特許第6796645号(P6796645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6796645原子力環境で使用可能な呼吸用気体供給システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796645
(24)【登録日】2020年11月18日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】原子力環境で使用可能な呼吸用気体供給システム
(51)【国際特許分類】
   G21C 13/00 20060101AFI20201130BHJP
   G21D 3/04 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   G21C13/00 500
   G21D3/04 Q
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-528668(P2018-528668)
(86)(22)【出願日】2016年10月25日
(65)【公表番号】特表2019-504305(P2019-504305A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】US2016058567
(87)【国際公開番号】WO2017099895
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2019年10月9日
(31)【優先権主張番号】14/965,120
(32)【優先日】2015年12月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】アラファト、ヤシール
(72)【発明者】
【氏名】デデラー、ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】トーランス、アダム
(72)【発明者】
【氏名】スコーベル、ジェームス、エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ダーフィー、ジョナサン、シー
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−027308(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0216021(US,A1)
【文献】 米国特許第05148681(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 13/00
G21D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力環境(8)の、少なくとも一部が包囲空間である内部領域(12)と併用されるシステム(4)であって、
呼吸可能な気体を貯蔵し、命令に応じて呼吸可能な気体の流れを発生させるように構成された貯蔵器(48)であって、呼吸可能な気体を当該貯蔵器の外側の周囲温度より低い温度および当該貯蔵器の外側の周囲圧力より高い圧力のうち少なくとも1つの状態で貯蔵する貯蔵器と、
当該貯蔵器に接続され、所定の状況下で当該貯蔵器に当該命令を出すように構成された制御装置(16)と、
当該呼吸可能な気体の流れを受け取るように構成された給送システム(84)であって、
当該貯蔵器と流体連通し、当該内部領域と熱交換関係にある多数の流路(190)から成る熱交換器(92)であって、当該多数の流路は呼吸可能な気体の流れの1つの分流を受け入れて当該内部領域からの熱を当該1つの分流に伝達するように構成されている熱交換器と、
互いに機械的に接続されたタービン(130)および発電機(134)から成る発電装置(88)であって、当該タービンは当該貯蔵器と流体連通し、呼吸可能な気体の流れの1つの分流を受け入れ、当該1つの分流により作動されて、当該発電機に電力を発生させるように構成されている発電装置と
当該制御装置からの多数の指示に応答して、呼吸可能な気体の流れを当該多数の流路と当該発電装置とに分配するように作動される弁(146)と
を具備する給送システムと
から成るシステム。
【請求項2】
前記給送システムさらに前記内部領域と流体連通する流出口(182A、182B)を有する送出システム(96)を含み、当該流出口は前記貯蔵器と流体連通し、前記内部領域に前記1つの分流を送出して前記内部領域に呼吸可能な気体を提供するように構成されており、前記給送システムはさらに、前記貯蔵器と流体連通し、前記制御装置からの多数の指示に応答して作動されるように構成されている別の弁(154)を含み、当該別の弁は前記1つの分流を受け取り、当該多数の指示に応答して前記1つの分流を当該流出口と前記熱交換器とに分配するように構成されていることを特徴とする、請求項1のシステム。
【請求項3】
前記別の弁は前記タービンと流体連通し、前記タービンの下流に位置することを特徴とする、請求項2のシステム。
【請求項4】
前記制御装置が、少なくとも一部が前記原子力環境の別の内部領域(28)に位置する遠隔コントローラ(24)を含み、当該別の内部領域は少なくとも一部が包囲空間であり、前記熱交換器は当該別の内部領域に呼吸可能な気体を供給するために前記1つの分流の少なくとも一部を当該別の内部領域に流入させるように構成されていることを特徴とする、請求項2のシステム。
【請求項5】
前記給送システムさらに前記内部領域と流体連通する流出口(182A、182B)を有する送出システム(96)を含み、当該流出口は前記タービンと流体連通し且つ前記タービンの下流に位置し、当該流出口は前記内部領域に当該1つの分流の少なくとも一部を送出して前記内部領域に呼吸可能な気体を提供するように構成されていることを特徴とする、請求項1のシステム。
【請求項6】
前記給送システムがさらに、前記弁(146)および流れ要素(150)から成るバイパスレグ(142)を含み、当該弁は前記タービンと流体連通し且つ前記タービンと前記貯蔵器との間に位置し、当該流れ要素は当該弁と前記流出口との間で流体連通関係にあことを特徴とする、請求項5のシステム。
【請求項7】
前記給送システムさらに前記タービンおよび前記流れ要素と流体連通する別の弁(154)を含み、当該別の弁は前記タービンの下流に位置して、前記制御装置からの多数の別の指示に応答して作動するように構成され、当該別の弁は前記タービンおよび前記流れ要素から前記1つの分流を受け入れ、当該多数の別の指示に応答して前記1つの分流を前記流出口と前記熱交換器とに分配するように構成されていることを特徴とする、請求項6のシステム。
【請求項8】
前記制御装置が蓄電池群(32)から成り、前記電力の少なくとも一部が当該蓄電池群の少なくとも一部を充電するために当該蓄電池群に供給されることを特徴とする、請求項1のシステム。
【請求項9】
前記蓄電池群の少なくとも一部が前記原子力環境の別の内部領域(40)に位置し、当該別の内部領域は少なくとも一部が包囲空間であり、前記給送システムはさらに当該別の内部領域内の空気と熱交換関係にある周囲空気冷却蒸発器(102)を含み、当該周囲空気冷却蒸発器は第1の条件下において前記1つの分流を前記貯蔵器から受け入れ、さらに第2の条件下において前記1つの分流を送出するように構成されており、当該第2の条件下における前記1つの分流は当該第1の条件下に比べて液体成分が相対的に少なく気体成分が相対的に多いことを特徴とする、請求項8のシステム。
【請求項10】
前記給送システムが前記貯蔵器と流体連通するポンプ(110)をさらに含み、当該ポンプは前記周囲空気冷却蒸発器を介して前記タービンに供給される前記1つの分流の圧力を高めるように構成されていることを特徴とする、請求項9のシステム。
【請求項11】
前記制御装置が機器一式(36)を含み、前記電力の少なくとも一部が当該機器一式の少なくとも一部を作動するために発生されることを特徴とする、請求項1のシステム。
【請求項12】
前記機器一式の少なくとも一部が前記原子力環境の別の内部領域(40)に位置し、当該別の内部領域は少なくとも一部が包囲空間であり、前記給送システムはさらに当該別の内部領域内の空気と熱交換関係にある周囲空気冷却蒸発器(102)を含み、当該周囲空気冷却蒸発器は第1の条件下において前記1つの分流を前記貯蔵器から受け入れ、さらに第2の条件下において前記1つの分流を送出するように構成されており、当該第2の条件下における前記1つの分流は当該第1の条件下に比べて液体成分が相対的に少なく気体成分が相対的に多いことを特徴とする、請求項11のシステム。
【請求項13】
前記給送システムがさらに前記貯蔵器と流体連通するポンプ(110)を含み、当該ポンプは前記周囲空気冷却蒸発器に供給される前記1つの分流の圧力を高めるように構成されていることを特徴とする、請求項12のシステム。
【請求項14】
前記給送システムがさらに、前記内部領域と流体連通する流出口(182A、182B)を有する送出システム(96)を含み、当該流出口は前記貯蔵器と流体連通し、前記内部領域に前記1つの分流の少なくとも一部を送出して前記内部領域に呼吸可能な気体を提供するように構成されていることを特徴とする、請求項1のシステム。
【請求項15】
前記流出口は、前記内部領域内の空気の少なくとも一部も併せて送出することにより前記内部領域内の空気を再循環させるように構成された排出装置であり、前記給送システムは前記内部領域に排出する前に前記流出口からの流れから汚染物質をろ過するように構成されたろ過器を含むことを特徴とする、請求項14のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願で開示および特許請求する発明は概して原子力の環境に係わり、具体的には、緊急時や他の状況下において中央制御室などの施設の内部領域に呼吸可能な気体を供給し当該領域を冷却する、原子力環境で使用可能なシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、原子力発電所および他の原子力環境は、或る特定の目的達成のため核分裂や核融合を利用する。そのような原子力環境には危険が潜在するため、多数の制御系および保護系が実装されている。その典型として、例えば、原子力発電所の環境には原子炉とその支援機器および系統を制御する中央制御室がある。そのような原子力環境は一般的に所期の目的達成に有効であるが、それなりの制約もある。
【0003】
例えば、原子力環境の中央制御室には、一般的に、かかる環境の制御系や保護系などさまざまなシステムの運転を担当する要員が駐在する。冷却材喪失やその他の緊急事態が発生すると、中央制御室の電源が喪われることがある。この電源の喪失は、制御系および保護系を運転するための電力と、中央制御室の環境制御に必要な空調設備のための電力の供給が止まるため、大きな問題である。設計基準外事故(BDBA)に対して予備ディーゼル発電機の使用が提案されているが、そのようなディーゼル発電機による解決策は、往々にして時間と労力を必要とする。主ディーゼル発電機が利用できない稀な状況では、中央制御室の温度が急速に上昇し、呼吸可能な空気の質が急速に劣化するおそれがある。蓄電池も使用されるが、これは一般的に安全関連機器を運転するためのものである。そのような空気の質の劣化には、酸素の減少、二酸化炭素濃度の上昇および浮遊放射性粒子の混入が含まれることがあり、いずれも望ましくない。
【0004】
ディーゼル発電機が利用できない状況下での予備蓄電池の使用が提案されているが、そのような予備蓄電池システムは当然ながら容量に限りがあり(典型的には24時間)、要員によるすべての安全関連操作の実施には不十分といえなくもない。緊急時に完了しなければならないさまざまな運転手順や他の手順が、予備蓄電池の容量限界に近づくまでの間(約22時間)に実施されなかった場合、自動減圧系(ADS)による格納容器の冠水が開始される。冠水は、のちに大掛かりな浄化作業が必要になるため望ましくない。したがって、改善を行うことが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
原子力環境で使用可能な改良型システムは、給送システムと流体連通する、液化された呼吸可能な気体の貯蔵器を用意する。当該給送システムは、当該貯蔵器からの呼吸可能な気体の流れを利用してガスタービンを作動させ、当該ガスタービンに機械的に接続された発電機を作動させて電力を発生させ、その電力を蓄電池群に蓄電させる。当該タービンから出る当該呼吸可能な気体の流れは、中央制御室の内部領域と熱交換関係にある熱交換器と、当該呼吸可能な気体を当該中央制御室に供給する流出口とに分配される。当該熱交換器に分配される呼吸可能な気体の流れは、当該中央制御室を冷却する。また、当該中央制御室に分配される呼吸可能な気体の流れは、当該制御室内の空気を再循環させる。
【0006】
したがって、本願で開示および特許請求する発明は、その一側面において、貯蔵器が酸素を含む呼吸可能な気体を中央制御室に供給するだけでなく、当該貯蔵器からの液化された呼吸可能な気体を用いて発電および/または中央制御室の冷却を行うシステムを提供する。
【0007】
本願で開示および特許請求する発明は、別の側面において、原子力環境を制御する制御装置のために持続的電源を用意する改良型システムを提供する。
【0008】
したがって、本願で開示および特許請求する発明は、その一側面において、原子力環境の、少なくとも一部が包囲空間である内部領域と併用するように構成された改良型システムを提供する。当該システムは一般的に、呼吸可能な気体を貯蔵し、命令に応じて呼吸可能な気体の流れを発生させる貯蔵器であって、当該呼吸可能な気体を外側の周囲温度より低い温度および外側の周囲圧力より高い圧力のうち少なくとも1つの状態で貯蔵するように構成された貯蔵器と、当該貯蔵器に接続され、所定の状況下で当該貯蔵器に当該命令を出すように構成された制御装置と、当該流れを受け取るように構成された給送システムとから成ると言える。当該給送システムは一般的に、当該貯蔵器と流体連通し、当該内部領域と熱交換関係にある多数の流路を有する熱交換器であって、当該多数の流路が、当該内部領域からの熱を流路内に分流された当該呼吸可能な気体の流れに伝達するように構成されていると一般的に言える熱交換器と、タービンと発電機とが互いに機械的に接続された発電装置であって、当該貯蔵器と流体連通する当該タービンが、その内部に分流される当該呼吸可能な気体の流れにより作動されて、当該発電機が発電を行うと一般的に言える発電装置とのうち、少なくとも1つを具備すると言える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本願で開示および特許請求する発明の詳細を、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0010】
図1】本願で開示および特許請求する発明に基づく改良型システムの概略図である。
【0011】
図2図1のシステムのコントローラの概略図である。
【0012】
本願で使用する同じ参照番号は、同様の部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、原子力発電所や他の原子力環境8で使用可能な、本願で開示および特許請求する発明による改良型システム4を略示する。この原子力環境8は、内部領域の少なくとも一部が包囲空間である中央制御室12を含む。図中に明示しないが、中央制御室12は、室内を若干加圧、すなわち中央制御室12の外側の周囲圧力より少なくとも若干高めの圧力に保つことにより、浮遊放射性粒子の侵入を防ぐフィルタおよび単方向圧力弁を具備することがわかる。
【0014】
原子力環境8は、さまざまな制御系および安全系ならびにそれらと通信する機器から成る制御装置16を含む。制御装置16は全体として原子力環境8の全域に分散しているが、少なくとも一部が中央制御室12内にあるコントローラ20を含んでおり、当該コントローラを作動させて制御装置16のさまざまな系統を制御することができる。制御装置16はさらに、補助室28に設置された遠隔コントローラ24を含むが、当該補助室は中央制御室12から分離され、中央制御室12と同様に少なくとも一部が包囲空間である内部領域を有する。制御装置16はさらに、一例として蓄電池群32および機器一式36を含むが、それらは図1に示すように機器室40に設置される。機器室40は、内部領域を有するが、例示する実施態様では、少なくとも一部が包囲空間である。図1は、蓄電池群32の少なくとも一部および/または機器一式36の機器の少なくとも一部が機器室40に配置され、さらに、他の制御機器が原子力環境8内の他の場所に設置される可能性が高いことを示す意図があることがわかる。
【0015】
本発明のシステム4は、液体空気または液化状態の呼吸可能な気体配合物の貯蔵器48を含む貯蔵タンク装置44を具備すると言える。この点に関して、空気のさまざまな成分はそれぞれ異なる温度および圧力で液化するので、空気を液化した結果としての「液体空気」は本質的に存在しないことがわかる。したがって、「液体空気」という用語およびその変化形は、広義には、気体になると人間が空気として呼吸できる液状の気体混合物を意味する。したがって、貯蔵器48には、19〜23.5%の液化酸素ガスと、残りの液化窒素ガスとから成る液体空気が貯蔵されている。
【0016】
例示する実施態様において、貯蔵器48は、参照符号52A、52B、52Cで表される3つの液体空気貯蔵タンクより成る。なお、液体空気貯蔵タンクを、個別または集合的に参照符号52で表すことがある。液体空気貯蔵タンク52は、壁間に断熱材を挟んだ二重壁の貯蔵タンクであり、原子力環境8内のどこかに設置される。建屋の外側に設置される場合もあり、風雨に晒される場合もある。液体空気貯蔵タンク52は、液状の呼吸可能な気体を、緊急事態やそれに類する他の所定事象が起きた時に備えて貯蔵し、供給する。液体空気貯蔵タンク52は、液化した呼吸可能な気体を華氏約−250度の温度および150〜200psigの圧力に保つ。これは、周囲温度および例えば4,000psiに加圧された空気を貯蔵する従来の圧縮空気貯蔵タンクと対照的である。したがって、液体空気貯蔵タンク52は、外側の周囲温度より低い温度および外側の周囲圧力より高い圧力で、液状の呼吸可能な気体を貯蔵する。
【0017】
液体空気貯蔵タンク52はそれ自体冷却されず、断熱材により呼吸可能な気体を冷温に保つ構造であるから、液化された成分の一部が気化していまい、この気化した部分を排気する必要がある。そのため、貯蔵タンクの内容物が或る程度減るが、その減り具合は1日に約0.4%である。この気化して排気される呼吸可能な気体を、ときどき補充しなければならない。また、典型的には、この排気される気体の約95%が窒素ガスなので、液体空気貯蔵タンク52の液化酸素ガスと液化窒素ガスの比率は時間とともに変化する。
【0018】
貯蔵タンク装置44はまた、補充ライン56により補給車60に接続可能な補充タンク52Dを含むが、当該補給車はこの補充タンク52Dに、液体空気貯蔵タンク52に供給されると、酸素濃度が前述の19〜23.5%の範囲内になる特定配合の液化酸素ガスおよび液化窒素ガスが供給する。
【0019】
関連技術分野で知られているように、補給車60は一般的に内容物を迅速に送出できるし、貯蔵タンク装置44の補充タンク52Dは補給車60の内容物を迅速に受け入れて補給用液化ガスを一時的に貯蔵できるように構成されている。補充タンク52Dの内容物はその後、補充ポンプ64を介して液体空気貯蔵タンク52へ送られる。補充タンク52Dは、タンク内の圧力が特定の値になるかコントローラ20から指示された場合にのみ気体を放出する、圧力逃し弁または他の弁より成る補充通気弁72を具備する。
【0020】
この点に関して、補充通気弁72は、コントローラ20と無線通信関係にあることを示唆するアンテナ80を具備し、コントローラ20も同様なアンテナ80を具備することがわかる。また、システム4および原子力環境8の他の多数の構成機器も同様にコントローラ20と無線通信するための同様なアンテナ80を具備することがわかる。このようなアンテナ80は、コントローラ20と他のさまざまな構成機器との間に無線通信および制御関係があることを示唆しているが、コントローラ20とのかかる通信およびコントローラによる制御は、本発明の思想から逸脱することなく有線通信または他の通信媒体により行えることがわかる。
【0021】
液体空気貯蔵タンク52も同様に、気化した内容物を(大気中ではなく)排気管へ排出するための貯蔵通気弁68を具備する。そのような気体の排出は、タンク内の圧力が特定の値になったときのみ、または貯蔵通気弁68がコントローラ20から指示を受け取ったときに発生する。
【0022】
液体空気貯蔵タンク52A、52B、52Cと補充タンク52Dは、それぞれ参照符号76A、76B、76C、76Dで示される酸素指示器を具備するが、酸素指示器を個別または集合的に参照符号76で表すこともある。酸素指示器76は、液体空気貯蔵タンク52および補充タンク52Dに貯蔵された液化ガスの酸素濃度を示す遠隔測定データをコントローラ20に伝えて、補充タンク52Dおよび補給車60によって定期的に補充される液体空気貯蔵タンク52の内容物の酸素濃度を確実に前述の19〜23.5%の範囲内にするために設けられる。
【0023】
本発明のシステム4はさらに、貯蔵器48と流体連通関係にある給送システム84を具備するが、当該給送システムは、液体空気貯蔵タンク52からの呼吸可能な気体の流れを、中央制御室12や原子力環境8内の他の場所へ給送するように構成されている。給送システム84には、貯蔵器48と流体連通関係にあり、当該貯蔵器48から呼吸可能な気体を圧縮および液化された状態で受け取ったあと、当該給送システム84が中央制御室12および原子力環境8内の他の場所へ給送する前の呼吸可能な気体の流れから得られる機械的エネルギーを利用して発電を行う発電装置88を含むという利点がある。発電された電力は、蓄電池群32を再充電し、機器一式36を作動させるために利用できる。この点に関して、蓄電池群32は、例えば中央制御室12に電力を供給する交流電源によって常に完全に充電された状態に保たれる。緊急事態または発電装置88がこの気体の流れによって作動する他の状況下において、発電された電力は、蓄電池群32の再充電および機器一式36への給電に利用される。
【0024】
給送システム84はさらに、貯蔵器48から呼吸可能な気体の流れの一部を受け取ることができる、中央制御室12(具体的には中央制御室12内の空気)と熱伝達関係にある熱交換器92を含む。熱交換器92は、中央制御室12内の空気の熱を、熱交換器92内の流れに伝達することにより、中央制御室12を冷却するように動作可能である。
【0025】
給送システム84はさらに、中央制御室12内の要員向けの呼吸可能な空気を補給するために、呼吸可能な気体の流れの一部を中央制御室12に送出する送出システム96を具備する。送出システム96はまた、中央制御室12内の空気を再循環させ、ろ過する。
【0026】
給送システム84はさらに、互いに、また貯蔵器48と流体連通関係にある配管、弁および他の流路を含む多数の流れ要素から成ると言える接続システム10を含む。本願で用いる用語「多数の」およびその変化形は、広義には、ゼロを除き1を含む任意の数量を意味する。
【0027】
さらに詳説すると、接続システム100は、液体空気貯蔵タンク52A、52B、52Cにそれぞれ接続された参照符号106A、106B、106Cで総括表示される一連の供給弁と周囲空気冷却蒸発器102とを具備すると言える。なお、本願では、供給弁を個別または集合的に参照符号106で示すことがある。供給弁106は、呼吸可能な気体の流れを周囲空気冷却蒸発器102に供給する。この周囲空気冷却蒸発器は、例示する実施態様では機器室40の内部に設置されている。接続システム100はさらに、周囲空気冷却蒸発器102に供給される呼吸可能な気体の流れの圧力を高めるように、電気的に作動可能で、供給弁106と周囲空気冷却蒸発器102との間に設けられた低温流体供給ポンプ110を具備する。
【0028】
接続システム100はさらに、並列レグ114および逆止弁118を具備するが、それらは、供給ポンプ100を含む接続システム100のレグと並列流体連通関係にある。並列レグ114は、供給ポンプ110が故障した場合、また、液体空気貯蔵タンク52の内容物の圧力がすでに、供給ポンプ110を必要としないほど十分に高い場合に、呼吸可能な気体の流れを周囲空気冷却蒸発器102に直接供給するために設けられている。逆止弁118は、供給ポンプ110から出た流れが並列レグ114に逆流するのを防ぐために設けられている。接続システム100の供給ポンプ110と周囲空気冷却蒸発器102との間には、供給ポンプ110から周囲空気冷却蒸発器102への呼吸可能な気体の流れをさらに別のレベルで制御するための制御弁122が設けられている。
【0029】
周囲空気冷却蒸発器102は、じかに接する環境(例示する実施態様では機器室40)の空気の熱を吸収する熱交換器である。周囲空気冷却蒸発器102は、吸収した熱を利用して、貯蔵器48から流入したおおむね液体の内容物をおおむね気体の流出物に変化させるが、当該流出物は発電装置88および/または熱交換器92および/または送出システム96へ送られる。周囲空気冷却蒸発器102は、じかに接する環境の熱を当てにするので、周囲空気冷却蒸発器102の直近の空気に、蒸発器内の流れを蒸発させるのに十分な熱が含まれるように設置するのが望ましい。また、周囲空気冷却蒸発器102の流入口ではおおむね液体であった流れが、周囲空気冷却蒸発器102の流出口では完全にまたはおおむね気体になるように、周囲空気冷却蒸発器102の寸法と流量とを設定するのが望ましい。周囲空気冷却蒸発器102への流れは完全に液体でなくてもよく、周囲空気冷却蒸発器102からの流れは完全に気体でなくてもよいが、流れが周囲空気冷却蒸発器102に流入したあと流出するまでの間に、周囲空気冷却蒸発器102によって流れの液体成分が減少し、気体成分が増加することがわかる。
【0030】
周囲空気冷却蒸発器102の下流端における呼吸可能な気体の流れの圧力は、周囲空気冷却蒸発器102の流入口における圧力より高くなっている。必要に応じて流れの一部を大気中に排出するために、蒸発器逃し弁126が設けられている。
【0031】
周囲空気冷却蒸発器102の下流に設置される発電装置88は、貯蔵器48と流体連通関係にある。発電装置88は、周囲空気冷却蒸発器102からの呼吸可能な気体の流れの少なくとも一部を受け取ってその圧力および運動量により発電を行わせるように作動されるガスタービン130を具備する。詳説すると、発電装置88はさらに、発電機134と、発電機134をタービン130の駆動軸に機械的に接続するシャフト138とを具備する。タービン130の運動によりシャフト138が回転し、発電機134を作動させて、蓄電池群32の充電に使用される電力が発生する。一般的に、発電機134が発生する電力の少なくとも一部は機器一式36の充電および作動に向けられるものであり、この電力は蓄電池群32を充電することによって蓄電される。機器一式36および蓄電池群32は有意な量の熱を発生するが、周囲空気冷却蒸発器102は機器室40内の空気と熱交換関係にあるため、機器室40内の蓄電池群32および機器一式36が発生する熱が周囲空気冷却蒸発器102内の呼吸可能な気体の流れを加熱して蒸発させる。同様に、周囲空気冷却蒸発器102は、蓄電池群32および機器一式36を冷却してそれらの不具合を防止する。
【0032】
接続システム100はさらに、タービン130と周囲空気冷却蒸発器102との間のバイパス弁146を含むバイパスレグ142を具備する。バイパスレグ142はさらに、バイパス弁146と流体連通するバイパス流れ要素150を具備するが、当該バイパス流れ要素は供給分配弁154とも流体連通関係にある。所与の状況の要求によるが、バイパス弁146はコントローラ20からの指示に応答して、特定の状況下で呼吸可能な気体の流れをタービン130とバイパス流れ要素150とに分配するよう作動可能である。例えば、発電装置88による発電よりも、熱交換器92および/または送出システム96に直接流入する流量を増やす方が重要である場合は、そうすることが望ましい。一例として、蓄電池群32が完全に充電された状態にある緊急事態では、この操作を初期段階で行うことが考えられる。
【0033】
供給分配弁154は、流体連通関係にあるタービン130の下流に位置するため、タービン130およびバイパスレグ142からの実質的にすべての呼吸可能な気体の流れを受け取ることがわかる。すなわち、供給分配弁154は、排出されたり、漏洩したり、他の原因で失われたりした部分を除き、呼吸可能な気体の流れのすべてを受け取る。
【0034】
したがって、供給分配弁154は、タービン130および/またはバイパスレグ142から呼吸可能な気体の流れを受け取り、熱交換器92と送出システム96とに分配すると言える。この点に関して、供給分配弁154はコントローラ20と無線通信を行い、コントローラ20からの指示に応答して、呼吸可能な気体の流れを熱交換器92と送出システム96とに比例配分(すなわち分割)する。この呼吸可能な気体の流れの少なくとも一部は、おおむね常時、送出レグ158、送出制御弁166および排出装置170から成る送出システム96に分配されるが、当該排出装置は、呼吸可能な気体の流れの少なくとも一部が流出する流出口を有する。関連技術分野で一般に理解されているように、参照符号170で表すような排出装置には、流体の流入口から別の流れが流入する。この流入口は、例示する実施態様では、中央制御室12内の空気の少なくとも一部を排出装置170に引き込む再循環流入口174である。このように、排出装置170を通過する流れの少なくとも一部により、中央制御室12内の空気の一部が再循環流入口174を介して引き込まれることになり、新たな呼吸可能な気体が中央制御室12に供給されるとともに、中央制御室12内の空気の少なくとも一部が再循環される。排出装置170からの流れには中央制御室12内から再循環された空気が含まれ、また、その空気には浮遊放射性粒子が含まれている可能性があるため、送出システム96はさらに、ろ過装置178を具備する。排出装置170からの流れが流入するろ過装置178は、浮遊放射性粒子をろ過して除去する。送出システム96はさらに、一対の呼吸可能な気体の流出口182A、182Bを具備する。当該流出口は、ろ過装置178からの流れを中央制御室12の内部に供給することにより、呼吸可能な空気を再循環させる。
【0035】
前述のように、中央制御室12内の気圧は、緊急事態など或る特定の状況下において、外部より高い方が望ましいが、これは、放射性汚染物質の侵入を防げる利点があるからである。一般的に、緊急事態などの所定の事象が発生すると、中央制御室12内の要員は通常、中央制御室内の浮遊放射性粒子および他の汚染物質の量を評価するための定期点検および他の測定を行うことを要求される。送出レグ158を介する空気の供給が、中央制御室12内の気圧を高めに維持するに十分な流量であれば、要員に課せられるそのような定期点検を行う負担が緩和される。このため、中央制御室12内の気温を考慮してそのような流量が適当であれば、その流量を維持するようにコントローラ20によって供給分配弁154を操作してもよい。
【0036】
詳説すると、呼吸可能な気体の流れのうち送出レグ158に差し向けられる部分を除いた分流は、熱交換器92に供給される。熱交換器92は、熱交換器レグ162、熱交換器通気弁186および多数の流路190から成る。当該呼吸可能な気体の流れのうち熱交換器92に流入する分流は、最初に熱交換器レグ162を通ったあと熱交換器通気弁186に流入する。熱交換器通気弁186は、特定の設備によるが、熱交換器レグ162から流入する流れを、必要に応じて大気中に排出する。
【0037】
熱交換器通気弁186は、熱交換器レグ162を通る流れのうち当該通気弁により排出される部分を除いた分流を熱交換器92の流路190へ送る。流路190は、貯蔵器48と流体連通し、中央制御室12(具体的には中央制御室12内の空気)と熱交換関係にある。流路190に供給される流れの温度は、ほぼ確実に中央制御室12内の空気の温度を下回っている。したがって、流路190は、中央制御室12の空気から当該流路190を通る流れに熱を伝達して中央制御室12の内部が冷却されるようにする。この点に関して、熱交換器92は、当該熱交換器が固着された中央制御室12のコンクリートから流路190への熱伝導によるか、あるいは中央制御室12内の空気の対流によって熱を受け取ることにより、中央制御室12を冷却することができる。
【0038】
流路190を通り抜けた流れは、貯蔵器48と流体連通し、制御室レグ198および補助レグ202に接続する流出口分配弁194が受け取る。流出口分配弁194は、コントローラ20からの指示に応答して、熱交換器92からの流れを比例配分または他の方法で分割し、呼吸可能な空気が制御室レグ198を介して中央制御室12へ、および/または補助室レグ202を介して補助室28へ送られるように作動可能である。熱交換器92を通る流れは純ガスであり、浮遊放射性粒子で汚染されているかも知れない大気中からの再循環成分を含んでいないので、制御室レグ198および補助室レグ202を通る流れを、それぞれ中央制御室12および/または補助室28へ供給する前にろ過する必要はない。流出口分配弁194がコントローラ20から受け取る指示によるが、熱交換器92からの流れは、状況の必要性に対応して中央制御室12または補助室28に送出される。
【0039】
コントローラ20の詳細を図2に示す。コントローラ20は、プロセッサ209および記憶装置213から成るプロセッサ装置205を具備する。プロセッサ209は、マイクロプロセッサ(これに限らない)を含む多種多様なプロセッサのうちの任意のものでよい。記憶装置213は、持続的記憶媒体として機能する多種多様な記憶装置のうちの任意のものでよく、非限定的な例としてRAM、ROM、EPROM、FLASHなどのうち任意の1つ以上を含む。記憶装置213には、多数のルーチン217が指示の形で保存されており、これらの指示がプロセッサ209上で実行されると、コントローラ20は制御などさまざまな操作を行うための指示を発生させて、原子力環境8および/またはシステム4のさまざまな部分に送信する。
【0040】
コントローラ20はさらに、プロセッサ装置205に入力信号を提供する入力装置221を具備する。コントローラ20はさらに、プロセッサ装置205から出力信号を受け取る出力装置225を具備する。一例として、入力装置221は、中央制御室12内の要員がコントローラ20を介して情報を入力できるように、押しボタンのような入力機器およびユーザインタフェースを含む。入力装置221はさらに、アンテナ80で表される無線トランシーバの入力機器を含むが、無線トランシーバはさまざまな酸素指示器76や弁、および接続システム100の他のさまざまな構成機器による遠隔測定を可能にする。
【0041】
同様に、出力装置225は、アンテナ80で表される無線トランシーバの出力機器を含むが、無線トランシーバはプロセッサ装置205の出力信号を受信し、例えばバイパス弁146、供給分配弁154、流出口分配弁194などのさまざまな弁に伝える。出力装置225はさらに、中央制御室12内の要員が認知できる情報を提供する、映像出力および他の出力を有する。その他の入出力装置は、当業者には明白であろう。
【0042】
したがって、本発明のシステム4は、起動されると液体空気貯蔵タンク52に貯蔵された液体空気の機械的エネルギーおよび冷却能力を利用して、発電を行い、原子力環境8の少なくとも中央制御室12を冷却して呼吸可能な気体を提供できるという利点がある。このシステム4の起動は、さまざまな方法のうち任意の方法により可能であるが、例えば、コントローラ20が中央制御室12内の浮遊放射性粒子を検出するか、コントローラ20が中央制御室12への交流電力喪失を検出した場合に、また手動で起動することができる。
【0043】
貯蔵された液体空気の機械的エネルギーは、蒸発して気体になった呼吸可能な気体の流れにあるが、それがタービン130に送られて電力を発生する。この電力により蓄電池群32を充電し機器一式36を作動させ、また、発生する熱が周囲空気冷却蒸発器102を加熱して、その中を流れる呼吸可能な気体を蒸発させる。呼吸可能な気体の流れは発電装置88に送られて電力を発生させるか、または必要に応じて、流れの全部または一部がタービン130を迂回するバイパスレグ142に差し向けられる。熱交換器92に呼吸可能な気体を流入させてその流れの冷却能力を利用することにより、中央制御室12を冷却するとともに、呼吸可能な気体の流れの一部を、一般的に気体流出口として機能する排出装置170を介して中央制御室12内に供給する。
【0044】
発電装置88、熱交換器92および送出システム96に供給される呼吸可能な気体のさまざまな分流は、コントローラ20からの指示に基づいて制御可能である。この点に関して、最も重要と考えられる分流は、送出レグ158から中央制御室12内に送出される呼吸可能な気体の分流である。この分流は、前述のように最も重要であるが、呼吸可能な気体の分流のうちで最も少量でもある。熱交換レグ162から熱交換器92へ流入する分流は、重要度が中程度であるが、呼吸可能な気体の流れの中程度の部分を占めると言える。発電装置88へ向かう分流は、一般的にシステム4にとって最も重要度が低いが、呼吸可能な気体の分流のうち最大であると考えられる。このように、コントローラ20およびルーチン217は、コントローラ20が、原子力環境8にとって貯蔵器48の液体空気の価値が最大になるように接続システム100を介するさまざまな流れを制御するうえで、アンテナ80を介して得られるさまざまな遠隔測定データに大いに依存している。その他の変形例および利点は、当業者には明白であろう。
【0045】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明したが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替を想到できるであろう。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何らも制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物である。
図1
図2