特許第6796614号(P6796614)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796614
(24)【登録日】2020年11月18日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/217 20110101AFI20201130BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20201130BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   B60R21/217
   B60R21/2338
   B60R21/207
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-66789(P2018-66789)
(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公開番号】特開2019-177730(P2019-177730A)
(43)【公開日】2019年10月17日
【審査請求日】2019年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】特許業務法人バリュープラス
(74)【代理人】
【識別番号】503175047
【氏名又は名称】オートリブ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100089462
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【復代理人】
【識別番号】100129827
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 進
(74)【復代理人】
【識別番号】100204021
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 喜大
(72)【発明者】
【氏名】小林 優斗
(72)【発明者】
【氏名】大里 秀一
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−076392(JP,A)
【文献】 特開2002−187519(JP,A)
【文献】 特開2006−088851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの背もたれ部の側方内部に設置され、サイドドアとシートとの間、或いは、隣り合うシートの間の領域にエアバッグを展開させるサイドエアバッグ装置であって、
エアバッグと、
このエアバッグ内の車両の後退方向側の端部に設けられ、センサーからの出力信号を受けて折り畳み状態の前記エアバッグにガスを供給するインフレータと、
を備え、
前記エアバッグには、車両の後退方向側に前記インフレータを挿入する開口部が形成され、当該開口部の周囲に前記エアバッグの内部に向かって折り返す延長布部を設け、当該延長布部を前記開口部から露出した前記インフレータの外側面に密着させ
前記延長布部には、エアバッグの内部に向かって折り返した状態で、インフレータに設けられたスタッドボルトを挿通する孔が設けられていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記延長布部の両側辺部分は、インフレータが挿入可能な範囲で前記エアバッグの内側と接触して接合されていることを特徴する請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグは、車両の後退方向側に位置する部分を除く基布の外周部を接合して袋状に形成されたもので、車両の後退方向側に位置する前記接合されない部分に、前記延長布部の両側辺部分が接合されることを特徴とする請求項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
シートの背もたれ部の側方内部に設置され、サイドドアとシートとの間、或いは、隣り合うシートの間の領域にエアバッグを展開させるサイドエアバッグ装置であって、
エアバッグと、
このエアバッグ内の車両の後退方向側の端部に設けられ、センサーからの出力信号を受けて折り畳み状態の前記エアバッグにガスを供給するインフレータと、
を備え、
前記エアバッグには、車両の後退方向側に前記インフレータを挿入する開口部が形成され、当該開口部の周囲に前記エアバッグの内部に向かって折り返す延長布部を設け、当該延長布部を前記開口部から露出した前記インフレータの外側面に密着させ、
前記延長布部は、エアバッグの内部に向かって折り返した状態でエアバッグの外周縁方向に帯状となるように形成され、前記折り返す延長布部に磁石を配置したことを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記折り返す延長布部に配置する磁石は複数であることを特徴とする請求項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項6】
前記折り返した延長布部は、周囲がエアバッグの基布の内側に接合されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項7】
前記磁石は、前記折り返した延長布部とエアバッグの基布との前記接合により当該延長布部とエアバッグの基布との間に形成した空間に配置されていることを特徴とする請求項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項8】
シートの背もたれ部の側方内部に設置され、サイドドアとシートとの間、或いは、隣り合うシートの間の領域にエアバッグを展開させるサイドエアバッグ装置であって、
エアバッグと、
このエアバッグ内の車両の後退方向側の端部に設けられ、センサーからの出力信号を受けて折り畳み状態の前記エアバッグにガスを供給するインフレータと、
を備え、
前記エアバッグには、車両の後退方向側に前記インフレータを挿入する開口部が形成され、当該開口部の周囲に前記エアバッグの内部に向かって折り返す延長布部を設け、当該延長布部を前記開口部から露出した前記インフレータの外側面に密着させ、
前記延長布部は、エアバッグの内部に向かって折り返した状態でエアバッグの外周縁方向に帯状となるように形成されると共に、前記折り返す延長布部に、テザーをエアバッグの外周縁方向となるように配置したことを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項9】
前記テザーは、前記折り返す延長布部に形成した孔に挿通されていることを特徴とする請求項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項10】
前記テザーは、前記折り返す延長布部に接合されていることを特徴とする請求項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項11】
シートの背もたれ部の側方内部に設置され、サイドドアとシートとの間、或いは、隣り合うシートの間の領域にエアバッグを展開させるサイドエアバッグ装置であって、
エアバッグと、
このエアバッグ内の車両の後退方向側の端部に設けられ、センサーからの出力信号を受けて折り畳み状態の前記エアバッグにガスを供給するインフレータと、
を備え、
前記エアバッグは、車内側基布と車外側基布とが折り曲げ箇所で繋がる1枚の基布を用いて構成され、
前記エアバッグには、車両の後退方向側に前記インフレータを挿入する開口部が形成され、前記1枚の基布の外周のうち、前記車内側基布及び前記車外側基布の折り曲げ箇所に跨る部分から外方に延びる部分を前記エアバックの内部に向かって折り返した延長布部が設けられ、
前記延長布部の両側辺部分が前記1枚の基布の内側に接合され、前記延長布部のうち前記1枚の基布に重なる側とは反対面により前記開口部が形成されていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両が側面から衝突された時(以下、側面衝突時という。)に、乗員を保護するため、車両に設置されるサイドエアバッグ装置に関するものである。
【0002】
以下、本願において「上」「上方」とは車両の天井側を、「下」「下方」とは車両の床側を意味する。また、「前」「前方」とは車両の前進方向側を、「後」「後方」とは車両の後退方向側を意味する。
【背景技術】
【0003】
例えば側面衝突時の衝撃から乗員を保護するサイドエアバッグ装置は、シートの背もたれ部(以下、シートバックという。)の側方内部に設置される。
【0004】
このサイドエアバッグ装置は、例えば側面衝突時、衝撃を検知したセンサーからの出力信号によってインフレータが作動してガスを発生し、乗員の側方にエアバッグを展開させる構成である。
【0005】
このような構成のサイドエアバッグ装置は、図4(a)に示すように、エアバッグ1に設けた開口部1aからエアバッグ内の所定位置にインフレータ2を挿入する構成となっている。
【0006】
ところで、前記開口部1aは、インフレータ2の外側面に突出状に設けたスタッドボルト2aも挿入する必要があるため大きく形成されるので(図4(a)参照)、インフレータ2の挿入後は大きな隙間3が生じる(図4(b)(c)参照)。
【0007】
従って、エアバッグの展開時、インフレータを挿入した前記開口部からガスが漏れないように、前記開口部を閉じたり、塞いだり、縮めたりする後処理作業が必要になる。
【0008】
ところで、前記後処理作業は、製造効率の観点から、容易に行えることが望まれている。また、前記後処理作業を行っても、インフレータに取付けられたハーネス等を前記開口部からエアバッグの外部に露出させる必要があることから、開口部の一部が解放されたままの状態となり、開放された部分からガスが漏れ出しやすい。従って、前記後処理作業の簡略化を図りつつ、前記開口部からのガス漏れの抑制を目的としたサイドエアバッグ装置が種々提案されている。
【0009】
例えば、特許文献1では、インフレータを挿入したリテーナの一部を開口部から突出させた状態で、前記開口部のリテーナとの接触位置でエアバッグを下方に折り曲げ、前記開口部の端部によってリテーナを締付けることで、開口部からのガス漏れを抑制している。
【0010】
また、特許文献2では、パネルシートを2つ折りしてエアバッグを形成する際、周縁部に設けた中折り領域をエアバッグの内側に折り込んで周縁部と共に綴じることで、エアバッグの内側に凹部を形成し、中折り領域に形成した挿入孔が露出しないようにしている。
【0011】
特許文献1の場合、リテーナでインフレータを保持し、エアバッグの上方と下方を同じ側に折り曲げた後、先端側からインフレータを配置した基端側に蛇腹折りしている。このような構造では、エアバッグのインフレータ挿入口付近での密閉度が悪く、膨張展開時のガス漏れが起きやすく、エアバッグの展開完了までの時間が長くなって所定の展開挙動を得ることが出来ない場合がある。
【0012】
また、特許文献2の場合、その図3に示されるように、中折り領域の挿入孔の内面がガス発生器の外側面と接しているだけであるので、ガス発生時、挿入孔からのガス漏れを効果的に抑制することができないと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−88851号公報
【特許文献2】特開2006−76392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする問題点は、従来のサイドエアバッグ装置の場合、エアバッグの展開完了までの時間が長くなって所定の展開挙動を得ることが出来ない場合があったり、挿入孔からのガス漏れを効果的に抑制することができないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記課題を解決し、エアバッグの展開挙動を変化させず、しかも、後処理作業の簡略化を図りつつ、インフレータを挿入する開口部からのガス漏れを効果的に抑制できるサイドエアバッグ装置を提供することを目的としている。
【0016】
すなわち、本発明は、シートバックの側方内部に設けられ、サイドドアとシートとの間、或いは、隣り合うシートの間の領域にエアバッグを展開させるサイドエアバッグ装置である。
【0017】
サイドエアバッグ装置は、エアバッグと、このエアバッグ内の後方端部に設けられ、センサーからの出力信号を受けて折り畳み状態の前記エアバッグにガスを供給するインフレータを備えている。
【0018】
そして、本発明では、エアバッグは、後方側にインフレータを挿入する開口部が形成され、当該開口部の周囲にエアバッグの内部に向かって折り返す延長布部を設け、当該延長布部を前記開口部から露出したインフレータの外側面に密着させることが最大の特徴である。
【0019】
前記本発明では、エアバッグの開口部の周囲に設けた延長布部を、エアバッグの内部に向かって折り返して前記開口部から露出したインフレータの外側面に密着させるので、エアバッグの展開時には内圧も加わって前記開口部からのガス漏れを効果的に抑制できる。
【0020】
本発明において、前記延長布部に、エアバッグの内部に向かって折り返した状態で、インフレータに設けられたスタッドボルトを挿通する孔を設けた場合は、折り返した延長布部の移動が規制されるので、ガス漏れをより効果的に抑制できる。
【0021】
また、前記延長布部の両側辺部分を、インフレータが挿入可能な範囲でエアバッグの内側と接触して接合した場合も、折り返した延長布部の移動を規制できるので、ガス漏れをより効果的に抑制できる。
【0022】
また、エアバッグが、車両の後方側に位置する部分を除く基布の外周部を接合して袋状に形成されたものの場合、車両の後方側に位置する前記接合されない部分に、前記延長布部の両側辺部分を接合することになる。
【0023】
一方、前記延長布部を、エアバッグの内部に向かって折り返した状態でエアバッグの外周縁方向に帯状となるように形成し、前記折り返す延長布部に例えば複数個の磁石を配置したものでも良い。この場合、前記帯状の延長布部は磁石によってインフレータの外側面に密着する。
【0024】
また、折り返した延長布部の周囲をエアバッグの基布の内側に接合した場合は、帯状の延長布部のインフレータの外側面への密着位置が変動しないので、ガス漏れをより効果的に抑制できる。
【0025】
他方、前記延長布部を、エアバッグの内部に向かって折り返した状態でエアバッグの外周縁方向に帯状となるように形成し、前記折り返す延長布部に、テザーをエアバッグの外周縁方向となるように配置したものでも良い。この場合、テザーの両側を結ぶことによって前記帯状の延長布部をインフレータの外側面に取付けて密着させる。
【0026】
前記テザーは、前記折り返す延長布部に形成した孔に挿通したものでも、或いは、前記折り返す延長布部に接合したものでも良い。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、エアバッグの開口部の周囲に設けた延長布部を、エアバッグの内部に向かって折り返して、前記開口部から露出したインフレータの外側面に密着させることで前記開口部からのガス漏れを抑制するものである。
【0028】
従って、エアバッグに形成した開口部からインフレータを挿入した後、縫製などにより開口部を閉じたり、塞いだり、縮めたりする後処理作業が不要になる。また、エアバッグの折り畳み方は従来と同じでよいため、エアバッグの展開挙動が変化することもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明のサイドエアバッグ装置の第1の実施例を示した図で、(a)は基布の展開状態の図、(b)は基布を重ね合わせる際に延長布部をエアバッグの内部に向かって折り返した状態を示した要部拡大図、(c)は重ね合わせた基布の外周部を接合した状態を示した図、(d)はエアバッグ展開時におけるインフレータを挿入した開口部近傍を示した断面図である。
図2】本発明のサイドエアバッグ装置の第2の実施例を示した図で、(a)は基布の展開状態の延長布部近傍を拡大して示した図、(b)は(a)図のA−A断面図、(c)は基布を重ね合わせる際に延長布部をエアバッグの内部に向かって折り返した状態を示した図、(d)はエアバッグ展開時におけるインフレータを挿入した開口部近傍を示した断面図である。
図3】本発明のサイドエアバッグ装置の第3の実施例を示した図で、(a)は基布の展開状態の延長布部近傍を拡大して示した図、(b)は(a)図のA−A断面図、(c)は基布を重ね合わせる際に延長布部をエアバッグの内部に向かって折り返した状態を示した図、(d)はインフレータを開口部に挿入した後、テザーの両側を結んで延長布部をインフレータに取付けた状態の斜視図、(e)はエアバッグ展開時におけるインフレータを挿入した開口部近傍を示した断面図である。
図4】従来のサイドエアバッグ装置を説明する図で、(a)はエアバッグに形成した開口部へのインフレータの挿入時の斜視図、(b)(c)はエアバッグに形成した開口部にインフレータを挿入後の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
従来のサイドエアバッグ装置の場合、エアバッグの展開完了までの時間が長くなって所定の展開挙動を得ることが出来ない場合があったり、挿入孔からのガス漏れを効果的に抑制することができないという課題がある。
【0031】
本発明は、エアバッグの開口部の周囲に設けた延長布部を、エアバッグの内部に向かって折り返して前記開口部から露出したインフレータの外側面に密着させることで、前記の課題を解決するものである。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を、図1図3を用いて説明する。
【0033】
(第1の実施例:図1
11は、シートバックの、例えば車両のサイドドアと相対する側の側方内部に設ける、本発明のサイドエアバッグ装置である。
【0034】
このサイドエアバッグ装置11は、エアバッグ12と、例えば側面衝突時に衝撃を検知したセンサーからの出力信号を受信してエアバッグ12内にガスを噴射するインフレータ13を備えている。
【0035】
このうち、インフレータ13は、図1(c)に示すように、エアバッグ12の後端側の内部に取付けられ、エアバッグ12内へのガスの噴射により、例えば車両のサイドドアとシートの間で、車両の前方方向にエアバッグ12を展開させて乗員を保護する。
【0036】
インフレータ13は、例えば筒形状をなし、その外側面に設けた噴出孔からエアバッグ12の内部にガスを噴射する構成である。このインフレータ13の外側面には、固定用のスタッドボルト13aがその長手方向に適宜の間隔を存して例えば2本突き出しており、これらスタッドボルト13aを用いてシートバックのフレームに設置する。
【0037】
一方、エアバッグ12は、車両の前後方向よりも上下方向が長く形成され、車両の幅方向に厚みを有するように、袋状に形成した構成である。図1に示した実施例では、例えば車内側基布12aと車外側基布12bを、後端を中心として線対称に配置した1枚の基布で形成し、当該基布を折り曲げてその外周部を例えば縫製により接合することで袋状にしている。なお、12cは前記縫製による接合部、12dはインフレータ13のスタッドボルト13aを挿通する孔を示す。
【0038】
このエアバッグ12は、後方側にインフレータ13を挿入する開口部12eが形成されている。この開口部12eは、車内側基布12aと車外側基布12bを折り曲げてその外周部を接合して袋状にする際、前記接合を行わないことによって形成する。
【0039】
加えて、本発明では、エアバッグ12を形成する前記基布12a,12bの前記開口部12eの周囲から突出するように、前記エアバッグ12の内部に向かって折り返す延長布部12fを設けたことが特徴である。
【0040】
第1の実施例では、前記延長布部12fに、インフレータ13に設けられたスタッドボルト13aのうちのエアバッグ12内に挿入されない方のスタッドボルト13aを挿通する孔12faを設けている。この孔12faは、前記延長布部12fをエアバッグ12の内部に向かって折り返したときに、エアバッグ12に設けた孔12dのうちのエアバッグ12内に挿入されない方の孔12dと一致する位置に設ける。
【0041】
また、第1の実施例では、前記延長布部12fの両側辺部分の、エアバッグ12の外周縁から約中間位置までを、前記エアバッグ12の内側と接合12fbするものを示している。
【0042】
この延長布部12fの接合12fbによって、エアバッグ12の前記開口部12eの内径を、インフレータ13を挿入可能な範囲で狭くしている。
【0043】
この第1の実施例では、基布12a,12bを折り曲げて外周部を接合する際、延長布部1
2fをエアバッグ12の内部に向かって折り返し(図1(b)参照)、エアバッグ12に設けた孔12dと延長布部12fに設けた孔12fbを一致させる。
【0044】
前記状態で、基布12a,12bの外周部を接合(12c)する際に、折り返した延長布部12fの両側辺部分の、エアバッグ12の外周縁から約中間位置までを接合12fbし、エアバッグ12を完成させる。
【0045】
その後、前記エアバッグ12の開口部12eからインフレータ13を挿入し、エアバッグ12に設けた孔12d及び延長布部12fに設けた孔12faからスタッドボルト13aを突出させる(図1(c)参照)。
【0046】
インフレータ13を挿入したエアバッグ12は、その基布12a及び延長布部12fから突出させたインフレータ13のスタッドボルト13aを用いて、シートを構成するシートバックのフレームに設置する。
【0047】
本発明のサイドエアバッグ装置11の第1の実施例では、インフレータ13をエアバッグ12に挿入した後、開口部12eを縫製などによって閉じる後処理作業が不要である。そして、エアバッグ12が展開した際には、図1(d)に示す様に、エアバッグ12の内圧によって折り返した延長布部12fがインフレータ13の外側面に押付けられて密着し、開口部12eからのガス漏れを効果的に抑制することができる。その際、エアバッグ12の展開挙動が変化することもない。
【0048】
図1に示した例では、前記延長布部12fは台形状に形成したものを示しているが、エアバッグ12の内部に折り返した状態でインフレータ13の外側面を覆うことができるものであれば、その形状は限定されない。
【0049】
また、前記延長布部12fに設けた孔12faやエアバッグ12の外周縁から約中間位置までの接合12fbは必ずしも必須の構成ではない。
【0050】
(第2の実施例:図2
第2の実施例は、例えば図2(a)に示したように、前記延長布部12fをエアバッグ12の外周縁方向に帯状となるように形成したものである。そして、第2の実施例では、例えば、この延長布部12fの先端側を折り返して接合12fcすることで形成した空間15に、5個の磁石14を等間隔に配置している。
【0051】
第2の実施例では、基布12a,12bを折り曲げて外周部を接合する際、延長布部12fをエアバッグ12の内部に向かって折り返す(図2(c)参照)。その後、前記エアバッグ12の開口部12eからインフレータ13を挿入し、エアバッグ12に設けた孔12dからスタッドボルト13aを突出させ、シートバックのフレームに設置する。
【0052】
この第2の実施例では、折り返した延長布部12fは磁石14によってインフレータ13の外側面に押付けられて密着している。そして、エアバッグ12が展開した際には、図2(d)に示す様に、エアバッグ12の内圧も加わって折り返した延長布部12fがインフレータ13の外側面に強固に密着し、開口部12eからのガス漏れを効果的に抑制する。この第2の実施例の場合も、インフレータ13をエアバッグ12に挿入した後、開口部12eを縫製などによって閉じる後処理作業が不要であり、エアバッグ12の展開挙動が変化することもない。
【0053】
第2の実施例では、前記延長布部12fはエアバッグ12の内部に向かって折り返した後、その周囲をエアバッグ12の基布12a,12bと接合しても良い。
【0054】
また、前記磁石14は複数に限らず単数でもよい。
さらに、前記磁石14の延長布部12fへの配置も、延長布部12fに形成した空間15に配置するものに限らず、エアバッグ12の内部に向けて折り返した延長布部12fとエアバッグ12の基布12a,12bの間に配置しても良い。
【0055】
(第3の実施例:図3
第3の実施例も、第2の実施例と同様、例えば図3(a)に示したように、前記延長布部12fをエアバッグ12の外周縁方向に帯状となるように形成したものである。そして、第3の実施例では、この延長布部12fの先端側を折り返して接合12fcすることで形成した孔17に、例えばテザー16を挿通している(図3(b)参照)。
【0056】
第3の実施例の場合も、基布12a,12bを折り曲げて外周部を接合する際、延長布部12fをエアバッグ12の内部に向かって折り返した後(図3(c)参照)、前記エアバッグ12の開口部12eからインフレータ13を挿入する。その後、エアバッグ12の孔12dからスタッドボルト13aを突出させ、前記テザー16をエアバッグ12の基布12a又は12bに設けた孔から引出して、インフレータ13に巻き付けた延長布部12fをテザー16で結ぶ(図3(d)参照)。
【0057】
前記状態でシートバックのフレームに設置した第3の実施例では、テザー16によって折り返した延長布部12fがインフレータ13の外側面に取付けられている。従って、エアバッグ12が展開した際には、図3(e)に示す様に、エアバッグ12の内圧も加わって折り返した延長布部12fがインフレータ13の外側面に強固に押付けられて密着し、開口部12eからのガス漏れを効果的に抑制する。
【0058】
第3の実施例では、前記テザー16は、図3に示したような、延長布部12fの先端側に形成した孔17に挿通するものに限らず、折り返した延長布部12fの先端側に例えば縫製によって接合したものでも良い。
【0059】
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0060】
すなわち、以上で述べたサイドエアバッグ装置は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定する主旨の記載がない限り、本発明は添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は説明を目的としたもので、特に限定される主旨のない限り、それに限定されるものではない。
【0061】
例えば上記実施例では、車内側基布12aと車外側基布12bを1枚の基布で形成しているが、車内側基布12aと車外側基布12bを別個の基布で形成しても良い。
【0062】
また、ガスの噴射時に車内側基布12aと車外側基布12bをインフレータ13が発する熱から保護する補強布を車内側基布12aと車外側基布12bに取付けても良い。
【0063】
また、第2,3の実施例では、延長布部12fをエアバッグ12の外周縁方向に帯状となるように形成しているが、エアバッグ12の内部に向かって折り返した状態で前記方向に帯状となれば、折り返す前の形状は帯状でなくてもよい。
【0064】
また、上記実施例は、本発明のサイドエアバッグ装置11をシートバックのサイドドア側の側方内部に設置するものについて説明したが、シートバックの隣り合うシート側の側方内部に設置するものに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
11 サイドエアバッグ装置
12 エアバッグ
12c 接合部
12e 開口部
12f 延長布部
12fa 孔
12fb 接合
12fc 接合
13 インフレータ
13a スタッドボルト
14 磁石
15 空間
16 テザー
17 孔
図1
図2
図3
図4