(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、排ガスが案内される煙道の下流側には、排ガスとの熱交換により蒸気を過熱する過熱器が配置される。この煙道の下流側は、案内される排ガスの温度が低く、排ガスの温度の変動が緩やかである。
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載されたスーパヒータが配設されている主燃焼室は、ごみを燃焼させる空間なので、温度の変動が極めて激しい上に、燃焼による火炎からの直接的な熱輻射をスーパヒータに与えることになる。このため、当該スーパヒータで安定した温度および圧力の蒸気を得るのが困難であった。さらに、特許文献1にはスーパヒータの詳細について記載されていないが、一般的なスーパヒータであれば、蛇行管など偏荷重が発生するものであり、この偏荷重による変形が破損または焼損につながり、結果として長寿命化を図ることも困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、安定した温度および圧力の蒸気を得ることができるとともに、長寿命化を図ることができる排熱回収ボイラが設けられたストーカ式ごみ焼却炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、第1の発明に係る排熱回収ボイラが設けられたストーカ式ごみ焼却炉は、
ごみを燃焼させるとともに当該ごみの燃焼により発生する不完全燃焼排ガスも燃焼させる燃焼室と、当該燃焼室での燃焼により発生する排ガスを上方に案内する第1煙道と、当該第1煙道からの上方に案内されてきた排ガスを下方に案内する上折返し部と、当該上折返し部からの排ガスを下方に案内する第2煙道とが形成され、
前記第1煙道と第2煙道とを区画する仕切壁と、前記上折返し部の上端を規定する天井壁とを備え、
前記排熱回収ボイラが、前記上折返し部における第2煙道の上方部分に設けられて、前記排ガスとの熱交換により蒸気を過熱する複数の二重管からなる過熱器を有し、
前記複数の二重管が、前記天井壁における第2煙道の上方に位置する部分を貫通して、鉛直方向に吊り下げられたものであり、
前記複数の二重管が、それぞれ、前記蒸気を送る内管と、この内管を外方で囲うとともに当該内管とは逆方向に前記蒸気を送る外管とを有し、
前記外管が、その下端部に送られてきた前記蒸気を折り返すために、下端に閉塞部を有し、
前記過熱器が、所定の面に前記二重管を複数並置してなる櫛状管列を、当該所定の面に直交する面に複数配置して構成されるものであり、
前記二重管が、その外管/内管と同一の櫛状管列において隣り合う二重管の内管/外管とを接続する前後接続管を有し、
前記前後接続管が、前記天井壁の上方に位置するものであり、
前記仕切壁が、前記燃焼室での燃焼による直接的な輻射熱を、前記過熱器に到達させないように遮るものである。
【0011】
さらに、
第2の発明に係る排熱回収ボイラが設けられたストーカ式ごみ焼却炉は、第
1の発明に係る排熱回収ボイラが設けられたストーカ式ごみ焼却炉における二重管が、前記外管の少なくとも上折返し部に位置する部分に耐熱耐食層を有し、
前記耐熱耐食層が、耐熱性および耐食性を有する金属またはセラミックスの溶射、または、耐熱性および耐食性を有する金属の肉盛により形成されたものである。
【0012】
加えて、
第3の発明に係る排熱回収ボイラが設けられたストーカ式ごみ焼却炉は、第1または第2の発明に係る排熱回収ボイラが設けられたストーカ式ごみ焼却炉において、前記第2煙道からの下方に案内されてきた排ガスを上方に案内する下折返し部と、当該下折返し部からの排ガスを上方に案内する第3煙道とが形成され、
前記排熱回収ボイラが、さらに、前記第3煙道に配置された初段過熱器を有し、
前記初段過熱器が、蒸気を、第3煙道における排ガスとの熱交換により過熱して、前記複数の二重管からなる過熱器に送るものである。
【0013】
また、
第4の発明に係る排熱回収ボイラが設けられたストーカ式ごみ焼却炉は、第1または第2の発明に係る排熱回収ボイラが設けられたストーカ式ごみ焼却炉において、前記第2煙道からの下方に案内されてきた排ガスを上方に案内する下折返し部と、当該下折返し部からの排ガスを上方に案内する第3煙道とが形成され、
前記排熱回収ボイラが、さらに、前記第3煙道の上部に配置された初段過熱器と、前記第3煙道の下部または第2煙道に配置された中段過熱器とを有し、
前記初段過熱器が、蒸気を、第3煙道の上部における排ガスとの熱交換により過熱して、前記中段過熱器に送るものであり、
前記中段過熱器が、蒸気を、第3煙道の下部または第2煙道における排ガスとの熱交換により過熱して、前記複数の二重管からなる過熱器に送るものである。
【発明の効果】
【0014】
前記排熱回収ボイラが設けられたストーカ式ごみ焼却炉によると、過熱器には仕切壁により燃焼室での燃焼による直接的な輻射熱が遮られるので、過熱器が配置された位置での温度の変動が緩やかになり、結果として過熱器で安定した温度および圧力の蒸気を得ることができる。また、過熱器は、その二重管が上部で保持されて鉛直方向に吊り下げられた状態になるので、排ガスに晒される位置で曲げモーメントなど偏荷重の発生を抑制し、結果として変形に起因する破損または焼損が防止されるので、長寿命化を図ることができる。さらに、過熱器は、その二重管の内管および外管が水平方向に渡されたものではないので、メンテナンスの際に足場として使用されることがなく、結果として一層の長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態1]
以下、本発明の形態1に係る排熱回収ボイラが設けられたストーカ式ごみ焼却炉について図面に基づき説明する。
【0017】
まず、前記ストーカ式ごみ焼却炉の基本構成について
図1に基づき説明する。なお、以下では、図面の左方向を前方向として説明し、図面の右方向を後方向として説明し、図面の手前奥方向を左右方向として説明する。
[ストーカ式ごみ焼却炉の基本構成]
【0018】
このストーカ式ごみ焼却炉は、
図1に示すように、ごみが投入されるホッパ2と、このホッパ2に投入されたごみを後方に送り出すプッシャ3と、このプッシャ3に送り出されたごみを上方で燃焼させながらさらに後方に送り出す炉床部4と、前記炉床部4での燃焼により灰になったごみを排出する排出口8とを備える。前記炉床部4は、ごみの上流側(前側)から順に、ごみを乾燥させる乾燥火格子群5と、ごみを燃焼させる燃焼火格子群6と、ごみをさらに燃焼させて灰にする後燃焼火格子群7とから構成される。
【0019】
前記ストーカ式ごみ焼却炉1は、炉床部4の上方に位置してごみを燃焼させる一次燃焼室11と、この一次燃焼室11の上方に位置してごみの燃焼により発生した不完全燃焼排ガスを燃焼させる二次燃焼室12とが形成される。また、前記ストーカ式ごみ焼却炉1は、炉床部4の下方に配置されて一次燃焼室11に一次燃焼空気を送る風箱18と、二次燃焼室12の前後側に配置されて二次燃焼室12に二次燃焼空気を送る空気ノズル群19とを備える。なお、以下では、一次燃焼室11および二次燃焼室12をまとめて燃焼室11,12と称することがある。
[排ガス経路21〜23,31〜33]
【0020】
前記ストーカ式ごみ焼却炉1は、
図1に示すように、燃焼室11,12で発生した排ガスEを案内して外部に排出するための排ガス経路21〜23,31〜33が形成される。この排ガス経路21〜23,31〜33は排ガスEを上下に往復させながら後方に向かうように構成され、言い換えれば、前記ストーカ式ごみ焼却炉1は前後方向で省スペース化されたインテグラル型である。前記排ガス経路21〜23,31〜33は、排ガスEの上流側から順に、排ガスEを二次燃焼室12から上方に案内する鉛直状の第1煙道21と、上方に案内されてきた排ガスEを下方に案内する上折返し部31と、排ガスEを下方に案内する鉛直状の第2煙道22と、下方に案内されてきた排ガスEを上方に案内する下折返し部32と、排ガスEを再び上方に案内する鉛直状の第3煙道23と、上方に案内されてきた排ガスEを後方に排出する水平状のテールダクト部33とから構成される。
【0021】
次に、前記ストーカ式ごみ焼却炉1に設けられた排熱回収ボイラについて詳細に説明する。
[排熱回収ボイラ]
【0022】
この排熱回収ボイラは、
図1に示すように、前記燃焼室11,12および排ガス経路21〜23,31〜33を囲う水管壁41を備える。当該水管壁41は、フィン付き水管42を沿わせた断熱壁43である。前記水管壁41は、そのフィン付き水管42の内部に循環水を送ることで、当該水に燃焼室11,12または排ガス経路21〜23,31〜33の熱を吸収させて、断熱壁43の温度が過剰に上昇するのを防止するものである。
【0023】
前記排熱回収ボイラは、フィン付き水管42の内部の循環水が送られてくる蒸気ドラム48と、前記テールダクト部33に配置されて蒸気ドラム48に供給するボイラ給水を予熱する排ガスエコノマイザ49と、前記蒸気ドラム48の蒸気をさらに過熱して高温および高圧の蒸気にする過熱器設備55〜57(詳しくは後述する)とを備える。また、前記ストーカ式ごみ焼却炉1は、前記過熱器設備55〜57から高温および高圧の蒸気が供給される蒸気タービン9を備える。なお、前記水管壁41のうち、以下では、上折返し部31の上端を規定するものを天井壁45,46と称し、第1煙道21と第2煙道22とを区画するものを仕切壁44と称する。前記天井壁45,46は、第1煙道21の直上方に位置する前天井壁45と、第2煙道22の直上方に位置する後天井壁46とから構成される。前記仕切壁44は、二次燃焼室12での燃焼による直接的な熱輻射から、後天井壁46に設けられた終段過熱器57(詳しくは後述するが過熱器設備55〜57を構成する)を保護するように形成されている。例えば、前記仕切壁44(特にその上端部)は、二次燃焼室12での燃焼により発生する火炎と終段過熱器57とを直線的に結ぶ空間を完全に遮る位置および形状にされている。なお、前記仕切壁44は、フィン付き水管42およびその他の水管を保護する耐火物で構成されている。
[過熱器設備55〜57]
【0024】
この過熱器設備55〜57は、
図1に示すように、前記蒸気ドラム48の蒸気をさらに過熱して高温および高圧の蒸気にするために、前記蒸気ドラム48からの蒸気の上流側から順に、第3煙道23の上部に配置された初段過熱器55と、第3煙道23の下部に配置された中段過熱器56と、後天井壁46に設けられた終段過熱器57とを有する。なお、以下では、前記水管壁41に囲われた空間の外側を炉外と称する。
【0025】
初段過熱器55は、
図2に示すように、蒸気ドラム48に接続された初段入口ヘッダ管50と、前後方向(または左右方向)に往復しながら下方向に至る初段水平蛇行管51と、初段水平蛇行管51の下流端に接続された初段出口ヘッダ管54とを具備する。前記初段入口ヘッダ管50および初段出口ヘッダ管54は、いずれも炉外において初段水平蛇行管51に直交する方向に水平に渡されたものである。前記初段水平蛇行管51は、1つのみを図示するが、実際には図面の手前奥方向に複数配置され、いずれも、上流端で前記初段入口ヘッダ管50に接続され、下流端で前記初段出口ヘッダ管54に接続される。各初段水平蛇行管51は、上下方向に多数並置された水平直管部52と、上下に隣り合う水平直管部52を前端または後端で交互に接続するU字管部53とからなる。
【0026】
中段過熱器56は、初段出口ヘッダ管54に接続された中段入口ヘッダ管60と、前後方向(または左右方向)に往復しながら下方向に至る中段水平蛇行管61と、中段水平蛇行管61の下流端に接続された中段出口ヘッダ管64とを具備する。前記中段入口ヘッダ管60および中段出口ヘッダ管64は、いずれも炉外において中段水平蛇行管61に直交する方向に水平に渡されたものである。前記中段水平蛇行管61は、1つのみを図示するが、実際には図面の手前奥方向に複数配置され、いずれも、上流端で前記中段入口ヘッダ管60に接続され、下流端で前記中段出口ヘッダ管64に接続される。各中段水平蛇行管61は、上下方向に多数並置された水平直管部62と、上下に隣り合う水平直管部62を前端または後端で交互に接続するU字管部63とからなる。なお、
図2では、初段水平蛇行管51および中段水平蛇行管61が、それぞれ、水平直管部52,62とU字管部53,63とを接続したもののように示したが、一本の長い管を曲げ加工により製造したものでもよい。
【0027】
終段過熱器57は、
図3に示すように、中段過熱器56の中段出口ヘッダ管64に接続された高温入口ヘッダ管70と、後天井壁46(具体的には後天井壁46の断熱壁43)を貫通して鉛直方向に渡された複数の管82からなる管群80と、この管群80に接続された高温出口ヘッダ管90とを具備する。前記管群80を構成する管82は、内管83および外管84からなる二重管82である。このため、以下では、前記管群80を二重管群80と称し、この二重管群80を構成する管82を二重管82と称する。二重管82が前後方向に複数(例えば
図3だと9つを示す)並置されることにより、
図3に示す側面視で櫛状に見える櫛状管列81が構成される。前記二重管群80は、前記櫛状管列81が左右方向に複数配置されて、上折返し部31からブラシ状に見えるものである。前記二重管群80において、少なくとも、同一の櫛状管列81では前後方向で隣り合う二重管82が互いに接続されている。異なる櫛状管列81では、左右方向で隣り合う二重管82が、互いに接続されていてもよく、互いに接続されていなくてもよい。前記二重管群80を構成する二重管82は、いずれも、上部が後天井壁46のフィン付き水管42に保持されて鉛直方向に渡されるので、後天井壁46に吊り下げられていると言える。隣り合う二重管82の前後方向および左右方向の各所定間隔は、前記二重管群80の内側に送られる蒸気と二重管82同士の隙間を通過する排ガスEとの熱交換が効率よく行われるように、適宜設計される。
【0028】
図4に示すように、各二重管82は、蒸気を下方に送る内管83と、この内管83の外方を囲う外管84と、後天井壁46の上方で当該外管84の後部に接続された前後接続管88とからなる。なお、最も後に配置された二重管82は、前後接続管88を有しないで、その代わりに外管84と高温出口ヘッダ管90とを接続する導出管89(
図3参照)を有する。
【0029】
図4に示すように、前記内管83は、その上端が直前方の二重管82における前後接続管88に接続されるとともに、下端が外管84の下端部に連通する。なお、最も前に配置された二重管82の内管83は、上端が前後接続管88に接続されないで、その代わりに高温入口ヘッダ管70に直接接続される。前記外管84は、上端部が後天井壁46のフィン付き水管42に保持される部分であるとともに、下端の閉塞のために湾曲底部85(閉塞部の一例である)を有する。外管84の下端部および湾曲底部85における内側には、内管83の下端から下方に送られてきた蒸気を上方に折り返すための空間として、蒸気折返し部86が形成されている。前記前後接続管88は、蒸気の上流側から順に、下端が外管84の上端に取り付けられたチー管88aと、このチー管88aの後端に取り付けられた短管88cと、この短管88cの後端に取り付けられたテーパ管88dと、このテーパ管88dの後端に取り付けられたエルボ管88eとから構成される。前記チー管88aは、その上端において、内管83の外周が肉盛部88bで封止される。前記前後接続管88では、前記チー管88aの後端部、短管88cおよびテーパ管88dが水平方向に渡され、前記エルボ管88eが水平方向から鉛直方向に折れ曲ったものであり直後方の二重管82における内管83の上端に接続される。したがって、二重管82における蒸気の経路は、蒸気の上流側から順に、直前方の前後接続管88(または高温入口ヘッダ管70)から送られてきた蒸気を下方に送る内管83の内側と、蒸気折返し部86と、蒸気折返し部86からの蒸気を上方に送る外管84の内側で且つ内管83の外側と、外管84の上端からの蒸気を直後方の二重管82に送る前後接続管88(または
図3に示す導出管89)の内側とからなる。
ここで、上折返し部31を通過する高温で腐食性の高い排ガスEから終段過熱器57(具体的には前記外管84)を保護するための構成について説明する。
【0030】
図4に示すように、前記二重管82において、外管84の後天井壁46に保持された部分と、外管84の後天井壁46から下の部分とが、高温で腐食性の高い排ガスEに晒されるので、影響を受けやすい。このため、前記二重管82は、前記外管84における、後天井壁46に保持された部分と後天井壁46から下の部分とを覆う保護層として、耐熱耐食層87を有する。この耐熱耐食層87は、耐熱性および耐食性を有する金属またはセラミックスの溶射により形成される。また、前記耐熱耐食層87は、耐熱性および耐食性を有する金属の肉盛により形成されてもよい。このような耐熱耐食層87は、覆っている外管84を高温で腐食性の高い排ガスEから長期間保護し得る。ここで、一般的に、溶射により保護層を形成する方法として、溶射される対象物(基材)と溶射ノズルとの距離を一定に保ちつつ、溶射ノズルから保護層のための物質(溶射材)を基材に吹き付けながら当該溶射ノズルを移動させていく、というものがある。この方法では、溶射される対象物の溶射される面が直線軸周りの円周状または緩やかな湾曲状(半球状が好ましい)であれば、当該対象物の面と移動させている溶射ノズルとの距離を容易に一定にすることが可能であり、その結果、当該面に均一な保護層が形成される。これとは逆に、一般的なボイラで用いられるような蛇行管の折曲げ部分(U字管部)の外面は、曲線軸周りの円周状なので、溶射ノズルとの距離を一定にすることが困難である。このため、このようなU字管部の外面に溶射で形成される保護層は不均一となってしまう。これに対して、本実施の形態1における外管84の湾曲底部85の外面(耐熱耐食膜が形成される面)は、緩やかな湾曲状(または半球状)なので、溶射により形成される耐熱耐食膜が均一になる。また、湾曲底部85以外の耐熱耐食膜が形成される外管84の外面は、直線軸周りの円周状なので、溶射により形成される耐熱耐食膜が均一になる。このため、外管84の外面に溶射により形成される全ての耐熱耐食層87は、均一であるから、熱衝撃などによる割れ、局部剥離および局部減肉などが発生し難いものと言える。
【0031】
以下、前記排熱回収ボイラが設けられたストーカ式ごみ焼却炉1の作用について説明する。
【0032】
図1に示すように、ホッパ2に投入されたごみは、プッシャ3により後方に送り出されて、炉床部4に達する。炉床部4の上方(つまり一次燃焼室11)では、風箱18からの一次燃焼空気により、ごみを燃焼させる。このごみは、燃焼しながら、炉床部4を構成する乾燥火格子群5、燃焼火格子群6および後燃焼火格子群7によりさらに後方に送り出される。燃焼によりごみは灰になり、この灰は排出口8より排出される。二次燃焼室12では、空気ノズル群19からの二次燃焼空気により、ごみの燃焼により発生した不完全燃焼排ガスをさらに燃焼させて、排ガスEにする。これら燃焼室11,12での燃焼により発生した排ガスEは、排ガス経路21〜23,31〜33に案内された後にストーカ式ごみ焼却炉1の外部に排出されて浄化装置など(図示省略)を経由し、最終的に煙突(図示省略)から大気中に放出される。
【0033】
上述したごみの燃焼による熱および排ガス経路21〜23,31〜33に案内されている排ガスEの熱は、水管壁41により循環水として蒸気ドラム48に回収される。この蒸気ドラム48の循環水は、過熱器設備55〜57により、さらに過熱されて高温および高圧の蒸気になる。具体的には、初段過熱器55により第3煙道23の上部に案内される排ガスEと蒸気とが熱交換され、中段過熱器56により第3煙道23の下部に案内される一層高温の排ガスEと蒸気とが熱交換され、終段過熱器57により上折返し部31に案内される極めて高温の排ガスEと蒸気とが熱交換される。終段過熱器57では、極めて高温の排ガスEと熱交換することになるが、当該排ガスEに晒されるのは
図4に示す耐熱耐食層87だけである。この耐熱耐食層87は、前述の通り、熱衝撃などによる割れ、局部剥離および局部減肉などが発生し難いものなので、高温で腐食性の高い排ガスEに晒され続けても、外管84を保護し続ける。
【0034】
図1に示すように、こうして得られた終段過熱器57からの高温および高圧の蒸気は蒸気タービン9に送られて、当該蒸気タービン9により蒸気の熱エネルギーが利用可能な状態で取り出される。
【0035】
このように、前記排熱回収ボイラが設けられたストーカ式ごみ焼却炉1によると、終段過熱器57には仕切壁44により二次燃焼室12での燃焼による直接的な輻射熱が遮られるので、終段過熱器57が配置された位置での温度の変動が緩やかになり、結果として終段過熱器57で安定した温度および圧力の蒸気を得ることができる。また、終段過熱器57は、その二重管82が上部で保持されて鉛直方向に吊り下げられた状態になるので、排ガスEに晒される位置で曲げモーメントなど偏荷重の発生を抑制し、結果として変形に起因する破損または焼損が防止されるので、長寿命化を図ることができる。さらに、終段過熱器57は、その二重管82の内管83および外管84が水平方向に渡されたものではないので、メンテナンスの際に足場として使用されることがなく、結果として一層の長寿命化を図ることができる。
【0036】
加えて、耐熱耐食層87が高温で腐食性の高い排ガスEに晒され続けても外管84を保護し続けるので、長寿命化を図ることができる。
【0037】
また、前後接続管88により、二重管82での蒸気のスムーズな往復を、前記内管83および外管84という簡単な構成で実現することができる。さらに、前後接続管88が炉外に位置することにより、前後接続管88を外管84から容易に取り外し可能になり、この取り外しによって外管84から内管83を取り出し得る状態になるので、終段過熱器57においてメンテナンスを容易にすることができる。
【0038】
また、排ガスEの温度が比較的低い位置である第3煙道23に初段過熱器55が配置されたので、この初段過熱器55で予熱された蒸気が終段過熱器57に送られることになり、結果として終段過熱器57で高温および高圧の蒸気を良好に生成することができる。
【0039】
また、初段過熱器55よりも排ガスEの上流側である第3煙道23に中段過熱器56が配置されたので、初段過熱器55で予熱された蒸気が中段過熱器56で過熱されて終段過熱器57に送られることになり、結果として終段過熱器57で高温および高圧の蒸気を一層良好に生成することができる。
【0040】
ところで、前記実施の形態1では、
図4に示すように、蒸気が内管83、外管84および前後接続管88の順に通過する構成として説明したが、
図5に示すように、蒸気が外管84、内管83、前後接続管98の順に通過する構成でもよい。具体的に説明すると、
図5に示す前後接続管98は、蒸気の上流側から順に、上端から蒸気が送られてくるとともに後端で後述する短管98cの外周を封止部98bで封止するチー管98aと、内管83の上端に接続されたエルボ管98eと、このエルボ管98eの後端に取り付けられた短管98cと、この短管98cの後端に取り付けられたテーパ管98dと、このテーパ管98dの後端に取り付けられるとともに下端が直後方の外管84の上端に接続された大エルボ管98fとから構成される。なお、最も前に配置された二重管82の前後接続管98は、上端が配管93を介して高温入口ヘッダ管70に接続される。一方で、最も後に配置された二重管82は、図示しないが、前後接続管98を有しないで、その代わりに内管83の上端と高温出口ヘッダ管90とを接続する導出管89を有する。
【0041】
また、前記実施の形態1では、終段過熱器57が蒸気を前から後に(排ガスEが案内される方向に)送るように構成されるとして説明したが、蒸気を後から前に送るように構成されてもよい。
【0042】
[実施の形態2]
以下、本発明の形態2に係る排熱回収ボイラが設けられたストーカ式ごみ焼却炉について
図6に基づき説明する。
【0043】
図6に示すように、本実施の形態2に係る排熱回収ボイラが設けられたストーカ式ごみ焼却炉1は、過熱器設備55,156,57の中段過熱器156が、前記実施の形態1とは異なり、第3煙道23ではなく第2煙道22に配置されたものである。なお、以下において、前記実施の形態1と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0044】
本実施の形態2に係る中段過熱器156は、前記実施の形態1に係る中段過熱器56に比べて、より一層高温で腐食性の高い排ガスEに晒されることになる。このため、図示しないが、本実施の形態2に係る中段過熱器156にも終段過熱器57の耐熱耐食層87と同質の保護層を形成させることにし、さらに、当該中段過熱器156の中段水平蛇行管61では、均一な耐熱耐食層87を形成し難い部分であるU字管部63を炉外に配置する。具体的に説明すると、前記中段過熱器56の水平直管部62は、第2煙道22の左右端を規定する左右の水管壁41の断熱壁43を貫通する長さにされる。また、当該中段水平蛇行管61は、その各水平直管部62において、断熱壁43を貫通している部分と、第2煙道22に位置する部分とに、保護層としての耐熱耐食層を有する。この耐熱耐食層が形成される水平直管部62の外面は、直線軸周りの円周状なので、溶射により形成される耐熱耐食層が均一になる。すなわち、本実施の形態2に係る中段過熱器156は、前記実施の形態1に係る中段過熱器56よりも高温で腐食性の高い排ガスEに晒されるが、当該晒される部分が均一な耐熱耐食層に覆われていることになる。なお、本実施の形態2に係る初段過熱器55は、前記実施の形態1と同様に第3煙道23の上部に配置されてもよく(
図6参照)、図示しないが第3煙道23の中部または下部に配置されてもよい。
【0045】
このように、本実施の形態2に係る排熱回収ボイラが設けられたストーカ式ごみ焼却炉1によると、前記実施の形態1と比べて中段過熱器156から一層過熱された蒸気を終段過熱器57に送るので、終段過熱器57で高温および高圧の蒸気を極めて良好に生成することができる。
【0046】
ところで、前記実施の形態1および2は、全ての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、上述した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。なお、前記実施の形態1および2で説明した構成のうち前記[課題を解決するための手段]で第1の発明として記載した構成以外については、任意の構成であり、適宜削除および変更することが可能である。