(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796619
(24)【登録日】2020年11月18日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】電線と端子の接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 4/48 20060101AFI20201130BHJP
【FI】
H01R4/48 C
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-120602(P2018-120602)
(22)【出願日】2018年6月26日
(65)【公開番号】特開2020-4521(P2020-4521A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2019年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】篠原 準弥
【審査官】
高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−014370(JP,U)
【文献】
特開2012−043668(JP,A)
【文献】
特開昭61−277175(JP,A)
【文献】
実公昭51−016461(JP,Y1)
【文献】
実開昭54−012883(JP,U)
【文献】
米国特許第01724729(US,A)
【文献】
特開2010−086797(JP,A)
【文献】
特開2013−138116(JP,A)
【文献】
特開平1−161681(JP,A)
【文献】
実開昭57−190496(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R4/48−4/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース板から電線挿通孔を有する弾性接続片を切り起こし自在に形成した端子と、絶縁被覆から露出した芯線を有する電線と、を備え、
前記弾性接続片の電線挿通孔に前記電線の絶縁被覆と芯線のうちの少なくとも芯線を挿通させて該弾性接続片の戻り弾性変形により前記端子に前記電線を接続する電線と端子の接続構造であって、
前記ベース板に前記弾性接続片を少なくとも一対設け、
前記一対の弾性接続片の各電線挿通孔に、前記電線の絶縁被覆と芯線のうちの少なくとも芯線を挿通させた状態で、前記一対の弾性接続片の戻り弾性変形により前記ベース板に前記電線の絶縁被覆と芯線のうちの少なくとも芯線を押圧接続させたことを特徴とする電線と端子の接続構造。
【請求項2】
請求項1記載の電線と端子の接続構造であって、
前記少なくとも一対の弾性接続片の切り起こし方向を異なる方向にしたことを特徴とする電線と端子の接続構造。
【請求項3】
請求項1記載の電線と端子の接続構造であって、
前記少なくとも一対の弾性接続片の切り起こし方向を同じ方向にしたことを特徴とする電線と端子の接続構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電線と端子の接続構造であって、
前記少なくとも一対の弾性接続片の各電線挿通孔に前記電線の絶縁被覆から露出した芯線をそれぞれ挿通させて押圧接続したことを特徴とする電線と端子の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素線が極細の芯線を有する電線と端子の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電線と端子の接続構造として、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に記載された電線と端子の接続構造1は、
図6及び
図7に示すように、相手端子が接続される端子接続部3と電線5が接続される電線接続部4を有する端子2と、絶縁被覆6から露出した極細の芯線7を有する電線5と、を備えている。
【0003】
そして、端子2の電線接続部4のインシュレーションバレル4aに電線5の絶縁被覆6が圧着され、端子2の電線接続部4の前後側のワイヤバレル4b,4cに電線5の極細の芯線7が圧着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−226671号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、前記従来の電線と端子の接続構造1では、端子2のワイヤバレル4b,4cの先端を電線5の芯線7に突き刺すようにして加締め金型で圧着するため、芯線7の素線が極細の電線5の場合、芯線7が断線してしまう。また、端子2と電線5の接続品がクリンパやアンビル等から成る加締め金型の寸法に制限されてしまい、狭ピッチのコネクタに対応するこができない。
【0006】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、電線の芯線を断線させることなく、電線と端子を簡単かつ確実に接続することができ、かつ、狭ピッチのコネクタに対応することができる電線と端子の接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ベース板から電線挿通孔を有する弾性接続片を切り起こし自在に形成した端子と、絶縁被覆から露出した芯線を有する電線と、を備え、前記弾性接続片の電線挿通孔に前記電線の絶縁被覆と芯線のうちの少なくとも芯線を挿通させて該弾性接続片の戻り弾性変形により前記端子に前記電線を接続する電線と端子の接続構造であって、前記ベース板に前記弾性接続片を少なくとも一対設け、前記一対の弾性接続片の各電線挿通孔に、前記電線の絶縁被覆と芯線のうちの少なくとも芯線を挿通させた状態で、前記一対の弾性接続片の戻り弾性変形により前記ベース板に前記電線の絶縁被覆と芯線のうちの少なくとも芯線を押圧接続させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ベース板の弾性接続片の電線挿通孔に電線の絶縁被覆と芯線のうちの少なくとも芯線を挿通するだけで、電線の芯線を断線させることなく、電線と端子を簡単かつ確実に接続することができ、かつ、狭ピッチのコネクタに対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態の電線と端子の接続構造の電線接続前の端子の状態を示す平面図である。
【
図2】(a)は上記第1実施形態の電線と端子の接続構造の複数の接続完了後の状態を示す断面図、(b)は参考例の1つの接続完了後の状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態の電線と端子の接続構造の複数の接続完了後の状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の第3実施形態の電線と端子の接続構造の複数の接続完了後の状態を示す断面図である。
【
図5】本発明の第4実施形態の電線と端子の接続構造の芯線及び絶縁被覆の接続完了後の状態を示す断面図である。
【
図6】(a)は従来例の電線と端子の接続構造の接続後の状態を示す平面図、(b)は同接続構造の接続後の状態を示す側面図である。
【
図7】(a)は上記従来例の前側のワイヤバレルによる接続状態を示す断面図、(b)は後側のワイヤバレルによる接続状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は本発明の第1実施形態の電線と端子の接続構造の電線接続前の端子の状態を示す平面図、
図2(a)は同接続構造の接続前の状態を示す断面図、
図2(b)は同接続構造の複数の接続完了後の状態を示す断面図、
図2(b)は参考例の1つの接続完了後の状態を示す断面図である。
【0012】
図1及び
図2(a),(b)に示すように、電線と端子の接続構造10は、導電性の底板(ベース板)21から電線挿通孔23を有する一対の弾性接続片(バネ片)22,22を切り起こし自在に形成した端子20と、絶縁被覆31から露出した素線32aが極細の芯線32を有する電線30と、を備え、各弾性接続片22の電線挿通孔23に電線30の絶縁被覆31から露出した素線32aが極細の芯線32を挿通させて、各弾性接続片22の戻り弾性変形(反力)により底板21の上面21aに芯線32を押圧接続するものである。
【0013】
端子20の底板21は、金属製で矩形板状に形成してあり、その前側に相手端子が接続される図示しない端子接続部を有している。また、底板21の中央には、略U字スリット状の各切欠き24を介して一対の弾性接続片22,22をその各先端22aが所定距離の境界部分25を隔てて向かい合うように切り起こし自在に形成してある。この各弾性接続片22の先端22aと基端22bの中央の丸形板部22cには、丸形の電線挿通孔23を形成してある。
【0014】
そして、底板21の一対の弾性接続片22,22をその各基端22bを中心にして各先端22a側を持ち上げ、各弾性接続片22の電線挿通孔23に電線30の絶縁被覆31から露出した芯線32を挿通させた状態で、各弾性接続片22を離すと、各弾性接続片22の戻り弾性変形により底板21の境界部分25の上面21aに芯線32が押し付けられて電気的に接続され、その状態が保持されるようになっている。
【0015】
以上第1実施形態の電線と端子の接続構造10によれば、各先端22a側を上方に持ち上げられた一対の弾性接続片22,22の各電線挿通孔23に電線30の絶縁被覆31から露出した素線32aが極細の芯線32をそれぞれ挿通させた後で、その持ち上げ状態を解除するだけで、一対の弾性接続片22,22の戻り弾性変形(反力)により底板21の境界部分25の上面21aに芯線32が押圧接続されてその状態を保持できるため、電線30の素線32aが極細の芯線32を断線させることなく、端子20と電線30を簡単かつ確実に接続することができる。
【0016】
また、一対の弾性接続片22,22の戻り弾性変形により底板21の境界部分25の上面21aに電線30の芯線32を押圧接続したことで、
図2(b)に示す1つの弾性接続片22の戻り弾性変形により電線30の芯線32を押圧接続する場合に比べて、底板21に対する電線30の芯線32の押圧接続状態の保持力をより一段と高めることができる。
【0017】
さらに、一対の弾性接続片22,22を向き合う方向(持ち上げ時に側面ハ字状)に切り起こし自在に形成したことで、電線30の挿入方向と引き抜き方向の両方向の動きを抑制する力が働くため、走行時に振動等する車両環境に対して安定した電気的接続状態を維持することができる。
【0018】
さらに、持ち上げられた一対の弾性接続片22,22の各電線挿通孔23に電線30の絶縁被覆31から露出した芯線32を挿通させるだけなので、従来の圧着接続のように、クリンパやアンビル等から成る加締め金型の寸法に、端子20と電線30の接続品が制限されてしまうことがないため、狭ピッチのコネクタに対応することができる。また、加圧部品の共用も可能となるため、その分低コスト化を図ることができる。
【0019】
図3は本発明の第2実施形態の電線と端子の接続構造の複数の接続完了後の状態を示す断面図である。
【0020】
この第2実施形態の電線と端子の接続構造10Aは、底板(ベース板)21の一対の弾性接続片22,22の切り起こし方向を底板21の前側に向く同じ方向に切り起こし自在に形成して、一対の弾性接続片22,22の各電線挿通孔23に電線30の絶縁被覆31から露出した芯線32をそれぞれ挿通させて押圧接続した点が、前記第1実施形態のものとは異なる。尚、他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0021】
この第2実施形態の電線と端子の接続構造10Aでは、底板21の前側に向く同じ方向に切り起こし自在に形成された一対の弾性接続片22,22の各電線挿通孔23に電線30の絶縁被覆31から露出した芯線32をそれぞれ簡単に挿通させて押圧接続することにより、電線30の素線32aが極細の芯線32を断線させることなく、底板21の境界部分25の上面21aに端子20と電線30を簡単かつ確実に接続することができる。
【0022】
図4は本発明の第3実施形態の電線と端子の接続構造の複数の接続完了後の状態を示す断面図である。
【0023】
この第3実施形態の電線と端子の接続構造10Bは、底板(ベース板)21の一対の弾性接続片22,22の切り起こし方向を底板21の基部側に向く同じ方向に切り起こし自在に形成して、一対の弾性接続片22,22の各電線挿通孔23に電線30の絶縁被覆31から露出した芯線32をそれぞれ挿通させて押圧接続した点が、前記第1実施形態のものとは異なる。尚、他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0024】
この第3実施形態の電線と端子の接続構造10Bでは、底板21の基部側に向く同じ方向に切り起こし自在に形成された一対の弾性接続片22,22の各電線挿通孔23に電線30の絶縁被覆31から露出した芯線32をそれぞれ挿通させて押圧接続することで、電線30の素線32aが極細の芯線32を断線させることなく、底板21の上面21aに端子20と電線30を簡単かつ確実に接続することができる。
【0025】
図5は本発明の第4実施形態の電線と端子の接続構造の芯線及び絶縁被覆の接続完了後の状態を示す断面図である。
【0026】
この第4実施形態の電線と端子の接続構造10′は、底板(ベース板)21から電線挿通孔23を有する一対の弾性接続片22,22′を同じ切り起こし方向に切り起こし自在に形成すると共に、底板21の前側の弾性接続片22よりも基部側の弾性接続片22′を大きく形成して、前側の弾性接続片22の電線挿通孔23に電線の30絶縁被覆31から露出した素線32aが極細の芯線32を挿通させて押圧接続する共に、基部側の弾性接続片22′の電線挿通孔23に電線30の絶縁被覆31を挿通させて押圧接続した点が、前記第1実施形態のものとは異なる。尚、他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0027】
即ち、この第4実施形態の電線と端子の接続構造10′では、電線30の絶縁被覆31と芯線32を底板21の上面21a側に簡単かつ確実に押圧接続することができ、前記第1実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0028】
尚、前記各実施形態において、保持力を上げるために、電線挿通孔を有した弾性接続片を3つ以上形成しても良い。
【0029】
また、前記1実施形態において、一対の弾性接続片を向き合う方向(持ち上げ時に側面ハ字状)に形成したが、一対の弾性接続片を向き合わない方向(持ち上げ時に側面逆ハ字状)に形成しても良い。
【0030】
さらに、第4実施形態において、一対の弾性接続片を同じ方向に形成したが、一対の弾性接続片を向き合う方向(持ち上げ時に側面ハ字状)、或いは、向き合わない方向(持ち上げ時に側面逆ハ字状)に形成して電線の絶縁被覆と芯線をそれぞれ押圧接続するようにしても良い。
【符号の説明】
【0031】
10,10A,10B,10′ 電線と端子の接続構造
20 端子
21 底板(ベース板)
22,22′ 弾性接続片
23 電線挿通孔
30 電線
31 絶縁被覆
32 芯線