(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796658
(24)【登録日】2020年11月18日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】検査装置、検査ユニット及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/04 20060101AFI20201130BHJP
G01N 29/265 20060101ALI20201130BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
G01N29/04
G01N29/265
G01N21/88 Z
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-551620(P2018-551620)
(86)(22)【出願日】2017年11月13日
(86)【国際出願番号】JP2017040782
(87)【国際公開番号】WO2018092726
(87)【国際公開日】20180524
【審査請求日】2019年2月12日
(31)【優先権主張番号】特願2016-226203(P2016-226203)
(32)【優先日】2016年11月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】家永 裕文
(72)【発明者】
【氏名】丸小 慶介
【審査官】
佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−033541(JP,A)
【文献】
特開平02−129544(JP,A)
【文献】
特開2005−195483(JP,A)
【文献】
特開昭61−155754(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0035862(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC
G01N 21/84−21/958、29/00−29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材で形成され、主面と前記主面と交差する交差面とを有する複合材部材を検査するための検査装置であって、
本体パーツと、
前記本体パーツに結合され、前記主面に接触される超音波プローブと、
第1方向に移動可能であるように前記本体パーツに結合された光センサパーツと、
処理装置と
を具備し、
前記超音波プローブは、前記複合材部材の前記主面に超音波を入射すると共に、前記超音波が前記複合材部材によって反射されて生成される反射波を受け取るように構成され、
前記光センサパーツは、前記第1方向に垂直な第2方向にセンサ光を出射し、前記センサ光が前記交差面で反射されて生成される反射光を受け取り、前記反射光に対応する出力信号を生成する光センサと、
前記第1方向に平行な中心軸を有する円筒面を有する筒部材と
を備え、
前記光センサが前記筒部材に収容されており、
前記筒部材が、前記第1方向に移動可能に前記本体パーツに連結され、
前記処理装置は、前記反射波及び前記出力信号に基づいて得られる測定結果を出力するように構成される
検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置であって、
更に、
前記光センサパーツを前記第1方向に移動させるアクチュエータを具備し、
前記アクチュエータによって前記光センサパーツを前記第1方向に移動させながら前記センサ光の出射及び前記反射光の受信が行われる
検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記超音波プローブが、前記第1方向に垂直な第3方向に移動可能であるように前記本体パーツに結合される
検査装置。
【請求項4】
主面と前記主面と交差する交差面とを有する複合材で形成された複合材部材を検査するための検査ユニットであって、
本体パーツと、
前記本体パーツに結合され、前記主面に接触される超音波プローブと、
第1方向に移動可能であるように前記本体パーツに結合された光センサパーツと
を具備し、
前記超音波プローブは、前記複合材の前記主面に超音波を入射し、前記複合材によって前記超音波が反射されて生成される反射波を受け取り、前記反射波に対応する第1出力信号を出力するように構成され、
前記光センサパーツは、
前記第1方向に垂直な第2方向にセンサ光を出射し、前記センサ光が前記交差面で反射されて生成される反射光を受け取り、前記反射光に対応する第2出力信号を出力するように構成された光センサと、
前記第1方向に平行な中心軸を有する円筒面を有する筒部材と
を備え、
前記光センサが前記筒部材に収容されており、
前記筒部材が、前記第1方向に移動可能に前記本体パーツに連結された
検査ユニット。
【請求項5】
主面と前記主面と交差する交差面とを有する複合材部材を検査するための検査方法であって、
(A)前記主面に超音波プローブを接触させて前記超音波プローブから超音波を前記主面に入射するステップと、
(B)前記複合材部材によって前記超音波が反射されて生成される反射波を受信するステップと、
(C)前記交差面に沿った第1方向に光センサを移動させながら、前記第1方向に垂直な第2方向にセンサ光を出射するステップと、
(D)前記センサ光が前記交差面で反射されて生成される反射光を受信するステップと、
(E)前記反射波及び前記反射光に基づいて得られる測定結果を出力するステップと
を具備し、
前記交差面が、穴開け加工によって前記複合材部材に形成された貫通孔の側壁面である
検査方法。
【請求項6】
請求項5に記載の検査方法であって、
前記光センサが前記第1方向に平行な中心軸を有する円筒面を有する筒部材に収容されており、
前記円筒面が、前記貫通孔の直径に対応する直径を有している
検査方法。
【請求項7】
請求項6に記載の検査方法であって、
前記第2方向の向きを変更しながら前記(A)〜(E)ステップが繰り返して行われる
検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置、検査ユニット及び検査方法に関し、特に、複合材で形成された部材の検査に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)及びガラス繊維強化プラスチック(GFRP)に例示されるように、樹脂と繊維とを組み合わせて構成された複合材(composite material)は、航空機をはじめとする様々な産業分野において広く用いられている。
【0003】
複合材で形成された部材(以下では、単に、「複合材部材」という。)には、しばしば、欠陥が発生する。特に、複合材部材に機械的加工(例えば、穴あけ加工)を行った場合、機械的加工によるダメージに起因した欠陥が発生することがある。このような欠陥の有無を確認するために、複合材部材の製造、加工プロセスにおいては、検査が行われる。
【0004】
複合材部材の最も典型的な検査方法の一つが、超音波検査である。超音波検査においては、超音波が複合材部材に入射され、複合材部材から返ってくる反射波が取得される。この反射波に含まれている情報から欠陥の位置や大きさを検知することができる。
【0005】
しかしながら、超音波の入射方向に複数の欠陥が並んでいる場合、超音波検査による欠陥の検知に不十分な場合が生じる。超音波の入射方向に複数の欠陥が並んでいる場合、超音波の入射位置に最も近い欠陥によって超音波が反射される。このような場合、超音波検査では入射位置に最も近い欠陥しか検知できず、欠陥の検知漏れが発生し得る。特に、繊維で形成されたシートやクロスが積層されている複合材部材に対して機械的加工を行ったときに発生する層間剥離は、特定方向(例えば、繊維シートや繊維クロスの積層方向)に並んで発生し易いので、欠陥の検査漏れが生じやすい。
【0006】
なお、複合材に設けられた貫通孔の超音波検査については、例えば、米国特許出願公開2012/0035862号に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開2012/0035862号
【発明の概要】
【0008】
従って、本発明の目的は、超音波プローブから出射される超音波の入射方向に複数の欠陥が並んでいることが想定される場合に複合材部材の欠陥を検出するための技術を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、以下の開示から当業者には理解されよう。
【0010】
本発明の一の観点では、複合材で形成され、主面と主面と交差する交差面とを有する複合材部材を検査するための検査装置が提供される。検査装置は、本体パーツと、本体パーツに結合され、主面に接触される超音波プローブと、第1方向に移動可能であるように本体パーツに結合された光センサパーツと、処理装置とを具備する。超音波プローブは、複合材部材の主面に超音波を入射すると共に、超音波が複合材部材によって反射されて生成される反射波を受け取るように構成される。光センサパーツは、第1方向に垂直な第2方向にセンサ光を出射すると共に、センサ光が交差面で反射されて生成される反射光を受信するように構成される。処理装置は、反射波及び反射光に基づいて得られる測定結果を出力するように構成される。
【0011】
一実施形態では、検査装置が、更に、光センサパーツを第1方向に移動させるアクチュエータを具備していてもよい。この場合、アクチュエータによって光センサパーツを第1方向に移動させながらセンサ光の出射及び反射光の受信が行われる。
【0012】
好適な実施形態では、超音波プローブが、第1方向に垂直な第3方向に移動可能であるように本体パーツに結合されている。
【0013】
好適な実施形態では、光センサパーツが、センサ光を出射し、反射光を受け取り、反射光に対応する出力信号を生成する光センサと、第1方向に平行な中心軸を有する円筒面を有する筒部材とを備えている。光センサは、筒部材に収容されている。筒部材は、第1方向に移動可能に本体パーツに連結されている。
【0014】
本発明の他の観点では、主面と、主面と交差する交差面とを有する複合材で形成された複合材部材を検査するための検査ユニットが提供される。検査ユニットは、本体パーツと、本体パーツに結合され、主面に接触される超音波プローブと、主面に垂直な第1方向に移動可能であるように本体パーツに結合された光センサパーツとを具備する。超音波プローブは、複合材の主面に超音波を入射し、複合材によって超音波が反射されて生成される反射波を受け取り、反射波に対応する第1出力信号を出力するように構成されている。光センサパーツは、第1方向に垂直な第2方向にセンサ光を出射し、センサ光が交差面で反射されて生成される反射光を受け取り、反射光に対応する第2出力信号を出力するように構成されている。
【0015】
本発明の更に他の観点では、主面と主面と交差する交差面とを有する複合材部材を検査するための検査方法が提供される。当該検査方法は、
(A)主面に超音波プローブを接触させて超音波プローブから超音波を前記主面に入射するステップと、
(B)複合材部材によって超音波が反射されて生成される反射波を受信するステップと、
(C)交差面に沿った第1方向に光センサを移動させながら、第1方向に垂直な第2方向にセンサ光を出射するステップと、
(D)センサ光が交差面で反射されて生成される反射光を受信するステップと、
(E)反射波及び反射光に基づいて得られる測定結果を出力するステップと
を具備する。
【0016】
このような検査方法は、交差面が、穴開け加工によって複合材部材に形成された貫通孔の側壁面である場合に特に好適である。
【0017】
一実施形態では、光センサが第1方向に平行な中心軸を有する円筒面を有する筒部材に収容されていてもよい。この場合、筒部材の該円筒面が、貫通孔の直径に対応する直径を有していることが望ましい。
【0018】
一実施形態では、センサ光を出射する方向(第2方向)の向きを変更しながら(A)〜(E)ステップが繰り返して行われることが好ましい。
【0019】
本発明によれば、超音波プローブから出射される超音波の入射方向に複数の欠陥が並んでいることが想定される場合にも複合材部材の欠陥を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態において検査される複合材部材の構造の一例を示す上面図である。
【
図2】
図1に図示されている複合材部材の貫通孔の近傍の構造を部分的に示す拡大断面図である。
【
図3】
図1に図示されている複合材部材の超音波検査の一例を示す概念図である。
【
図4】本実施形態の検査装置の構成を示す概念図である。
【
図5】本実施形態における検査ユニットの構造の一例を示す斜視図である。
【
図7】本実施形態の検査装置を用いた複合材部材の検査を図示する斜視図である。
【
図8】本実施形態の検査装置によって行われる超音波検査と光学的検査とを図示する概念図である。
【
図9】本実施形態の検査手順によって得られる情報を示す概念図である。
【
図10】本実施形態において検査される複合材部材の構造の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、まず、本実施形態において検査される複合材部材の構造、及び、該複合材部材の超音波検査において生じ得る問題について説明する。
【0022】
図1は、本実施形態において検査される複合材部材1の構造の一例を示す上面図であり、
図2は、
図1に図示されている複合材部材1の構造を部分的に示す拡大断面図である。以下の説明においては、XYZ直交座標系が導入される。XYZ直交座標系においては、Z軸方向が複合材部材1の厚さ方向に定義され、X軸方向及びY軸方向が、複合材部材1の面内方向に互いに直交するように定義される。
【0023】
複合材部材1は、樹脂と繊維とを組み合わせた複合材(例えば、CFRP)によって形成されている。本実施形態では、複合材部材1は、板状の形状に形成されている。複合材部材1において、繊維シート又は繊維クロスが積層される方向(以下、単に、「積層方向」ということがある。)は、複合材部材1の厚さ方向、即ち、
図1、
図2におけるZ軸方向である。
【0024】
このような構造の複合材部材1に、ドリルを用いた穴開け加工によって複合材部材1の厚さ方向に(即ち、積層方向に)貫通する円形の貫通孔2を形成すると、貫通孔2の近傍に欠陥が生じる可能性がある。最も典型的な欠陥は、貫通孔2の側壁面2aにおける層間剥離(delamination)である。層間剥離が発生すると、貫通孔2の側壁面2aから複合材部材1の内部に向けて延伸する欠陥3が形成される(なお、側壁面2aは、主面1aに交差する面である)。層間剥離が発生する場合には、複数の欠陥3が側壁面2aに沿って並んで(即ち、積層方向に並んで)形成され得る。
【0025】
欠陥3の発生は複合材部材1の信頼性に影響し得るので、穴開け加工の後には、複合材部材1を検査することが望ましい。複合材部材1の検査では、第一義的には、欠陥3の存在の有無が評価される。また、欠陥3の存在が検知された場合には、欠陥3の数や欠陥3が存在する領域を特定することが望ましい。欠陥3の数や欠陥3が存在する領域を特定できれば、穴開け加工の条件出しに使用したり、複合材部材1を含む構造体の強度計算に使用したりするための基礎データを得ることができる。
【0026】
欠陥3を検知するための最も簡便な手法の一つが、超音波検査である。超音波検査によれば、非破壊的に欠陥3を検知することができる。
図3は、複合材部材1の超音波検査の一例を示す概念図である。複合材部材1の超音波検査が行われる場合、超音波プローブ4が複合材部材1の主面1aに押し当てられ、超音波プローブ4から主面1aに超音波4aが入射される。本実施形態では、超音波4aの入射方向は、複合材部材1の厚さ方向(Z軸方向)である。複合材部材1から帰ってくる反射波が超音波プローブ4によって受信され、その反射波から得られる超音波画像から、欠陥3の有無を判断することができる。
【0027】
このような検査方法の一つの問題は、超音波4aの入射方向、即ち、複合材部材1の厚さ方向に並んで(即ち、積層方向に並んで)複数の欠陥3が発生した場合、超音波プローブ4から直接に超音波4aが到達可能な欠陥3又は欠陥3の部分しか検知できないことである。例えば、
図3の構造では、複合材部材1の主面1aに最も近い欠陥3a、及び、欠陥3aよりも主面1aから離れた欠陥3bのうち欠陥3aによって超音波4aが遮蔽されない部分3cしか検知することができない。このような問題は、特に、超音波プローブ4によるアクセスが難しい部分に欠陥3が発生することが想定される場合に特に重大である。
【0028】
このような背景から、超音波プローブ4から出射される超音波の入射方向に複数の欠陥が並んでいることが想定される場合でも複合材部材1に発生する欠陥3を適切に検出可能な技術の提供が求められている。以下に述べられる本実施形態の検査装置、検査ユニット及び検査方法は、このような要求に対応するための技術を提供する。
【0029】
図4は、本実施形態の検査装置10の構成を示す概念図である。検査装置10は、検査ユニット11と、処理装置12と、表示装置13とを備えている。
【0030】
図5は、検査ユニット11の構造の一例を示す斜視図である。検査ユニット11は、本体パーツ14と、超音波プローブ15と、光センサパーツ16とを備えている。
【0031】
検査ユニット11の本体パーツ14は、プローブガイド14aと、光センサガイド14bと、アクチュエータ14cとを備えている。プローブガイド14aは、超音波プローブ15を特定方向に移動自在に保持している。以下では、この特定方向(即ち、超音波プローブ15が移動可能な方向)を、「プローブ可動方向」という。超音波プローブ15のプローブ可動方向における位置は、プローブガイド14aによって超音波プローブ15が保持される位置を調節することで調節可能である。光センサガイド14bは、光センサパーツ16を、プローブ可動方向に垂直な方向に移動自在に保持している。以下では、該垂直な方向を、「センサ走査方向」という。アクチュエータ14cは、光センサパーツ16を駆動して「センサ走査方向」に移動させるように構成されている。
【0032】
超音波プローブ15は、処理装置12の制御の下、超音波検査に用いられる超音波を複合材部材1に入射すると共に、複合材部材1によって超音波が反射されて発生する反射波を受け取るように構成される。超音波プローブ15は、該反射波に対応する出力信号を生成する。超音波プローブ15によって生成された出力信号は、ケーブル17を介して処理装置12に送信される。
【0033】
光センサパーツ16は、貫通孔2に挿入され、貫通孔2の側壁面2aに露出されている欠陥3を光学的検査によって検知するために用いられる。本実施形態の検査装置10では、超音波検査に加え、光学的検査によっても欠陥3が検出される。光センサパーツ16は、金属筒21と、光センサ22とを備えている。
【0034】
金属筒21は、光センサ22をその内部に収容して保持する筒部材である。金属筒21は、円筒形の側面を有しており、側面において光センサガイド14bによって保持されている。金属筒21の中心軸21aは、センサ走査方向に平行に向けられており、金属筒21は、光センサ22と貫通孔2の側壁面2aとの位置関係を一定に保つために用いられるものであり、金属筒21は、貫通孔2の直径に対応する直径(貫通孔2の直径と同一又は微小に小さい直径)を有するように形成されることが望ましい。
【0035】
図6は、金属筒21の構造を示す部分断面図である。金属筒21は、光センサ22から出射されるセンサ光22aを通過させるための開口21bを有している。光センサ22は、センサ光22aの光軸22bが、センサ走査方向に垂直な方向、本実施形態ではプローブ可動方向に平行な方向に向くように金属筒21によって支持される。
【0036】
図5に戻り、光センサ22は、処理装置12の制御の下、センサ走査方向に垂直な方向にセンサ光を出射すると共に、このセンサ光が貫通孔2の側壁面2aで反射されて生成される反射光を受け取るように構成される。光センサ22は、反射光に対応する出力信号を生成する。光センサ22によって生成された出力信号は、ケーブル18を介して処理装置12に送信される。一実施形態では、光センサ22としては、光変位センサが使用され得る。
【0037】
図4を再度に参照して、処理装置12は、超音波プローブ15、光センサ22及びアクチュエータ14cを制御すると共に、超音波プローブ15及び光センサ22から受け取られた出力信号を処理して測定結果を出力するように構成されている。例えば、処理装置12は、超音波プローブ15から受け取られた出力信号を処理して所望の超音波画像(例えば、Bモード画像)を生成し、該超音波画像を表示装置13に表示する。また、処理装置12は、光センサ22から受け取られた出力信号を処理して、貫通孔2の側壁面2aの各位置における欠陥3の有無を示す欠陥検知画像を生成し、生成された欠陥検知画像を表示装置13に表示する。貫通孔2の側壁面2aに露出された欠陥3が存在すると、欠陥3が存在する位置ではセンサ光22aが反射されず、反射光が光センサ22に到達しない。光センサ22から出力される出力信号は、反射光に応答して生成されるので、光センサ22から出力される出力信号に基づいて貫通孔2の側壁面2aの各位置における欠陥3の有無を判断可能である。処理装置12は、光センサ22から出力される出力信号に基づいて欠陥検知画像を生成する。また、光センサ22として光変位センサが使用される場合、反射光に含まれる情報から貫通孔2の側壁面2aの形状を特定可能である。この場合、処理装置12は、欠陥検知画像として、貫通孔2の側壁面2aの形状を示すプロファイル画像を生成してもよい。
【0038】
続いて、本実施形態の検査装置10を用いて複合材部材1の貫通孔2の近傍の部分を検査する手順を説明する。
【0039】
まず、検査ユニット11が複合材部材1の上に配置される。検査ユニット11の配置においては、
図7に図示されるように、複合材部材1の貫通孔2に光センサパーツ16が挿入され、更に、超音波プローブ15が複合材部材1の主面1aに押し当てられる。プローブガイド14aの向き(即ち、プローブ可動方向)及びプローブ可動方向における超音波プローブ15の位置は、検査されるべき位置に応じて決められる。
図7では、プローブガイド14aの向きが、貫通孔2に対して+X方向に規定されている。以下において、プローブガイド14aの向きを、+X方向となす角として定義する。即ち、
図7に図示されている配置では、プローブガイド14aの向きは、「0°」である。
【0040】
更に、超音波プローブ15を用いた超音波検査と光センサパーツ16を用いた光学的検査とが行われる。
図8は、本実施形態の検査装置10によって行われる超音波検査と光学的検査とを図示する概念図である。
【0041】
超音波検査では、超音波プローブ15から複合材部材1の主面1aに超音波15aが入射される。本実施形態では、超音波15aの入射方向は、複合材部材1の厚さ方向(Z軸方向)である。超音波15aが複合材部材1によって反射されることにより生成される反射波が超音波プローブ15によって受信され、反射波に対応する出力信号が超音波プローブ15によって生成される。処理装置12は、超音波プローブ15から受け取られた出力信号から超音波画像を生成し、生成された超音波画像を表示装置13に表示する。必要がある場合(例えば、広い範囲の検査を行う場合)、超音波プローブ15の位置をプローブ可動方向において変更しながら、超音波検査が行われる。超音波プローブ15の位置の変更は、プローブガイド14aに沿って超音波プローブ15を手動で動かすことによって行ってもよい。
【0042】
一方、光学的検査では、アクチュエータ14cによって光センサパーツ16の位置をセンサ走査方向(即ち、Z軸方向)に自動的に移動させながら、光センサ22から出射されたセンサ光22aが貫通孔2の側壁面2aの各位置に照射される。これにより、貫通孔2の側壁面2aが、センサ光22aによってセンサ走査方向に走査される。更に、センサ光22aが側壁面2aで反射されて生成される反射光が光センサ22によって受信され、反射光に対応する出力信号が光センサ22によって生成される。処理装置12は、光センサ22から受け取られた出力信号から貫通孔2の側壁面2aの各位置における欠陥3の有無を示す欠陥検知画像を生成し、生成された欠陥検知画像を表示装置13に表示する。詳細には、貫通孔2の側壁面2aのある位置に欠陥3が存在すると、その位置ではセンサ光22aが反射されず、反射光が光センサ22に到達しない。処理装置12は、反射光が光センサ22に到達しなかった位置に欠陥3が存在することを示す欠陥検知画像を生成する。また、光センサ22として光変位センサが使用される場合には、反射光に含まれる情報から貫通孔2の側壁面2aの形状を特定することも可能である。この場合、処理装置12は、欠陥検知画像として、貫通孔2の側壁面2aの形状を示すプロファイル画像を生成してもよい。
【0043】
プローブガイド14aの向き(即ち、センサ光22aが出射される向き)を所望の角度間隔(例えば、90°)で変更しながら、同様の検査が繰り返し行われる。これにより、複合材部材1の貫通孔2の近傍における欠陥3の発生の有無、及び、欠陥3が発生している場合にはその数及び存在する範囲を特定することができる。プローブガイド14aの向きの変更は、プローブガイド14aを手動で回転させることによって行ってもよい。
【0044】
ここで、本実施形態の検査装置10が、光センサ22が貫通孔2の直径に対応する直径を有する金属筒21に収容されている構成を有していることに留意されたい。このような構成によれば、プローブガイド14aの向き(即ち、センサ光22aが出射される向き)を変更したときに光センサ22と貫通孔2の側壁面2aとの距離を一定に保つことができる。これは、光学的検査の精度の向上に有効である。
【0045】
以上に説明されている検査手順によれば、超音波プローブ15から出射される超音波15aの入射方向に複数の欠陥が並んでいることが想定される場合においても、超音波プローブ15から直接に超音波15aを到達させることができないような欠陥3に関する情報を得ることができる。
図2を参照して説明したように、超音波プローブのみが用いられる場合には、超音波プローブから直接に超音波を到達させることができないような欠陥3については情報を得ることができない。一方、本実施形態の検査手順においては、
図9に図示されているように、光センサ22によって貫通孔2の側壁面2aにおける欠陥3の数及び位置を検知することができる。言い換えれば、本実施形態の検査手順によれば、貫通孔2の側壁面2aにおける欠陥3の数及び欠陥3が存在する領域5の情報を得ることができる。特に、本実施形態のように、穴開け加工によって形成された貫通孔2を有する複合材部材1の検査では、貫通孔2の側壁面2aにおける層間剥離に起因する欠陥3が重要であり、本実施形態の検査手順の有用性が大きい。
【0046】
なお、上記の実施形態では、貫通孔2が形成されている複合材部材1の貫通孔2の側壁面2aに沿って発生する欠陥3を検知するための検査が行われているが、本実施形態の検査装置及び検査方法は、複合材部材の主面に交差する交差面において欠陥が発生するような様々な構造に適用可能である。例えば、本実施形態の検査装置及び検査方法は、
図10に図示されているような段差構造6を有する複合材部材1の検査にも使用され得る。この場合、超音波プローブ15が複合材部材1の主面1aに当接され、段差構造6の段差面6a(主面1aに垂直な面)が光センサパーツ16によって走査される。この場合も、複合材部材1の段差面6aに露出している欠陥の数及び欠陥が存在する範囲が検査可能である。
【0047】
以上には、本発明の実施形態が具体的に記述されているが、本発明は、上記の実施形態に限定されない。本発明が種々の変更と共に実施され得ることは、当業者には理解されよう。
【0048】
尚、この出願は、2016年11月21日に出願された日本特許出願2016−226203号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てを引用によりここに組み込む。