(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
複数のユニット穴を有するフェルールと、複数のレンズユニットとを備え、前記レンズユニットは、レンズ部を有し、光ファイバの端部に取り付けられており、光信号を透過可能な樹脂で成型されており、それぞれの前記ユニット穴に前記レンズユニットが挿入されることを特徴とするフェルール構造体が明らかとなる。このようなフェルール構造体によれば、簡易な構造のレンズユニットのレンズ部と光ファイバとを1対1で位置合わせすれば良いので、光ファイバとレンズ部との高精度な位置合わせを実現できる。また、レンズ部によって光信号の径を拡張させることにより、フェルールのユニット穴の位置誤差が許容される。このためフェルールの製造も簡易(若しくは安価)になる。よって、簡易な構造で、複数の光ファイバのそれぞれに対してレンズ部を高精度に配置させることができる。
【0013】
前記レンズ部の先端が前記ユニット穴の内部に配置されていることが望ましい。これにより、レンズ部の損傷を抑制することできる。
【0014】
前記フェルールの端面に凹部が形成されており、前記凹部の底面で前記ユニット穴の開口が形成されており、前記レンズ部の先端は、前記ユニット穴の開口から前側に突出するとともに、前記フェルールの端面よりも後側に配置されていることが望ましい。これにより、レンズ部の損傷を抑制することができる。
【0015】
前記ユニット穴は、段差部を有し、前記レンズユニットは、フランジ部を有し、前記段差部に前記フランジ部が接触することが望ましい。これにより、光ファイバの光軸方向において、フェルール(ユニット穴)に対するレンズユニットの位置合わせをすることができる。
【0016】
前記ユニット穴及び前記フランジ部にそれぞれ位置決め部が形成されており、前記ユニット穴及び前記フランジ部のそれぞれの前記位置決め部によって、前記光ファイバの光軸を中心とする回転方向の位置合わせが行われることが望ましい。これにより、回転方向の位置合わせを簡易に且つ確実に行うことができる。
【0017】
前記光ファイバの端面は、前記光軸に垂直な面に対して傾斜していることが望ましい。これにより、光信号の損失の低減を図ることができる。
【0018】
前記レンズユニットは、前記光ファイバを挿入するファイバ穴を有し、前記ファイバ穴の端部には、前記光ファイバを突き当てる突当面が形成されており、前記突当面は、前記光軸に垂直な面に対して傾斜していることが望ましい。これにより、反射減衰量の低減を図ることができる(反射戻り光を抑制でき、光源素子に悪影響を及ぼさないようにできる)。
【0019】
また、レンズ部を有し、光ファイバの端部に取り付けられており、光信号を透過可能な樹脂で成型されたレンズユニットを複数用意すること、複数のユニット穴を有するフェルールの各ユニット穴に、前記光ファイバが取り付けられた前記レンズユニットをそれぞれ挿入して固定すること、を行うことを特徴とするフェルール構造体の製造方法が明らかとなる。このようなフェルール構造体の製造方法によれば、光ファイバの端部に取り付けられるレンズユニットにレンズ部が設けられているので、複数の光ファイバのそれぞれに対してレンズ部を高精度に配置させることができる。
【0020】
前記レンズユニットのファイバ穴に前記光ファイバを挿入し、前記ファイバ穴に前記光ファイバを固定することによって、前記光ファイバを取り付けた前記レンズユニットを構成してもよい。これにより、レンズユニットの成型に使用する樹脂の制約が少なくなる
【0021】
前記レンズユニットを前記樹脂で成型する金型のチャンバーに前記光ファイバの端部を配置させること、及び、前記チャンバーに前記樹脂を射出することによって、前記光ファイバを取り付けた前記レンズユニットを構成してもよい。これにより、レンズユニットの構成を簡素化できる。
【0022】
また、複数のユニット穴を有するフェルールであって、それぞれの前記ユニット穴には、レンズユニットが挿入されており、前記レンズユニットは、レンズ部を有し、光ファイバの端部に取り付けられており、光信号を透過可能な樹脂で成型されていることを特徴とするフェルールが明らかとなる。
【0023】
また、光ファイバの端部に取り付けられ、複数のユニット穴を有するフェルールのそれぞれの前記ユニット穴に挿入されるレンズユニットであって、レンズ部を有し、光信号を透過可能な樹脂で成型されたことを特徴とするレンズユニットが明らかとなる。
【0024】
===第1実施形態===
図1Aは、第1実施形態のフェルール構造体1の全体斜視図であり、
図1Bは、第1実施形態のフェルール構造体1の断面斜視図である。また、
図2Aは、第1実施形態のフェルール構造体1の断面図であり、
図2Bは、第1実施形態のフェルール構造体1の一部拡大断面図である。また、
図3Aは、第1実施形態のフェルール10の斜視図であり、
図3Bは、第1実施形態のフェルール10の断面図である。また、
図4Aは、第1実施形態のレンズユニット20の斜視図であり、
図4Bは、第1実施形態のレンズユニット20の断面図である。
【0025】
本実施形態では以下のように「前後方向」と「左右方向」と「上下方向」を定義する。前後方向は、光ファイバ3の光軸方向であり、光ファイバ3の端面の側を「前」とし、その逆側を「後」とする。左右方向は、2個のガイド穴11の並ぶ方向であり、後側から前側を見た時の右側を「右」とし、左側を「左」とする。上下方向は、左右方向及び前後方向に直交する方向であり、フェルール10において、充填部15に接着剤を充填するための開口が設けられている側を「上」とし、逆側を「下」とする。
【0026】
本実施形態のフェルール構造体1は、フェルール10と、レンズユニット20と、光ファイバテープ30と、ブーツ40とを備えている。
【0027】
フェルール10は、光ファイバ3の端部を保持し、他の光学部品に対して光ファイバ3を光接続するための部材であり、例えばピン嵌合式のMTフェルールである。本実施形態のフェルール10は、光信号を透過可能な樹脂(例えば透明樹脂)により一体成型されている。また、本実施形態のフェルール10は、ガイド穴11と、ユニット穴13と、充填部15と、ブーツ穴17と、鍔部19とを有している。
【0028】
ガイド穴11は、ガイドピン(不図示)を挿入するための穴である。ガイド穴11にガイドピンを挿入することによって、フェルール同士が位置合わせされることになる。フェルール10の前側端面(接続端面)には2つのガイド穴11が開口している。2つのガイド穴11は、複数のユニット穴13を左右方向から挟むように、左右方向に間隔を空けて配置されている。
【0029】
ユニット穴13は、後述するレンズユニット20を挿入させるための穴である。また、ユニット穴13は、レンズユニット20を位置決めするための穴である。ユニット穴13は、フェルール10の前側端面と、充填部15との間を前後方向に貫通して形成されている。
【0030】
フェルール10には、複数のユニット穴13が形成されている。複数のユニット穴13は、左右方向に並んで配置されている。左右方向に並ぶ各ユニット穴13には、光ファイバ3に対して設けられたレンズユニット20が、それぞれ挿入されることになる。なお、本実施形態では、左右方向に並ぶユニット穴13の列が上下方向に1つ(1列)のみであるが、これには限られず、上下方向に複数列並んで設けられていても良い。
【0031】
各ユニット穴13は、それぞれ、前穴13Aと、後穴13Bと、段差部13Cを有している。
【0032】
前穴13Aは、レンズユニット20の本体部21を挿入させる部位である。このため、前穴13Aの径は、レンズユニット20の本体部21の径とほぼ同じに形成されている。具体的には、本実施形態の前穴13Aの径は、200〜240μmである。また、前穴13Aは前後方向(光軸方向)に沿って設けられており、フェルール10の前側端面で開口している。そして、レンズユニット20を介して前穴13Aの内部を光信号が通過する。
【0033】
後穴13Bは、レンズユニット20のフランジ部23を挿入させる部位であり、ユニット穴13のうちの後部(前穴13Aよりも後側)に設けられている。レンズユニット20において、本体部21の径よりもフランジ部23の径の方が大きいため(
図4参照)、後穴13Bの径は、前穴13Aの径よりも大きく形成されている。また、後穴13Bは、充填部15に連通している。これにより、充填部15側(後側)からレンズユニット20をユニット穴13に挿入できる。
【0034】
段差部13Cは、径の異なる前穴13Aと後穴13B(前穴13Aの後端と後穴13Bの前端)の間の部位である。なお、前穴13Aの径は、レンズユニット20のフランジ部23の径よりも小さい。このため、ユニット穴13にレンズユニット20を挿入したとき、段差部13Cは、レンズユニット20のフランジ部23に接触する。これにより、段差部13Cは、レンズユニット20の前後方向の位置合わせとしての機能を有する。
【0035】
充填部15は、接着剤を充填するための空洞部である。充填部15は、左右方向に長い空洞となっている。充填部15には、光ファイバ3をフェルール10に引き留めるための接着剤が充填される。充填部15に接着剤が充填されることによって、充填部15の内壁面と光ファイバ3との間に接着剤が塗布され、この接着剤が硬化して光ファイバ3がフェルール10に固定されることになる。
【0036】
ブーツ穴17は、フェルール10の後側端面と充填部15との間において、前後方向に貫通して設けられている。ブーツ穴17は、光ファイバテープ30(複数の光ファイバ3)に取り付けられたブーツ40を収容及び固定するための穴である。
【0037】
鍔部19は、フェルール10の外周面から外側に突出した部位である。
【0038】
レンズユニット20(
図4参照)は、透明樹脂によって成型された部材であり、光ファイバ3の端部に取り付けられる部材である。レンズユニット20は、本体部21と、フランジ部23と、ファイバ穴25と、通気穴27とを有している。
【0039】
本体部21は、レンズユニット20の本体を構成する部位であり、前後方向に細長く断面円形の棒状に形成されている。また、本体部21にはレンズ部21Aが設けられている。
【0040】
レンズ部21Aは、本体部21の先端(前側端)部分において前側に凸状に形成されている。レンズ部21Aは、コリメータレンズとして機能する。すなわち、レンズ部21Aは、光ファイバ3から出射される光信号をコリメート光として出射する機能や、入射してくるコリメート光を集束させて光ファイバ3の端面に入射させる機能を有する。このレンズ部21Aによって光信号の径を拡張させているため、フェルール10のユニット穴13の位置誤差が許容される。このためフェルール10の製造も簡易(若しくは安価)になる。また、
図2Bに示すように、レンズ部21Aの先端はユニット穴13(具体的には前穴13A)の内部に配置されている。これにより、フェルール同士を接続する際などにおいてレンズ部21Aが損傷することを抑制できる。
【0041】
フランジ部23は、本体部21の外周面から外側に突出した部位であり、レンズユニット20の後端部(本体部21よりも後側)に設けられている。前述したように、フランジ部23の径は、ユニット穴13の前穴13Aの径よりも大きいため、レンズユニット20をユニット穴13に挿入すると、フランジ部23がユニット穴13の段差部13Cに接触する。これにより、フェルール10(ユニット穴13)に対するレンズユニット20の前後方向の位置合わせを行うことができる。
【0042】
ファイバ穴25は、光ファイバ3(裸光ファイバ3A)の端部を挿通させるための穴である。ファイバ穴25は、前後方向(光ファイバ3の光軸方向)に沿って形成されている。また、ファイバ穴25は、突当部25Aを有している。突当部25Aは、光ファイバ3の端面を突き当てる部位であり、ファイバ穴25の前側端部に設けられている。なお、本実施形態の突当部25Aは、前後方向(光ファイバ3の光軸方向)に垂直な面である。光ファイバ3の端面をファイバ穴25の突当部25Aに突き当てることにより、レンズユニット20(特にレンズ部21A)に対する光ファイバ3の前後方向の位置合わせを行うことができる。また、ファイバ穴25の後端部分(レンズユニット20の後端の開口部分)には光ファイバ3の挿入用(案内用)のテーパ面25Bが設けられている。テーパ面25Bは、後側ほど径が徐々に大きくなるテーパ形状に形成されている。このようなテーパ面25Bを設けていることにより、光ファイバ3の端部をファイバ穴25に挿入しやすくなる。
【0043】
通気穴27は、ファイバ穴25内の空気をレンズユニット20の外側に逃がすための穴であり、ファイバ穴25の先端部と本体部21の外周面(側面)との間に開口されている。通気穴27を設けていることにより、ファイバ穴25の中に光ファイバ3を接着剤とともに挿入したときに、光ファイバ3の端面に気泡が発生することを抑制できる。
【0044】
光ファイバテープ30は、複数本(ここでは8本)の光ファイバ3が並列に連結(例えば、間欠的に連結)されたものである。なお、
図1では連結している部材の図示を省略している。
【0045】
光ファイバ3は、光信号を伝送する部材である。
図1に示すように、フェルール10には、8本の光ファイバ3が左右方向に並んで配置(配列)されている。各光ファイバ3は、それぞれ、裸光ファイバ3Aと、被覆部3Bとを有している。被覆部3Bでは、裸光ファイバ3Aの外側を被覆が覆っている。
【0046】
ブーツ40は、光ファイバテープ30の複数の光ファイバ3を通す貫通穴を有する筒状体であり、フェルール10のブーツ穴17に挿入されている。ブーツ40は、ゴムやプラスチックなどの弾性体(エラストマー)によって一体的に成形されており、光ファイバテープ30の複数の光ファイバ3を保持する。このように、弾性体からなるブーツ40を介して光ファイバ3を保持することによって、光ファイバ3に曲げるような力が加えられた場合であっても、その力をブーツ40が吸収し、光ファイバ3に急激な曲げが生じないようにすることができる。
【0047】
<製造方法>
図5A〜
図5Cは、レンズユニット20を光ファイバ3に取り付ける方法の説明図である。なお、予め、光ファイバテープ30の複数の光ファイバ3に対応する複数のレンズユニット20を用意しておく。
【0048】
まず、作業者は、光ファイバ3の端部を前処理する。具体的には、光ファイバ3の被覆部3Bの被覆を定められた寸法で除去し、被覆の除去された光ファイバ3(裸光ファイバ3A)を所定の長さで切断(カット)する。
【0049】
次に、作業者は、
図5Aに示すように、レンズユニット20のファイバ穴25の後端部(テーパ面25B)に接着剤(ここでは屈折率整合剤を兼ねた紫外線硬化型接着剤(以下、UV接着剤))を塗布して、レンズユニット20のファイバ穴25に光ファイバ3を挿入する。光ファイバ3は、接着剤とともに、ファイバ穴25に挿入されていく。このとき、ファイバ穴25内の空気は、通気穴27からレンズユニット20の外側に排出される。
【0050】
そして、
図5Bに示すように、光ファイバ3の端面をファイバ穴25の突当部25Aに突き当てる。これにより、光ファイバ3の端面と突当部25Aとの間、光ファイバ3とファイバ穴25の間、通気穴27に接着剤が充填される。なお、通気穴27があるため、光ファイバ3の端面と突当部25Aとの間に気泡が発生することを抑制できる。
【0051】
次に、作業者は、
図5Cに示すように、UV光の照射器を用いて、レンズユニット20にUV光を照射(透明なレンズユニット20越しにUV光を照射)して、UV接着剤を硬化させる。UV接着剤が硬化することにより、光ファイバ3の端部がレンズユニット20に固定される。
【0052】
同様にして、光ファイバテープ30の複数(ここでは8本)の光ファイバ3の端部に、それぞれ、レンズユニット20を取り付ける。このように、本実施形態では、簡易な構造のレンズユニット20(レンズ部21A)と光ファイバ3とを1対1で位置合わせすれば良いため、光ファイバ3とレンズ部21Aとの高精度な位置合わせを実現できる。つまり、本実施形態では、レンズユニット20が1個のレンズ部21Aしか備えておらず、1個のレンズ部21Aに対して1本の光ファイバ3を位置合わせするだけなので、簡易な構造のレンズユニット20によって光ファイバ3とレンズ部21Aとの高精度な位置合わせを実現できる。
【0053】
なお、通気穴27を接着剤の充填用に用いても良い。すなわち、ファイバ穴25に光ファイバ3の端部を挿入して、光ファイバ3の端面を突当部25Aに突き当てた状態で、通気穴27から接着剤を充填しても良い。
【0054】
また、
図6A〜
図6Dは、フェルール構造体1の製造方法の説明図である。
【0055】
まず、作業者は、
図6Aに示すように、フェルール10のそれぞれのユニット穴13にレンズユニット20を挿入していき、
図6Bに示すように、レンズユニット20のフランジ部23を、ユニット穴13の段差部13Cに突き当てる。これにより、フェルール10(ユニット穴13)に対するレンズユニット20の前後方向の位置合わせが行われる。また、予め後方にずらしていたブーツ40を前方に移動させて、フェルール10のブーツ穴17に挿入する。
【0056】
次に、作業者は、
図6Cに示すように、充填部15に接着剤を充填する。ここでは、充填部15の上の開口部分からUV接着剤を充填する。UV接着剤は充填部15に充填されるとともに、ユニット穴13とレンズユニット20との間にも浸透する。なお、ここで使用するUV接着剤は、屈折率整合剤を兼ねていなくても良い。
【0057】
次に、作業者は、
図6Dに示すように、UV光の照射器を用いて、フェルール10にUV光を照射(透明なフェルール10越しにUV光を照射)してUV接着剤を硬化させる。これにより、複数のレンズユニット20が、フェルール10のユニット穴13にそれぞれ固定される。また、充填部15の内壁の内側に複数の光ファイバ3が固定される。
【0058】
以上説明したように、本実施形態のフェルール構造体1は、複数のユニット穴13を有するフェルール10と、複数のレンズユニット20とを備えている。レンズユニット20は、レンズ部21Aを有し、光ファイバ3の端部に取り付けられており、光信号を透過可能な透明樹脂で成型されている。そして、フェルール10のそれぞれのユニット穴13にレンズユニット20が挿入されている。
【0059】
このように、本実施形態では、簡易な構造のレンズユニット20(レンズ部21A)と光ファイバ3とを1対1で位置合わせすれば良いため、「多数」対「多数」の位置合わせと比べて(例えば、多数のレンズ部を有するレンズプレートのそれぞれのレンズ部に対して複数本の光ファイバを位置合わせする場合と比べて)、光ファイバ3とレンズ部21Aとの高精度な位置合わせを実現できる。また、レンズ部21Aによって光信号の径を拡張させているため、フェルール10のユニット穴13の位置誤差は許容されている。よって、フェルール10の製造も簡易(若しくは安価)になる。すなわち、本実施形態では、簡易な構造で、複数の光ファイバ3のそれぞれに対してレンズ部21Aを高精度に配置させることができる。
【0060】
<レンズユニット20の変形例>
図7は、レンズユニット20の変形例を示す図である。
この変形例では、レンズユニット20のフランジ部23の一部(図では下部)が後方に延出している。そして、その延出部分に案内溝26が設けられている。
【0061】
案内溝26は、レンズユニット20のファイバ穴25(テーパ面25B)よりも後側において前後方向に沿って設けられた溝状の部位である。また、案内溝26の前端は、テーパ面25Bの後端と連続している。
このような案内溝26を設けることにより、光ファイバ3をファイバ穴25により挿入しやすくなる。
【0062】
===第2実施形態===
第1実施形態では、レンズユニット20のレンズ部21Aがユニット穴13(前穴13A)の内部に配置されていたが、レンズ部21Aがユニット穴13から突出しても良い。但し、第1実施形態の構成でレンズ部21Aがユニット穴13から突出していると、フェルール同士の接続の際などにレンズ部21Aを損傷するおそれがある。そこで、第2実施形態では、フェルール10の前側端面に凹部(後述する凹部12)を形成し、レンズ部21Aの損傷を抑制するようにしている。
【0063】
図8Aは、第2実施形態のフェルール構造体1の断面斜視図であり、
図8Bは、第2実施形態のフェルール構造体1の断面図(側面図)である。第1実施形態と同一構成の部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0064】
第2実施形態のフェルール10は、凹部12を有している。凹部12は、フェルール10の前側端面から後側に凹んだ部位である。凹部12は、フェルール10の前側端面において2つのガイド穴11の間に設けられており、左右方向に細長い長方形状に形成されている。凹部12の底部には複数のユニット穴13(前穴13A)の開口が形成されている。また、
図8Bに示すように、凹部12の各ユニット穴13(前穴13A)の開口から、レンズユニット20のレンズ部21Aが前側に突出している。
【0065】
但し、
図8Bに示すように、レンズ部21Aの先端は、フェルール10の前側端面(相手側フェルールとの接触端面)よりも後側に配置されている。これにより、レンズ部21Aがユニット穴13から前側に突出していても、レンズ部21Aの損傷を抑制できる。
【0066】
===第3実施形態===
図9Aは、第3実施形態のレンズユニット20の斜視図であり、
図9Bは、第3実施形態のフェルール構造体1のユニット穴13近傍の断面図(側面図)であり、
図9Cは、
図9BのA−A断面図である。
【0067】
第3実施形態では、光ファイバ3の端面が、前後方向(光軸方向)に垂直な面に対して斜めに傾斜している。具体的には、上側ほど後側になるように傾斜している。これにより、光信号の反射を抑制でき、光信号の損失の低減を図ることができる。
【0068】
また、レンズユニット20のファイバ穴25には突当部25A´(突当面に相当)が設けられている。突当部25A´は、光ファイバ3の端面を突き当てる部位であり、ファイバ穴25の前側端部に設けられている。本実施形態の突当部25A´は、光ファイバ3の端面に対応するように、前後方向(光軸方向)に垂直な面に対して斜めに(上側ほど後側になるように)傾斜している。これにより、光ファイバ3の斜めの端面を確実に突当部25A´に突き当てることができる。また、突当部25A´が傾斜していることにより、反射減衰量の低減を図ることができる。
【0069】
また、レンズユニット20のフランジ部23には、外周の一部(本実施形態では上部)に平面(基準面23D:位置決め部に相当)が形成されている。このため、第3実施形態のレンズユニット20のフランジ部23は、断面D字状である(
図9C参照)。
【0070】
また、フェルール10のユニット穴13の後穴13Bには、レンズユニット20(フランジ部23)の基準面23Dに対応した平面(基準面13D:位置決め部に相当)が形成されている。このため、第3実施形態のフェルール10のユニット穴13の後穴13Bも、断面D字状である(
図9C参照)。
【0071】
そして、光ファイバ3が取り付けられたレンズユニット20をフェルール10のユニット穴13に挿入する際には、
図9B及び
図9Cに示すように、レンズユニット20の基準面23Dを、ユニット穴13の後穴13Bの基準面13Dに対向させる。こうすることにより、光ファイバ3の光軸を中心とする回転方向の位置合わせが自動的に行われることになる。よって、回転方向の位置合わせを簡易に且つ確実に行うことができ、これにより、光ファイバ3の斜めの端面を、狙いの向きに配置させることができる。
【0072】
なお、レンズユニット20のファイバ穴25の突当部25A´と、光ファイバ3の端面の何れか一方が前後方向(光軸方向)に垂直な面であっても良い。
【0073】
===その他の実施形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【0074】
前述の実施形態では、予め形成されたレンズユニット20のファイバ穴25に光ファイバ3(裸光ファイバ3A)を挿入して固定していたが、これには限られず、例えば、金型を用いて、光ファイバ3(裸光ファイバ3A)の端部にレンズユニット20を射出成型(モールド)しても良い。但し、この場合、被覆部3Bの被覆が金型の熱で溶けるおそれがある。このため、エポキシ系の樹脂でモールドすることが望ましい。
【0075】
図10A〜
図10Cは、射出成型による製造方法の説明図である。ここでは第1実施形態(光ファイバ3の端面が前後方向に垂直)に適用した場合について説明するが、第3実施形態についても同様に適用できる。この製造方法では、レンズユニット20の外形に対応したチャンバー110を有する金型100を使用する。
【0076】
まず、作業者は、
図10Aに示すように、金型100のチャンバー110内に光ファイバ3(裸光ファイバ3A)の端部を配置させる。
【0077】
次に、
図10Bに示すように、チャンバー110内に樹脂(エポキシ系の樹脂)を射出する。
【0078】
その後、
図10Cに示すように、金型100から脱型を行う。これにより、光ファイバ3を取り付けたレンズユニット20が構成される。
【0079】
この製造方法では、金型100のチャンバー110内への光ファイバ3の配置精度を高めることで、光ファイバ3とレンズ部21Aとの高精度な位置合わせを実現できる。また、この製造方法では、光ファイバ3の端部にレンズユニット20が成型されることになる(ファイバ穴に挿入する必要がない)ため、レンズユニット20に前述の実施形態の通気穴27、テーパ面25B、案内溝26は不要である。すなわち、レンズユニット20の構成を簡素化できる。
【0080】
一方、前述の実施形態の製造方法(予め成型したレンズユニット20のファイバ穴25に光ファイバ3の端部を挿入して固定する方法)では、光ファイバ3の被覆部3Bの被覆が熱で溶けるおそれがないため、使用する樹脂の制約が少なくなる(エポキシ系以外の樹脂も使用できる)。
【0081】
また、前述の実施形態では、ファイバ穴25や充填部15に充填する接着剤としてUV接着剤を用いていたが、これには限られず、例えば、熱硬化性の接着剤を用いても良い。その場合、フェルール10は、光信号を透過させない材料で構成されていても良い。