセグメントから得られるTCRに提示する。
【0054】
したがって、本発明には、ゲノムが、(例えば、内在性座において)ヒト化T細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD4又はCD8ポリペプチド)をコードするヌクレオチド配列であって、キメラT細胞共受容体ポリペプチドが、本明細書に記載されたアミノ酸配列の保存的アミノ酸置換を含む、ヌクレオチド配列、及び/又はヒト化T細胞共受容体ポリペプチドと会合するヒト化MHCポリペプチドをコードする核酸配列であって、ヒト化MHCポリペプチドが、本明細書に記載されたアミノ酸配列の保存的アミノ酸置換を含む、核酸配列を含む、遺伝子改変非ヒト動物が包含される。
【0055】
保存的アミノ酸置換は、類似する化学的特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する側鎖R基を有する別のアミノ酸残基による、アミノ酸残基の置換を含む。保存的アミノ酸置換は、保存的置換をコードするヌクレオチド変化を導入するようにヌクレオチド配列を改変することによって実現することができる。一般的には、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の対象となる機能性、例えば、MHC II又はMHC Iそれぞれと会合し、例えば、これらに結合し、例えば、MHC提示抗原に対するTCRの感度を向上させることができるCD4又はCD8の能力を、実質的に変化させないであろう。類似する化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸の基の例は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンなどの脂肪族側鎖;セリン及びスレオニンなどの脂肪族水酸基側鎖;アスパラギン及びグルタミンなどのアミド含有側鎖;フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンなどの芳香族側鎖;リジン、アルギニン、及びヒスチジンなどの塩基性側鎖;アスパラギン酸及びグルタミン酸などの酸性側鎖;並びにシステイン及びメチオニンなどの硫黄含有側鎖が挙げられる。保存的アミノ酸置換基としては、例えば、バリン/ロイシン/イソロイシン、フェニルアラニン/チロシン、リジン/アルギニン、アラニン/バリン、グルタミン酸/アスパラギン酸、及びアスパラギン/グルタミンが挙げられる。いくつかの実施形態では、保存的アミノ酸置換は、例えば、アラニンスキャニング突然変異で使用するように、タンパク質中の任意の天然残基と、アラニンとの置換であり得る。いくつかの実施形態では、参照により本明細書に組み込まれる、Gonnet et al.((1992)Exhaustive Matching of the Entire Protein Sequence Database,Science 256:1443〜45)に開示されたPAM250対数尤度行列内の正の値を有する保存的置換が行われる。いくつかの実施形態では、置換は、中程度の保存的置換であり、その置換はPAM250対数尤度行列内で非負値を有する。
【0056】
当業者であれば、本明細書に記載されたヒト化T細胞共受容体ポリペプチド、ヒト化MHCポリペプチド、及び/又は、TCR可変領域をコードする核酸残基に加えて、遺伝情報の縮重のために、他の核酸が、本発明のポリペプチドをコードしてもよいことを理解するであろう。したがって、そのゲノム中に、ヒト化T細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD4又はCD8ポリペプチド)をコードするヌクレオチド配列、ヒト非再配列遺伝子セグメントを含む非再配列T細胞受容体可変遺伝子座(例えば、TCRα及び/又はTCRβ)、及び/又は、保存的アミノ酸置換を含むヒト化T細胞共受容体ポリペプチドを会合することができるヒト化MHCポリペプチドをコードする核酸配列を含む遺伝子改変非ヒト動物に加えて、ゲノムが、遺伝情報の縮重のために、本明細書に記載されたものとは異なる、ヒト化T細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD4又はCD8ポリペプチド)をコードするヌクレオチド配列、ヒト非再配列遺伝子セグメントを含む非再配列T細胞受容体可変遺伝子座(例えば、TCRα及び/又はTCRβ)、及び/又は、ヒト化T細胞共受容体ポリペプチドと会合することができるヒト化MHCポリペプチドをコードする核酸配列を含む、非ヒト動物も提供される。
【0057】
配列の同一性は、ヌクレオチド及び/又はアミノ酸の配列同一性を測定するために使用できる、当該技術分野において周知の数多くの種々のアルゴリズムにより決定されてもよい。本明細書に記述されたいくつかの実施形態では、同一性は、10.0のopen gap penalty、0.1のextend gap penaltyを使用するClustalW v.1.83(slow)アライメントを用い、かつGonnet類似度マトリックス(MacVector(商標)10.0.2、MacVector Inc.,2008)を用いて決定される。配列の同一性について比較した配列の長さは、特定の配列に依存する。様々な実施形態において、同一性は、成熟タンパク質の配列をN末端からC末端まで比較することによって決定される。様々な実施形態において、キメラヒト/非ヒト配列をヒト配列に対して比較するとき、キメラヒト/非ヒト配列のヒト部分(非ヒト部分ではない)は、ヒト配列とキメラヒト/非ヒト配列のヒト部分との間の同一性のレベルを確認する目的で比較する(例えば、キメラヒト/マウスタンパク質のヒトエクトドメインをヒトタンパク質のヒトエクトドメインに対して比較する)ために使用される。
【0058】
配列、例えば、ヌクレオチド又はアミノ酸の配列への言及において、「ホモロジー」又は「相同的」という用語は、最適なアライメント及び比較に基づいて、2つの配列が、例えば、少なくとも約75%のヌクレオチド又はアミノ酸、例えば、少なくとも約80%のヌクレオチド又はアミノ酸、例えば、少なくとも約90〜95%のヌクレオチド又はアミノ酸、例えば、97%超のヌクレオチド又はアミノ酸において同一であることを意味する。当業者であれば、最適な遺伝子標的化のために、標的化構築物は、内在性DNA配列に相同なアーム(すなわち、「ホモロジーアーム」)を含有する必要があり、このため、相同組換えが、標的化構築物と標的化内在性配列との間で生じ得ることを理解するであろう。
【0059】
「操作可能に連結している」という用語は、そのように記載されたコンポーネントがその意図された方法で機能することを可能にする関係にある並置を意味する。このように、タンパク質をコードする核酸配列は、調節配列(例えばプロモータ、エンハンサ、サイレンサ配列等)に作動可能に連結させてもよく、それにより、適切な転写調節が維持される。加えて、本発明のキメラ又はヒト化タンパク質の様々な部分は、細胞中でのタンパク質の適切なフォールディング、プロセッシング、標的化、発現、及び他の機能性を保持するように操作可能に連結していてもよい。特に断らない限り、本発明のキメラ又はヒト化タンパク質の様々なドメインは、互いに操作可能に連結している。
【0060】
遺伝子置換への言及において「置換え」という用語は、外来性遺伝子材料を内在性遺伝子座に配置することにより、内在性遺伝子の全て又は一部を、オルソロガス又はホモログな核酸配列により置き換えることを意味する。以下の実施例において実証されたように、一実施形態において、マウスCD4又はCD8(CD8α及び/又はCD8β)ポリペプチドの部分をコードする内在性座の核酸配列は、ヒトCD4又はCD8(CD8α及び/又はCD8β)ポリペプチドの部分をコードするヌクレオチド配列それぞれにより置き換えられた。
【0061】
例えば、機能的なポリペプチドへの言及において、本明細書で使用する場合、「機能的な」は、ポリペプチドが天然タンパク質に通常関連する少なくとも1つの生体活性を維持していることを意味する。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、内在性座での置き換え(例えば、内在性非ヒトCD4又はCD8座での置換え)により、機能的な内在性ポリペプチドを発現することができない遺伝子座がもたらされる。
ヒト化T細胞共受容体
【0062】
本明細書において、少なくとも1つのヒト又はヒト化T細胞受容体、例えば、CD4、CD8α、及び/又はCD8βを発現している、非ヒト動物が開示される。したがって、本明細書で開示された非ヒト動物は、第1、第2、及び/又は第3のヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つを含み、それらはそれぞれ、ヒト又はヒト化CD4ポリペプチド、ヒト又はヒト化CD8αポリペプチド、及びヒト又はヒト化CD8βポリペプチドから選択される、種々のヒト又はキメラヒト/非ヒトT細胞共受容体ポリペプチドをコードする。本明細書において、第1、第2、第3の指定の使用は、本明細書で開示された非ヒト動物を、3つ全てのヌクレオチド配列が必要であると限定すると解釈されるべきではなく、又は任意の順序で、共受容体ヌクレオチド配列のいずれかが存在すると解釈されるべきである。したがって、本明細書で開示された非ヒト動物は、ヒト若しくはヒト化CD4及び/又はヒト若しくはヒト化CD8(例えば、ヒト若しくはヒト化CD8α及び/又はCD8β)ポリペプチドをコードする1つ又はそれ以上の核酸配列を含んでもよい。
【0063】
一実施形態において、本明細書で開示された非ヒト動物は、ヒト又はヒト化CD4ポリペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、本明細書で開示された非ヒト動物は、ヒト又はヒト化CD8αポリペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列と、ヒト又はヒト化CD8βポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列とを含む。別の実施形態では、本明細書で開示された非ヒト動物は、ヒト又はヒト化CD8α及びCD8βポリペプチドをコードする第1及び第2のヌクレオチド配列を含み、ヒト又はヒト化CD4ポリペプチドをコードする第3のヌクレオチド配列を更に含む。
ヒト又はヒト化CD4
【0064】
様々な実施形態において、本発明は、遺伝子改変非ヒト動物であって、そのゲノム中に、例えば、内在性CD4座において、ヒト又はヒト化CD4ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、これにより、動物が、ヒト又はヒト化CD4ポリペプチドを発現している、遺伝子改変非ヒト動物を概ね提供する。
【0065】
ヒトCD4遺伝子は、第12番染色体上に位置しており、10個のエキソンを含有すると考えられる。CD4遺伝子は、この遺伝子のエキソン2及び3によりコードされるアミノ末端疎水性シグナル配列を有するタンパク質をコードする。タンパク質は、4つの細胞外免疫グロブリン様ドメイン、Ig1〜Ig4を含み、それぞれ一般的に、D1〜D4ドメインとも呼ばれる。Maddon et al.(1987)Structure and expression of the human and mouse T4 genes,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:9155〜59。D1ドメインは、エキソン3(シグナルペプチド下流の配列)及びエキソン4によりコードされると考えられる。一方、D2、D3、及びD4は、別の各エキソン−エキソン5、6、及び7それぞれによりコードされる(
図5Aを参照のこと:D1、D2、D3、及びD4ドメインは、Ig1、Ig2、Ig3、及びIg4とそれぞれ指定された配列によりコードされる)。Littman(1987)The Structure of the CD4 and CD8 Genes,Ann.Rev.Immunol.5:561〜84;Hanna et al.(1994)Specific Expression of the Human CD4 Gene in Mature CD4+CD8− and Immature CD4+CD8+ T cells and in Macrophages of Transgenic Mice,Mol.Cell.Biol.14(2):1084〜94;Maddon et al.(上記参照)。T細胞と抗原提示細胞との間の接触領域などの高タンパク質濃度の領域において、分子は、対向するD4ドメイン間の相互作用により、ホモ二量体化する傾向がある。Zamoyska(1998)CD4 and CD8:modulators of T cell receptor recognition of antigen and of immune responses? Curr.Opin.Immunol.10:82〜87;Wu et al.(1997)Dimeric association and segmental variability in the structure of human CD4,Nature 387:527;Moldovan et al.(2002)CD4 Dimers Constitute the Functional Components Required for T Cell Activation,J.Immunol.169:6261〜68。
【0066】
CD4のD1ドメインは、免疫グロブリン可変(V)ドメインに類似しており、D2ドメインの一部と共に、例えば、MHC II共受容体結合部位において、MHC IIと結合する(会合する)と考えられる。Huang et al.(1997)Analysis of the contact sites on the CD4 Molecule with Class II MHC Molecule,J.Immunol.158:216〜25。次に、MHC IIは、MHC IIα2とβ2ドメインとの間の接合部における疎水性クレバスにおいて、T細胞共受容体CD4と相互作用する。Wang and Reinherz(2002)Structural Basis of T Cell Recognition of Peptides Bound to MHC Molecules,Molecular Immunology,38:1039〜49。
【0067】
CD4共受容体のドメインD3及びD4は、これら2つのドメインの置換によりTCRに結合するCD4の能力が抑制されるため、TCR−CD3複合体と相互作用すると考えられる。Vignali et al.(1996)The Two Membrane Proximal Domains of CD4 Interact with the T Cell Receptor,J.Exp.Med.183:2097〜2107。CD4分子は、二量体として存在し、この分子のD4ドメイン中の残り部分は、CD4二量体化を担うと考えられる。Moldovan et al.(2002)CD4 Dimers Constitute the Functional Components Required for T Cell Activation,J.Immunol.169:6261〜68。
【0068】
CD4遺伝子のエキソン8は、膜貫通ドメインをコードする。一方、この遺伝子の残り部分は、細胞質ドメインをコードする。CD4細胞質ドメインは、多くの別の機能を有する。例えば、CD4の細胞質ドメインは、チロシンキナーゼLckをリクルートする。Lckは、CD4及びCD8細胞質ドメインと会合されるSrcファミリーキナーゼであり、同じMHCへの共受容体及びTCRの同時結合により、TCR複合体のCD3及びζ鎖の増大したチロシンリン酸化がもたらされる。次に、この増大により、T細胞活性化における役割を果たす他の因子のリクルートがもたらされる。Itanoらは、CD4の細胞質テイルもCD4+CD8+ T細胞のCD4+系統への分化を促進することを、トランスジェニックマウスにおいて、CD8細胞外ドメイン及びCD4細胞質テイルを含むハイブリッドタンパク質を設計し、同タンパク質の発現を試験することにより、提唱した。Itano et al.(1996)The Cytoplasmic Domain of CD4 Promotes the Development of CD4 Lineage T Cells,J.Exp.Med.183:731〜41。ハイブリッドタンパク質の発現により、MHC I特異的CD4系統T細胞の発達がもたらされた(上記文献)。
【0069】
CD4共受容体は、HIVウイルスに対する主な受容体である考えられ、CD4+ T細胞枯渇は、疾患進行の指標である。CD4の細胞質テイルは、HIV誘引アポトーシスにおいて、CD4+ T細胞へのアポトーシスシグナルを伝達するために必須であると考えられる。具体的には、CD4とLckとの相互作用は、これらの細胞におけるHIV誘引アポトーシスを強化することが示された。Corbeil et al.(1996)HIV−induced Apoptosis Requires the CD4 Receptor Cytoplasmic Tail and Is Accelerated by Interaction of CD4 with p56lck,J.Exp.Med.183:39〜48。
【0070】
T細胞は、胸腺において、未成熟なCD4−/CD8−(ダブルネガティブ又はDN)胸腺細胞からCD4+/CD8+(ダブルポジティブ又はDP)胸腺細胞に進行して発達する。同胸腺細胞は、最終的に、CD4+又はCD8+(シングルポジティブ又はSP)T細胞のいずれかになるためのポジティブ選択を受ける。DP胸腺細胞は、MHC I限定TCRからのシグナルを受けて、CD8+ T細胞に分化する。一方、DP胸腺細胞は、MHC II限定TCRからのシグナルを受けて、CD4+ T細胞に分化する。CD4+又はCD8+ T細胞のいずれかへのその分化をもたらすDP細胞が受け取る合図は、数多くの研究の対象であった。CD4/CD8系統選択のための様々なモデルが提唱されており、Singer et al.(2008)Lineage fate and intense debate:myths,models and mechanisms of CD4−versus CD8−lineage choice,Nat.Rev.Immunol.8:788〜801において、レビューされている。
【0071】
ポジティブ選択の結果としての特定のT細胞共受容体の不活性化は、転写調節の産物である。CD4について、CD4のエキソン1の上流13kbに位置するエンハンサにより、CD4+及びCD8+ T細胞におけるCD4発現をアップレギュレーションされることが示されている。Killeen et al.(1993)Regulated expression of human CD4 rescues helper T cell development in mice lacking expression of endogenous CD4,EMBO J.12:1547〜53。マウスCD4遺伝子の第1のイントロン内に位置するシス作用性転写サイレンサは、CD4+ T細胞以外の細胞におけるCD4の発現をサイレンスするために機能する。Siu et al.(1994)A transcriptional silencer control the developmental expression of the CD4 gene,EMBO J.13:3570〜3579。
【0072】
CD4系統選択を制御する重要な転写調節因子(例えば、プロモータ、エンハンサ、サイレンサ等)が、以前に開発されたヒトCD4を発現するトランスジェニックマウスの複数の系統では損なわれていたため、これらのマウスでは、正常なT細胞系統発達を反復することができず、CD4を発現するCD4+ T細胞以外の免疫細胞が生じた。例えば、Law et al.(1994)Human CD4 Restores Normal T Cell Development and Function in Mice Deficient in CD4,J.Exp.Med.179:1233〜42(CD8+ T細胞及びB細胞におけるCD4発現);Fugger et al.(1994)Expression of HLA−DR4 and human CD4 transgenes in mice determines the variable regionβ−chain T−cell repertoire and mediates an HLA−D−restricted immune response,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:6151〜55(全てのCD3+胸腺細胞及びB細胞におけるCD4発現)を参照のこと。このため、一実施形態において、T細胞発達及び系統選択を受けることができるT細胞を動物に生じさせるために、内在性マウスプロモータ及び他の調節エレメントを保持している、遺伝子改変動物を開発する利益が存在する場合がある。
【0073】
このため、様々な実施形態において、本発明は、例えば、その内在性T細胞共受容体座(例えば、CD4座)において、キメラヒト/非ヒトT細胞共受容体ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、遺伝子改変非ヒト動物を提供する。一実施形態において、キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトT細胞共受容体の全て又は実質的に全ての細胞外部分(又はその一部、例えば、1つ又はそれ2つ以上の細胞外ドメイン、例えば、少なくとも2つの連続的な細胞外ドメイン)を含む。一実施形態において、キメラポリペプチドの非ヒト部分は、非ヒトT細胞共受容体の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含む。一実施形態において、非ヒト動物は、機能的なキメラT細胞共受容体ポリペプチドを発現している。このため、一態様において、本発明は、遺伝子改変非ヒト動物であって、その内在性CD4座において、キメラヒト/非ヒトCD4ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、キメラポリペプチドのヒト部分が、ヒトCD4の全て又は実質的に全ての細胞外部分を含み、非ヒト部分が、非ヒトCD4の少なくとも膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含み、動物が、機能的なキメラCD4ポリペプチドを発現している、遺伝子改変非ヒト動物を提供する。一態様において、非ヒト動物は、ヒト化CD4ポリペプチド、すなわち、キメラヒト/非ヒトCD4ポリペプチドのみを発現しており、機能的な内在性非ヒトCD4タンパク質を、その内在性CD4座から発現していない。
【0074】
一実施形態において、キメラヒト/非ヒトCD4ポリペプチドのヒト部分は、ヒトCD4ポリペプチドの全て又は実質的に全ての細胞外部分を含む。別の実施形態では、キメラヒト/非ヒトCD4ポリペプチドのヒト部分は、ヒトCD4ポリペプチドの全て又は実質的に全てのMHC II結合ドメイン(例えば、ヒトD1及びD2ドメインの実質的な部分)を少なくとも含む。一実施形態において、キメラヒト/非ヒトCD4ポリペプチドのヒト部分は、ヒトCD4ポリペプチドの全て又は実質的に全てのD1、D2、及びD3ドメインを含む。更に別の実施形態では、キメラヒト/非ヒトCD4ポリペプチドのヒト部分は、CD4の全て又は実質的に全ての免疫グロブリン様ドメイン、例えば、D1、D2、D3、及びD4と呼ばれるドメインを含む。更に別の実施形態では、キメラヒト/非ヒトCD4ポリペプチドのヒト部分は、そのヒト部分において、MHC II及び/又はT細胞受容体の細胞外部分との相互作用を担う、全て又は実質的に全てのヒトCD4配列を含む。更に別の実施形態では、キメラヒト/非ヒトCD4ポリペプチドのヒト部分は、MHC II及び/又はT細胞受容体の可変ドメインとの相互作用を担う、ヒトCD4の全て又は実質的に全ての細胞外部分を含む。したがって、一実施形態において、キメラCD4ポリペプチドのヒト部分をコードするヌクレオチド配列は、ヒトCD4の全て又は実質的に全てのドメインD1〜D2のコード配列(例えば、ヒトCD4遺伝子のエキソン3及びエキソン4〜5の一部)を含む。別の実施形態では、キメラCD4ポリペプチドのヒト部分をコードするヌクレオチド配列は、ヒトCD4の全て又は実質的に全てのD1〜D3のコード配列(例えば、ヒトCD4のエキソン3及びエキソン4〜6の一部)を含む。このため、一実施形態において、キメラヒト/非ヒトCD4をコードするヌクレオチド配列は、ヒトCD4の全て又は実質的に全てのD1〜D3ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、キメラCD4ポリペプチドのヒト部分をコードするヌクレオチド配列は、ヒトCD4遺伝子のD1〜D4のコード配列を含む。別の実施形態では、ヌクレオチド配列は、マウスCD4シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列、例えば、マウス遺伝子のエキソン2〜3の部分によりコードされる領域を含んでもよい。別の実施形態では、ヌクレオチド配列は、ヒトCD4シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでもよい。一実施形態において、キメラヒト/非ヒトCD4ポリペプチドは、配列番号:78で示されるアミノ酸配列を含み、キメラポリペプチドのヒト部分は、配列番号:78のアミノ酸27〜319付近(配列番号:79に別に示される)に広がっている。
【0075】
一実施形態において、非ヒト動物は、キメラヒト/非ヒトCD4ポリペプチド配列を発現している。一実施形態において、キメラCD4配列のヒト部分は、1つ又は2つ以上の保存的又は非保存的な改変を含む。
【0076】
一態様において、ヒトCD4配列を発現している非ヒト動物であって、ヒトCD4配列が、ヒトCD4配列に対して、少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である、非ヒト動物が提供される。特定の実施形態では、ヒトCD4配列は、実施例に記載されたヒトCD4配列に対して、少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である。一実施形態において、ヒトCD4配列は、1つ又は2つ以上の保存的置換を含む。一実施形態において、ヒトCD4配列は、1つ又は2つ以上の非保存的置換を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、キメラCD4の一部、例えば、ヒト部分は、本明細書で示された実質的に全ての配列(例えば、本明細書で示された実質的に全てのタンパク質ドメイン)を含んでもよい。実質的に全ての配列は、タンパク質の特定の部分(例えば、特定の機能的なドメイン等)を表わすと考えられる、アミノ酸の85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%を概ね含む。当業者であれば、機能的なドメインの限度は、使用されるアライメント及びドメイン予測法に応じてわずかに変動する場合があることを、理解するであろう。
【0078】
一態様において、キメラヒト/非ヒトCD4ポリペプチドの非ヒト部分は、非ヒトCD4ポリペプチドの少なくとも膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含む。CD4細胞質ドメインにより提供される重要な機能のために、遺伝子操作動物における内在性非ヒト(例えば、マウス)配列の保持により、共受容体の適切な細胞内シグナル伝達及び他の機能の保存が確保される。一実施形態において、非ヒト動物は、マウスであり、非ヒトCD4ポリペプチドは、マウスCD4ポリペプチドである。具体的なマウスCD4配列が実施例に記載されているが、それから得られる任意の好適な配列、例えば、保存的/非保存的アミノ酸置換を含む配列が、本明細書に包含される。一実施形態において、キメラCD4共受容体の非ヒト部分は、ヒト化されていない内在性CD4の任意の配列を含む。
【0079】
本明細書に記載された非ヒト動物は、その内在性座において、キメラヒト/非ヒトCD4ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでもよい。一態様において、これにより、ヒトCD4ポリペプチドの一部をコードするヌクレオチド配列による、内在性CD4遺伝子の一部の置換えがもたらされる。一実施形態において、このような置換えは、例えば、非ヒトCD4の全て又は実質的に全ての細胞外ドメインをコードする内在性ヌクレオチド配列、例えば、非ヒトCD4の全て又は実質的に全ての第1の免疫グロブリン様ドメイン(すなわち、D1)を少なくともコードする配列(例えば、非ヒトCD4の全て又は実質的に全てのドメインD1〜D2をコードする配列、例えば、非ヒトCD4の全て又は実質的に全てのドメインD1〜D3をコードする配列、例えば、非ヒトCD4の全て又は実質的に全てのドメインD1〜D4をコードする配列)の、同じドメインをコードするヒトヌクレオチド配列による置換えである。一実施形態において、置換えにより、MHC II及び/又はT細胞受容体の細胞外部分との相互作用を担うヒトCD4配列を含むキメラタンパク質がもたらされる。更に別の実施形態では、置換えにより、MHC II及び/又はT細胞受容体の可変ドメインとの相互作用を担うヒトCD4配列を含むキメラタンパク質がもたらされる。一実施形態において、置換えは、非ヒトCD4ポリペプチドの少なくとも膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードするCD4は配列の置換えを含まない。このため、一態様において、非ヒト動物は、内在性非ヒトCD4座から、キメラヒト/非ヒトCD4ポリペプチドを発現している。更に別の実施形態では、置換えにより、配列番号:78に示されるポリペプチド配列を含むタンパク質がもたらされる。
【0080】
一実施形態において、本明細書に記載されたキメラヒト/非ヒトCD4座(例えば、キメラヒト/げっ歯類CD4座、例えば、キメラヒト/マウスCD4座)のヌクレオチド配列が提供される。一態様において、キメラヒト/非ヒト(例えば、ヒト/げっ歯類、例えば、ヒト/マウス)CD4配列は、内在性非ヒト(例えば、げっ歯類、例えば、マウス)CD4座に位置するため、第1のCD4エキソンの上流に位置するCD4エンハンサエレメントを保持している。一実施形態において、内在性非ヒト(例えば、げっ歯類、例えば、マウス)CD4座における置換えは、例えば、CD4ポリペプチドのD1をコードするエキソン3並びにD1の残り部分及びD2〜D3をコードするエキソン4〜6の一部の置換えを含む。このため、一態様において、キメラCD4座は、非ヒト(例えば、マウス)CD4遺伝子のイントロン1に位置するシス作用性サイレンサを保持している。このため、一実施形態において、キメラ座は、内在性非ヒト(例えば、げっ歯類、例えば、マウス)CD4プロモータ及び調節エレメントを保持している。別の実施形態では、キメラ座は、適切なCD4発現、CD4+ T細胞発達、CD4系統選択、及び共受容体機能を可能にする程度に、ヒトプロモータ及び調節エレメントを含有してもよい。このため、いくつかの態様では、本発明の動物は、適切な系統選択及びT細胞発達を変化させない遺伝子改変を含む。一態様において、本発明の動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス)は、CD4を正常に発現している細胞以外の免疫細胞上に、キメラCD4ポリペプチドを発現していない。一態様において、動物は、B細胞又は成熟CD8+ T細胞上に、CD4を発現していない。一実施形態において、置換えにより、CD4発現の適切な空間的及び時間的調節を可能にするエレメントの保持がもたらされる。
【0081】
様々な実施形態において、本明細書に記載されたキメラCD4座から機能的なキメラCD4タンパク質を発現している非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)は、細胞表面、例えば、T細胞表面上に、キメラタンパク質を提示している。一実施形態において、非ヒト動物は、ヒトにおいて観察されるとの同じ細胞分布において、細胞表面上に、キメラCD4タンパク質を発現している。一態様において、本発明のCD4タンパク質は、第2の細胞、例えば、抗原提示細胞(APC)の表面上に発現されたMHC IIタンパク質と相互作用することができる。
ヒト又はヒト化CD8
【0082】
様々な実施形態において、本発明は、遺伝子改変非ヒト動物であって、そのゲノム中に、例えば、内在性CD8座において、ヒト又はヒト化CD8ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、これにより、動物が、ヒト又はヒト化CD8ポリペプチドを発現している、遺伝子改変非ヒト動物を概ね提供する。様々な実施形態において、本発明は、非ヒト動物であって、そのゲノム中に、例えば、内在性CD8座において、ヒト又はヒト化CD8αポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、及び/又は、ヒト又はヒト化CD8βポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、非ヒト動物を提供する。このため、本発明の遺伝子改変非ヒト動物は、ヒト又はヒト化CD8α、及び/又は、ヒト又はヒト化CD8βポリペプチドを発現している。
【0083】
ヒトCD8タンパク質は、典型的には、細胞表面上に、2つのポリペプチドCD8α及びCD8βのヘテロ二量体として発現される。ただし、ジスルフィド結合したホモ二量体及びホモ多量体も、(例えば、CD8ααを発現する、NK細胞及び腸のγδ T細胞において)検出されている。ヒトCD8α及びCD8βをコードする遺伝子は、第2番染色体上において、互いに近接して位置している。Nakayama et al.(1992)Recent Duplication of the Two Human CD8β−chain genes,J.Immunol.148:1919〜27。CD8αタンパク質は、リーダペプチド、免疫グロブリンV様領域、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、及び細胞質テイルを含む。Norment et al.(1989)Alternatively Spliced mRNA Encodes a Secreted Form of Human CD8α.Characterization of the Human CD8α gene,J.Immunol.142:3312〜19。CD8α遺伝子のエキソン/イントロンは、
図5Bに模式的に示されている。
【0084】
ヒトCD8β遺伝子は、第2番染色体上のCD8α遺伝子の上流に存在する。CD8β遺伝子の選択的スプライシングにより生成される複数のアイソフォームが報告されている。ここで、1つのアイソフォームは、膜貫通ドメインを欠いており、分泌タンパク質を生成すると予測される。Norment et al.(1988)A second subunit of CD8 is expressed in human T cells,EMBO J.7:3433〜39。CD8β遺伝子のエキソン/イントロンも、
図5Bに模式的に示されている。
【0085】
膜結合CD8βタンパク質は、N末端シグナル配列、続けて、免疫グロブリンV様ドメイン、短い細胞外ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、及び細胞質テイルを含有する。Littman(1987)The structure of the CD4 and CD8 genes,Ann Rev.Immunol.5:561〜84を参照のこと。ヒンジ領域は、拡張したグリコシル化部位である。同部位は、そのコンホーメーションを維持し、タンパク質をプロテアーゼによる開裂から保護すると考えられる。Leahy(1995)A structural view of CD4 and CD8,FASEB J.9:17〜25。
【0086】
CD8タンパク質は、通常、細胞障害性T細胞上に発現されており、MHC I分子と相互作用する。相互作用は、MHC Iのα
3ドメインに結合するCD8により媒介される。ただし、MHCクラスIのCD8への結合性は、TCRのMHCクラスIへの結合性より約100倍弱く、CD8結合は、TCR結合の親和性を向上させる。Wooldridge et al.(2010)MHC Class I Molecules with Superenhanced CD8 Binding Properties Bypass the Requirement for Cognate TCR Recognition and Nonspecifically Activate CTLs,J.Immunol.184:3357〜3366。
【0087】
MHCクラスI分子に結合するCD8は、種特異的である。CD8のマウスホモログであるLyt−2は、α3ドメインにおいてH−2D
d分子に結合することが示されたが、HLA−A分子には結合しなかった。Connolly et al.(1988)The Lyt−2 Molecule Recognizes Residues in the Class I α3 Domain in Allogeneic Cytotoxic T Cell Responses,J.Exp.Med.168:325〜341。差動的な結合は、おそらく、ヒトとマウスとの間で保存されなかった、CD8におけるCDR様決定因子(CDR1様及びCDR2様)のためであった。Sanders et al.(1991)Mutations in CD8 that Affect Interactions with HLA Class I and Monoclonal Anti−CD8 Antibodies,J.Exp.Med.174:371〜379;Vitiello et al.(1991)Analysis of the HLA−restricted Influenza−specific Cytotoxic T Lymphocyte Response in Transgenic Mice Carrying a Chimeric Human−Mouse Class I Major Histocompatibility Complex,J.Exp.Med.173:1007〜1015;及び、Gao et al.(1997)Crystal structure of the complex between human CD8αα and HLA−A2,Nature 387:630〜634。CD8は、α3ドメインの保存領域(223〜229位)において、HLA−A2に結合することが、報告されている。HLA−Aにおける1つの置換(V245A)は、CD8のHLA−Aへの結合性を低下させ、それと共に、T細胞媒介性溶解が大きく減少した。Salter et al.(1989),Polymorphism in the α3 domain of HLA−A molecules affects binding to CD8,Nature 338:345〜348。一般的には、HLA−A分子のα3ドメインにおける多型も、CD8への結合に影響を及ぼす(上記文献)。マウスにおいて、H−2D
dにおける残基227でのアミノ酸置換は、マウスLyt−2のH−2D
dへの結合に影響を及ぼし、変異H−2D
dによりトランスフェクションされた細胞は、CD8+ T細胞により溶解されなかった。Potter et al.(1989)Substitution at residue 227 of H−2 class I molecules abrogates recognition by CD8−dependent,but not CD8−independent,cytotoxic T lymphocytes、Nature 337:73〜75。このため、ヒト又はヒト化CD8の発現は、ヒト又はヒト化MHC Iにより提示された抗原に対するT細胞応答を研究するために有益である場合がある。
【0088】
CD4と同様に、CD8の細胞質ドメインは、チロシンキナーゼLckと相互作用し、次に、T細胞活性化をもたらす。Lckは、CD8αの細胞質ドメインと相互作用すると考えられるが、この相互作用は、CD8βの細胞質ドメインの存在により調節されると考えられる。CD8β細胞質ドメインの変異又は欠失により、CD8α関連Lck活性の低下がもたらされるためである。Irie et al.(1998)The cytoplasmic domain of CD8β Regulates Lck Kinase Activation and CD8 T cell Development,J.Immunol.161:183〜91。Lck活性の低下は、T細胞発達の障害に関連した(上記文献)。
【0089】
適切な細胞、例えば、細胞傷害性T細胞上でのCD8の発現は、CD8座全体に位置する各種のエンハンサエレメントにより、密接に調節される。例えば、DNAse I過感受性の少なくとも4つの領域は、多くの場合、レギュレータ結合性に関連しており、CD8座において特定されている。Hosert et al.(1997)A CD8 genomic fragment that directs subset−specific expression of CD8 in transgenic mice,J.Immunol.158:4270〜81。CD8座におけるこれらのDNAseI過感受性領域の発見により、少なくとも5つのエンハンサエレメントが特定され、CD8座全体に広がっており、DP、CD8 SP T細胞、又はγδTCRを発現している細胞を含めた様々な系統のT細胞におけるCD8α及び/又はβの発現を調節している。例えば、Kioussis et al.(2002)Chromatin and CD4,CD8A,and CD8B gene expression during thymic differentiation,Nature Rev.2:909〜919、及び、オンラインErratum;Ellmeier et al.(1998)Multiple Development Stage−Specific Enhancers Regulate CD8 Expression in Developing Thymocytes and in Thymus−Independent T cells,Immunity 9:485〜96を参照のこと。
【0090】
このため、ヒト又はヒト化CD4遺伝子改変動物についての内在性CD4プロモータ及び調節エレメントを維持することにより得られる利益と同様に、いくつかの実施形態では、ヒト又はヒト化CD8の発現を制御するであろう内在性マウスプロモータ及び調節エレメントを保持している遺伝子改変非ヒト動物を開発する利益が存在する場合がある。本明細書に記載されたように、CD8α及び/又はβタンパク質をコードする内在性非ヒト配列のヒト又はヒト化CD8α及び/又はβタンパク質をコードする配列による置換えを含む、遺伝子改変動物を作製する特定の利益が存在する場合がある。
【0091】
様々な実施形態において、本発明は、遺伝子改変非ヒト動物であって、そのゲノム中に、例えば、その内在性CD8座において、キメラヒト/非ヒトCD8ポリペプチド(例えば、CD8α及び/又はβポリペプチド)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含み、ポリペプチドのヒト部分が、ヒトCD8ポリペプチド(例えば、CD8α及び/又はβ)の全て又は実質的に全ての細胞外部分(又はその一部、例えば、細胞外ドメイン)を含み、非ヒト部分が、非ヒトCD8(例えば、CD8α及び/又はβ)の少なくとも膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含み、動物が、キメラCD8ポリペプチド(例えば、CD8α及び/又はβポリペプチド)を発現している、遺伝子改変非ヒト動物を提供する。このため、一実施形態において、本発明は、遺伝子改変非ヒト動物であって、その内在性非ヒトCD8座において、キメラヒト/非ヒトCD8αポリペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列と、キメラヒト/非ヒトCD8βポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列とを含み、第1のヌクレオチド配列が、ヒトCD8αポリペプチドの全て又は実質的に全ての細胞外部分並びに非ヒトCD8αポリペプチドの少なくとも膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする配列を含み、第2のヌクレオチド配列が、ヒトCD8βポリペプチドの全て又は実質的に全ての細胞外部分並びに非ヒトCDβポリペプチドの少なくとも膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする配列を含み、動物が、機能的なキメラヒト/非ヒトCD8タンパク質を発現している、遺伝子改変非ヒト動物を提供する。一態様において、非ヒト動物は、ヒト化CD8ポリペプチド(例えば、キメラヒト/非ヒトCD8α及び/又はβポリペプチド)のみを発現し、内在性CD8座から、対応する機能的な非ヒトCD8ポリペプチドを発現していない。
【0092】
一実施形態において、キメラヒト/非ヒトCD8αポリペプチドは、そのヒト部分において、ヒトCD8αポリペプチドの全て又は実質的に全ての細胞外部分を含む。一実施形態において、キメラCD8αポリペプチドのヒト部分は、ヒトCD8αポリペプチドの少なくともMHC I結合ドメインを含む。一実施形態において、キメラCD8αポリペプチドのヒト部分は、少なくともヒトCD8αの全て又は実質的に全ての免疫グロブリンV様ドメインの配列を含む。一実施形態において、キメラCD8αポリペプチドのヒト部分をコードするヌクレオチド配列は、ヒトCD8αポリペプチドの細胞外部分をコードするエキソンを少なくとも含む。一実施形態において、ヌクレオチド配列は、Ig V様ドメインをコードするエキソンを少なくとも含む。一実施形態において、ヒトCD8αポリペプチドの細胞外部分は、膜貫通ドメイン又は細胞質ドメインではないポリペプチドの部分を包含する領域である。一実施形態において、キメラヒト/非ヒトCD8αポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、非ヒト(例えば、げっ歯類、例えば、マウス)CD8αシグナルペプチドをコードする配列を含む。あるいは、ヌクレオチド配列は、ヒトCD8βシグナル配列をコードする配列を含んでもよい。一実施形態において、キメラヒト/非ヒトCD8αポリペプチドは、配列番号:88に示されるアミノ酸配列を含み、キメラポリペプチドのヒト部分は、配列番号:88のアミノ酸28〜179に示される(配列番号:89に別に表わされる)。
【0093】
同様に、一実施形態において、キメラヒト/非ヒトCD8βポリペプチドは、そのヒト部分において、ヒトCD8βポリペプチドの全て又は実質的に全ての細胞外部分を含む。一実施形態において、キメラCD8βポリペプチドのヒト部分は、ヒトCD8βの全て又は実質的に全ての免疫グロブリンV様ドメインの配列を含む。一実施形態において、キメラCD8βポリペプチドのヒト部分をコードするヌクレオチド配列は、ヒトCD8βポリペプチドの細胞外部分をコードするエキソンを少なくとも含む。一実施形態において、キメラヒト/非ヒトCD8βポリペプチドのヒト部分をコードするヌクレオチド配列は、ヒトCD8βのIgG V様ドメインをコードするエキソンを少なくとも含む。一実施形態において、キメラヒト/非ヒトCD8βポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、非ヒト(例えば、げっ歯類、例えば、マウス)CD8βシグナルペプチドをコードする配列を含む。あるいは、ヌクレオチド配列は、ヒトCD8βシグナル配列をコードする配列を含んでもよい。一実施形態において、キメラヒト/非ヒトCD8βポリペプチドは、配列番号:83に示されるアミノ酸配列を含み、キメラポリペプチドのヒト部分は、配列番号:83のアミノ酸15〜165に示される(配列番号:84に別に表わされる)。
【0094】
一実施形態において、非ヒト動物は、キメラヒト/非ヒトCD8α及び/又はCD8βポリペプチドを発現している。一実施形態において、キメラヒト/非ヒトCD8α及び/又はβポリペプチドのヒト部分は、1つ又は2つ以上の保存的又は非保存的な改変を含む。
【0095】
一態様において、ヒトCD8α及び/又はβポリペプチド配列を発現している非ヒト動物であって、ヒトCD8α及び/又はβポリペプチド配列が、ヒトCD8α及び/又はβポリペプチド配列それぞれに対して、少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である、非ヒト動物が提供される。特定の実施形態では、ヒトCD8α及び/又はβポリペプチド配列は、実施例に記載された各ヒトCD8α及び/又はβポリペプチド配列に対して、少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である。一実施形態において、ヒトCD8α及び/又はβポリペプチド配列は、1つ又は2つ以上の保存的置換を含む。一実施形態において、ヒトCD8α及び/又はβポリペプチド配列は、1つ又は2つ以上の非保存的置換を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、キメラCD8の一部、例えば、ヒト部分は、本明細書で示された実質的に全ての配列(例えば、本明細書で示された実質的に全てのタンパク質ドメイン)を含んでもよい。実質的に全ての配列は、一般的には、タンパク質の特定の部分(例えば、特定の機能的なドメイン等)を表わすと考えられるアミノ酸の85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%を含む。当業者であれば、機能的なドメインの限度は、使用されるアライメント及びドメイン予測法に応じてわずかに変動する場合があることを、理解するであろう。
【0097】
一態様において、キメラヒト/非ヒトCD8α及び/又はβポリペプチドの非ヒト部分は、非ヒトCD8α及び/又はβポリペプチドそれぞれの膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインを少なくとも含む。CD8細胞質ドメインにより提供される重要な機能のために、遺伝子操作動物における内在性非ヒト(例えば、マウス)配列の保持により、共受容体の適切な細胞内シグナル伝達及び他の機能の保存が確保される。一実施形態において、非ヒト動物は、マウスであり、非ヒトCD8α及び/又はβポリペプチドはそれぞれ、マウスCD8α及び/又はβポリペプチドである。具体的なマウスCD8α及び/又はβ配列が実施例に記載されているが、それから得られる任意の適切な配列、例えば、保存的/非保存的アミノ酸置換を含む配列が、本明細書に包含される。一実施形態において、非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス)は、ヒト化されていない任意の内在性配列を保持している。
【0098】
本明細書に記載された非ヒト動物は、その内在性座において、キメラヒト/非ヒトCD8α及び/又はβポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでもよい。一態様において、これにより、ヒトCD8αポリペプチドの一部をコードするヌクレオチド配列による、内在性CD8α遺伝子の一部の置換え、及び/又は、ヒトCD8βポリペプチドの一部をコードするヌクレオチド配列による、内在性CD8β遺伝子の一部の置換えがもたらされる。一実施形態において、このような置換えは、非ヒトCD8α及び/又はβの全て又は実質的に全ての細胞外部分をコードする内在性ヌクレオチド配列の、同じ配列をコードするヒトヌクレオチド配列を有するヒトヌクレオチドによる置換えである。一実施形態において、このような置換えは、非ヒトCD8α及び/又はβの全て又は実質的に全ての免疫グロブリンV様ドメインを少なくともコードする内在性ヌクレオチド配列の、同じものをコードするヒトヌクレオチド配列による置換えである。一実施形態において、置換えは、非ヒトCD8α及び/又はβポリペプチドの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードするCD8α及び/又はβ配列の置換えを含まない。このため、非ヒト動物は、内在性非ヒトCD8座から、キメラヒト/非ヒトCD8α及び/又はβポリペプチドを発現している。更に別の実施形態では、置換えにより、配列番号:88及び/又は84それぞれに示されるポリペプチド配列を含むCD8α及び/又はβタンパク質がもたらされる。
【0099】
一実施形態において、キメラヒト/非ヒトCD8座(例えば、キメラげっ歯類CD8座、例えば、キメラマウスCD8座)のヌクレオチド配列が提供される。一態様において、キメラヒト/非ヒト(例えば、ヒト/げっ歯類、例えば、ヒト/マウス)CD8α及び/又はβ配列は、各内在性非ヒト(例えば、げっ歯類、例えば、マウス)CD8α及び/又はβ座に位置するため、内在性CD8α及び/又はβプロモータ及び調節エレメントを保持している。別の実施形態では、キメラ座は、適切なCD8α及び/又はβ発現(適切な空間的及び時間的なタンパク質発現)、CD8+ T細胞発達、CD8系統選択、及び共受容体機能を可能にする程度に、ヒトCD8α及び/又はβプロモータ及び調節エレメントを含有してもよい。このため、一態様において、本発明の動物は、適切な系統選択及びT細胞発達を変化させない遺伝子改変を含む。一態様において、本発明の動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス)は、CD8を正常に発現している細胞以外の免疫細胞において、キメラCD8タンパク質を発現していない。例えば、動物は、B細胞又は成熟CD4+ T細胞上に、CD8を発現していない。一実施形態において、置換えにより、CD8α及び/又はβ発現の適切な空間的及び時間的調節を可能にするエレメントの保持がもたらされる。
【0100】
様々な実施形態において、本明細書に記載されたキメラCD8座から機能的なキメラCD8タンパク質(例えば、CD8αβ又はCD8αα)を発現している非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)は、細胞表面上に、キメラタンパク質を提示している。一実施形態において、非ヒト動物は、ヒトにおいて観察されるのと同じ細胞分布において、細胞表面上に、キメラCD8タンパク質を発現している。一態様において、本発明のCD8タンパク質は、第2の細胞表面上に発現されたMHC Iタンパク質と相互作用することができる。
ヒト又はヒト化T細胞受容体
【0101】
本明細書において、実質的にヒト化されたT細胞免疫系を含む、遺伝子改変非ヒト動物が開示される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示された非ヒト動物は、例えば、そのゲノム中に、(a)キメラヒト/非ヒトT細胞共受容体をコードするヌクレオチド配列であって、キメラT細胞共受容体ポリペプチドのヒト部分がヒトT細胞共受容体の細胞外ドメインをコードする配列によりコードされ、ヒトT細胞共受容体の細胞外ドメインをコードする配列が、非ヒトT細胞共受容体の膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインをコードする配列を含むヌクレオチドに操作可能に連結している、ヌクレオチド配列と、(b)少なくとも1つのヒトVセグメント、場合により、少なくとも1つのヒトDセグメント、及び少なくとも1つのヒトJセグメントを含む非再配列T細胞受容体(TCR)可変遺伝子領域であって、TCR可変領域遺伝子の非再配列V、場合によりD、及びJセグメントが組み換えられて、非ヒトTCR定常遺伝子配列に操作可能に連結している再配列遺伝子を形成している、非再配列TCR可変遺伝子領域と、(c)キメラヒト/非ヒトMHCポリペプチドをコードする核酸配列であって、キメラMHCポリペプチドのヒト部分がキメラT細胞共受容体ポリペプチドのヒト部分と会合するヒトMHCポリペプチドの細胞外ドメインを含む、核酸配列とを含む。場合により、非ヒト動物は、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドも含む。
【0102】
したがって、様々な実施形態において、本発明は、概ね、遺伝子改変非ヒト動物であって、非ヒト動物が、ゲノム中に、非再配列ヒト化TCR可変遺伝子座、例えば、再配列TCR可変遺伝子配列を形成するように組み換えることができるヒトTCR可変セグメントを含む非再配列ヒトTCR可変遺伝子領域を含む、遺伝子改変非ヒト動物を提供する。本明細書で使用する場合、TCR座又はTCR遺伝子座(例えば、TCRα座又はTCRβ座)は、TCRコード領域(非再配列V(D)J配列、エンハンサ配列、定常配列、及び任意の上流若しくは下流(UTR、調節領域等)、又は反転DNA配列(イントロン等)を含むTCRコード領域全体を含む)を含むゲノムDNAを意味する。TCR可変座、TCR可変領域、又はTCR可変遺伝子座(例えば、TCRα可変遺伝子座又はTCRβ可変遺伝子座)は、TCR可変領域セグメント(V(D)J領域)を含むが、TCR定常配列、及び様々な実施形態において、エンハンサ配列を除くゲノムDNAを意味する。他の配列は、遺伝子操作(例えば、選択カセット、制限部位等)の目的で、TCR可変遺伝子座に含まれてもよく、これらは、本明細書に包含される。
【0103】
T細胞は、主要組織適合複合体(MHC;マウス)又はヒト白血球抗原(HLA;ヒト)複合体と会合する、抗原提示細胞表面上の小さな抗原決定因子におけるエピトープに結合する。T細胞は、T細胞表面上のT細胞受容体(TCR)複合体により、これらのエピトープに結合する。T細胞受容体は、2種類の鎖:α(アルファ)及びβ(ベータ)鎖又はγ(ガンマ)及びδ(デルタ)鎖から構成されるヘテロ二量体構造である。α鎖は、(ヒト又はマウスの第14番染色体上の)α座内に位置する核酸配列によりコードされる。同座は、δ座全体も包含する。β鎖は、(マウスの第6番染色体又はヒトの第7番染色体上の)β座内に位置する核酸配列によりコードされる。T細胞の大部分は、αβTCRを有する。一方、少数のT細胞は、γδTCRを有する。TCRと、MHCクラスI(CD8+ T細胞に対して提示)及びMHCクラスII(CD4+ T細胞に対して提示)分子との相互作用は、
図1に示される(塗りつぶされた記号は、非ヒト配列を表わし、縞状の記号は、ヒト配列を表わす。本発明のTCRタンパク質の1つの特定の実施形態を示す)。
【0104】
T細胞受容体α及びβポリペプチド(及び同様に、γ及びδポリぺプチド)は、ジスルフィド結合を介して、互いに結合している。TCRを構成する2つのポリペプチドはそれぞれ、定常及び可変領域を含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質テイル(膜貫通ドメイン及び細胞質テイルは、定常領域の一部でもある)を含有する。TCRの可変領域は、その抗原特異性を決定し、免疫グロブリンと同様に、3つの相補性決定領域(CDR)を含む。また、免疫グロブリン遺伝子と同様に、T細胞受容体可変遺伝子座(例えば、TCRα及びTCRβ座)は、数多くの非再配列V(D)Jセグメント(可変(V)、結合(J)、及びTCRβ及びδにおいて、多様性(D)セグメント)を含有する。胸腺におけるT細胞発達中に、TCRα可変遺伝子座は、再配列を受ける。これにより生じるTCRα鎖は、VJセグメント(Vα/Jα配列)の特定の組み合わせによりコードされる。そして、TCRβ可変遺伝子座は、再配列を受ける。これにより生じるTCRβ鎖は、VDJセグメント(Vβ/Dβ/Jβ配列)の特定の組み合わせによりコードされる。
【0105】
胸腺ストローマとの相互作用により、胸腺細胞が、複数の発達段階を受けるようにトリガーされる。同段階は、様々な細胞表面マーカーの発現により特徴付けられる。胸腺における様々な発達段階での特徴的な細胞表面マーカーの概要は、表1に表わされる。TCRβ可変遺伝子座での再配列は、DN2段階において始まり、DN4段階の間に終了する。一方、TCRα可変遺伝子座の再配列は、DP段階において生じる。TCRβ座再配列の完了後、細胞は、細胞の表面において、サロゲートα鎖、pTαと共に、TCRβ鎖を発現する。Janeway’s Immunobiology,Chapter 7,7th Ed.,Murphy et al.eds.,Garland Science,2008を参照のこと。
【表1】
【0106】
ナイーブなCD4+及びCD8+ T細胞は、胸腺を出て、末梢リンパ器官(例えば、脾臓)に入る。ここにおいて、同T細胞は、抗原に曝されて、活性化し、クローン的に増殖し、数多くのエフェクターT細胞(Teff)、例えば、細胞傷害性T細胞、T
REG細胞、T
H17細胞、T
H1細胞、T
H2細胞等に分化する。感染後に、数多くのT細胞が、メモリT細胞として持続し、セントラルメモリT細胞(Tcm)又はエフェクターメモリT細胞(Tem)のいずれかとして分類される。Sallusto et al.(1999)Two subsets of memory T lymphocytes with distinct homing potentials and effector functions,Nature 401:708〜12及びMackay(1999)Dual personality of memory T cell,Nature 401:659〜60によるコメント。Sallusto及び同僚は、最初の感染後に、Tem細胞が、エフェクター機能を有する末梢組織において、抗原刺激メモリT細胞の容易に利用可能なプールを提供する一方で、Tcm細胞が、末梢リンパ器官において、二次的負荷があったときに、新たなエフェクターT細胞になり得る、抗原刺激メモリT細胞を提供する、と提唱した。全てのメモリT細胞は、CD45のCD45ROアイソフォームを発現している(ナイーブなT細胞は、CD45RAアイソフォームを発現している)一方で、Tcmは、L−セレクチン(CD62Lとしても公知)及びCCR7+の発現により特徴付けられる。これらの発現は、末梢リンパ器官及びリンパ節への結合及びこれらにおけるシグナル伝達に重要である。上記。このため、末梢リンパ器官において見出される全てのT細胞(例えば、ナイーブなT細胞、Tcm細胞等)は、CD62Lを発現している。CD45ROに加えて、全てのメモリT細胞は、数多くの様々な細胞表面マーカー、例えば、CD44を発現することが公知である。T細胞上の様々な細胞表面マーカーの概要については、Janeway’s Immunobiology,Chapter 10、上記を参照のこと。
【0107】
TCR可変ドメインは、主に抗原認識において機能するが、定常ドメインの細胞外部分、並びに、TCRの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインも、重要な機能を果たす。完全なTCR受容体複合体は、α及びβ又はγ及びδポリペプチドより多くを必要とする。必要とされる更なる分子は、CD3γ、CD3δ、及びCD3ε、並びにζ鎖ホモ二量体(ζζ)を含む。TCRβ再配列の完了時に、細胞がTCRβ/pTαを発現している場合、このプレTCR複合体は、細胞表面上に、CD3と共に存在している。細胞表面上のTCRα(又はpTα)は、その膜貫通ドメイン中に2つの塩基性残基を有する。その内の1つは、CD3γεヘテロ二量体をリクルートし、他方は、その各酸性残基により、ζζをリクルートする。TCRβは、CD3δεヘテロ二量体をリクルートすると考えられる更なる塩基性残基を、その膜貫通ドメイン中に有する。例えば、Kuhns et al.(2006)Deconstructing the Form and Function of the TCR/CD3 Complex,Immunity 24:133〜39;Wucherpfennig et al.(2009)Structural Biology of the T−cell Receptor:Insights into Receptor Assembly,Ligand Recognition,and Initiation of Signaling、Cold Spring Harb.Perspect.Biol.2:a005140を参照のこと。TCRαβヘテロ二量体、CD3γε、CD3δε、及びζζを含むアッセンブリ複合体は、T細胞表面上に発現される。膜貫通ドメイン中の極性残基は、既存の小胞体についての品質管理として機能することが示唆されている。CD3サブユニットの不存在下において、TCR鎖は、ER中で保持され、分解が標的化されることが証明されている。例えば、Call and Wucherpfennig(2005)The T Cell Receptor:Critical Role of the Membrane Environment in Receptor Assembly and Function,Annu.Rev.Immunol.23:101〜25を参照のこと。
【0108】
TCRαβヘテロ二量体(又はTCRγδヘテロ二量体)自体がシグナル伝達活性を欠くため、アッセンブリ複合体のCD3及びζ鎖は、TCRシグナル伝達のためのコンポーネントを提供する。CD3鎖は、1つの免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)をそれぞれ有し、一方で、ζ鎖は、3つのタンデムなITAMを含有する。ITAMは、関連するキナーゼによりリン酸化され得るチロシン残基を含有する。このため、アッセンブリTCR−CD3複合体は、10個のITAMモチーフを含有する。例えば、Love and Hayes(2010)ITAM−Mediated Signaling by the T−Cell Antigen Receptor,Cold Spring Harb.Perspect.Biol.2:e002485を参照のこと。TCR結合後、ITAMモチーフは、SrcファミリーチロシンキナーゼLck及びFynによりリン酸化される。同リン酸化により、シグナル伝達カスケードが開始され、Ras活性化、カルシウム動員、アクチン細胞骨格再配列、及び転写因子活性化がもたされ、全てが、最終的に、T細胞の分化、増殖、及びエフェクター作用をもたらす。上記。Janeway’s Immunobiology、上記も参照のこと。両方とも、参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
加えて、TCRβ膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインは、ミトコンドリア標的化及びアポトーシス誘引に役割を有すると考えられる。実際に、天然のN末端トランケートTCRβ分子は、胸腺細胞に存在している。Shani et al.(2009)Incomplete T−cell receptor−−β peptides target the mitochondrion and induce apoptosis,Blood 113:3530〜41。このため、複数の重要な機能が、TCR定常領域により提供される(同領域は、様々な実施形態において、細胞外ドメイン並びに膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインの一部を含む)。そして、様々な実施形態において、この領域の構造は、ヒト化TCR又はそれを発現する遺伝子改変非ヒト動物を設計する際に、考慮されるべきである。
【0110】
再配列T細胞受容体配列のためのマウストランスジェニックが、当該技術分野において公知である。本発明は、遺伝子改変非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、ラット、マウス)であって、ヒトT細胞受容体可変ドメインをコードする核酸配列を形成するために再配列することができる非再配列ヒト又はヒト化T細胞可変遺伝子座を含み、再配列ヒト可変ドメイン及び非ヒト(例えば、マウス又はラット)定常領域を含むT細胞を含む動物を含む、遺伝子改変非ヒト動物に関する。また、本発明は、ヒトT細胞受容体可変領域配列の多様なレパートリを生成することができる、非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、ラット、マウス)を提供する。このため、本発明は、対象となる抗原に対する応答において、完全にヒト可変ドメインを有するTCRを発現し、このTCRが対象となる抗原のエピトープに結合する、非ヒト動物を提供する。いくつかの実施形態では、様々な抗原(APCにより提示される抗原を含むが、これに限定されない)と反応することができる、多様なT細胞受容体レパートリを生成する、非ヒト動物が提供される。
【0111】
一実施形態において、本発明は、遺伝子改変非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、ラット、マウス)であって、そのゲノム中に、非再配列ヒトTCR可変領域セグメント(V(D)Jセグメント)を含み、非再配列ヒトTCR可変領域セグメントが、内在性非ヒト(例えば、げっ歯類)TCR可変遺伝子座(例えば、TCRα、β、δ、及び/又はγ可変遺伝子座)において、内在性非ヒトTCR可変領域セグメントを置き換える、遺伝子改変非ヒト動物を提供する。一実施形態において、非再配列ヒトTCR可変遺伝子座は、内在性非ヒトTCR可変遺伝子座を置き換える。
【0112】
別の実施形態では、本発明は、遺伝子改変非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、ラット、マウス)であって、そのゲノム中に、非再配列ヒトTCR可変領域セグメント(V(D)Jセグメント)を含み、非再配列ヒトTCR可変領域セグメントが、非ヒトTCR定常領域遺伝子配列に操作可能に連結して、ヒト化TCR座をもたらし、ヒト化TCR座が、内在性非ヒトTCR座以外のゲノム部位に存在する、遺伝子改変非ヒト動物を提供する。このため、一実施形態において、非ヒトTCR定常領域遺伝子配列に操作可能に連結している再配列ヒトTCR可変領域セグメントを含む導入遺伝子を含む、非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス、ラット)も提供される。
【0113】
一態様において、本発明の遺伝子改変非ヒト動物は、そのゲノム中に、ヒトTCR可変領域セグメントを含む一方で、TCR定常領域をコードする非ヒト(例えば、げっ歯類、例えば、マウス、ラット)TCR定常遺伝子配列を保持している。様々な実施形態において、TCR定常ドメインは、TCRの膜貫通ドメイン及び細胞質テイルを含む。このため、本発明の様々な実施形態において、遺伝子改変非ヒト動物は、内在性非ヒトTCR膜貫通ドメイン及び細胞質テイルを保持している。他の実施形態では、非ヒト動物は、例えば、非ヒト非内在性TCRの膜貫通ドメイン及び細胞質テイルをコードする非ヒト非内在性TCR定常遺伝子配列を含む。上記で示されたように、TCRの定常ドメインは、抗原刺激T細胞活性化中に開始されるシグナル伝達カスケードに関与している。このため、内在性TCR定常ドメインは、T細胞中において、各種の非ヒトアンカー及びシグナル伝達タンパク質と相互作用する。このため、一態様において、本発明の遺伝子改変非ヒト動物は、各種の内在性非ヒトアンカー又はシグナル伝達分子、例えば、CD3分子(例えば、CD3γ、CD3δ、CD3ε)、ζ鎖、Lck、Fyn、ZAP−70等をリクルートする能力を保持しているヒト化T細胞受容体を発現している。TCR複合体にリクルートされる分子の非限定的な列記は、上記Janeway’s Immunobiologyに記載されている。堅牢な免疫応答を進行させ、同応答を可能にする、非ヒト動物におけるT細胞発達及びT細胞分化プロセスの能力は、少なくとも一部において、内在性マウス座における可変領域の配置及びマウス定常ドメインの維持による場合があることが考えられる。
【0114】
いくつかの実施形態では、非ヒト動物であって、そのゲノム中に、非再配列ヒトTCRα可変領域セグメントを含み、非再配列ヒトTCRα可変領域セグメントが、非ヒトTCRα定常領域遺伝子セグメントに操作可能に連結して、ヒト化TCRα座をもたらす、非ヒト動物が提供される。一実施形態において、ヒト化TCRα座は、内在性非ヒトTCRα座以外のゲノム部位に存在する。別の実施形態では、非再配列ヒトTCRα可変領域セグメントは、内在性非ヒトTCRα可変領域セグメントを置き換える一方で、内在性非ヒトTCRα定常領域遺伝子配列を保持している。一実施形態において、非再配列ヒトTCRα可変遺伝子座は、内在性非ヒトTCRα可変遺伝子座を置き換える。いくつかの実施形態では、非再配列ヒトTCRα可変遺伝子座による内在性非ヒトTCRα可変領域遺伝子座の置換えは、TCRδ可変遺伝子座の欠失又は不活性化を含む。他の実施形態では、非再配列ヒトTCRα遺伝子座による内在性非ヒトTCRα可変領域遺伝子の置換えは、非再配列ヒトTCRδ可変領域セグメントによる内在性TCRδ可変遺伝子座の置換えを含む。いくつかの実施形態では、動物は、内在性非ヒトTCRβ可変領域及び定常領域遺伝子配列を保持している。このため、動物は、キメラヒト/非ヒト(すなわち、ヒト化)TCRα鎖及び非ヒトTCRβ鎖を含むTCRを発現している。
【0115】
いくつかの実施形態では、非ヒト動物であって、そのゲノム中に、非再配列ヒトTCRδ可変領域セグメントを含み、非再配列ヒトTCRδ可変領域セグメントが、非ヒトTCRδ定常領域遺伝子配列に操作可能に連結して、ヒト化TCRδ座をもたらす、非ヒト動物が提供される。一実施形態において、ヒト化TCRδ座は、内在性非ヒトTCRδ座以外のゲノム部位に存在する。別の実施形態では、非再配列ヒトTCRδ可変領域セグメントは、内在性非ヒトTCRδ可変領域セグメントを置き換える一方で、内在性非ヒトTCRδ定常領域遺伝子配列を保持している。一実施形態において、非再配列ヒトTCRδ可変遺伝子座は、内在性非ヒトTCRδ可変遺伝子座を置き換える。
【0116】
他の実施形態では、非ヒト動物であって、そのゲノム中に、非再配列ヒトTCRβ可変領域セグメントを含み、非再配列ヒトTCRβ可変領域セグメントが、非ヒトTCRβ定常領域遺伝子配列に操作可能に連結して、ヒト化TCRβ座をもたらす、非ヒト動物が提供される。一実施形態において、ヒト化TCRβ座は、内在性非ヒトTCRβ座以外のゲノム部位に存在する。別の実施形態では、非再配列ヒトTCRβ可変領域セグメントは、内在性非ヒトTCRβ可変領域セグメントを置き換える一方で、内在性非ヒトTCRβ定常領域遺伝子配列を保持している。一実施形態において、非再配列ヒトTCRβ可変遺伝子座は、内在性非ヒトTCRβ可変遺伝子座を置き換える。いくつかの実施形態では、動物は、内在性非ヒトTCRα可変領域及び定常領域遺伝子配列を保持している。このため、動物は、キメラヒト/非ヒト(すなわち、ヒト化)TCRβ鎖及び非ヒトTCRα鎖を含むTCRを発現している。
【0117】
いくつかの特定の実施形態では、本発明は、遺伝子改変非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)であって、そのゲノム中に、(a)少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含み、内在性非ヒト(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)TCRα定常遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列T細胞受容体(TCR)α可変遺伝子座、(b)少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント、及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含み、内在性非ヒト(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)TCRβ定常領域遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列TCRβ可変遺伝子座、並びに/又は、(c)少なくとも1つのヒトVδセグメント、少なくとも1つのヒトDδセグメント、及び少なくとも1つのヒトJδセグメントを含み、内在性非ヒト(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)TCRδ定常領域遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列TCRδ可変遺伝子座を含む、遺伝子改変非ヒト動物を提供する。本明細書で提供される別の非ヒト動物は、そのゲノム中に、(a)少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含み、内在性非ヒト(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)TCRα定常遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列T細胞受容体(TCR)α可変遺伝子座、(b)少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント、及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含み、内在性非ヒト(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)TCRβ定常領域遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列TCRβ可変遺伝子座、(c)少なくとも1つのヒトVδセグメント、少なくとも1つのヒトDδセグメント、及び少なくとも1つのヒトJδセグメントを含み、内在性非ヒト(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)TCRδ定常領域遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列TCRδ可変遺伝子座、並びに/又は、(d)少なくとも1つのヒトVγセグメント及び少なくとも1つのヒトJγセグメントを含み、内在性非ヒト(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)TCRγ定常領域遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列TCRγ可変遺伝子座を含む。
【0118】
本発明の様々な実施形態において、非再配列ヒト又はヒト化TCR可変遺伝子座(例えば、TCRα、TCRβ、及び/又はTCRδ可変遺伝子座)は、非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)の生殖細胞系に含まれる。様々な実施形態において、非再配列ヒトTCR V(D)Jセグメント(例えば、Vα及びJα;Vβ及びDβ及びJβ;Vδ及びDδ及びJδ;Vγ及びJγセグメント)によるTCR V(D)Jセグメントの置換えは、内在性非ヒトTCR可変座(又は複数の同可変座)においてである。この場合、非再配列ヒトV及びJ並びに/又はV及びD及びJセグメントは、非ヒトTCR定常領域遺伝子配列に操作可能に連結している。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態では、非ヒト動物は、非再配列ヒト又はヒト化TCRα可変遺伝子座の2つのコピー、非再配列ヒト又はヒト化TCRβ可変遺伝子座の2つのコピー、並びに/又は、非再配列ヒト又はヒト化TCRδ可変遺伝子座の2つのコピーを含む。このため、非ヒト動物は、1つ又は2つ以上の非再配列ヒト又はヒト化TCRα、TCRβ、及び/又はTCRδ可変遺伝子座について、ホモ接合性である。本発明のいくつかの実施形態では、非ヒト動物は、非再配列ヒト又はヒト化TCRα可変遺伝子座の1つのコピー、非再配列ヒト又はヒト化TCRβ可変遺伝子座の1つのコピー、並びに/又は、非再配列ヒト又はヒト化TCRδ可変遺伝子座の1つのコピーを含む。このため、非ヒト動物は、非再配列ヒト又はヒト化TCRα、TCRβ、及び/又はTCRδ可変遺伝子座について、ヘテロ接合性である。他の実施形態では、非ヒト動物は、非再配列ヒト又はヒト化TCRγ可変遺伝子座について、ヘテロ接合性又はホモ接合性である。
【0120】
一実施形態において、ヒト可変領域セグメント(例えば、ヒトVα及びJαセグメント)を含む非再配列TCRα可変遺伝子座は、ヒト可変領域セグメントが、対応する非ヒト可変領域セグメントを置き換えるように、非ヒトゲノム中に位置する。一実施形態において、ヒト可変領域セグメントを含む非再配列TCRα可変遺伝子座は、内在性TCRα可変遺伝子座を置き換える。一態様において、内在性非ヒトVα及びJαセグメントは再配列して、再配列Vα/Jα配列を形成することができない。このため、一態様において、非再配列TCRα可変遺伝子座におけるヒトVα及びJαセグメントは再配列して、再配列ヒトVα/Jα配列を形成することができる。
【0121】
同様に、一実施形態において、ヒト可変領域セグメント(例えば、ヒトVβ、Dβ、及びJβセグメント)を含む非再配列TCRβ可変遺伝子座は、ヒト可変領域セグメントが、対応する非ヒト可変領域セグメントを置き換えるように、非ヒトゲノム中に位置する。一実施形態において、ヒト可変領域セグメントを含む非再配列TCRβ可変遺伝子座は、内在性TCRβ可変遺伝子座を置き換える。一態様において、内在性非ヒトVβ、Dβ、及びJβセグメントは再配列して、再配列Vβ/Dβ/Jβ配列を形成することができない。このため、一態様において、非再配列TCRβ可変遺伝子座におけるヒトVβ、Dβ、及びJβセグメントは再配列して、再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列を形成することができる。
【0122】
一実施形態において、ヒト可変領域セグメント(例えば、ヒトVδ、Dδ、及びJδセグメント)を含む非再配列TCRδ可変遺伝子座は、ヒト可変領域セグメントが、対応する非ヒト可変領域セグメントを置き換えるように、非ヒトゲノム中に位置する。一実施形態において、ヒト可変領域セグメントを含む非再配列TCRδ可変遺伝子座は、内在性TCRδ可変遺伝子座を置き換える。一態様において、内在性非ヒトVδ、Dδ、及びJδセグメントは再配列して、再配列Vδ/Dδ/Jδ配列を形成することができない。このため、一態様において、非再配列TCRδ可変遺伝子座におけるヒトVδ、Dδ、及びJδセグメントは再配列して、再配列ヒトVδ/Dδ/Jδ配列を形成することができる。
【0123】
一実施形態において、ヒト可変領域セグメント(例えば、ヒトVγ及びJγセグメント)を含む非再配列TCRγ可変遺伝子座は、ヒト可変領域セグメントが、対応する非ヒト可変領域セグメントを置き換えるように、非ヒトゲノム中に位置する。一実施形態において、ヒト可変領域セグメントを含む非再配列TCRγ可変遺伝子座は、内在性TCRγ可変遺伝子座を置き換える。一態様において、内在性非ヒトVα及びJαセグメントは再配列して、再配列Vγ/Jγ配列を形成することができない。このため、一態様において、非再配列TCRγ可変遺伝子座におけるヒトVγ及びJγセグメントは再配列して、再配列ヒトVγ/Jγ配列を形成することができる。
【0124】
更に別の実施形態では、ヒト可変領域セグメントを含む非再配列TCRα、β、δ、及び/又はγ可変遺伝子座は両方とも、各内在性TCRα、β、δ、及びγ可変遺伝子座を置き換える。一態様において、内在性非ヒトVα及びJαセグメントは再配列して、再配列Vα/Jα配列を形成することができず、内在性非ヒトVβ、Dβ、及びJβセグメントは再配列して、再配列Vβ/Dβ/Jβ配列を形成することができず、内在性非ヒトVδ、Dδ、及びJδセグメントは再配列して、再配列Vδ/Dδ/Jδ配列を形成することができず、かつ/又は、内在性非ヒトVγ及びJγセグメントは再配列して、再配列Vγ/Jγ配列を形成することができない。このため、一態様において、非再配列TCRα可変遺伝子座におけるヒトVα及びJαセグメントは再配列して、再配列ヒトVα/Jα配列を形成することができ、非再配列TCRβ可変遺伝子座におけるヒトVβ、Dβ、及びJβセグメントは再配列して、再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列を形成することができ、非再配列TCRδ可変遺伝子座におけるヒトVδ、Dδ、及びJδセグメントは再配列して、再配列ヒトVδ/Dδ/Jδ配列を形成することができ、かつ/又は、非再配列TCRα可変遺伝子座におけるヒトVγ及びJγセグメントは再配列して、再配列ヒトVγ/Jγ配列を形成することができる。
【0125】
本発明のいくつかの態様では、ヒト化TCRα、TCRβ、及び/又はTCRδ遺伝子座(非再配列ヒトTCRα、TCRβ、及び/又はTCRδ可変遺伝子座を含む)を含む非ヒト動物は、内在性非ヒトTCRα、TCRβ、及び/又はTCRδ可変遺伝子座を保持している。一実施形態において、内在性非ヒトTCRα、TCRβ、及び/又はTCRδ可変遺伝子座は、機能的でない遺伝子座である。一実施形態において、機能的でない遺伝子座は、不活性化された遺伝子座、例えば、反転した遺伝子座である(例えば、可変遺伝子座のコード核酸配列は、定常領域配列に対して、反転した向きにあり、これにより、反転した遺伝子座からの可変領域セグメントを利用して、再配列に成功することができない)。一実施形態において、ヒト化TCRα、TCRβ、及び/又はTCRδ可変遺伝子座は、それぞれ、内在性非ヒトTCRα、TCRβ、及び/又はTCRδ可変遺伝子座と、内在性非ヒトTCRα、TCRβ、及び/又はTCRδ定常遺伝子座との間に位置している。同様の染色体再配列は、ヒト又は非ヒトTCRγを、非ヒト動物のゲノム内に、例えば、TCRγ座に配置するために行われてもよい。
【0126】
ヒト及びマウスTCR座のV及びJ並びに/又はV、D、及びJセグメントの数、命名法、位置、及び他の態様は、国際免疫遺伝情報システム(IMGT)のウェブサイトにおいて利用可能なIMGTデータベースを使用して確認されてもよい。マウスTCRα可変座は、約1.5メガ塩基対であり、合計110個のVα及び60個のJαセグメントを含む。ヒトTCRα可変座は、約1メガ塩基対であり、合計54個のVα及び61個のJαセグメントを含み、45個のVα及び50個のJαが、機能的であると考えられる。特に断らない限り、明細書全体を通して言及されるヒトV(D)Jセグメント数は、V(D)Jセグメントの合計数を意味する。本発明の一実施形態において、遺伝子改変非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)は、少なくとも1つのヒトVα及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含む。一実施形態において、非ヒト動物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、23、25、30、35、40、45、48、50、又は最大54個のヒトVαセグメントを含むヒト化TCRα座を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化TCRα座は、2、8、23、35、48、又は54個のヒトVαセグメントを含む。このため、いくつかの実施形態では、非ヒト動物におけるヒト化TCRα座は、ヒトVαの5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を含んでもよく、いくつかの実施形態では、ヒトVαの約2%、約3%、約15%、約65%、約90%、又は100%を含んでもよい。
【0127】
一実施形態において、非ヒト動物は、ヒトVα40〜Vα41(Vαセグメントは、「TRAV」又は「TCRAV」とも呼ばれる)の連続的なヒト配列を含むDNAフラグメントと、61個のヒトJαセグメント(Jαセグメントは、「TRAJ」又は「TCRAJ」とも呼ばれる)の連続的なヒト配列を含むDNAフラグメントとを含むヒト化TCRα座を含む。一実施形態において、非ヒト動物は、ヒトTRAV35〜TRAV41の連続的なヒト配列を含むDNAフラグメントと、61個のヒトTRAJの連続的なヒト配列を含むDNAフラグメントとを含むヒト化TCRα座を含む。一実施形態において、非ヒト動物は、ヒトTRAV22〜TRAV41の連続的なヒト配列を含むDNAフラグメントと、61個のヒトTRAJの連続的なヒト配列を含むDNAフラグメントとを含むヒト化TCRα座を含む。一実施形態において、非ヒト動物は、ヒトTRAV13−2〜TRAV41の連続的なヒト配列を含むDNAフラグメントと、61個のヒトTRAJの連続的なヒト配列を含むDNAフラグメントとを含むヒト化TCRα座を含む。一実施形態において、非ヒト動物は、ヒトTRAV6〜TRAV41及び61個のヒトTRAJの連続的なヒト配列を含むDNAフラグメントを含むヒト化TCRα座を含む。一実施形態において、非ヒト動物は、ヒトTRAV1−1〜TRAV41及び61個のヒトTRAJの連続的なヒト配列を含むDNAフラグメントを含むヒト化TCRα座を含む。様々な実施形態において、ヒトTCRα可変領域セグメントの連続的なヒト配列を含むDNAフラグメントは、制限酵素部位、選択カセット、エンドヌクレアーゼ部位、又は、遺伝子座のヒト化プロセス中にクローニング及び選択を容易にするために挿入される他の部位も含む。様々な実施形態において、これらの更なる部位は、TCRα座における様々な遺伝子の適切な機能(例えば、再配列、スプライシング等)と干渉しない。
【0128】
一実施形態において、ヒト化TCRα座は、61個のヒトJαセグメント又はヒトJαセグメントの100%を含む。特定の実施形態では、ヒト化TCRα座は、8個のヒトVαセグメントと、61個のJαセグメントとを含む。別の特定の実施形態では、ヒト化TCRα座は、23個のヒトVαセグメントと、61個のJαセグメントとを含む。別の特定の実施形態では、ヒト化TCRα座は、ヒトVα及びJαセグメントの完全なレパートリ、すなわち、α座によりコードされる全てのヒト可変α領域遺伝子セグメント、又は、54個のヒトVα及び61個のJαセグメントを含む。様々な実施形態において、非ヒト動物は、内在性非ヒトVα又はJαセグメントを、TCRα座において何ら含まない。
【0129】
マウスTCRβ可変座は、約0.6メガ塩基対であり、合計33個のVβ、2個のDβ、及び14個のJβセグメントを含む。ヒトTCRβ可変座は、約0.6メガ塩基対であり、合計67個のVβ、2個のDβ、及び14個のJβセグメントを含む。本発明の一実施形態において、遺伝子改変非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)は、少なくとも1つのヒトVβ、少なくとも1つのヒトDβ、及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含む。一実施形態において、非ヒト動物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、23、25、30、35、40、45、48、50、55、60、又は最大67個のヒトVβセグメントを含むヒト化TCRβ座を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化TCRβ座は、8、14、40、66、又は67個のヒトVβセグメントを含む。このため、いくつかの実施形態では、非ヒト動物におけるヒト化TCRβ座は、ヒトVβの5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を含んでもよく、いくつかの実施形態では、ヒトVβの約20%、約60%、約15%、約98%、又は100%を含んでもよい。
【0130】
一実施形態において、非ヒト動物は、ヒトVβ18〜Vβ29−1(Vβセグメントは、「TRBV」又は「TCRBV」とも呼ばれる)の連続的なヒト配列を含むDNAフラグメントを含むヒト化TCRβ座を含む。一実施形態において、非ヒト動物は、ヒトTRBV18〜TRBV29−1の連続的なヒト配列を含むDNAフラグメントと、ヒトDβ1−Jβ1(すなわち、ヒトDβ1−Jβ1−1−Jβ1−6セグメント)の連続的なヒト配列を含む別箇のDNAフラグメントと、ヒトDβ2−Jβ2(すなわち、ヒトDβ2−Jβ2−1−Jβ2−7セグメント)の連続的なヒト配列を含む別箇のDNAフラグメントとを含むヒト化TCRβ座を含む。一実施形態において、非ヒト動物は、ヒトTRBV6−5〜TRBV29−1の連続的なヒト配列を含むDNAフラグメントと、ヒトDβ1−Jβ1(すなわち、ヒトDβ1−Jβ1−1−Jβ1−6セグメント)の連続的なヒト配列を含む別箇のDNAフラグメントと、ヒトDβ2−Jβ2(すなわち、ヒトDβ2−Jβ2−1−Jβ2−7セグメント)の連続的なヒト配列を含む別箇のDNAフラグメントとを含むヒト化TCRβ座を含む。一実施形態において、非ヒト動物は、ヒトTRBV1〜TRBV29−1の連続的なヒト配列を含むDNAフラグメントと、ヒトDβ1−Jβ1の連続的なヒト配列を含む別箇のDNAフラグメントと、ヒトDβ2−Jβ2の連続的なヒト配列を含む別箇のDNAフラグメントとを含むヒト化TCRβ座を含む。一実施形態において、非ヒト動物は、ヒトTRBV1〜TRBV29−1の連続的なヒト配列を含むDNAフラグメントと、ヒトDβ1−Jβ1の連続的なヒト配列を含む別箇のDNAフラグメントと、ヒトDβ2−Jβ2の連続的なヒト配列を含む別箇のDNAフラグメントと、ヒトTRBV30の配列を含む別箇のDNAフラグメントとを含むヒト化TCRβ座を含む。様々な実施形態において、ヒトTCRβ可変領域セグメントの連続的なヒト配列を含むDNAフラグメントは、制限酵素部位、選択カセット、エンドヌクレアーゼ部位、又は、遺伝子座のヒト化プロセス中にクローニング及び選択を容易にするように挿入される他の部位も含む。様々な実施形態において、これらの更なる部位は、TCRβ座における様々な遺伝子の適切な機能(例えば、再配列、スプライシング等)と干渉しない。
【0131】
一実施形態において、ヒト化TCRβ座は、14個のヒトJβセグメント又はヒトJβセグメントの100%、及び、2個のヒトDβセグメント又はヒトJβセグメントの100%を含む。別の実施形態では、ヒト化TCRβ座は、少なくとも1つのヒトVβセグメント、例えば、14個のヒトVβセグメントと、全てのマウスDβ及びJβセグメントとを含む。特定の実施形態では、ヒト化TCRβ座は、14個のヒトVβセグメントと、2個のヒトDβセグメントと、14個のJβセグメントとを含む。別の特定の実施形態では、ヒト化TCRβ座は、ヒトVβ、Dβ、及びJβセグメントの完全なレパートリ、すなわち、β座によりコードされる全てのヒト可変β領域遺伝子セグメント、又は、67個のヒトVβ、2個のヒトDβ、及び14個のJβセグメントを含む。一実施形態において、非ヒト動物は、1つ(例えば、5’)非ヒトVβセグメントを、ヒト化TCRβ座において含む。様々な実施形態において、非ヒト動物は、内在性非ヒトVβ、Dβ、及びJβセグメントを、TCRβ座において何ら含まない。
【0132】
非ヒト動物(例えば、げっ歯類)が、ヒトTCRα及びTCRβ(及び場合により、ヒトTCRδ及びTCRγ)可変領域セグメントのレパートリ(例えば、可変領域セグメントの完全なレパートリ)を含む様々な実施形態において、様々なセグメントのレパートリ(例えば、様々なセグメントの完全なレパートリ)が、様々な抗原に対するTCR分子の多様なレパートリを生成するために、動物により利用される。
【0133】
様々な態様において、非ヒト動物は、例えば、プロモータ配列、リーダー配列、遺伝子間配列、調節配列等を含む非再配列ヒトゲノム可変座におけるのと同様に配置され、ヒトゲノムTCR可変座におけるのと同様に配置された、V、D、及びJ又はD及びJ又はV及びJ又はVセグメントを含むヒトゲノムTCR可変座の連続的な部分を含む。他の態様では、様々なセグメントは、非再配列非ヒトゲノムTCR可変座におけるのと同様に配置される。ヒト化TCRα、β、δ、及び/又はγ座の様々な実施形態において、ヒト化座は、例えば、定常領域に近接するヒトゲノムに位置するヒト可変座のVセグメントのフラグメントと並置され、ヒト可変座の上流端においてヒトゲノムに位置するヒト可変座のVセグメントのフラグメントと並置された、ヒトゲノム中に現れない2つ以上のヒトゲノムセグメントを含み得る。
【0134】
マウス及びヒトの両方において、TCRδ遺伝子セグメントは、TCRα座と共に位置している(
図4A上側を参照のこと。四角で囲われたTCRD領域)。TCRδJ及びDセグメントは、VαセグメントとJαセグメントとの間に位置している。一方、TCRδVセグメントは、TCRα座全体に広がっており、主に、様々なVαセグメントの中に位置している。様々なTCRδセグメントの数及び位置は、IMGTデータベースから決定され得る。TCRα座内のTCRδ遺伝子セグメントのゲノム配列のために、TCRα座における成功した再配列により、TCRδ遺伝子セグメントが欠失され、又は、不活性化される場合がある。
【0135】
本発明のいくつかの実施形態では、非再配列ヒトTCRα可変遺伝子座を含む非ヒト動物は、少なくとも1つのヒトVδセグメント、例えば、最大で、ヒトVδセグメントの完全なレパートリも含む。このため、いくつかの実施形態では、内在性TCRα可変遺伝子座の置換えにより、少なくとも1つの非ヒトVδセグメントのヒトVδセグメントによる置換えがもたらされる。他の実施形態では、本発明の非ヒト動物は、ヒトVδ、Dδ、及びJδセグメントの完全なレパートリを、非再配列ヒト化TCRα座に含む。更に他の実施形態では、非ヒト動物は、完全な非再配列ヒトTCRδ座を、非再配列ヒト化TCRα座(すなわち、ヒト可変領域セグメント並びにヒトエンハンサ及び定常領域を含むTCRδ座)に含む。完全な非再配列TCRδ座を含む非再配列ヒト化TCRα座を構築するための例示的な実施形態は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第9,113,616号に示されている。
【0136】
更に別の実施形態では、本発明の非ヒト動物は、非再配列ヒト化TCRγ座、例えば、少なくとも1つのヒトVγ及び少なくとも1つのヒトJγセグメント(例えば、ヒトVγ及びヒトJγ可変領域セグメントの完全なレパートリ)を含むTCRγ座を含む。ヒトTCRγ座は、ヒトの第7番染色体に存在し、一方、マウスヒトTCRγ座は、マウスの第13番染色体に存在する。TCRγ座の更なる詳細については、IMGTデータベースを参照のこと。
【0137】
一態様において、本明細書に記載されたヒト化TCRα及びβ可変遺伝子座(及び場合により、ヒト化TCRδ/γ可変遺伝子座)を含む非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)は、ヒト可変領域及び非ヒト(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)定常領域を含むヒト化T細胞受容体を、T細胞表面上に発現している。いくつかの態様では、非ヒト動物は、各種の提示された抗原を認識するヒト化T細胞受容体の多様なレパートリを発現することができる。
【0138】
本発明の様々な実施形態において、本明細書に記載されたヒト化T細胞受容体ポリペプチドは、ヒトリーダー配列を含む。代替的な実施形態では、ヒト化TCR受容体の核酸配列は、ヒト化TCRポリペプチドが非ヒトリーダー配列を含むように操作される。
【0139】
本明細書で記載されるヒト化TCRポリペプチドは、内在性非ヒト調節エレメント(例えば、げっ歯類の調節エレメント)、例えば、プロモータ、サイレンサ、エンハンサ等の制御下において発現されてもよい。本明細書で記載されるヒト化TCRポリペプチドは、ヒト調節エレメントの制御下において、代替的に発現されてもよい。様々な実施形態において、本明細書に記載された非ヒト動物は、ヒトゲノム中にin situにおいて、通常見出される全ての調節配列及び他の配列を更に含む。
【0140】
様々な実施形態において、ヒト化TCRタンパク質のヒト可変領域は、同じ細胞又は別の細胞の表面上の種々のタンパク質と相互作用することができる。一実施形態において、ヒト化TCRのヒト可変領域は、第2の細胞、例えば、抗原提示細胞(APC)の表面上に抗原を提示するMHCタンパク質(例えば、MHCクラスI又はIIタンパク質)と相互作用する。いくつかの実施形態では、MHC I又はIIタンパク質は、非ヒト(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)タンパク質である。他の実施形態では、MHC I又はIIタンパク質は、ヒト(化)タンパク質である。一態様において、第2の細胞、例えば、APCは、ヒト又はヒト化MHC分子を発現している内在性非ヒト細胞である。種々の実施形態では、第2の細胞は、ヒトMHC分子を発現しているヒト細胞である。
【0141】
一態様において、非ヒト動物は、非ヒト定常領域を有するヒト化TCR細胞受容体を、T細胞の表面上に発現しており、受容体は、T細胞において発現された非ヒト分子、例えば、アンカー又はシグナル伝達分子(例えば、CD3分子、ζ鎖、又はTCRにCD3分子若しくはζ鎖によりアンカーする他のタンパク質)と相互作用することができる。このため、一態様において、(a)(i)本明細書で記載されるヒト化TCRα鎖及び本明細書で記載されるヒト化TCRβ鎖を含むTCR、並びに、(ii)本明細書で記載されるキメラ共受容体を発現している非ヒトT細胞と、(b)本明細書で記載されるキメラMHC I及び/又はキメラMHC IIに結合した抗原を含む非ヒト抗原提示細胞とを含む、細胞複合体が提供される。一実施形態において、非ヒト定常TCRα及びTCRβ鎖は、非ヒトゼータ(ζ)鎖ホモ二量体及びCD3ヘテロ二量体と複合体化される。一実施形態において、細胞複合体は、in vivoでの細胞複合体である。一実施形態において、細胞複合体は、in vitroでの細胞複合体である。
【0142】
様々な実施形態において、本明細書で記載される非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)は、胸腺発達を受けて、DN1〜DN2〜DN3〜DN4〜DP、そして、〜CD4又はCD8 SP T細胞に進行することができるT細胞を生じる。本発明の非ヒト動物のこのようなT細胞は、胸腺発達の特定の段階の間にT細胞により典型的に生成される細胞表面分子(例えば、CD25、CD44、Kit、CD3、pTα等)を発現している。このため、一実施態様において、本明細書で記載される非ヒト動物は、胸腺発達のDN3段階において、TCRβと複合体化されるpTαを発現してもよい。本明細書で記載される非ヒト動物は、胸腺発達を受けて、CD4+及びCD8+ T細胞を生じさせることができるT細胞を生じる。
【0143】
様々な実施形態において、本明細書で記載される非ヒト動物は、末梢においてT細胞分化を受けることができるT細胞を生じる。いくつかの実施形態では、本明細書で記載される非ヒト動物は、エフェクターT細胞、例えば、CTL(細胞傷害性Tリンパ球)、T
H1、T
H2、T
REG、T
H17等を生じることができる。このため、これらの実施形態では、本明細書で記載される非ヒト動物は、特定のT細胞種に典型的な種々の機能を満たす、例えば、外来抗原を認識し、同抗原に結合し、応答するエフェクターT細胞を生じる。様々な実施形態において、本明細書で記載される非ヒト動物は、MHC I分子に関して発現されるサイトゾル病原体のペプチドフラグメントを提示している細胞を殺傷し、細胞内小胞中で分解され、マクロファージの表面上のMHC II分子により提示される抗原由来のペプチドを認識し、マクロファージが微生物を殺傷するように誘引し、B細胞分化を駆動させるサイトカインを生成し、オプソンニン化抗体を生成するようにB細胞を活性化させ、上皮細胞が感染部位に好中球をリクルートするケモカインを生成するように誘引する;等を行うエフェクターT細胞を生じる。
【0144】
更なる実施形態では、本明細書で記載される非ヒト動物は、末梢において、例えば、脾臓において、CD3+ T細胞を含む。他の態様では、本明細書で記載される非ヒト動物は、対象となる抗原に対する応答において、メモリT細胞の集団を生じることができる。例えば、非ヒト動物は、抗原、例えば、対象となる抗原(例えば、ワクチン開発のために試験される抗原等)に対する、セントラルメモリT細胞(Tcm)及びエフェクターメモリT細胞(Tem)の両方を生じる。
【0145】
十分なシグナル(例えば、ノッチシグナル)を受容しないDN1及びDN2細胞は、B細胞、骨髄細胞(例えば、樹状細胞)、マスト細胞、及びNK細胞に発達する場合がある。例えば、Yashiro−Ohtani et al.(2010)Notch regulation of early thymocyte development,Seminars in Immunology 22:261〜69を参照のこと。いくつかの実施形態では、本明細書で記載される非ヒト動物は、B細胞、骨髄細胞(例えば、樹状細胞)、マスト細胞、及びNK細胞を発達させる。いくつかの実施形態では、本明細書で記載される非ヒト動物は、胸腺において、樹状細胞集団を発達させる。
【0146】
T細胞の表面上に発現されるT細胞受容体の優勢種は、TCRα/βであり、TCRδ/γを発現している細胞は少数である。本発明のいくつかの実施形態では、ヒト化TCRα及び/又はβ座を含む非ヒト動物のT細胞は、TCRα/β及びTCRδ/γ座の利用、例えば、野生型動物に類似するTCRα/β及びTCRδ/γ座の利用を示す(例えば、本明細書で記載される非ヒト動物のT細胞は、TCRα/β及びTCRδ/γタンパク質を、野生型動物により発現されたものと同等の割合で発現する)。このため、いくつかの実施形態では、ヒト化TCRα/β及び内在性非ヒトTCRδ/γ座を含む非ヒト動物は、全ての遺伝子座の利用を示す。
ヒト又はヒト化MHC分子
【0147】
様々な実施形態において、本明細書では、遺伝子改変非ヒト動物であって、少なくとも1つのヒト化T細胞共受容体、ヒト化共受容体と会合する少なくとも1つのヒト化MHC、及び場合により、ヒト化TCRを共発現し、ヒト化MHCにより提示されたペプチドを認識し、同ペプチドを結合することに基づいて、ヒト化共受容体と共に、ヒト化TCR及びキメラT細胞共受容体ポリペプチドを発現する細胞に、活性化シグナルを提供する、遺伝子改変非ヒト動物が提供される。したがって、本明細書で開示される非ヒト動物は、第1、第2、及び/又は第3の核酸配列のうちの少なくとも1つを含み、それらはそれぞれ、ヒト又はヒト化MHC IIαポリペプチド、ヒト又はヒト化MHC IIβポリペプチド、及びヒト又はヒト化MHC Iαポリペプチドからなる群から選択される、種々のヒト又はヒト化MHCポリペプチドをコードする。非ヒト動物は、場合により、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンも含む。本明細書において、第1、第2、及び第3の指定の使用は、本明細書で開示される非ヒト動物が、3つ全ての核酸配列を必要とするものであるかのように、限定して解釈されるべきではなく、又は、ヒト又はヒト化MHCポリペプチドのいずれかの存在を任意の特定の順序に限定するものと解釈されるべきではない。
【0148】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で開示される非ヒト動物は、例えば、ヒト又はキメラCD8αポリペプチド及びヒト又はキメラCD8βポリペプチドをコードする第1及び第2のヌクレオチド配列、少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含み、非ヒトTCRα定常遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列T細胞受容体(TCR)α可変遺伝子座、及び/又は、少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント、及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含み、非ヒトTCRβ定常遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列TCRβ可変遺伝子座、並びに場合により、例えば、ヒト又はヒト化MHC Iαポリペプチド及びヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする第1及び第2の核酸配列を含んでもよい。他の実施形態では、本明細書で開示される非ヒト動物は、例えば、キメラCD4ポリペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列、少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含み、非ヒトTCRα定常遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列T細胞受容体(TCR)α可変遺伝子座、及び/又は、少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント、及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含み、非ヒトTCRβ定常遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列TCRβ可変遺伝子座、並びに場合により、例えば、ヒト又はヒト化MHC IIαポリペプチド及びヒト又はヒト化MHC IIβポリペプチドをコードする第1及び第2の核酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される非ヒト動物は、例えば、キメラCD4ポリペプチド、キメラCD8αポリペプチド、及びキメラCD8βポリペプチドをコードする第1、第2、及び第3のヌクレオチド配列、少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含み、非ヒトTCRα定常遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列T細胞受容体(TCR)α可変遺伝子座、及び/又は、少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント、及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含み、非ヒトTCRβ定常遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列TCRβ可変遺伝子座、並びに場合により、例えば、ヒト又はヒト化MHC IIαポリペプチド、ヒト又はヒト化MHC IIβポリペプチド、ヒト又はヒト化MHC Iαポリペプチド、及びヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする第1、第2、第3、及び第4の核酸配列を含んでもよい。
【0149】
様々な実施形態において、本明細書では、遺伝子改変非ヒト動物、例えば、げっ歯類(例えば、マウス又はラット)であって、そのゲノム中に、ヒト又はヒト化MHC Iポリペプチドをコードする核酸配列、及び/又は、ヒト又はヒト化MHC IIタンパク質をコードする核酸配列を含む、遺伝子改変非ヒト動物が提供される。MHC I核酸配列は、部分的にヒト及び部分的に非ヒト、例えば、キメラヒト/非ヒトMHC IポリペプチドであるMHC Iポリペプチドをコードしてもよい。MHC II核酸配列は、部分的にヒト及び部分的に非ヒト、例えば、キメラヒト/非ヒトMHC IIタンパク質であるMHC IIタンパク質(例えば、キメラヒト/非ヒトMHC IIα及びβポリペプチドを含む)をコードしてもよい。いくつかの態様では、動物は、内在性MHC I及び/又は内在性MHC IIポリペプチド、例えば、機能的な内在性MHC I及び/又はMHC IIポリペプチドを、細胞表面上に発現していない。いくつかの実施形態では、動物の細胞表面上に発現されたMHC I及び/又はMHC II分子は、キメラMHC I及び/又はMHC II分子のみである。
【0150】
ゲノム中に、例えば、内在性座において、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードする核酸配列を含む遺伝子改変非ヒト動物が、米国特許出願公開第20130111617号及び同第20130185819号に開示されている。同公報は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。ゲノム中に、例えば、内在性座において、ヒト化、例えば、キメラヒト/非ヒトMHC IIポリペプチドをコードする核酸配列を含む遺伝子改変非ヒト動物が、米国特許第8,847,005号及び米国特許出願公開第20130185820号に開示されている。同公報はそれぞれ、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。ゲノム中に、例えば、内在性座において、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードする核酸配列を含み、かつ、ゲノム中に、例えば、内在性座において、ヒト化、例えば、キメラヒト/非ヒトMHC IIポリペプチドをコードする核酸配列を含む遺伝子改変非ヒト動物が、米国特許出願公開第20140245467号に開示されている。同公報は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0151】
様々な実施形態において、本明細書では、遺伝子改変非ヒト動物であって、そのゲノム中に、例えば、1つ又は2つ以上の内在性MHC座において、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードする第1の核酸配列であって、キメラMHC Iポリペプチドのヒト部分が、ヒトMHC Iポリペプチドの細胞外部分(又はその一部、例えば、1つ又は2つ以上の細胞外ドメイン)を含む、第1の核酸配列、キメラヒト/非ヒトMHC IIαポリペプチドをコードする第2の核酸配列であって、キメラMHC IIαポリペプチドのヒト部分が、ヒトMHC IIαポリペプチドの細胞外部分(又はその一部、例えば、1つ又は2つ以上の細胞外ドメイン)を含む、第2の核酸配列、並びに/又は、キメラヒト/非ヒトMHC IIβポリペプチドをコードする第3の核酸配列であって、キメラMHC IIβポリペプチドのヒト部分が、ヒトMHC IIβポリペプチドの細胞外部分(又はその一部、例えば、1つ又は2つ以上の細胞外ドメイン)を含む、第3の核酸配列を含み、非ヒト動物が、その内在性非ヒトMHC座から、機能的なキメラヒト/非ヒトMHC I及びMHC IIタンパク質を発現している、遺伝子改変非ヒト動物が提供される。一実施形態において、第1、第2、及び/又は第3の核酸配列はそれぞれ、内在性非ヒトMHC I、MHC IIα、及びMHC IIβ座に位置している。一実施形態において、非ヒト動物は、マウスであり、第1、第2、及び/又は第3の核酸配列は、マウス第17番染色体における内在性マウスMHC座に位置する。一実施形態において、第1の核酸配列は、内在性非ヒトMHC I座に位置している。一実施形態において、第2の核酸配列は、内在性非ヒトMHC IIα座に位置している。一実施形態において、第3の核酸配列は、内在性非ヒトMHC IIβ座に位置している。
【0152】
一実施形態において、非ヒト動物は、キメラヒト/非ヒトMHC I、MHC IIα、及び/又はMHC IIβポリペプチドのみを発現しており、内在性非ヒトMHC座から、内在性非ヒトMHCポリペプチド(例えば、機能的な内在性MHC I、IIα、及び/又はIIβポリペプチド)を発現していない。一実施形態において、本明細書で記載される動物は、その細胞、例えば、抗原提示細胞等の表面上に、機能的なキメラMHC I及び機能的なキメラMHC IIを発現している。一実施形態において、動物により細胞表面上に発現されたMHC I及びMHC IIは、キメラMHC I及びキメラMHC IIのみであり、動物は、細胞表面上に、内在性MHC I及びMHC IIを何ら発現していない。
【0153】
一実施形態において、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドは、そのヒト部分において、例えば、ヒトMHC Iポリペプチドのペプチド結合クレフトを含む。一態様において、キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC Iの細胞外部分を含む。この実施形態では、キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC Iのα鎖の細胞外ドメインを含む。一実施形態において、キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC Iのα1及びα2ドメインを含む。別の実施形態では、キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC Iのα1、α2、及びα3ドメインを含む。
【0154】
一態様において、キメラMHC IIαポリペプチドのヒト部分及び/又はキメラMHC IIβポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC IIαポリペプチド及び/又はヒトMHC IIβポリペプチドのペプチド結合ドメインをそれぞれ含む。一態様において、キメラMHC IIα及び/又はβポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC IIα及び/又はβポリペプチドの細胞外部分をそれぞれ含む。一実施形態において、キメラMHC IIαポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC IIαポリペプチドのα1ドメインを含む。別の実施形態では、キメラMHC IIαポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC IIαポリペプチドのα1及びα2ドメインを含む。更なる実施形態では、キメラMHC IIβポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC IIβポリペプチドのβ1ドメインを含む。別の実施形態では、キメラMHC IIβポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC IIβポリペプチドのβ1及びβ2ドメインを含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、ヒト又はヒト化MHC Iポリペプチドは、HLA−A、HLA−B、HLA−C、HLA−E、HLA−F、又はHLA−G座のいずれかによりコードされる機能的なヒトHLA分子に由来していてもよい。ヒト又はヒト化MHC IIポリペプチドは、HLA−DP、−DQ、及び−DR座のいずれかによりコードされる機能的なヒトHLA分子に由来していてもよい。一般的に使用されるHLA抗原及びアレルの列記は、参照により本明細書に組み込まれている、Shankarkumar et al.((2004)The Human Leukocyte Antigen(HLA)System,Int.J.Hum.Genet.4(2):91〜103)に記載されている。Shankarkumar et al.には、当該技術分野に使用されるHLAの専門用語の簡単な説明も示されている。HLAの専門用語及び様々なHLAアレルに関する更なる情報は、Holdsworth et al.(2009)The HLA dictionary 2008:a summary of HLA−A,−B,−C,−DRB1/3/4/5,and DQB1 alleles and their association with serologically defined HLA−A,−B,−C,−DR,and −DQ antigens,Tissue Antigens 73:95〜170及びMarsh et al.(2010)Nomenclature for factors of the HLA system,2010,Tissue Antigens 75:291〜455による最近の更新に見出すことができる。両文献とも、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、MHC I又はMHC IIポリペプチドは、任意の機能的なヒトHLA−A、B、C、DR、又はDQ分子に由来していてもよい。このため、ヒト又はヒト化MHC I及び/又はIIポリペプチドは、本明細書で記載される任意の機能的なヒトHLA分子に由来していてもよい。いくつかの実施形態では、細胞表面上に発現される全てのMHC I及び/又はMHC IIポリペプチドは、ヒトHLA分子に由来する部分を含む。
【0156】
数多くのヒトの疾患、例えば、ヒト自己免疫疾患に関連することが公知の特定の多型HLAアレルであるヒトHLA分子が、特に興味深い。実際に、関節リウマチ、I型糖尿病、橋本甲状腺病、多発性硬化症、重症筋無力症、グレーブス病、全身性エリテマトーデス、セリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎、及び他の自己免疫疾患の進行に関連する、HLA座における特定の多型が特定されている。例えば、Wong and Wen(2004)What can the HLA transgenic mouse tell us about autoimmune diabetes?,Diabetologia 47:1476〜87;Taneja and David(1998)HLA Transgenic Mice as Humanized Mouse Models of Disease and Immunity,J.Clin.Invest.101:921〜26;Bakker et al.(2006),A high−resolution HLA and SNP haplotype map for disease association studies in the extended human MHC,Nature Genetics 38:1166〜72及び補足情報;並びに、International MHC and Autoimmunity Genetics Network(2009)Mapping of multiple susceptibility variants within the MHC region for 7 immune−mediated diseases,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 106:18680〜85を参照のこと。このため、ヒト又はヒト化MHC I及び/又はIIポリプチドは、特定の疾患、例えば、自己免疫疾患に関連することが公知のヒトHLA分子に由来していてもよい。
【0157】
1つの具体的な態様では、ヒト又はヒト化MHC Iポリプチドは、HLA−Aに由来する。特定の実施形態では、HLA−Aポリペプチドは、HLA−A2ポリペプチド(例えば、及びHLA−A2.1ポリペプチド)である。一実施形態において、HLA−Aポリペプチドは、HLA−A
*0201アレル、例えば、HLA−A
*02:01:01:01アレルによりコードされるポリペプチドである。HLA−A
*0201アレルは、北米人集団の間で一般的に使用される。本実施例では、この特定のHLA配列が記載されているが、任意の適切なHLA−A配列、例えば、ヒト集団に示されるHLA−A2の多型変異体、1つ又は2つ以上の保存的又は非保存的なアミノ酸改変を含む配列、遺伝情報の縮重によって本明細書で記載される配列とは異なる核酸配列等が、本明細書に包含される。
【0158】
別の具体的な態様では、キメラMHC Iポリペプチドのヒト部分は、HLA−B及びHLA−Cから選択されるヒトMHC Iに由来する。一態様において、ヒト部分は、HLA−B、例えば、HLA−B27に由来する。別の態様では、ヒト部分は、HLA−A3、−B7、−Cw6等に由来する。
【0159】
1つの具体的な態様では、本明細書に記載されたヒト化MHC IIα及びβポリペプチドのヒト部分は、HLA−DR、例えば、HLA−DR2から得られる。典型的には、HLA−DRα鎖は、単形性であり、例えば、HLA−DR複合体のα鎖は、HLA−DRA遺伝子(例えば、HLA−DRα
*01遺伝子)によりコードされる。一方、HLA−DRβ鎖は多形性である。このため、HLA−DR2は、HLA−DRA遺伝子によりコードされるα鎖とHLA−DR1β
*1501遺伝子によりコードされるβ鎖とを含む。本実施例には、これらの特定のHLA配列が記載されているが、任意の適切なHLA−DR配列、例えば、ヒト集団に示される多型変異体、1つ又は2つ以上の保存的又は非保存的なアミノ酸改変を含む配列、遺伝情報の縮重によって本明細書に記載された配列とは異なる核酸配列等が、本明細書に包含される。
【0160】
キメラMHCIIα及び/又はβポリペプチドのヒト部分は、一般的なヒトの疾患に関連することが公知のHLAアレルの核酸配列によりコードされてもよい。このようなHLAアレルは、HLA−DRB1
*0401、−DRB1
*0301、−DQA1
*0501、−DQB1
*0201、DRB1
*1501、−DRB1
*1502、−DQB1
*0602、−DQA1
*0102、−DQA1
*0201、−DQB1
*0202、−DQA1
*0501、及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。HLAアレル/疾患関連性の概要については、参照により本明細書に組み込まれている、上記Bakker et al.(2006)を参照のこと。
【0161】
一態様において、キメラヒト/非ヒトMHCI、MHCIIα、及び/又はMHCIIβポリペプチドの非ヒト部分は、内在性非ヒト(例えば、げっ歯類、例えば、マウス、ラット等)MHCI、MHCIIα、及び/又はMHCIIβポリペプチドの膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインをそれぞれ含む。このため、キメラヒト/非ヒトMHCIポリペプチドの非ヒト部分は、内在性非ヒトMHCIポリペプチドの膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインを含んでもよい。キメラMHCIIαポリペプチドの非ヒト部分は、内在性非ヒトMHCIIαポリペプチドの膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインを含んでもよい。キメラヒト/非ヒトMHCIIβポリペプチドの非ヒト部分は、内在性非ヒトMHCIIβポリペプチドの膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインを含んでもよい。一態様において、非ヒト動物は、マウスであり、キメラMHCIポリペプチドの非ヒト部分は、マウスH−2Kタンパク質から得られる。一態様において、動物は、マウスであり、キメラMHCIIα及びβポリペプチドの非ヒト部分は、マウスH−2Eタンパク質から得られる。このため、キメラMHCIポリペプチドの非ヒト部分は、マウスH−2Kから得られる膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含んでもよく、キメラMHCIIα及びβポリペプチドの非ヒト部分は、マウスH−2Eタンパク質から得られる膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含んでもよい。特定のH−2K及びH−2E配列が実施例において企図されているが、任意の適切な配列、例えば、多型変異体、保存的/非保存的アミノ酸置換等が本明細書に包含されている。一態様において、非ヒト動物は、マウスであり、マウスは、そのH−2D座から、機能的な内在性MHCポリペプチドを発現していない。いくつかの実施形態では、マウスは、内在性H−2D座の全て又は一部を欠くように操作されている。他の態様では、マウスは、機能的な内在性マウスMHCI及びMHCIIを、細胞表面上に何ら発現していない。
【0162】
キメラヒト/非ヒトポリペプチドは、ヒト又は非ヒトリーダー(シグナル)配列を含むようにであってもよい。一実施形態において、キメラMHCIポリペプチドは、内在性MHCIポリペプチドの非ヒトリーダー配列を含む。一実施形態において、キメラMHCIIαポリペプチドは、内在性MHCIIαポリペプチドの非ヒトリーダー配列を含む。一実施形態において、キメラMHCIIβポリペプチドは、内在性MHCIIβポリペプチドの非ヒトリーダー配列を含む。代替的な実施形態では、キメラMHCI、MHCIIα、及び/又はMHCIIβポリペプチドは、別の非ヒト動物、例えば、別のげっ歯類又は別のマウス系統からの、MHCI、MHCIIα、及び/又はMHCIIβポリペプチドそれぞれの非ヒトリーダー配列を含む。このため、キメラMHCI、MHCIIα、及び/又はMHCIIβポリペプチドをコードする核酸配列は、非ヒトMHCI、MHCIIα、及び/又はMHCIIβリーダー配列をそれぞれコードする核酸配列に操作可能に連結していてもよい。更に別の実施形態では、キメラMHCI、MHCIIα、及び/又はMHCIIβポリペプチドは、ヒトMHCI、ヒトMHCIIα、及び/又はヒトMHCIIβポリペプチドそれぞれのヒトリーダー配列(例えば、ヒトHLA−A2、ヒトHLA−DRα、及び/又はヒトHLA−DRβ1
*1501それぞれのリーダー配列)を含む。
【0163】
キメラヒト/非ヒトMHCI、MHCIIα、及び/又はMHCIIβポリペプチドは、そのヒト部分において、ヒトMHCI、ヒトMHCIIα、及び/又はヒトMHCIIβポリペプチドそれぞれの完全な又は実質的に完全な細胞外ドメインを含んでもよい。このため、ヒト部分は、ヒトMHCI、ヒトMHCIIα、及び/又はヒトMHCIIβポリペプチド(例えば、ヒトHLA−A2、ヒトHLA−DRα、及び/又はヒトHLA−DRβ1
*1501)の細胞外ドメインをコードするアミノ酸配列の少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、例えば、95%以上を含んでもよい。一例において、ヒトMHCI、ヒトMHCIIα、及び/又はヒトMHCIIβポリペプチドの実質的に完全な細胞外ドメインは、ヒトリーダー配列を欠いている。別の例では、キメラヒト/非ヒトMHCI、キメラヒト/非ヒトMHCIIα、及び/又はキメラヒト/非ヒトMHCIIβポリペプチドは、ヒトリーダー配列を含む。
【0164】
更に、キメラMHCI、MHCIIα、及び/又はMHCIIβポリペプチドは、内在性非ヒトプロモータ及び調節エレメント、例えば、マウスMHCI、MHCIIα、及び/又はMHCIIβ調節エレメントそれぞれに操作可能に連結していてもよい(例えば、これらの調節エレメントの調節制御下で発現されてもよい)。このような配置は、非ヒト動物における、例えば、非ヒト動物における免疫応答中における、キメラMHCI及び/又はMHCIIポリペプチドの適切な発現を容易にするであろう。
【0165】
更なる実施形態では、本発明の非ヒト動物、例えば、げっ歯類、例えば、マウスは、(例えば、内在性β2ミクログロブリン座において)ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンをコードする核酸配列を含む。MHCクラスI複合体のβ2ミクログロブリン又は軽鎖(「β2M」とも省略される)は、小型(12kDa)の非グリコシル化タンパク質である。同タンパク質は、MHCIα鎖を安定化するのに主に機能する。ヒト又はヒト化β2ミクログロブリン動物の発生は、米国特許出願公開第20130111617号に詳細に記載されており、同公報は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0166】
ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子全体に対応する核酸残基を含んでもよい。あるいは、ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリンタンパク質のアミノ酸21〜119に示されるアミノ酸配列(すなわち、成熟ヒトβ2ミクログロブリンに対応するアミノ酸残基)をコードする核酸残基を含んでもよい。代替的な実施形態では、ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリンタンパク質のアミノ酸23〜115に示されるアミノ酸配列、例えば、ヒトβ2ミクログロブリンタンパク質のアミノ酸23〜119に示されるアミノ酸配列をコードする核酸残基を含んでもよい。ヒトβ2ミクログロブリンの核酸配列及びアミノ酸配列は、参照により本明細書に組み込まれている、上記Gussow et al.に記載されている。
【0167】
このため、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドは、ヒトβ2ミクログロブリンポリペプチドのアミノ酸23〜115に示されるアミノ酸配列、例えば、ヒトβ2ミクログロブリンポリペプチドのアミノ酸23〜119に示されるアミノ酸配列、例えば、ヒトβ2ミクログロブリンポリペプチドのアミノ酸21〜119に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。あるいは、ヒトβ2ミクログロブリンは、ヒトβ2ミクログロブリンポリペプチドのアミノ酸1〜119を含んでもよい。
【0168】
いくつかの実施形態では、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンをコードするヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエキソン2〜エキソン4に示されるヌクレオチド配列を含む。あるいは、ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエキソン2、3、及び4に示されるヌクレオチド配列を含む。この実施形態では、エキソン2、3、及び4に示されるヌクレオチド配列は、遺伝子の正常な転写及び翻訳を可能にするように、操作可能に連結している。このため、一実施形態において、ヒト配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエキソン2〜エキソン4に対応するヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、ヒト配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエキソン2〜エキソン4の後ろ約267bpに対応するヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、ヒト配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子の約2.8kbを含む。
【0169】
このため、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドは、ヒトβ2ミクログロブリンのエキソン2〜エキソン4に示されるヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列、例えば、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエキソン2〜エキソン4に対応するヌクレオチド配列によりコードされてもよい。あるいは、ポリペプチドは、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエキソン2、3、及び4に示されるヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列によりコードされてもよい。特定の実施形態では、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドは、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエキソン2〜エキソン4の後ろ約267bpに対応するヌクレオチド配列によりコードされる。別の特定の実施形態では、ヒト又はヒト化ポリペプチドは、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子の約2.8kbを含むヌクレオチド配列によりコードされる。β2ミクログロブリン遺伝子のエキソン4が5’非翻訳領域を含有する場合、ヒト又はヒト化ポリペプチドは、β2ミクログロブリン遺伝子のエキソン2及び3を含むヌクレオチド配列によりコードされてもよい。
【0170】
遺伝子操作動物を生じさせる特定の核酸配列及びアミノ酸配列が本明細書で記載されているが、1つ又は2つ以上の保存的又は非保存的アミノ酸置換の配列又は遺伝情報の縮重によって本明細書に記載された配列とは異なる配列も提供されることが、当業者に理解されるであろう。
【0171】
したがって、ヒトβ2ミクログロブリン配列を発現している非ヒト動物であって、β2ミクログロブリン配列が、ヒトβ2ミクログロブリン配列と、少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である、非ヒト動物が提供される。特定の実施形態では、β2ミクログロブリン配列は、本明細書に記載されたヒトβ2ミクログロブリン配列と、少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である。一実施形態において、ヒトβ2ミクログロブリン配列は、1つ又は2つ以上の保存的置換を含む。一実施形態において、ヒトβ2ミクログロブリン配列は、1つ又は2つ以上の非保存的置換を含む。
【0172】
加えて、非ヒト動物であって、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンタンパク質をコードするヌクレオチド配列が、非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエキソン1に示されるヌクレオチド配列も含む、非ヒト動物が提供される。このため、特定の実施形態では、非ヒト動物は、そのゲノム中に、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンをコードするヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は、非ヒトβ2ミクログロブリンのエキソン1並びにヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエキソン2、3、及び4を含む。このため、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドは、非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエキソン1並びにヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエキソン2、3、及び4(例えば、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエキソン2及び3)によりコードされる。
【0173】
一実施形態において、本発明の非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス)は、キメラCD8タンパク質をコードするヌクレオチド配列に加えて、ヒト又はヒト化MHCIタンパク質をコードする核酸配列を更に含む。これにより、動物のT細胞表面上で発現されたキメラCD8タンパク質は、第2の細胞、例えば、抗原提示細胞の表面上で発現されたヒト又はヒト化MHCIと会合、結合、及び/又は相互作用することができる。一実施形態において、MHCIタンパク質は、ヒトMHCIポリペプチドの細胞外ドメインを含む。一実施形態において、動物は、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを更に含む。ヒト又はヒト化MHCIポリペプチド、及び/又はβ2ミクログロブリンポリペプチドを発現している例示的な遺伝子改変動物が、米国特許出願公開第20130111617号及び同第20130185819号に記載されている。両公報は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。このため、一実施形態において、本明細書に記載されたキメラCD8タンパク質を含む動物は、ヒト化MHCI複合体を更に含んでもよく、ヒト化MHCI複合体は、(1)ヒト化MHCIポリペプチドであって、例えば、ヒト化MHCIポリペプチドが、ヒトMHCIの細胞外ドメイン並びに内在性(例えば、マウス)MHCIの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含み、例えば、ヒト化MHCIが、ヒトMHCIポリペプチドのα1、α2及びα3ドメインを含む、ヒト化MHCIポリペプチド、並びに(2)ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを含む(例えば、動物は、そのゲノム中に、ヒトβ2ミクログロブリンのエキソン2、3、及び4に示されるヌクレオチド配列を含む)。一態様において、ヒト化MHCI及びヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドは両方とも、内在性MHCI及びβ2ミクログロブリン座に位置するヌクレオチド配列によりそれぞれコードされる。一態様において、動物は、機能的な内在性MHCI及びβ2ミクログロブリンポリペプチドを発現していない。このため、動物により発現されたMHCIは、キメラヒト/非ヒト、例えば、ヒト/げっ歯類(例えば、ヒト/マウス)MHCIポリペプチドであってもよい。キメラMHCIポリペプチドのヒト部分は、HLA−A、HLA−B、及びHLA−C、例えば、HLA−A2、HLA−B27、HLA−B7、HLA−Cw6からなる群から選択されるヒトHLAクラスIタンパク質、又はヒト集団に存在する任意の他のHLAクラスI分子から得られてもよい。実施形態において、動物は、マウスである場合、キメラMHCIポリペプチドの非ヒト(すなわち、マウス)部分は、H−2D、H−2K、及びH−2Lから選択されるマウスMHCIタンパク質から得られてもよい。
【0174】
一実施形態において、本発明の非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス)は、ヒト又はヒト化MHCIIタンパク質をコードするヌクレオチド配列を更に含む。これにより、動物のT細胞表面上に発現されたキメラCD4タンパク質は、第2の細胞、例えば、抗原提示細胞の表面上で発現されたヒト又はヒト化MHCIIと相互作用することができる。一実施形態において、MHCIIタンパク質は、ヒトMHCIIαポリペプチドの細胞外ドメイン及びヒトMHCIIβポリペプチドの細胞外ドメインを含む。ヒト又はヒト化MHCIIポリペプチドを発現している例示的な遺伝子改変動物が、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、2014年9月30日に発効された米国特許第8,847,005号及び米国特許出願公開第20130185820号に記載されている。このため、一実施形態において、本明細書に記載されたキメラCD4タンパク質を含む動物は、ヒト化MHCIIタンパク質を更に含んでもよく、ヒト化MHCIIタンパク質は、(1)ヒトMHCIIαの細胞外ドメイン並びに内在性、例えば、マウスMHCIIの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含むヒト化MHCIIαポリペプチドであって、ヒトMHCIIαの細胞外ドメインが、ヒトMHCIIαのα1及びα2ドメインを含む、ヒト化MHCIIαポリペプチド、並びに(2)ヒトMHCIIβ細胞外ドメイン並びに内在性、例えば、マウスMHCIIの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含むヒト化MHCIIβポリペプチドであって、ヒトMHCIIβ細胞外ドメインが、ヒトMHCIIβのβ1及びβ2ドメインを含む、ヒト化MHCIIβポリペプチドを含む。一態様において、ヒト化MHCIIα及びβポリペプチドは両方とも、内在性MHCIIα及びβ座に位置する核酸配列によりそれぞれコードされる。一態様において、動物は、機能的な内在性MHCIIα及びβポリペプチドを発現していない。このため、動物により発現されたMHCIIは、キメラヒト/非ヒト、例えば、ヒト/げっ歯類(例えば、ヒト/マウス)MHCIIタンパク質であってもよい。キメラMHCIIタンパク質のヒト部分は、HLA−DR、HLA−DQ、及びHLA−DP、例えば、HLA−DR4、HLA−DR2、HLA−DQ2.5、HLA−DQ8からなる群から選択されるヒトHLAクラスIIタンパク質、又はヒト集団に存在する任意の他のHLAクラスII分子から得られてもよい。動物がマウスである実施形態において、キメラMHCIIポリペプチドの非ヒト(すなわち、マウス)部分は、H−2E及びH−2Aから選択されるマウスMHCIIタンパク質から得られてもよい。
【0175】
遺伝子改変非ヒト動物、例えば、げっ歯類、例えば、ラット又はマウスの様々な他の実施形態は、本開示並びに参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第20130111617号、同第20130185819号、及び同第20130185820号並びに米国特許第8,847,005号の開示から、当業者に明らかとなるであろう。
【0176】
様々な実施形態において、本明細書に記載された遺伝子改変非ヒト動物は、細胞表面上に、ヒト又はヒト化MHCI及びIIを有し、その結果として、ヒト様の方法でT細胞のためのエピトープとしてペプチドを提示する細胞、例えば、APCを生成するが、これは、複合体の実質的に全てのコンポーネントが、ヒトであるか、又はヒト化されているためである。本発明の遺伝子改変非ヒト動物は、免疫応答を引き起こす抗原及び抗原エピトープ(例えば、T細胞エピトープ、例えば、固有のヒトガンエピトープ)の特定のために、例えば、ワクチン開発に使用するために、ワクチン候補及び他のワクチン戦略の評価のために、ヒトの自己免疫を研究するために、ヒトの感染性疾患を研究するために、かつ更にはヒトMHC発現に基づくより良好な治療戦略を発明するために、ヒトの免疫系の機能をヒト化動物において研究するために使用され得る。
非ヒト動物、組織、及び細胞
【0177】
本発明の遺伝子改変非ヒト動物は、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ウシ(例えば、雌牛、雄牛、バッファロー)、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えば、マーモセット、アカゲザル)からなる群から選択されてもよい。好適な遺伝子改変可能ES細胞が容易に入手できない非ヒト動物については、遺伝子改変を含む非ヒト動物を作製するために、他の方法が利用される。このような方法は、例えば、非ES細胞生殖細胞系(例えば、線維芽細胞又は誘導多能性細胞)を改変すること、及び核移植を用いて、卵母細胞など好適な細胞に改変ゲノムを移植し、好適な条件下で非ヒト動物内で改変細胞(例えば、改変卵母細胞)を成熟させて胚を形成することを含む。
【0178】
一態様において、非ヒト動物は、哺乳類である。一態様において、非ヒト動物は、例えば、トビネズミ科又はネズミ上科の小型哺乳類である。一実施形態では、遺伝子改変動物は、げっ歯類である。一実施形態では、げっ歯類は、マウス、ラット、及びハムスターから選択される。一実施形態では、げっ歯類は、ネズミ上科から選択される。一実施形態では、遺伝子改変動物は、カンガルーハムスター科(例えば、マウス様ハムスター)、キヌゲネズミ科(例えば、ハムスター、新世界ラット及びマウス、ハタネズミ)、ネズミ科(真正マウス及びラット、スナネズミ、トゲマウス、タテガミネズミ)、アシナガマウス科(キノボリマウス、イワマウス、オジロラット、マダガスカルラット及びマウス)、トゲヤマネ科(例えば、トゲヤマネ)、及びメクラネズミ科(例えば、デバネズミ、タケネズミ、及びモグラネズミ)から選択される科に属する。特定の実施形態では、遺伝子改変げっ歯類は、真正マウス又はラット(ネズミ科)、スナネズミ、トゲマウス、及びタテガミネズミから選択される。一実施形態では、遺伝子改変マウスはネズミ科に属する。一実施形態において、動物は、げっ歯類である。特定の実施形態では、げっ歯類は、マウス及びラットから選択される。一実施形態では、この非ヒト動物はマウスである。
【0179】
一実施形態では、この非ヒト動物は、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/KaLwN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、及びC57BL/Olaから選択されるC57BL系統のマウスであるげっ歯類である。別の実施形態では、マウスは、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/SvIm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、129T2である系統からなる群から選択される129系統である(例えば、Festing et al.(1999)Revised nomenclature for strain 129 mice,Mammalian Genome 10:836を参照されたく、Auerbach et al(2000)Establishment and Chimera Analysis of 129/SvEv− and C57BL/6−Derived Mouse Embryonic Stem Cell Linesも参照のこと)。特定の実施形態では、遺伝子改変マウスは、上記129系統と上記C57BL/6系統との混合物である。別の特定の実施形態では、マウスは、上記の129系統の混合、又は上記のBL/6系統の混合である。特定の実施形態では、混合の129系統は、129S6(129/SvEvTac)系統である。別の実施形態では、このマウスは、BALB系統、例えばBALB/c系統である。更に別の実施形態では、このマウスは、BALB系統と別の上記系統との混合物である。本明細書で提供された非ヒト動物は、上記系統の任意の組み合わせから得られたマウスであってもよい。
【0180】
一実施形態では、この非ヒト動物はラットである。一実施形態では、ラットは、ウィスターラツト、LEA系統、Sprague Dawley系統、Fischer系統、F344、F6、及びDark Agoutiから選択される。一実施形態では、ラット系統は、ウィスター、LEA、Sprague Dawley、Fischer、F344、F6、及びDark Agoutiからなる群から選択される、2つ又はそれ以上の系統の混合体である。
【0181】
このため、本発明の一実施形態において、遺伝子改変マウスであって、マウスが、例えば、そのゲノム中に、例えば、その生殖細胞系ゲノム中に、(a)第1のキメラヒト/マウスT細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD4)をコードする第1のヌクレオチド配列、第2のキメラヒト/マウスT細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD8α)をコードする第2のヌクレオチド配列、及び/又は第3のキメラヒト/マウスT細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD8β)をコードする第3のヌクレオチド配列であって、各キメラT細胞共受容体ポリペプチドのマウス部分が、マウスT細胞共受容体の少なくとも膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含み、各キメラポリペプチドのヒト部分が、ヒトT細胞共受容体の細胞外部分(又はその一部、例えば、1つ又は2つ以上の細胞外ドメイン)を含み、マウスが、第1、第2、及び/又は第3のキメラT細胞共受容体ポリペプチドを発現している、第1、第2、及び/又は第3のヌクレオチド配列、(b)少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含み、マウスTCRα定常遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列T細胞受容体(TCR)α可変遺伝子座、及び/又は少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント、及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含み、マウスTCRβ定常遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列TCRβ可変遺伝子座、並びに場合により、(c)第1のキメラヒト/マウスMHCポリペプチド(例えば、MHCIIα)をコードする第1の核酸配列、第2のキメラヒト/マウスMHCポリペプチド(例えば、MHCIIβ)をコードする第2の核酸配列、及び/又は第3のキメラヒト/マウスMHCポリペプチド(例えば、MHCI)をコードする第3の核酸配列、並びにヒト又はヒト化β2ミクログロブリンをコードするβ2ミクログロブリン座であって、各キメラMHCポリペプチドのヒト部分が、第1、第2、及び/又は第3のキメラT細胞共受容体ポリペプチドと会合するヒトMHCポリペプチドの細胞外ドメインを含む(例えば、キメラMHCII複合体のヒト部分(例えば、ヒト化MHCIIα及びβポリペプチド)が、キメラCD4ポリペプチドと会合し、かつ/又はキメラMHCIポリペプチドのヒト部分(又はMHCI複合体、例えば、ヒト化MHCIα及びヒト(化)β2ミクログロブリン)が、キメラCD8共受容体(例えば、ヒト化CD8α及びβポリペプチドと会合する)、第1、第2、及び/又は第3の核酸配列、並びに、β2ミクログロブリン座を含む、遺伝子改変マウスが提供される。
【0182】
本明細書において、遺伝子改変マウスであって、そのゲノム中に、例えば、その内在性CD4座において、キメラヒト/マウスCD4ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、キメラポリペプチドのマウス部分が、マウスCD4ポリペプチドの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを少なくとも含む、ヌクレオチド配列を含み、マウスが、キメラヒト/マウスCD4を発現している、遺伝子改変マウスが提供される。一実施形態において、キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトCD4ポリペプチドの全て又は実質的に全ての細胞外ドメインを少なくとも含む。一実施形態において、キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトCD4タンパク質の全て又は実質的に全てのD1ドメインを少なくとも含む。一実施形態において、キメラポリペプチドのヒト部分は、少なくとも、ヒトCD4タンパク質の全て又は実質的に全てのD1〜D2ドメイン、例えば、少なくとも、ヒトCD4タンパク質の全て又は実質的に全てのD1〜D3ドメイン、例えば、ヒトCD4タンパク質の全て又は実質的に全てのD1〜D4ドメインを含む。このため、一実施形態において、マウスは、内在性CD4座において、少なくともヒトCD4遺伝子の全て又は実質的に全てのエキソン4、5、及び6を含むヌクレオチド配列、例えば、ヒトCD4のD1ドメインの一部をコードするヒトCD4遺伝子のエキソン3及びヒトCD4遺伝子のエキソン4〜6の配列を含む。一実施形態において、マウスは、内在性CD4座において、MHCII及び/又はT細胞受容体の細胞外部分との相互作用を担うヒトCD4配列を含むキメラヒト/マウスCD4を含む。別の実施形態では、マウスは、内在性CD4座において、MHCII及び/又はT細胞受容体の可変ドメインとの相互作用を担うヒトCD4配列を含むキメラヒト/マウスCD4を含む。一実施形態において、ヌクレオチド配列は、マウスCD4シグナルペプチドをコードする配列を含む。一実施形態において、マウスは、ヒトCD4の細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列によるマウスCD4の細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列の置換えを含む。別の実施形態では、マウスは、全て又は実質的に全てのマウスCD4 D1ドメインを少なくともコードするヌクレオチド配列、例えば、全て又は実質的に全てのマウスCD4 D1〜D2ドメインを少なくともコードするヌクレオチド配列、例えば、全て又は実質的に全てのマウスCD4 D1〜D3ドメインを少なくともコードするヌクレオチド配列の、それらをコードするヒトヌクレオチド配列による置換えを含む。一実施形態において、キメラCD4ポリペプチドのドメインは、
図5Aに模式的に表されるヌクレオチド配列によりコードされる。
【0183】
一実施形態において、マウスは、その内在性マウスCD4座から、機能的な内在性マウスCD4を発現していない。一実施形態において、本明細書に記載されたマウスは、マウスの生殖細胞系において、キメラヒト/マウスCD4ヌクレオチド配列を含む。
【0184】
一実施形態において、マウスは、ヒト化されていない任意の内在性配列を保持しており、例えば、実施形態において、マウスは、全ての又は実質的に全てのD1〜D3ドメインをコードするヌクレオチド配列の置換えを含み、マウスは、マウスCD4 D4ドメインをコードする内在性ヌクレオチド配列、並びにマウスCD4の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードするヌクレオチド配列を保持している。
【0185】
一態様において、キメラヒト/マウスCD4タンパク質を発現しているマウスは、マウスCD4プロモータ及び調節配列を保持しており、例えば、キメラヒト/マウスCD4をコードするマウスにおけるヌクレオチド配列は、マウス中において、内在性マウスCD4プロモータ及び調節配列に操作可能に連結している。一態様において、本発明の遺伝子操作動物に保持されたこれらのマウス調節配列は、T細胞発達中の適切な段階において、キメラタンパク質の発現を調節する配列を含む。このため、一態様において、マウスは、B細胞又は成熟CD8
+T細胞上に、キメラCD4を発現していない。一態様において、マウスはまた、内在性CD4を通常発現していない任意の細胞種、例えば、任意の免疫細胞種上にも、キメラCD4を発現していない。
【0186】
本明細書で開示された遺伝子改変マウスは、そのゲノム中に、例えば、その内在性CD8座において、キメラヒト/マウスCD8αポリペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列、及びキメラヒト/マウスCD8βポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列を含んでもよい。一実施形態において、第1のヌクレオチド配列は、ヒトCD8αポリペプチドの全て又は実質的に全ての細胞外部分、並びにマウスCD8αポリペプチドの少なくとも膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする配列を含み、第2のヌクレオチド配列は、ヒトCD8βポリペプチドの全て又は実質的に全ての細胞外部分、並びにマウスCD8βポリペプチドの少なくとも膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする配列を含み、マウスは、機能的なキメラヒト/マウスCD8タンパク質を発現している。一実施形態において、第1のヌクレオチド配列は、ヒトCD8αポリペプチドの免疫グロブリンV様ドメインを少なくともコードする配列、及びマウスCD8αポリペプチドの残り部分の配列を含み、第2のヌクレオチド配列は、ヒトCD8βポリペプチドの免疫グロブリンV様ドメインを少なくともコードする配列、及びマウスCD8βポリペプチドの残り部分の配列を含む。一実施形態において、第1のヌクレオチド配列は、ヒトCD8αポリペプチドのMHCI結合ドメインを少なくとも含む。一実施形態において、第1及び第2のヌクレオチド配列は、ヒトCD8αポリペプチド及び/又はCD8βポリペプチドの細胞外部分をそれぞれコードするエキソンを少なくとも含む。一実施形態において、ヒトCD8αポリペプチド及び/又はヒトCD8βポリペプチドの細胞外部分は、膜貫通ドメイン又は細胞質ドメインではない、ヒトCD8αポリペプチド及び/又はCD8βポリペプチドの部分を包含する領域である。一実施形態において、キメラCD8αポリペプチドのドメインは、
図5Bに模式的に表されるヌクレオチド配列によりコードされる。一実施形態において、キメラCD8βポリペプチドのドメインは、
図5Bに模式的に表されるヌクレオチド配列によりコードされる。一実施形態において、キメラヒト/マウスCD8αポリペプチド及び/又はCD8βポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、マウスCD8α及び/又はCD8βシグナルペプチドをそれぞれコードする配列を含む。あるいは、ヌクレオチド配列は、ヒトCD8α及び/又はCD8βシグナルペプチドをコードする配列を含んでもよい。一実施形態において、マウスは、全て又は実質的に全てのヒトCD8α及び/又はCD8β細胞外ドメインをそれぞれコードするヌクレオチド配列による、全て又は実質的に全てのマウスCD8α及び/又はCD8β細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列の置換えを含む。
【0187】
一実施形態において、マウスは、その内在性CD8座から、機能的な内在性マウスCD8α及び/又はCD8βポリペプチドを発現していない。一実施形態において、本明細書に記載されたマウスは、その生殖細胞系において、キメラヒト/マウスCD8配列を含む。
【0188】
一態様において、キメラヒト/マウスCD8α及び/又はCD8βポリペプチドを発現しているマウスは、マウスCD8α及び/又はCD8βプロモータ及び調節配列を保持しており、例えば、マウスにおいて、キメラヒト/マウスCD8をコードするヌクレオチド配列は、内在性マウスCD8プロモータ及び調節配列に操作可能に連結している。一態様において、マウスに保持されたこれらの調節配列は、T細胞発達の適切な段階において、CD8タンパク質発現を調節する配列を含む。一態様において、遺伝子改変マウスは、B細胞若しくは成熟CD4
+T細胞上、又は内在性CD8を通常発現していない任意の細胞、例えば、免疫細胞上に、キメラCD8を発現していない。
【0189】
本発明はまた、遺伝子改変マウスであって、そのゲノム中に、非再配列ヒト又はヒト化TCR可変遺伝子座、例えば、TCRα、TCRβ、TCRδ、及び/又はTCRγ可変遺伝子座を含む、遺伝子改変マウスも提供する。いくつかの実施形態では、非再配列ヒト又はヒト化TCR可変遺伝子座は、内在性マウスTCR可変遺伝子座を置き換える。他の実施形態では、非再配列ヒト又はヒト化TCR可変遺伝子座は、対応する内在性マウスTCR座以外のゲノム中の部位に存在する。いくつかの実施形態では、ヒト又はヒト化非再配列TCR可変遺伝子座は、マウスTCR定常領域に操作可能に連結している。
【0190】
一実施形態において、遺伝子改変マウスであって、マウスが、そのゲノム中に、少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含み、マウスTCRα定常遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列T細胞受容体(TCR)α可変遺伝子座、並びに少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント、及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含み、マウスTCRβ定常遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列TCRβ可変遺伝子座を含む、遺伝子改変マウスが提供される。ある特定の実施形態では、マウスは、そのゲノム中に、ヒトVαセグメントの完全なレパートリ及びヒトJαセグメントの完全なレパートリを含み、マウスTCRα定常遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列TCRα可変遺伝子座と、ヒトVβセグメントの完全なレパートリ、ヒトDβセグメントの完全なレパートリ、及びヒトJβセグメントの完全なレパートリを含み、マウスTCRβ定常遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列TCRβ可変遺伝子座とを含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、ヒトTCRα可変領域セグメントを含む非再配列TCRα可変遺伝子座は、内在性マウスTCRα可変遺伝子座を置き換え、ヒトTCRβ可変領域セグメントを含む非再配列TCRβ可変遺伝子座は、内在性マウスTCRβ可変遺伝子座を置き換える。いくつかの実施形態では、内在性マウスVα及びJαセグメントは、再配列して、再配列Vα/Jα配列を形成することができず、内在性マウスVβ、Dβ、及びJβセグメントは、再配列して、再配列Vβ/Dβ/Jβ配列を形成することができない。いくつかの実施形態では、ヒトVα及びJαセグメントは、再配列して、再配列ヒトVα/Jα配列を形成し、ヒトVβ、Dβ、及びJβセグメントは、再配列して、再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列を形成する。
【0192】
本発明はまた、遺伝子改変マウスであって、そのゲノム中に、キメラMHCポリペプチドをコードする核酸配列を含み、キメラMHCポリペプチドのヒト部分が、本明細書で開示されたキメラT細胞共受容体のヒト細胞外ドメインと会合している、遺伝子改変マウスに関する。本明細書で開示された遺伝子改変マウスは、キメラヒト/マウスMHCIをコードする第1の核酸配列、キメラヒト/マウスMHCIIαをコードする第2の核酸配列、並びに/又はキメラヒト/マウスMHCIIβポリペプチドをコードする第3の核酸配列を含んでもよい。キメラMHCI、MHCIIα、及び/又はMHCIIβのヒト部分は、ヒトMHCI、MHCIIα、及びMHCIIβの細胞外ドメインをそれぞれ含んでもよい。一実施形態において、マウスは、その内在性マウスMHC座から、機能的なキメラヒト/マウスMHCI、MHCIIα、及びMHCIIβポリペプチドを発現している。一実施形態において、マウスは、その内在性マウスMHC座から、機能的なマウスMHCポリペプチド、例えば、機能的なマウスMHCI、MHCIIα、及びMHCIIβポリペプチドを発現していない。他の実施形態では、マウスにより細胞表面上に発現されるMHCI及びMHCIIのみがキメラMHCI及びIIである。
【0193】
一実施形態において、キメラヒト/マウスMHCIポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHCI(例えば、ヒトHLA−A、例えば、ヒトHLA−A2、例えば、ヒトHLA−A2.1)のペプチド結合ドメイン又は細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、マウスは、その内在性マウスMHCI座から、内在性マウスMHCIポリペプチドのペプチド結合ドメイン又は細胞外ドメインを発現していない。ヒトMHCIのペプチド結合ドメインは、α1及びα2ドメインを含んでもよい。あるいは、ヒトMHCIのペプチド結合ドメインは、α1、α2、及びα3ドメインを含んでもよい。一態様において、ヒトMHCIの細胞外ドメインは、ヒトMHCI α鎖の細胞外ドメインを含む。一実施形態において、内在性マウスMHCI座は、H−2K(例えば、H−2Kb)座であり、キメラMHCIポリペプチドのマウス部分は、マウスH−2K(例えば、H−2Kb)ポリぺプチドの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含む。このため、一実施形態において、本発明のマウスは、その内在性マウスMHCI座において、キメラヒト/マウスMHCIをコードする核酸配列を含み、キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトHLA−A2(例えば、HLA−A2.1)ポリペプチドの細胞外ドメインを含み、マウス部分は、マウスH−2K(例えば、H−2Kb)ポリぺプチドの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含み、マウスは、キメラヒト/マウスHLA−A2/H−2Kbタンパク質を発現している。他の実施形態では、キメラMHCIポリペプチドのマウス部分は、他のマウスMHCI、例えば、H−2D、H−2L等から得られてもよい。キメラMHCIポリペプチドのヒト部分は、他のヒトMHCI、例えば、HLA−B、HLA−C等から得られてもよい。一態様において、マウスは、その内在性マウスH−2K座から、機能的な内在性H−2Kポリペプチドを発現していない。一実施形態において、マウスは、そのH−2D座から、機能的な内在性MHCポリペプチドを発現していない。いくつかの実施形態では、マウスは、内在性H−2D座の全て又は一部を欠くように操作されている。他の実施形態では、マウスにより細胞表面上に発現されたMHCIポリペプチドだけがキメラヒト/マウスMHCIポリペプチドである。
【0194】
一実施形態において、キメラヒト/マウスMHCIIαポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHCIIαのペプチド結合ドメイン又は細胞外ドメインを含み、キメラヒト/マウスMHCIIβポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHCIIβのペプチド結合ドメイン又は細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、マウスは、内在性マウス座(例えば、H−2A及び/又はH−2E座)から、内在性マウスα及び/又はβポリペプチドのペプチド結合ドメイン又は細胞外ドメインを発現していない。いくつかの実施形態では、マウスは、H−2Ab1、H−2Aa、H−2Eb1、H−2Eb2、H−2Ea、及びそれらの組み合わせを含む機能的なMHCクラスII分子をコードする遺伝子を欠いているゲノムを含む。いくつかの実施形態では、マウスにより細胞表面上に発現されたMHCIIポリペプチドのみがキメラヒト/マウスMHCIIポリペプチドのみである。ヒトMHCIIαポリペプチドのペプチド結合ドメインは、α1ドメインを含んでもよく、ヒトMHCIIβポリペプチドのペプチド結合ドメインは、β1ドメインを含んでもよい。このため、キメラMHCII複合体のペプチド結合ドメインは、ヒトα1及びβ1ドメインを含んでもよい。ヒトMHCIIαポリペプチドの細胞外ドメインは、α1及びα2ドメインを含んでもよく、ヒトMHCIIβポリペプチドの細胞外ドメインは、β1及びβ2ドメインを含んでもよい。このため、キメラMHCII複合体の細胞外ドメインは、ヒトα1、α2、β1、及びβ2ドメインを含んでもよい。一実施形態において、キメラMHCII複合体のマウス部分は、マウスMHCII、例えば、マウスH−2Eの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン(例えば、マウスH−2Eα及びβ鎖の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン)を含む。このため、一実施形態において、本発明のマウスは、その内在性マウスMHCII座において、キメラヒト/マウスMHCIIαをコードする核酸配列を含み、キメラMHCIIαポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHCIIのα鎖(例えば、HLA−DR2のα鎖)から得られる細胞外ドメインを含み、マウス部分は、マウスMHCII(例えば、H−2E)のα鎖から得られる膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含み、マウスは、その内在性マウスMHCII座において、キメラヒト/マウスMHCIIβをコードする核酸配列を含み、キメラMHCIIβポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHCIIのβ鎖(例えば、HLA−DR2のβ鎖)から得られる細胞外ドメインを含み、マウス部分は、マウスMHC(例えば、H−2E)のβ鎖から得られる膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含み、例えば、マウスは、キメラヒト/マウスHLA−DR2/H−2Eタンパク質を発現している。他の実施形態では、キメラMHCIIタンパク質のマウス部分は、他のマウスMHCII、例えば、H−2A等から得られてもよく、キメラMHCIIタンパク質のヒト部分は、他のヒトMHCII、例えば、HLA−DQ等から得られてもよい。一態様において、マウスは、その内在性マウス座から、機能的な内在性H−2A及びH−2Eポリペプチドを発現していない(例えば、マウスは、H−2Ab1、H−2Aa、H−2Eb1、H−2Eb2、及びH−2Eaポリペプチドを発現していない)。いくつかの実施形態では、マウスは、細胞表面上での任意の内在性MHCI又はMHCII分子の発現を欠いている。
【0195】
様々な態様において、遺伝子改変非ヒト動物又は、非ヒト動物から得られた細胞、胚、若しくは組織により発現されたヒト又はヒト化β2ミクログロブリンは、内在性及び/又はヒトのβ2ミクログロブリンの全ての機能的態様を保存している。例えば、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンは、MHCIポリペプチド(例えば、内在性非ヒト又はヒトMHCIポリペプチド)のα鎖に結合することが好ましい。ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドは、任意の他の分子、例えば、受容体、アンカー、又は内在性非ヒト及び/若しくはヒトβ2ミクログロブリン(例えば、HFEなど)と会合するシグナル伝達分子に結合するか、これらをリクルートするか、ないしは会合してもよい。
【0196】
遺伝子改変動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)に加えて、組織又は細胞が、本明細書に記載されたような非ヒト動物から得られ、異種性β2ミクログロブリン遺伝子又はβ2ミクログロブリン配列、すなわち、核酸配列及び/又はアミノ酸配列を含む、組織又は細胞もまた提供される。一実施形態において、異種性β2ミクログロブリン遺伝子又はβ2ミクログロブリン配列は、ヒト若しくはヒト化β2ミクログロブリン遺伝子、又はヒト若しくはヒト化β2ミクログロブリン配列である。好ましくは、細胞は、有核細胞である。細胞は、MHCI複合体を発現することが既知の任意の細胞、例えば、抗原提示細胞であってもよい。前記細胞により発現されたヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドは、内在性非ヒトMHCI(例えば、げっ歯類MHCI)と相互作用して、機能的なMHCI複合体を形成してもよい。得られたMHCI複合体は、T細胞、例えば、細胞傷害性T細胞と相互作用することができてもよい。このように、本明細書に記載されたような非ヒト動物からの細胞とT細胞とのin virto複合体もまた提供される。
【0197】
ヒト又はヒト化β2ミクログロブリン遺伝子又は配列と、更なるヒト又はヒト化配列、例えば、現在開示されているキメラMHCIポリペプチドを含む、非ヒト細胞もまた提供される。このような例において、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドは、例えば、キメラヒト/非ヒトMHCIポリペプチドと相互作用してもよく、機能的なMHCI複合体が形成されてよい。いくつかの態様では、このような複合体は、T細胞、例えば、ヒト又は非ヒトT細胞上のTCRと相互作用することができる。このため、本明細書に記載されたとおり非ヒト動物からの細胞と、ヒト又は非ヒトT細胞とのin virto複合体もまた提供される。
【0198】
本開示の別の態様は、本明細書に記載された異種性β2ミクログロブリン遺伝子又はβ2ミクログロブリン配列を含む、げっ歯類の胚(例えば、マウス又はラットの胚)である。一実施形態において、胚は、異種性β2ミクログロブリン遺伝子又はβ2ミクログロブリン配列を含むESドナー細胞と、宿主胚細胞とを含む。異種性β2ミクログロブリン遺伝子又はβ2ミクログロブリン配列は、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリン遺伝子又はβ2ミクログロブリン配列である。
【0199】
本発明はまた、本明細書に記載されたとおりの非ヒト動物の染色体又はそのフラグメントを含む(例えば、染色体又はそのフラグメントは、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む)非ヒト細胞を包含する。非ヒト細胞は、本明細書に記載されたとおり非ヒト動物の核を含んでもよい。一実施形態において、非ヒト細胞は、核移植の結果として、染色体又はそのフラグメントを含む。
【0200】
一態様において、異種性β2ミクログロブリン遺伝子又はβ2ミクログロブリン配列を含む非ヒト誘導多能性細胞が提供される。一実施形態において、誘導多能性細胞は、本明細書に記載されたような非ヒト動物から得られる。一実施形態において、異種性β2ミクログロブリン遺伝子又はβ2ミクログロブリン配列は、ヒト又はヒト化遺伝子又は配列である。
【0201】
本発明のいくつかの実施形態では、本明細書に記載されたマウスは、マウスのプロフェッショナル抗原提示細胞、例えば、B細胞、単球/マクロファージ、及び/又は樹状細胞上にのみ、キメラヒト/マウスMHCIIを発現している。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されたマウスは、1つ又は2つ以上のヒト抗原に対して、免疫応答、例えば、細胞性免疫応答を引き起こす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されたマウスは、1つ又は2つ以上のヒト抗原に対して、ヒト化T細胞応答を引き起こす。
【0202】
遺伝子組み換えされた非ヒト動物に加えて、非ヒト胚(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット胚)もまた提供され、この胚は、本明細書に記述されるように非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)に由来するドナーES細胞を含む。一態様において、胚は、キメラCD4遺伝子、キメラCD8(例えば、CD8α及び/又はCD8β)遺伝子、ヒト化MHCI(例えば、MHCIα)核酸配列、ヒト化MHCII(例えば、MHCIIα及び/又はMHCIIβ)核酸配列、非再配列ヒト化TCR(例えば、TCRα及び/若しくはTCRβ、又はTCRδ及び/若しくはTCRγ)座、並びに/又はヒト若しくはヒト化β2ミクログロブリン遺伝子配列を含むESドナー細胞と、宿主胚細胞とを含む。
【0203】
また、組織であって、組織が、本明細書に記載された非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)から得られ、キメラCD4タンパク質、キメラCD8タンパク質(例えば、キメラCD8α及び/又はCD8βタンパク質)、ヒト化TCRポリペプチド(例えば、TCRα及び/若しくはTCRβ、又はTCRδ及び/若しくはTCRγポリペプチド)、ヒト化MHCIポリペプチド(例えば、MHCIα)、ヒト化MHCIIポリペプチド(例えば、MHCIIα及び/若しくはMHCIIβポリペプチド)、並びに/又はヒト若しくはヒト化β2ミクログロブリンを発現している、組織も提供される。
【0204】
一態様において、キメラヒト/非ヒトCD4分子を製造するための方法であって、本明細書に記載されるようにヌクレオチド構築物からキメラCD4タンパク質を、単独の細胞中で発現させることを含む、方法が提供される。一実施形態において、ヌクレオチド構築物は、ウイルスベクターである。特定の実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。一実施形態では、細胞は、CHO、COS、293、HeLa、及びウイルス核酸配列を発現する網膜細胞(例えば、PERC.6(商標)細胞)から選択される。
【0205】
一態様において、キメラCD4タンパク質を発現している細胞が提供される。一実施形態では、細胞は、本明細書に記述されるようにキメラCD4配列を含む発現ベクターを含む。一実施形態では、細胞は、CHO、COS、293、HeLa、及びウイルス核酸配列を発現する網膜細胞(例えば、PERC.6(商標)細胞)から選択される。
【0206】
本明細書に記述されるように非ヒト動物によって作製されるキメラCD4分子もまた提供され、一実施形態では、このキメラCD4分子は、ヒトCD4タンパク質の細胞外ドメインの全て又は実質的に全てのアミノ酸配列、並びに、例えば、マウスCD4タンパク質など非ヒトCD4タンパク質から少なくとも膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含む。別の実施形態では、本明細書に記載されたような非ヒト動物により製造されたキメラCD4分子であり、キメラCD4分子が、少なくとも、ヒトCD4の全て又は実質的に全てのD1ドメイン、例えば、少なくとも、ヒトCD4の全て又は実質的に全てのD1〜D2ドメイン、例えば、少なくとも、ヒトCD4の全て又は実質的に全てのD1〜D3ドメインのアミノ酸配列、例えば、MHCII及び/又はTCRの細胞外ドメインとの結合を担うヒトCD4のアミノ酸配列、例えば、MHCII及び/又はTCRの可変ドメインとの結合を担うヒトCD4のアミノ酸配列を含み、タンパク質の残り部分(例えば、膜貫通ドメイン、細胞質ドメイン、ヒト化されていない細胞外ドメインの任意の部分)が、内在性非ヒトタンパク質配列から得られる、キメラCD4分子が提供される。例示的なキメラヒト/非ヒトCD4ポリペプチドは、配列番号:78に示されるアミノ酸配列を含み、キメラポリペプチドのヒト部分は、(配列番号:79に別に示される)配列番号:78のアミノ酸27〜319の辺りに広がっている。
【0207】
一態様において、キメラヒト/非ヒトCD8分子(例えば、CD8α及び/又はCD8β)を製造するための方法であって、本明細書に記載されたようなヌクレオチド構築物から、キメラCD8ポリペプチドを、単独の細胞中で発現させることを含む、方法が提供される。一実施形態において、ヌクレオチド構築物は、ウイルスベクターである。特定の実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。一実施形態では、細胞は、CHO、COS、293、HeLa、及びウイルス核酸配列を発現する網膜細胞(例えば、PERC.6(商標)細胞)から選択される。
【0208】
一態様において、キメラCD8タンパク質を発現している細胞が提供される。一実施形態において、細胞は、本明細書に記載されるようにキメラCD8配列を含む発現ベクターを含む。一実施形態において、細胞は、CHO、COS、293、HeLa、及びウイルス核酸配列を発現している網膜細胞(例えば、PERC.6(商標)細胞)から選択される。
【0209】
本明細書に記載されるように非ヒト動物により製造されたキメラCD8分子も提供され、キメラCD8分子は、ヒトCD8タンパク質(例えば、CD8α及び/又はCD8β)からの全て又は実質的に全ての細胞外ドメイン、並びに非ヒトCD8タンパク質、例えば、マウスCD8タンパク質からの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを少なくとも含む。例示的なキメラCD8αポリペプチドは、配列番号:88に示され、例示的なキメラCD8βタンパク質は、配列番号:83に示される。
【0210】
本明細書に記載されるように非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)により製造されたヒト化TCRタンパク質も提供され、ヒト化TCRタンパク質は、ヒト可変領域と、非ヒト定常領域とを含む。このため、ヒト化TCRタンパク質は、ヒト相補性決定領域(すなわち、ヒトCDR1、2、及び3)を、その可変ドメイン及び非ヒト定常領域に含む。また、本明細書に記載された非ヒト動物により生成されるヒトTCR可変ドメインをコードする核酸もまた提供される。
【0211】
加えて、本明細書に記述されるように、非ヒト動物から単離された非ヒト細胞が提供される。一実施形態では、細胞はES細胞である。一実施形態において、細胞は、T細胞、例えば、CD4+ T細胞である。一実施形態において、細胞は、ヘルパーT細胞(T
H細胞)である。一実施形態において、T
H細胞は、エフェクターT
H細胞、例えば、T
H1細胞又はT
H2細胞である。一実施形態では、細胞は、CD8+ T細胞である。一実施形態では、細胞は、細胞傷害性T細胞である。ヒト可変領域及び非ヒト定常領域を含むTCRタンパク質を発現している非ヒト細胞もまた提供される。TCRタンパク質は、TCRα、TCRβ、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。一実施形態において、細胞は、T細胞、例えば、CD4+又はCD8+ T細胞である。加えて、本明細書で提供された非ヒトT細胞は、その細胞表面上に、(a)ヒトT細胞共受容体の細胞外ドメインを含み、非ヒトT細胞共受容体の膜貫通ドメイン及び/又は細胞内ドメインに操作可能に連結している、キメラヒト/非ヒトT細胞共受容体、例えば、キメラCD4ポリペプチド又はキメラCD8ポリペプチド、並びに(b)ヒト可変領域及び非ヒト定常領域を含むTCRタンパク質を発現していてもよい。
【0212】
別の実施形態では、細胞は、抗原提示細胞である。一実施形態において、抗原提示細胞は、ヒト化MHCI分子上に抗原を提示する。別の実施形態では、抗原提示細胞は、プロフェッショナル抗原提示細胞、例えば、B細胞、樹状細胞、及びマクロファージである。別の実施形態では、抗原提示細胞は、ヒト化MHCI及び/又はヒト化MHCII分子上に抗原を提示する。
【0213】
一態様において、キメラヒト/非ヒトMHCI及びMHCIIタンパク質(例えば、HLA−A2/H−2K及びHLA−DR2/H−2Eタンパク質)を発現している細胞が提供される。一態様において、細胞は、そのH−2D座から、機能的な内在性MHCポリペプチドを発現していないマウス細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、内在性H−2D座の全て又は一部を欠くように操作されたマウス細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、その表面上に、機能的な内在性MHCI及びMHCIIポリペプチドを何ら発現していないマウス細胞である。一実施形態において、細胞は、本明細書に記載されるようにキメラMHCクラスI配列及びキメラMHCクラスII配列を含む発現ベクターを含む。一実施形態において、細胞は、CHO、COS、293、HeLa、及びウイルス核酸配列を発現する網膜細胞(例えば、PERC.6(商標)細胞)から選択される。
【0214】
本明細書に記載されたHLA−DR2の細胞外ドメインを含むキメラMHCII複合体は、抗HLA−DR抗体により検出することができる。このため、キメラヒト/非ヒトMHCIIポリペプチドを提示している細胞は、抗HLA−DR抗体を使用して、検出及び/又は選択することができる。本明細書に記載されたHLA−A2の細胞外ドメインを含むキメラMHCI複合体は、抗HLA−A、例えば、抗HLA−A2抗体を使用して検出することができる。このため、キメラヒト/非ヒトMHCIポリペプチドを提示している細胞は、抗HLA−A抗体を使用して、検出及び/又は選択することができる。他のHLAアレルを認識する抗体は、市販されるか、又は生成することができ、検出/選択に使用されてもよい。
【0215】
以下の実施例では、ゲノムがキメラヒト/マウスHLA−A2/H−2K及びHLA−DR2/H−2Eタンパク質をコードする核酸配列でそれぞれ、マウスH−2K及びH−2A及びH−2Eタンパク質をコードする核酸配列の置換えを含む遺伝子操作動物が記載されているが、当業者であれば、類似する戦略を使用して、他のヒトMHCI及びII遺伝子(他のHLA−A、HLA−B、及びHLA−C、並びに他のHLA−DR、HLA−DP、及びHLA−DQ遺伝子)を含むキメラを導入することができることを理解するであろう。複数のキメラヒト/非ヒト(例えば、ヒト/げっ歯類、例えば、ヒト/マウス)MHCI及びMHCII遺伝子を内在性MHC座に含むこのような動物もまた提供される。このようなキメラMHCI及びMHCIIタンパク質の例は、米国特許出願公開第20130111617号、同第20130185819号、同第20130185820号、及び同第20140245467号、並びに米国特許第8,847,005号に記載され、それぞれが参照により本明細書に組み込まれている。
【0216】
また、本明細書に記載されるように非ヒト動物の染色体又はそのフラグメントを含む非ヒト細胞もまた提供される。一実施形態において、非ヒト細胞は、記載されるように非ヒト動物の核を含む。一実施形態において、非ヒト細胞は、核移植の結果として、染色体又はそのフラグメントを含む。
【0217】
一態様において、本明細書に記載されるように、キメラCD4ポリペプチドをコードする遺伝子、キメラCD8ポリペプチド(例えば、CD8α及び/又はCD8βポリペプチド)をコードする遺伝子、ヒト化MHCIポリペプチド(例えば、MHCIα及び/又はβ2ミクログロブリン)をコードする遺伝子、ヒト化MHCIIポリペプチド(例えば、MHCIIα及び/又はMHCIIβ)をコードする遺伝子、並びに/又はヒト化TCRα及び/若しくはTCRβポリペプチドをコードする非再配列ヒト化TCR座を含む非ヒト誘導多能性細胞が提供される。一実施形態において、誘導多能性細胞は、本明細書に記載されるように非ヒト動物から得られる。
【0218】
一態様において、本明細書に記載されるように非ヒト動物の細胞から得られた、ハイブリドーマ又はクアドローマが提供される。一実施形態において、非ヒト動物は、マウス又はラットである。
実質的にヒト化されたT細胞免疫応答を開始する遺伝子改変非ヒト動物の製造
【0219】
本明細書に記載された遺伝子操作非ヒト動物(例えば、遺伝子操作げっ歯類、例えば、マウス又はラット)を製造するための方法もまた提供される。概ね、方法は、(a)非ヒト動物のゲノム内に、キメラヒト/非ヒトT細胞共受容体ポリペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列、第2のキメラヒト/非ヒトT細胞共受容体ポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列、及び/又は第3のキメラヒト/非ヒトT細胞共受容体ポリペプチドをコードする第3のヌクレオチド配列を導入することであって、各キメラT細胞共受容体ポリペプチドの非ヒト部分が、非ヒトT細胞共受容体の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを少なくとも含み、各キメラポリペプチドのヒト部分が、ヒトT細胞共受容体の細胞外部分(又はその一部)を含む、ことと、(b)非ヒト動物のゲノム内に、少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含み、非ヒトTCRα定常遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列T細胞受容体(TCR)α可変遺伝子座、並びに/若しくは少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント、及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含み、非ヒトTCRβ定常遺伝子配列に操作可能に連結している、非再配列TCRβ可変遺伝子座を挿入することと、任意選択的に、(c)ゲノム内に、第1のキメラヒト/非ヒトMHCポリペプチドをコードする第1の核酸配列、第2のキメラヒト/非ヒトMHCポリペプチドをコードする第2の核酸配列、及び/若しくは第3のキメラヒト/非ヒトMHCポリペプチドをコードする第3の核酸配列を配置すること、並びに/又は(d)非ヒト動物のゲノム内に、ヒト若しくはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするβ2ミクログロブリン座を付加すること、を含む。いくつかの実施形態では、導入する工程、挿入する工程、及び/又は配置する工程は、T細胞共受容体の細胞外ドメイン、TCRの可変ドメイン、MHCポリペプチドの細胞外ドメイン、又はβ2ミクログロブリンの一部をコードする配列を標的化することと、これらを、ヒトT細胞共受容体の細胞外ドメイン、ヒトTCRの可変ドメイン、ヒトMHCの細胞外ドメイン、及び/又はβ2ミクログロブリンのヒト部分によりそれぞれ置き換えることと、を含む。
【0220】
他の実施形態では、導入すること、挿入すること、配置すること、及び/又は付加することは、同じ種の動物を交雑、例えば、交配させることを含んでもよい。他の実施形態では、導入すること、挿入すること、配置すること、及び/又は付加することは、ES細胞中での連続的な相同組換えを含む。いくつかの実施形態では、ES細胞は、1つ又は2つ以上であるが、全てではない所望の遺伝子改変を含むように遺伝子改変された非ヒト動物から得られ、このようなES細胞中での相同組換えにより、遺伝子改変が完了する。他の実施形態では、導入すること、挿入すること、配置すること、及び/又は付加することは、交雑と、ES細胞中での相同組換えとの組み合わせ、例えば、動物を同じ種の別の(又は複数の)動物と交雑させることを含んでもよく、動物の一部又は全部が、一回の相同組換え又は連続的な相同組換えイベントにより、遺伝子改変されたES細胞から生じてもよく、一部のES細胞は、本明細書で開示された遺伝子改変のうち1つ又は2つ以上を含む非ヒト動物から単離されてもよい。
【0221】
いくつかの実施形態では、方法は、実施例に記述されるように、VELOCIGENE(登録商標)技術を使用して作製された標的化構築物を利用し、この構築物をES細胞に導入し、標的化されたES細胞クローンをVELOCIMOUSE(登録商標)技術を使用してマウス胚に導入する。標的化構築物は、置き換えられる内在性配列を標的化する5’及び/又は3’ホモロジーアーム、(内在性配列を置き換える)インサート配列、並びに1つ又は2つ以上の選択カセットを含んでもよい。選択カセットは、対象となる構築物が組み込まれた細胞(例えば、ES細胞)の選択を容易にするために標的化構築物内に挿入されたヌクレオチド配列である。多数の好適な選択カセットが当該技術分野において既知である。一般的には、選択カセットは、特定の抗生物質(例えば、Neo、Hyg、Pur、CM、SPEC等)の存在下においてポジティブ選択を可能にする。加えて、選択カセットは、組み換え部位に隣接してもよく、これは、リコンビナーゼ酵素による処理の際に選択カセットの欠失を可能にする。一般的に用いられる組み換え部位は、それぞれCre及びFlp酵素によって認識されるloxP及びFrtであるが、その他は当該技術分野において周知である。選択カセットは、コード領域の外側の構築物内のどこに位置してもよい。一実施形態において、選択カセットは、5’端のヒトDNAフラグメントに位置している。別の実施形態では、選択カセットは、ヒトDNAフラグメントの3’端に位置している。別の実施形態では、選択カセットは、ヒトDNAフラグメント内に位置している。別の実施形態では、選択カセットは、ヒトDNAフラグメントのイントロン内に位置している。別の実施形態では、選択カセットは、ヒトとマウスとのDNAフラグメントの接合部に位置している。
【0222】
一実施形態において、遺伝子操作非ヒト動物を製造するための方法により、内在性CD4座において、キメラヒト/非ヒトCD4ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む動物がもたらされる。一実施形態において、本発明は、本明細書に記載されたキメラヒト/非ヒトCD4ポリペプチドを発現するように、非ヒト動物のCD4座を改変する方法を含む。一実施形態において、本発明は、非ヒト動物、例えば、マウスの内在性CD4座において、内在性非ヒトCD4ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を導入すること、例えば、内在性非ヒトCD4ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、キメラヒト/マウスCD4ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列により置き換えることを含む、キメラヒト/マウスCD4ポリペプチドを発現するように、マウスのCD4座を改変する方法を提供する。方法の一態様において、キメラヒト/マウスCD4ポリペプチドは、ヒトCD4ポリペプチドの全て又は実質的に全ての細胞外ドメインと、内在性マウスCD4ポリペプチドの少なくとも膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインとを含む。方法の別の態様では、キメラヒト/マウスCD4ポリペプチドは、ヒトCD4ポリペプチドの全て又は実質的に全てのD1〜D2ドメインを含む。更に別の実施形態では、キメラヒト/マウスCD4ポリペプチドは、ヒトCD4ポリペプチドの全て又は実質的に全てのD1〜D3ドメインを含む。更に別の実施形態では、キメラヒト/マウスCD4ポリペプチドは、MHCII及び/又はT細胞受容体の細胞外ドメインとの相互作用を担うヒトCD4の全て又は実質的に全てのアミノ酸配列を含む。更に別の実施形態では、キメラヒト/マウスCD4ポリペプチドは、MHCII及び/又はT細胞受容体の可変ドメインとの相互作用を担うヒトCD4の全て又は実質的に全てのアミノ酸配列を含む。
【0223】
このため、キメラヒト/非ヒトCD4を含む遺伝子改変動物を生じさせるためのヌクレオチド構築物が提供される。一態様において、ヌクレオチド配列は、5’及び3’ホモロジーアーム、ヒトCD4遺伝子配列(例えば、ヒトCD4細胞外ドメイン遺伝子配列、例えば、ヒトCD4の全て又は実質的に全てのドメインD1〜D2の遺伝子配列、例えば、ヒトCD4の全て又は実質的に全てのドメインD1〜D3及び/又はD2〜D3の遺伝子配列、例えば、ヒトCD4の全て又は実質的に全てのドメインD1〜D4の遺伝子配列)を含むDNAフラグメント、及び組換え部位に隣接する選択カセットを含む。一実施形態において、ヒトCD4遺伝子配列は、ヒトCD4のイントロン及びエキソンを含むゲノム配列である。一実施形態において、ホモロジーアームは、非ヒト(例えば、マウス)CD4ゲノム配列に対して相同的である。本発明の例示的な構築物は、
図5Aに示される。
【0224】
いくつかの実施形態では、方法により、内在性CD8座において、キメラヒト/非ヒトCD8α及び/又はCD8βポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む動物がもたらされる。一実施形態において、本発明は、本明細書に記載されたキメラヒト/非ヒトCD8ポリペプチドを発現するように、非ヒト動物のCD8座を改変する方法を提供する。一態様において、非ヒト動物、例えば、マウスの内在性CD8座において、内在性非ヒトCD8ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を導入すること、例えば、内在性非ヒトCD8ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、キメラヒト/マウスCD8ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列により置き換えることを含む、キメラヒト/マウスCD8ポリペプチドを発現するように、マウスのCD8座を改変する方法が提供される。CD8ポリペプチドは、CD8α、CD8β、及びこれらの組み合わせから選択されてもよい。一態様において、キメラポリペプチドは、ヒトCD8ポリペプチドの全て又は実質的に全ての細胞外ドメインと、内在性マウスCD8ポリペプチドの少なくとも膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインとを含む。
【0225】
このため、ヒト/非ヒトCD8を含む遺伝子改変動物を生じさせるためのヌクレオチド構築物も提供される。一態様において、ヌクレオチド構築物の配列は、5’及び3’ホモロジーアーム、ヒトCD8α又はCD8β配列を含むDNAフラグメント、及び組換え部位に隣接する選択カセットを含む。いくつかの実施形態では、ヒト配列は、ヒトCD8α又はCD8βのイントロン及びエキソン、例えば、ヒトCD8α又はCD8βの細胞外ドメインをそれぞれコードするエキソンを含む。一実施形態において、ホモロジーアームは、非ヒトCD8α又はCD8β配列に対して相同性である。CD8α又はCD8βの例示的な構築物は、
図5Bに示される。
【0226】
CD8α及びCD8βをコードする遺伝子の染色体局在が近いために、2つの遺伝子の連続的な標的化により、ヒト化に成功する機会が改善される。一実施形態において、標的化戦略は、本明細書に記載されたキメラCD8β構築物をES細胞内に導入することと、標的化ES細胞からマウスを生じさせることと、マウスから遺伝子改変ES細胞を得ることと、本明細書に記載されたキメラCD8β構築物を前記遺伝子改変ES細胞内に導入することとを含む。別の実施形態では、標的化戦略は、本明細書に記載されたキメラCD8β構築物をES細胞内に導入することと、キメラCD8β構築物が組み込まれている細胞を選択することと、本明細書に記載されたキメラCD8α構築物を、キメラCD8β構築物が組み込まれ、これを保有しているES細胞内に導入することと、キメラCD8α及びCD8βの両方が組み込まれた細胞を選択することとを含む。この実施形態の一態様において、選択する工程は、様々な選択マーカーを利用して行われる。代替的な実施形態では、CD8αのヒト化が、最初に達成され得る。遺伝子ターゲティングの完了時、遺伝子改変非ヒト動物のES細胞をスクリーニングして、当該技術分野において既知の多様な方法(例えば、Valenzuela et al.(2003)High−throughput engineering of the mouse genome coupled with high−resolution expression analysis,Nature Biotech.21(6):652〜659に記載されたアレルアッセイの変更)により、対象となる外来性ヌクレオチド配列の組み込みの成功、又は外来性ポリペプチドの発現を確認することができる。
【0227】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変非ヒト動物を製造するための方法により、ゲノムが、ヒト化非再配列TCR座(例えば、ヒト化非再配列TCRα、TCRβ、TCRδ、及び/又はTCRγ座)を含む、動物がもたらされる。一実施形態において、ヒト可変領域及び非ヒト(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)定常領域を含むT細胞受容体をT細胞の表面上に発現している、遺伝子改変非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)を製造するための方法が提供される。この場合、方法は、第1の非ヒト動物において、内在性非ヒトTCRα可変遺伝子座を挿入すること、例えば、内在性非ヒトTCRα可変遺伝子座を、少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含む非再配列ヒト化TCRα可変遺伝子座により置き換えることであって、ヒト化TCRα可変遺伝子座が内在性TCRα定常領域に操作可能に連結している、ことと、第2の非ヒト動物において、内在性非ヒトTCRβ可変遺伝子座を挿入すること、例えば、内在性非ヒトTCRβ可変遺伝子座を、少なくとも1つのヒトVβセグメント、1つのヒトDβセグメント、及び1つのヒトJβセグメントを含む非再配列ヒト化TCRβ可変遺伝子座により置き換えることであって、ヒト化TCRβ可変遺伝子座が内在性TCRβ定常領域に操作可能に連結している、ことと、第1及び第2の非ヒト動物を交雑させて、ヒト可変領域及び非ヒト定常領域を含むT細胞受容体を発現する非ヒト動物を得ることとを含む。他の実施形態では、本発明は、ゲノムがヒト化非再配列TCRα座を含む遺伝子改変非ヒト動物、又はゲノムがヒト化非再配列TCRβ座を含む非ヒト動物を製造する方法を提供する。様々な実施形態において、置換えは、内在性座において行われる。様々な実施形態において、方法は、進歩したヒト化戦略を含み、更なる可変領域セグメントを含む構築物が、ES細胞内に、ヒト化のその後の各工程において導入され、最終的に、ヒト可変領域セグメントの完全なレパートリを含むマウスがもたらされる(例えば、
図4A及び
図4Bを参照のこと)。
【0228】
本開示はまた、本明細書に記載されたヒト化TCRタンパク質を発現するように、非ヒト動物のTCR可変遺伝子座(例えば、TCRα、TCRβ、TCRδ、及び/又はTCRγ遺伝子座)を改変する方法を提供する。一実施形態において、本発明は、ヒト化TCRタンパク質をT細胞の表面上に発現するように、TCR可変遺伝子座を改変する方法を提供し、方法は、非ヒト動物において、内在性非ヒトTCR可変遺伝子座を挿入すること、例えば、内在性非ヒトTCR可変遺伝子座を、非再配列ヒト化TCR可変遺伝子座により置き換えることを含む。TCR可変遺伝子座がTCRα可変遺伝子座である一実施形態において、非再配列ヒト化TCR可変遺伝子座は、少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含む。TCR可変遺伝子座がTCRβ可変遺伝子座である一実施形態において、非再配列ヒト化TCR可変遺伝子座は、少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント、及び1つのヒトJβセグメントを含む。様々な態様において、非再配列ヒト化TCR可変遺伝子座は、対応する内在性非ヒトTCR定常領域に操作可能に連結している。
【0229】
このため、ヒト化TCR可変領域遺伝子を含む遺伝子改変動物を生じさせるためのヌクレオチド構築物もまた提供される。一態様において、ヌクレオチド構築物は、5’及び3’ホモロジーアーム、ヒトTCR可変領域遺伝子セグメントを含むヒトDNAフラグメント、及び組換え部位に隣接する選択カセットを含む。一実施形態において、ヒトDNAフラグメントは、TCRα遺伝子フラグメントであり、同フラグメントは、少なくとも1つのヒトTCRα可変領域セグメントを含む。別の実施形態では、ヒトDNAフラグメントは、TCRβフラグメントであり、同フラグメントは、少なくとも1つのヒトTCRβ可変領域遺伝子セグメントを含む。一態様において、少なくとも1つのホモロジーアームは、非ヒトホモロジーアームであり、同アームは、非ヒトTCR座(例えば、非ヒトTCRα又はTCRβ座)に対して相同性である。
【0230】
本発明の様々な態様において、キメラヒト/非ヒトMHCI及びMHCIIポリペプチドをコードする配列は、内在性非ヒトMHC座(例えば、マウスH−2K及び/又はH−2E座)に位置している。一実施形態において、これにより、内在性MHC遺伝子又はその一部の配置、例えば、ヒト又はヒト化MHCIポリペプチドをコードする核酸配列による、内在性MHC遺伝子又はその一部の置換えがもたらされる。MHCI、MHCIIα、及びMHCIIβポリペプチドをコードする核酸配列が、染色体上で互いに近接して位置しているため、1つの動物において、MHCI及びMHCII両方のヒト化の最も高い成功を達成するために、MHCI及びMHCII座は、連続的に標的化されるべきである。こうして、本明細書に記載されるようなキメラヒト/非ヒトMHCI、MHCIIα、及びMHCIIβポリペプチドをコードする核酸配列を含む遺伝子改変非ヒト動物を生じさせる方法もまた本明細書において提供される。
【0231】
こうして、キメラヒト/非ヒトMHCを含む遺伝子改変動物を生じさせるためのヌクレオチド構築物が提供される。一態様において、核酸構築物は、5’及び3’非ヒトホモロジーアーム、ヒトMHC遺伝子配列(例えば、ヒトHLA−A2又はヒトHLA−DR遺伝子配列)を含むヒトDNAフラグメント、及び組換え部位に隣接する選択カセットを含む。一実施形態において、ヒトDNAフラグメントは、ヒトMHC遺伝子(例えば、ヒトHLA−A2又はヒトHLA−DR2遺伝子)のイントロン及びエキソンの両方を含むゲノムフラグメントである。一実施形態において、非ヒトホモロジーアームは、非ヒトMHC座(例えば、MHCI又はMHCII座)に対して相同性である。
【0232】
一実施形態において、5’及び3’非ヒトホモロジーアームは、内在性非ヒト(例えば、マウス)MHCクラスI又はクラスII遺伝子座の5’及び3’位置(例えば、マウスMHCI遺伝子の第1のリーダー配列の5’及びα3エキソンの3’、又はマウスH−2Ab1遺伝子の上流及びマウスH−2Ea遺伝子の下流)それぞれにおけるゲノム配列を含む。一実施形態において、内在性MHCクラスI座は、マウスH−2K、H−2D、及びH−2Lから選択される。特定の実施形態では、内在性MHCクラスI座は、マウスH−2Kである。一実施形態において、内在性MHCII座は、マウスH−2E及びH−2Aから選択される。一実施形態において、操作MHCII構築物により、マウスH−2E及びH−2A遺伝子両方の置換えが可能となる。一実施形態において、マウスは、そのH−2D座から、機能的な内在性MHCポリペプチドを発現していない。いくつかの実施形態では、マウスは、内在性H−2D座の全て又は一部を欠くように操作されている。別の実施形態では、マウスは、機能的な内在性MHCI及びMHCIIポリペプチドを、細胞表面上に何ら発現していない。一実施形態において、マウスにより細胞表面上に発現されるMHCI及びMHCIIだけが、キメラヒト/マウスMHCI及びMHCIIである。
【0233】
本開示はまた、ゲノムが、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするβ2ミクログロブリン座を含む、遺伝子操作非ヒト動物(例えば、遺伝子操作げっ歯類、例えば、マウス又はラット)を製造する方法を提供する。一態様において、方法により、ゲノムが、内在性β2ミクログロブリン座において、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、遺伝子操作げっ歯類、例えば、マウスがもたらされる。場合によっては、マウスは、機能的なマウスβ2ミクログロブリンを、内在性マウスβ2ミクログロブリン座から発現していない。いくつかの態様では、方法は、本明細書に記述されるように、例えば、VELOCIGENE(登録商標)技術を使用して作製された標的化構築物を利用し、この構築物をES細胞に導入し、標的化されたES細胞クローンをVELOCIMOUSE(登録商標)技術を使用してマウス胚に導入する。
【0234】
遺伝子操作非ヒト動物を生成するために使用されるヌクレオチド構築物もまた提供される。ヌクレオチド構築物は、5’及び3’非ヒトホモロジーアーム、ヒトβ2ミクログロブリン配列を含むヒトDNAフラグメント、及び組換え部位に隣接する選択カセットを含んでもよい。一実施形態において、ヒトDNAフラグメントは、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のイントロン及びエキソンの両方を含むゲノムフラグメントである。一実施形態において、非ヒトホモロジーアームは、非ヒトβ2ミクログロブリン座に対して相同性である。ゲノムフラグメントは、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエキソン2、3、及び4を含んでもよい。一例において、ゲノムフラグメントは、5’から3’へ、ヒトβ2ミクログロブリン配列の全てである、エキソン2、イントロン、エキソン3、イントロン、及びエキソン4を含む。選択カセットは、β2ミクログロブリンコード領域の外側の構築物内のどこに位置してもよい。例えば、選択カセットは、ヒトβ2ミクログロブリンのエキソン4の3’に位置してもよい。5’及び3’非ヒトホモロジーアームは、内在性非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のゲノム配列5’及び3’をそれぞれ含んでもよい。別の実施形態では、5’及び3’非ヒトホモロジーアームは、内在性非ヒト遺伝子のエキソン2のゲノム配列5’と、内在性非ヒト遺伝子のエキソン4の3’をそれぞれ含む。
【0235】
本発明の別の態様は、本明細書に記載されたヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現するように、非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)のβ2ミクログロブリン座を改変する方法に関する。ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現するように、非ヒト動物、例えば、マウスのβ2ミクログロブリン座を改変する1つの方法は、内在性β2ミクログロブリン座において、マウスβ2ミクログロブリンをコードするヌクレオチド配列を、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列により置き換えることを含む。このような方法の一実施形態において、非ヒト動物、例えば、マウスは、機能的なβ2ミクログロブリンポリペプチドを、内在性非ヒト、例えば、マウスβ2ミクログロブリン座から発現していない。いくつかの特定の実施形態では、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエキソン2〜4に示されるヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエキソン2、3、及び4に示されるヌクレオチド配列を含む。
【0236】
本明細書に記載されたヒト化座の様々な例示的な実施形態は、
図2〜
図5に提示される。
【0237】
遺伝子ターゲティングの完了時、ES細胞又は遺伝子改変非ヒト動物をスクリーニングして、所望の外因性ヌクレオチド配列の成功した取り込み又は外因性ポリペプチドの発現を確認する。数多くの手法が、当業者に既知であり、サザンブロット、ロングPCR、定量PCR(例えば、TAQMAN(登録商標)を使用するリアルタイムPCR)、蛍光in situハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、フローサイトメトリー、ウェスタン分析、免疫細胞化学、免疫組織化学等が挙げられる(が、これらに限定されない)。一例において、対象となる遺伝子改変を有する非ヒト動物(例えば、マウス)は、Valenzuela et al.(2003)High−throughput engineering of the mouse genome coupled with high−resolution expression analysis,Nature Biotech.21(6):652〜659に記載されたアレルアッセイの変形例を使用して、マウスアレルの喪失及び/又はヒトアレルの獲得をスクリーニングすることにより特定され得る。遺伝子改変動物中の特定のヌクレオチド又はアミノ酸配列を特定する他のアッセイは、当業者に既知である。
【0238】
いくつかの実施形態では、本明細書において、動物は、交雑により生じる。
【0239】
1つの非限定的な態様では、例えば、本明細書に記載されたキメラヒト/非ヒトCD8並びにヒト化MHCI及び/又はβ2ミクログロブリンを含む非ヒト動物は、本明細書に記載されるように、キメラCD8座(例えば、キメラCD8α及び/又はβ座)を含む動物を、ヒト化MHCI及び/又はβ2ミクログロブリン座を含む動物と交雑させることにより生成することができる。動物はまた、ヒト化MHCI及び/又はβ2ミクログロブリン座を含む動物のES細胞内に、キメラCD8(例えば、キメラCD8α及び/又はβ)をコードするヌクレオチド配列を、例えば、内在性CD8座(例えば、キメラCD8α及び/又はβ座)での置換のために導入すること、又はキメラCD8座(例えば、キメラCD8α及び/又はβ座)を含む動物のES細胞内に、ヒト化MHCI及び/又はβ2ミクログロブリンをコードするヌクレオチド配列を導入することにより生成することができる。
【0240】
いくつかの実施形態では、キメラCD8座を含む動物は、まず、ヒト化TCR可変遺伝子座を含む動物と交雑されて、ヒト化CD8及びTCR可変領域座を含む動物を生じさせてもよく、ついで、この動物が、ヒト化MHCI及び/又はβ2ミクログロブリン座を含む動物と交雑されて、ヒト化MHCI、TCR可変遺伝子、及び/又はβ2ミクログロブリン座を含む動物を生成することができる。あるいは、まず、ヒト化MHCI及び/又はβ2ミクログロブリン座を含む動物が、ヒト化TCR可変遺伝子座を含む動物と交雑されて、ヒト化MHCI及びTCR可変領域座を含む動物を生成することができ、ついで、この動物が、キメラCD8座を含む動物と交雑されて、ヒト化MHCI、TCR可変遺伝子、及び/又はβ2ミクログロブリン座それぞれを含む動物を生成することができる。
【0241】
一態様において、キメラヒト/非ヒトCD4及びヒト化MHCIIを含む非ヒト動物は、本明細書に記載されたように、キメラCD4座を含む動物を、ヒト化MHCII座を含む動物と交雑させることにより生成することができる。動物は、例えば、内在性CD4座における置換のために、ヒト化MHCII座を含む動物のES細胞内に、キメラCD4をコードするヌクレオチド配列を導入すること、又はキメラCD4座を含む動物のES細胞内に、ヒト化MHCIIをコードするヌクレオチド配列を導入することによっても生成することができる。
【0242】
いくつかの実施形態では、まず、キメラCD4座を含む動物は、ヒト化TCR可変遺伝子座を含む動物と交雑されて、ヒト化CD4及びTCR可変領域座を含む動物を生成することができ、ついで、この動物が、ヒト化MHCII座を含む動物と交雑されて、ヒト化CD4、MHCII、及びTCR可変遺伝子座を含む動物を生成することができる。あるいは、まず、含んでいるヒト化MHCII座を含む動物が、ヒト化TCR可変遺伝子座を含む動物と交雑されて、ヒト化MHCII及びTCR可変領域座を含む動物を生成することができ、ついで、この動物が、キメラCD4座を含む動物と交雑されて、ヒト化MHCII、TCR可変遺伝子、及び/又はβ2ミクログロブリン座をそれぞれ含む動物を生成することができる。
【0243】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されたキメラヒト/非ヒトCD8並びにヒト化MHCI及び/又はβ2ミクログロブリンを含む非ヒト動物は、本明細書に記載されるようにキメラCD4座含む動物、及びヒト化MHCII座を含む動物と交雑されて、キメラCD4及びCD8ポリペプチド並びにヒト化MHCI(及び/又はβ2ミクログロブリン)及びMHCII分子を含む非ヒト動物を生成することができる。いくつかの実施形態では、キメラヒト/非ヒトCD4及びCD8ポリペプチド並びにヒト化MHCI及びMHCII分子を含む動物は、ヒト化TCR可変ドメインを含む動物と交雑されて、実質的にヒト化されたT細胞免疫系、例えば、キメラヒト/非ヒトCD4及びCD8ポリペプチド、ヒト化MHCI(及び/又はβ2ミクログロブリン)及びMHCII分子、並びにヒト化TCR可変ドメインを含む動物を生成することができる。
【0244】
本明細書に記載された遺伝子改変非ヒト動物(例えば、マウス)の任意のものは、キメラヒト/非ヒトCD8(例えば、CD8α及び/又はCD8β)、キメラヒト/非ヒトCD4、ヒト又はヒト化MHCI、ヒト又はヒト化β2ミクログロブリン、ヒト又はヒト化MHCII(例えば、MHCIIα及び/又はMHCIIβ)、並びにヒト又はヒト化TCR(例えば、TCRα及び/又はTCRβ)をコードする遺伝子の1つ又は2つのコピーを含んでもよい。したがって、動物は、これらの遺伝子のうちいずれか又は全てについて、ヘテロ接合性又はホモ接合性でもよい。
実質的にヒト化されたT細胞免疫応答を開始する遺伝子改変非ヒト動物の使用
【0245】
ヒト化CD4及びMHCIIかヒト化CD8及びMHCI(及びβ2ミクログロブリン)のいずれか一方又は両方を含む、遺伝子改変非ヒト動物、例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラットは、T細胞(それぞれCD4+ T細胞又はCD8+ T細胞)に対して、ヒト様の方法で、ペプチドを提示する。これは、複合体の実質的に全てのコンポーネントが、ヒトであるか、又はヒト化されているためである。本発明の遺伝子改変非ヒト動物を使用して、免疫応答を引き起こす抗原及び抗原エピトープ(例えば、T細胞エピトープ、例えば、固有のヒトガンエピトープ)の特定のために、例えば、ワクチン開発に使用するために、ヒト病原体又はガン抗原に対して高い親和性のT細胞(すなわち、ヒトMHCI複合体に関する抗原に高い結合活性で結合するT細胞)の特定のために、例えば、適応T細胞療法に使用するために、ワクチン候補及び他のワクチン戦略の評価のために、ヒトの自己免疫を研究するために、ヒトの感染性疾患を研究するために、かつ更にはヒトMHC及びCD4/CD8発現に基づくより良好な治療戦略を考案するために、ヒトの免疫系の機能をヒト化動物において研究することができる。
【0246】
このように、様々な実施形態において、本発明の遺伝子操作動物は、ヒトにおける免疫応答を開始する抗原の能力を評価するために、かつ抗原の多様性を生じさせ、ヒトワクチン開発に使用することができる特定の抗原を特定するためにとりわけ有用である。
【0247】
一態様において、ペプチドがヒトにおける細胞性免疫応答を引き起こすか否かを判定する方法が提供され、方法は、本明細書に記載されるように遺伝子改変非ヒト動物をペプチドに曝すことと、非ヒト動物に免疫応答を開始させることと、非ヒト動物において、本明細書に記載されるようにキメラヒト/非ヒトMHCI又はII分子により提示されたペプチドの配列に結合する細胞(例えば、ヒトCD8又はCD4をそれぞれ含むCD8+ T細胞又はCD4+ T細胞)を検出することと、を含む。一実施形態において、曝露後の非ヒト動物は、ペプチドを結合する、MHCクラスI限定CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を含む。別の実施形態では、曝露後の非ヒト動物は、ペプチドを結合する、MHCII限定CD4+ T細胞を含む。
【0248】
一態様において、ヒトT細胞エピトープを特定するための方法であって、本明細書に記載されるように非ヒト動物を、推定のT細胞エピトープを含む抗原に曝すことと、非ヒト動物に免疫応答を開始させることと、非ヒト動物から、エピトープを結合するMHCクラスI又はMHCクラスII限定T細胞を単離することと、前記T細胞によって結合したエピトープを特定することと、を含む、方法が提供される。
【0249】
一態様において、ヒトにおけるT細胞応答を生じさせる抗原を特定するための方法であって、推定の抗原を、本明細書に記載されたマウスに曝すことと、マウスに免疫応答を生じさせることと、HLAクラスI又はクラスII限定分子によって結合した抗原を特定することと、を含む、方法が提供される。
【0250】
一態様において、推定の抗原がヒトの免疫系への曝露時に、HLAクラスI又はクラスII限定免疫応答を生じさせるであろうエピトープを含有するか否かを判定するための方法であって、本明細書に記載されるように、マウスを推定の抗原に曝すことと、マウスにおいて、抗原特異的HLAクラスI又はクラスII限定免疫応答を測定することと、を含む、方法が提供される。
【0251】
加えて、本明細書に記載された遺伝子操作非ヒト動物は、T細胞受容体、例えば、高結合活性T細胞受容体の特定に有用であってもよく、同受容体は、対象となる抗原、例えば、腫瘍又は別の疾患の抗原を認識する。方法は、本明細書に記載された非ヒト動物を抗原に曝すことと、非ヒト動物に抗原に対する免疫応答を開始させることと、非ヒト動物から、ヒト又はヒト化MHCI又はMHCIIにより提示された抗原を結合するT細胞受容体を含むT細胞を単離することと、前記T細胞受容体の配列を決定することと、を含んでもよい。
【0252】
機能的なヒトTCR V(D)J遺伝子セグメントの多様なレパートリを発現する非ヒト動物は、ヒトの疾患の研究に有用であり得る。したがって、一実施形態において、本明細書に記載された遺伝子操作非ヒト動物は、ヒトにおいて発現されるTCRレパートリに実質的に類似するTCRレパートリを発現してもよく、例えば、本明細書で開示された非ヒト動物のTCRレパートリは、全ての機能的なヒトTCRα、TCRβ、TCRγ、及び/又はTCRδ遺伝子セグメントの、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、又は少なくとも約99%から得ることができる。いくつかの実施形態では、開示されるような非ヒト動物は、以下から得られるTCRレパートリを発現する。
(i)全ての機能的なヒトTCRVα遺伝子セグメントの、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、若しくは少なくとも約99%、
(ii)全ての機能的なヒトTCRJα遺伝子セグメントの、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、若しくは少なくとも約99%、
(iii)全ての機能的なヒトTCRVβ遺伝子セグメントの、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、若しくは少なくとも約99%、
(iv)全ての機能的なヒトTCRDβ遺伝子セグメントの、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、若しくは少なくとも約99%、及び/又は
(v)全ての機能的なヒトTCRJβ遺伝子セグメントの、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、若しくは少なくとも約99%。
【0253】
一実施形態において、マウスは、全て又は実質的に全ての機能的なヒトTCRVα遺伝子セグメントを含み、全て又は実質的に全ての機能的なヒトTCRVβ遺伝子セグメントを含む、T細胞レパートリを生成する。一実施形態において、本明細書で提供されたマウスは、ヒトにおいてヒトT細胞により利用されるヒトTCRVα及び/又はVβ遺伝子の頻度とそれぞれ同様の頻度で、ヒトTCRVα及び/又はVβ遺伝子を利用する。非ヒト動物のTCRレパートリにおいて発現された遺伝子セグメントを検出する方法は、例えば、フローサイトメトリー法及び/又はシークエンシング法(例えば、リアルタイムPCR、次世代シークエンシング等)を含む。
【0254】
一実施形態において、推定ヒト治療によるT細胞の活性化を判定するための方法であって、本明細書に記載されるように遺伝子改変動物を、推定ヒト治療に曝す(又は、例えば、このような動物のヒト又はヒト化MHCII又はMHCI発現細胞を推定治療のペプチド配列に曝す)ことと、ヒト又はヒト化MHC/ペプチド複合体を提示している遺伝子改変動物の細胞を、遺伝子改変動物の細胞を結合することができるキメラヒト/非ヒト(例えば、ヒト/マウス)CD4又はCD8を含むT細胞に曝すことと、遺伝子改変動物のペプチド提示細胞により誘引されるT細胞の活性化を測定することと、を含む、方法が提供される。
【0255】
ヒト病原体又は新生物からの抗原及び抗原エピトープを特定する能力に加えて、本発明の遺伝子改変動物を使用して、ヒトの自己免疫疾患、例えば、I型糖尿病、多発性硬化症等に関連する自己抗原を特定することができる。また、本発明の遺伝子改変動物を使用して、ヒトの自己免疫疾患の様々な態様を研究することができ、自己免疫疾患モデルとして利用することができる。
【0256】
様々な実施形態において、本発明の遺伝子改変非ヒト動物は、その表面上にヒト化TCR分子を有するT細胞が生成され、その結果として、ヒト様式で、MHC複合体により、それらに提示されたペプチドを認識すると考えられる。本明細書に記載された遺伝子改変非ヒト動物を使用して、ヒトT細胞の発達及び機能、並びに免疫寛容のプロセスを研究し、ヒトワクチン候補を試験し、TCR遺伝子療法のための特定の特異性を有するTCRを生じさせ、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原(TAA)に対するTCRライブラリを生じさせる等を行うことができる。
【0257】
T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)は、対象となる抗原、例えば、ウイルス抗原、細菌抗原、腫瘍抗原等又はそれを提示する細胞を攻撃し、これらの破壊をもたらすことを指向することができるので、当該技術分野におけるT細胞療法にますます関心が高まっている。ガンT細胞療法における最初の研究は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL:腫瘍抗原に対する反応性を有するT細胞をおそらく含む腫瘍塊中のリンパ球集団)を、腫瘍細胞塊から単離し、T細胞増殖因子を使用してそれらをin vitroで増殖させ、適応T細胞移植と呼ばれるプロセスにおいて、それらを患者に戻すことを目的としていた。例えば、Restifo et al.(2012)Adoptive immunotherapy for cancer:harnessing the T cell response,Nature Reviews 12:269〜81;Linnermann et al.(2011)T−Cell Receptor Gene Therapy:Critical Parameters for Clinical Success,J.Invest.Dermatol.131:1806〜16を参照のこと。しかしながら、これらの治療の成功は、現在のところ、メラノーマ及び腎細胞ガン腫に限られ、TIL適応移植は、規定された腫瘍関連抗原(TAA)を特異的に対象とするわけではない。上記Linnermann et al.参照。
【0258】
対象となる抗原、例えば、TAAを標的化するためにT細胞が選択されるか、又はプログラムされるかのいずれか一方であるTCR遺伝子療法を開始する試みが行われてきた。現在のTCR遺伝子療法は、特定の抗原、例えば、腫瘍関連抗原を対象とするTCRの配列の特定に依拠している。例えば、Rosenberg及び同僚は、メラノーマ患者から得られた末梢血リンパ球をメラノーマ関連抗原であるMART−1エピトープに特異的なTCRα及びβ鎖をコードする遺伝子で形質導入し、得られた増殖リンパ球を適応T細胞療法に使用した、複数の研究を公表している。Johnson et al.(2009)Gene therapy with human and mouse T−cell receptors mediates cancer regression and targets normal tissues expressing cognate antigen,Blood 114:535〜46、Morgan et al.(2006)Cancer Regression in Patients After Transfer of Genetically Engineered Lymphocytes,Science 314:126〜29。MART−1特異的TCRは、TIL療法後に腫瘍縮小を経験した患者から単離された。しかしながら、このようなTCR、特に、(おそらく治療的に最も有用であると思われる)高結合活性TCRの特定は、大部分の腫瘍抗原が自己抗原である事実により分かりにくくなり、これらの抗原を標的化するTCRは、多くの場合、削除されるか、又は主に免疫寛容のために最適以下の親和性を有するかのいずれかである。
【0259】
様々な実施形態において、本発明は、非再配列ヒトTCR可変遺伝子座をそのゲノム中に含む遺伝子操作非ヒト動物を提供することにより、この問題を解決する。本明細書に記載された非ヒト動物は、ヒト化T細胞受容体の多様なレパートリを有するT細胞を生成することができる。このため、本明細書に記載された非ヒト動物は、ヒト化T細胞受容体、例えば、適応T細胞移植に使用するための高結合活性ヒト化T細胞受容体の多様なレパートリのソースであってもよい。
【0260】
このため、一実施形態において、本発明は、ヒト抗原に対するT細胞受容体を生じさせる方法であって、本明細書に記載された非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えば、マウス又はラット)を、対象となる抗原により免疫化することと、動物に免疫応答を開始させることと、動物から、対象となる抗原に対する特異性を有する活性化T細胞を単離することと、抗原特異的T細胞により発現されたT細胞受容体の核酸配列を決定することとを含む、方法を提供する。
【0261】
一実施形態において、本発明は、対象となる抗原(例えば、疾患関連抗原)に特異的なヒトT細胞受容体を生じさせる方法であって、本明細書に記載された非ヒト動物を、対象となる抗原により免疫化することと、動物に免疫応答を開始させることと、動物から、対象となる抗原に反応性を有するT細胞を単離することと、T細胞により発現されたヒトTCR可変領域の核酸配列を決定することと、ヒトTCR可変領域を、ヒトTCR定常領域の核酸配列を含むヌクレオチド構築物内に、ヒトTCR可変領域がヒトTCR定常領域に操作可能に連結しているように、クローニングすることと、構築物から、対象となる抗原に特異的なヒトT細胞受容体を発現させることとを含む、方法を提供する。一実施形態において、T細胞を単離する工程、T細胞により発現されたヒトTCR可変領域の核酸配列を決定する工程、ヒトTCR可変領域をヒトTCR定常領域の核酸配列を含むヌクレオチド構築物内にクローニングする工程、及びヒトT細胞受容体を発現させる工程は、当業者に既知の標準的な技術を使用して行われる。
【0262】
一実施形態において、対象となる抗原に特異的なT細胞受容体をコードするヌクレオチド配列が、細胞中に発現される。一実施形態において、TCRを発現している細胞は、CHO、COS、293、HeLa、PERC.6(商標)細胞等から選択される。
【0263】
対象となる抗原は、疾患又は状態を引き起こすか、又はこれらに関連していることが既知の任意の抗原、例えば、腫瘍関連抗原、ウイルス、細菌、又は他の病原体起源の抗原等であってもよい。多くの腫瘍関連抗原が、当該技術分野において既知である。腫瘍関連抗原の選択は、Cancer Immunity(A Journal of the Cancer Research Institute)ペプチドデータベース(archive.cancerimmunity.org/peptidedatabase/Tcellepitopes.htm)において提示されている。本発明のいくつかの実施形態では、対象となる抗原は、ヒト抗原、例えば、ヒト腫瘍関連抗原である。いくつかの実施形態では、抗原は、細胞種特異的細胞内抗原であり、T細胞受容体は、抗原を発現している細胞を殺傷するのに使用される。
【0264】
一実施形態において、本明細書では、対象となる抗原、例えば、腫瘍関連抗原に対する特異性を有するT細胞を特定する方法であって、本明細書に記載された非ヒト動物を、対象となる抗原により免疫化することと、動物に免疫応答を開始させることと、非ヒト動物から、抗原に対する特異性を有するT細胞を単離することとを含む、方法が提供される。
【0265】
本発明は、適応T細胞療法のための新規な方法を提供する。このため、本明細書において、対象(例えば、哺乳類の対象、例えば、ヒトの対象)における疾患又は状態(例えば、ガン)を処置し、又は寛解させる方法であって、本明細書に記載された非ヒト動物を、疾患又は状態に関連する抗原により免疫化することと、動物に免疫応答を開始させることと、動物から、抗原特異的T細胞集団を単離することと、単離された抗原特異的T細胞を、対象に注入することとを含む方法が提供される。一実施形態において、本発明は、ヒトの対象における疾患又は状態を処置し、又は寛解させる方法であって、本明細書に記載された非ヒト動物を、対象となる抗原(例えば、疾患又は状態関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原)により免疫化することと、動物に免疫応答を開始させることと、動物から、抗原特異的T細胞集団を単離することと、T細胞受容体の核酸配列(例えば、抗原特異的T細胞により発現された、ヒト再配列TCRα及び/又はヒト再配列TCRβ可変領域遺伝子をコードする第1及び/又は第2の核酸配列;ヒト再配列TCRδ可変領域遺伝子又はTCRγ可変領域遺伝子をコードする第3及び/又は第4の核酸配列)を決定することと、T細胞受容体の核酸配列、例えば、ヒト再配列TCRα可変領域遺伝子、ヒト再配列TCRβ可変領域遺伝子、TCRδ可変領域遺伝子、又はTCRγ可変領域遺伝子をそれぞれコードする第1、第2、第3、及び/又は第4の核酸配列を、発現ベクター(例えば、レトロウイルスベクター)内にクローニングすることであって、例えば、任意選択的に、ヒト再配列TCRα可変領域遺伝子、ヒト再配列TCRβ可変領域遺伝子、TCRδ可変領域遺伝子、又はTCRγ可変領域遺伝子それぞれをコードする第1、第2、第3、及び/又は第4の核酸配列がそれぞれ、ヒトTCRα定常遺伝子、ヒトTCRβ定常遺伝子、TCRδ定常遺伝子、又はTCRγ定常遺伝子とインフレームにクローニングされる、ことと、ベクターを、対象から得られたT細胞内に、T細胞が抗原特異的T細胞受容体を発現するように、導入することと、T細胞を対象に注入することとを含む、方法を提供する。一実施形態において、T細胞受容体の核酸配列は、対象から得られたT細胞内への導入前に、更にヒト化され、例えば、非ヒト定常領域をコードする配列は、ヒトTCR定常領域に更に似るように改変される(例えば、非ヒト定常領域は、ヒト定常領域により置き換えられる)。いくつかの実施形態では、疾患又は状態は、ガンである。いくつかの実施形態では、抗原特異的T細胞集団は、対象への注入前に増殖される。いくつかの実施形態では、対象の免疫細胞集団は、抗原特異的T細胞の注入前に、免疫枯渇される。いくつかの実施形態では、抗原特異的TCRは、高結合活性TCR、例えば、腫瘍関連抗原に対する高結合活性TCRである。いくつかの実施形態では、T細胞は、細胞傷害性T細胞である。他の実施形態では、疾患又は状態は、ウイルス又は細菌により引き起こされる。
【0266】
別の実施形態では、疾患又は状態は、自己免疫疾患である。TREG細胞は、自己抗原に対する寛容を維持し、病的な自己反応性を防止するT細胞の部分集団である。このため、本明細書において、本明細書に記載された本発明の非ヒト動物における、抗原特異的TREGの発生に依拠する自己免疫疾患を処置する方法が提供される。
【0267】
また、本明細書において、対象における疾患若しくは状態(例えば、ガン)を処置し、又は寛解させる方法であって、対象からの疾患又は状態により影響を受けた細胞(例えば、ガン細胞)を、非ヒト動物内に導入することと、動物に、細胞に対する免疫応答を開始させることと、動物から、細胞に対する反応性を有するT細胞集団を単離することと、T細胞により発現されたT細胞受容体可変ドメインの核酸配列を決定することと、T細胞受容体可変ドメインコード配列を、ベクター内に(例えば、ヒトTCR定常遺伝子に対してインフレームに、かつ、同遺伝子に操作可能に連結して)クローニングすることと、ベクターを、対象から得られたT細胞内に導入することと、T細胞受容体を有する対象のT細胞を、対象内に注入することとを含む、方法も提供される。
【0268】
また、本明細書において、ヒトTCR可変ドメイン(例えば、TCRα及び/又はβ可変ドメイン)をコードする核酸配列を製造するための、本明細書に記載されたような非ヒト動物の使用が提供される。一実施形態において、ヒトTCR可変ドメインをコードする核酸配列を製造するための方法であって、本明細書に記載された非ヒト動物を、対象となる抗原により免疫化することと、非ヒト動物に、対象となる抗原に対する免疫応答を開始させることと、対象となる抗原に結合するヒトTCR可変ドメインをコードする核酸配列をそれから得ることとを含む、方法が提供される。一実施形態において、方法は、非ヒトTCR定常領域に操作可能に連結しているヒトTCR可変ドメインをコードする核酸配列を製造することを更に含み、方法は、本明細書に記載された非ヒト動物からT細胞を単離することと、それから、非ヒト定常領域TCR定常領域に連結しているTCR可変ドメインをコードする核酸配列を得ることと、TCR可変ドメインをコードする核酸配列(例えば、ヒト再配列TCRα可変領域遺伝子、ヒト再配列TCRβ可変領域遺伝子、TCRδ可変領域遺伝子、又はTCRγ可変領域遺伝子をそれぞれコードする第1、第2、第3、又は第4の核酸配列)を、適切なヒト定常領域(例えば、それぞれヒトTCRα定常領域遺伝子、ヒトTCRβ定常領域遺伝子、TCRδ定常領域遺伝子、又はTCRγ定常領域遺伝子)とインフレームにクローニングすることとを含む。
【0269】
このため、本明細書において、本明細書に記載された非ヒト動物において生成され、例えば、ヒト再配列Vα/Jα遺伝子配列及び再配列ヒトVβDβJβ遺伝子配列によりそれぞれコードされた、TCR可変領域の核酸配列、例えば、再配列TCR可変核酸配列、例えば、再配列TCRα及び/又はTCRβ可変領域核酸配列が提供される。また、このような再配列TCR可変領域の核酸配列によりコードされた、TCR可変領域のアミノ酸配列も提供される。本明細書に記載された非ヒト動物において得られた、このような再配列TCR可変領域の核酸配列(TCRα及び/又はTCRβ可変領域の核酸配列)は、ヒトTCR定常領域(TCRα及び/又はTCRβ定常領域)と操作可能に連結してクローニングされてもよく、本明細書に記載されたヒトにおける様々な使用に、例えば、ヒトの治療として利用されてもよい。
【0270】
また、本明細書において、非ヒト動物を、対象となる抗原(例えば、腫瘍関連抗原)により免疫化することと、非ヒト動物に免疫応答を開始させることと、動物から、対象となる抗原に対する反応性を有するT細胞を得ることと、T細胞から、対象となる抗原に結合するヒト化TCRタンパク質又はヒトTCR可変ドメインをコードする核酸配列を得ることと、ヒト化TCRタンパク質又はヒトTCR可変ドメインをコードする核酸配列を、ヒトの治療に利用することとを含む、ヒトの治療を行うための、本明細書に記載された非ヒト動物の使用もまた提供される。
【0271】
このため、ヒトの治療を行う方法であって、本明細書に記載された非ヒト動物を、対象となる抗原により免疫化することと、非ヒト動物に免疫応答を開始させることと、動物から、対象となる抗原に対する反応性を有するT細胞を得ることと、T細胞から、対象となる抗原に結合するヒト化T細胞受容体をコードする核酸配列を得ることと、ヒト化(又は完全にヒト)T細胞受容体を、ヒトの治療に利用することとを含む、方法も提供される。
【0272】
一実施形態において、ヒトの治療は、対象となる核酸配列を有する(例えば、対象となる核酸をトランスフェクション、又は形質導入、ないしは導入された)T細胞(例えば、ヒトT細胞、例えば、ヒトの対象から得られたT細胞)である。これにより、T細胞は、対象となる抗原に対して親和性を有するヒト化TCRタンパク質を発現する。一態様において、治療が利用される対象は、特定の疾患又は状態の治療を必要とし、抗原は、疾患又は状態に関連している。一態様において、T細胞は、細胞傷害性T細胞であり、抗原は、腫瘍関連抗原であり、疾患又は状態は、ガンである。一態様において、T細胞は、対象から得られる。
【0273】
別の実施形態では、ヒトの治療は、T細胞受容体である。一実施形態において、治療受容体は、可溶性T細胞受容体である。使用治療剤のための可溶性T細胞受容体又はTCR可変領域を生成するために、多くの努力が繰り広げられてきた。可溶性T細胞受容体の生成は、再配列TCR可変領域を得ることに依拠する。1つのアプローチは、TCRα及びTCRβを含む一本鎖TCRを設計し、scFv免疫グロブリンフォーマットと同様に、それを、リンカーを介して融合させることである(例えば、国際公開第2011/044186号を参照のこと)。得られたscTvは、scFvと同様であれば、熱安定性で可溶性の形態のTCRα/β結合タンパク質を提供すると考えられる。代替的なアプローチは、TCRβ定常ドメインを有する可溶性TCRを設計すること(例えば、Chung et al.,(1994)Functional three−domain single−chain T−cell receptors,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.91:12654〜58を参照のこと)と、非ネイティブなジスルフィド結合を、TCR定常ドメイン間の界面に操作すること(Boulter and Jakobsen(2005)Stable,soluble,high−affinity,engineered T cell receptors:novel antibody−like proteins for specific targeting of peptide antigens,Clinical and Experimental Immunology 142:454〜60にレビューされている。米国特許第7,569,664号も参照のこと)と、を含んでいた。他のフォーマットの可溶性T細胞受容体が記載されている。本明細書に記載された非ヒト動物を使用して、対象となる抗原に対して高い親和性で結合するT細胞受容体の配列を決定し、その後に、配列に基づいて、可溶性T細胞受容体を設計することができる。
【0274】
非ヒト動物により発現されたTCR受容体配列から得られた可溶性T細胞受容体を使用して、対象となるタンパク質、例えば、ウイルス、細菌、又は腫瘍関連タンパク質の機能を遮断することができる。あるいは、可溶性T細胞受容体は、感染細胞又はガン細胞を殺傷し得る部分、例えば、細胞殺傷分子(例えば、化学療法剤)、トキシン、放射線核種、プロドラッグ、抗体等に融合されてもよい。可溶性T細胞受容体はまた、免疫調節分子、例えば、サイトカイン、ケモカイン等に融合されてもよい。可溶性T細胞受容体はまた、免疫阻害性分子、例えば、T細胞がT細胞により認識された抗原を有する他の細胞を殺傷するのを阻害する分子にも融合されてもよい。免疫阻害性分子に融合したこのような可溶性T細胞受容体は、例えば、自己免疫を遮断するのに使用され得る。可溶性T細胞受容体に融合することができる様々な例示的な免疫阻害性分子が、参照により本明細書に組み込まれている、Ravetch and Lanier(2000)Immune Inhibitory Receptors,Science 290:84〜89にレビューされている。
【0275】
本発明はまた、ヒトTCR再配列、T細胞発達、T細胞活性化、免疫寛容等を含む、ヒトTCRに関する免疫応答を研究するための方法を提供する。
【0276】
ワクチン候補を検査する方法もまた提供される。一実施形態において、ワクチンが、免疫応答(例えば、T細胞の増殖、サイトカイン放出等)を活性化し、エフェクター並びにメモリT細胞(例えば、セントラル及びエフェクターメモリT細胞)の発生をもたらすこととなるかどうかを判定する方法が本明細書において提供される。
【0277】
一態様において、キメラCD8タンパク質をその表面上に有するT細胞と、キメラCD8に結合する第2の細胞とを含む、in vitro調製物が提供される。一実施形態において、第2の細胞は、MHCIポリペプチド、例えば、キメラヒト/非ヒトMHCIタンパク質を発現している細胞である。一実施形態において、第1の細胞の表面上のキメラCD8は、第2の細胞の表面上のキメラMHCIと相互作用する。一実施形態において、キメラCD8タンパク質は、内在性細胞質ゾル分子、例えば、内在性細胞質ゾルシグナル伝達分子(例えば、内在性Lck等)との相互作用を維持している。
【0278】
一態様において、キメラCD4タンパク質をその表面上に有するT細胞と、キメラCD4に結合する第2の細胞と、を含む、in vitro調製物が提供される。一実施形態において、第2の細胞は、MHCIIポリペプチド、例えば、キメラヒト/非ヒトMHCIIタンパク質を発現している細胞、例えば、APCである。一実施形態において、第1の細胞の表面上のキメラCD4は、第2の細胞の表面上のキメラMHCIIと相互作用する。一実施形態において、キメラCD4タンパク質は、内在性細胞質ゾル分子、例えば、内在性細胞質ゾルシグナル伝達分子(例えば、内在性Lck等)との相互作用を維持している。
【0279】
本明細書に記載された遺伝子改変動物、すなわち、ヒト又はヒト化T細胞共受容体(例えば、キメラヒト/非ヒトCD4又はCD8)を含み、任意選択的に、ヒト若しくはヒト化MHCII又はIタンパク質を更に含む動物の他の使用は、本開示から明らかであろう。
【実施例】
【0280】
以下の実施例は、本発明の方法及び組成物を製造し、使用する方法を、当業者に説明するために提供されるものであり、本発明者らが発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではない。使用された数字(例えば、量、温度など)に対する精度を確保する努力がなされたが、ある程度の実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。実施例は、当業者には周知であろう従来の方法の詳細な説明を含まない(分子クローニング技術など)。別途記載のない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏で示され、圧力は大気又はほぼ大気である。
実施例1:ヒト化MHCマウスの生成
【0281】
ヒト化MHCI及びMHCII座、これに加えて、対応する更なる内在性MHCI及びMHCII座欠失(HLA−A2/H−2K、HLA−DR2/H−2E、H−2A−del、H−2D−del)を含むマウスを操作する際に関与する様々な工程を
図3Aに示す。工程の詳細な説明を以下に示す。
実施例1.1:ヒト化MHCIマウスの生成及び特徴決定
【0282】
ヒト化MHCIマウスの生成は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第20130111617号で以前に記載されている。簡潔に説明すると、VELOCIGENE(登録商標)技術を使用して、ヒト及びマウスの細菌人工染色体(BAC)DNAからの固有の標的化ベクターの構築により、マウスH−2K遺伝子を、1回の工程でヒト化した(例えば、米国特許第6,586,251号及びValenzuela et al.(2003)High−throughput engineering of the mouse genome couple with high−resolution expression analysis.Nat.Biotech.21(6):652〜659を参照のこと)。マウスBACクローンRP23−173k21(Invitrogen)からのDNAを、相同組換えにより改変して、マウスH−2K遺伝子のα1、α2、及びα3ドメインをコードするゲノムDNAを、ヒトHLA−A遺伝子のα1、α2、及びα3サブユニットをコードするヒトゲノムDNAにより置き換えた(
図2A)。
【0283】
具体的には、マウスH−2K遺伝子のα1、α2、及びα3サブユニットをコードするゲノム配列を、ヒトHLA−A
*0201遺伝子のα1、α2、及びα3ドメインをコードするヒトゲノムDNAにより、1回の標的化イベントにおいて、loxP部位に隣接するヒグロマイシンカセットと、5’非翻訳領域(UTR)を含めたマウスH−2K座の配列5’を含有する5’マウスホモロジーアームと、マウスH−2K α3コード配列のゲノム配列3’を含有する3’マウスホモロジーアームとを含む標的化ベクターを使用して、置き換えた。
【0284】
5’から3’へ内在性H−2K遺伝子座を標的化するための最終的な構築物は、(1)5’UTRを含む内在性H−2K遺伝子の約200bpのマウスゲノム配列5’を含有する5’ホモロジーアーム、(2)HLA−A
*0201リーダー配列を含む約1339pのヒトゲノム配列、HLA−A
*0201リーダー/α1イントロン、HLA−A
*0201 α1エキソン、HLA−A
*0201 α1〜α2イントロン、HLA−A
*0201 α2エキソン、約316bpのα2〜α3イントロンの5’端、(3)5’loxP部位、(4)ヒグロマイシンカセット、(5)3’loxP部位、(6)約304bpのα2〜α3イントロンの3’端を含む約580bpのヒトゲノム配列、HLA−A
*0201 α3エキソン、及び(7)マウスH−2K α3と膜貫通コード配列との間のイントロンを含む約200bpのマウスゲノム配列を含有する3’ホモロジーアームを含んだ。標的化ベクターの5’でのマウス/ヒト配列の接合点における149個のヌクレオチド配列を、配列番号:90に示し、標的化ベクターの3’でのヒト/マウス配列の接合点における159個のヌクレオチド配列を、配列番号:91に示す。この標的化ベクターによる相同組換えにより、HLA−A
*0201遺伝子のα1、α2、及びα3ドメインをコードするヒトゲノムDNAを含有し、内在性マウスH−2K膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインのコード配列に操作可能に連結している改変マウスH−2K座を作製した。同改変マウスH−2K座により、翻訳時に、キメラヒト/マウスMHCクラスIタンパク質の形成がもたらされる。標的化構築物に存在する選択カセットは、当該技術分野において既知の様々な方法を使用して、後に除去されてもよい。
【0285】
標的化BAC DNAを使用して、マウスF1H4 ES細胞をエレクトロポレーションし、キメラMHCクラスIタンパク質を有核細胞(例えば、T及びBリンパ球、マクロファージ、好中球)の表面上に発現するマウスを生じさせるための改変ES細胞を作製した(例えば、
図3Aに示されたスキームの工程1を参照のこと)。ヒトHLA配列の挿入を含有するES細胞を、定量TAQMAN(商標)アッセイにより特定した(上記Valenzuela et al.(2003))。
【0286】
キメラMHCIを発現するマウスを生じさせるために、本明細書に記載された標的化ES細胞を、ドナーES細胞として使用し、VELOCIMOUSE(登録商標)法によって、8細胞段階マウス胚に導入した(例えば、米国特許第7,294,754号及びPoueymirou et al.(2007)F0 generation mice that are essentially fully derived from the donor gene−targeted ES cells allowing immediate phenotypic analyses Nature Biotech.25(1):91〜99を参照のこと)。キメラMHCクラスI遺伝子を独立して有するVELOCIMICE(登録商標)(完全にドナーES細胞から得られたF0マウス)を、特異的なヒトHLA−A
*0201遺伝子配列の存在を検出するアレルアッセイ(上記Valenzuela et al.)の改変を使用した遺伝子型判定によって特定する。この方法により生じたヘテロ接合性マウスを、ホモ接合性に交雑させる。キメラHLA−A2/H−2Kの発現を、HLA−A及びH−2Kに特異的な抗体を使用するフローサイトメトリーにより確認する。
【0287】
キメラHLA−A2/H−2Kを含む上述の標的化ES細胞を、実施例1.2〜1.3で記載された更なる遺伝子操作工程に使用して、ヒト化MHCI及びMHCII座の両方を含み、内在性MHCI及びMHCII座を欠いているマウスを生じさせた(
図3Aを参照のこと)。
実施例1.2:MHCI及びMHCII座欠失を含むマウスES細胞の生成
【0288】
内在性MHCII座の欠失は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第20130111616号に記載されている。簡潔に説明すると、内在性MHCクラスII H−2Ab1、H−2Aa、H−2Eb1、H−2Eb2、及びH−2Ea遺伝子の欠失を導入するための標的化ベクターを、VELOCIGENE(登録商標)遺伝子操作技術(例えば、米国特許第6,586,251号及び上記Valenzuela et al.を参照のこと)を使用して作製した。細菌人工染色体(BAC)RP23−458i22(Invitrogen)DNAを改変して、内在性MHCクラスII遺伝子H−2Ab1、H−2Aa、H−2Eb1、H−2Eb2、及びH−2Eaを欠失させた。
【0289】
具体的には、上流及び下流のホモロジーアームを、H−2Ab1遺伝子の位置5’及びH−2Ea遺伝子の3’それぞれからのマウスBAC DNAのPCRにより得た。これらのホモロジーアームを使用して、細菌相同組換え(BHR)により、MHCクラスII座の遺伝子H−2Ab1、H−2Aa、H−2Eb1、H−2Eb2、及びH−2Eaを含む約79kbのRP23−458i22を欠失させたカセットを作製した。この領域を、lox2372部位に隣接するネオマイシンカセットにより置き換えた。最終的な標的化ベクターは、5’から3’に向かって、内在性MHCクラスII座のH−2Ab1遺伝子に対するマウスゲノム配列5’を含む26kbのホモロジーアーム、5’lox2372部位、ネオマイシンカセット、3’lox2372部位、及び内在性MHCクラスII座のH−2Ea遺伝子に対するマウスゲノム配列3’を含む63kbのホモロジーアームを含んだ。
【0290】
(上述の)BAC DNA標的化ベクターを使用して、ヒト化MHCI座を含むマウスES細胞(上記実施例1.1から、例えば、
図3Aの工程2を参照)をエレクトロポレーションして、内在性MHCクラスII座の欠失を含む改変ES細胞を作製した(H−2A及びH−2Eの両方を欠失させた)。欠失した内在性MHCクラスII座を含有する陽性ES細胞を、TAQMAN(商標)プローブを使用する定量PCRアッセイにより特定した(Lie and Petropoulos(1998)Curr.Opin.Biotechnology 9:43〜48)。欠失させた遺伝子座の上流領域を、プライマー5111U F(CAGAACGCCAGGCTGTAAC、配列番号:1)及び5111U R(GGAGAGCAGGGTCAGTCAAC、配列番号:2)並びにプローブ5111U P(CACCGCCACTCACAGCTCCTTACA、配列番号:3)を使用して、PCRにより確認した。一方、欠失させた遺伝子座の下流領域を、プライマー5111D F(GTGGGCACCATCTTCATCATTC、配列番号:4)及び5111D R(CTTCCTTTCCAGGGTGTGACTC、配列番号:5)並びにプローブ5111D P(AGGCCTGCGATCAGGTGGCACCT、配列番号:6)を使用して確認した。標的化ベクターからのネオマイシンカセットの存在を、プライマーNEOF(GGTGGAGAGGCTATTCGGC、配列番号:7)及びNEOR(GAACACGGCGGCATCAG、配列番号:8)並びにプローブNEOP(TGGGCACAACAGACAATCGGCTG、配列番号:9)を使用して確認した。上流欠失点にわたるヌクレオチド配列(配列番号:10)は、欠失点に存在するカセット配列に続けて連結している(以下の丸かっこ内に含まれる)欠失点の内在性マウス配列の上流を示し、以下を含んだ。(TTTGTAAACA AAGTCTACCC AGAGACAGAT GACAGACTTC AGCTCCAATG CTGATTGGTT CCTCACTTGG GACCAACCCT)ACCGGTATAA CTTCGTATAA GGTATCCTAT ACGAAGTTAT ATGCATGGCC TCCGCGCCGG。下流欠失点にわたるヌクレオチド配列(配列番号:11)は、(以下の丸かっこ内に含まれる)欠失点の内在性マウス配列の下流を含む連続的なカセット配列を示し、以下を含んだ。CGACCTGCAG CCGGCGCGCC ATAACTTCGT ATAAGGTATC CTATACGAAG TTATCTCGAG(CACAGGCATT TGGGTGGGCA GGGATGGACG GTGACTGGGA CAATCGGGAT GGAAGAGCAT AGAATGGGAG TTAGGGAAGA)。
【0291】
上述のMHCIヒト化及び内在性MHCII欠失の両方を含むES細胞の生成に続いて、loxが導入された(loxed)ネオマイシンカセットを、CREを使用して除去した(例えば、
図3Aの工程3を参照のこと)。具体的には、Creリコンビナーゼをコードするプラスミドを、ES細胞内にエレクトロポレーションして、ネオマイシンカセットを除去した。Neoカセットは、当該技術分野において既知の他の方法を使用して除去してもよい。
【0292】
マウスH−2D座を欠失させるために、BHRを使用して、マウスBACクローンbMQ−218H21(Sanger Institute)を改変して、H−2D遺伝子の3756bp(AGT開始コドンからTGA終止コドンの3bp下流まで、マウスH−2Dのエキソン1〜8)を、5’から3’まで、5’loxp部位、UbCプロモータ、ネオマイシン遺伝子、及び3’loxp部位とインフレームにLacZ遺伝子を含有する6,085bpのカセットにより置き換える。
【0293】
(上述の)BAC DNA標的化ベクターを使用して、上記ヒト化MHCI座及びマウスMHCIIの欠失を含むマウスES細胞をエレクトロポレーションした(例えば、
図3Aの工程4を参照のこと)。欠失した内在性H−2D座を含有する陽性ES細胞を、上述のとおり、定量PCRアッセイにより特定した。表2は、定量PCRアッセイに使用されたプライマー及びプローブを含む。
【表2】
実施例1.3:キメラヒト/マウスMHCII座の導入
【0294】
ヒト化HLA−DR2/H−2Eを含むベクターを生成するために、まず、マウスH−2Ea遺伝子を、2014年9月30日付けで発効された、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第8,847,005号の記載に従って改変して、キメラH−2Ea/HLA−DRA1
*01タンパク質をコードする配列を含むベクターを生成した。
【0295】
マウスH−2Ea遺伝子については、合成ヒトHLA−DR2 β鎖(DRB1
*1501)を使用して、DRβ1
*02(1501)エキソン及びイントロンを含むベクターを生成し、細菌相同組換えを使用して、キメラH−2Ea/HLA−DRA1
*01タンパク質を含むベクター内で交換した。H−2Eb1遺伝子を、基本的に、米国特許公開第20130185820号及び米国特許第8,847,005号に記載されたように改変した。これらの公報はそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれている。ヒグロマイシン選択カセットを使用した。
【0296】
得られたHLA−DR2/H−2E大型標的化ベクター(LTVEC)を、
図2B及び
図3Bに示す。得られたLTVECの様々なヌクレオチド配列結合点(例えば、マウス/ヒト配列結合点、ヒト/マウス配列結合点、又はマウス若しくはヒト配列と選択カセットとの接合点)を、以下の表3にまとめ、配列表に列記する。その配置を、
図3Bの模式図に示す。以下の表3において、アスタリスク(
*、表の凡例を参照のこと)で印を付けた配列を除いて、マウスの配列を、通常のフォントとする。ヒトの配列を、丸かっこで囲む。Lox配列を、イタリック体とする。クローニング工程中に導入される制限部位及び他のベクターに基づく配列(例えば、マルチプルクローニング部位等)をボールド文字とする。
【表3】
アスタリスクで印を付けた配列は、C57BL/6−BALB/c結合部配列であり、C57BL/6配列を丸かっこで囲む。キメラH−2Ea遺伝子のクローニング中に、H−2EaのC57BL/6アレルのエキソン1及びイントロン1の残り部分を、H−2EaのBALB/cアレルからの同等の2616bp領域により置き換えた。H−2EaのC57BL/6アレルのエキソン1がこの遺伝子を機能しなくする欠失を含有し、一方、H−2EaのBALB/cアレルのエキソン1は、機能的であるために、これを行った。より詳細な説明については、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第8,847,005号を参照のこと。
【0297】
上述した標的化BAC DNAを使用して、ヒト化MHCI(HLA−A2)並びにMHCII及びH−2D欠失を含むマウスES細胞をエレクトロポレーションして、キメラMHCI及びMHCII遺伝子を発現し、機能的な内在性マウスH−2E、H−2A、H−2K、及びH−2D座を欠いているマウスを生じさせるための改変ES細胞を作製した(例えば、
図3Aの工程5を参照のこと)。ヒトHLA配列の挿入を含有するES細胞を、表4におけるプライマー及びプローブを使用して、定量PCR(TAQMAN(商標))アッセイにより特定した。
【表4】
1この1つを除く全ての配列をgain−of−alleleアッセイにおいて使用する。
【0298】
選択カセットは、当業者によって既知の方法で除去され得る。例えば、キメラヒト/マウスMHCクラスI座を有するES細胞を、Creを発現する構築物により、標的化構築物の挿入により導入された「loxが導入された」選択カセットを除去するために、トランスフェクションすることができる(例えば、
図3Aの工程6を参照のこと)。選択カセットは、Creリコンビナーゼを発現するマウスとの交配によって任意追加的に除去することができる。所望により、選択カセットをマウス内に保持する。
【0299】
本明細書に記載された全ての改変(
図3AのHLA−A2/H−2K、HLA−DR2/H−2E、H−2A−del、H−2D−del)を含有する標的化ES細胞を、個々の改変用に本明細書に記載されたプライマー/プローブを使用する上述の定量TAQMAN(登録商標)アッセイを使用して検証した。更なるプライマー/プローブセットを使用して、カセット削除工程中に、反転クローンが対向する向きに存在するlox部位により作製されなかったと判定した。
【0300】
上述の標的化されたES細胞をドナーES細胞として使用し、VELOCIMOUSE(登録商標)法によって8細胞段階マウス胚に導入した(例えば、米国特許第7,294,754号及び上記のPoueymirou et al.(2007)を参照のこと)。キメラMHCクラス1及びMHCII遺伝子を独立して有するVELOCIMICE(登録商標)(完全にドナーES細胞から得られたF0マウス)を、特異的なヒト遺伝子配列の存在を検出するアレルアッセイ(上記のValenzuela et al.)の改変を使用した遺伝子型判定によって特定した。得られたマウスにおけるMHC座の遺伝子型の模式図を
図3Cに示す(
**は、全てのマウス系統に存在しないH−2L遺伝子を表わす)。キメラヒト/マウスMHCI及びMHCIIタンパク質両方の発現を、ヒトHLA−DR2及びHLA−A2に特異的な抗体を使用して確認する。ヘテロ接合性マウスを、ホモ接合性に交雑する。
実施例1.4:ヒト化β2ミクログロブリンマウスの生成
【0301】
β2ミクログロブリンマウスの生成は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第20130111617号に記載された。簡潔に説明すると、マウスβ2ミクログロブリン(β2m)遺伝子を、VELOCIGENE(登録商標)技術を使用するヒト及びマウス細菌人工染色体(BAC)DNAからの固有の標的化ベクターの構築により、1回の工程においてヒト化した(例えば、米国特許第6,586,251号及び上記のValenzuela et al.を参照のこと)。
【0302】
具体的には、標的化ベクターを、RPCI−23ライブラリ(Invitrogen)由来の、BACクローン89C24からのマウスβ2m上流及び下流ホモロジーアームを含有する細菌相同組換えにより生成した。マウスホモロジーアームを操作して、エキソン2から非コードエキソン4の約267個のヌクレオチド上流に広がる2.8kbのヒトβ2m DNAフラグメントに隣接させた(
図2C)。リコンビナーゼ認識部位(例えば、loxP部位)に隣接する薬剤選択カセット(ネオマイシン)を、標的化ベクター内に操作して、その後の選択を可能にした。最終的な標的化ベクターを直線化し、F1H4マウスES細胞系統内にエレクトロポレーションした(上記Valenzuela et al.)。
【0303】
(Creリコンビナーゼの導入により)薬剤選択カセットが除去された標的化されたES細胞クローンを、VELOCIMOUSE(登録商標)法によって8細胞段階マウス胚に導入した(例えば、米国特許第7,294,754号及び上記Poueymirou et al.を参照のこと)。ヒト化β2m遺伝子を有するVELOCIMICE(登録商標)(ドナーES細胞に完全に由来するF0マウス)を、アレルアッセイ(上記Valenzuela et al.)の改変を使用するマウスアレルの損失及びヒトアレルの獲得についてのスクリーニングにより特定した。ヘテロ接合性マウスをホモ接合性に交雑する。ヒトβ2ミクログロブリンの発現を、ヒトβ2ミクログロブリンに特異的な抗体を使用するフローサイトメトリーにより確認した。
実施例2:ヒト化T細胞受容体マウスの生成
【0304】
内在性TCR(α又はβ)可変座の欠失及び内在性V及びJ又はV、D、及びJセグメントの置換えを含むマウスを、VELOCIGENE(登録商標)遺伝子操作技術(例えば、米国特許第6,586,251号及び上記Valenzuela,D.M.,et al.(2003)を参照のこと)を使用して作製する。この場合、細菌相同組換えを使用するBACライブラリから得られたヒト配列を使用して、マウスES細胞における内在性マウスTCR可変座に対してLTVECを標的化する標的化アームに隣接するヒトTCR可変座のゲノムフラグメントを含む大型標的化ベクター(LTVEC)を作製する。TCRアルファ及びベータ座のヒト化の詳細な説明は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第9,113,616号に記載されている。LTVECを再度直線化し、Valenzuela et al.に従って、マウスES細胞系統にエレクトロポレーションする。ES細胞を、ヒグロマイシン又はネオマイシン抵抗性について選択し、マウスアレルの損失又はヒトアレルの獲得をスクリーニングする。
【0305】
標的化ES細胞クローンを、VELOCIMOUSE(登録商標)法によって、8細胞段階(又はそれより早期の)マウス胚に導入する(上記Poueymirou W.T.et al.(2007))。ヒト化TCR座を有するVELOCIMICE(登録商標)(ドナーES細胞に完全に由来するF0マウス)を、アレルアッセイ(上記Valenzuela et al.)の改変を使用する内在性TCR可変アレルの損失及びヒトアレルの獲得についてのスクリーニングにより特定した。F0集団を遺伝子型判定し、ホモ接合性に交雑させた。ヒト化TCRα及び/又はTCRβ可変座についてのマウスホモ接合性を、本明細書に記載されたように作製する。
実施例2.1:TCRアルファ座のヒト化
【0306】
110個のVセグメント及び60個のJマウスセグメントに対応するマウスTCRα座における1.5メガ塩基対のDNAを、ヒトTCRαの54個のVセグメント及び61個のJセグメントに対応する1メガ塩基対のDNAにより、
図4Aに概略され、米国特許第9,113,616号に記載されている、進歩したヒト化戦略を使用して、置き換えた。TCRα座の進歩したヒト化戦略に使用される様々な標的化ベクターの結合部核酸配列を表5にまとめ、配列表に含ませる。
【表5】
ヒトTCRα可変領域セグメントを、IMGTデータベースと同様にナンバリングする。各結合部において、少なくとも100bp(各端から約50bp)が配列表に含まれる。
【0307】
まず、マウスBACクローンRP23−6A14(Invitrogen)からのDNAを、相同組換えにより改変し、内在性マウスTCRα座のTCRAJ1−TCRAJ28領域を、Ub−ヒグロマイシンカセット、続けて、loxP部位により置き換えるための標的化ベクターとして使用した。マウスBACクローンRP23−117i19(Invitrogen)からのDNAを、相同組換えにより改変し、内在性マウスTCRα及びδ座のTCRAV1周囲(及びTCRAV1を含む)約15kbの領域を、PGK−ネオマイシンカセット、続けて、loxP部位により置き換えるための標的化ベクターとして使用した。二重標的化染色体(すなわち、これらの標的化ベクターの両方により標的化された1つの内在性マウスTCRα座)を、当該技術分野において既知の核型分類及びスクリーニング法(例えば、TAQMAN(商標))により確認した。改変ES細胞を、CREリコンビナーゼで処理することにより、2つのloxP部位間の領域(すなわち、TCRAV1からTCRAJ1の内在性マウスTCRα座からなる領域)の欠失を媒介させ、1つのloxP部位、ネオマイシンカセット、並びにマウス定常及びエンハンサ領域のみを残した。この戦略により、欠失したマウスTCRα/δ座(MAID1540、
図4A、2番目の図)が生成された。
【0308】
TCRα用の第1のヒト標的化ベクターは、最初の2つの連続的なヒトTCRα V遺伝子セグメント(TRAV40及び41)及び61個のTCRαJ(50個が機能的である)遺伝子セグメントを含有した、CTD2216p1及びCTD2285m07 BACクローン(Invitrogen)からの、191,660bpのヒトDNAを有した。このBACを、3’マウスホモロジーアームのライゲーション用にTCRα1遺伝子セグメント下流(3’)403bpにNot1部位を、5’マウスホモロジーアームのライゲーション用に5’AsiSI部位を含有するように、相同組換えにより改変した。2種類のホモロジーアームを、このヒトフラグメントに対するライゲーションに使用した。3’ホモロジーアームは、RP23−6A14 BACクローンからの内在性マウスTCRα配列を含有し、5’ホモロジーアームは、マウスBACクローンRP23−117i19からのマウスTCRαVの内在性TCRα配列5’を含有した。このマウス−ヒトキメラBACを、ヒトTCRα遺伝子セグメントとマウスTCRα座における上流のloxp−ub−ヒグロマイシン−loxpカセットの最初の挿入を行うための標的化ベクター(MAID1626)として使用した。MAID1626標的化ベクターについての結合部核酸配列(配列番号:46〜48)を表5に記載する。
【0309】
続けて、一連のヒト標的化ベクターを作製し、同ベクターの作製には、loxP−ネオマイシン−loxP及びloxP−ヒグロマイシン−loxP(又はMAID1979について、frt−ヒグロマイシン−frt)選択カセットを交互に含む、マウスBACクローンRP23−117i19からのマウスTCRαVの内在性TCRα配列5’を含有した同じマウス5’アームを利用した。具体的な構築物は、米国特許第9,113,616号に記載され、
図4Aに示される。各挿入用の結合部配列は、表5及び配列表に含まれている。最終的なTCRα座は、5’loxp−ub−ネオマイシン−loxPカセットと、マウスTCRα定常遺伝子及びエンハンサに操作可能に連結している、合計54個のヒトTCRαV(45個が機能的である)及び61個のヒトTCRαJ遺伝子セグメントを含んだ。MAID1771標的化ベクター用の結合部核酸配列(配列番号:57及び58)を表5に記載する。
【0310】
進歩したヒト化工程の何れかにおいて、選択カセットを、Cre又はFlpリコンビナーゼによる欠失により除去する。加えて、ヒトTCRδ座を、TCRアルファ配列内に再導入してもよい。
実施例2.2:TCRβ可変座のヒト化
【0311】
33個のVマウスセグメント、2個のDマウスセグメント、及び14個のJマウスセグメントに対応するマウスTCRβ座における0.6メガ塩基対のDNAを、ヒトTCRβの67個のVマウスセグメント、2個のDマウスセグメント、及び14個のJセグメントに対応する0.6メガ塩基対のDNAにより、
図4Bに概略され、米国特許第9,113,616号に記載されている、進歩したヒト化戦略を使用して、置き換えた。TCRβ座の進歩したヒト化戦略に使用される様々な標的化ベクターの結合部核酸配列を表6にまとめ、配列表に示した。
【表6】
ヒトTCRβ可変領域セグメントを、IMGTデータベースと同様にナンバリングする。各結合部において、少なくとも100bp(各端から約50bp)が配列表に含まれる。
【0312】
具体的には、マウスBACクローンRP23−153p19(Invitrogen)からのDNAを、相同組換えにより改変し、内在性マウスTCRβ座における3’トリプシノーゲン(TRY)遺伝子クラスタのすぐ上流の17kb領域(TCRBV30を含む)を、PGK−neoカセット、続けて、loxP部位により置き換えるための標的化ベクターとして使用した。マウスBACクローンRP23−461h15(Invitrogen)からのDNAを、相同組換えにより改変し、内在性マウスTCRβ座における5’トリプシノーゲン(TRY)遺伝子クラスタ下流の8355bp領域(TCRBV2及びTCRBV3を含む)を、Ub−ヒグロマイシンカセット、続けて、loxP部位により置き換えるための標的化ベクターとして使用した。二重標的化染色体(すなわち、両標的化ベクターにより標的化された1つの内在性マウスTCRβ座)を、当該技術分野において既知の核型分類及びスクリーニング法(例えば、TAQMAN(商標))により確認した。改変ES細胞を、CREリコンビナーゼで処理し、5’と3’とのloxP部位間の領域(TCRBV2からTCRBV30までの内在性マウスTCRβ座からなる)の欠失を媒介させ、1つのloxP部位、ヒグロマイシンカセット、並びにマウスTCRBD、TCRBJ、定常、及びエンハンサ領域のみを残した。
図4Bに示されたように、1つのマウスTCRVβを、トリプシノーゲン遺伝子の5’クラスタ上流に残し、1つのマウスTCRVβを、マウスEβの下流に残した。
【0313】
TCRβ用の第1のヒト標的化ベクターは、最初の14個の連続的なヒトTCRβ V遺伝子セグメント(TRBV18−TRBV29−1)を含有した、CTD2559j2 BACクローン(Invitrogen)からの、125,781bpのヒトDNAを有した。MAID1625標的化ベクターについての結合部核酸配列(配列番号:59〜61)を、表6に記載する。
【0314】
マウスTCRβ Dセグメント及びJセグメントをヒトTCRβDセグメント及びJセグメントにより置き換えるために、マウスBACクローンRP23−302p18(Invitrogen)からのDNA及びヒトBACクローンRP11−701D14(Invitrogen)からのDNAを、相同組換えにより改変し、上記TCRβVミニ座(すなわち、MAID1625)を含有した、ES細胞内での標的化ベクター(MAID1715)として使用した。この改変は、内在性マウスTCRβ座における約18540bpの領域(3’トリプシノーゲン遺伝子のポリA下流の100bp〜マウスTCRBD1−J1、マウス定常1、及びマウスTCRBD2−J2を含んだD2クラスタにおけるJセグメントから下流に100bp)を、ヒトTCRBD1−J1、loxP Ub−ヒグロマイシン−loxPカセット、マウス定常1、ヒトTCRBD2−J2を含有する約25425bpの配列により置き換えた。二重標的化染色体(すなわち、両標的化ベクターにより標的化された1つの内在性マウスTCRβ座)を、当該技術分野において既知の核型分類及びスクリーニング法(例えば、TAQMAN(商標))により確認した。改変ES細胞を、CREリコンビナーゼで処理することにより、ヒグロマイシンカセットの欠失を媒介し、D1 Jクラスタ中のヒトJセグメントから下流に、1つのloxP部位のみが残る。MAID1715標的化ベクターについての結合部核酸配列(配列番号:62〜66)を、表6に記載する。
【0315】
続けて、一連のヒト標的化ベクターを作製し、同ベクターの作製には、マウスBACクローンRP23−461h15からのマウストリプシノーゲン遺伝子上流周囲の内在性TCRβ配列と、交互の選択カセットとを含有した同じマウス5’アームを利用した。具体的な構築物は、米国特許第9,113,616号に記載されており、
図4Bに示される。各挿入用の結合部配列が表6及び配列表に含まれている。
【0316】
最終的に、マウスTCRβ定常遺伝子及びエンハンサに操作可能に連結している合計66個のヒトTCRβV(47個が機能的である)及びヒトTCRβDセグメント及びJセグメントを含有するヒトTCRβミニ座(MAID1792)が生成された。MAID1792標的化ベクター用の結合部核酸配列(配列番号:69及び70)を表6に記載する。
【0317】
マウスTCRBV31は、TCRBC2(第2のTCRB定常領域配列)の約9.4kb 3’に位置し、他のTCRBVセグメントに対して反対向きにある。相当するヒトVセグメントは、TCRBV30であり、これは、ヒトTCRB座において、同様の位置に位置している。TCRBV31をヒト化するために、マウスTCRBV31を含有するマウスBACクローンを、細菌相同組換えにより改変して、LTVEC MAID6192を作製した。TCRBV31のエキソン1における開始コドンで開始するコード領域全体、イントロン、3’UTR、及び組換えシグナル配列(RSS)を、相同的なヒトTCRBV30配列により置き換えた。
図4Bに、hTCRBV30遺伝子のエキソン1とエキソン2との間のイントロンに位置する選択カセットを示す。
【0318】
MAID6192標的化ベクター用の結合部核酸配列(配列番号:71及び72)を表6に記載する。MAID6192 DNAを、MAID1792 ES細胞内にエレクトロポレーションし、細胞を、マウスTCRB31アレルの損失及びヒトTCRB30アレルの獲得についてスクリーニングする。
【0319】
同様の操作戦略を使用して、残った5’マウスTCRβVセグメントを、任意選択的に欠失させる。
【0320】
上記工程のうちいずれかにおいて、選択カセットを、Cre又はFlpリコンビナーゼによる欠失により除去する。
【0321】
ヒト化TCRα可変座についてのマウスホモ接合性を、ヒト化TCRβ可変座に対してホモ接合性のマウスと交雑させて、ヒト化TCRα及びTCRβ可変座を含む子孫を形成する。子孫を、ヒト化TCRα及びヒト化TCRβ座に対して、ホモ接合性に交雑させる。
【0322】
ヒト化TCRα及びTCRβ可変座を含むマウスは、正常なT細胞発達を受け、各種の可変遺伝子セグメントから得られる可変ドメインを発現するT細胞受容体を含むことが確認される。
実施例3:T細胞共受容体座のヒト化
【0323】
CD4及びCD8座(CD8アルファ及びCD8ベータ座の両方)のヒト化は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第20140245466号に詳細に記載されている。
実施例3.1:CD4座のヒト化
【0324】
具体的には、マウスCD4座を、VELOCIGENE(登録商標)技術を使用するヒト及びマウス細菌人工染色体(BAC)DNAからの固有の標的化ベクターの構築により、1回の工程において、ヒト化した(例えば、米国特許第6,586,251号及び上記Valenzuela et al.(2003)を参照のこと)。標的化ベクターを生成するために、細菌人工染色体(BAC)DNAを使用する一連の細菌相同組換え(BHR)及び他の操作工程を、米国特許出願公開第20140245466号に詳細に記載されたように行った。
【0325】
ヒトCD4標的化ベクターを、NotIにより直線化し、F1H4マウスES細胞内にエレクトロポレーションした。ヒト化CD4座を有する標的化ES細胞を、ネオマイシンカセット及びヒトCD4遺伝子と、マウスCD4遺伝子の1つのコピーとの存在を検出したアレルアッセイ(Valenzuela et al.)の改変を使用する遺伝子型判定により特定した。
【0326】
ヒト化CD4標的化ベクターのES細胞へ組込みが成功した場合得られる最終的なヒト化CD4座を
図5Aに示す。ヒトイントロン3−loxーneoカセット結合部(カセットの5’端)にわたる配列を、配列番号:75に示し、lox−neoカセット−ヒトイントロン3結合部(カセットの3’端)にわたる配列を配列番号:76に示す。両配列を表7にも列記する。
図5Aに示されたpgk−neoカセットを含むヒト化CD4片の完全な核酸配列を配列番号:77に示す。pgk−neoカセットは、配列番号:77の残基307〜2176に広がっている。2つのlox部位は、残基267〜300及び2182〜2215に位置している。一方、ヒト配列は、残基1〜234及び2222〜18263に広がっている。完全なヒト化CD4タンパク質のアミノ酸配列を、アミノ酸27〜319(配列番号:79に示す)に広がるヒト配列と共に、配列番号:78に示す。
【表7】
ヒトの配列を、丸かっこで囲む。制限酵素部位(PI−Sce I)を含有する配列をボールド文字とする。選択カセット配列を、イタリック体とする。
【0327】
loxPが導入されたネオマイシン抵抗性カセットを、Creリコンビナーゼを発現するプラスミドのヒト化CD4座を含有するES細胞内へのエレクトロポレーションにより除去する。
【0328】
ヒト化CD4座を有し、抵抗性マーカーを有さない標的化ES細胞を、ネオマイシンカセットの不存在、ヒトCD4遺伝子の1つのコピー及びマウスCD4遺伝子の1つのコピーの存在を検出した遺伝子型判定により特定する。
【0329】
上記の標的化されたES細胞を、ドナーES細胞として使用し、VELOCIMOUSE(登録商標)法によって8細胞段階マウス胚に導入した(例えば、米国特許第7,294,754号及びPoueymirou et al.(2007、上記)を参照のこと)。キメラCD4遺伝子を独立して有するVELOCIMICE(登録商標)(完全にドナーES細胞から得られたF0マウス)を、特異的なヒトCD4遺伝子配列の存在を検出するアレルアッセイ(上記Valenzuela et al.)の改変を使用した遺伝子型判定によって特定した。ヒト化CD4タンパク質のT細胞表面上での発現を、抗ヒトCD4抗体を使用して検出した。本明細書に記載されたヒト化CD4タンパク質に対してヘテロ接合性のマウスを、ホモ接合性に交雑させた。
実施例3.2:CD8座のヒト化
【0330】
CD8α及びCD8β遺伝子は、ゲノム中に、例えば、マウス第6番染色体上に共局在しており、互いに約37kb離れて位置している。強い関与により、1つの遺伝子、例えば、CD8βをまず導入し、続けて、第2の遺伝子、例えば、CD8αの導入による連続的な標的化を行う。ヒト化の具体的な詳細な工程は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第20140245466号に記載されている。
【0331】
簡潔に説明すると、マウスCD8β座を、VELOCIGENE(登録商標)技術を使用するマウス細菌人工染色体(BAC)DNAからの固有の標的化ベクターの構築により、1回の工程でヒト化した。CD8エクトドメイン(イントロン1中の5’接合部〜イントロン3中の3’接合部)をコードするマウスエキソン2〜3の相同的なヒト配列による置換えを含有するように、BAC RP23−431M6からのDNAを、BHRにより改変して、大型の標的化ベクター(LTVEC)MAID1737を生成した(
図5B)。loxp−Ub−Hygカセットを、イントロン3中の3’接合部に挿入した。得られたベクターの様々な接合部におけるヌクレオチド配列を、表8に列記し、配列表に示す。ヒト化CD8βタンパク質の完全なアミノ酸配列を、アミノ酸15〜165に広がるヒト配列(配列番号:84に示す)と共に、配列番号:83に示す。
【表8】
ヒト配列を、丸かっこで囲む。lox部位を、イタリック体とする。制限酵素部位、マルチプルクローニングサイト、及びベクター由来配列を、ボールド文字とする。
【0332】
標的化ベクターを、F1H4マウスES細胞内にエレクトロポレーションした。ヒト化CD8β座を有する標的化ES細胞を、ヒトCD8β遺伝子の存在を検出したアレルアッセイ(Valenzuela et al.)の改変を使用する遺伝子型判定により特定した。
【0333】
マウスCD8α座もまた、VELOCIGENE(登録商標)技術を使用するマウス細菌人工染色体(BAC)DNAからの固有の標的化ベクターの構築により、1回の工程でヒト化された。CD8aエクトドメイン(マウスエキソン1中のAlaコドン27における5’接合部〜マウスイントロン2中の3’接合部)をコードするマウスエキソン1〜2の相同的なヒト配列(ヒトエキソン2中の5’接合部〜イントロン3中の3’接合部’(
図5A))による置換えを含有するように、BAC RP23−431M6からのDNAを、BHRにより改変して、大型の標的化ベクター(LTVEC)MAID1738を生成した。これにより、エキソン1の始めにマウスリーダー配列が保持される。lox2372−Ub−Neoカセットを、ヒト/マウス配列の3’接合部に挿入した。得られたベクターの様々な接合部におけるヌクレオチド配列を、表9に列記し、配列表に示す。ヒト化CD8αポリペプチドの完全なアミノ酸配列を、アミノ酸28〜179に広がるヒト配列(配列番号:89に示す)と共に、配列番号:88に示す。
【表9】
ヒト配列を、丸かっこで囲む。lox部位を、イタリック体とする。制限酵素部位、マルチプルクローニングサイト、及びベクター由来配列を、ボールド文字とする。
【0334】
上述したヒト化CD8α標的化ベクターを、ヒト化CD8b座を含有したマウスES細胞内にエレクトロポレーションして、ヒト化CD8b及びCD8a座を含む改変ES細胞を作製した(
図5B)。ヒト化CD8b及びCD8a座を有する標的化ES細胞を、アレルアッセイ(Valenzuela et al.)の改変を使用する遺伝子型判定により特定した。
【0335】
上述した標的化されたES細胞を、ドナーES細胞として使用し、VELOCIMOUSE(登録商標)法によって8細胞段階マウス胚に導入した(例えば、米国特許第7,294,754号及び上記Poueymirou et al.を参照のこと)。キメラCD8b遺伝子及びキメラCD8a遺伝子を有するVELOCIMICE(登録商標)(完全にドナーES細胞から得られたF0マウス)を、特異的なヒトCD8b及びCD8a遺伝子配列の存在を検出するアレルアッセイ(上記Valenzuela et al.)の改変を使用した遺伝子型判定によって特定した。
【0336】
CD8α及びCD8β座における選択カセットは、当業者に既知の方法で除去され得る。本明細書に記載されたヒト化CD8α及びCD8β座にヘテロ接合性のマウスを、ホモ接合性に交雑させた。ヒト化CD8α及びCD8βのT細胞表面上での発現を、抗ヒトCD8抗体を使用して検出する。
実施例4:ヒト化細胞性免疫系コンポーネントを含むマウスの生成
【0337】
ヒト化細胞性免疫系コンポーネントを含むマウスを生じさせるために、様々なコンポーネント、例えば、MHCI、MHCIIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2Mのヒト化にホモ接合性のマウスを、任意の組み合わせにおいて共に交雑させて、ヒト化されたT細胞免疫応答の様々なコンポーネントを有するマウスを作製することができる。例えば、ヒト化MHCIを含むマウスを、ヒト化β2Mを含むマウスと交雑させて、ヒト化MCHI/β2Mを発現しているマウスを生じさせてもよい。様々なコンポーネント、例えば、MHCI、MHCIIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2Mのヒト化にホモ接合性のマウスを、当該技術分野において既知の方法を使用して、共に交雑させて、9つ全てのヒト化を含むマウス(「TM I/II B C4/8」マウス)を得る。マウスを、当該技術分野において既知の方法を使用して、ホモ接合性に交雑させる。あるいは、各ヒト化遺伝子を含む標的化ベクターを、連続的な標的化により、同じES細胞内に導入して、9つ全てのヒト化を含むES細胞を得ることができる。得られたES細胞を、上記実施例1〜3に記載されたVELOCIMOUSE(登録商標)法によって8細胞段階マウス胚に導入する。
実施例5:ヒト化細胞性免疫系コンポーネントを含むマウスの特徴決定
【0338】
ヒト化MHCI、MHCIIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにヒト化β2Mについてホモ接合性のマウスを特徴決定した。具体的には、マウスからの脾臓及び胸腺を収集し、単細胞懸濁液を得た。懸濁液を、1200rpm、4℃で、5分間遠心分離して、細胞を沈殿させた。各組織からの細胞を、4mLのACK溶解バッファー(GIBCO)により溶解させて、赤血球を溶解させた。細胞を、細胞ストレーナによりろ過し、遠心分離して沈殿させ、媒体中に再懸濁させ、カウントした。
【0339】
図6A〜
図6C及び
図9A〜
図9Cに示されたCD19、CD3、CD4、及びCD8αの細胞表面の発現を、蛍光体コンジュゲート抗体:抗マウスCD3(17A2、BD)、抗マウスCD19(1D3、BD)、抗マウスF4/80(BM8、Biolegend)、抗マウスCD8α(53−6.7、BD)、抗マウスCD4(RM4−5、eBioscience)、抗ヒトCD8α(SK1、BD)、及び抗ヒトCD4(RPA−T4、BD)を使用するFACSにより分析した。
図7A〜
図7F及び
図10A〜
図10FにおけるマウスH2Db、ヒトHLA分子(HLA−A2、B2m、及びHLA−DR)、及びマウスMHC I
AI
E分子の細胞表面の発現を、蛍光体コンジュゲート抗体:抗マウスCD19(6D5、Biolegend)、抗マウスF4/80(BM8、Biolegend)、抗マウスH2Db(KH95、Biolegend)、抗ヒトHLA−A2(BB7.2、BD)、抗ヒトHLA−DR(G46−6、BD)、抗ヒトB2−ミブログロブリン(mibroglobulin)(2M2、Biolegend)、及び抗マウスI
AI
E(M5/114.15.2、eBioscience)を使用するFACSにより分析した。
図7G及び
図10Gにおけるマウス及びヒトCD4及びCD8の細胞表面の発現を、蛍光体コンジュゲート抗体:抗マウスCD3(17A2、Biolegend)、抗マウスCD4(GK1.5、eBiosciences)、抗マウスCD8α(53−6.7、BD 2)、抗マウスCD8β(H35−17.2、eBioscience)、抗ヒトCD4(OKT4、eBioscience)、抗ヒトCD8α(RPA−T8、BD 6)、抗ヒトCD8β(2ST8.5H7、BD)を使用するFACSにより分析した。
図8及び
図11に示されたFoxP3及びCD25の細胞表面の発現を、FACS抗FoxP3(FJK−16s、eBioscience)及び抗CD25(PC61、Biolegend)により分析した。
図9D〜
図9Eに示されたCD44及びCD62Lの細胞表面の発現を、抗CD44(IM7、BD)及び抗CD62L(MEL−14、Biolegend)を使用して分析した。
【0340】
全てのフローサイトメトリーを、BD Fortessaを使用して行った。データを、FlowJoを使用して分析した。
【0341】
胸腺における発現を、
図6A〜
図6C、
図7A〜G、及び
図8に示す。胸腺細胞及びCD3+細胞の絶対数並びに胸腺T細胞の全体的な発達は、コントロールマウス及びヒト化TM I/II B C4/8マウスと同等であった(データを示さず)。
図6Aは、ヒト化細胞性免疫系を有するマウス(TM I/II B C4/8)の胸腺におけるB細胞及びT細胞の割合が、コントロールマウスにおいて見出された割合と同様であることを示している。TM I/II B C4/8マウスの胸腺におけるF4/80細胞の頻度及び数を、コントロールマウスと比較した(
図6B、データを示さず)。また、ヒト化CD4及びCD8は、非ヒト化コントロールマウスにおけるマウスCD4及びCD8の発現と同様に、9つ全ての細胞性免疫遺伝子についてヒト化されたマウス(TM I/II B C4/8)の胸腺細胞上に発現される(
図6C)。ヒト化β2Mは、ヒト化TM I/II B C4/8マウスにおけるB細胞及びマクロファージの表面上に発現される。一方、その発現は、コントロールマウスのB細胞及びマクロファージからは見られない(
図7A及び
図7B)。同様に、ヒト化MHCI及びIIは、ヒト化TM I/II B C4/8マウスのB細胞及びマクロファージの両方の表面上に提示される(
図7C及び
図7D)。一方、マウスMHCクラスI及びII分子は検出できなかった(
図7E及び
図7F)。ヒト化CD4、CD8α、及びCD8βは、ヒト化TM I/II B C4/8マウスから得られたCD3+胸腺細胞の表面上に発現されるが、コントロールマウスにおけるCD3+胸腺細胞からは見られない(
図7G)。ヒト化TM I/II B CD4/8は、レギュラトリーT細胞(Treg)(
図8)、NK細胞(CD335
+CD3
+)及び単球(CD11b
+)を生じさせる(データを示さず)。
【0342】
脾臓における発現を、
図9A〜
図9D及び
図10A〜
図10Gに示す。細胞性免疫系コンポーネントについてヒト化されたマウス(TM I/II B C4/8)の脾臓は、同等の絶対数のCD3+細胞、並びに、ほぼ正常な割合のB細胞及びT細胞を含んだ(
図9A、データを示さず)。TM I/II B C4/8マウスの脾臓におけるF4/80細胞の頻度及び数を、コントロールマウスと比較した(
図9B、データを示さず)。細胞性免疫系コンポーネントについてヒト化されたマウス(TM I/II B C4/8)は、ヒト化CD4及びCD8αを、CD3+脾細胞上に発現した(
図9C)。ヒト化TM I/II B C4/8マウスは、メモリエフェクター(CD44
+CD62L
−)CD4
+及びCD8
+ T細胞、並びにセントラルメモリ(CD44
+CD62L+)CD8
+ T細胞を含んだ(
図9D及び
図9E)。
【0343】
図10A及び
図10Bに示されたように、ヒト化β2Mは、ヒト化TM I/II B C4/Bマウスの脾臓におけるB細胞及びマクロファージの表面上に発現される。一方、その発現及びマウスMHC分子の発現は、コントロールマウスの脾臓におけるB細胞及びマクロファージからは見られない。同様に、ヒト化MHCI及びIIは、ヒト化TM I/II B C4/Bマウスの脾臓におけるB細胞及びマクロファージの両方の表面上に提示される(
図10C及び
図10D)。一方、マウスMHクラスI及びII分子は検出されなかった(
図10E及び
図10F)。ヒト化CD4、CD8α、及びCD8βは、ヒト化TM I/II B C4/8マウスから得られたCD3+脾細胞の表面上に発現されるが、コントロールマウスにおけるCD3+脾細胞からは見られない(
図10G)。TM I/II B C4/8マウスは、コントロールマウスと比較して、脾臓レギュラトリーT細胞の正常に近い発現を有し(
図11)、脾臓NK細胞(CD335
+CD3
−)及び単球(CD11b
+)を発現する。
実施例6:ヒトペプチドによるT細胞に対する提示及び同T細胞の活性化の評価
【0344】
ヒト化された細胞性免疫系コンポーネントを含むマウスがヒト化T細胞免疫応答を示したかどうかを判定するために、ヒトHLA−A2により特異的に提示されるペプチドであるMAGE−A3を提示し、MAGE−A3に応答する、細胞性免疫系コンポーネントについてヒト化されたマウス(TM I/II B C4/8)からの脾細胞の能力を試験した。
【0345】
ヒトHLA−A2により特異的に提示されるペプチドであるMAGE−A3を合成し(Celtek Biosciences)、PBS中に希釈し、200μgのMAGE−A3が200μLのエマルションに含有されるように、フロイント完全アジュバント(CFA、Chondrex、Inc.)と等量で混合した。50μLのエマルションを、各動物に4スポットで注入した。2つのスポットをそれぞれ、ヒト化MHCI、MHCIIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2Mについてホモ接合性のマウス(TM I/II B CD4/8)、又は内在性MHCI、MHCIIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2Mを発現しているコントロールマウスの脇腹後部とし、2つのスポットをそれぞれ、これらのマウスの各肩付近とする。
【0346】
免疫化マウスからの脾臓懸濁液を得て、分離させる。赤血球を、ACK溶解バッファー(Life Technologies)中において溶解させ、脾細胞を、RPMI完全培地中において懸濁させる。2×10
5個の単離された脾細胞を、MAGE−A3ペプチドの不存在下において、又は10μg/mL若しくは1μg/mLの希釈されたMAGE−3Aペプチドの存在下において、5μg/mLのマウスIFNγ捕捉抗体(BD Biosciences)でコートされたPVDFプレート(Millipore)のウェルあたりに、ELISPOTアッセイにおいて試験した。ペプチドとの16〜20時間のインキュベーション後に、プレートを洗浄し、ビオチン化検出抗体(BD Biosciences)と共にインキュベートし、洗浄し、ストレプトアビジン−HRP(MabTech)により処理し、洗浄し、TMB基質(Mabtech)により発色させ、AID Elispotリーダーによりカウントする。
【0347】
遺伝子型当たりに1匹のマウスのみを示すが、各遺伝子型の複数のマウスを試験した。全てのサンプルを、エラーバーで示される標準偏差を伴って、トリプリケートで実行した。
図12に示されるように、ヒト化MHCI、MHCIIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2Mのそれぞれについてホモ接合性のマウス(TM I/II B CD4/8)からのサンプルのみが、HLA−A2特異的ペプチドMAGE−A3による処理後に、IFNγを分泌することにより応答した。このことは、これらのマウスからのT細胞が、ヒト化HLA−A2によるMAGE−A3の提示後に活性化されたことを示している。
実施例7:LCMV感染モデルを使用したT細胞機能の評価
【0348】
ヒト化された細胞性免疫系コンポーネントを含むマウスが感染に対して正常な応答を示したかどうかを判定するために、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)を取り除くヒト化マウスの能力を試験した。LCMVは、マウス指向性ウイルスであり、感染の成り行きはウイルスの株に依存する。アームストロング株への暴露は、急性の感染をもたらし、マウスは、ウイルスに対するT細胞応答を迅速に開始し、約1週間で感染を取り除くことができる。他方では、クローン13ウイルスを取り除くことはできず、T細胞は、「疲弊」になり(T細胞疲弊に関連するマーカー、例えば、PD1、Lag3、Tim3を発現する)、慢性感染が確立される。CD8枯渇又はMHCクラスI欠損マウスのアームストロング株による感染により、高ウイルス力価の維持がもたらされる(J.Virol.68:8056〜63(1994))ことが示されている。このため、ウイルス感染が、T細胞活性に依存するので、LCMVは、T細胞の機能を試験するための理想のモデルである。
【0349】
ヒト化された細胞性免疫系コンポーネント、例えば、MHCI、MHCIIα及びβ、TCRα及びβ、CD4、CD8α及びβ、並びにβ2Mを含むマウスが、正常なT細胞機能を示すかどうかを判定するために、コントロール及びヒト化(TM I/II B CD4/8)マウスの両方に、2×10
5ffuのアームストロングウイルス株を、i.p.で0日目に感染させた。3日目、6日目、9日目、及び12日目に、臓器を収集し、ウイルス力価を測定した。
図13Aに示されたように、コントロール及びヒト化マウスは両方とも、アームストロング感染を取り除くことができた。
【0350】
また、コントロール及びヒト化マウスの両方に、4.5×10
5ffuのクローン13ウイルスも、i.v.で0日目に感染させ、21日目に、臓器を収集し、ウイルス力価を測定した。
図13Bに示されるように、両マウス系統は、慢性LCMV感染を確立することができた。T細胞疲弊のマーカーであるPD1、Lag3、及びTim3を発現するヒト化マウスの能力もまた測定した。血液を、未感染マウス及び感染後3週間の感染ヒト化マウスから採取し、PE−Cy7コンジュゲート抗PD1抗体(BIOLEGEND)、PerCpCy5.5コンジュゲートLag3抗体(BIOLEGEND)、及びPEコンジュゲートTim3抗体(R&D Systems)によるフローサイトメトリーを使用して染色した。
図13Cにおけるデータは、示された受容体について陽性の細胞染色の定量である。ヒト化(TM I/II B CD4/8)マウス及びコントロールB6マウスは両方とも、T細胞疲弊の3つ全てのマーカーを、慢性LCMVクローン13株による感染後3週間で発現した。
【0351】
細胞性免疫系コンポーネントについてヒト化されたマウスにおけるメモリT細胞応答を評価するために、5匹のコントロールマウス及び4匹のヒト化マウスに、2×10
5ffuのアームストロングウイルス株を感染させ、17日目に、4.5×10
5ffuのクローン13株を重感染させた(ヒト化及びコントロールマウスのそれぞれ2匹を更なるコントロールとしてモック感染させた)。最初の感染後の31日目に、臓器を収集し、ウイルス力価を分析した。
図14に示されるように、急性LCMV感染を経験したコントロールマウスの5/5及びヒト化マウスの3/4は、その後の慢性LCMV感染から保護された。このことは、インタクトなメモリT細胞が、これらの動物の中で応答していることを証明している。
【0352】
細胞性応答の性質を分析するために、コントロール及びヒト化マウスに、2×10
5ffuのアームストロングウイルス株を、0日目に感染させた。10日目(
図15A及び
図15B)又は感染後の示された時点(
図15C及び
図15D)に、細胞性応答の特異性を、ヒトCD8
+ T細胞を活性化することが既知の3つのHLA−A2限定ペプチド(GPC10−18、N69−77、又はZ49−58)(Botten et al.(2007)J.Virol.81:2307〜17を参照のこと)、又は、H−2D
bバックグラウンドにおいてマウスにより認識される免疫優勢LCMVペプチドドであるgp33を使用して分析した。具体的には、CD8
+ T細胞を、収集された脾臓から単離し、ペプチドでパルスした。CD8
+細胞生成インターフェロンγ(IFNγ)を、ELISpotにより(
図15A及び
図15B)、又は細胞内IFNγについての染色により(
図15C及び
図15D)測定した。
【0353】
コントロール動物から単離されたCD8
+T細胞は、gp33ペプチドにより特異的に活性化される(
図15A)。一方、ヒト化動物から単離されたCD8
+ T細胞は、HLA−A2限定ペプチドにより活性化される(
図15B)。ペプチドにより刺激された場合にIFNγを発現する能力により観察されたとおり、CD8+ T細胞活性化の時間的経過から、コントロール及びヒト化マウス両方のCD8+ T細胞が、感染後最初の2週間の間に増殖し、ウイルスが取り除かれた後には検出できなくなることが示されている(
図15C及び
図15D)。gp33ペプチドに対する応答は、コントロール動物においてより強力であるように思われたが、gp33は、既知の免疫優勢LCMVエピトープであるが、免疫優勢HLA−A2限定LCMVエピトープは特定されていなかったことに留意されたい。まとめると、ヒト化、又は実質的にヒト化されたT細胞免疫系を含む動物は、LCMV発現タンパク質を処理し、それらをヒト化MHC分子上に提示し、T細胞をヒト化T細胞受容体を介して活性化させることができる。
等価物
【0354】
当業者は、単に日常的な実験を使用して、本明細書に記載の発明の特定の実施形態の多くの等価物を認識するか、確認することが可能であろう。かかる等価物は、以下の「特許請求の範囲」によって包含されることが意図される。
【0355】
本願全体を通して引用された全ての非特許文献、特許出願、及び特許の内容全体は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。